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卒業論文 - 北海道科学大学

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卒業論文 - 北海道科学大学
2000 年度卒業論文
マイクロ波エンジンのプロトモデルの研究開発
北海道工業大学
工学部
応用電子工学科
6-4-M-97-066 冨永 篤
6-4-M-97-093 牧野
裕介
6-4-M-97-096 松浦
申多
6-4-M-97-301 佐川
紘基
指導教員
佐鳥
新
助教授
マイクロ波エンジンのプロトモデルの研究開発
1.序論
1.1 目的
...1
1.2 研究の背景
...1
1.3 電気推進とは
...2
2.マイクロ波エンジンの作動特性とパラメータ依存性
2.1 形状パラメータとイオン生成コスト、推進剤利用効率について
2.1.1 形状パラメータ
...8
(1)放電室形状について(アンテナ縦入れTYPE−Ⅱ型)
(2) アンテナ形状
(3) 加速方法
2.1.2 イオン生成コスト、推進剤利用効率について
...11
2.1.3 実験装置
...12
2.1.4 実験方法
...15
2.1.5 実験結果
2.2 マイクロ波エンジン(EM モデル)の推進効率の評価
2.2.1 マイクロ波エンジン EM モデル
2.2.2 実験装置
2.2.3 実験方法
2.2.4 実験結果
3.マイクロ波エンジンシステムの開発
3.1 システムの全体構成
3.2 エンジンヘッドの設計
3.3 中和器及び点火器の最適設計
3.3.1 中和器及び点火器について
3.4 マイクロ波エンジン制御装置の設計
3.4.1 中和器制御回路
3.4.2 点火器制御回路
3.4.3CPU電源遮断回路
3.4.4 推薬供給系回路
3.5 マイクロ波エンジン制御装置の製作行程
4.マイクロ波エンジン PM の品質認定試験
4.1 マイクロ波エンジン PM の推進効率の評価
...16
...20
...22
...24
...26
...30
...31
...37
...46
...53
...57
...62
...65
4.1.1 マイクロ波エンジン PM モデル
4.1.2 実験装置
4.1.3 実験方法
4.1.4 実験結果
4.2 耐久試験
4.2.1 目的
4.2.2 概要
4.2.3 システム構成
4.2.4 各種回路図
4.2.5 使用部品一覧
4.2.6 耐久試験プログラム・フローチャート
4.2.7 耐久試験プログラム・ソース
4.2.8 耐久試験プログラム・インターフェイス
4.3 振動試験
4.3.1 振動試験とは
4.3.2 実験装置
4.3.3 実験方法
4.3.4 実験結果
5.結論
6.謝辞
...69
...69
...70
...71
...75
...75
...76
...78
...81
...82
...84
...102
...103
...103
...104
...105
...106
1.序論
1.1
研究目的
本研究の目的は新型の電気推進であるマイクロ波エンジンについて次の項目につ
いて研究、開発を行うものである。
(1)1.5GHz のマイクロ波によるプラズマ生成を用いた新型静電加速方式のスラ
スタの性能解析
(2)人工衛星搭載のためのマイクロ波エンジンシステム(PM、制御回路等)の
開発
(3)宇宙環境での運用のための品質試験(振動試験、耐久試験、etc..)
1.2
研究の背景
現在宇宙開発では大型衛星より小型の衛星を多数使用する商業が主流になりつ
つある。これら小型衛星の姿勢制御や軌道遷移などに低電力の電気推進が必要と
されてきている。この 50∼100kg の小型衛星に電気推進を搭載させるには 20∼30W
の低電力で動作しなければならない。このような電力制限を受けると MPD や DC ア
ークジェットなどの大電力の電気推進は使用できない。かろうじてイオンエンジ
ンと SPT が使用することが出来るが、従来のイオンエンジンのようなカウフマン
型ではエンジンサイズが小型になり低電力になると効率も減少する。しかしマイ
クロ波によるプラズマ生成では低電力でも安定した性能を維持出来る。そこで
我々は、小型衛星搭載用としてシステムが単純でありプラズマ生成をマイクロ波
によって行う新しいタイプの静電加速型スラスタの開発を行っている。
1.3
電気推進
電気推進とは電気エネルギーを運動エネルギーに変換することにより推進剤を
加速し、推力を得る推進方法である。電気推進は化学推進に比べ低推力、高比推
力が特徴である。推力が小さいために地上からの打ち上げや重力アシストを利用
するような運用には向かないが、小重力天体(小惑星や彗星)へのミッションや重
力場に変化のないようなミッションであれば、長時間作動させる事により推進剤
重量の削減が可能になるため、人工衛星の軽量化・長寿命化、ペイロード増yを
図ることができる。そのほかの特徴としては、投入するエネルギーが電気である
ために推進剤が燃焼性である必要はなく、基本的には推進剤の種類を問わないと
いうことがある。現実的には効率、点火性、加速機構、システム構成などを考え
て最適なガスが用いられる。イオンエンジンの場合にはXeが一般的である。
電気推進が化学推進に比べ有利になると思われる分野を以下に挙げる。
a)小重力天体への主推進
b)重力変動の少ない環境下での長期間運用(姿勢制御、軌道保持etc。)
c)重力アシストが利用できない高ΔVミッション
d)大型構造物の姿勢制御
etc。
1.4
イオンエンジン
(1)マイクロ波イオンエンジン
電気推進を利用する計画が現在、小惑星サンプルリターンミッションとして宇
宙科学研究所で進められている。小惑星ネレウスに衛星MUSES−Cがランデ
ブーし、小惑星のサンプルを持って地球に帰還するという計画である。2002
年にM−Ⅴロケットによって打ち上げられ、ネレウス到着が約2年後、ネレウス
のサンプルを回収してさらに2年かけて2006年に地球に帰還する。このミッ
ションにおいて小惑星のサンプルを回収することは、太陽系の起源を探るなどの
理学的な位置づけを持っている。しかし、工学ミッションとしては以下のような
技術の確立が必要とされる。
・ 電気推進機構(イオンエンジン)の応用
・ 高度の自立化、工学情報に基づく位置、姿勢決定
・ サンプラ、自動機構
上記のようにMUSES−Cでは様々な工学的課題を抱えており、その中で主
推進としては電気推進であるイオンエンジンが使用される。宇宙科学研究所の衛
星には主にM−Ⅴロケットによって打ち上げられるため、比較的小型の衛星であ
る。そのため高ΔVミッションをすることは困難であるが、今回イオンエンジン
を用いて推進剤を減らすことができたことにより小惑星サンプルリターンミッシ
ョンが可能になった。このMUSES−Cに搭載される電気推進機として、宇宙
科学研究所栗木研究室の開発するマイクロ波イオンエンジンが採用されている。
イオンエンジンは4機搭載する予定で、1機が冗長系であり最大3機を同時に作
動させる。エンジンの作動時間は約13000時間に及ぶ。主なエンジン緒元を
表1−4に示す。
推進剤
Xe
推力
20mN 以上(1kW 時)
比推力
3000sec以上
推力発生時電力
1kW/750kW/500W/250W 4段切り替え
積算作動時間
16000時間以上
乾燥重量
36kg
システム構成
スラスタヘッド 4台
電源ユニット、マイクロ波発振・増幅ユニット 各2
推進剤供給ユニット、スラスタ制御ユニット 各1
表1−4
24kg
MUSES−C搭載イオンエンジンの主要緒
(1995.5)
(2)カウフマン型イオンスラスタ
イオンスラスタはプラズマ生成を行うイオン源の種類によって電子衝突型(カ
ウフマン型・カスプ型)、高周波(RF)誘導加熱型、マイクロ波電子サイクロトロ
ン共鳴型(ECR)、接触電離型などに分類される。作動原理に先立ち、まず最も研
究開発が進んでいる電子衝突型(カウフマン型,カスプ型)を例にその構造につ
いて説明する。
図1−4−1
カウフマン型イオンスラスタの構造
図1−4−1に代表的な電子衝突型イオンスラスタ(カウフマン型)の構造を
示す。イオン源となるプラズマは放電室中央上流側に設置された陰極と通常円筒
状の陽極からなる放電部で作られる。スラスタ開発の初期にはフィラメント熱陰
極が用いられたが、現在では寿命,熱損失,電流密度の観点から中空(hollow)
陰極が用いられている。推進剤の一部が陰極内より供給され、ホロー陰極とキー
パー(keeper)との間の放電によってプラズマとなり主放電の陰極の役割を果た
す。陰極の外側には熱電子放出を促すためにヒータが巻かれているが、温度を低
くしてできるだけ長寿命化を図り、かつイオン生成コストを下げるために仕事関
数の低い BaCo3,SrCO3,CaCO3,などの溶液の噴射が行われている。性能向上の上
では、全推進剤供給量をできるだけ低く保つことが重要で(25mN クラスで8∼
10SCCM)、かつ主放電室への供給量とホロー陰極内への推進剤供給量の配分は動
作点に大きく影響する。ホロー陰極内への推進剤供給量を制御することにより、
長時間作動やスラスタのスロットリング(推力調整/変更)に伴う動作点の移動に
よる主放電電圧の変化を補正して、イオン生成コストを調整し、性能をコントロ
ールすることができる。すなわち、比推力等性能の精密な制御が必要な運用の場
合は、流量調整期にも正確な流量制御性能が求められる。ホロー陰極下流にある
バッフルは陰極から主放電への電子流を抑制する目的で置かれている。カウフマ
ン型の場合は図1−4−1に示すように、主放電部には永久磁石(通常アルニコ
系またはサマリウムコバルト系磁石)、電磁軟鉄からなる磁気回路の一部として末
広がり型の磁界が印加されている。磁束密度は10-3 [T] (Wb/m2=T,10G)程度
で、このときの電子旋回半径は放電部の代表長さ∼0.1m に近い。旋回によって
陰極・陽極間の電子の実行的経路が長くなり、原子との衝突確率が増大する。
(3)カスプ型イオンスラスタ
カスプ型の場合は、図1−4−2に示すように、プラズマの壁への損失を抑え
るため、放電室内壁/陽極を覆うように強磁場が印加されている。中心軸下流部に
は磁束密度5∼10×10-3 [T] (Wb/m2=T)以下のフィールドフリーと呼ば
れる無磁場に近い領域が存在し、プラズマが閉じ込められ、その下流部のイオン
抽出/加速グリッドへと導かれる。
図1−4−2
1.5
カスプ型イオン源
マイクロ波放電型静電加速推進機
図1−5−1に示すように、マイクロ波放電型静電加速推進機では、放電室の
上流と下流に設けた2つの電極間に1個の電源を用いて電位をかける構成となっ
ている。これは、従来の静電加速推進機に比べイオン加速に要求される電源を減
らす事ができたからである。中和器プラズマを生成するための中和器には、コー
ドカソード(冷陰極)を用いる構成になっているため余分な推薬の削減になって
いるとともに、性能低下を改善する事ができる。加速電極をシンプルな構造に且
つ部品点数を減らすためにアンテナをイオン加速の為に上流側の電極と兼用構造
になっている構成となっている。また、マイクロ波放電型静電加速推進機で用い
るアンテナはマイクロストリップラインで構成されたマイクロ波発振器、マイク
ロ波増幅回路及びマイクロ波整合回路と同一の基板上に配置された回路構成とな
っているため小型化が可能になりエンジン全体のユニット化、クラスター化する
ことへの応用も可能となっている。
図 1−5−2に新型スラスタの原理を示す。この電気推進機はイオン加速室と中
和器から構成されている。推進剤には Xe ガスを使用し、プラズマは、マイクロ波
と放電室内のカスプ磁場による電子サイクロトロン共鳴(ECR)により生成される。
電極は放電室の上流と下流にそれぞれ配置する。中和はホールスラスタと同じよ
うに下流に置かれた電極により行われる。この二つの電極間に加速電圧を与えて
プラズマの中に静電界勾配を形成し、イオンを加速して推力を得る。
コールドカソ−ド
中和器
下流加速電極
e
e
シールドケース
放電室側面
プラズマ
回路基板
加速電源
マイクロ波
マイクロ波アンテナ
/上流加速電極
(1)垂直断面図
(2)最上流面の部品配置図
図1−5−1 マイクロ波放電型静電加速推進機
マイクロ波
推進剤 Xe
e
e
e
e
e
e
e
アノード
カソード/
中和器
プラズマ点火装置
回路基板
アイソレータ
オリフィス
ピエゾバルブ
IN
Gas
発振器
マイクロ波アンテナ
/上流加速電極
図1−5−2
アンプ
整合回路
DCカッター
新型マイクロ波エンジン
2.マイクロ波エンジンの作動特性とパラメータ依存性
2.1 形状パラメータとイオン生成コスト、推進剤利用効率について
2.1.1 形状パラメータ
(1)放電室形状について(アンテナ縦入れTYPE−Ⅱ型)
昨年度の研究において使用された、アンテナ縦入れTYPE−Ⅱ型を基に
放電室の最適化を試みるために実験をおこなう。実験に使用したスラスタのタイ
プは
○ スラスタタイプ(大) … 図 1.1
○ スラスタタイプ(中) … 図 1.2
○ スラスタタイプ(小) … 図 1.3
及び、磁石の配列をフレア形状 (図 1.4)にしたものがある。
開口径 23mm
開口径 20mm
磁石
図 2.1.1
スラスタタイプ(大)
図 2.1.2
スラスタタイプ(中)
開口径 17mm
図 2.1.3
スラスタタイプ(小)
図 2.1.4
フレア形状
(2)アンテナ形状
アンテナ形状はマイクロ波の反射の変化などを調べるために様々な形状を、
試みた。
使用したアンテナは
○ アンテナ
○ アンテナ
○ L 字型アンテナ
高さ 0.5mm
高さ 1mm
(4mm、5mm、6mm)
…図 2.1.5
…図 2.1.6
…図 2.1.7
1
0.5
図 2.1.5
アンテナ高さ 0.5mm
図 2.1.6
アンテナ高さ 1mm
4mm(5mm、6mm) 図2.1.7 L字型アンテナ
(3)
加速方法
放電室で生成したプラズマからイオンを引き出し加速する方法は、スラスタ開
口部の下流に金属のメッシュでグリッド(図 1.8)をつくり、負の電圧を与えイオン
を引き出し、スラスタ本体には正の電圧を与えて加速を行なう
加速方法の概要図を図 1.9 に示す。
・
図 2.1.8
実際に使用したグリッド
ステンレス製
厚さ
0.9mm
穴の口径
3mm
グリッド
スラスタ
アクセル電圧
図 2.1.9 加速方式 概要図
2.1.2
イオン生成コスト、推進剤利用効率について
(1)イオン生成コスト
電気推進特有の性能パラメータの一つとして、イオン生成コストがある。
これはイオンビーム中のイオン1個を生成するのに費やされるエネルギー(eV)
で、
Pµ -wave
イオン生成コスト:
C=
Ib
で表わされる。ここでは、マイクロ波電力/イオンビーム電流とする。
イオン生成コストが小さければそれだけ電力消費が抑えられ高性能ということが
できる。
(2)推進剤利用効率
推進剤利用効率は、推進剤がイオンビームに変換された率を表すパラメータで、
イオンビーム電流を推進剤である Xe 原子の等価電流換算値(全て1価電離したも
のと仮定する)で割った値で
推進剤利用効率: η u
= Ib
m
となる。
推進剤利用効率が高いほど推進剤の消費を抑えることができ高性能ということが
できる。
2.1.3 実験装置
実験装置の構成は次のようになっている。
(1) 真空装置
(2) マイクロ波電源
(3) 推進剤供給系
(4) 加速用電源
図 2.1.10
実験装置全体図
(1)真空装置
実験を行なう真空チャンバーは長さ 70cm、直径 18cm の T 字型ガラスチャンバー
を使用する。真空引きはロータリーポンプで粗引きを行い、油拡散ポンプで真空
に引いている。真空度の測定は粗引き時にはピラニ真空計を用い、高真空時には
電離真空計で測定を行なう。表 1.1 に使用機材を示す。
表 2.1.1
真空装置
使用機材表
社名
型名・型番
ロータリーポンプ
TOKUDA
DRP−360YⅡ
油拡散ポンプ
芝浦エレテック
71-3343
ピラニ真空計
OKANO WORKS
AVP202N12
電離真空計
(株)ユニテック
IG-8
(2)マイクロ波電源
使用するマイクロ波の周波数は 1.5GHz である。オシレータから発振されたマ
イクロ波はマイクロ波パワーアンプで増幅される。方向性結合器を用いて、
マイクロ波の入射波と反射波の一部を伝送路より取り出しパワーセンサ及びパワーモニタで
測定を行う。マイクロ波電源の写真を図 1.11 に、使用機材を表 1.2
に示す。
図 2.1.11 マイクロ波電源(下段はパワーメータ)
表 2.1.2 マイクロ波電源
使用機材表
社名
型名・型番
オシレータ
村田製作所
06432
方向性結合器
mac
799001 C350330
パワーメータ
ANRITSU
CORP
SN6100001297
パワーセンサ
ANRITSU
CORP
SN6100004745
マイクロ波アンプ
ミリコム
technology
(3)推進剤供給系
スラスタへの Xe 流量をコントロールする装置にマスフローコントローラーがある。これは
Xe のボンベとスラスタとの中間にあり 0ccm から 1ccm まで任意に流量をコントロールでき
る。図 2.1.12 にマスフローコントローラーの写真を示す。
図 2.1.12 マスフローコントローラー
(4)加速用電源
グリッドに電圧をかける加速用電源には、高砂製作所の GP0350−05
(定格
0∼350V
0.5A)を使用している。(図 2.1.13)
図 2.1.13 加速用電源 GP030-05
2.1.4 実験方法
実験方法は、グリッドに負の電圧を与えイオンビームの引出しを行ないイオンビーム電流
の測定を行なう。イオンビーム電流の測定はグリッドにイオンコレクタの役割を与えグリッ
ドに流れる電流の測定を行なう。図 2.1.14 に概要図を示す。
これをスラスタのタイプ、Xe の流量、マイクロ波電力などのパラメータを変えて実験を行
なう。
スラスタ
グリッド
マイクロ波
プラズマ
アクセル電源
V
ビーム電流
測定
図 2.1.14 実験方法
概要図
2.1.5 実験結果
スラスタタイプ(大)
、
(中)
、
(小)それぞれのタイプについて Xe の流量を変えてイオンビ
ーム電流の測定を行った結果、図 2.1.15 にそれぞれマイクロ波電力 10W、5W 時の Ib−Xe
グラフを示す。
次にイオンビーム電流の値からイオン生成コスト及び推進剤利用効率の算出を行った。図
2.1.16 にイオン生成コストのグラフを、図 2.1.17 に推進剤利用効率のグラフを示す。
マイクロ波電力5W
25
20
Ib[m]A
スラスタタイプ
15
小5W
中5W
10
大5W
5
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
Xe流量[sccm]
マイクロ波電力10W
25
Ib[mA]
20
15
小10W
中10w
10
大10W
図 2.1.15 Ib−Xe グラフ
マイクロ波電力5W
イオン生成コスト[eV]
1200
1000
800
小5W
中5W
600
大5W
400
200
0
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
Xe流量[sccm]
図 2.1.14 ビーム電流 Ib−Xe グラフ
マイクロ波電力 10W
1200
イオン生成コスト[eV]
」
1000
800
小10W
中10w
600
大10W
400
200
0
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
Xe流量[sccm]
図 2.1.16 イオン生成コスト
マイクロ波電力 5W
1
推進剤利用効率
0.8
0.6
小5W
中5W
大5W
0.4
0.2
0
0
0.1
0.2
0.3 0.4 0.5
Xe流量[sccm]
0.6
0.7
0.8
マイクロ波電力 10W
1.2
推進剤利用効率
1
0.8
小10W
中10w
大10W
0.6
0.4
0.2
0
0
0.1
0.2
0.3 0.4 0.5
Xe流量[sccm]
0.6
0.7
0.8
図 2.1.17 推進剤利用効率
スラスタタイプ(大)(中)
(小)のイオン生成コストと推進剤利用効率について比較を行な
う。イオン生成コストについては Xe の流量が 0.3sccm の条件での比較を行なった。0.3sccm
としたのは本研究では小型衛星搭載用の電気推進の開発を行なっているので推進剤流量がよ
り低い流量での作動を狙ったものである。生成コストはマイクロ波スラスタ(大)が 1013[eV]、
(中)が 1102[eV],(小)が 639[eV]となった。Xe0.3sccm ではタイプ(小)がもっとも低い
値が得られた次に、5W については、タイプ(大)、(中)では推進剤が 0.4sccm 以下の低い状態
ではではプラズマを維持することが出来なかった。
(小)は 0.3sccm で生成コストは 523[eV]
となった。推進剤利用効率の比較ではマイクロ波電力 5W 時において(大)では 0.24∼0.32、
(中)は 0.23∼0.30、(小)は 0.44∼0.49 となった。
マイクロ波電力 10W 時では、(大)が 0.39∼0.49、(中)0.42∼0.52,(小)0.72∼1.14 とい
う値が得られた。タイプ(小)、10W、0.3sccm の条件では 0.72 となっている。これは加速電
圧が 100V で固定と加速電圧が不充分と考えられるため低い推進剤利用効率になったと思わ
れる。マイクロ波電力 10W、5W のどちらの場合もタイプ(小)のスラスタが、
(大)(中)
よりも高い推進剤利用効率を得ることが出来た。また、タイプ(小)の測定時に推進剤利用
効率が 1.14 と「1」を超える値が求められた、これはビーム電流検出では一価イオンと二価
イオンの和を測定しているので、すべてのビーム電流が一価イオンと仮定して計算を行なっ
ているためにスラスタ(小)の測定時に 2 価イオンが放出されたものだと考えられる。
以上の結果よりイオン生成コスト、推進剤利用効率のパラメータから見てスラスタの形状
は開口径 17mm のスラスタタイプ(小)が有利であることがわかった。
2.2 マイクロ波エンジン(EM モデル)の推進効率の評価
2.2.1 マイクロ波エンジン EM モデル
EM モデル(Engineering Model)とは実際に使用している部品等の品質、信頼性
を除いてほぼ宇宙に打ち上げるフライトモデルと同じ仕様を持つ評価用モデルの
事を指す。我々はマイクロ波エンジンの形状パラメータ(放電室形状、アンテナ
形状)、Xe 流量等を基に地上での技術的確証、性能解析を行う事を目的として、
マイクロ波エンジン EM モデルの製作及び実験を行った。
EM モデルは、スラスタヘッドの開口径がφ17mm のものと、その開口部にφ
10mm の穴を空け、絶縁したアルミ板を着け開口径を絞ったスラスタの 2 種類を
用意した。開口径φ17mm のスラスタをタイプ A、開口径φ10mm のスラスタを
タイプ B とする。図 2.2.1 にφ17mm の EM モデルの写真を、図 2.2.2 に開口径
10mm の絶縁したアルミ板の写真を示す。
図 2.2.1 マイクロ波エンジン EM モデル
図 2.2.2 開口径 10mm
絶縁アルミ板
スラスタヘッド
○
加速方法
EM モデルではイオンビーム加速にグリッドを用いずに、プラズマの下流に置
かれた中和器とスラスタ本体に与える加速電圧との電位勾配により加速をおこな
う。図 2.2.2 に加速方法の概要図を示す。
イオンビーム
マイクロ波
e
推進剤 Xe
e
e
e e
e
電子
e
カソード/中和器
アノード/スラスタ
図 2.2.3 EM 加速方法
概要図
中和器はフィラメントにタングステンを使い、電流を流しフィラメントを加熱
することで電子を放出しスラスタ本体の中和を行う。これはスラスタが正イオン
を放出し続けることによりスラスタ本体が負に帯電してしまいイオンビームの逆
流を起こしてしまう事を防ぐものである。スラスタ本体をアノード、中和器をカ
ソードとして、プラズマの下流に置いた中和器から放出する電子により空間的な
電位を下げ、正電位の本体加速電圧との電位勾配を作ることにより正イオンの加
速をおこなう。
2.2.2 実験装置
EM モデルのビーム加速実験装置の概要図を図 2.2.4 に示す。
マイクロ波
発振器
ラインストレッチャー
アイソレータ
方向性結合器
真空チャンバー
パワーセンサ
DC ブロック
マイクロ波
(1.5GHz)
ガス流量
コントローラー
中和器
点火器
図 2.2.4 実験装置
概要図
点火器・・・トリアタングステン(φ0.27mm)を使用。
中和器・・・3%レニウムタングステン(φ0.05mm)を使用。
真空装置
・・・・・・
マイクロ波電源 ・・・・・・
推進剤供給系
・・・・・・
電源系
2.1.3 の実験装置と同じ
2.1.3 の実験装置と同じ
2.1.3 の実験装置と同じ
電源は、スラスタ本体加速電源、中和器電源、コレクタバイアス電源で構成さ
れている。
加速電源には、高砂製作所 GP0350-05(定格 0∼350V 0.5A),・・・・・・図 2.2.5
中和器電源は、菊水電子工業
PAL35-10(定格 0∼35V 10A)・・・図 2.2.6
コレクタバイアス電源は、高砂製作所 GP500-1R (定格 0∼500V 1A)・・・図 2.2.7
を使用している
図 2.2.5 加速電源 GP0350-05
図 2.2.6 中和器電源 PAL35-10
図 2.2.7 コレクタバイアス電源
GP500-1R
2.2.3 実験方法
本実験では、エンジンヘッドの性能を測定することを目的としているため点火
装置はエンジン開口部の下流に置いて実験を行なった。手順としては点火装置に
電流を流し熱電子を放出させスラスタとの間で放電を起こしプラズマを生成した
後マイクロ波を投入し ECR で維持した後、中和器を作動させ、スラスタ本体に正
の電圧を与えイオンビームの加速を行なう。イオンビームの測定には、エンジン
下流に配置した銅板をイオンコレクタとして使用した。イオンコレクタである銅
板には負のバイアス電圧を与えてイオンを収集、測定を行なうものであり、イオ
ンコレクタに流れる電流を測定することでイオンビーム電流の値が得られる。表
2.2.1 に測定の際のパラメータを示す。図 2.2.8 にイオンコレクタの写真を示す。
イオンコレクタの周囲にメッシュ状のアルミを取り付けたのはスラスタからのビ
ームが拡散しているためより多くの電流を測定するためである。図 2.2.9 に実験方
法概要図を示す。
表 2.2.1 イオンビーム測定パラメータ
電圧及び電流
スラスタ本体
0∼300V
コレクタバイアス電圧
−50V
中和器印加電圧及び電流
I=4A、V=1V
点火器印加電圧及び電流
バイアス 100V、6A
図 2.2.8 イオンコレクタ
イオンコレクタ
スラスタ
マイクロ波
プラズマ
中和器
加速電源
コレクタ
バイアス電源
中和器電源
V
ビーム電流
検出
図 2.2.9 実験方法概要図
2.2.4 実験結果
スラスタ開口径が 17mm のタイプ A と、開口径を 10mm に絞ったタイプ B に
ついてビーム電流測定を行なった。タイプ A のスラスタの動作条件はマイクロ波
電力が 5W、Xe 流量 0.5sccm、タイプ B はマイクロ波電力 3W、Xe 流量 0.3sccm
と固定し、加速電圧の上昇によるビーム電流の変化を測定した。図 2.2.10 にビー
ム電流測定結果のグラフを示す。得られたビーム電流からタイプ A、タイプ B そ
れぞれのイオン生成コスト、推進剤利用効率を求めた。図 2.2.11 にイオン生成コ
ストのグラフ、図 2.2.12 に推進剤利用効率のグラフを示す。
1400
1200
イオン生成コスト [eV]
1000
タイプA
μ波 5W
Xe
0.5sccm
800
タイプB
μ波 3W
Xe
0.3sccm
600
400
200
0
0
50
100
図 2.2.10
150
加速電圧 Vsc[V]
200
ビーム電流測定グラフ
250
300
1400
1200
イオン生成コスト [eV]
1000
タイプA
μ波 5W
Xe
0.5sccm
800
タイプB
μ波 3W
Xe
0.3sccm
600
400
200
0
0
50
100
150
加速電圧 Vsc[V]
200
250
300
図 2.2.11 イオン生成コストグラフ
1
0.9
0.8
推進剤利用効率
0.7
タイプA
μ波 5W
Xe
0.5sccm
0.6
0.5
タイプB
μ波 3W
Xe
0.3sccm
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
50
100
150
200
加速電圧 Vsc[V]
図 2.2.12
250
300
推進剤利用効率グラフ
タイプ A のスラスタでは、加速電圧 178V 時でイオン生成コスト 149.1[eV],推
進剤利用効率 0.93 となった。タイプ B のスラスタでは、加速電圧 300V 時でイオ
ン生成コスト 200[eV]、推進剤利用効率 0.70 が得られた。ここで表 2.2.2 に示す
パラメータを仮定して比推力 Isp 及び推力 F の算出をおこなう。図 2.2.13 に表
2.2.2 のパラメータを用いて比推力を求めたグラフを、図 2.2.14 に同じく推力を求
めたグラフを示す。
表 2.2.2 仮パラメータ
パラメータ
タイプ A タイプ B
マイクロ波電力
5W
3W
中和器電力
2W
2W
その他電力
1W
1W
マイクロ波アンプ効率
0.3
0.3
推進剤流量
イオンビーム電流
0.5sccm
0.3sccm
33mA
15mA
推進剤利用効率
0.9
0.7
加速効率
0.7
0.5
ビーム発散損
0.7
0.7
1400
1200
タイプA
μ波 5W
Xe
0.5sccm
比推力 Isp[s]
1000
800
タイプB
μ波 3W
Xe
0.;3sccm
600
400
200
0
0
0.7
50
100
150
加速電圧 Vsc[V]
図 2.2.13
200
250
300
比推力グラフ
0.6
推力 [mN]
0.5
0.4
タイプA
μ波 5W
Xe
0.5sccm
0.3
タイプB
μ波 3W
Xe 3sccm
図 2.2.14
推力グラフ
3.マイクロ波エンジンシステムの開発
3.1
システムの全体構成
マイクロ波エンジンのシステム・ブロック図を下に示す。
ヒータ電源1
Max、5W
半導体リレー
切替
+5V
+12V
保護回路
点火器 ×4
加速電源
330V、30mA
ヒーター電流1
ヒーター電流2
中和器電流
加速電圧
加速電流
μ波入射電力
μ波反射電力
タンク温度
μ波アンプ温度
スラスタ温度
切替
ON/OFF
推薬供給系
CPU
μ波
アンプ
Xe
タンク
ON/OFF
ヒータ電源2
Max、5W
中和器
×8
半導体リレー
切替
衛星とのインターフェイス
図3.1.1 エンジンシステム ブロック図
保護回路:異常な電流が流れるなどしたときに、回路が故障するのを防ぐ。
ヒータ電源1:点火器を駆動させる電源。
ヒータ電源2:中和器を駆動させる電源。
推薬供給系:推薬の流量をコントロールする。
マイクロ波アンプ:1.5GHzのマイクロ波を発振する。
加速電源:ヘッドにプラスの電圧を印加する事でイオンビームを加速する。
Xeタンク:Xeを貯蔵する。
半導体リレー:点火器及び中和器が故障した場合冗長系に換えるためのリレー。
中和器:イオンビームに電位勾配を与える。
点火器:プラズマを点火する際に使用。
CPU:各装置をモニターし制御する。
3.2 エンジンヘッドの設計
マイクロ波エンジン EM モデルの測定データを基にエンジンヘッド PM モデル
の設計を行なった。図 3.2.1 にエンジンヘッドの立体図を示す。図 3.2.2∼3.2.6 に
エンジンヘッド PM モデルの設計図を示す。エンジンヘッド本体の材質はステン
レス材の中の SUS430 とする。磁場の形成に使用した磁石は EM モデルと同じく
Sm-Co とする。推進剤である Xe は放電室内下方に取り付けたプレナム層から放
電室内に一様に流れ込むようになっている。アンテナはビーム加速によるスパッ
タなどの対策からカーマン社製のアンテナを使用する。エンジンヘッド内部の絶
縁壁はマシナブルセラミックのマコールとする。中和器は冗長系を含めて8基と
する。中和器を支持するためにエンジンヘッドの開口部はマコールで製作する。
放電室内部の絶縁壁と中和器支持は一体として製作した。点火器は冗長系を含め
4基とし、放電室内に配置する。
中和器支持(マコール)
放電室
中和器×8基
図 3.2.1
エンジンヘッド立体
図 3.1.2 スラスタヘッド組立て図面
図 4.2.3 放電室チャンバ図面
図 4.2.4 プレナムチャンバ図面
図 4.2.5 中和器支持マコール図面
図 4.2.6 中和器基板図面
図 4.2.7 スペーサ図面
3.3 中和器及び点火器の最適設計
3.3.1
中和器及び点火器について
中和器及び点火器の開発は当初 TV などに使用されている電子銃を応用しようと
したが、分解や組み付けなど扱いが困難なため採用されなかった。そこで、電子
が放出されやすい物質を探すべく実験が進められた。
中和器及び点火器の材質・形状選定は材質そのものの他、長さ、形状、添加物、
距離などのパラメータについての実測より得られたデータから決定された。
実験装置は図.3.3.1 のようなものを使用した。
銅パイプ
Xe
ヒーター
(点火器・中和器)
プラズマ
バイアス電圧
ヒーター電圧
ヒーター電流
A
図.3.3.1 グロー放電実験装置
まず、材質を選定することを目的に実験を進めた。使用した材質を以下に示す。
・モリブデンφ0.050mm
・モリブデンφ0.10mm
・モリブデンφ0.25mm
・2%トリア・タングステンφ0.05mm
・2%トリア・タングステンφ0.27mm
・3%レニウム・タングステンφ0.05mm
・3%レニウム・タングステンφ0.10mm
・5%レニウム・タングステンφ0.10mm
・25%レニウム・タングステンφ0.05mm
・25%レニウム・タングステンφ0.0762mm
・25%レニウム・タングステンφ0.10mm
・25%レニウム・タングステンφ0.15mm
・25%レニウム・タングステンφ0.20mm
これらの材質を選定試験に持ち込んだ。しかし、上記の材質を一度に持ち込ん
だ訳ではなく、材質の選定過程で増えた物もあることを付け加えておく。
まず、図1の実験装置を用いて材質別の点火器特性を見る試験を行う。試験方
法は、Xe流量とバイアス電圧は固定し、点火器の電圧を徐々に上げていく。プ
ラズマを目視で確認したら、その時点での値を読む。その結果をグラフに示す。
グラフは、銅パイプに印加されたバイアス電圧とヒーターで消費された電力、及
びヒーターに入力された電流値で表す。
3%レニウム・タングステンφ0.05mm
Re3% φ0.05mm Xe:0.5
0.7
0.5
15
0.4
10
0.3
0.2
5
電流 [A]
0.6
20
電力
電流
電流 [A]
電力 [W]
25
電力
電流
0.1
0
0
25
30
35 40 45 50
バイアス電圧 [V]
60
Re3% φ0.05 Xe:1
0.45
0.4
0.35
0.3
0.25
0.2
0.15
0.1
0.05
0
電力 [W]
14
12
10
8
6
4
2
0
20
20
23 25 30 40 50
バイアス電圧 [V]
60
3%レニウム・タングステンφ0.10mm
Re3% φ0.1 Xe:1
1.5
150
100
250
50
200
0
150
100
Re3% φ0.1
80
100 100 100 150
バイアス電圧 [V]
1
200
50
0
40
50
50
50
50
60
70
80
100
100
150
200
電力 [W] 電力 [W]
200
バイアス電圧 [V]
1.4
0.5
1.2
10
0.8
0.6
0.4
0.2
0
電流 [A] 電流 [A]
2
250
電力
電流
電力
電流
25%レニウム・タングステンφ0.10mm
0.5
40
0.4
30
0.3
20
0.2
10
0.1
電流 [A]
50
電力
電流
電流 [A]
電力 [W]
Re25% φ0.1 Xe:1
電力
電流
0
0
60 60 70 70 80 80 90 90 100 100 100
バイアス電圧 [V]
Re25% φ0.1mm Xe:1
電力 [W]
120
1.02
1
0.98
0.96
0.94
0.92
0.9
0.88
0.86
0.84
100
80
60
40
20
10
15
20
30
30
30
30
40
40
50
100
0
バイアス電圧 [V]
60
0.6
50
0.5
40
0.4
30
0.3
20
0.2
10
0.1
0
0
100
100
110
バイアス電圧 [V]
110
電流 [A]
電力 [W]
タングステン φ0.05mm Xe:1
電力
電流
モリブデンφ0.10mm
入力電力 [W]
モリブデン φ 0.1 Xe:1
1.4
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
1.2
1
0.8
電力
電流
0.6
0.4
0.2
0
100
1 00
150
1 50
150
200
2 00
バ イアス電 圧 [V]
バイアス電圧に対して、点火器電流及び消費電流が共に低い点が電力的に点火器とし
て優秀であるといえる。
上記の点火動作点表を見ると、レニウム・タングステンとトリア・タングステン
を使用した場合の作動電圧が比較的低く、良い点火特性を示している。モリブデ
ン消費電力が多く線その物の耐久性はあるが点火する可能性が低いことから点火
器への利用には向かない。
レニウム・タングステンの点火動作特性が良好という結果が得られたため、今
度はレニウムの添加されている量を変えることにした。レニウムの量が3%、2
5%のタングステンの特性は前項にて記載されているので、以下には5%のもの
を示す。
5%レニウム・タングステンφ0.10mm
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
50
40
30
20
10
0
50
50
60
60
70
70
80
80
90
90
100
100
電力 [W]
60
バイアス電圧 [V]
電流 [A]
Re5% φ0.1mm Xe:1
電力
電流
太さが0.10mmのレニウム・タングステンでは、消費電力がレニウム25%
のものがもっとも少なく、25W前後を示している。レニウム5%のタングステ
ンがそれに次ぐ40W前後。レニウム3%のものが100W前後であった。φ0.
05mmの3%レニウム・タングステンが消費電力の平均が15W前後と非常に
良好であったが、点火時に電流を流すことによって生ずるクーロン力によってス
ラスタの磁力に引かれ線が湾曲し現象が生じた。場合によってはスラスタ本体を
傷める恐れもあるため、点火器には不向きと判断した。また、この細い線は耐久
性に乏しく、幾度もの利用に耐えられないことも付け加えておく。
結果として、レニウム・タングステン、トリア・タングステン、モリブデンの
3種類の中ではレニウム・タングステンが最も点火特性が良く、中でもレニウム
を25%添加したものの性能が良かった。よって、25%レニウム・タングステ
ンを点火器に採用することを決定した。
その後、φ0.10のレニウム・タングステンの耐久性が予想より低く、更に
太くする必要が生まれ正式に採用されたのはφ0.20の25%レニウム・タン
グステンである。
点火器及び中和器の材質―付録
3%レニウム・タングステンφ0.05mm
Xe[ccm]
バイアス[V]
ヒータ[V]
ヒータ[A]
電力[W]
1
20
3.5
0.38
8.93
1
20
3.2
0.4
9.28
1
23
2
0.2
5
1
25
3.5
0.21
5.985
1
30
2
0.25
8
1
40
1.6
0.2
8.32
1
50
1.5
0.2
10.3
1
60
1
0.2
12.2
Xe[ccm]
バイアス[V]
ヒータ[V]
ヒータ[A]
電力[W]
0.5
25
8
0.6
19.8
0.5
30
6
0.5
18
0.5
35
4
0.39
15.21
0.5
40
2.5
0.3
12.75
0.5
45
2
0.25
11.75
0.5
50
2.8
0.25
13.2
0.5
60
2
0.22
13.64
3%レニウム・タングステンφ0.10mm
Xe[ccm]
バイアス[V]
ヒータ[V]
ヒータ[A]
電力[W]
1
80
8
1.5
89.5
1
100
7
1.2
108.2
1
100
9
1.6
110.6
1
100
10
1.75
111.75
1
150
6
1.4
157.4
1
200
2
0.6
202.6
Xe[ccm]
バイアス[V]
ヒータ[V]
ヒータ[A]
電力[W]
1
40
16
1.2
57.2
1
50
11
1
62
1
50
5
0.6
55.6
1
50
3
0.4
53.4
1
50
4
0.5
54.5
1
60
3
0.4
63.4
1
70
3
0.4
73.4
1
80
3
0.4
83.4
1
100
3
0.5
103.5
1
100
3
0.4
103.4
1
150
3
0.4
153.4
1
200
3
0.4
203.4
25%レニウム・タングステンφ0.10mm
Xe[ccm]
バイアス[V]
ヒータ[V]
ヒータ[A]
電力[W]
1
10
12
1
22
1
15
11
1
26
1
20
11
1
31
1
30
10
1
40
1
30
9
1
39
1
30
8
1
38
1
30
8
1
38
1
40
9
1
49
1
40
9.5
1
49.5
1
50
9
1
59
1
100
8.5
0.9
97.65
Xe[ccm]
バイアス[V]
ヒータ[V]
ヒータ[A]
電力[W]
1
60
4
0.288
18.432
1
60
4
0.284
18.176
1
70
4
0.274
20.276
1
70
4
0.279
20.646
1
80
4
0.271
22.764
1
80
3.9
0.271
22.7369
1
90
4
0.27
25.38
1
90
3.8
0.26
24.388
1
100
4
0.258
26.832
1
100
3.8
0.259
26.8842
1
100
8
0.4
43.2
2%トリア・タングステンφ0.05mm
Xe[ccm]
バイアス[V]
ヒータ[V]
ヒータ[A]
電力[W]
1
100
12
0.48
53.76
1
100
8
0.414
44.712
1
110
7
0.345
40.365
1
110
7
0.348
40.716
モリブデンφ0.10mm
Xe[ccm]
バイアス[V]
ヒータ[V]
ヒータ[A]
電力[W]
1
100
3.5
0.8
82.8
1
100
6
1.19
126.14
1
150
4.2
0.956
147.4152 カーボネイトが無くなる
1
150
4
0.899
138.446
1
150
4
0.886
136.444
1
200
3.6
0.838
170.6168
1
200
4
0.928
189.312
5%レニウム・タングステンφ0.10mm
Xe[ccm]
バイアス[V]
ヒータ[V]
ヒータ[A]
電力[W]
1
50
4
0.6
32.4
1
50
5
0.6
33
1
60
3
0.4
25.2
1
60
3
0.402
25.326
1
70
3
0.451
32.923
1
70
3
0.45
32.85
1
80
3
0.466
38.678
1
80
3
0.458
38.014
1
90
3
0.466
43.338
1
90
3
0.467
43.431
1
100
3
0.466
47.998
1
100
3
0.45
46.35
4.マイクロ波エンジン PM の品質認定試験
4.1 マイクロ波エンジン PM の推進効率の評価
4.1.1 マイクロ波エンジン PM モデル
EM モデルで行った試験及び性能解析を基に、再設計を行いフライトモデルと全
く同じ仕様の PM(プロトタイプモデル)を製作、性能評価を行なう。この PM モデル
では部品も実機と同様のものを使用し、実際に過酷な宇宙環境に耐えることが可
能であることを実証するために耐久試験、振動試験等の試験を行なう。この試験
で PM モデルに不具合の無い事を確認してから実機であるフライトモデルを製作す
る。図 4.1.1 に PM モデルのスラスタヘッドを示す。
10mm
図 4.1.1
PM スラスタヘッド
4.1.2 実験装置
実験装置及び構成は EM モデルの装置と同じである。
4.1.3 実験方法
実験方法は、EM モデルと同様にプラズマの下流にイオンコレクタを置きイオン
ビーム加速を行ない、ビーム電流を測定する。得られたビーム電流より、イオン生
成コスト、推進剤利用効率、比推力、推力の算出を行なう。
実験の手順としては、マイクロ波スラスタヘッドに加速電圧を印加し、その状態でXeガ
スをプレナムチャンバーに送る。Xeガスが放電室に充満させるため数秒間待ち、その後
点火器を作動させて、放電室内にプラズマを生成させる。プラズマの生成が確認できた
ら、徐々に加速電圧を上げてゆき、その時のイオンコレクタに流れる電流値はデータ記
録装置を用いて記録する。
イオンコレクタ
スラスタ
マイクロ波
プラズマ
中和器
コレクタ
バイアス電源
中和器電源
加速電源
V
図 4.1.2
4.1.4
ビーム電流
検出
PM ビーム測定実験概要図
実験結果
実験ではマイクロ波電力を 3W に固定し、Xe 流量及び加速電圧を変化させてビー
ム電流を測定した。図 4.1.3 に測定したイオンビーム電流のグラフを示す。
得られたビーム電流の値からイオン生成コスト、推進剤利用効率を算出した。
図 4.1.4 にイオン生成コストのグラフを、図 4.1.5 に推進剤利用効率のグラフを示す。
図 4.1.6 に比推力のグラフ、図 4.1.7 に推力のグラフを示す。
20
18
イオンビーム電流 Ib[mA]
16
14
12
Xe
Xe
Xe
Xe
10
8
0.30
0.35
0.40
0.45
6
4
2
0
140
160
180
200
加速電圧 [Vsc]
図 4.1.3
220
イオンビーム電流測定
450
400
イオン生成コスト [eV]
350
300
250
200
150
100
50
Xe
Xe
Xe
Xe
0.30
0.35
0.40
0.45
図 4.1.4
イオン生成コスト
1
0.9
0.8
推進剤利用効率
0.7
0.6
Xe
Xe
Xe
Xe
0.5
0.4
0.30
0.35
0.40
0.45
0.3
0.2
0.1
0
140
160
180
200
加速電圧 Vsc[V]
図 4.1.5
220
推進剤利用効率
1400
1200
比推力 Isp[s]
1000
Xe
Xe
Xe
Xe
800
600
400
200
0
140
150
160
170
180
190
200
加速電圧 Vsc[V]
210
220
230
0.30
0.35
0.40
0.45
図 4.1.6
比推力
0.4
0.35
0.3
推力 F[mN]
0.25
Xe
Xe
Xe
Xe
0.2
0.30
0.35
0.40
0.45
0.15
0.1
0.05
0
140
150
160
170
180
190
200
加速電圧 Vsc[V]
図 4.1.7
210
220
230
推力
本研究では、PMマイクロ波スラスタの製作を製作し、ビーム電流の測定段階で
終了したため、詳細な解析は行っていないが、PMマイクロ波スラスタでは、E
M型マイクロ波スラスタと比較し若干の性能の低下が見られた。今回は、詳細な
解析を行っていないがこのような結果になったのは、EMと比較してスラスタ開
口部の形状が変わったためプラズマの状態が変化したり、マイクロ波スラスタの
プレナムチャンバーの構造上、Xeガスに漏れが生じているためと考えられる。
このことは、Xeガス流量を0.3sccmから0.4sccmにガス流量を上
げるとEMで測定した0.3sccm時のビーム電流値とほぼ同じになるのでこ
のようなことが考えられる。
4.2
4.2.1
耐久試験
耐久試験目的
電気推進は宇宙空間で長時間駆動する事が命題である。そのため、今回開発す
るスラスタも長時間の運用に耐える必要がある。耐久試験では、宇宙空間を模し
た真空チャンバー内で長時間の運転する事で、部品の消耗やスパッタリングによ
る汚れの発生状況がどの程度現れるのかを調査し、部品寿命などスラスタの構造
に対する評価を行うことが目的である。また点火・再点火シーケンスの確立も同
時に行う。
4.2.2
耐久試験概要
耐久試験であるが、試験に用いるのは先の振動試験をパスした個体を用いる。
耐久試験装置は、基本的に点火・再点火自動で行い無人での運用が可能となる様
設計製作されている。トラブルが生じた時、スラスタの場合には再点火をするよ
うにし、実験装置自体がトラブルの場合にはシステムがダウンするようになって
いる。どちらの場合にもその後のトラブルシューティングが円滑に進むようトラ
ブルを起こした時点でのパラメータを記録するようになっている。この装置を用
い4000時間の耐久試験を行う。
耐久試験装置全貌
4.2.3
耐久試験システム構成
耐久試験のシステムは大別して、
・真空チャンバー内を真空に保つ真空維持部
・スラスタを稼動させるスラスタ運転部
・各センサーからのデータを監視・記録するピックアップ部、
・事故等の緊急時に運転を停止させるエマージェンシー部
より成り立っている。
真空維持部は長さ70cm、直径18cm の T 字型ガラスチャンバーを使用してい
る。ガラスチャンバー内は排気速度2000l/s の油拡散ポンプと360l/s のロ
ータリーポンプにより真空に引いている。到達真空度は1.5×10-5Torrで
ある。
真空チャンバー
スラスタ運転部は加速電源、中和器電源、マイクロ波発進器及びアンプより成
り立つ。加速電源は300Vまで、中和器電源は1∼2V−2.5A前後の出力が
可能なものを使用する。マイクロ波アンプは1485MHz−3W出力ものであ
る。尚これらは長時間の運用で熱を持つことが考えられるので、ファンやペルチ
ェ素子などで強制的に冷却している。
マイクロ波発進器及びアンプ
ピックアップ部は、冷却水給水側、冷却水排水側、マイクロ波入射電圧、マイ
クロ波反射電圧、マイクロ波アンプ温度、加速電源電圧、加速電源電流、中和器
電流、コレクタ電流、コレクタバイアス電圧、真空度に関して監視を行う。LM
35などの各センサーからの電圧はパソコンのA/D変換ボードに送られ、デー
タとして処理される。また、微弱な信号に関してはアンプで増幅してから変換ボ
耐久試験用
チャンバー
5∼12V
Lowpassフィルタ
&AMP
温度
センサ
AC200V
BOX
真空計
A/D変換ボード
緊急停止用
リレーBOX
記録
制御用リレー
電源スイッチ
DOS/V
AC100V
方向性結合器
反射
μ波アンプ
各信号
出力
入射
制御用リレー
8ch
図1 装置回路構成
ードに入力するようにしている。プログラムは入力された情報を1秒毎にチェッ
クし、これにより収集したデータは1分毎に記録として残すようになっている。
しかし装置に異常が発生し停止した場合はこの限りに在らず、その時点でのパラ
メータを記録しトラブルシューティングを容易にするように考慮されている。ハ
ードウェア的にはスラスタに異常があった場合は再点火、真空装置に異常があっ
た場合は全システムの停止といったアクションを行う。
エマージェンシー部は試験装置から異常なパラメータが検出された場合。特に
真空装置に異常が発生した場合は、装置の運転を即座に停止する機能を持つ。
4.2.4 耐久試験各種回路図
耐久試験装置に使用している各種回路をここで紹介する。
AC200
(AC100V)
AC200
(AC100V)
( )内はch2の場合
通常時 回路は閉じている
DC12V
DC5V(signal)
緊急停止用リレーBOX
5倍アンプ
12k
+
0.1μF
Output
−
R
Signal in
+
C
3K
10倍、100倍アンプ
91k
※10倍のときは10kΩ
+
10μF
0.1μF
Output
−
R
Signal in
+
C
1k
※
Amp
フィルタ回路
コネクタ接続図
19
アンプ側
1
37
5倍 Amp
10倍
20
1∼8 シールド線
18∼27 シールド線
(+)白
(−)黒
10
(+)白
シールド線
Lowpassフィルタ&アンプBOX(1∼8ch)
10μF
A/D変換ボード側
7
6
5
4
3 10 2 9 1 8 0
ch1∼8 5倍アンプ 1∼8配線
ch9
10倍アンプ
ch10 100倍アンプ
4.2.5
耐久試験装置・使用部品一覧
部品名
メーカー名
型番・形式
個数
ロータリーポンプ
TOKUDA
DRP360
1
ディフュージョンポンプ
TOKUDA
ESV8
1
フレキシブルホース
2
リークポート
3
真空ゲートバルブ
TOKUDA
VH−2L
2
薄型手動真空ゲートバルブ
横浜工業
2001VGHY−Ⅰ型
1
電離真空計
ユニテック
1G−8
1
ピラニ真空計
OKANO.WORKS
AVP202N12
1
ガラス真空チャンバー
岩城硝子
マスフローコントローラ
STEC
PAC−S5
1
DC 電源
TAKASAGO
GP0350−05
1
DC 電源
KENWOOD
PR18−3A
1
DC 電源
HP
6824A
1
DC 電源
KIKUSUI
PMC35−1
1
1
5v 電源
2
8ch リレー回路
1
点火器・中和器用リレー回路
1
AC100V コントロールリレー回路
1
非常時システム停止リレー回路
1
1485MHz マイクロ波アンプ
1
電圧測定用分圧回路
1
ピックアップ信号増幅回路
1
パーソナルコンピュータ
NEC
MA45L
1
ディスプレイ
SONY
15SF9
1
ガスレギュレータ
Crown
FR−ⅡS−OP
1
4.2.6
耐久試験プログラム・フローチャート
START
初期化・初期設定
自動起動フォーム起動
点火
点火の確認
3 回目か?
パラメータ異常
パラメータ異常
パラメータ異常
パラメータ異常
パラメータ異常
パラメータ異常
加速電源電流
パラメータ異常
中和器電流
パラメータ異常
コレクタ電流
パラメータ異常
コレクタバイアス電圧
パラメータ異常
ディフュージョンポンプ
真空度
パラメータ異常
1 分毎にデータを記録
4.2.7.1
耐久試験装置プログラム・メインフォーム
'プログラム起動時に実行されます
Public Sub Form_Load()
'点火システムの起動
st = 0
'タイマを停止状態にします
Timer1.Enabled = False
'タイマのインターバルを設定します(500msec)
Timer1.Interval = 1000
Left = (Screen.Width - Width) ¥ 2
Top = (Screen.Height - Height) ¥ 2
停止
syokiset
'ドライバを初期化します
DrvNo = 8
'ドライバ番号を設定します
GrpNo = 1
'グループ番号を設定します
Ret = AioOpen(hDrv, DrvNo, GrpNo)
'初期化を行いデバイスハンドルを取得します
'A/D 変換を行います
Dim i As Integer
'ソフトウェアスタート
InpMode = 4
'変換を行う順番を決定します
For i = 0 To 31
InpChNo(i) = i
Next
MsgOK.Message = &H400 + &H50
'変換完了イベントメッセージ番号
MsgERR.Message = &H400 + &H51
'例外発生イベントメッセージ番号
'配列の先頭アドレスを代入します
LpAInpMd4.InpChNo = LpWord(InpChNo(0))
'2 チャネル変換します
LpAInpMd4.Channels = 11
'外部サンプリング停止
LpAInpMd4.Scan = -1
'スキャンクロック:10us
LpAInpMd4.ScanClk = 399
'サンプリングクロック:200us
LpAInpMd4.SmpClk = 7999
'ストレートバイナリ
LpAInpMd4.DataFmt = 0
'FIFO メモリで使用
LpAInpMd4.MemBufType = 0
'割り込み要因:ハーフフル割り込み
LpAInpMd4.IntFactor = 1
Ret = AioInpBdMem(hDrv, InpMode, LpAInpMd4, MsgOK.hWnd, MsgOK.Message, MsgERR.hWnd,
MsgERR.Message)
'リターンコードが 0 ならばタイマをスタートします
If Ret = 0 Then
Timer1.Enabled = True
End If
End Sub
'変換完了イベントメッセージ
Private Sub MsgOK_MessageEcho()
'タイマを停止状態にします
Timer1.Enabled = False
Ret = AioSts(hDrv, Sts, Cnt, 0)
End Sub
'例外発生イベントメッセージ
Private Sub MsgERR_MessageEcho()
'タイマを停止状態にします
Timer1.Enabled = False
'エラー発生時のステータスを取得します
Ret = AioSts(hDrv, Sts, Cnt, 0)
Stsinf = Right("00" + Hex(Sts), 2) & "h"
End Sub
'変換を強制終了します
Private Sub Cmd_AioStop_Click()
'計測機器の停止
'タイマを停止します
Timer1.Enabled = False
Ret = AioStop(hDrv)
'ドライバの終了処理を行います
Timer1.Enabled = False
Ret = AioClose(hDrv)
'リターンコードを表示します
'プログラムを終了します
Timer1.Enabled = False 'Timer stop
Ret = AioClose(hDrv)
End
End Sub
'プログラム終了時に実行されます
Private Sub Form_Unload(Cancel As Integer)
Ret = AioClose(hDrv)
End
End Sub
'タイマイベントルーチン(データの取り込みを行います)
Private Sub Timer1_Timer()
Dim Datawrite As Integer
If st = 0 Then
AUtostart.Show
End If
'タイマイベント回数をインクリメントします
'TimCount = TimCount + 1
'メモリ中のデータ数を取得します
Ret = AioSts(hDrv, Sts, Cnt, 0)
'Display result of AioSts
'FIFO で使用しているので 0 を設定します
LpARead.ScanNo = 0
'Cnt の値からサンプリング回数を求めます
'ここでは、メモリ中のデータをすべて取り込みます
LpARead.ScanNum = Cnt / LpAInpMd4.Channels
'配列の先頭アドレスを代入します
LpARead.Buf = LpWord(InpMemBuffer(0))
Ret = AioReadBuf(hDrv, LpARead)
'TODO:ここにデータ表示、保存などのコードを追加してください
'
ここでのコードは、次の割り込みが発生する前に終了するようにしてください
'データの取得部
Volt
'データ表示部
Hyouzi
'異常検出ルーチンへ
If st = 1 Then
zyouken
End If
If ReCode = 5 Then
ReStart
End If
'データの保存
If Second(Time) = 0 Then
Datawrite = Datawrite + 1
Else
Datawrite = 0
End If
If Datawrite = 1 Then
Open "c:¥耐久試験データ¥データ.TXT" For Append As #1
Write #1, waterin, waterout, microvin, microvout, microvtemp, accv, acci, cleci,
clecv, nowdate, nowtime
Close #1
End If
End Sub
'停止ルーチン
Private Sub kinkyuStop()
outdata = 0
outb port, outdata
End Sub
Private Sub ReStart()
st = 0
ReCode = 0
ReStartNo = ReStartNo + 1
AUtostart.Show
End Sub
Private Sub Hyouzi()
'各データの表示部
waterin.Caption = Format(Volt1, "##0.#")
waterout.Caption = Format(Volt2, "##0.#")
microvin.Caption = Format(Volt3, "##0.###")
microvout.Caption = Format(Volt4, "##0.###")
microvtemp.Caption = Format(Volt5, "##0.#")
accv.Caption = Format(Volt6, "##0.###")
acci.Caption = Format(Volt7, "##0.###")
newi.Caption = Format(Volt8, "##0.###")
cleci.Caption = Format(Volt9, "##0.###")
clecv.Caption = Format(Volt10, "##0.###")
torr.Caption = Format(Volt11, "##0.###")
nowdate = Date
nowtime = Time
kinkyumes.Caption = mes
End Sub
Private Sub SaiKidou()
Timer1.Enabled = True
End Sub
4.2.7.2
耐久試験プログラム・サブルーチン群
Public Sub syokiset()
'ファイルのオープン
Open "c:¥耐久試験データ¥データ.TXT" For Output As #1
Close #1
'パラレルポートの初期設定
port = &H378
outdata = 0
outb port, outdata
'各変数の初期設定
mesno = 0
Ecord = 0
Tim2Count = 0
st2 = 0
re = 0
End Sub
Public Sub Volt()
'バイナリデータを表示します
Volt1 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(0)) * 20
'入力側冷却水温度
Volt2 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(1)) * 20
'出力側冷却水温度
Volt3 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(2))
'マイクロ波入射
Volt4 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(3))
'マイクロ波反射
Volt5 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(4)) * 20
'マイクロアンプ温度
Volt6 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(5)) * 40
'加速電源電圧
Volt7 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(6))
'加速電源電圧
Volt8 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(7))
'中和器電流
Volt9 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(8))
'コレクタ電流
Volt10 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(9)) * 10
Volt11 = BinaryToVI(-10, 10, 1, 12, InpMemBuffer(10))
End Sub
Public Sub zyouken()
'条件処理
If Volt1 > 40 Then
'入口側冷却水温度
'コレクタバイアス電圧
'真空度
Sampling
mes = "入口側の水温が異常に上昇しています。"
mesno = 1
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt2 > 40 Then
'出口側冷却水温度
mes = "出口側の水温が異常に上昇しています。"
mesno = 1
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt3 < 0.7 Then
'マイクロ波入力電圧
mes = "マイクロ波がほとんどスラスタに入っていません。"
If ReStartNo = 3 Then
mesno = 1
Else
mesno = 2
End If
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt4 > 0.9 Then
'マイクロ波反射電圧
mes = "マイクロ波が異常に反射しています。"
If ReStartNo = 3 Then
mesno = 1
Else
mesno = 2
End If
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt5 > 40 Then
'マイクロ波アンプ温度
mes = "マイクロ波アンプ本体の温度が異常です。"
If ReStartNo = 3 Then
mesno = 1
Else
mesno = 2
End If
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt6 < 80 Then
'加速電源電圧
mes = "加速電源の電圧が異常です。"
If ReStartNo = 3 Then
mesno = 1
Else
mesno = 2
End If
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt7 > 100 Then
'加速電源電流
mes = "加速電源電流値に異常があります。"
If ReStartNo = 3 Then
mesno = 1
Else
mesno = 2
End If
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt8 > 2.5 Then
'中和器電流
mes = "中和器電流に異常が発生しています。"
If ReStartNo = 3 Then
mesno = 1
Else
mesno = 2
End If
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt9 > 100 Then
'コレクタ電流
mes = "コレクタ電流に異常が発生しています。"
If ReStartNo = 3 Then
mesno = 1
Else
mesno = 2
End If
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt10 > 60 Then
'コレクタバイアス電圧
mes = "コレクタバイアス電圧に異常が発生しています。"
If ReStartNo = 3 Then
mesno = 1
Else
mesno = 2
End If
st2 = st2 + 1
handan
End If
If Volt11 > 100 Then
'真空度
mes = "真空度が低下しています。"
mesno = 1
st2 = st2 + 1
handan
End If
End Sub
Public Sub handan()
'故障モードの判断 1:真空装置の停止と各電源の停止 2:各電源の停止(再起動モード)
If mesno = 1 Then
outdata = 1
outb port, outdata
kinkyu
End If
outdata = 0
outb port, outdata
kinkyu
End Sub
Public Sub kinkyu()
'緊急時のパラメータの記録
If mesno <> Ecord Then
Ecord = mesno
Dim RetVal
Open "c:¥耐久試験データ¥データ.TXT" For Append As #1
Write #1, waterin, waterout, microvin, microvout, microvtemp, accv, acci, cleci,
clecv, nowdate, nowtime, mes
Close #1
End If
If mesno = 1 Then
'停止モード
outdata = 1
outb port, outdata
kinkyu1.Show
Beep
Else
ReCode = 5
'5の時は再起動
End If
End Sub
4.2.7.3
耐久試験プログラム・変数群
'グローバル変数の宣言
Option Explicit
Public Ret
As Long
'リターンコード
Public hDrv
As Long
'ハンドル
Public DrvNo
As Integer
'ドライバ番号
Public GrpNo
As Integer
'グループ番号
Public LpAInpMd0
As AINPMD0
'AINPMD0 構造体
Public LpAInpMd1
As AINPMD1
'AINPMD1 構造体
Public LpAInpMd2
As AINPMD2
'AINPMD2 構造体
Public LpAInpMd3
As AINPMD3
'AINPMD3 構造体
Public LpAInpMd4
As AINPMD4
'AINPMD4 構造体
Public InpMode
As Integer
'サンプリングモード
Public InpChNo(31)
As Integer
'変換の順番を格納する配列
Public LpARead
As AREAD
'AREAD 構造体
Public InpMemBuffer(132096) As Integer 'データ格納用配列
Public Sts
As Integer
'AioSts()でステータスを格納します
Public Cnt
As Long
'AioSts()でカウントを格納します
Public TimCount
As Long
'タイマ回数をカウントします
Public Stsinf
As Integer
Public ModeNo As Integer
'システム状態記録変数
Public st As Integer
'判定記録用変数
Public re As Integer
'再起動回数確認カウンタ
Public Ha As Integer
'誤判定防止カウンタ
Public ReCode As Integer
'再起動判定記録用変数
Public mesno As Integer
'メッセージ No 記録用変数
Public Ecord As Integer
'エラーコード識別用変数
Public Tim2Count As Integer
'タイマー2用カウンタ
Public Tim3Count As Integer
'タイマー3用カウンタ
Public mes As String * 50 'メッセージ記録用変数
Public name As String * 10
Public ReStartNo As Integer
Public Declare Function inpb% Lib "kio32.DLL" (ByVal port%) '指定された入力ポートか
らの1バイトの読み込み
Public Declare Function inpw% Lib "kio32.DLL" (ByVal port%) '指定された入力ポートか
らの1ワードの書き込み
Public Declare Sub outb Lib "kio32.DLL" (ByVal port%, ByVal data%) '指定された出力ポ
ートに1バイトの書き込み
Public Declare Sub outw Lib "kio32.DLL" (ByVal port%, ByVal data%) '指定された出力ポ
ートに1ワードの書き込み
Public outdata%, port%, indata%
Public Volt1 As Single
Public Volt2 As Single
Public Volt3 As Single
Public Volt4 As Single
Public Volt5 As Single
Public Volt6 As Single
Public Volt7 As Single
'各出力電圧
Public Volt8 As Single
Public Volt9 As Single
Public Volt10 As Single
Public Volt11 As Single
4.2.7.4
耐久試験プログラム・自動起動フォーム
Dim kinkyu As Integer
Dim AccOn As Integer
Dim Acc100 As Integer
Dim Acc300 As Integer
Dim Xe As Integer
Dim Microwave As Integer
Dim ignission As Integer
Dim newt As Integer
Dim PortOut As Integer
Dim TimerCount As Integer
Private Sub AUTOStartTimer_Timer()
TimerCount = TimerCount + 1
TIM.Caption = TimerCount
If TimerCount = 3 Then
outdata = 0
outb port, outdata
Check1.Value = 1
ElseIf TimerCount = 6 Then
outdata = AccOn
outb port, outdata
Check1.Value = 0
Check2.Value = 1
ElseIf TimerCount = 9 Then
outdata = AccOn + Xe
outb port, outdata
Check2.Value = 0
Check3.Value = 1
ElseIf TimerCount = 12 Then
outdata = AccOn + Xe + Microwave + ignission
outb port, outdata
Check3.Value = 0
Check4.Value = 1
ElseIf TimerCount = 15 Then
outdata = AccOn + Xe + Microwave
outb port, outdata
Check4.Value = 0
Check5.Value = 1
ElseIf TimerCount = 18 Then
outdata = AccOn + newt + Xe + Microwave + Acc100 + Acc300
outb port, outdata
Check5.Value = 0
Check6.Value = 1
ElseIf TimerCount = 21 Then
AUTOStartTimer.Enabled = False
st = 1
Unload Me
End If
End Sub
Private Sub Form_Load()
outdata = 0
kinkyu = 1
AccOn = 2
Acc100 = 4
Acc300 = 8
Xe = 16
Microwave = 32
ignission = 64
newt = 128
TimerCount = 0
'パラレルポートの初期設定
port = &H378
outdata = 0
outb port, outdata
AUTOStartTimer.Interval = 1000
AUTOStartTimer.Enabled = True
End Sub
Private Sub kinkyustop_Click()
outdata = 0
outb port, outdata
kinkyu1.Show
End Sub
4.2.8
耐久試験プログラム・インターフェイス
耐久試験プログラム・インターフェイス
耐久試験プログラムを起動すると、上の写真のようなインターフェイスが現れる。このイ
ンターフェイスで各センサーからの情報を随時モニターする事が可能である。しかし、この
インターフェイスは自動運転を行うためのもので、部品毎のテストや回路のチェックなどに
は不向きである。そのため、個々の回路を独立して操作できるインターフェイスも別に用意
した。下の写真にそれを示す。
耐久試験プログラム・インターフェイス
4.3
振動試験
4.3.1 振動試験とは
現在、地上から宇宙へ物を輸送するときはロケットやスペースシャトルで宇宙ま
で運ばなければならない。この打ち上げ時に問題になるのが、ロケットエンジン
が発生する音響振動である。この振動は、ロケットの分離機構から人工衛星を振
動させてしまう。また、ロケットが大気中を飛行時にはさらに、大気の圧力変動
が音響となって、フェアリングをとおして衛星に作用する。これらのランダム振
動は衛星構体に二次的な振動をもたらし、二次構造や搭載機器に厳しい環境を与
える恐れがある。本実験はこの状況を模擬するため、振動試験機にランダムな入
力を加えて実施した。
4.3.2 実験装置
本振動試験の動作原理であるが電磁式振動試験装置はスピーカーとアンプの組
み合わせとほぼ同じ原理を用いている。図 4.3.1 に示されているように、自動振
動制御装置で作成した信号を電力増幅器で増幅し、振動発生機に供給する。振動
を開始した振動発生機に締結した治具上の加速度ピックアップが振動を捕らえる。
振動は電気信号に変換され、プリアンプを経由し自動振動制御装置にフィードバ
ックされる。自動振動制御装置は、波形のパターン、レベル等を補正して電力増
幅器へ供給する。この流れを繰り返し、予めセットした振動パターンになるよう
に制御を繰り返し、目標の振動条件になる作業を自動制御装置に内蔵された CPU
が行う。
図6−4
図 4.3.1
振動試験装置構成図
振動試験装置構成図
4.3.3 実験方法
今回の振動試験をおこなうに当たり、振動試験はX,Y,Z軸につき、以下
のような手順でおこなわれた。
1. 振動試験装置の加振器にスラスタヘッドを取り付ける冶具とピックアッ
プセンサを取り付け、振動レベルが所定のレベルになるか確認する。
2. マイクロ波スラスタヘッドの締め付けトルクを確認し、スラスタヘッドを
冶具に装着する。
3. 加振器により、あらかじめ設定しておいた振動レベル・時間で加振する。
4. スラスタヘッドをいったん冶具からはずし、ねじの締め付けトルクや目視
で外観などに異常がないかを確認する。
図 4.3.2
4.3.4
振動試験中のスラスタヘッド
実験結果
今回の実験ではランダム振動に対してのスラスタヘッド本体の耐久性は各軸加
振後にそれぞれ確認された。振動試験中に、加振器の入力に異常な入力値が入り
振動試験装置が停止した。これは、スラスタヘッドを固定している試験冶具と加
振器本体についている試験体を固定するための冶具が共振を起こしたため過剰な
入力となり停止したためとわかった。このため、加振器を大きめのものにするこ
とにより振動試験を続行した。
マイクロ波スラスタについている中和器のトリプルカーボネイトであるが、振
動試験ではニトロセルロースを混合して粘性を持たせた上で塗布したため、振動
には耐久性が認められた。しかし、後日マイクロ波スラスタの点火試験をおこな
ったところ、ニトロセルロースを混合した場合、中和に必要な熱電子の放出に大
きな影響を与えるということがわかり、中和器に塗布するトリプルカーボネイト
の処理に課題を残した。
5.結論
本研究に関して以下のような結論が得られた。
z 新型電気推進機の開発を行ない、本研究で開発した電気推進をマイクロ波エン
ジンと呼ぶこととする。
z EM モデルの作動実証を確認できた。
z Type-A のエンジンでイオン生成コスト 150eV、推進剤利用効率 90%の値が得
られた。
z Type-A は 30W、Type-B は 20W の作動領域に適している。
z Type-A はシステム電力 33W で比推力 1615(s)、推力 0.79mN、推進効率 19%
z Type-B はシステム電力 22W で比推力 1213(s)、推力 0.36mN、推進効率 10%
z EM モデル Ttpe-B のエンジンを基に衛星搭載用のマイクロ波エンジン PM モデ
ルの設計を行なった。
z マイクロ波エンジン環境試験用の耐久試験装置の開発を行ない、その作動を行
なった。
z 基盤加工機と基盤設計ソフトを使用して、エンジン制御装置である加速電源、
中和器、点火器、推薬供給回路の製作を行なった。
謝辞
本研究を行うにあたり、指導教官の佐鳥新助教授には理論、実験に終始、御助言と適切
なご指導をいただき、深く感謝いたします。
実験全般にわたり、修士2年の長田淳氏にご指導、ご協力いただきました。心より御礼
申し上げます。
北海道工業大学 OB である青木嘉範氏には、実験全般にわたり様々なご助言・ご指導を
頂戴頂きましたこと、心より感謝の意を表します。
またアストロリサーチの前博之氏には実験全般に暖かいアドバイスを頂きましたこと、
心より感謝の意を表します。
エンジンヘッドの製作など様々な加工をして頂きました札幌金型様に感謝の意を表し
ます。
RS コンポーネンツ株式会社の方々を始め、関係各所の皆様にもお世話になりました。
感謝いたします。
最後に本研究を行うにわたり、当研究室の皆様のご協力に厚く御礼申し上げます。
マイクロ波エンジンのプロトモデルの研究開発
指導教員
佐鳥
新
助教授
6-4-M-97-066 冨永 篤
6-4-M-97-093 牧野 裕介
6-4-M-97-096 松浦 申多
6-4-M-97-301 佐川 紘基
1.はじめに
本研究のマイクロ波エンジンは全く新しい電
この電気推進機はイオン加速室と中和器から
構成されている。推進剤には Xe ガスを使用し、
位勾配によるイオンビーム加速方式を用いてい
プラズマは、マイクロ波と放電室内のカスプ磁
る新しい電気推進である。現在宇宙開発では大
場による電子サイクロトロン共鳴(ECR)によ
型衛星より小型の衛星を多数使用する商業が主
り生成される。電極は放電室の上流と下流にそ
流になりつつあり、これら小型衛星の姿勢制御
れぞれ配置する。中和はホールスラスタと同じ
や軌道遷移などに低電力の電気推進が必要とさ
ように下流に置かれた電極により行われる。こ
れてきている。この 50∼100kg の小型衛星に電
の二つの電極間に加速電圧を与えてプラズマの
気推進を搭載させるには 20∼30W の低電力で
中に静電界勾配を形成し、イオンを加速して推
動作しなければならない。このような電力制限
力を得る。
を受けると MPD や DC アークジェットなどの
本研究では、(1)1.5GHz のマイクロ波による
大電力の電気推進は使用できない。かろうじて
プラズマ生成を用いた新型静電加速方式のスラ
イオンエンジンと SPT が使用することが出来
スタの性能解析、(2)マイクロ波エンジンシステ
るが、従来のイオンエンジンのようなカウフマ
ムの開発、 (3)マイクロ波エンジンプロトモデ
ン型ではエンジンサイズが小型になり低電力に
ルの品質試験、を目的とする。
なると効率も減少する。しかしマイクロ波によ
2.
スラスタの性能解析
るプラズマ生成では低電力でも安定した性能を
実験では長さ 70cm、直径 18cm の T 字型ガ
維持出来る。そこで我々は、小型衛星搭載用と
ラスチャンバーを使用している。ガラスチャン
してシステムが単純でありプラズマ生成をマイ
バー内は排気速度 2000l/s の油拡散ポンプと
クロ波によって行う新しいタイプの静電加速型
360l/s のロータリーポンプにより真空に引いて
スラスタの開発を行っている。図.1 に新型スラ
スタの原理を示す。
いる。到達真空度は 1.5×10-5Torr である。図.2
に測定概要図を示す。エンジンヘッドは開口部
イオンビーム
が 17mm の TypeA と開口部が 10mm の TypeB
に付いて測定を行った。エンジンからのイオン
マイクロ波
推進剤
Xe
スラスタヘッド
e
イオンコレクタ
e
e
e e
e
e
イオンビーム
Ib:
ビーム電流
アノード
カソード/
中和器
イオンビーム
図.1
新型マイクロ波エンジン
Va: 加速電圧
図.2
50 V
A
イオンビーム計測
ビームはエンジンより 5cm 下流に置かれたコレ
適作動条件は次のようになる。タイプAの場合
クタにより測定する。推進剤の Xe ガスはマス
は、電力 33Wの時に、比推力 1615 秒、推力 0.79
フローコントローラにより流量を制御する。測
mN、推進効率 19%となる。タイプBの場合に
定したビーム電流よりイオン生成コストと推進
は、電力 22Wの時に、比推力 1256 秒、推力 0.36
剤利用効率を求める。
mN、推進効率 10%である。
エンジンの性能を表すパラメータであるイオ
ン生成コストC(V)と推進剤利用効率ηu は次式
のように定義する。
C=
P
Ib
(1)
ηu =
Ib
m&
(2)
ここでP(W)はマイクロ波進行電力、Ib(A)イオ
ンビーム電流、mは推進剤の流量を電流換算し
た値で、0.5sccm の時は 0.0357(eqA)である。
表.1
パラメータ
マイクロ波電力
中和器電力
その他の電子装置電力
マイクロ波 FET の効率
ガス流量比
イオンビーム電流
推進剤利用効率
加速効率
ビーム発散角
各パラメータ
Type-A
5W
2W
1W
0.3
0.5 sccm
0.033 A
0.9
0.7
0.7
Type-B
3W
2W
1W
0.3
0.3 sccm
0.015 A
0.7
0.5
0.7
3.マイクロ波エンジン性能評価
マイクロ波エンジンの性能とシステム全体の
電力に対する依存性について検討する。実験結
果より得られたイオン生成コストと推進剤利用
効率よりエンジンの比推力(Isp)、推力(F)、
ならびに推進効率( η )を推測してみる。図 .3
に比推力の投入電力に対する依存性を示す。エ
ンジンの性能を推測するためにいくつかのパラ
メータは仮定している。表.1 に計算に用いたパ
ラメータを示す。計算結果から両スラスタの最
図.3
ヒータ電源1
Max、5W
総システム電力に対する比推力
半導体リレー
切替
+5V
+12V
保護回路
点火器 ×8
加速電源
330V、30mA
ヒーター電流1
ヒーター電流2
中和器電流
加速電圧
加速電流
μ波入射電力
μ波反射電力
タンク温度
μ波アンプ温度
スラスタ温度
切替
μ波
アンプ
ON/OFF
推薬供給系
CPU
Xe
タンク
ON/OFF
ヒータ電源2
Max、5W
半導体リレー
切替
衛星とのインターフェイス
図4 エンジンシステム ブロック図
中和器
×8
4.マイクロ波エンジンシステムの開発
(1)プロトタイプモデルシステム
(3)マイクロ波エンジン制御回路の製作・試行
マイクロ波エンジンシステムに組み込むた
マイクロ波エンジン PM(プロトタイプモデ
ル)のシステム開発を行った。性能評価の結果、
めに制御回路を小型化する必要があり、実際に
以下の制御回路の基板製作を行った。
エンジンヘッドはタイプ B を基に設計を行っ
〇中和器制御回路
た。
〇点火器制御回路
図 4 にエンジンシステムのブロック図を示す。
〇加速電源制御回路
表2に PM の仕様を示す。PMでは冗長系が
組み込まれる。冗長系が組まれる事によって、
修理が困難な宇宙空間で故障した場合にも、ミ
〇推薬供給系回路
〇マイクロ波アンプ系回路
5.耐久試験
ッションを続行することが可能である。本スラ
電気推進は宇宙空間で長 時間駆 動す る事が
スタには中和器が8個、点火器が4個装備され
命題である。そのため、現在開発中のスラスタ
ている。尚、この数はスラスタ本体のサイズを
も長時間の運用に耐える必要がある。耐久試験
考慮した上で決定されたものである。
では、宇宙空間を模した真空チャンバー内で長
PMは、言わば製品となる一歩手前の状態であ
時間の運転を行うことで、部品の消耗やスパッ
る。製品とするには宇宙環境下での耐久性(壊
タ リング による汚れの発生状況がどの程度現
れず寿命が長いこと)信頼性(確実に作動し、
れるのかを調査し、部品寿命などスラスタの構
故障しない事)を実証する必要がある。
造に対する評価を行う。
表2
耐久試験装置は、基本的に点火・再点火を自
PM仕様表
項目
仕様
動 で行い 無人での運用が可能となる様設計製
総システム電力
20W
作されている。トラブルが生じた時、スラスタ
マイクロ波電力
3W
の場合には再点火を行うようにし、真空装置自
中和器電力
2W
体 がトラ ブルの場合には試験装置の損傷が無
推進剤
Xe
い様、システムが緊急停止するようになってい
Xe ガス流量
0.3sccm
る。どちらの場合にもその後のトラブルシュー
加速電圧
300V
テ ィングが円滑に進むようトラブルを起こし
中和器冗長系
8基
た 時点でのパラメータを記録するようになっ
点火器冗長系
4基
ている。加速電圧やビーム電流などのパラメー
タは運転中常時測定し記録を行う。この装置を
(2)スラスタヘッド
設計を行った PM のスラスタヘッド外観図の
CG を図5に示す。
用 い4000時間の耐久試験を行う予定であ
る。
7.結論
(1) 新しい発想にもとづいてマイクロ波エンジ
ン の作動を実証した。タイプAの場合、電力
30W 以上、タイプ B の場合は電力 20W 以上を
作動点とする。
(2)マイクロ波エンジン PM の開発、システム制御
回路の製作を行った。
(3)マイクロ波エンジン PM の耐久試験に関して
図5
スラスタヘッド
は現在運転中である。
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