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尿素を用いたコンクリートの RC ラーメン高架橋への適用

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尿素を用いたコンクリートの RC ラーメン高架橋への適用
工事記録
尿素を用いたコンクリートの
RC ラーメン高架橋への適用
田中博一*1・石本晴義*2・野田宏昭*3・綾野克紀*4
概 要 コンクリートのひび割れ発生を低減する目的で尿素を用いたコンクリートを RC ラーメン高架橋のスラブおよ
び梁に約 450 m3 適用した。適用に際しては,尿素の混入量,粗骨材の種類などを要因とした配合選定試験を実施し,施工
性,乾燥収縮ひずみ低減効果などを総合的に考慮して配合を選定した。さらに,実構造物において,同時期に施工した尿
素を用いたコンクリートと普通コンクリートの温度およびひずみを計測し,ひび割れ調査を実施して比較した。その結果,
尿素および石灰岩粗骨材を用いることで,乾燥収縮ひずみが 40%以上低減すること,実構造物においてひび割れ本数が
60%以上低減することなどを確認した。
キーワード:尿素,石灰岩粗骨材,乾燥収縮,ひび割れ,現場計測,実構造物
体交差事業の完成予想図を写真-1 に,工事概要を以下
1. は じ め に
に示す。
コンクリート構造物にひび割れが発生した場合,構造
工事名称:大分高架駅部 BL 新設他 6 工事
物の耐久性や水密性などの性能が低下することが懸念さ
発 注 者:九州旅客鉄道㈱
れる。コンクリート構造物に発生するひび割れには,セ
施 工 者:清水建設㈱・九鉄工業㈱・梅林建設㈱
メントの水和熱に起因する温度ひび割れや乾燥収縮ひび
駅部 BL 新設他工事 共同企業体
割れがある。温度ひび割れの低減については,尿素を用
施工延長:420 m
いたコンクリート(以下,尿素コンクリート)に関する
構造種別:RC ラーメン高架橋
研究が行われ,尿素を用いた場合,練混ぜ直後の吸熱反
コンクリート数量:約 5 200 m3
応による温度低減効果と硬化時におけるセメントの水和
大分高架駅部工事は,一期施工として JR 豊肥本線,
反応の抑制効果により,コンクリートの水和熱低減効果
久大本線の高架化が実施され,平成 20 年 8 月に開業さ
があると報告されている
。さらに,筆者らは,尿素
れた。本工事は,二期施工であり,大分高架駅部高架橋
の高い水溶性と非揮発性に着目し,尿素コンクリートの
の拡幅工事として,図-1,写真-2 に示すように,一期
ひび割れ低減効果に関する研究を行っており,尿素コン
施工で建設された既設梁スラブと新設梁スラブとを一体
クリートが温度ひび割れだけでなく,乾燥収縮ひび割れ
化するものである。一体化するため,既設梁スラブの拘
に対しても効果があることを明らかにした
束によるひび割れの発生が懸念された。そのため,温度
1),
2)
。
3),
4)
本稿では,尿素コンクリートを RC ラーメン高架橋へ
ひび割れだけでなく,乾燥収縮ひび割れに対しても効果
適用するにあたり事前に実施した配合選定試験,ならび
を期待できる尿素コンクリートを 1 ラーメンのスラブお
に,普通コンクリートと尿素コンクリートの温度および
よび梁(約 450 m3)に適用し,同時期に施工した普通
ひずみを現場で計測し,ひび割れ調査を実施して確認し
コンクリートと比較検討した。
た尿素コンクリートの実構造物におけるひび割れ低減効
果について報告する。
2. 工 事 概 要
本工事は,鉄道を高架化することにより,市街地の南
北の一体的な発展と踏切の遮断による交通渋滞の解消を
目的とした大分駅付近連続立体交差事業の一環で,JR 日
豊本線大分駅部において施工延長 420 m,幅 10~34 m
の RC ラーメン高架橋の躯体を構築するものである。立
*1 たなか・ひろかず/清水建設㈱ 技術研究所 主任研究員(正会員)
*2 いしもと・はるよし/清水建設㈱ 名古屋支店土木部 副部長
*3 のだ・ひろあき/九州旅客鉄道㈱ 施設部工事事務所
*4 あやの・としき/岡山大学大学院 環境学研究科 教授(正会員)
Vol. 50, No. 8, 2012. 8
写真-1 立体交差事業の完成予想図5)
689
尿素コンクリート施工箇所
施工延長 420 m
大分駅 北口
2 期工事
1 期工事
大分駅 南口
図-1 大分高架駅部工事施工箇所(平面図)
表-1 要因と水準
1期
施工
2期
施工
尿素混入量
(kg/m3)
記号
尿素 0-混合粗骨材
0
尿素 20-混合粗骨材
20
尿素 30-混合粗骨材
30
尿素 0-石灰岩粗骨材
0
尿素 20-石灰岩粗骨材
20
尿素 30-石灰岩粗骨材
30
粗骨材の種類
混合粗骨材
(石灰岩+安山岩)
石灰岩粗骨材
(石灰岩のみ)
表-2 使 用 材 料
写真-2 尿素コンクリート適用構造物の概要
3. 配合選定試験
材料
記号
セメント
C
細骨材
S
山砂 表乾密度 2.60 g/cm3
吸水率 2.71%,F.M. 2.53
3.1 要因と水準
要因と水準を表-1 に示す。要因は尿素混入量および
粗骨材のみを用いたものの 2 水準とした。なお,尿素
0-混合粗骨材は,実施工にコンクリートを供給するレ
G1
石灰岩砕石 表乾密度 2.70 g/cm3
吸水率 0.50% 最大寸法 20 mm
G2
安山岩砕石 表乾密度 2.65 g/cm3
吸水率 0.51% 最大寸法 20 mm
粗骨材
粗骨材の種類とした。粗骨材の種類は,石灰岩砕石と安
山岩砕石を質量比 4:6 で混合した混合粗骨材と石灰岩
仕様
普通ポルトランドセメント
密度 3.16 g/cm3
混和材
U
尿素 密度 1.32 g/cm3,窒素分 46%
混和剤
Ad
AE 減水剤
合成短繊維
PP
ポリプロピレン繊維
密度 0.91 g/cm3
形状 換算直径 0.0648 mm×12 mm
ディーミクストコンクリート工場の 30-12-20 N に対す
る標準配合であり,乾燥収縮をさらに低減する目的で,
表-3 配 合
石灰岩粗骨材のみを用いた場合についても検討すること
とした。
記号
3.2 使用材料および配合
W/C (W+U)
/C
(%) 容積比
単位量(kg/m3)
W
C
U
尿素 0-混合粗骨材
46.9
1.49
168
358
0
754 1 025
尿素 20-混合粗骨材
42.7
1.49
153
358
20
754 1 025
尿素 30-混合粗骨材
40.5
1.49
145
358
30
754 1 025
尿素 0-石灰岩粗骨材
46.9
1.49
165
352
0
766 1 037
水と混ぜると吸熱反応する(溶解熱-15.4 kJ/mol),非
尿素 20-石灰岩粗骨材
42.6
1.49
150
352
20
766 1 037
揮発性(ヘンリー定数 4.4×10
尿素 30-石灰岩粗骨材
40.3
1.49
142
352
30
766 1 037
使用材料を表-2,配合を表-3 に示す。尿素は無色無
臭で直径 1 ~ 2 mm の粒状結晶(濃度 99.0%以上)で
あり,水に溶けやすい(溶解度 108 g/100 mL(20℃)
),
-8
気圧 m /mol)などの
3
S
G
特徴がある。尿素を用いる場合,尿素が水に溶解して液
体の容積が増加するので,同一スランプを得るために単
3.3 試 験 項 目
位水量を尿素の容積分だけ減少させた3)。なお,AE 減
測定項目は,スランプ(JIS A 1101),空気量(JIS A
水剤の添加量については,尿素を用いない場合と同等と
1128),温度(JIS A 1156),圧縮強度(JIS A 1108)お
した。また,はく落防止対策として,ポリプロピレン製
よび乾燥収縮(JIS A 1129)とした。スランプ,空気量
の短繊維を混入率 0.05%(455 g/m )として用いた。
および温度は,短繊維混入前に測定した。圧縮強度およ
短繊維混入前のスランプおよび空気量の目標値は 12 cm
び乾燥収縮は短繊維混入後のコンクリートを用いて測定
および 4.5%とした。
した。圧縮強度試験体は測定材齢まで 20±2 ℃の水中で
3
690
コンクリート工学
中養生を行った後,20±1 ℃,60±5% RH の恒温恒湿
室内に静置した。
3.4 試験結果および考察
( 1 ) フレッシュ性状
スランプおよび空気量は尿素の混入量によらず,所定
の範囲を満足する結果となった。コンクリート温度の測
28
コンクリート温度(℃)
養生した。乾燥収縮試験体は材齢 7 日まで 20±2 ℃の水
石灰岩粗骨材
24
22
20
18
定結果を図-2 に示す。コンクリート温度は,尿素を用
混合粗骨材
26
0
10
いた場合,粗骨材の種類によらず,コンクリートの温度
吸熱反応による温度低減効果
30
40
図-2 コンクリート温度
が 2 ~ 3 ℃低下した。これは,練混ぜ直後の尿素と水の
2),
3)
20
尿素混入量 (kg/m3)
であると考えられる。
60
圧縮強度試験結果を図-3 に示す。尿素コンクリート
の圧縮強度は,尿素混入量によらず,普通コンクリート
と同等であった。表-3 に示すように尿素コンクリート
では,尿素の容積分だけ単位水量を減少させるので,水
セメント比は小さくなるが,水と尿素を合わせた液体の
圧縮強度 (N/mm2)
( 2 ) 圧縮強度
容積は普通コンクリートの水の容積と同等であるため,
る。また,粗骨材の種類については,コンクリートの種
低減効果は,粗骨材の種類によらず,混入量 20 kg/m
3
の場合で約 15%,混入量 30 kg/m3 の場合で約 20%であっ
圧縮強度 (N/mm2)
みとの関係を図-4 に示す。尿素による乾燥収縮ひずみ
30
尿素 0-混合粗骨材
20
尿素 20-混合粗骨材
10
尿素 30-混合粗骨材
0
20
た。尿素と石灰岩粗骨材を併用することで,乾燥収縮ひ
30
尿素 0-石灰岩粗骨材
20
尿素 20-石灰岩粗骨材
10
尿素 30-石灰岩粗骨材
0
20
40%,尿素混入量 30 kg/m3 では約 45%低減することが
のと考えられる。
3.5 選 定 配 合
配合選定試験の結果,尿素および石灰岩粗骨材が乾燥
収縮ひずみの低減に効果的であることが明らかとなっ
た。製造時にレディーミクストコンクリート工場にて 1
袋 20 kg 入りの尿素をミキサ内に手投入するので,投入
手間を省力化するために混入量を極力少なくしたいこ
と,図-4 より,尿素 20-石灰岩粗骨材の乾燥収縮ひずみ
が,
「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設
80
100
−400
乾燥収縮ひずみ(×10−6)
を併用することで,乾燥収縮ひずみはさらに低減したも
40
60
材齢(日)
図-3 圧縮強度試験結果
により,乾燥収縮ひずみが尿素混入量 20 kg/m3 では約
と考えられる3)。乾燥収縮ひずみが小さい石灰岩粗骨材6)
100
40
骨材と比較して,尿素および石灰岩粗骨材を用いること
主要因は,単位水量の低減および尿素の非揮発性である
80
50
0
ずみはさらに低減した。標準配合である尿素 0-混合粗
明らかになった。尿素により乾燥収縮ひずみが低減する
40
60
材齢(日)
60
類によらず圧縮強度はほぼ同等であった。
尿素混入量と乾燥期間 182 日後における乾燥収縮ひず
40
0
尿素が圧縮強度に与える影響は小さいものと考えられ
( 3 ) 乾燥収縮
50
−500
−600
−700
−800
混合粗骨材
−900
−1 000
石灰岩粗骨材
乾燥期間 182 日後
0
10
20
30
40
尿素混入量 (kg/m3)
図-4 尿素混入量と乾燥収縮ひずみとの関係
4. 実構造物への適用
4.1 使用材料および配合
計・施工指針(案)
」 に示されている特級仕様(目標値
使用材料は表-2 と同様である。配合は,配合選定試
500×10
以下)と同等であり,十分な収縮低減効果を
験で選定した表-3 の尿素 20-石灰岩粗骨材とした。な
期待できることなどを総合的に判断し,実施工に適用す
お,尿素コンクリートを適用した箇所以外は,レディー
る配合は,尿素混入量 20 kg/m3 で石灰岩粗骨材を用い
ミクストコンクリート工場の標準配合である表-3 の尿
た表-3 の尿素 20-石灰岩粗骨材とした。
素 0-混合粗骨材の普通コンクリートを用いて施工した。
7)
-6
Vol. 50, No. 8, 2012. 8
691
No.3
No.2
No.1
二期
施工
一期
施工
コンクリート内部温度(℃)
約 25 m
約 30 m
80
スラブ中央部
普通コン
60
尿素コン
40
20
0
0
1
2
3
4
5
図-5 コンクリートの温度,ひずみの現場計測箇所
4.2 現場計測項目
コンクリート内部に埋設した熱電対と埋込み型ひずみ
計を用いてコンクリートの温度とひずみを測定し,施工
後にひび割れ調査を実施した。コンクリートの温度,ひ
コンクリート内部温度(℃)
経過時間(日)
80
60
40
20
普通コン
尿素コン
梁中央部
0
0
ずみの現場計測箇所を図-5 に示す。コンクリートの温
1
2
3
経過時間(日)
4
5
図-6 コンクリートの温度測定結果
度,ひずみの計測箇所は,一期施工箇所との打継ぎ部と
なるスラブ中央部(No.1)とスラブ端部(No.2)の 2
箇所とし,スラブ厚 250 mm のほぼ中央部になるように
齢 4 週の圧縮強度は普通コンクリートで 35.7 N/mm2,
設置した。さらに,幅 0.9 m×高さ 1.4 m の横梁断面
尿素コンクリートで 36.0 N/mm2 であり,ほぼ同等で
中央部(No.3)においてコンクリートの温度を測定した。
あった。
なお,現場計測は,同規模の施工面積でほぼ同時期に施
( 2 ) コンクリートの温度
工した普通コンクリートについても同様な測定位置で実
コンクリートの温度測定結果を図-6 に示す。気象庁
施した。
のデータによる施工時の気象条件は,普通コンクリート
4.3 施 工 方 法
の場合で天候晴,最高気温 33.4℃,日照時間 11.1 hr,
コンクリートの製造はレディーミクストコンクリート
尿素コンクリートの場合で,天候晴,最高気温 30.4℃,
工場にて行い,2.75 m3 の強制二軸練りミキサを用いて
日照時間 11.3 hr であり,どちらの場合も気温が高く,
製造した。1 バッチあたりの練混ぜ量は 2 m とし,練
日照の影響が大きい施工条件であった。
混ぜ時間は 60 秒とした。尿素は,他の材料を投入する
スラブ中央部の温度は,コンクリートの種類によらず,
際に,ミキサ内部に手投入した。製造したコンクリート
打込み直後から外気温の上昇とともにコンクリートの温
はアジテータ車に 4 m ずつ積み込み,現場まで運搬し
度は上昇し,打込み後約 7 時間後には約 40℃となった。
た。現場にてアジテータ車に短繊維を所定量投入したの
その後,外気温は下がったものの,コンクリート温度は
ち,2 分間高速かくはんさせてから,コンクリートポン
上昇し,スラブでの最高温度は打込み後約 13 時間で約
プ車を用いて打ち込み,棒状バイブレータで締め固め
55℃に達した。スラブは表面積が大きく部材厚が小さい
た。施工後,スラブ上面は材齢 7 日まで養生マットを敷
ため,外気温および日照の影響を大きく受けることによ
設して散水養生を行い,材齢 5 日で梁側面を脱型し,材
りコンクリートの温度が上昇した結果,セメントの水和
齢 21 日以降にスラブおよび梁下面を脱型した。
反応が促進されたものと考えられる。最高温度になった
3
3
4.4 試験結果および考察
(1) 施 工 性
後,温度は急激に低下し,打込み後 3 日目には約 30℃
まで低下した。最高温度に達した後は,スラブは表面積
普通コンクリート,尿素コンクリートともに受入れ時
が大きく部材厚さが小さいため放熱速度が速くなった結
の品質管理試験にすべて合格する結果となり,実施工に
果,温度低下が速くなったものと考えられる。
おいて尿素コンクリートを安定供給できることを確認し
梁中央部の温度は,コンクリートの種類によらず,打
た。打込み,締固めおよび仕上げなどの施工性について
込み後 27 時間程度で最高温度に達し,その後,ゆっく
も,尿素コンクリートは普通コンクリートと同様であ
りと低下して,普通コンクリートの場合で打込み後 12
り,問題ないことを確認した。なお,標準養生をした材
日程度,尿素コンクリートの場合で打込み後 7 日程度で
692
コンクリート工学
50
ひび割れ本数(本)
普通コン(No.1)
普通コン(No.2)
尿素コン(No.1)
尿素コン(No.2)
400
200
0
0.2 mm 以上
0.15 mm
0.1 mm
0.1 mm 未満
20
10
−200
−400
尿素コンクリート
30
0
約 1 か月後
約 4 か月後
約 8 か月後 約 18 か月後
50
0
100
200
300
400
経過時間(日)
500
600
図-7 コンクリートのひずみ測定結果(スラブ)
30℃程度まで低下した。梁の最高温度は,普通コンク
リートで約 74℃,尿素コンクリートで約 64℃であり,
ひび割れ本数(本)
実ひずみ(×10−6)
600
40
尿素コンクリートの方が普通コンクリートよりも約
40
30
20
10
0
10℃低下した。これは,尿素を用いることでセメントの
水和反応が遅延した結果であると考えられる 。
3)
50
図-7 に示す。埋込み型ひずみ計で測定される実ひずみ
40
ひずみが含まれていると考えられる。普通コンクリート
の No.2 における実ひずみは,経過時間約 2 日において
急激に約 200×10-6 増加した。No.2 については,ひび
ひび割れ本数(本)
スラブにおけるコンクリートのひずみの測定結果を
み,乾燥収縮による収縮ひずみ,弾性ひずみ,クリープ
めにひずみが急激に増加したものと考えられる。尿素コ
素コンクリートでは約-200×10-6 であり,尿素コンクリー
トは普通コンクリートより,実構造物において約 100×10-6
の収縮低減効果が確認された。これは,図-5 に示すよ
うに尿素と石灰岩粗骨材を併用することで乾燥収縮ひず
みが約 40%低減された効果によるものと考えられる。
( 4 ) ひび割れ調査
尿素コンクリート
0.2 mm 以上
0.15 mm
0.1 mm
0.1 mm 未満
10
約 1 か月後
約 4 か月後
約 8 か月後
約 18 か月後
50
ひび割れ本数(本)
ける実ひずみは,普通コンクリートでは約-300×10-6,尿
約 8 か月後 約 18 か月後
20
していることが確認されており,ひび割れが発生したた
なった。スラブ中央部で測定した No.1 の約 1.5 年後にお
約 4 か月後
30
0
割れ調査時にひずみ計のほぼ中心位置にひび割れが発生
ンクリートの実ひずみは,測定位置によらずほぼ同様と
約 1 か月後
図-8 ひび割れ調査結果(スラブ)
( 3 ) コンクリートのひずみ
には,温度による線膨張(自由)ひずみ,自己収縮ひず
普通コンクリート
40
普通コンクリート
30
20
10
0
約 1 か月後
約 4 か月後
約 8 か月後 約 18 か月後
図-9 ひび割れ調査結果(梁)
施工後約 1 か月,約 4 か月,約 8 か月および約 18 か
月に実施したひび割れ調査結果から得られたひび割れ幅
れる。施工後は,コンクリートの乾燥が進行するに伴い
とひび割れ本数との関係を図-8,図-9 に示す。なお,
ひび割れ本数が増加したものと考えられる。一方,尿素
ひび割れ幅はクラックスケールを用いて測定した。
コンクリートでは幅 0.1 mm 未満の微細なひび割れが発
スラブについては,普通コンクリートでは主に一期施
生したものの,施工後約 18 か月まで幅 0.1 mm 以上の
工箇所に打ち継いだ付近にひび割れが発生し,ひび割れ
ひび割れは発生しておらず,ひび割れ本数も施工後約 4
本数は材齢の経過に伴い徐々に増加する傾向が認められ
か月以降増加していない。尿素コンクリートのスラブ
た。今回施工したスラブは,施工時の外気温,日照の影
は,外気温,日照の影響を受けることにより,コンク
響により,材齢初期に急激な温度変化を受ける条件で
リートの温度は普通コンクリートとほぼ同等となったも
あったため,ひび割れが発生しやすかったものと考えら
のの,尿素および石灰岩粗骨材による乾燥収縮ひずみ低
Vol. 50, No. 8, 2012. 8
693
減効果で実ひずみにおける収縮が低減されたため,ひび
割れが減少したものと考えられる。施工後約 18 か月に
おいて普通コンクリートと比較して,尿素コンクリート
のスラブにおけるひび割れ本数は約 60%低減すること
が実証された。
梁については,普通コンクリートでは主に幅 0.1~
0.15 mm のひび割れが発生したが,尿素コンクリート
では主に幅 0.1 mm 未満の微細なひび割れが発生した。
普通コンクリートの梁のひび割れは,コンクリートの温
度が約 74℃まで上昇したことを考慮すると,水和熱に
より蓄積された温度応力および脱型後に受けた乾燥によ
り発生したものと考えられる。尿素コンクリートの梁
写真-3 大分駅全面高架化
は,尿素によるセメントの水和抑制効果でコンクリート
の温度上昇量が抑制されたため,ひび割れが減少したも
謝 辞 本工事へ尿素コンクリートを適用するにあた
のと考えられる。どちらの場合も施工後約 8 か月でひび
り,阪田憲次岡山大学名誉教授から多くの貴重な助言を
割れ本数の増加はほぼ収束している。施工後約 18 か月
頂きました。ここに記して深く謝意を表します。
において普通コンクリートと比較して,尿素コンクリー
トの梁におけるひび割れ本数は約 80%低減することが
実証された。
5. お わ り に
平成 24 年 3 月 17 日には JR 日豊本線が高架開業し,
写真-3 に示すように大分駅が全面高架化された。本稿
では,尿素を用いたコンクリートを RC ラーメン高架橋
に適用し,実構造物におけるひび割れ低減効果について
報告した。尿素および石灰岩粗骨材を併用することによ
り,尿素による温度ひび割れ低減効果,尿素および石灰
岩粗骨材による乾燥収縮ひび割れ低減効果が得られ,実
構造物においてひび割れの発生が大幅に低減されること
が実証された。尿素を用いたコンクリートがコンクリー
参 考 文 献
1) 阪田憲次・浜田利彦・岩城圭介:尿素によるコンクリートの水和
熱低減効果に関する研究,セメント技術年報,42,pp.403~406,
1988
2) 綾野克紀・Mwaluwinga, S.・亀高誠治・阪田憲次:高流動コンク
リートの水和熱低減に関する研究,コンクリート工学年次論文報
告集,Vol.17,No.1,pp.87~92,1995
3) 河井 徹・阪田憲次:尿素を用いたコンクリートの諸特性,コン
クリート工学年次論文集,Vol.29,No.1,pp.639~644,2007
4) Tanaka. H, Hashida. H, Kawai.T:Effect of limestone as aggregate
and urea on reducing drying shrinkage of concrete, ConMat ʼ09,
pp.1160-1165, 2009
5) http://www.pref.oita.jp/site/eki/rittaiindex.html
6) 田中博一・橋田 浩:骨材の種類がコンクリートの乾燥収縮に及
ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.31,No.1,pp.553~
558,2009
7) 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設
計・施工指針(案)・同解説,p.121,2006. 2
ト構造物のひび割れ低減対策として適用拡大することを
期待する。
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コンクリート工学
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