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第78号 地球温暖化と災害を考えよう

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第78号 地球温暖化と災害を考えよう
2015年 12月
第 78号
地球温暖化と災害を考えよう
2015 年 9 月 7 日から 11 日にかけて、台風 18 号などの影響による「平成 27 年 9 月 関東・東北豪雨」が発
生しました。常総市等での鬼怒川決壊による水害は、茨城県にとって 2015 年の大きなニュースのひとつでし
た。堤防が決壊した 9 月 10 日午後から 11 日までに鬼怒川流域で浸水した範囲は国土地理院によると約 40 ㎢
と推測され、この関東・東北豪雨被害は政府が閣議で激甚災害に指定したほど甚大なものでした。また、2015
年は、6 月にも九州地方で梅雨前線が活発化し、床上浸水や土砂崩れ・土石流の被害が発生しました。
地球温暖化が進行すると、地域によってはこのような集中豪雨の頻度や降雨量が増えることが、IPCC(気候
変動に関する政府間パネル)などの機関で予測されています。更に、スパコンの予測では、21 世紀末の大雨に
伴う降水量は 20 世紀末に比べて平均 25%以上増えるとされています。また、地球温暖化は豪雨だけでなく、
海面上昇ももたらすため水害を更に増加させる可能性があります。一方、海水は温度が上がると体積が膨
張する性質があるため、温暖化は海面上昇を進行させてしまいます。その他、
高潮時の沿岸部での浸水被害の増加や、大地震により津波が発生した場合に
も、水かさが増すことで津波の被害がより拡大してしまうなどの影響をもた
らします。そこで、地球温暖化の緩和策と併せ、地球温暖化がもたらす気候
変動により激化する災害への適応策も必要になってきます。
★地球温暖化緩和策と適応策
地球温暖化の緩和策は、CO₂(二酸化炭素)などの温室効果ガスの排出を減らして、地球温暖化そのものの進
行を抑えるもの。1997 年の「京都議定書」のように具体的な排出削減目標を決めることも緩和策のひとつで
す。後述する国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議(以下 COP21)も、地球温暖化緩和策の中身を決める一
環の国際会議でもあります。その他、以下のような対策がこれに相当します。
自然エネルギー、水素エネルギーの利用
化石燃料の使用は地球温暖化の原因となる CO₂が発生するため、太陽光、風力、バイオマスなどの自然エ
ネルギーの普及が重要です。
森による対策(森林の管理、木造建築の普及)
間伐(木の間引き)により、残した木々の CO₂吸収効率を向上させます。
また、建造物を木造にすることで、解体・廃棄まで CO₂を木材へ貯留しておくことができます。
日立ライフグループでも、自社事務所(2016 年 4 月竣工予定)や賃貸アパートに木造建築を取り入れてい
ます。
フロンの排出抑制
空調機や冷蔵庫・冷凍庫の冷媒などに使われているフロンは、CO₂よりも高い温室効果(温まりやすい効果)
を持っています。そのため、大気へ極力漏えいさせないように、フロン排出抑制法が 2015 年 4 月 1 日より
施行され、エアコン等の管理者には機器及びフロン類の適切な管理が義務付けられました。
省エネルギーへの心がけ
不要灯の消灯、照明の切り替え(蛍光灯、白熱電球→LED 照明)、家電の新機種への変更、スマートムーブ*1、
冷暖房使用の削減(クールビズ・ウォームビズ、クールシェア・ウォームシェア*2)
、
住宅の省エネ化(断熱窓・壁や屋根等の断熱材で隙間風を防ぐ、HEMS*3 の導入 など)
省エネルギーは、家庭や職場など身近なところでできる温暖化緩和策です。温暖化抑制には間接的かもしれ
ませんが、1 人ひとりの取り組みが集まれば大きな効果になるはずですので、省エネにご協力願います。
(次頁に続く)
*1:移動に伴う CO₂発生抑制として、公共交通機関や自転車・徒歩等 CO₂発生のより少ない移動手段を選
択すること。
*2:個々の部屋や家庭での冷暖房の使用を抑制する取り組み。
*3:House Energy Management System の略。家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム。家
電や電気設備とつないで、電気やガスなどの使用量の見える化や自動制御をする。当社の分譲マンショ
ンでも、2016 年 3 月竣工予定のひたちなか市の物件及び 2016 年 9 月竣工予定の日立市の物件で HEMS
のマンション版 MEMS (Mansion Energy Management System)を導入予定。マンションとしては両
市内で初めて低炭素建築物に認定。(前者 2015 年 5 月時点、後者 2015 年 3 月時点)
ところが、地球温暖化の進行を防ぎきることには限界があるため、地球温暖化による災害の増加などに適応
することも必要になってきます。例えば、インフラの整備においては、海面上昇や豪雨を想定することです。
水に関係した災害対策としてインフラ整備の上で今後求められる対応を下記に挙げました。
★インフラ整備や自治体での対策
堤防やダムの整備
洪水や津波発生時の浸水が予測される場所の開発の制限
津波避難タワーの設置
水源の山間部に植林する(土壌の保水力を高める)
ハザードマップの整備
地下に貯水槽や放水路の整備(例:埼玉県の東部の「首都圏外郭放水路」)
防災倉庫や津波避難タワーにはゴムボートなど、水に浮かぶことができるものを用意する
一方、わたしたちができる身近な対策としては、非常用品を分散させたり、なるべく高い階に置いたりする
ことや、家電等、浸水させたくないものの被害を最小限にするために極力高い階に移動することを心がけるな
ど、物の浸水を最小限にすることに限られてしまいそうですが、今後、気候変動により水に関係する災害が増
えることを想定して心の準備をすることも重要です。例えば、非常食や非常水などはできれば 1 週間分は準
備しておきたいものです。
近所の川が洪水に発展しそうなときは早めに避難所に避難することが大事ですが、逃げ遅れて周囲の冠水が
始まってしまったら、水につかって足元が見えない危険な道路を移動するよりは自宅の階上で助けを待つ「垂
直避難」を選択したほうが安全な場合もあることも頭の片隅においたほうがよいでしょう。
気候変動対策の会議「COP21」
開催
日本各地において地球温暖化に起因するとみられる想定外の災害が頻発した 2015 年
も残り少なくなった中、地球温暖化対策の新たな国際ルールを決める国連気候変動枠組
条約第 21 回締約国会議(COP21)が、2015 年 11 月 30 日からパリで始まりました。今回
の会議では、1997 年の京都議定書に代わる新たな枠組みづくりの合意をめざして 2015
年 12 月 11 日まで行われます。京都議定書は 1997 年の COP3 で採択され、第 1 約束期
間の 2008 年から 2012 年までで約束期間は終了しました。第 2 約束期間は 2013 年から 2020 年までですが、
日本は不参加です。京都議定書が削減義務を課したのは先進国だけだったのに対し、今回の COP21 で合意す
る新たな枠組みは途上国も含めたすべての国を対象とすることを目標としている点に特徴があります。一方、
2100 年までに世界平均気温が最大で 4.8 度上昇と予測される中、全世界で取り組まれることが望まれます。
また、ビルや建物の温室効果ガスの排出を減らすため、日本も含めた 18 か国と建築関連団体など 60 を超え
る組織が連携することも発表された模様で、不動産や建物に関わるライフグループとしても今後の動向や決定
の詳細を注目しています。
(担当:酒井)
連絡先
TEL 0294-25-1259 FAX 0294-24-1577
発行元 (株)日立ライフ 環境管理室
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