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高速ディジタル・データ伝送入門 高速ディジタル・データ伝送入門 高速
高速ディジタル・データ伝送入門 高速ディジタル・データ伝送入門 第 1 回 超ギガ時代を迎えるディジタル・データ伝送 志田 晟 Akira Shida インターネット・インフラの充実やパソコンの普及によって,最近の電子回路は膨大なディジタル・デー タを扱うようになりました.それに伴い,データの伝送速度に対する高速化の要求は強くなる一方です. 本連載は,有線によるディジタル信号の高速伝送技術を解説するものです.送信回路の入口から受信回路 の出口まで,高速のディジタル信号をいかに正確に伝送するか,実践的な手法を具体的に紹介します. LVDS などの低電圧差動インターフェースからギガ・ビット・イーサネットまで,最近の新しい超高速イン ターフェースも取り上げます. 計測から情報処理端末まで,高速データ伝送技術を要するエンジニアに役立つ内容です.毎回伝送媒体を 変えながら,要所は実験波形やシミュレーションなどを示す予定です. 〈編集部〉 ■ はじめに に接続する変換基板を使えばシリアル ATA を利用で きます. この連載では,今後ますます高速化するデータ転送 を理解し,使いこなすための,さまざまな技術や情報 シリアル ATA 規格は,パソコンの構成に大きな影 響力をもつインテルが強く推進しており,チップ・セ を解説していきます.いわゆる PHY(ファイ)と呼ば ットへの組み込みも予定されています.このようなこ れる物理層のハードウェアを中心に取り扱います. 今回は,本連載で取り上げる予定の高速伝送技術の とから,パソコン用ハード・ディスクのインターフェ ースはシリアル ATA が主流になると見られています. いくつかについて,その概要を説明します.前半では 身の回りにあるパソコンなどを例に,ディジタル・デ ■ データ転送速度の推移 ータ伝送に起きつつある変化を見ていきましょう.後 図 1 − 1 は ATA のデータ転送速度の推移です.縦軸 半では,高速伝送を実現するための技術について,少 しだけお話しします. は最大データ転送速度で,単位はバイト/s です.図 1 − 2 は実際にデータ信号が線を伝わる速度,つまり ハード・ディスク用 インターフェースの変化 ■ シリアル ATA の誕生 データ転送レートで図 1 − 1 をプロットし直したもの です.縦軸の単位は bps (ビット/s)です. ● ダブル・データ・レートで転送能力を 2 倍に! ATA − 4(Ultra ATA/33)からは,クロックの立ち 上がりと立ち下がりでデータを読み込むダブル・デー 現在のパソコン用ハード・ディスク・ドライブのイ ンターフェースは,ATA(AT Attachment)インター フェースが主流です.シリアル ATA(Serial AT Attachment)は ATA の後継規格で,2002 年に発売さ れたパソコンのマザーボードの一部には,このインタ ーフェースが搭載されています.また,拡張カードも 多数発売されています.写真 1 − 1 は,PCI バス用の シリアル ATA カードです. 現在ではシリアル ATA に対応したハード・ディス ク・ドライブは少数ですが,ATA インターフェース 2003 年 4 月号 〈写真 1 − 1〉PCI バス用のシリアル ATA カード 227 〈図 1 − 2〉ATA 規格のデータ転送レートの推移 最大データ転送速度[バイト/s] 1G SATAⅠ 100M ATA-7 ATA-6 ATA-4 ATA-2 SATAⅡ ATA-5 10M ATA-1 1M 1980 1985 1990 1995 2000 2005 信号線1本当たりのデータ転送レート[bps] 〈図 1 − 1〉ATA 規格のデータ転送速度の推移 10G 10G SATAⅡ SATAⅠ 1G 1桁以上の速度 ジャンプ 100M ATA-7 ATA-6 ATA-5 10M ATA-2 ATA-1 1M 1980 1985 1990 年 ATA-4 1995 2000 2005 年 タ・レート方式が採用されています.ATA − 4 のクロ ック周波数は ATA − 2 と同じですが,最大データ転 図 1 − 1 を見ると,ATA − 7 と SATA Ⅰでは最大デー タ転送速度にそれほど差がありません.しかし図 1 − 送速度とデータ転送レートが 2 倍になっています. それ以降の ATA − 5( Ultra ATA/66),ATA − 6 2 を見るとわかるように,データ転送レートは 1 桁以 上ジャンプして 1.5 Gbps になっています. は,す (Ultra ATA/100) ,ATA − 7(Ultra ATA/133) べてダブル・データ・レートの値です. ● ギガ・ビット伝送では設計・評価技術が重要 図 1 − 2 からわかるように,シリアルにすると ● パラレルからシリアルへ! そしてギガ・ビットへ! 1.5 Gbps という高速なデータ転送を行う必要がありま これまでの ATA 方式では,データを 16 ビット並列 に転送しています.ATA 規格のように数十 cm のケ す.パソコン周辺シリアル・インターフェースとして 普及が進んでいる USB2.0 は 480 Mbps ですが,設計 ーブルを使用するデータ伝送では,従来のパラレル伝 送方式の速度限界が 130 M バイト/s 程度と言われて の現場ではプリント・パターン設計や信号波形の評価 に苦労しているという話を聞きます.シリアル ATA います.それ以上の速度で安定に,そして安価にデー では,速度の遅いものでも 1.5 Gbps ですから,設計 タ伝送するには,従来の方式の延長では難しいようで す. 技術や評価技術を確実にしておかなければならないと 思われます. そこで登場したのがシリアル ATA(SATA)です. SATA Ⅰは Ultra SATA/1500 と呼ばれる規格で,最 ■ シリアル ATA のケーブル 大データ転送速度は 150 M バイト/s です.また ● 従来の ATA インターフェース用ケーブル SATA Ⅱは 300 M バイト/s の将来規格です.SATA Ⅲという 600 M バイト/s の規格も 2007 年ごろに登場 写真 1 − 2 に示すように,ATA ハード・ディスクで は 40 ピンのコネクタが使用されています.ノート・ する予定ですが,図には示していません. シリアル伝送では,パラレル伝送する場合に比べて パソコン用の ATA ハード・ディスクでは 50 ピンのコ ネクタも使われていますが,有効なピン・アサインは 基本的にデータ・バス幅ぶん速く送る必要があります. 40 ピンと共通です(1). 40芯ケーブル 80芯ケーブル シリアルATAケーブル 〈写真 1 − 2〉ATA 用ケーブルとシリアル ATA 用ケーブル 228 〈写真 1 − 3〉シリアル ATA ケーブルのコネクタ 質問はお手紙で! 掲載記事や書籍の内容に関する質問は,次の事項を明記し て,編集部に郵送してください.¸掲載記事名,書籍名,筆者名,年月号, ページ ¹質問内容 º返信用封筒 (SASE).なお,別記事の質問は別便で! 2003 年 4 月号