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移動荷重の影響を考慮した鉄道路盤の 変形特性に関する研究

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移動荷重の影響を考慮した鉄道路盤の 変形特性に関する研究
移 動 荷 重 の影 響 を考 慮 した鉄 道 路 盤 の
変 形 特 性 に関 す る研 究
桃谷
尚嗣
論文 の内容 の要旨
論文題 目
移動荷重 の影響 を考慮 した鉄道路盤 の変 形特性 に関す る研究
A Study
on Deformation
Considering
Characteristics
an effect
桃谷
of moving
of Railway
wheel
Roadbed
loading
尚嗣
鉄 道 の バ ラ ス ト軌 道 に広 く採 用 さ れ て い る強 化 路 盤 は粒 度 調 整 砕 石 とア ス フ ァル トコ ン ク リー ト
によ り構 成 され,高
い剛 性 に よ っ て軌 道 を支 持 す る構 造 で あ る。 強 化 路 盤 を用 い る こ と によ り,道
床 バ ラス トの変 形 に起 因す る保 守 作 業 を 軽 減 す る 効 果 が 期 待 され る こ とに加 え,雨 水 の 路 床 へ の浸
入 を防 止 し て 降雨 時 の列 車 走行 安 定 性 を 高 め る と と も に,噴 泥 の 発 生 を 防 ぐ効 果 が あ る。 さ らに,
強 化 路 盤 は列 車 荷 重 を分 散 して 路 床 へ 伝 達 す るた め,路 床 の 変 形 を抑 制 す る 効 果 が あ る。
従 来 の強 化 路 盤 の設 計 で は 弾 性 変 形 に よ る路 盤 表 面 のた わ み 量 が2.5mm以
内 とな る よ う に路 盤
の 厚 さが 決 め られ て い た。 しか しな が ら,こ の 設 計 方 法 で は 路 盤 の厚 さ は路 床 の 条 件 によ り一 義 的
に決定 さ れ る こ とに な るた め,耐 用 年 数,列 車 荷 重,列 車 本 数 等 に応 じた柔 軟 な 設 計 を 行 う こ とが
で き な い 。 経 済 的 で 安 全 な 構 造 物 を建 設 す る た め に,構 造 物 の 設 計 は 性 能 規 定 によ る方 法 に移 行 さ
れ つ つ あ り,鉄 道 路 盤 の設 計 も性 能 規 定 に よ る 方 法 を取 り入 れ る こ とが 求 め られ て いる 。 そ こで,
本研 究 で は 道 路 の ア ス フ ァル ト舗 装 の 設 計 と同 様 に,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの 疲 労 寿命 か ら路
盤 の厚 さ を 決 定 す る 方 法 を検 討 す る こ と と した 。 ア ス フ ァル トコ ンク リー トの疲 労 寿命 は ア ス フ ァ
ル トコ ンク リー トに発 生 す るひ ず み か ら求 め られ る た め,そ の ひ ず み を 精 度 よ く推 定す る必 要 が あ
る。 しか しな が ら,鉄 道 で は レー ル と ま く らぎ を介 して列 車 荷 重 が路 盤 に伝 達 さ れ る た め,ア ス フ
ァル トコ ンク リー トに 直 接 タ イ ヤ で 載 荷 され る道 路 の場 合 と比 較 す る と変 形 の メ カ ニズ ムが 複 雑 で
あ る。 道 路 の ア ス フ ァル ト舗 装 の 設 計 で は多 層 弾 性 解 析 に よ り,ア ス フ ァル トコ ンク リー トの ひず
みが 求 め られ る が,多 層 弾 性解 析 で は 複 雑 な 形 状 の軌 道 を支 持 す る ア ス フ ァル トコ ンク リー トの ひ
ず み を求 め る こ と は 困難 で あ る 。そ こで,本 研 究 で は 有 限 要 素 法(FEM)に
よ りア ス フ ァル トコ ン
ク リー トの ひ ず み を求 め る方 法 を検 討 す る こ と と した 。 従 来 の 強 化 路 盤 の 設 計 で も路 盤 のた わ み 量
を求 め るた め にFEMが
導 入 され て い る が,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み を求 め るた め に は,
軌 道 の 形 状 を詳 細 にモ デ ル化 す る こ とに よ り,精 度 の 高 い解 析 を 行 う必 要 が あ る 。
本 研 究 で は,鉄 道 路 盤 にお け る ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み をFEMに
妥 当 性 を検 証 す る た め に模 型 実 験 を行 い,FEM解
よ り求 め る こ と の
析 と模 型 実 験 の 結 果 と比 較 す る こと と した 。載 荷
試験 を行 う際 に,従 来 行 わ れ て いた よ うな定 点 で 繰 返 し載荷 を与 え る 方 法 で は載 荷 点 直 下 に変 形 が
相 対 的 に 大 き くな り,支 持 条 件 が 繰 返 し載 荷 と と もに変 化 して しま うた め,弾 性 挙 動 を適 切 に 評価
で き な い 可 能 性 が あ っ た 。 そ こで 列 車 の 走 行 を模 擬 し,載 荷 輪 を移 動 さ せ る こ と に よ り載 荷 を行 う
移 動 荷 重 載 荷 試 験 を行 う こ と と した 。 移 動 荷 重 載 荷 を行 う こと に よ り,各 ま く らぎが 順 次 同 じ よ う
に載 荷 され る た め,定 点 載 荷 で 生 じる よ うな 支 持 条 件 の変 化 を回 避 す る こ とが で き る。 す な わ ち,
移 動荷 重 載 荷 を行 う こ とで 繰 返 し載 荷 を行 った 場 合 で も路 盤 の 弾 性 挙 動 を適 切 に評 価 す る こ とが 可
能 に な る と考 え られ る。
一方
,実 物 大 の ア ス フ ァル ト路 盤 の弾 性 挙 動 を検 討 す るた め に,こ こで は ア ス フ ァル トコ ン ク リ
ー ト路 盤 に 直 接 ま く ら ぎ を 設 置 す る ア ス フ ァル ト路 盤 直結 軌 道 を対 象 と した 試 験 を行
た
。 こっ
の軌
道 方 式 で は ア ス フ ァル トコ ン ク リー ト路 盤 を用 い る た め,そ の 設 計 にお いて は強 化 路盤 と同 様 に,
ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み を評 価 す る こ とが 重 要 とな る。 本 研 究 で は ア ス フ ァル ト路 盤 直
結 軌 道 の変 形 特 性 を 詳 細 に 計 測 し,FEMと
の 整 合 性 を評 価 す る こ と と した 。
従 来 の強 化 路 盤 の 設 計 で は レー ル や ま く らぎ よ り構 成 さ れ る 軌 道 の変 形 につ いて は解 析 を行 わ ず,
バ ラ ス ト内 にお け る 圧 力 の 分 布 と路 盤 に作 用す る 圧 力 を あ らか じめ 仮 定 す る こ と に よ っ て解 析 を行
って いた 。 しか しな が ら,ア ス フ ァル トコ ンク リー トの ひず み を精 度 良 く推 定 す る た め に は,バ ラ
ス トに作 用 す る応 力 や 路 盤 表 面 に作 用 す る 応 力 を よ り現 実 に 即 した 方 法 で 求 め る必 要 が あ る 。 本 研
究 で は,バ ラ ス ト上 に設 置 した 実 物 大 ま く らぎ の 下 面 に分 割 ロー ドセ ル を設 置 して ま く らぎ下 面 に
作 用 して い る圧 力 を測 定 す る と と もに,路 盤 表 面 に作 用 して い る応 力 を測 定 した 。そ の結 果 をFEM
と比 較 す る ことで 路 盤 に作 用 す る 圧 力 を仮 定せ ず に,バ ラ ス トを含 め て モ デ ル 化 した 解 析 方 法 の 妥
当性 を検 証 した 。
小 型 軌 道 模 型 に よ る 移 動 荷 重 載荷 試験 に よ っ て 得 られ た ま く らぎ荷 重 分 担 率,路 盤 表 面 変 位,土
槽 底 面 応 力 につ い てFEMに
よ りシ ミュ レー トした 結 果,地 盤 の解 析 パ ラメ ー タ を 要 素 試 験 の 結 果
か ら適 切 に設 定 す る こ とで,実 験 結 果 と整合 性 の 高 い 結 果 を得 る こ とが で き る こ とが 確 認 で き た 。
また,実 物 大 の アス フ ァル ト路 盤 直 結 軌 道 の載 荷 試 験 によ りア ス フ ァル トコ ンク リー トのひ ず み に
関 す る 詳 細 な 計 測 を行 った 結 果,複 数 の 層 に分 け て 転 圧 す る ア ス フ ァル ト路盤 で は 層 間 のす べ りを
解析 上 考 慮 す る 必 要 が あ る こ とが分 か っ た。 た だ し,強 化 路 盤 の ア ス フ ァル トコ ン ク リー ト層 は 薄
い た め,1層
で 転 圧 さ れ る の で ア ス フ ァル ト層 間 の す べ りを考 慮 す る 必 要 は な い 。
バ ラス ト上 に設 置 した ま く らぎ の載 荷 試 験 を行 っ た 結 果,バ ラ ス ト軌 道 にお け る ま く らぎ の 荷 重
一変 位 曲 線 に は ま く らぎ 下 面 とバ ラ ス ト粒 子 間 のベッディングエ ラー の影 響 が 強 く含
れ形
,非ま線
性 が強 くな る こ とが 分 か っ た 。 しか しな が ら,FEMに
よ る シ ミ ュ レー シ ョ ン を行 う際 に は,バ ラ
ス ト層 の変 形 係 数 と して荷 重 レベ ル の大 き い部 分 のバ ネ 係 数 に相 当す るヤ ン グ率 を用 い る こ とで,
荷 重 レベ ル の 小 さ い領 域 に含 まれ る非 線 形 性 の 強 い部 分 の影 響 を 取 り除 いて 路 盤 圧 力 の評 価 を 行 う
こ とが で き る こ とが 分 か っ た 。
以 上 の検 討結 果 によ り,地 盤 のパ ラ メー タ を適 切 に 設 定 す る ことで,弾 性解 析 に よ る3次 元FEM
解 析 で 列 車 荷 重 下 に お け る路 盤 の 変 形 挙 動 を 適 切 に評 価 で き る こ とが確 認 で き た 。 そ こで,実 物 大
の 強 化 路 盤 を対 象 と したFEM解
析 を 行 い,求 め られ た ア ス フ ァル トコ ンク リー トの ひ ず み か らア
ス フ ァル トコ ン ク リー トの破 壊 基 準 を 用 い る こ とで耐 用 年 数 の試 計算 を行 っ た。 解 析 の 結 果,ア ス
フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み は路 盤 の たわ み形 状 で は な く,離 散 的 に配 置 され た ま く らぎ の 位 置
の影 響 を 強 く受 け る こ とが 明 らか とな った 。す な わ ち,ま く ら ぎ直 下 で は 引張 りひ ず み が 生 じる が,
ま く らぎ 中間 部 で は ひ ず み が 小 さ く,路 盤 や 路 床 の条 件 によ って は圧 縮 ひず み が 生 じる こ とが 分 か
っ た。 この 傾 向 は 模 型 実 験 の 結 果 で も 同様 で あ っ た。 ま た,引 張 りひ ず み の 卓 越 す る方 向 は,路 盤
の厚 さや 路 床 の 剛 性 に よ っ て 変 化 す る た め,引 張 りひ ず み を 評価 す る 際 には 最 大 主 ひ ず み を用 い る
のが 適 切 で あ る と判 断 した 。 この 方 法 によ って,現 行 の設 計標 準 に お け る強化 路 盤 の 寿 命 を推 定 し
た と ころ,妥 当 な 厚 さで あ る こ とが確 認 され た が,列 車 本 数 の 少 な い 区 間 で は現 在 よ りも路 盤 を 薄
くで き る こ とが 分 か っ た 。
一 方 ,繰 返 し載 荷 によ る残 留沈 下 に つ い て は,移 動荷 重 載 荷 を行 う と地 盤 内 の 主 応 力 の方 向 が 変
化 す る こ とに よ り,沈 下 量 が 大 き くな る こ とが 従 来 か ら指 摘 され て いた 。 本研 究 で は,小 型 軌 道 模
型 を用 い た 試験 に よ り,移 動 荷 重 載 荷 と定点 載 荷 の違 い に よ る,繰 返 し載 荷 にお け る 残 留 沈 下 に つ
いて 検 討 を行 っ た 。そ の結 果,移 動 荷 重 載荷 で は定 点 載 荷 の3∼6倍
程 度 残 留沈 下 量 が 大 き くな る こ
とが 分 か っ た 。 この原 因 と して,主 応 力方 向 の 回転 の影 響 に 加 え,軌 道 の構 造 的 な 要 因 が 大 き く影
響 して い る こ とが分 か っ た 。 定 点 載 荷 で は載 荷 点 直 下 の地 盤 の 変 形 が相 対 的 に大 き くな るた め,レ
ー ル 剛 性 に よ る荷 重 の 分 散 効 果 に よ っ て載 荷 点 直 下 に作 用 す る 応 力 が 繰返 し載 荷 と と も に減 少 し
,
そ れ が 残 留 沈 下量 に大 き な 影 響 を与 え て い る と考 え られ る。 ま く らぎ の受 け る荷 重 の 大 き さが 残 留
沈 下 量 に与 え る の影 響 に つ いて は,ま く らぎ1本 の模 型 に対 して 載 荷荷 重 を段 階 的 に 変 化 させ た繰
返 し載 荷 試験 を 行 う こ と に よ り検 討 を行 った 。 そ の結 果,載 荷 荷 重 を5%減
少 させ た だ け で 残 留 沈
下 量 が 半分 程 度 に減 少す る こ とが 分 か っ た。 つ ま り,荷 重 履 歴 を受 け て い る地 盤 で は,そ れ よ り小
さ い荷 重 を受 けて も残 留沈 下 は あ ま り生 じな いた め,載 荷 中 に荷 重分 担 率が 刻 々 と変 化 す る定 点 載
荷 で は残 留 沈 下 量 が小 さ くな る と考 え られ る 。 一 方,地 盤 内 の 主 応 力 の 回転 量 をFEMに
た 結 果,ま
よ り求 め
く らぎ直 下 の応 力 が 高 い位 置 で は 主 応 力 の 回 転 が ほ とん ど生 じな い こ とが 分 か った 。 す
な わ ち,鉄 道 で は不 連 続 に 配 置 され た ま く ら ぎ を介 して 地 盤 に荷 重 が伝 達 され るた め,道 路 を走 行
す る車 輪 の場 合 の よ うに,ま く ら ぎ直 下 で は 連 続 した 主 応 力 の 回 転 は 生 じな い。 た だ し,深 い 位 置
で は 複 数 の ま く らぎ に よ る 応 力 が 重 な り合 って 主 応 力 は 回転 して い る た め,主 応 力 の 回転 の影 響 は
無 視 で きな いが,鉄 道 の場 合 には 主 応 力 の回 転 の 影 響 に加 え,軌 道 の構 造 的 な 要 因 が 大 き い こ とが
分 か った 。
以 上 の よ う に,本 研 究 で は 鉄 道 路 盤 の 変 形 メ カ ニ ズ ム を詳 細 に検 討 した 上 で,新 し い強 化 路 盤 の
設 計 方 法 を提 案 した 。 また,移 動 荷 重 載 荷 試験 と定 点 載 荷 試 験 の結 果 か ら,載 荷 方 式 に よ る路 盤 の
変 形 特 性 の 違 い を明 らか に した 。 本研 究 によ っ て,鉄 道 路 盤 の 弾 性 挙 動 につ いて は 定 量 的 な評 価 を
行 う こ とが で き る こ とが 分 か っ た 。 一 方,繰 返 し載 荷 によ る 塑 性 変 形 につ いて は 変 形 の メ カ ニ ズ ム
が 明 らか にな り,定 性 的 に はそ の挙 動 につ い て 評価 す る こ とが 可 能 とな った 。 今 後 の 課 題 と して,
繰 返 し載 荷 によ る軌 道 お よ び路 盤 の残 留 変 形 を定 量 的 に 求 め る方 法 を検 討 す る こ とが 必 要 で あ る 。
目次
第1章
序論
1
1.1本
研究 の意義
1
1.2既
往 の研 究
5
1.2.1鉄
道 路 盤 に関 す る既 往 の研 究
5
1.2.2移
動 荷 重 載 荷 に関 す る既 往 の研 究
13
1.2.3バ
ラ ス ト軌 道 の 変 形 特 性 に 関 す る 既 往 の 研 究
15
1.2.4道
路 の ア ス フ ァ ル ト舗 装 に 関 す る 既 往 の 研 究
16
1.2.5既
往 の研 究 の ま とめ
18
1.3従
来 の強 化 路 盤 の設 計方 法
19
1.3.1初
期 の 強化 路 盤
1.3.2昭
和53年
1.3.3平
成4年
1.3.4従
来 の 強 化 路 盤 の 設 計 方 法 の ま とめ
1.4本
の
の
19
「建 造 物 設 計 標 準 解 説
土 構 造 物 」 にお け る設 計 方 法
「鉄 道 構 造 物 等 設 計 標 準 ・同 解 説
土 構 造 物 」 にお け る 設 計方 法
19
25
31
研 究 の 目的 と概 要
32
1.4.1本
研 究 の 目的
32
1.4.2本
研 究 の概 要
32
第2章
小 型 軌 道 模 型 を用 いた 移 動 荷 重 載 荷 試 験
37
2.1小
型移 動 荷 重 載 荷 試験 装 置 の概 要
37
2.2模
型地 盤の作成方法
42
2.2.1Series1に
お け る模 型 地 盤 の作 成 方 法
42
2.2.2Series2に
お け る模 型 地 盤 の 作 成 方 法
45
2.3試
験 ケ ー ス お よ び載 荷 パ ター ン
47
2.4測
定方法
50
2.4.1変
2.4.2CAモ
位 お よ び荷 重 の 測 定
50
ル タ ル の ひ ず み の測 定
50
2.4.3測
定 デ ー タ の記 録
51
2.4.4画
像 解 析
51
25模
型 地 盤 材 料 の 強度 特性
56
2.5.1模
型 路 盤 材 料(CAモ
ル タ ル ・瀝 青 安 定 処 理 し た 単 粒 度 砕 石)の
2.5.2模
型 路 盤 材 料(砂
2.6Series1実
験 結果
67
2.6.1ま
く らぎ の 荷 重
67
2.6.2土
槽 底 面 の応 力
82
2.6.3ア
ス フ ァ ル トコ ン ク リ ー トの ひ ず み
86
質 礫)お
よ び 路 床 材 料(豊
浦 砂 ・礫 質 砂)の
一軸 圧縮 試 験
三軸圧縮試験
56
57
2.6.4ま
く らぎ の 変 位 振 幅
88
2.6.5ま
く らぎ の 累 積 変 位
94
2.6.6地
盤 内 の 変 位 お よ び ひ ず み の分 布
102
2.7Series2実
験結果
109
2.7.1ま
く らぎ の 荷 重
109
2.7.2土
槽底 面の応 力
120
2,7.3ア
ス フ ァ ル ト コ ン ク リ ー トの ひ ず み
125
2.7.4ま
く らぎ の 変 位 振 幅
128
2.7.5ま
く らぎ の 累 積 変 位
134
2.7.6地
盤 内 の変 位 お よ び ひず み の分 布
145
2.8移
動荷 重載 荷 と定 点 載 荷 の 比較
150
2.8.1ま
く らぎ の 荷 重 分 担 率 の変 化
150
2.8.2ま
く らぎ沈 下 量 に対 す る載 荷 荷 重 の 影 響
165
の ま とめ
170
2.9第2章
第3章
有 限 要 素 解 析 に よ る模 型 試 験 の 評価
172
3.1解
析 の概 要
172
3.2解
析 モ デル
173
3.3模
型 実 験 の シ ミ ュ レー シ ョ ン
177
3.4解
析 に よ る 主 応 力 方 向 の推 定
186
3.5ア
ス フ ァル ト コ ン ク リー トの ひ ず み
190
3.6FEMに
よ る 路 盤 厚 さお よび 路 盤 剛 性 の影 響 に関 す る検 討
3.7第3章
の ま とめ
第4章
193
196
実 物 大 ア ス フ ァ ル ト路 盤 直 結 軌 道 の 載 荷 試 験
198
4.1試
験 の概 要
198
4.2試
験 軌 道 の敷 設
199
4.2.1路
床の構築
199
4.2.2路
盤の敷設
201
4.2.3軌
道の敷設
203
4.2.4測
定 機 器 の 埋 設 お よ び 設置
203
4.3静
的 載 荷 試 験 の結 果
4.4FEM解
析 と静 的 載 荷 試験 結 果 の 比較
4.4.1FEM解
4.4.2静
4.5輪
4.6第4章
207
析 モデル
的 載 荷 試 験 結 果 のFEM解
軸 落 下 試 験 にお け る 動 的挙 動
の ま とめ
213
213
析 に よ る評 価
215
223
229
第5章
バ ラ ス ト上 に 設 置 し た 実 物 大 ま く ら ぎ の 載 荷 試 験
231
5.1試
験 の概要
231
5.2モ
ー タ カ ー の 走行 に よ る ま く らぎ 下 面圧 力 の 測 定
231
5.2.1ま
く らぎ 下 面 圧 力 測 定 用 アル ミニ ウム ま く らぎ の製 作
231
5.2.2モ
ー タ カ ー によ る ま く ら ぎ下 面 圧 力 の 測 定 結 果
239
5.3繰
返 し載 荷 試 験 に よ る ま く らぎ下 面 圧 力 の測 定
5.4FEMに
よ る ま く らぎ 下 面 圧 力 お よ び路 盤 圧 力 の検 討
5.4.1バ
ラ ス トの 変 形 係 数 に よ る ま く ら ぎ 下 面 圧 力 と 路 盤 圧 力 の 変 化
5.4.2FEMに
5.5第5章
お け る 適 切 な バ ラ ス トの 変 形 係 数 の 検 討
の ま とめ
第6章
耐 用 年 数 を考 慮 した 強 化 路 盤 の 設計 方 法
244
264
264
265
275
277
6.1設
計 方 法 の概 要
277
6.2解
析モデル
277
6.3解
析 結果
281
6.3.1路
盤 表 面 の変 位
281
6.3.2ア
ス フ ァ ル トコ ン ク リー ト の ひ ず み
281
6.4ア
6.5第6章
第7章
ス フ ァ ル トコ ン ク リ ー トの 耐 用 年 数 の 試 計 算
の まとめ
結論
288
291
293
第1章
1.1本
序論
研 究の 意義
土 構 造 物 上 の バ ラ ス ト軌 道 は 図1.1.1に
示 す 通 り,路 床,路
盤,バ
ラス ト,ま く ら ぎ,レ ー ル
に よ り構 成 さ れ る 。 バ ラ ス ト軌 道 は 列 車 が 繰 返 し走 行 す る とバ ラ ス ト部 の 塑 性 変 形 に よ っ て 軌 道
が変 形 し,列 車 の 走 行 安 定 性 に影 響 を 与 え る た め,定 期 的 な 保 守 作 業 が 必 要 と され る 。 特 に路 盤
条 件 の 悪 い箇 所 で は バ ラ ス トの 変 形 量 も大 き くな るた め,保 守 作 業 の 頻 度 が 増 大 す る 。 そ れ に 対
して,バ
ラス トの 変 形 に よ る保 守 作 業 を省 くた め に 開 発 さ れ た 省 力化 軌 道 は 図1.1.2に
に,路 床,路 盤,レ ー ル,ま
示すよう
く らぎ(又 は ス ラ ブ),レ ー ル よ り構 成 され,強 固 な 路 盤 で 列 車 荷 重
を 支 持 す る こ と に よ り,軌 道 の 変 形 を 抑 制 す る 。 本 研 究 で は 軌 道 を 構 成 す る構 造 の 中 で,こ
れら
の 土 構 造 物 上 に敷 設 さ れ る 路 盤 を 対 象 と した 検 討 を行 っ た 。
鉄 道 の 路 盤 は 軌 道 を強 固 に 支 持 し,軌 道 に対 して 適 当 な 弾 性 を 与 え る と と も に,路 床 の 軟 弱 化
を 防 止 し,路 床 へ の 荷 重 の 分 散 伝 達 お よ び 道 床 内 の 水 をす み や か に排 除 す る な ど の機 能 を 有 す る 。
経 済 的 で 安 全 な 構 造 物 を 建 設 す る た め に,構 造 物 の 設 計 は 性 能 規 定 に よ る 方 法 に移 行 され つ つ あ
り,鉄 道 路 盤 の 設 計 も性 能 規 定 に よ る方 法 を取 り入 れ る こ とが 求 め られ て い る 。
新 設 線 のバ ラ ス ト軌 道 に広 く採 用 さ れ て い る 強 化 路 盤 は 粒 度 調 整砕 石 と ア ス フ ァル トコ ン ク リ
ー トに よ り構 成 さ れ ,高 い 剛 性 に よ っ て 軌 道 を支 持 す る構 造 で あ る 。 強 化 路 盤 を用 い る こ と に よ
り,道 床 バ ラス トの 変 形 に起 因す る 保 守 作 業 を 軽 減 す る効 果 が 期 待 され る こ と に加 え,雨 水 の 路
床 へ の 浸 入 を 防 止 し て 降 雨 時 の 列 車 走 行 安 定 性 を高 め る と と も に,噴 泥 の発 生 を 防 ぐ効 果 が あ る 。
さ ら に,強 化 路 盤 は 列 車 荷 重 を 分 散 して 路 床 へ 伝 達 す る た め,路 床 の変 形 を 抑 制 す る効 果 が あ る 。
従 来 の 強 化 路 盤 の 設 計 で は 弾 性 変 形 に よ る 路盤 表 面 の た わ み 量 が2.5mm以
の 厚 さ が 決 め られ て い た 。 平 成4年
内 とな る よ う に 路 盤
に制 定 され た 「
鉄 道 構 造 物 等 設 計 標 準 ・同解 説
土構 造物 」
で は,路 床 の 平 板 載 荷 に よ るK30値 に応 じて,適 切 な 路 盤 の 厚 さ が 示 さ れ て い る。 しか し な が ら,
図1.1.1バ
ラ ス ト軌 道
図1.1.2省
力化 軌 道
路 盤 の 厚 さ は路 床 の 条 件 に よ り一 義 的 に決 定 され る こ と に な る た め,耐 用 年 数,列 車 荷 重,列 車
本 数 等 に 応 じ た 柔 軟 な 設 計 を行 う こ とが で き な い 。 そ こで,本
研 究 で は 道 路 の ア ス フ ァル ト舗 装
の 設 計 と 同 様 に,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの 疲 労 寿 命 か ら路 盤 の 厚 さ を決 定 す る 方 法 を検 討 す
る こ と と した 。 ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの 疲 労 寿 命 を求 め る た め に は,ア ス フ ァル トコ ン ク リ
ー トに 発 生 す る ひ ず み を 精 度 よ く推 定 す る必 要 が あ る 。 しか しな が ら,鉄 道 で は レー ル と ま く ら
ぎ に よ っ て 列 車 荷 重 が 分 散 さ れ て 路 盤 に伝 達 され る た め,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トに 直 接 タイ
ヤ で 載 荷 さ れ る道 路 の 場 合 と 比 較 す る と変 形 の メ カ ニ ズ ム が 複 雑 で あ る 。 道 路 の ア ス フ ァ ル ト舗
装 の 設 計 で は 多 層 弾 性 解 析 に よ りア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み を 求 め る 方 法 で 設 計 が 行 わ
れ る が,多
層 弾 性 解 析 で は 複 雑 な 形 状 の 軌 道 を支 持 す る ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み を求
め る こ とは 困 難 で あ る と考 え られ る 。 そ こで,本 研 究 で は有 限 要 素 法(FEM)に
よ りア ス フ ァル
トコ ン ク リー トの ひ ず み を 求 め る方 法 を 検 討 す る こ と と した 。 従 来 の 強 化 路 盤 の 設 計 で も路 盤 の
た わ み 量 を求 め る た め にFEMが
た め に は,形
導 入 され て い る が,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み を 求 め る
状 を よ り詳 細 に モ デ ル 化 す る こ と に よ り,精 度 の 高 い解 析 を行 う必 要 が あ っ た 。
本 研 究 で は,軌 道 の 下 に あ る ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み をFEMに
当 性 を検 証 す る た め に模 型 実 験 を 行 い,FEM解
よ り求 め る こ と の妥
析 と模 型 実 験 の 結 果 と比 較 す る こ と と し た 。 しか
しな が ら,従 来 行 わ れ て い た よ う な 定 点 で 繰 返 し載 荷 を 与 え る方 法 で は載 荷 点 直 下 に 局 所 的 な 残
留 変 形 が 生 じ,支 持 条 件 が 繰 返 し載 荷 と と も に変 化 して しま う と い う問 題 点 が あ り,列 車 走 行 に
伴 う弾 性 挙 動 の 適 切 な 評 価 を行 う こ と が で き な い可 能 性 が あ っ た 。 そ こ で 列 車 の 走 行 を模 擬 し,
載 荷 輪 を移 動 させ る こ と に よ り載 荷 を行 う移 動 荷 重 載 荷 試 験 を 行 う こ と と した 。 移 動 荷 重 載 荷 を
行 う こ と に よ り,各 ま く らぎ が 順 次 同 じよ う に 載 荷 され るた め,定 点 載 荷 で 生 じ る よ う な 載 荷 点
直 下 の 局 所 的 な 変 形 を 回 避 す る こ とが で き る 。 す な わ ち,移 動 荷 重 載 荷 を行 う こ とで 繰 返 し載 荷
を行 っ た 場 合 で も路 盤 の 弾 性挙 動 を 適 切 に評 価 す る こ と が 可 能 に な る と考 え られ る 。
一 方 ,移 動 荷 重 載 荷 を 行 う と 地 盤 内 の 主 応 力 の 方 向 が 変 化 す る こ とや,定 点 載 荷 の よ う な 載 荷
点 直 下 の 局 所 的 な 変 形 に 伴 う荷 重 分 散 の変 化 に よ る ま く ら ぎ荷 重 の 低 減 が 生 じな い た め,定 点 載
荷 の 場 合 よ り も繰 返 し載 荷 に よ る 残 留 沈 下 量 が 大 き くな る こ とが 予 想 さ れ る 。 本 研 究 で は,移 動
荷 重 載 荷 と定 点 載 荷 の メ カ ニ ズ ム の 違 い を 比 較 す る こ と に よ り,載 荷 方 法 が 繰 返 し載 荷 に よ る残
留 沈 下 量 に 与 え る 影 響 を検 討 した 。
ア ス フ ァ ル トコ ン ク リー トの ひ ず み を用 い た 強 化 路 盤 の 設 計 を 行 う た め に,実 物 大 の軌 道 にお
け る ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひず み をFEMで
評 価 で き る こ と を示 す 必 要 が あ る 。こ こで は ア
ス フ ァル トコ ン ク リー ト路 盤 に 直 接 ま く らぎ を設 置 す る ア ス フ ァル ト路 盤 直 結 軌 道 を 対 象 と して,
実 物 大 試 験 軌 道 を構築 して 静 的 載 荷 試 験 を行 っ た 結 果 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。 ア ス フ ァル ト路 盤
直 結 軌 道 は 省 力 化 軌 道 の 一 種 で あ る が,海 外 で 施 工 実 績 が あ る も の の 我 が 国 で は 営 業 線 に お け る
施 工 例 が な く,国 内 に お け る研 究 開 発 が 必 要 と され て い る。 この 軌 道 方 式 で は ア ス フ ァル トコ ン
ク リー ト路 盤 を 用 い る た め,そ の 設 計 に お い て は 強 化 路 盤 と 同 様 に,ア ス フ ァル トコ ン ク リー ト
の ひ ず み を 評 価 す る こ とが 重 要 とな る 。 本 研 究 で は ア ス フ ァ ル ト路 盤 直 結軌 道 の変 形 特 性 を 詳 細
に計 測 し,FEMと
の 整 合 性 を 評 価 す る こ と と した 。 実 物 大 軌 道 に お け る アス フ ァル トコ ン ク リー
図1.1.3ア
ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み を 求 め る た め の 路 盤 圧 力 の 考 え 方
ト路 盤 の ひ ず み をFEMで
評価 で き る こ と を 示 す こ と に よ り,強 化 路 盤 の 設 計 に お いて ア ス フ ァル
トコ ン ク リー トの ひ ず み をFEMで
求 め る こ と の妥 当 性 を 示 す こ とが で き る と考 え られ る 。
強 化 路 盤 の 設 計 を行 う際 に 重 要 で あ る の が,路 盤 表 面 に作 用 す る 圧 力 で あ る 。 従 来 の 強 化 路 盤
の 設 計 で は 図1.1.3(a)に 示 す よ う に,ま
く らぎ 下 面 の 圧 力 が 四 角 錐 台 の 形 状 に 分 散 して 路 盤 表 面
に作 用 す る と仮 定 して い た 。 しか しな が ら,こ の 方 法 で は 路 盤 表 面 に作 用 す る圧 力 分 布 を 簡 略 化
して い る た め,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み を評 価 す る の は 難 し い と考 え られ る 。そ こで,
新 しい 設 計 方 法 で は バ ラ ス ト内 に お け る 応 力 分 布 の 形 状 を簡 略 化 せ ず に,レ ー ル,ま
ラ ス トをFEMで
く らぎ,バ
モ デ ル 化 し,レ ー ル に対 して 列 車 荷 重 を与 え る こ と に よ りア ス フ ァル トコ ン ク リ
ー トの ひ ず み を 求 め る こ と と した 。 本 研 究 で は,実 物 大 ま く らぎ の 下 面 に 分 割 ロ ー ドセ ル を 設 置
して ま く ら ぎ下 面 に作 用 して い る 圧 力 を測 定 す る と と も に,路 盤 表 面 に作 用 して い る応 力 を 測 定
し た 。そ の 結 果 をFEMと
比 較 す る こ とで 圧 力 の 分 散 に 関 して 仮 定 を せ ず に,バ ラ ス トを 含 め て モ
デ ル 化 した 解 析 方 法 の 妥 当 性 を検 証 した 。
実 験 の結 果 を考 慮 した 上 で,FEMに
つ い て の検 討 を行 い,新
よ りア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み を推 定 す る 方 法 に
し い 強 化 路 盤 の 設 計 方 法 を提 案 す る こ と を 本 研 究 の 目 的 と した 。 一 方 ,
移 動 荷 重 載 荷 と定 点 載 荷 にお け る変 形 特 性 の違 い を 明 らか にす る こ とで,繰 返 し載 荷 に よ る 残 留
沈 下 量 に つ い て の 考 察 を行 っ た 。
定 点 載 荷 試 験 で は 軌 道 お よ び 地 盤 の 変 形 挙 動 が 実 際 の 列 車 走 行 の 場 合 と 異 な る こ とや,移
動荷
重 載 荷 を行 う と定 点 載 荷 よ り も 繰 返 し載 荷 に よ る 残 留 沈 下 量 が 大 き くな る こ と は 従 来 か ら指 摘 さ
れ て い た が,そ の メ カ ニ ズ ム に つ い て 地 盤 内 部 に 生 じ る応 力 や ひ ず み の 状 態 を考 慮 した 十 分 な 研
究 は 行 わ れ て い な か っ た 。 また,移
動 荷 重 載 荷 で は 主 応 力 の 方 向 が 変 化 す る こ と は一 般 的 に知 ら
れ て い た が,列 車 の 走 行 に よ っ て 生 じ る主 応 力方 向 の 変 化 や そ の 影 響 に つ い て の 具 体 的 な 研 究 は
行 わ れ て い な か っ た 。 鉄 道 に お い て は 不 連 続 に配 置 さ れ た ま く ら ぎ に よ って 荷 重 が 地 盤 に 伝 達 さ
れ る た め,車 輪 が 連 続 的 に走 行 す る道 路 の 場 合 とは 主 応 力 回 転 の メ カ ニ ズ ム が 異 な る が,ま
くら
ぎ の 位 置 と主 応 力 方 向 の 回 転 の 関 係 に つ い て は 明 らか に な って は い な か った 。 ま た,列 車 の 走 行
に よ っ て 生 じ る 地 盤 内 の応 力 や ひ ず み の 分 布 に つ い て も,実 験 と解 析 の 両 面 か ら応 力,ひ ず み,
変 位 を考 慮 した 多 角 的 な 検 討 は 十 分 に は行 わ れ て い な か っ た 。
以 上 の こ とか ら,本 研 究 に お い て 実 験 と解 析 の両 面 か ら詳 細 に検 討 を行 う こ と で,移 動 荷 重 載
荷 に よ る 地 盤 内 部 の応 力や ひ ず み の 状 態 を 明 らか に す る こ と は,鉄 道 路 盤 の 設 計 に対 す る信 頼 性
を 向 上 さ せ る た め に 重 要 な 意 義 が あ る。 特 に,路 盤 の 設 計 に 直 接 結 び つ く弾 性 挙 動 に 関 し て は 実
験 の 結 果 を通 じ て 解 析 の 信 頼 性 を示 す こ と で,実 験 にお いて 測 定 の 難 し い 位 置 に お け る 地 盤 内 の
応 力 や ひ ず み を高 い精 度 で 推 定 す る こ とが 可 能 にな る 。 さ ら に解 析 の 精 度 を高 め る こ とで 実 験 を
行 っ て い な い 地 盤 条 件 にお け る 路 盤 につ いて もそ の挙 動 を推 定 す る こ とが で き る 。 こ の よ う に,
実 験 と解 析 の 両 面 か ら検 討 を行 う こ と に よ り,測 定 の 難 し い 地 盤 内 部 の 応 力 や ひ ず み の 状 態 を正
確 に 知 る こ と が で き れ ば,よ
り現 実 に即 した 精 度 の 高 い 設 計 を 行 う こ と が 可 能 と な る。
1.2既
1.2.1鉄
往の研 究
道 路 盤 に関 す る 既 往 の 研 究
列 車 荷 重 を支 持 す る 道 床 お よ び 路 盤 の 構 造 は,新 設 線 を 対 象 と し た 構 造 と既 設 線 を対 象 と した
構 造 に 分 類 す る こ とが で き る。 新 設 線 を対 象 と した 路 盤 に つ い て は バ ラ ス ト軌 道 用 の 路 盤 と,バ
ラ ス トを使 用 しな い こ と に よ り軌 道 保 守 作 業 の 低 減 を 図 っ た 省 力 化 軌 道 用 の 路 盤 に 分 け る こ とが
で き る 。 一 方,既 設 の バ ラ ス ト軌 道 に つ い て は 既 存 のバ ラ ス ト層 を 注 入 剤 等 に よ っ て 強 化 す る こ
と に よ り,省 力 化 軌 道 とす る た め の 構 造 が 各 種 提 案 さ れ て い る 。
新 設 線 の 土 路 盤 上 バ ラ ス ト軌 道 を 対 象 と し た 路 盤 の代 表 的 な 構 造 と し て,粒 度 調 整 砕 石 と ア ス
フ ァル トコ ン ク リー トに よ る強 化 路 盤 が 広 く用 い られ て お り,現 在 建 設 さ れ て い る 主 要 な 線 区 で
は基 本 的 に 強 化 路 盤 が 採 用 され て い る 。 一 方,省
力 化 軌 道 用 の 路 盤 と し て は 主 に コ ン ク リー ト路
盤 と ア ス フ ァル ト路 盤 が あ る 。これ らの 路 盤 は主 に コ ン ク リー トの ス ラ ブ 版 で レー ル を支 持 す る,
ス ラ ブ軌 道 の た め の 路 盤 と して 採 用 さ れ て い る 。 新 設 線 を対 象 と して 開 発 され た 路 盤 の 構 造 は 夜
間 の 限 られ た 作 業 時 間 内 で は 施 工 す る こ とが で き な い た め,一 般 的 に 既 設 線 に適 用 す る こ と は難
し い 。 そ の た め,既 設 線 に対 して は 短 時 間 で 施 工 で き る 工 法 が 開 発 され て き た 。
以 下 に鉄 道 路 盤 に 関 す る既 往 の研 究 につ い て 述 べ る 。
(1)強
化 路盤
強 化 路 盤 は 図1.2.1に
示 す よ う に,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トと粒 度 調 整 砕 石 か ら構 成 され る
砕 石 路 盤 と水 硬 性 粒 度 調 整 高 炉 ス ラ グ砕 石 で 構 成 され る ス ラ グ 路 盤 に分 け られ る1)。
ス ラグ路盤 に
つ い て は 製 鉄 所 の 近 傍 以 外 で は コ ス トが 割 高 に な る た め,我 が 国 で は 砕 石 路 盤 の 方 が 広 く採 用 さ
れ て い る 。 強 化 路 盤 は 当 初,軟
弱 な 地 盤 上 に 軌 道 を 敷 設 す る 際 に,噴 泥 な ど に よ る 保 守 作 業 の 増
大 を 回 避 す る こ と を 目 的 と して 開 発 され,初
期 の 強 化 路 盤 の 設 計 に は 道 路 の ア ス フ ァル ト舗 装 の
技 術 が 取 り入 れ られ た 。 現 在 で は 噴 泥 が 懸 念 され る 材 料 を 盛 土 材 料 と して 使 用 しな い こ とや,切
取 りや 素 地 な ど に お い て 路 床 が 軟 弱 な 場 合 は 路 床 改 良 を行 う な ど の 対 策 が 行 わ れ て い る た め,今
後 建 設 さ れ る新 設 線 にお い て 噴 泥 が 発 生 す る 可 能 性 そ の もの は 少 な くな っ て い る 。しか しな が ら,
強 化 路 盤 は 高 い 剛 性 で 軌 道 を 支 持 す る こ と に よ りバ ラス ト層 の 変 形 に よ る軌 道 保 守 作 業 の 低 減 効
図1.2.1強
化 路 盤 の 構 造1)
果 が 期 待 で き る こ と や,路
床 へ の 雨 水 の 浸 入 に よ る 支 持 力 の 低 下 を 抑 制 す る こ と が で き る た め,
新 設 線 の バ ラ ス ト軌 道 で は 強 化 路 盤 が 広 く 採 用 さ れ て い る 。
昭 和53年
に制 定 さ れ た
「建 造 物 設 計 標 準 解 説
い た 強 化 路 盤 の 設 計 方 法 が 示 さ れ た2)。 そ の 後,平
説
土 構 造 物 」 の 中 で 須 長 ら(1991)の
土 構 造 物 」 で は,Boussinesqの
成4年
研 究 に よ るFEMを
に 制 定 され た
弾性 理論 に基づ
「構 造 物 等 設 計 標 準 ・同 解
導 入 し た 設 計 方 法 が 示 さ れ,よ
的 な 設 計 が 行 わ れ る こ と と な っ た3),4),5),6)。従 来 の 強 化 路 盤 の 設 計 方 法 に つ い て は
り合 理
「1.3従
来の
強化 路盤 の設 計 方法 」 にお いて 詳細 を述 べ る。
一方
,欧
米 の 鉄 道 で は 路 床 と バ ラ ス トの 間 に 剛 性 の 高 い 路 盤 が 存 在 す る 強 化 路 盤 の よ う な 構 造
は あ ま り 一 般 的 で は な い 。 欧 米 に お け る 一 般 的 な バ ラ ス ト軌 道 で は,図1.2.2に
ス トの 下 に 剛 性 の や や 低 い サ ブ バ ラ ス ト層 が 設 置 さ れ,さ
示 す ようにバ ラ
ら にそ の 下 に 剛 性 の よ り小 さ い路 床 が
設 置 さ れ て い る と い う よ う に,剛 性 を 深 さ 方 向 に 連 続 的 に 低 減 さ せ て い く 構 造 が 採 用 さ れ て い る7)。
強 化 路 盤 と 類 似 し た 構 造 と し て は,米
国 に お い て バ ラ ス ト軌 道 用 の 路 盤 と し て の ア ス フ ァ ル ト路
盤 が 使 用 さ れ た 実 績 が あ る7),8),9),10)。 これ は,図1.2.3に
し,バ
示 す よ う にUnderlayment
Asphaltと
称
ラ ス ト層 の 下 部 を ア ス フ ァ ル ト コ ン ク リ ー ト に 置 き 換 え た 構 造 で あ る 。 一 方,Full-Depth
asphaltと
称 す る 構 造 で は,ア
ス フ ァ ル トコ ン リ ー トが 直 接 ま く ら ぎ を 支 持 す る も の で,後
図1.2.2欧
図1.2.3米
米 に お け る 一 般 的 な バ ラ ス ト軌 道 の 構 造7)
国 に お け る ア ス フ ァ ル ト路 盤 の 構 造7)
述する
省 力 化 軌 道 用 ア ス フ ァル ト路 盤 と 同 様 の機 能 を有 す る。 しか しな が ら,Full-Depth
asphaltは 構 造
と して 提 案 は さ れ て い る も の の,軌 道 変 位 が 生 じた と き の 保 守 作 業 が 困 難 で あ る こ と か ら,施 工
実 績 は少 な い よ うで あ る 。
(2)路
床 ・路 盤 の 強 化 方 法
強 固 な 路 盤 が 構 築 され て い な い 軟 弱 な 地 盤 上 にお い て 繰 返 し列 車 荷 重 が 作 用 す る と,泥 土 化 し
た 路 盤 土 が 道 床 バ ラ ス トに吹 き 上 げ る 路 盤 噴 泥 が 生 じ る こ と が あ る 。 路 盤 噴 泥 が 生 じ る よ うな 箇
所 で は 道 床 バ ラ ス トの 変 形 が 進 み や す く,軌 道 保 守 量 が 増 大 す る 。 そ の 対 策 と して は,石 灰 や セ
メ ン トを原 位 置 の 土 に加 え,強 度 を増 加 させ る 安 定 処 理 工 法 が 適 用 され る こ とが 多 い。 石 灰 安 定
処 理 は 生 石 灰 の 水 和 反 応 に よ る 発 熱 作 用 と膨 張 作 用 に よ り土 の 性 状 を改 良 さ せ る 工 法 で あ り,一
般 的 に 含 水 比 が 高 く,細 粒 分 の 多 い 土 に 有 効 で あ る 。 セ メ ン ト安 定 処 理 工 法 は ポ ル トラ ン ドセ メ
ン トを 添 加 して 土 粒 子 に接 着 力 を 与 え,ま た 土 粒 子 表 面 の 性 質 を 化 学 的 に変 え 親 水 性 を 低 下 さ せ,
土 粒 子 間 の粘 着 力 を増 加 さ せ る 工 法 で あ る。 粘 性 土 に 対 し て は 一 般 的 に ポ ル トラ ン ドセ メ ン トの
添 加 量 が 多 くな る た め 不 経 済 とな り,高 有 機 質 土 で は 有 機 物 に よ る ポ ル トラ ン ドセ メ ン トの 水 硬
性 が 妨 げ られ る な ど,有 効 で な い 場 合 も あ る 。 ポ ル ト ラ ン ド セ メ ン ト 以 外 に , 高 含 水 の 粘 性 土 や
有 機 質 土,火
山灰 質 粘 性 土 に も有 効 な セ メ ン ト系 固 化 材 も あ る の で,経 済 性 と有 効 性 を考 慮 して
最 適 な 固 化 材 を選 択 す る 必 要 が あ る1)。
関 根 ら(1993)は
安 定 処 理 を行 う機 会 の多 い 火 山灰 質 粘 性 土 を用 い て 大 型 供 試 体 に よ る繰 返 し
載 荷 試 験 を行 い,列 車 の 繰 返 し荷 重 に 対 す る 安 定 処 理 土 の耐 久 性 を検 討 した11),12)。
そ の 結 果,安
定 処 理 した 路 盤 は 作 用 す る 応 力 に対 し て5倍
以 上 の 強 度 が あ れ ば,繰 返 し荷 重 に よ るひ ず み 振 幅
は 小 さ く,累 積 沈 下 も 小 さ い こ とが 明 らか にな っ た 。 列 車 荷 重 に よ っ て 作 用 す る 路 盤 表 面 の 応 力
は0.1MN/m2程
度 で あ る こ とか ら,安 定 処 理 し た鉄 道 路 盤 の 一 軸 圧 縮 強 さ は0.5MN/m2以
上 を確 保
して いれ ば列 車 の 繰 返 し荷 重 に よ る耐 久 性 を 十 分
保つ ことがで きる。
関 根 ら(1992)は
既 設 営 業 線 に お け る路 盤 の 強
化 工 法 と して,ハ ニ カ ム 構 造 の 立 体 補 強 材(ジ オ
セ ル)を 用 い た 方 法 を 開発 し た13),14)。
従 来,営 業
線 の 路 盤 強 化 工 法 と して は 安 定 処 理 工 法 や 置 換 工
法 が 多 く用 い られ て き た 。 し か し な が ら,安 定 処
理 工 法 は施 工 直 後 に は そ の 効 果 が 期 待 で き ず,改
良後 す ぐ に効 果 を 期 待 す る 場 合 に は 添 加 材 の添 加
量 が 増 え る な ど の 不 経 済 な 点 が あ る 。 一 方,置 換
工 法 に っ い て は,短 時 間 の 施 工 間 合 い で は締 固 め
不 足 に よ り所 定 の 剛 性 が 得 られ な い場 合 が あ る。
ジ オ セ ル を 用 い た 工 法 で は 図1.2 .4に 示 す よ う に
材 質 が 高 密 度 ポ リエ チ レ ンで あ る 板 を セ ル 状 に 加
図1.2.4ジ
オ セ ル に よ る 路 盤 の 強 化13)
工 した 補 強 材 の 中 に粒 度 調 整 砕 石 や 単 粒 度 砕 石 な ど の 充 填 材 を 投 入 して 締 め 固 め る こ と に よ り,
剛 性 の 高 い 路 盤 を構 築 す る 。 実 物 大 模 型 試 験 や 営 業 線 で の 試 験 施 工 に よ って,残 留 沈 下 や 動 的 変
位 の低 減 に十 分 な効 果 が あ る こ とが 確 認 され た 。 充 填 材 と して 最 も効 果 的 な の は 粒 度 調 整 砕 石 で
あ る が,粒 度 調 整 砕 石 は 十 分 に転 圧 を行 う必 要 が あ る 。 既 設 の 営 業 線 に対 して は,転 圧 の ほ と ん
ど必 要 な い 単 粒 度 砕 石 を 充 填 材 と して 使 用 す る こ とで,十
分 な 剛 性 を得 られ る と と も に,迅 速 な
施 工 が 可 能 と な っ て い る。
(3)既
設 線 用 土路 盤 上 省 力 化 軌 道
既 設 の 営 業 線 バ ラ ス ト軌 道 にお け る 保 守 作 業 を 削 減 す る こ と を 目的 と して,バ
ラ ス トレ ス の 省
力 化 軌 道 の 開 発 が 行 わ れ て き た 。 既 設 線 用 の 省 力化 軌 道 は既 存 の バ ラ ス ト層 に 注 入 を 行 う こ と に
よ り,強 化 さ せ る 方 法 が 一 般 的 で あ る 。 図1.2.5に 示 すB型
舗 装 軌 道15)はLPCと
呼 ばれ る大 版 ま
く らぎ の 採 用 に よ り道 床 に 作 用 す る 圧 力 お よ び 振 動 を軽 減 し,バ ラ ス ト層 に粘 強 性 特 殊 加 熱 ア ス
フ ァル ト(PTAC)を
注 入 す る こ と で 道 床 バ ラ ス トの結 合 力 を強 化 す る構 造 で あ る 。B型 舗 装 軌 道
は 武 蔵 野 線 な ど に 敷 設 され た が,PTACは180℃
要 と し,コ ス トが 高 か っ た 。 ま た,注
の 高 温 で 注 入 す る こ とか ら加 熱 装 置 等 の 装 置 を 必
入 後 の 強 度 発 現 時 間 が 長 い こ とや,注 入 層 の 厚 さ に ば らつ
き が あ っ た こ とな どか ら,そ の 後 爪 長 ら(1983)に
軌 道 は 図1.2.6に
よ りE型
舗 装 軌 道 が 提 案 され た16)。E型 舗 装
示 す よ う に,注 入 剤 に常 温 型 のセ メ ン トア ス フ ァル ト系 複 合 材(PTCAM)を
い,不 織 布 を 用 い る こ と に よ り安 定 し た 浸 透 厚 さ を確 保 す る こ とが で き る。 安 藤 ら(1992)は
鉄 技 術 研 究 所 で プ ロ トタ イ プ が 開 発 さ れ て い たE型
て 敷 設 を行 っ た17)。改 良 され たE型
を 向 上 させ る と と も に,LPC下
用
国
舗 装 軌 道 を 改 良 して 実 用 化 し,山 手 線 に お い
舗 装 軌 道 で はLPC下
面 に 凹 み を つ け る こ と に よ り水 平 抵 抗 力
面 に ガ ラス 繊 維 マ ッ トを 使 用 す る こ と に よ り,て ん 充 層 へ の 衝 撃
荷 重 を 軽 減 させ た 。
そ の 後JR東
日本 で はE型 舗 装 軌 道 の敷 設 で 得 られ た 知 見 を も と に 低 コ ス ト化 を 図 っ たTC型
省
力化 軌 道 を 開 発 した18)。TC型 省 力 化 軌 道 で は ま く らぎ の 小 型 化 に よ り,マ ル チ プル タ イ タ ンパ ー
に よ る初 期 の 軌 道 保 守 作 業 を 可 能 にす る と と も に,注 入 材 の 変 更 な ど に よ り施 工 直 後 にお け る 列
車 の 徐 行 の 必 要 が な くな っ た 。TC型
図1.2.5B型
省 力 化 軌 道 は 首 都 圏 を 中 心 に敷 設 が 進 め られ て い る 。
舗 装 軌 道15)
図1.2.6E型
舗 装 軌 道17)
(4)新
設 線用土路 盤 上 省力化 軌道
新 設 線 を対 象 と した 省 力 化 軌 道 に は ア ス フ ァル ト路 盤 を用 い た 構 造 と コ ン ク リー ト路 盤 を 用 い
た 構 造 が あ る 。 一 般 的 に ア ス フ ァル ト路 盤 は施 工 性 に 優 れ,乗
り心 地 が 良 い と され て い る が,コ
ン ク リー ト路 盤 に 比 べ て 耐 用 年 数 が 短 く,材 料 の 感 温 性 が 高 い こ と が 短 所 と して 挙 げ られ る。 一
方,コ
ン ク リー ト路 盤 は耐 用 年 数 が 長 く,路 盤 の 剛 性 が 高 い と い う 長 所 が あ る 反 面,初 期 建 設 費
が 割 高 で あ り,施 工 後 の養 生 期 間 を必 要 と し,乗 り心 地 が 劣 る と い う短 所 が あ る 。 「
鉄 道構 造物 等
設 計 標 準 ・同解 説
省 力化軌 道 用土構 造物 」 にお いてそ れぞ れ の構 造の適 用 は敷 設現 場の状 況 を
考 慮 して 判 断 す る こ と と さ れ て い る が,現 時 点 で は コ ン ク リー ト路 盤 が 採 用 さ れ る 例 が 主 で あ る 。
ア ス フ ァル ト路 盤 を用 い た 省 力 化 軌 道 の 代 表 的 な 構 造 が 図1.2.7に 示 すRA型
19)。この 軌 道 で は ア ス フ ァル ト路 盤 の上 にCAモ
設 さ れ る た め,コ
ル タ ル を介 して 比 較 的 短 いRA型
ス ラブ軌道 で あ る
軌道 スラ ブが敷
ン ク リー ト路 盤 上 の ス ラ ブ 軌 道 よ り も地 盤 の 変 形 に追 随 し や す い構 造 と な っ て
い る 。RA型 ス ラ ブ軌 道 は1971年
か ら1978年
初 期 に 東 海 道 本 線 にお い て 施 工 さ れ たRA型
に か け て 全 国14箇
所,軌 道 延 長2.3km施
工 された 。
ス ラ ブ軌 道 の 一 部 で は 開 業 後 に軌 道 ス ラ ブ が 沈 下 し,
舗 装 に ひ び 割 れ が 生 じ噴 泥 状 態 にな っ た こ と か ら補 修 が 余 儀 な く さ れ た 。 当 時 の 構 造 は 上 部 の ア
ス フ ァル トコ ン ク リー トの 下 に ア ス フ ァル ト浸 透 式 マ カ ダ ム 工 法 に よ る 下 部 路 盤 が 構 築 さ れ て い
る も の で あ った が,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トが60mmと
薄 く,下 部 路 盤 も140mm∼250mm程
と比 較 的 薄 く,強 度 の 小 さ い 構 造 で あ っ た 。ま た,路 床 表 面 でK30値110MN/m3を
満 足 して い た も
の の,噴 泥 を 生 じや す い 材 料 で あ っ た こ と も変 状 発 生 の 原 因 と して 考 え られ た 。 そ の 後RAス
ブ を 支 持 す る ア ス フ ァル ト路 盤 の構 造 は 改 良 され,最
リー ト350mmの
下 に セ メ ン ト安 定 処 理400mm,さ
ラ
終 的 に上 越 新 幹 線 で は ア ス フ ァル トコ ン ク
ら に そ の 下 に粒 度 調 整 砕 石200mmと
な ア ス フ ァル ト路 盤 が 敷 設 さ れ た20)。上 越 新 幹 線 に 敷 設 され たRA型
い う強 固
ス ラ ブ軌 道 は そ の 後,良 好
な 状 態 を保 っ て い る 。 しか し な が らそ の 後 の 建 設 さ れ た 新 幹 線 で はRA型
ス ラ ブ軌 道 は 採 用 さ れ
て お らず,現 在 で は コ ン ク リー ト路 盤 を用 いた 土 路 盤 上 ス ラ ブ 軌 道 が 主 流 と な っ て い る。
図1.2.7RA型
度
ス ラ ブ 軌 道19)
一 方 ,ド
イ ツ で は ア ス フ ァ ル トコ ン ク リー ト路
盤 の 上 に 直 接 ま く ら ぎ を 設 置 す る ア ス フ ァ ル ト路
盤 直 結 軌 道 が 本 格 的 に 採 用 さ れ て い る 。 ドイ ツ で
採 用 さ れ て い る ア ス フ ァ ル ト路 盤 直 結 軌 道 に は い
く つ か の 形 式 が あ る19),21),22)。 代 表 的 な 形 式 は,
図1.2.8に
示 すATD(Asphalt
Direktauflagerung
der Schwellen)軌
中 央 部 の 凸 部 と2ブ
Tragschicht
mit
道 で あ り,路
盤
図1.2.8ATD軌
道19}
ロ ッ ク ま く らぎ の 間 に 樹 脂 を
詰 め る こ と で 水 平 荷 重 に抵 抗 す る こ と を特 徴 と し
て い る 。 そ の 他 に,円
筒 形 コ ン ク リ ー トで 水 平 抵
抗 力 を と るWayss&Freytag軌
道(図1.2.9),鋼
ピ ン で 水 平 抵 抗 力 を と るWalter軌
製
道(図1.2.10)
な ど が あ る 。 い ず れ の 構 造 も ア ス フ ァ ル トコ ン ク
図1.2.9Wayss&Freytag軌
道19)
リー トと ま く らぎ の 間 に 設 置 し た 不 織 布 で 不 陸 を
吸 収 さ せ て い る 。 ドイ ツ の ア ス フ ァ ル ト路 盤 直 結
軌 道 は2001年
ま で に 約80kmの
延 長 に施工 された
実 績 が あ る23)。
ア ス フ ァ ル ト路 盤 直 結 軌 道 に つ い て は,欧
比 較 し て 一 般 的 に 地 盤 条 件 が 劣 り,荷
しい我 が国で は
米 と
重条件 も厳
「鉄 道 構 造 物 等 設 計 標 準 ・同 解 説
図1.2.10Walter軌
道19)
省 力化軌道 用土 構造 物 」 にお いて 設計例 が示 され
て い る もの の未 だ 実 施 工 例 は 無 く,研 究 の さ らな る 深 度 化 が 必 要 とさ れ て い る 。 本 研 究 で は 第4
章 に お い て 試 験 軌 道 に よ る ア ス フ ァル ト路 盤 直 結 軌 道 の 改 良 型 を提 案 す る と と も に,そ の 変 形 特
性 に 関 す る詳 細 な検 討 を行 っ て い る 。
従 来,土 路 盤 上 の 省 力 化 軌 道 に は コ ン ク リー ト路 盤 よ り も地 盤 の 変 形 へ の 追 随 性 に優 れ る ア ス
フ ァ ル ト路 盤 が 適 して い る と考 え られ て お り,RA型
ス ラ ブ 軌 道 に つ い て も様 々 な 路 盤 厚 さ の 構 造
が 建 設 され た 。 そ の 経 緯 の 中 で 地 盤 条 件 が 良 好 で な い 箇 所 に,比 較 的 薄 い路 盤 で 適 用 され た こ と
も あ り,一 部 に変 状 が 生 じ た こ とか ら あ ま り良 くな い イ メ ー ジが 定 着 して し ま っ た よ うで あ る 。
し か しな が ら現 在 で は 「
鉄 道 構 造 物 等 設 計 標 準 ・同 解 説
省 力化軌 道用 土構 造物 」 に示 され て い
る よ う に,省 力 化 軌 道 を支 持 す る た め の 路 床 条 件 を 満 足 して い る箇 所 に,必 要 な 厚 さ の ア ス フ ァ
ル ト路 盤 を敷 設 す る こ とで,RA型
ス ラ ブ 軌 道 も省 力 化 軌 道 と し て の 必 要 な 性 能 を 満 足 で き る こ と
がわ か って いる。
コ ン ク リー ト路 盤 を 用 い た 土 路 盤 上 ス ラ ブ軌 道 は,厚
モ ル タ ル を介 して 長 さ 約5mのA型
さ300mmの
コ ン ク リー ト路 盤 上 に,CA
軌 道 ス ラブ を 敷 設 す る 構 造 で あ る 。 ア ス フ ァル ト路 盤 のRA
ス ラ ブ 軌 道 が 本 格 採 用 に 至 らな か っ た こ と も あ り,新 設 線 用 の 新 し い省 力 化 軌 道 と して 検 討 が 行
わ れ て いた 。 本 構 造 の 北 陸 新 幹 線 へ の 適 用 の 可 否 を判 断 す る た め に,現 地 の 高 盛 土 の箇 所 にお い
て 載 荷 試 験 が 行 わ れ た24)。 コ ン ク リ ー ト に 発 生 す る 応 力 や 路 床 に 作 用 す る 応 力,繰
る 路 盤 の 累 積 沈 下 量 な ど が 検 討 さ れ た 結 果,良
は 最 終 的 に 北 陸 新 幹 線 の4%に
返 し載 荷 に よ
好 な 性 能 を 有 し て い る こ とが 確 認 さ れ た 。 本 構 造
あ た る 軌 道 延 長10.8kmに
敷 設 さ れ た 。 そ の 後,東
北新 幹線 や 九州
新 幹 線 の 建 設 にお いて 本 格 的 に 導 入 さ れ て い る。
一 方 ,ド
イ ツ で は 新 しい 土 路 盤 上 省 力 化 軌 道 の 開 発 を 進 め て い る 2 5 ) 。 図 1 . 2 . 1 1 に 示 す マ ンハ イ
ム 近 郊 の ワ グ ホ イ ゼ ル(Waghausel)では,1996年の 夏 に7種
験 敷 設 さ れ た 。図1.2.12に
り,今
示 す7種
類 の省 力化軌 道 が営業 線 にお いて試
類 の 各 軌 道 は 約3kmの
区 間 に 数 百 メ ー トル ず つ 敷 設 さ れ て お
後 の 高 速 新 線 の た め の 軌 道 構 造 は こ の 中 か ら選 定 さ れ る 可 能 性 が 高 い 。 こ の 中 で,Bauart
BES,System
Zublin?BTE,Heilit&Woerner
Crailsheim
FFC,Hofchtief/Screck-Mievesと
呼 ば れ る4
種 類 の 軌 道 は セ メ ン ト安 定 処 理 し た 路 盤 の 上 に 現 場 打 設 の コ ン ク リー ト ス ラ ブ 版 を 構 築 す る 構 造
を 採 用 し て い る 。 こ の4種
類 の 軌 道 は レー ル 支 持 部 の 構 造 にそ れ ぞ れ 独 自 の 形 式 を 採 用 して い る
た め 施 工 方 法 が 異 な る が,列
車 荷 重 を支 持 す る た め の ス ラ ブ版 の 力 学 的 な 機 能 は基 本 的 に等 しい 。
我 が 国 の 土 路 盤 上 ス ラ ブ 軌 道 に 用 い ら れ る ス ラ ブ 版 は 工 場 製 品 で あ り,現
リ ー トの 上 にCAモ
場打 設 した路盤 コ ンク
ル タ ル を 介 し て ス ラ ブ 版 を 設 置 さ せ る 構 造 で あ る こ と と 比 較 す る と,ド
の 方 式 は 構 造 を 簡 略 化 し て コ ス トの 低 減 を 図 っ た 構 造 で あ る と い え る 。Heitkampは
軌 道 の 一 種 で あ り,セ
ま く らぎ直結
メ ン ト安 定 処 理 し た 路 盤 上 に 箱 形 に コ ン ク リ ー ト を 打 設 し,そ
バ ラ ス ト を 散 布 し てPCま
く ら ぎ を 敷 設 し,最
の箱 の中 に
後 にモ ル タ ル を注 入 して バ ラス トを 固 め る と い う
構 造 で あ る 。 こ れ は ドイ ツ に お い て 実 績 の あ る レ ー ダ 軌 道 と 基 本 構 造 は 同 じ で あ り,そ
と い う 位 置 付 け に な る 。Raisengleis f〓rFernbahnは
し た 構 造 で あ り,板
イツ
の改 良型
透 水 コ ン ク リ ー トの 路 盤 上 に 縦 ま く ら ぎ を 設 置
状 の 構 造 体 で 軌 道 を支 持 す る 他 の 軌 道 構 造 と は 異 な る 力 学 的 構 造 を持 つ 。 こ
の 軌 道 の 特 徴 と し て,表
面 を 芝 生 で 覆 う こ と に よ り 景 観 に 配 慮 す る と と も に,芝
生 の吸 音効 果 に
よ り騒 音 を 低 減 す る こ と を 期 待 し て い る こ と が 挙 げ ら れ る 。 F F B S - A T S - S A T O は ア ス フ ァ ル ト路 盤
に ま く ら ぎ を 直 接 設 置 す る 構 造 で あ り,既
に ドイ ツ で 実 績 の あ る ア ス フ ァル ト路 盤 直 結 軌 道 と ほ
ぼ 等 し い 構 造 を 持 つ 。 こ の 軌 道 の 特 徴 と し て,ま
挿 入 す る こ と に よ り,不
く ら ぎ と ア ス フ ァ ル ト路 盤 の 間 に 薄 い ゴ ム 材 を
陸 を 吸 収 さ せ て い る こ と が 挙 げ ら れ る 。 ま た,騒
音 を吸収 す るた め に ま
く らぎ 間 に 吸 音 材 を 設 置 して い る こ と が 特 徴 とな っ て い る。
図1.2.11ド
イ ツ に お け る 省 力化 軌 道 の 試 験 敷 設 箇 所 ( W a g h a u s e L ) 2 5 )
図1.2.12ド
イ ツ に お け る7種
類 の 省 力 化 軌 道 の 試 験 軌 道25)
1.2.2移
動荷 重載 荷 に関す る既往 の研 究
従 来 軌 道 や 路 盤 の 載 荷 試 験 で は,レ ー ル 上 の1点
た 。 こ れ は特 に実 物 大 試 験 に お いて,実
で 載 荷 を行 う定 点 載 荷 試 験 が 多 く行 わ れ て き
際 の 列 車 荷 重 と 同 じよ う に 移 動 荷 重 を 与 え な が ら繰 返 し
載 荷 試 験 を行 う こ と が 困 難 で あ った た め で あ る。 し か しな が ら,定 点 載 荷 と移 動 載 荷 で は 載 荷 方
法 の 違 い か ら地 盤 に 作 用 す る応 力 経 路 が 異 な る こ と に 加 え,定 点 載 荷 で は 載 荷 点 直 下 にお け る 局
所 的 な 変 形 の た め,繰 返 し載 荷 中 に支 持 条 件 が 変 化 す る 可 能 性 が 考 え られ て い た 。平 川 ら(2000)
26),27),28),29)は1/5縮尺 の 軌 道 模 型 を用 いて 移 動 荷 重 載 荷 実 験 を行 っ た 。 地 盤 は 豊 浦 砂 を用 い て 作
成 し,そ の 上 に ま く ら ぎ7本
載 荷 を 行 っ た 結 果,移
と レー ル か ら構 成 さ れ る 軌 道 模 型 を設 置 した 。 移 動 荷 重 載 荷 と定 点
動 荷 重 載 荷 に よ る 繰 返 し載 荷 の 累 積 沈 下 量 は定 点 載 荷 で の 値 よ り も 大 き く
な る傾 向 に あ る こ と が わ か っ た(図1.2.13)。
これ は 従 来 行 わ れ て きた 定 点 載 荷 試 験 で は,累 積 沈
下 量 に つ い て 定 量 的 な 評 価 が で き な い こ と を 示 唆 し て い る 。 この 理 由 の 一 つ と して,定
点 載荷 で
は 繰 返 し載 荷 に よ っ て 載 荷 点 直 下 の ま く らぎ が 受 け る 荷 重 が 減 少 し,隣 接 す る ま く ら ぎ に 荷 重 が
分 散 さ れ る こ と に よ り,地 盤 に載 荷 さ れ る荷 重 の ピー ク値 が 減 少 す る こ とが 指 摘 さ れ た 。 ま た,
移 動 荷 重 載 荷 で は 主 応 力 の 方 向 が 回 転 に よ る影 響 や,ま
が あ る こ とな どが 指 摘 され た 。 さ ら に,村 本 ら(2001)に
を用 い た 移 動 荷 重 載 荷 試 験 お よ び 定 点 載 荷 試験,1本
験 の 結 果 が 比 較 さ れ,ま
く ら ぎ の ゆす り こみ に よ る影 響 の 可 能 性
よ り,ま く ら ぎ15本
を有 す る 軌 道 模 型
の ま く らぎ に 対 して 載 荷 を行 う 一 点 載 荷 試
く らぎ の沈 下 量 は移 動 荷 重 載 荷 が 最 も大 き く,一 点 載 荷,定
点 載荷 の順
に小 さ くな る こ と が 報 告 さ れ て い る30)。
原 田 ら(1993)31),32)とTowhata
et al(1994)33)は
中 空 ね じ り試 験 機 を用 い て,載 荷 荷 重 の 移 動
を想 定 した 主 応 力 方 向 の変 化 を 伴 う繰 返 し載 荷 試 験 を行 っ た 。 供 試 体 に は カ オ リナ イ トを 混 合 し
た 豊 浦 砂 が 用 い られ た 。 主 応 力 の方 向 は 一 様 弾 性 地 盤 に お い て 分 布 荷 重 が 無 限 遠 か ら近 づ き,無
限 遠 に遠 ざ か る場 合 に 地 盤 内 に 作 用 す る 応 力 と して 定 め られ た 。 主 応 力 の 方 向 を 回 転 させ る こ と
に よ り,主 応 力 の 回 転 が な い場 合 と比 較 して 繰 返 し 載 荷 に よ る 残 留 ひ ず み 量 が 大 き くな る こ とが
示 された 。
図1.2.13定
点 載 荷 と 移 動 載 荷 の 比 較27)
図1.2.14載
荷 方 法 に よ る 沈 下 量 の 差30)
Wong
(DSC)を
and Arthur(1985)34)は
主 応 力 の 方 向 を 制 御 で き る せ ん 断 試 験 装 置Directional
shear cell
開 発 し,異 方 性 が砂 の 変 形 特 性 に 与 え る影 響 を検 討 した 。開 発 され た 試 験 装 置 は 図1.2.15
に示 す よ う に,供 試 体 を 包 ん だ メ ン ブ レ ン の 表 面 に等 間 隔 で 結 合 され た ス トラ ッ プ に 張 力 を 与 え
る こ と よ っ て せ ん 断 応 力 を作 用 さ せ,直 応 力 は エ アバ ッ グ に よ っ て 与 え る構 造 とな っ て い る 。 せ
ん 断 応 力 を 与 え る ス トラ ップ は300%ま
で 伸 び る 柔 軟 な 材 料 で あ り,供 試 体 側 面 に均 等 な せ ん 断 応
力 が 与 え られ る 構 造 で あ っ た 。 こ の 装 置 を用 いて 供 試 体 の 堆 積 面 か ら主 応 力 の 方 向 を 傾 け た 載 荷
試 験 を 行 い,堆 積 面 か らの 主 応 力 方 向 の 変 化 量 が 大 き い 場 合 に強 度 が 小 さ くな る こ とが 示 さ れ た 。
ま た,応
力 履 歴 が あ る場 合 の 再 載 荷 で は 先 行 して 作 用 し た 主 応 力 の 方 向 か らの 傾 き が 大 き い 場 合
の 方 が,強
度 が 小 さ くな る こ とが 示 さ れ た 。 さ ら に,主 応 力 比 が 一定,す な わ ち,Rmax=(σ1/σ
3)maxが 一 定 の 場 合 で も主 応 力 の 方 向 を変 化 させ る こ と に よ り,塑 性 変 形 の 進 行 が 継 続 す る こ とが
示 され た 。
以 上 の よ う に,主 応 力 の方 向 が 変 化 す る と塑 性 変 形 量 が 大 き くな る こ とは 既 往 の研 究 よ り明 ら
か とな っ て い るが,鉄
道 に お け る 主 応 力 の 回 転 が 地 盤 の 変 形 に 与 え る影 響 に つ い て は 詳 細 な 研 究
は 行 わ れ て い な い 。 鉄 道 で は 道 路 の よ う に 車 輪 に よ って 連 続 的 に 載 荷 され る 場 合 と は 異 な り,ま
く らぎ を 介 し て 不 連 続 的 に列 車 荷 重 が 地 盤 に伝 達 さ れ る た め,地 盤 内 の 応 力 が 最 も 大 き く な る ま
く らぎ 直 下 で は 主 応 力 の 方 向 は ほ と ん ど変 化 して い な い 可 能 性 が 考 え られ る た め,軌 道 の 構 造 を
考 慮 した 詳 細 な 研 究 が 必 要 で あ る 。
図1.2.15Directional
shear
cell(DSC)34)
1.2,3バ
ラ ス ト軌 道 の 変 形 特 性 に 関 す る既 往 の 研 究
石 川 ら(1995)は
実 物 大 試 験 に よ り,バ ラ ス ト軌 道 の 繰 返 し載 荷 試 験 を行 っ た35)。ま く らぎ に
対 して 繰 返 し 載 荷 を行 う と負 荷 曲 線(荷 重-変
位 曲 線)は 荷 重 強 度 が 小 さ い と き に接 線 ば ね 係 数
が 小 さ く,荷 重 強 度 が 大 き い と き に接 線 ばね 係 数 の大 き くな る 非 線 形 の形 状 と な る こ と を示 した 。
ま た,繰 返 し載 荷 を行 う こ と に よ り塑 性 変 形 の 進 み が 収 束 して も,載 荷 荷 重 を 増 加 させ る と再 び
塑 性 変 形 が 進 行 す る こ と を示 した(図1.2.16)。
さ ら に初 期 変 位 過 程 にお け る 残 留 変 位 量 の増 加 が
終 了す れ ば,そ れ 以 上 塑 性 変 形 の 進 行 しな くな る よ うな 荷 重 強 度 の 上 限 が あ る こ と を示 し た(図
1.2.17)。 ま た,石 川 ら(1997)は
大 型 三 軸 試 験 に よ るバ ラ ス トの繰 返 し載 荷 試 験 を行 った36)。大
型 三 軸 試 験 にお い て も,繰 返 し載 荷 試 験 を行 う と応 力-ひ ず み 曲 線 が 下 に 凸 の 形 状 に な る こ と を
示 した 。 ま た,3000回
の 繰 返 し載 荷 によ り弾 性 化 が 進 行 した 場 合 で も,塑 性 ひ ず み の影 響 は 無 視
で き な い こ と を 示 した 。 さ ら に石 川 ら(1998)は
不 連 続 変 形 法(DDA)を
用 い て,大 型 三 軸 圧 縮
試 験 に よ るバ ラ ス トの 繰 返 し変 形 挙 動 の 解 析 を 行 っ た37)。ま た,石 川 ら(2000)はDDAを
バ ラ ス ト軌 道 の 実 物 大 載 荷 試 験 の解 析 を行 っ た 。 載 荷 試 験 にお い て,ま
セ ル を配 置 して ま く らぎ 下 面 圧 力 の分 布 を測 定 し た38)。図1.2.18に
はバ ラ ス ト粒 子 と の 接 触 状 況 によ っ て 圧 力 が ば らつ くが,DDAを
用 いて
く ら ぎ 下 面 に分 割 ロー ド
示 す よ う に,ま
く らぎ 下 面 で
用 い る こ と で そ の ば らつ き を 表
現 で き る こ と を 示 した 。
図1.2.16バ
図1.2.17載
荷 荷 重 と 沈 下 量 の 関 係35)
ラ ス ト軌 道 の 負 荷 曲 線35)
図1.2.18ま
く ら ぎ 下 面 圧 力 の 分 布38)
関 根 ら(2000)は 安 山 岩,玄 武 岩,輝 緑 岩 の3種 類 の バ ラ ス トを 用 い て 大 型 三 軸 試 験 を行 っ た39)。
そ の 結 果,輝
緑 岩 の バ ラス トに お け る強 度,変
形 係 数 が 最 も大 き く,繰 返 し載 荷 に よ る残 留 ひ ず
み も小 さ くな る こ と を示 し た 。 また,関 根 ら(2002)は
ロサ ン ゼ ル ス 試 験 機 に よ り,強 制 的 に磨
耗 さ せ た バ ラ ス トの 大 型 三 軸 試 験 お よ び 実 物 大 軌 道 の繰 返 し載 荷 試 験 を 行 っ た40)。そ の 結 果,磨
耗 の 進 行 した バ ラス トで は 強 度 が 下 が り,繰 返 し載 荷 に よ る残 留 沈 下 量 が 大 き くな る こ と が 示 さ
れ た 。 ま た,河
野 ら(2001)は
バ ラ ス ト粒 子 の 磨 耗 の 状 態 を把 握 す る 方 法 と して,偏
角 関 数 を用
い た 形 状 評 価 手 法 が 有 効 で あ る こ と を示 し た41)。
Ishikawa&Sekine(2002)は
バ ラス トを 模 擬 して1/5縮 尺 の 相 似 粒 度 に 再 配 合 し た 単 粒 度 砕 石 を
用 い て 移 動 荷 重 載 荷 実 験 を行 い,移 動 載 荷 で は 一 点 載 荷 よ りも沈 下 量 が 大 き く な る こ と を 示 した
(図1.2.19)42)。
い 砕 石 の 方 が,沈
ま た,粒 度 分 布 の 異 な る2種
下 量 が 小 さ くな る こ とを 示 した 。
図1.2.19バ
1.2.4道
類 の 砕 石 を 比 較 し,均 等 係 数 が 大 き く密 度 も大 き
ラ ス ト軌 道 模 型 に お け る 移 動 載 荷 と定 点 載 荷 の 比 較42)
路 の ア ス フ ァル ト舗 装 に関 す る 既 往 の 研究
我 が 国 に お け る ア ス フ ァル ト舗 装 の 設 計 は従 来
か ら米 国 で 開 発 さ れ た 方 法 を 参 考 に して 行 わ れ て
き た 。 第 二 次 世 界 大 戦 後 ア ス フ ァル ト舗 装 が 広 く
行 わ れ る よ う に な り,昭 和36年
装 要 綱 に お い て,路
の ア ス フ ァル ト舗
床 のCBR(California
bearing
ratio)に 応 じ て 舗 装 厚 さ を 規 定 す る 設 計 方 法 が 取
り入 れ られ た 。 図1.2.20に
示 す 設 計CBRと
舗装
厚 さ の 関 係 は 米 国 陸 軍 技 術 部 隊(Crops
engineers)に
よって 開発 され た もので あった 。
そ の 後,昭 和42年
米 国 のAASHO道
of
の ア ス フ ァル ト舗 装 要 綱 で は
路 試 験 の 結 果 を取 り入 れ,TA法
に よ る 設 計 方 法 が 導 入 さ れ た 。AASHO道
路試 験
図1.2.20設
計CBRと
舗 装 厚 さの 関 係
で は1956年
か ら2年 間 に 渡 り,約100億
円 を 投 じて100万
回 を越 す 走 行 試 験 が 行 わ れ,そ の試 験
結 果 は 世 界 各 国 の 舗 装 の 設 計 に大 き な 影 響 を与 え た 。TA法 は 式(1.2.1)に
示 す よ う に,舗 装 を 加
熱 アス フ ァ ル ト混 合 物 の み で 施 工 した と き の 厚 さ を等 値 換 算 厚TAと
し,そ れ 以 外 の 材 料 を 用 い る
層 に は 等 値 換 算 係 数aを 乗 じる こ と に よ り,舗 装 の 合 計 厚 さがTAと
な る よ う に 設 計 す る方 法 で あ
る 。 ア ス フ ァル ト舗 装 要 綱 にお け る 等 値 換 算 係 数 につ い て は我 が 国 に お け る 試 験 結 果 を加 味 して
決 定 され た 。 等 値 換 算 厚TAは
こ こ に,a1,a1,…,an:構
T1,T2,…,Tn:構
昭 和53年
設 計 輪 荷 重 をPと
して,式(1.2.2)で
与 え られ た 。
成 各 層 の 等 値 換 算 係 数
成 各 層 の 厚 さ(cm)
の ア ス フ ァル ト舗 装 要 綱 に お い て 式(1.2.2)は,輪
荷 重5tf(49kN)に
通 行 回 数 の 関 数 に変 換 され た 。 輪 荷 重Piが 舗 装 の破 壊 に与 え る 割 合Wiは
す な わ ち,ア
式(1.2.3)で
ス フ ァル ト舗 装 の 破 壊 に 与 え る 影 響 は 載 荷 荷 重 の 大 き さ の4乗
の で あ る 。 これ は ア ス フ ァル トコ ン ク リー トお よ び 路 床 に 関 して,破
ひ ず み の4乗
換 算 した 輪 数 の
表 され る。
に比例す る とい うも
壊 に至 る ま で の 載 荷 回 数 が
程 度 の 逆 数 に 比例 し て い る こ と に基 づ い て い る 。 こ こで は,ひ ず み と載 荷 荷 重 は線
形 の関係 に ある ことが仮定 されて い る。
平 成4年 の ア ス フ ァル ト舗 装 要 綱 にお い て も設 計 の 基 本 はTA法
に よ る も の で あ っ た が,多 層 弾
性 解 析 に よ る 理 論 的 設 計 法 に つ い て も示 さ れ た 。理 論 的 設 計 法 にお け る 代 表 的 な 例 は1963年
表 され たShellに よ る 方 法 と,1981年
に 発 表 され たAI(Asphalt
に発
Institute)に
よ る 方 法 で あ る。 どち ら
の 設 計 方 法 で も アス フ ァル トコ ン ク リー ト下 面 の 引張 りひ ず み と路 床 表 面 の 圧 縮 ひ ず み で 破 壊 基
準 を規 定 して い る点 で 共 通 お り,AASHO道
路 試 験 な どの 実 測 デ ー タ を も と に し て理 論 的 方 法 を
補 完 して い る 。Shellの設 計 方 法 で はBurmisterの 多 層 弾 性 理 論 を 基 礎 と したBISER(Bitumen
Analysis in Road)と よ ば れ る プ ログ ラ ム を用 い て 構 造 解 析 を行 っ て い る 。一 方,AIの
DAMAと
よ ば れ る プ ロ グ ラム で 寿 命 予 測 が 行 わ れ た 。DAMAで
み 込 まれ て い るが,こ ち ら はCheveronに
り,BISERと
設計方 法 では
は 構 造 解 析 を行 う プ ロ グ ラ ム も組
よ ば れ る プ ロ グ ラ ム を 拡 張 した も の で あ
同 様 にBurmisterの 解 法 を 基 本 と して い る 。 我 が 国 の ア ス フ ァル ト舗 装 要 綱 で はAI
に よ る方 法 が 参 考 と して 示 さ れ,TA法
平 成13年
よ るN-Layerと
Stress
に よ らな い場 合 は これ に従 う も の と さ れ た 。
の 「
舗 装 の 構 造 に 関 す る 技 術 基 準 ・同 解 説 」 お よ び 「
舗 装 設 計 施 工 指 針 」 にお いて,
性 能 規 定 に よ る 設 計 方 法 が 導 入 され た43),44)。この 中 で は 平 成4年
れ て い た,AIに
の ア ス フ ァル ト舗 装 要綱 で 示 さ
よ る 設 計 方 法 を 基 本 と した 設 計 方 法 が 示 され て い る 。
1.2.5既
往 の研究 の まとめ
従 来 の研 究 にお い て,列 車 荷 重 を支 持 す る 地 盤 の 様 々 な 強 化 方 法 が 検 討 さ れ て き た 。この 中 で,
本 研 究 に お い て は ア ス フ ァル トコ ン ク リー ト路 盤 を使 用 す る 「強 化 路 盤 」 お よ び 「ア ス フ ァル ト
路 盤 直 結 軌 道 」 を対 象 と した検 討 を行 う こ と と した 。 鉄 道 に お い て 路 盤 お よ び 路 床 を強 化 す る大
き な 目的 の 一 つ は,列 車 走 行 に よ る繰 返 し載 荷 に よ っ て 生 じる 地 盤 の 残 留 変 形 量 を減 少 させ る こ
とで あ る 。 従 来,繰 返 し載 荷 に よ る 路 盤 ・路 床 の 残 留 変 形 量 を 評 価 す る 際 に は 定 点 で 載 荷 を行 う
方 式 が 一 般 的 に用 い られ て き た 。 しか し,地 盤 の 残 留 変 形 量 は 載 荷 点 が 移 動 す る移 動 荷 重 載 荷 の
場 合 と定 点 で 載 荷 が 行 わ れ る 定 点 載 荷 の 場 合 で は,移 動 荷 重 載 荷 の 場 合 の 方 が,残 留 変 形 量 が 大
き くな る こ と が 最 近 の 研 究 に よ り明 らか に な って き た 。 そ の 原 因 と して は,地 盤 内 にお い て 主 応
力 の 方 向 が 変 化 す る と残 留 変 形 量 が 大 き く な る こ とが 既 往 の 研 究 に よ り明 らか と な って お り,主
応 力 方 向 の 回 転 が 残 留 変 形 量 に影 響 を 与 え て い る と一 般 的 に考 え られ て い る 。 し か しな が ら,鉄
道 を支 持 す る 地 盤 内 に お け る主 応 力 方 向 の 回転 量 を 具 体 的 に検 討 した 上 で,移
動荷 重載荷 の影 響
と 関 連 付 け た 研 究 は十 分 に行 わ れ て い な い。 鉄 道 で は 一 般 的 に 不 連 続 に配 置 さ れ た ま く ら ぎ に よ
っ て 地 盤 に 載 荷 が 行 わ れ る た め,車 輪 に よ って 載 荷 が 行 わ れ る 道 路 の 場 合 と比 較 して,応 力 の 最
も集 中す る ま く ら ぎ直 下 で は 主 応 力 の 方 向 が あ ま り変 化 しな い と い う特 徴 を 持 つ た め,主 応 力 方
向 の 回転 と残 留 変 形 量 の 関 係 を 結 び つ け る た め に は慎 重 な 検 討 が 必 要 で あ る。
一方
,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの 破 壊 基 準 にお い て は,道 路 舗 装 の研 究 にお い て蓄 積 さ れ た
結 果 を鉄 道 に 適 用 す る こ と が で き る と考 え られ る 。 そ の た め に は 鉄 道 の アス フ ァル トコ ン ク リー
トに お い て 発 生 す る 弾 性 ひ ず み を 精 度 良 く推 定 す る必 要 が あ る。 し か しな が ら,鉄 道 で は レー ル
お よ び ま く ら ぎ に よ り構 成 さ れ る軌 道 構 造 を 介 して 載 荷 が 行 わ れ る た め,車 輪 で 載 荷 さ れ る 道 路
の 場 合 と 比 較 して 変 形 の メ カ ニ ズ ム が 複 雑 で あ る 。 そ の た め,鉄
道 路 盤 と して の ア ス フ ァル トコ
ン ク リー トの ひ ず み を精 度 良 く推 定 す る方 法 を確 立 す る 必 要 が あ る 。 本 研 究 で は,模 型 実 験 や 実
物 大 軌 道 を 用 い た 載 荷 実 験 を行 い,路 盤 の 変 位,ま
角 的 に測 定 す る こ と に よ り,FEMで
く らぎ の 受 け る 荷 重,地 盤 内 の 応 力 な ど を 多
求 め られ る変 形 の信 頼 性 を検 証 す る こ と と した 。
1.3従
1.3.1初
来 の強 化路盤 の設 計方 法
期 の強化路 盤
昭 和49年
に大 阪 府 の泉 北 鉄 道 の 建 設 にお い て,
我 が 国 で 初 め て の 強 化 路 盤 が 施 工 され た6)。 原 地
盤 が 粘 土 質 細 砂 で 構 成 さ れ る 切 取 り 区 間 にお い て,
噴泥 の発 生が懸 念 された ため 強化 路盤 が導入 され
る こ と とな っ た 。 当該 区 間 は 同 時 に建 設 され る 道
路 と並 行 す る箇 所 で あ っ た た め,道 路 技 術 者 に よ
っ て 強 化 路 盤 の 建 設 が 行 わ れ た 。 路 盤 の構 造 を 図
1.3.1に 示 す 。原 地 盤 に は 表 層 路 盤 を支 持 す る た め
の 支 持 力が 期 待 で き な い と判 断 され た た め,路 床
改 良 層 と して 原 地 盤 の 表 層50cmは
図1.3.1泉
北 鉄 道 に お け る 強 化 路 盤6)
ま さ 土 に置 き
換 え られ,平 板 載 荷 試 験 に よ るK30値 が160MN/m3
以 上 とな る よ う に 締 め 固 め られ た 。 ま さ 土 に よ る
路 床 改 良 層 の 上 部 に厚 さ15cmの
粒 度調 整鉱 さい
に よ る 強 化 路 盤 が 施 工 され た 。 一 方,ま
さ土 の路
床 改 良 層 の 下 部 に は,原 地 盤 の細 粒 分 が 侵 入 しな
い よ う に,川 砂 を用 い た 厚 さ20cmの
遮 断層が 設
け られ た 。
国 鉄 東 京 第 二 工 事 局(東 二 工)よ
っ て,東 海 道
図1.3.2国
鉄 東 京 第 二 工 事 局 の 強 化 路 盤45)
線 お よ び 横 浜 線 に お い て 保 守 省 力 化 を 目 的 と した
粒 度 調 整 鉱 滓 を 使 用 し た 強 化 路 盤 が 施 工 さ れ た45)。設 計 と 施 工 に あ た っ て は,上 記 の 泉 北 鉄 道 の
例 が 参 考 に さ れ た 。 路 盤 の 構 造 を 図1.3.2に
と して 粒 度 調 整 砕 石 層 が 設 け られ,二
示 す 。 路 盤 上 層 の 粒 度 調 整 鉱 滓 の 下 部 に は路 盤 下 層
層 で 路 盤 を構 成 す る 構 造 とな っ た 。 粒 度 調 整 鉱 滓 は 水 和 反
応 に よ り凝 結 硬 化 す る こ と に よ り,数 ヶ 月 で 強 度 が3∼6MN/m2に
最 終 強 度 は10MN/m2以
達 し,そ の後 も硬 化 が 促 進 さ れ
上 が 期 待 さ れ た 。鉱滓層の凝固に 必 要 な 水 分 の 発 散 を防 ぐた め に,表 面 は
ゴ ム 入 りア ス フ ァル ト乳 剤 で 被 膜 処 理 さ れ た 。
設 計 方 法 は道 路 の ア ス フ ァ ル ト舗 装 に 準 じ,路 床 のCBRか
ら舗 装 厚 さ を 定 め るTA法
の で あ っ た 。粒 度 調 整 砕 石,粒 度 調 整 鉱 滓 の 等 値 換 算 係 数 αに は そ れ ぞ れ0.35お
られ た 。 路 盤 上 層 の 粒 度 調 整 鉱 滓 の 厚 さ は 1 5 c mと
じて15cmま
1.3.2昭
た は25cmと
和53年
昭 和53年
によ る も
よ び0.45が 用 い
さ れ,粒 度 調 整 砕 石 の厚 さ は 路 床 のCBRに
応
され た 。
の 「
建造 物設 計標 準解 説
土 構 造 物 」 に お け る 設 計 方 法,2),46)
に制 定 され た 「
建造 物 設計標 準解 説
土 構 造 物 」 に お い て,路 盤 ・路 床 か らな る二 層
系 弾性体 地盤 の表 面 にお け るたわ み量 が制 限値以 下 とな るよ うに路 盤の厚 さを定 める方法 が採 用
され た 。 こ の 設 計 方 法 の起 源 は,ア
メ リカ の カ ンサ ス 州 に お い て 道 路 の ア ス フ ァル ト舗 装 の 設 計
に用 い られ た カ ン サ ス 三 軸 法47),48)であ っ た 。 これ は1940年
代 に パ ー マ ー(Palmer)と バ ー バ ー
(Barber)に よ っ て 提 案 さ れ た 方 法 で,舗 装 と路 床 か らな る 二 層 弾 性 地 盤 を一 様 弾 性 地 盤 に置 き 換 え
て 解 析 を行 い,舗 装 表 面 の た わ み 量 の 制 限 値 を2.54mm(0.1イ
ン チ)と
して い た 。 解 析 に 用 い る
変 形 係 数 は 三 軸 圧 縮 試 験 よ り求 め る こ と と して い た 。昭 和53年
の 「
建 造物設 計標準解 説
物 」 で は鉄 道 に お け る妥 当 な 値 と し て,路 盤 表 面 の た わ み 量 の 制 限 値 を2.5mmと
土構 造
して路盤 の厚 さ
が 定 め られ た 。 こ の 設 計 方 法 で は そ れ 以 前 に施 工 さ れ て い た 強 化 路 盤 よ り も厚 くな っ た が,既
に
施 工 さ れ て い た 強 化 路 盤 の 耐 久 性 お よ び 軌 道 保 守 に 対 す る 有 効 性 が 確 認 で き て い な い こ と も あ り,
厚 い 強 化 路 盤 が 採 用 さ れ る こ と とな っ た 。 以 下 に設 計 方 法 の 概 略 を ま とめ る。
(1)道
床 圧 力の分 布範 囲
道 床 圧 力 は,道 床 バ ラ ス ト内 に作 用 す る 圧 力 で あ り,道 床 下 面 に お け る道 床 圧 力 が 路 盤 に 作 用
す る 路 盤 圧 力 と な る 。 道 床 圧 力 の ま く らぎ 長 手 方
向 の分布 につ いては木 ま くらぎ を弾性 床 上 の梁 と
考 え る こ と に よ っ て 図1.3.3に
示 す よ うな 分 布 が
得 ら れ た 。 し か し,コ ン ク リー トま く ら ぎ の 場 合
で 同 様 の 計 算 を行 う と,そ の 剛 性 が 大 き い た め に,
ほ と ん ど一 様 分 布 とな っ て し ま う 。 し か し,道 床
の突 き 固 め は レー ル 下 を 主 体 と して 行 わ れ る た め
に,レ ー ル 直 下 の バ ラ ス トの 剛 性 が 高 くな り,実
情 と し て は 上 記 の 分 布 形 状 と変 わ らな い も の と 考
え られ た 。 レー ル 直 下 で 主 に荷 重 を 支 持 し,ま
く
ら ぎ 中 心 部 は 荷 重 を支 持 し な い と い う仮 定 の も と
図1.3.3道
床 圧 力(路
盤 表 面 の 圧 力)2)
に,設 計 の た め の 道 床 圧 力 は 分 布 形 状 を簡 略 化 し,
図1.3.4設
計 に用 い られ た 道 床 圧 力 の 分 布(片
レー ル あ た り)2)
例 え ば ま く らぎ 長 さ2m(在
来 線)の 場 合 で は レー ル 直 下 の 幅75cmの
れ た 。 深 さ方 向 の 分 布 と し て は,深 さ15cmま
範 囲で荷 重 を支持 す る とさ
で は 応 力 が 分 散 せ ず,そ れ 以 下 で は45度
の角度 で
応 力が 分 散 す る と 仮 定 さ れ た 。 これ は 従 来 か ら軌 道 の 動 力 学 設 計 に 際 して 想 定 さ れ て い た 応 力 の
分 布 範 囲 の 考 え 方 を 導 入 し た も の で あ っ た 。 以 上 の考 え方 を も と に,図1.3.4に
示 す 分布 範 囲が
定 め られ た 。
(2)レ
ール圧 力
レー ル 圧 力 は レー ル か ら ま く ら ぎ に 作 用 す る荷 重 で あ る 。 レー ル 圧 力 は,コ
ン ク リー トま く ら
ぎ の 設 計 に使 用 さ れ て い る 荷 重 が 用 い られ た 。 ま く ら ぎ の 荷 重 分 散 に よ る分 散 係 数 は 在 来 線 に お
い て は輪 重 の0.5,新
幹 線 にお い て は輪 重 の0.6と
し て いた が,衝 撃 係 数1.0を 割 り増 して 設 計 荷
重 と して い た 。 例 え ば,在 来 線 に お い て 軸 重16tfの 場 合,レ ー ル 圧 力(レ ー ル か ら ま く ら ぎ に作
用 す る荷 重)Pは
以 下 の よ う に計 算 さ れ る 。
在 来 線 に つ い て は ま く ら ぎ の 設 計 荷 重 を 強 化 路 盤 設 計 の た め の レー ル 圧 力 と して も妥 当 な 値 で
あ っ た 。 一 方,新
幹 線 につ い は 高 架 橋 上 で 発 生 す る 動 的 な 輪 重 を想 定 した 荷 重 で あ っ た た め,土
路 盤 上 の 強 化 路 盤 の 設 計 お い て は これ を低 減 して12tf(118kN)程
(3)道
度 と考 え る こ と と され た 。
床圧 力
上 記 の 道 床 圧 力 の 分 布 範 囲 と レー ル 圧 力 の考 え 方 よ り,道 床 圧 力が 計 算 さ れ た 。 こ の 道 床 圧 力
を路 盤 表 面 に 作 用 させ た 弾 性 解 析 を行 い,路 盤 の 変 位 量 が 求 め られ た 。
(4)路
盤の厚 さを決 め る計算 方法
路 盤 ・路 床 か ら な る 二 層 系 弾 性 地 盤 の 表 面 に長 方 形 等 分 布 荷 重 が 作 用 した と き に,そ の 表 面 中
心 点 の た わ み が 一 定 値 以 下 に な る よ う に,路 盤 の 厚 さ と材 料 が 定 め られ た 。
一 様 弾 性 地 盤 表 面 に 長 方 形 等 分 布 荷 重 が 作 用 し た と き の 中 心 軸 上 の 垂 直 応 力(σ z)はBoussinesq
の 理 論 を 基 にSteinbrennerが 式(1.3.1)のよ う に求 め た 。
こ こ に,p0:荷
2a,2b:長
z:深
中 心 軸 上 のZ点
重 強 度,m=a/b,n=z/b
方 形 の1辺
の長 さ
さ方 向の長 さ
で の 沈 下(wz)は 側 方 ひ ず み を 考 慮 し て 式(1.3.2)で 得 ら れ る 。
こ こ に,E:地
μ:ポ
盤 の変 形係数
ア ソン比
σx:x軸
方 向の応 力
σy:y軸
方 向 の応 力
式(1.3.2)の 計 算 結 果 は 式(1.3.3)と な る 。
地 表 面 中 心 点 の 沈 下(W0)は 式(1.3.3)に お い てn=0と
お け ば よ く,そ
の 結 果 は 式(1.3.4)と な る 。
路 盤 ・路 床 か ら な る 二 層 弾 性 地 盤 の 表 面 変 位 を 求 め る 厳 密 解 は 複 雑 で 難 解 で あ る た め,Barber
の 仮 定 を基 に した 近 似 解 法 に よ り解 が 求 め られ た 。Barberは
係 数 が 大 き い 二 層 弾 性 地 盤 の 場 合,上 層 の 変 形 係 数E1を
わ りに 上 層 の 高 さhを
図1.3.5に
示 す よ う に,上 層 の 変 形
下 層 の 変 形 係 数E2に
置 き 換 え,そ
のか
増 加 させ て 一 様 地 盤 に近 似 す る 解 法 を示 した 。 この 方 法 によ れ ば,ポ
アソ
ン 比 が 上 層 と下 層 で 一 定 で あ れ ば,上 層 路 盤 の厚 さhをZ1に
置 き換 え る こ と に よ り,変 形 係 数
E2の 一 様 弾 性 地 盤 と して 近 似 解 を求 め る こ とが で き る 。
Z1:換
算 され た 厚 さ
h:路
盤厚 さ
図1.3.5Barberの
仮 定2)
路 盤 ・路 床 か ら な る 二 層 弾 性 地 盤 の 長 方 形 等 分 布 荷 重 が 作 用 し た 時 の 路 床 表 面 の 沈 下wsは
(1.3.3)に 式(1.3.5)を 代 入 し,EをE2に
路 盤 自体 の 圧 縮 量wrは
床 の 沈 下wsを
置 き 換 え た 式(1.3.6)で 与 え ら れ る 。
一 様 地 盤 の 表 面 沈 下 量 を 示 す 式(1.3.4)のEをE2に
差 し 引 き,E2/E1を
こ こ に,w1:路
式
置 き 換 え た 値 か ら路
掛 けた も の に等 し い 。
盤 ・路 床 か ら な る 二 層 系 弾 性 体 をBarberの
仮 定 を 基 に,路
床 のみ の一様 弾性体
と した 表 面 沈 下
従 っ て,二 層 弾 性 地 盤 の 長 方 形 中 心 点 の 沈 下(w0')はwsとwrを
(1.3.6),(1.3.7)に
(5)路
よ り,式(1.3.8)と
加 え た も の に 等 し い か ら 式(1.3.4),
な る。
盤 表 面の たわ み量 の制 限値
路 盤 の 表 面 に あ る 限 界 以 上 の た わ み が 定 常 的 に 生 じ る と表 層 に ひ び 割 れ が 生 じ る と い う 考 え方
によ り,路 盤 表 面 の た わ み 量 に 制 限 値 を 設 け た 。 道 路 の ア ス フ ァル ト舗 装 で は た わ み 量 の 制 限値
を2.5∼4mm程
度 と して い た こ と,お よ び 鉄 道 路 盤 の 鉛 直 変 位 は 通 常1∼2mm程
度 生 じて い る こ
とな ど か ら,列 車 の 走 行 安 定 性 も考 慮 して,鉄 道 に お け る 強 化 路 盤 の た わ み 量 の 制 限 値 を2.5mm
と した 。従 っ て,結 果 的 に はPalmerとBarberに
イ ンチ)と
ほ ぼ 等 し い 値 とな っ た 。
よ る カ ンサ ス 三 軸 法 で 用 い られ て い た2.54mm(0.1
(6)路
盤 の 変 形係 数
ア ス フ ァ ル ト コ ン ク リ ー トお よ び 粒 度 調 整 砕 石 の 変 形 係 数 は 道 路 に お け る 過 去 の 実 測 や 研 究 を
参 考 に し て,1800kgf/cm2(176MN/m2)と
し た 。 ア ス フ ァ ル ト コ ン ク リ ー トに つ い て は,一
は こ れ よ り 一 桁 大 き い 値 で あ る こ と が 分 か っ て い た が,強
般的に
化 路 盤 に お け る 施 工 厚 さ が 薄 い こ と や,
温 度 に よ る 変 形 係 数 の 低 下 を 考 慮 し て 安 全 側 の 値 と し て,1800kgf/cm2(176MN/m2)が
ス ラ グ の 変 形 係 数 に つ い て は 国 鉄 東 京 第 二 工 事 局 が 昭 和50年
採用 された。
に 実 施 した 一 軸 圧 縮 試 験 の 結 果
を 参 考 に し た 。一 軸 圧 縮 試 験 に よ る ス ラ グ の 変 形 係 数 は 概 ね3000∼7000kgf/cm2(294∼686MN/m2)
の 範 囲 に あ り,安
(7)路
全 側 の 値 と し て3000kgf/cm2(294MN/m2)が
床 の変 形係 数
路 床 の 変 形 係 数 は 平 板 載 荷 試 験 に よ るK値
Timochenkoに
75cmの
採 用 された。
を も と に,弾
性 理 論 に基 づ い て 決 め られ た 。
よ る剛 性 円 形 載 荷 板 に よ る 弾 性 変 形 量 は 式(1.3.9)で表 さ れ る 。 式(1.3.9)よ り,直 径
円 形 載 荷 板 に よ る 平 板 載 荷 試 験 のK75値
と地 盤 の変 形 係 数 の 関 係 は 式(1.3.10)で表 され る 。
こ こ で は地 盤 の 変 形 係 数 に対 す る ひ ず み レベ ル 依 存 性 は 考 慮 さ れ て い な い 。
こ こ に,δ:剛
性 円形載荷 板 によ る地表面 変位
P:載
荷 圧 力(kgf/m2)[N/m2]
a:載
荷板 半径
μ:ポ
ア
π:円
周率
E:変
(8)路
ソ
ン
比(0.3)
形 係 数(kgf/m2)[N/m2]
K75:直
径75cmの
載 荷 板 に よ るK値(kgf/m3)[N/m3]
K30:直
径30cmの
載 荷 板 に よ るK値(kgf/m3)[N/m3]
盤 の厚 さ
以 上 の 計 算 方 法 を も と に 路 盤 の 厚 さが 規 定 され た 。 平 板 載 荷 試 験 に よ り求 め られ る変 形 係 数 は
載 荷 板 の 大 き さの 影 響 を 受 け るが,直 径 が75cm以
さ れ て い る 。 しか しな が ら,直 径75cmの
る た め,実
上 で は 載 荷 板 の 大 き さ に よ る影 響 が 小 さ い と
載 荷 板 を 用 い た 平 板 載 荷 試 験 は 大 き な 反 力 を 必 要 とす
施 が 困 難 で あ る。 そ こ で,設 計 標 準 で は 一 般 的 に用 い られ る 直 径30cmの
載 荷 板 を用
い たK30値 で 路 盤 の厚 さ が 規 定 され た 。K30値 とK75値 の 関 係 は 弾 性 理 論 に よ れ ば 直 径 比 か らK30=
2.5K75と な る が,経 験 的 な 値 と してK30=2.2K75が
値 は 載 荷 板 の 直 径30cmの
(108MN/m3)の
場 合,お
値 で 規 定 さ れ,路
よ び11kgf/cm3(108MN/m3)以
採 用 され た 。 以 上 の 理 由 に よ り,平 板 載 荷 試験
床 のK30値
が7kgf/cm3(69MN/m3)∼11kgf/cm3
上 の 場 合 に分 け て 路 盤 の 厚 さ が 示 さ れ た 。
1.3.3平
平 成4年
成4年
の 「
鉄 道 構 造 物 等 設 計 標 準 ・同 解 説
土 構 造 物 」 に お け る 設 計 方 法1)
に 制 定 さ れ た 設 計 標 準 で は 設 計 方 法 の 見 直 しが 行 わ れ,よ
り合 理 的 な 設 計 方 法 とす る
こ とで 路 盤 の 厚 さ が 低 減 され た 。 この 設 計 標 準 で は 新 し い研 究 の 成 果 も取 り入 れ られ,昭 和53年
の 「
建造 物 設 計標 準解 説
計 思 想 は 昭 和53年
土 構 造 物 」 と比 較 す る と よ り詳 細 な 検 討 が 行 わ れ て い る 。 基 本 的 な 設
の 設 計 標 準 と同 様 に,弾 性 解 に よ るた わ み 量 が 制 限 値 以 下 と な る よ う に 路 盤 厚
さ を定 め る と い う考 え 方 で あ っ た 。 以 下 に設 計 方 法 の概 要 を示 す 。 な お,平 成4年
構 造 物 等 設 計 標 準 ・同 解 説
(1)路
土 構 造 物 」 は,平 成12年
制定 の 「
鉄道
にSI単 位 版 に 改 訂 さ れ て い る 。
盤 厚 さ を求め る計 算手法 の概要
設 計 方 法 の 違 い と して は じ め に挙 げ られ る の が,荷 重 の 与 え 方 で あ る 。昭 和53年
は 設 計 荷 重 は 基 本 的 にPCま
く らぎ の 設 計 荷 重 が 用 い られ,載 荷 点 直 下 の ま く ら ぎ 以 外 へ の 荷 重
分 散効 果 は 考 慮 さ れ て いな か った が,平 成4年
の 設 計 標 準 で は2軸 台 車 に よ る連 行 荷 重 の 影 響 と
複 数 の ま く らぎ へ の 荷 重 の 分 散 が 考 慮 され た 。 具 体 的 に は 図1.3.6に
慮 した3次 元FEM解
図1.3.6路
の設 計 標準 で
析 を行 い,3次
元FEM解
示 す よ う に,連 行 荷 重 を 考
析 か ら求 め られ た 路 盤 の 変 位 と一 致 す る よ う に,
盤 厚 さ を 求 め る 場 合 のFEM解
析 とBarberの
弾 性 解 と の 関 係1)
弾 性 解 析 に お い て 載 荷 す る 荷 重 に補 正 係 数 αを 乗 じ る と い う方 法 が 取 られ た 。これ は 当 時FEMが
大 型 計 算 機 で な け れ ば 使 用 す る こ とが で き な い 状 況 で あ っ た こ と を考 慮 して,一
般 的な技術 者 が
パ ソ コ ン を 用 いて 設 計 を行 う こ とが で き るよ う に最 終 的 な 計 算 は 弾 性 解 析 を 用 い る こ と と し た た
め で あ っ た 。 この た め,弾 性 解 析 の 中 で は3次
元 の 連 行 荷 重 の 影 響 は 荷 重 に対 す る 補 正 係 数 と し
て 考 慮 され る こ と とな っ た 。弾 性 解 析 は 昭 和53年
用 され て い た が,平
成4年
の 設 計 標 準 で は1本 の ま く らぎ を 対 象 と して 適
の 設 計 標 準 で は 輪 重 が5本 の ま く ら ぎ に0.4:0.2:0.1の
る と仮 定 し,路 盤 の た わ み は5本
割 合で 分散 す
の ま く ら ぎ に よ る た わ み の重 ね 合 わ せ と して 考 慮 さ れ た 。 弾 性
解 析 で は 昭 和53年 の 設 計 標 準 と 同 様 に,式(1.3.8)に示 したBoussinesqの 弾 性 理 論 を利 用 したBarber
の 弾 性 解 が 用 い ら れ た 。3次
0.614+0.00000571E(E:路
(2)路
元FEM解
析 と の 整 合 性 を と る た め の 荷 重 の 補 正 係 数 αは
床 の 変 形 係 数(kN/m2))と
された 。
盤 圧 力の 求め 方
昭 和53年
の 設 計 標 準 で は,ま
く らぎ1本 に 対 してPCま
盤 表 面 に 作 用 す る 道 床 圧 力 を 求 め て い た が,平 成4年
重 の0.4,隣
の ま く ら ぎ で は 輪 重 の0.2,2本
た 。 ま た,昭 和53年
く らぎ の 設 計 荷 重 が 作 用 す る と して 路
の 設 計 標 準 で は車 輪 直 下 の ま く ら ぎ に は輪
隣 の ま く らぎ で は 輪 重 の0.1の 荷 重 が 作 用 す る と さ れ
の 設 計 標 準 で は ま く らぎ の レー ル 直 下 の 部 分 で 主 に 荷 重 を 支 持 し,ま く らぎ
中 央 部 で は 荷 重 を 支 持 し な い と い う仮 定 で 圧 力 の 分 布 範 囲 が 規 定 され て いた が,平 成4年
標 準 で は 図1.3.7に 示 す よ う に,ま
の設 計
く ら ぎ 全 面 で 一 様 に荷 重 を 支 持 す る と さ れ た 。
輪 重 に つ い て は,速 度 の増 加 に 伴 う速 度 衝 撃 率 を乗 じた 値 が 使 用 さ れ た 。 速 度 衝 撃 率 は 過 去 の
軌 道 に お け る研 究49)を参 考 に し,列 車 速 度 をVと
して,ロ
ン グ レー ル の 場 合1+0.3V/100,継
目レ
ー ル の 場 合1+0 .5V/100と され た 。列 車 速 度 と路 盤 圧 力 の 関 係 を図1.3.8に 示 す 。普 通 鉄 道 の 場 合,
図1.3.7設
計 に用 い られ た 道 床 圧 力 分 布1)
図1.3.8列
車 速 度 と 路 盤 圧 力 の 関 係1)
図1.3.9許
乗 車 率200%の
電 車(モ
67.7(1+0.3V/100)(kN/m2)が
ハ ネ582形)お
(kN/m2)が
輪 重 を 考 慮 し,路
盤 圧 力Pは
考 慮 して 路 盤
用 い ら れ た 。普 通 鉄 道 の 継 目 レ ー ル で は ま く ら ぎ の 幅 が 大 き
ン グ レ ー ル の 場 合 よ り も 静 的 な 路 盤 圧 力 は 小 さ く な り,P=59.8(1+0.5V/100)
用 い ら れ た 。普 通 鉄 道 の 場 合 は 最 高 速 度160km/h,新
と し て 路 盤 圧 力 が 求 め られ た が,速
(3)強
よ び 機 関 車(EF81,71)の
用 い ら れ た 。 新 幹 線 鉄 道 の 場 合 に つ い て も 乗 車 率200%を
圧 力 はP=50.0(1+0.3V/100)(kN/m2)が
く な る た め,ロ
容 た わ み 角 の 求 め 方1)
度 衝 撃 率 の 最 大 値 は1.8と
幹 線 鉄 道 の 場 合 は 最 高 速 度270km/h
された。
化路 盤 の許 容 たわみ 量
昭 和53年
の 設 計 標 準 に お いて 強 化 路 盤 の 許 容 た わ み 量 は,道 路 にお け る研 究 事 例 や 鉄 道 路 盤 で
一 般 的 に発 生 す る 変 位 量 を考 慮 して2 .5mmと
さ れ た 。 平 成4年 の 設 計 標 準 で は,鉄 道 の 強 化 路 盤
にお け る た わ み 量 は 隣 接 す る ま く ら ぎ に よ る 重 ね 合 わ せ の影 響 を含 む た め,輪
重直 下 のま くらぎ
に よ っ て の み 生 じる 場 合 とは 変 形 特 性 が 異 な る と考 え られ た 。 そ の た め,た わ み 角 に よ っ て 規 定
す る こ とが 合 理 的 で あ る と判 断 され た 。 そ こで,道 路 の ア ス フ ァル ト舗 装 で は0.5mmを
超 え るた
わ み 量 で ひ び 割 れ が 発 生 す る と い う研 究 事 例50)を参 考 と して,許 容 た わ み 量 が 検 討 さ れ た 。 道 路
に お け る0.5mmの
た わ み に 対 す る 路 盤 の た わ み 角 と等 し い た わ み 角 とな る よ う に,鉄 道 の 強 化 路
盤 にお け る た わ み 角 が 求 め られ た 。 た わ み 角 の 求 め 方 を 図1.3.9に
て は2.5mmの
た わ み 量 とす る こ とで,道 路 に お け る0.5mmの
し くな る こ とが 明 らか に な っ た 。 検 討 の 結 果,た
和53年
(4)平
の 設 計 標 準 と 同 じ く,2.5mmが
示 す 。 そ の 結 果,鉄
道 にお い
た わ み量 に対す るたわ み角 とほぼ等
わ み 量 の 許 容 値 と して は従 来 の 値 も考 慮 して 昭
採 用 された。
板 載 荷 試 験 に よ るK30値 か ら路 床 の 変 形 係 数 を 求 め る 方 法
平 板 載 荷 試 験 のK30値 か ら路 床 の 変 形 係 数 を 求 め る 方 法 に つ い て は,昭 和53年
様 に,式(1.3.11)に 示 すTimochenkoの
囲 を 考 慮 して 載 荷 板 は 直 径75cmを
の 設 計 標 準 と同
弾 性 理 論 が 利 用 さ れ た 。路 床 内 に作 用 す る 列 車 荷 重 の 影 響 範
基 本 と して 考 え られ た が,実 際 に は 直 径75cmの
載 荷 板 を用 い
た 平 板 載 荷 試 験 は 大 き な 反 力 を 必 要 とす るた め,実 施 が 困 難 な 場 合 が 多 い 。 そ こで,設
径30cmの
載 荷 板 を 用 い たK30値
をK75値
に 変 換 して 用 い る こ と と され た 。K30値 とK75値 の 関 係
は 経 験 的 な 値 お よ び 空 港 や 道 路 の 設 計 に お い て 使 用 され て い る 値 を考 慮 して 昭 和53年
準 と同 じ く,K30=2.2K75が
計上 は直
の設 計標
採 用 され た 。
一 方 ,平 板 載 荷 試 験 に お け る ひ ず み レベ ル は10-3程 度 とな る 。 これ に 対 し て,実 物 大 模 型 試 験
に よ る 路 盤 の繰 返 し載 荷 試 験 の 結 果 か ら列 車 荷 重 に よ っ て 生 じる 路 床 の ひ ず み レベ ル は 概 ね10-4
程 度 で あ っ た 。 地 盤 材 料 の変 形 係 数 は ひ ず み レベ ル に依 存 す る た め,合 理 的 な 設 計 を 行 うた め に
は,ひ ず み レベ ル に合 わ せ た 変 形 係 数 を採 用 しな けれ ばな らな い 。 図1.3.10に
とせ ん 断 ひ ず み の 関 係 を 示 す 。 ひ ず み が10-3と10-4の
せ ん断弾性 係数 比
場 合 で は せ ん 断 弾 性 係 数 に は概 ね2倍
程度
の 差 が 見 られ る 。 そ こで,設 計 に用 い る 路 床 の 変 形 係 数 は ひ ず み レベ ル を考 慮 して 平 板 載 荷 試 験
に よ っ て 求 ま る 変 形 係 数 を2倍
荷 試 験 のK値
に割 り増 して 使 用 す る こ と と し た 。 以 上 の考 え 方 に よ り,平 板 載
よ り路 床 の 変 形 係 数 を 求 め る方 法 に は 式(1.3.12),(1.3.13)が 用 い られ た 。
図1.3.10せ
ん 断 弾 性 係 数 比 と せ ん 断 ひ ず み の 関係1)
こ こ に,δ:剛
性 円 形 載 荷 板 に よ る 地 表 面 沈 下 量(m)
p:載
荷 応 力(MN/m2)
a:載
荷 板 半 径(m)
μ:ポ
ア ソ ン 比(0.3)
π:円
周率
E:変
(5)路
形 係 数(MN/m2)
K75:直
径75cmの
載 荷 板 に よ るK値(MN/m3)
K30:直
径30cmの
載 荷 板 に よ るK値(MN/m3)
盤の 変形係 数
ア ス フ ァ ル ト コ ン ク リ ー トの 変 形 係 数 は 温 度 に 依 存 し,そ
ベ ル ま で 広 く 分 布 す る 。 し か し,ア
っ た こ と や,薄
に し て,昭
和53年
和53年
レ
ス フ ァ ル トコ ン ク リ ー ト の 変 形 係 数 に つ い て は 研 究 段 階 で あ
い ア ス フ ァ ル ト コ ン ク リー トで は 変 形 係 数 が 小 さ く な る と い う 研 究 事 例51)を 参 考
の 設 計 標 準 で 使 用 さ れ て い た1800kgf/cm2(=176MN/m2,平
版 の 設 計 標 準 で は180MN/m2)を
て は,昭
の 値 は100MN/m2∼10000MN/m2の
踏 襲 す る こ と と さ れ た 。 こ こ で,設
の 設 計 標 準 で は1kgf/cm2=0.098MN/m2で
準 を 改 訂 し た 平 成12年
のSI単
年 のSI単
計 荷 重 に つ い て は1kgf=9.8Nで
位 版 で も,設
成12年
位
計 に用 い る 変 形 係 数 に つ い
換 算 さ れ て い た が,平
位 版 で は1kgf/cm2=0.1MN/m2で
のSI単
成4年
の 設計標
換 算 さ れ て い る 。 な お,平
成12
換 算 され て い る 。
粒 度 調 整 砕 石 の 変 形 係 数 に つ い て は 実 物 大 模 型 に よ る 路 盤 の 載 荷 試 験 結 果 に 対 し て,FEMに
る の シ ミ ュ レー シ ョ ン が 行 わ れ た 結 果,概
験 と 解 析 で 一 致 し た こ と に よ り,昭
ね1800kgf/cm2(180MN/m2)の
和53年
よ
とき に路盤 の変 形量 が実
の 設 計 標 準 の 値 を 踏 襲 し て1800kgf/cm2(180MN/m2)が
用 い られ た 。
水 硬 性 粒 度 調 整 高 炉 ス ラ グ 砕 石 の 変 形 係 数 に つ い て は,最
ス ラ グ 砕 石(HMS-25)を
JIS制
大 粒 径25mmの
用 い て 一 軸 圧 縮 試 験 に よ るE50が
定 時 に 専 門 委 員 会 に 提 出 さ れ た 資 料 を 参 考 に し て,設
20kgf/cm2(2.OMN/m2)と
水硬 性粒 度 調整 高炉
求 め られ た 。 一 方,ス
計 に 用 い るHMSの
さ れ た 。 一 軸 圧 縮 試 験 の 結 果 か ら20kgf/cm2(2.OMN/m2)に
3000kgf/cm2(300MN/m2)程
1り値 で あ っ た こ と か ら,強
度 で あ っ た 。 こ の 値 は 昭 和53年
ラ グ(HMS)の
長 期 強度 は
相 当 す るE50は
の 設 計標 準 で 用 い られ て い た 値 と同 様
化 路 盤 の 設 計 値 に は3000kgf/cm2(300MN/m2)が
用 い られ た 。
(6)路
盤 厚 さの計 算結果 と設 計路 盤厚 さ
平 成4年
慮 し,5本
53年
の 設 計 標 準 に よ る 計 算 方 法 で は,輪 重 が5本
の ま く らぎ に荷 重 が 分 散 され る 効 果 を考
の ま く ら ぎ に よ る 路 盤 の た わ み を 重 ね 合 わ せ て そ の 最 大 値 を用 い る 。 そ の た め,昭 和
の 設 計 標 準 と 比 較 す る と,計
算 方 法 と し て は 路 盤 の た わ み が 大 き く な る 方 向 と な る(図
1.3.11)。 しか しな が ら,主 に 路 床 の 変 形 係 数 を求 め る方 法 を ひ ず み レベ ル を考 慮 す る こ と に よ り
見 直 して,従
来 よ り も大 き く と る こ と と した た め,結 果 と し て 必 要 な 路 盤 の厚 さ は薄 くな っ た。
路 盤 の 厚 さ は路 床 のK30値 が70NM/m3∼110NM/m3の
け て 規 定 さ れ て い る 。 路 床 のK30値
70NM/m3に
場 合 と110NM/m3以
が70NM/m3∼110NM/m3の
上 の2種 類 の 場 合 に分
範 囲 の 場 合 は安 全 側 の値 を と っ て
対 応 す る 路 盤 の厚 さ と す る こ と と され て い る 。 一 方,路 床 のK30値
き は,必 要 な 路 盤 厚 さ が0に な る 場 合 が 生 じる(図1.3.12)。
が110NM/m3の
と
これ は 路 盤 表 面 の た わ み 量 は 路 床 の
変 形 係 数 に大 き く依 存 す る た め,路 床 の 変 形 係 数 が 大 き い 場 合 は路 盤 が な くて もた わ み 量2.5mm
以 下 と い う条 件 を満 足 す る 場 合 が あ る か らで あ る。 しか しな が ら,路 盤 に は バ ラ ス トの 貫 入 や 雨
水 の 浸 入 を防 止 す る 効 果 が あ る た め,弾 性 変 形 に よ る た わ み 量 が 小 さ くて も路 盤 は 設 置 す る 必 要
が あ る 。 この た め,路 盤 の 厚 さ は 路 床 のK30値 が70NM/m3の
値 が110NM/m3以
上 の 場 合 の 路 盤 厚 さ は70NM/m3の
図1.3.11路
図1.3.12路
場 合 を 基 本 と して 考 え,路 床 のK30
場 合 の 半 分 とす る こ と と さ れ た 。 路 盤 の 最 小
床 の 変 形 係 数 と 路 盤 面 の 沈 下 量 の 関係1)
床 のK30値 と路 盤 面 の 沈 下 量 の 関 係1)
厚 さ は粒 度 調 整 砕 石 層 の 施 工 性 な ど を考 慮 し,粒 度 調 整 砕 石 層15cm,ア
層5cmの
(7)路
合 計20cmと
ス フ ァル トコ ン ク リー ト
され た 。
盤 厚 さの変 遷
平 成4年 の 設 計 標 準 に よ り,昭 和53年
の 設 計 標 準 と 比較 して 路 盤 の 厚 さ が 低 減 す る こ と とな っ
た 。 これ は,計 算 方 法 や 設 計 の た め の 変 形 係 数 の 見 直 しだ け で な く,現 地 調 査 に よ る裏 づ け の も
と に判 断 され た 。 現 地 の 実 態 調 査 で は 国 鉄 東 京 第 一 工 事 局(東 一 工)お
よび国鉄 東京第 二工事 局
(東二 工)に よ っ て 施 工 され た 初 期 の 強 化 路 盤 が 調 査 され た 。 これ らの 強 化 路 盤 は 昭 和53年
計 標 準 で 規 定 さ れ た 路 盤 よ りも 厚 さ が 薄 く,平 成4年
調 査 の結 果,粒
の設 計 標 準 と ほ ぼ 同 じ厚 さで あ った 。 実 態
度 調 整 鉱 さ い を用 いた ス ラ グ 路 盤 の 一 部 に ク ラ ッ ク の 発 生 が あ っ た も の の,問 題
とな る よ うな 変 状 は特 に認 め られ な か った 。 路 盤 厚 さ の 変 遷 を 図1.3.13に
図1.3.13路
1.3.4従
の設
示す 。
盤 厚 さ の 実 態 の 変 遷1)
来 の 強 化 路 盤 の 設 計 方 法 の ま とめ
従 来 の強 化 路 盤 の 設 計 で は,路
盤 表 面 の 変 位 量 に 制 限 値 を 設 け,そ の 制 限 値 以 内 の 変 位 とな る
よ う に路 盤 の厚 さ を 求 め る 方 法 を 採 用 して い た 。 平 成4年
の 設 計 標 準 に お い て は,ま
重 分 散 効 果 や 変 形 係 数 の ひ ず み レ ベ ル 依 存 性 を 考 慮 す るな ど,よ
く ら ぎの 荷
り実 際 の 変 形 挙 動 に即 した 設 計
方 法 とな っ た 。 しか しな が ら,従 来 の 方 法 で は路 床 の 平 板 載 荷 に よ るK値,す
な わち路床 の剛性
に よ っ て 路 盤 の 厚 さ が 一 義 的 に 定 め られ る た め,性 能 規 定 に よ る 設 計 に対 応 す る こ とが で き な い
こ とか ら,新 し い 設 計 方 法 の 導 入 が 必 要 と さ れ て いた 。 本 研 究 で は 道 路 の ア ス フ ァル ト舗 装 に お
け る性 能 規 定 に よ る 設 計 方 法 を参 考 と し,ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの 破 壊 基 準 か ら強 化 路 盤 の
耐 用 年 数 を規 定 す る 方 法 に つ い て 検 討 を行 う こ と と した 。
1.4本
研 究 の 目的 と概 要
1.4.1本
研 究 の 目的
本 研 究 で は,移 動 荷 重 の 影 響 を 考 慮 した 鉄 道 路 盤 の 変 形 挙 動 に つ いて 詳 細 な検 討 を 行 っ た 上 で,
強 化 路 盤 の 弾 性 挙 動 をFEMに
よ り適 切 に 評 価 し,強 化 路 盤 の新 しい 設 計 方 法 を 提 案 す る こ と を 目
的 と して い る 。
従 来,鉄
道 路 盤 の 載 荷 試 験 で は レー ル 上 の 一点 で 繰 返 し荷 重 を 与 え る 定 点 載 荷 試 験 が 多 く用 い
られ て き た が,定 点 載 荷 で は 載 荷 点 直 下 に 局 所 的 な 変 形 が 生 じ る た め 載 荷 中 に軌 道 の支 持 条 件 が
変 化 し,変 形 挙 動 を 適 切 に評 価 で き な い とい う問 題 が あ っ た 。 ま た,最 近 の研 究 で 移 動 荷 重 載 荷
を行 う と定 点 載 荷 よ り も沈 下 量 が 大 き くな る こ とが 分 か っ て き た が,そ の メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に
す る 必 要 が あ った 。 本 研 究 で は 鉄 道 路 盤 の 模 型 実 験 を 行 う こ と に よ り,載 荷 方 式 が 鉄 道 路 盤 の 変
形 特 性 に 与 え る影 響 を 検 討 し,そ の 原 因 に つ い て 解 明 す る こ と を第 一 の 目的 と し た 。
一 方 ,信 頼 性 の 高 い路 盤 の 設 計 を行 う た め に は,路 盤 の 弾 性 変 形 挙 動 を正 確 に シ ミ ュ レー トす
る 必 要 が あ る 。 しか し な が ら,鉄 道 で は レー ル,ま
く ら ぎ,バ
ラ ス トに よ り構 成 され る 軌 道 構 造
に よ り路 盤 に荷 重 が 伝 達 され る た め,そ れ ぞ れ の 部 材 の 変 形 挙 動 を考 慮 した 解 析 を 行 う必 要 が あ
り,そ の た め に は 部 材 の 形 状 を 実 際 に近 い 形 で 表 現 で き るFEMを
用 い る のが 良 い 。列 車 荷 重 を 支
持 す る地 盤 の ひ ず み は10-4レ ベ ル で 比 較 的 微 小 で あ るた め,従 来 か ら実 務 上 は 線 形 弾 性 解 析 で よ
い と考 え られ て い る が,ま
て,測
く らぎ の 受 け る 荷 重,路 盤 の 変 位,地
盤 の 応 力 な ど の変 形 挙 動 に つ い
定 結 果 と解 析 の 結 果 の 整 合 性 を 多 角 的 に検 証 し た研 究 は 十 分 に は行 わ れ て い な い 。 本 研 究
で は模 型 実 験 お よ び 実 物 大 試 験 の 結 果 に つ い てFEMで
路 盤 の 弾 性 変 形 挙 動 に 対 す るFEM解
シ ミ ュ レー シ ョン を行 う こ と に よ り,鉄 道
析 の 精 度 を検 証 す る こ と を 第 二 の 目的 と した 。
構 造 物 の 設 計 は 性 能 規 定 化 に よ る方 法 に移 行 しつ つ あ り,強 化 路 盤 の 設 計 も性 能 規 定 に よ り行
う こ とが 求 め られ て い る 。 一 般 的 に ア ス フ ァル トコ ン ク リー ト路 盤 の耐 用 年 数 は ア ス フ ァル トコ
ン ク リー ト下 面 の 引張 りひ ず み に よ っ て 規 定 され る 。 本 研 究 で は 道 路 の ア ス フ ァル ト舗 装 の 設 計
に 用 い られ て い る ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの 破 壊 基 準 式 を 鉄 道 の 強 化 路 盤 に適 用 す る た め に,
強 化 路 盤 に お け る ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み を精 度 良 く推 定 す る方 法 に つ い て 検 討 を 行
っ た 。FEM解
析 に よ っ て 求 め られ る 鉄 道 路 盤 に お け る ア ス フ ァル トコ ン ク リー トの ひ ず み の 精 度
を 検 証 した 上 で,性 能 規 定 に よ る強 化 路 盤 の 新 し い設 計 方 法 を提 案 す る こ と を第 三 の 目的 と し た 。
1.4.2本
第1章
研究 の概要
で は,既 往 の研 究 と従 来 の 強 化 路 盤 の設 計 方 法 を紹 介 し,本 研 究 の 意 義 と 目的 に つ い て
整 理 を行 っ た 。
第2章
で は,小 型 模 型 を用 い た 移 動 荷 重 載 荷 試 験 を行 い,移 動 荷 重 載 荷 に よ る 路 盤 の弾 性 挙 動
を 評 価 す る と と も に,繰 返 し載 荷 に よ る 累 積 沈 下 量 に つ い て 検 討 を行 っ た 結 果 に つ い て ま とめ た 。
そ の 中 で,移 動 荷 重 載 荷 と定 点 載 荷 に よ る変 形 特 性 の 違 い と そ の メ カ ニ ズ ム に つ いて 検 討 を 行 っ
た 。 ま た,画 像 解 析 を行 う こ と に よ り,地 盤 内 の ひず み 分 布 に 関 す る検 討 を行 っ た 。
第3章 で は 小 型 模 型 を 用 い た 移 動 荷 重 載 荷 試 験 の結 果 に つ い てFEM解
析 によ る シミュ レー シ ョ
ン を行 い,FEMで
そ の 変 形 挙 動 を 適 切 に評 価 で き る こ と を 示 し た 。 ま た,FEMの
結 果 か ら移 動 荷
重 載 荷 に よ る主 応 力 の 方 向 の 変 化 とそ の大 き さ を検 討 した 結 果 を ま と め た 。
第4章
で は,実 物 大 ア ス フ ァル ト路 盤 直 結 軌 道 の 試 験 軌 道 を構 築 し載 荷 試 験 を 行 っ た 結 果 に つ
いて ま と め た 。実 物 大 軌 道 に対 して もそ の 弾 性 変 形 挙 動 をFEMで
適切 に評価で きる こ とを示 した。
ま た,輪 軸 落 下 試 験 に よ り衝 撃 荷 重 を 与 え る こ と に よ りア ス フ ァル ト路 盤 の 動 的 な 挙 動 に つ い て
も検 討 を行 っ た 。
第5章
で は,実 物 大 バ ラス ト軌 道 の 試 験 軌 道 を構 築 し,モ ー タ カ ー に よ る走 行 試 験 を行 い,実
際 のバ ラス ト軌 道 に お い て ま く らぎ が 受 け る 荷 重 に つ い て 検 討 した 結 果 を ま とめ た 。 ま た,バ
ス トの 上 に 設 置 した ま く ら ぎ に 対 して 繰 返 し載 荷 試 験 を行 い,ま
く ら ぎ 下 面 圧 力,お よ び 路 盤 表
面 の 圧 力 に つ い て検 討 を行 っ た 。バ ラス ト軌 道 に対 す る繰 返 し載 荷 試 験 の 結 果 をFEMで
結 果,バ
ラ
評価 した
ラ ス トの 変 形 係 数 を適 切 に 設 定 す る こ とで 路 盤 表 面 に作 用 す る 圧 力 を シ ミ ュ レー トで き
る こ と が 明 らか とな っ た 。 一 方,ま
く らぎ 下 面 の材 質 が ま く ら ぎ の 累 積 沈 下 量 に与 え る 影 響 を検
討 した 。
第6章
で は,新
しい 強 化 路 盤 の 設 計 方 法 を提 案 し,第2章
で,強 化 路 盤 のFEM解
か ら第5章
析 を行 っ た 結 果 を ま と め た 。FEMに
リー トの ひ ず み か ら耐 用 年 数 の試 計 算 を行 っ た 結 果,平 成4年
説
までの結果 を踏 ま えた上
よ り求 め られ た ア ス フ ァル トコ ン ク
の 「
鉄 道 構 造 物 等 設 計 標 準 ・同 解
土 構 造 物 」 の 路 盤 厚 さ とす る こ とで,十 分 な 耐 用 年 数 を有 して い る こ とが 確 認 さ れ た 。 今 後
は性 能 規 定 化 に対 応 した 新 し い 設 計 方 法 を 用 い る こ とで 列 車 荷 重 や 列 車 本 数 に対 応 し た 柔 軟 な 設
計 を行 う こ とが で き る よ う に な る た め,よ
り経 済 的 な 路 盤 厚 さ を設 定 で き る よ う にな る こ とが 期
待 され る。
第7章 で は,本 研 究 で 得 られ た 結 論 を ま と め た 。
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道 総 研 報 告,特
別第
17号,1997
21)(社)日
本 ア ス フ ァ ル ト協 会:ア
る 調 査 報 告 書,1996.3
ス フ ァ ル トの 鉄 道 道 床 お よ び 廃 棄 物 処 理 場 へ の 適 用 に 関 す
22)安 藤 勝 敏:欧 米 に お け る最 近 の 省 力 化 軌 道,鉄
道 総 研 報 告,第12巻
第6号,1998.6
23) Leykauf, G., Lechner, B.: Design of ballastless track structures using sleeper panels fixed on concrete
or asphalt pavements, World conference on railway research, 2001. 10
24)安
藤勝 敏,須
長 誠,関
根 悦 夫,青
ス ラ ブ 軌 道 構 造 の 実 用 化,鉄
木 一 二 三,米
澤 豊 司,岡
道 総 研 報 告,第13巻
本 武 明:RC路
盤 を用 い た 土 路 盤 上
第5号,pp5-10,1999.5
25) FesteFahrbahn,EditionETR, Hestra-Verlag,
1997
26)平 川 大 貴:砂 地 盤 内 に お け る 応 力 分 布 の検 討,東 京 大 学 修 士 論 文,2000.9
27)平 川 大 貴,桃 谷 尚 嗣,川
崎 紘 誉,龍
岡 文 夫:軌 道 模 型 の 挙 動 に 対 す る 載 荷 条 件 の影 響,第7
回 鉄 道 技 術 連 合 シ ン ポ ジ ウ ム(J-Rail2000),日
28)平 川 大 貴,川 崎 紘 誉,桃
会
第55回
谷 尚 嗣,龍
本 機 械 学 会,2000.12
岡文 夫:軌 道 模 型 実 験 に お け る 載 荷 方 法 の 影 響,土
木学
年 次 学 術 講 演 会,2000.9
29) Hirakawa,D.,Kawasaki,H.,Tatsuoka,F.and Momoya,Y.:Effects of loadingconditions on the behavior
of railway track in the laboratory model tests, Bearingcapacity of roads, railwaysand airfields, Lisbon,
Portugal, 2002.6
30)村 本 勝 己,関 根 悦 夫,桃
学 会 第56回
谷 尚 嗣:軌 道 模 型 の 繰 返 し載 荷 試 験 に お け る 載 荷 方 法 の影 響,土
木
年 次 学 術 講 演 会,2001.9
31)原 田 尚 幸,東 畑 郁 生,川 崎 祐 征,須 長 誠:移 動 荷 重 を受 け る 路 盤 土 の 変 形 特 性,第28回
土質
工 学 研 究 発 表 会,1993.6
32)原 田 尚 幸,東
畑 郁 生,川
崎 祐 征,須
に つ い て,土 木 学 会 第48回
長 誠:移
動 荷 重 を 受 け る路 盤 土 の沈 下 量 に お よ ぼ す 要 因
年 次 学 術 講 演 会,1993.9
33) Towhata, I., Kawasaki, Y., Harada, N. and Sunaga, M.: Contraction of soil subjected to traffic-type
stress application, Proceedings of the international symposium on pre-failure deformation
characteristicsof geomaterials,Sapporo,Japan, pp.305-310, 1994.9
34) Wong, R.K.S. and Arthur, J.R.F.: Induced and inherent anisotropyin sand, Geotechnique35, No.4,
pp471-481, 1985
35)石
川 達 也,名
村 明:実
物 大 試 験 に よ る 道 床 バ ラ ス ト部 繰 返 し 変 形 特 性 の 検 討,土
木学会 論 文
集,No.512/IV-27,pp.47-59,1995.4
36)石
川 達 也,須
討,土
37)石
長 誠,董
軍,名
村 明:大
型 繰 返 し三 軸 試 験 に よ る 道 床 バ ラ ス トの 変 形 特 性 の 検
木 学 会 論 文 集,No.575/III-40,pp.169-178,1997.9
川 達 也,大
西 有 三:道
床 バ ラ ス トの 繰 返 し 変 形 挙 動 に 対 す る 不 連 続 変 形 法(DDA)の
適 用,
土 木 学 会 論 文 集,No.589/III-42,pp.205-217,1998.3
38)石
川 達 也,大
構 の 検 討,土
39)関
根 悦 夫,木
研 報 告,第14巻
西 有 三,堀
池 高 広:不
連 続 変 形 法(DDA)に
よ る 道 床 バ ラ ス ト部 繰 返 し 変 形 機
木 学 会 論 文 集,No.645/III-50,pp.15-28,2000.3
幡 行 宏,蒋
関 魯,矢
崎 澄 雄,長
第4号,pp.13-18,2000.4
戸 博:道
床 バ ラ ス トの 強 度 ・変 形 特 性,鉄
道総
40)関
根 悦 夫,河
野 昭 子,長
戸 博,鬼
鉄 道 総 研 報 告,第16巻
頭 昭 人:道
床 バ ラ ス ト の 磨 耗 過 程 に お け る 強 度,変
形 特 性,
第4号,pp.13-18,2002.4
41) Kono, A., Sekine, E., Kohata, Y.: An evaluation method for the shape of ballast grains using their
digital data, Quarterly Report of RTRI, Vol.42, No. 1, 2001
42) Ishikawa, T., Sekine, T.: Effects of wheel load on cyclic loading deformation of railroad ballast,
Railway Engineering, 2002. 6
43)日
本 道 路 協 会:舗
装 の 構 造 に 関 す る 技 術 基 準 ・同 解 説,2001.7
44)日
本 道 路 協 会:舗
装 設 計 施 工 指 針,2001.12
45)柳
澤 照 二,原
茂 司:粒
度 調 整 鉱滓 を 用 い た 強 化 路 盤 工,鉄
道 土 木,第17巻
第8号,pp.33-36,
1975.8
46)梅
原 俊 夫,原
茂 司:強
化 路 盤 工 の 設 計,構
造 物 設 計 資 料,No.47,pp.3-6,1976.9
47)内
田 一 郎:道
路 舗 装 の 設 計 法,森
北 出 版,1962
48)松
野 三 郎,養
王 田栄 春
一,三
浦 裕 二,飯
島 尚:道
49)佐
藤 吉 彦,梅
原 利 之 編:線
路 工 学,日
本 鉄道 施設協 会
50)高
速 道 路 調 査 会 ア ス フ ァ ル ト舗 装 追 跡 調 査 結 果 解 析 班:ア
路 舗 装 の 設 計,山
海 堂,1974
ス フ ァ ル ト舗 装 追 跡 調 査 結 果 報 告
書,1976.2
51)秋
山 征 敬,細
田 昌 夫:た
会,pp.303-304,1969.9
わ み 性 舗 装 体 の 弾 性 変 形 係 数 と 温 度,土
木 学 会 第24回
年次 学 術講 演
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