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ニュースレター第2号|2007年3月22日 発行|(pdf)
動物 MHC 研究会 ニュースレター 第2号 第2号の内容 1、 第2回動物 MHC シンポジウム「家畜 MHC 研究の現状と将来」開催報告 (日本大学 2、 中西照幸) 連載第2回:ブタ MHC 領域の遺伝子構成とアリル情報 (東海大学 3、 生物資源科学部 医学部 安藤麻子) シンポジウム、ワークショップ等のお知らせ (1)第3回動物 MHC シンポジウム開催のご案内 (2)国際獣医免疫シンポジウムにおける MHC ワークショップ開催のご案内 4、 事務局からのお知らせ (1)アニテクス3月号動物 MHC 特集号のご案内 (2)動物 MHC 研究会主催勉強会のご案内 (3)入会手続きについて (4)会員名簿の掲載について 5、 編集後記(日本大学 生物資源科学部 中西照幸) 資料:1) 動物 MHC 研究会会則、2) 入会申込書、3) 賛助会員名簿 1 第2回動物MHCシンポジウム「家畜MHC研究の現状と将来」開催報告 日本大学 生物資源科学部 中西照幸 にシンポジウム印象記として紹介されてい 本稿は、 日本組織適合性学会誌 MHC(Vol.13, No.2, 2006)に掲載されたものですが、若干 る)。一方、今回は畜産学会のシンポジウム 手直しを行った上許可を得て、今回のニュー であることから、家畜の MHC 研究に焦点を当 スレターに掲載することに致しました。 て、育種や抗病性解析に寄与するために今後 平成 18 年 3 月 30 日、「家畜 MHC 研究の現 の家畜 MHC 研究の方向性と戦略について討 状と将来-MHC による抗病性家畜創出への新 論することを目的とした。以下にその概要に たな展開-」と題し、第 106 回畜産学会のシ ついて報告します。 ンポジウムとして九州大学箱崎キャンパス 先ず、動物 MHC 研究会会長の理化学研究所 において開催した。3月末とはいえ肌寒く震 間陽子先生より、家畜の MHC 領域には多くの えながらのシンポジウムではあったが80 経済有用形質や抗病性関連遺伝子が多数マ 名以上の参加者が集い熱い討議が行われた。 ップされているが、これらの形質や疾患の責 平成 17 年 4 月に理化学研究所において開 任遺伝子の同定には至っていない。しかし、 催した第1回目のシンポジウムは、動物 MHC 最近、家畜のゲノム配列解読が進展し、経済 研究会の旗揚げ式として、我が国における各 形質や疾患の責任遺伝子を同定する展望が 生物種の MHC 研究者が一堂に会し、最新情報 出てきたという本シンポジウムの開催の趣 の交換と相互の理解を深めることを目的と 旨が述べられた。 して開催した(MHC Vol.12, No1, P.59-61 第2回動物MHCシンポジウムのプログラム 座長:国枝哲夫 (岡山大学)、間陽子 1.シンポジウムの開催にあたって 2.ヒト MHC 遺伝子群の特徴 (理化学研究所) (理化学研究所 間陽子) (東京医科歯科大学 木村彰方) 3.ブタ MHC 領域のゲノム解析と畜産学分野における応用 4.ウシ MHC 領域の構造、機能と抗病性 (理化学研究所 5.マウス MHC とレトロウイルス感染抵抗性 座長:向山明孝 (近畿大学 (日本獣医生命科学大学)、上西博英 (東海大学 安藤麻子) 竹嶋伸之輔・間陽子) 宮澤正顯) (農業生物資源研究所) 6.ニワトリおよびウズラ MHC 領域のゲノム構造と多様性(東海大学 細道一善) 7.魚類 MHC の構造および機能と抗病性との関連 (日本大学 中西照幸 ・ 8.家畜 MHC 領域の比較ゲノム解析 座長:木村彰方 水産総合研究センター養殖研 (東海大学・椎名隆) (東京医科歯科大学)、間陽子 9.総合討論 2 (理化学研究所) 乙竹充) 前半のセッションの最初のスピーカーは について正確・迅速にアリルのタイピングを 東京医科歯科大学木村彰方先生で、ヒト MHC 可能にする手法を開発し、品種におけるアリ 遺伝子群の特徴について話された。MHC 研究 ル頻度を明らかにし、これに基づいたウシ品 の歴史から説き起こして最近のマイクロサ 種間の系統的解析、地方病性牛白血病(EBL) テライトマーカーを用いた疾患感受性遺伝 の発症と BoLA クラス II の相関、疾患感受性 子の同定、HLA super type と HIV、MHC クラ の個体差の生成機構に関する最近の研究成 ス I ハプロタイプと SIV に対する抵抗性ある 果が報告された。 いは感受性との関連、HLA-ABC 等は CD8 陽性 前半のセッションの最後に、近畿大学宮澤 T 細胞や NK 細胞の機能に関与しているが、 正顯先生よりマウス MHC とレトロウイルス HLA 以外の分子もこれらの免疫担当細胞の機 感染抵抗性と題して、MHC 遺伝子型と疾患感 能に関与していることなど、大変興味深い話 受性との関係が病因抗原に対する T リンパ をして下さった。次に、ブタ、ウシ、マウスな 球応答制御の面から分子レベルで明らかに どの哺乳類における MHC 領域の構造、機能と なったことが述べられた。その中で特に、1) 抗病性に関する講演が行われた。東海大学安 クラス II 遺伝子型は CD4 陽性 T 細胞による 藤麻子先生より、ブタ MHC 領域のゲノム解析 ウイルス抗原エピトープ認識に直接影響す と畜産学分野における応用と題して、1)ブタ るが、クラス I は CD8 陽性 T 細胞によるウイ の MHC(SLA)には疾患に対する抗病性や各種 ルス抗原エピトープ認識に必要であるが、細 の経済形質がマップされ畜産学分野の育種 胞傷害性 T リンパ球による感染細胞排除は において重要である。2)ヒトへの異種移植ド ウイルス感染防御に必須ではない、2)クラス ナーとして注目されるとともに肥満や糖尿 I 遺伝子型が T 細胞からのサイトカイン産生 病などの疾患モデル動物として多用されて を制御している可能性がある、3)SLE におい いる。3)SLA 全領域のゲノム塩基配列解読が て DR そのものではなく DR と連鎖不平衡にあ 完了し、2.4 Mb の SLA 領域には 151 個の遺 る補体が重要である、4)クラス Ib は NK 細胞 伝子が同定され、ヒト HLA 領域と同様に高い 活性の制御を介して、フレンドウイルス感染 遺伝子密度を示すことが報告された。最後に、 抵抗性に影響を及ぼしている、など大変興味 マイクロサテライトマーカーなど抗病性品 深い知見が紹介された。 種の選択や経済形質に関連した有用な多型 後半のセッションでは、鳥類および魚類の マーカーの分離を目指した解析が紹介され MHC の構造及び機能と抗病性との関連につい た。 て話題提供がなされた。東海大学細道一善氏 引き続いて、ウシ MHC 領域の構造、機能と より、ニワトリおよびニホンウズラ MHC 領域 抗病性について理化学研究所竹嶋伸之輔氏 の多様性解析と題して、1)現在ゲノム解析が より話題提供がなされた。先ずウシ、ヤギお 進んでいるニワトリ MHC 領域について古典 よびヒツジでは、ヒトやマウスに存在する 的 MHC(B)領域と非古典的 MHC(Y)領域合 DPA および DPB 遺伝子の代わりに DYA および わせて 600kb のゲノム配列が決定し 90 個の DYB 遺伝子を有し、クラス II 領域がクラス 遺伝子を同定されたこと、2)Y 領域に位置す IIa と IIb 領域の 2 つに大きく分断されてい る MHC-I、MHC-IIB、C 型レクチン様遺伝子は るという反芻動物の MHC の特徴が述べられ 不規則な遺伝子重複により形成されており、 た。次に、ウシ MHC(BoLA)クラス II 遺伝子 単純と考えられていたニワトリの MHC 領域 3 は実は複雑なゲノム構造を有していること、 ノム解析により遺伝子座の同定に基づいた 3)MHC クラス I 遺伝子近傍にヒッチハイキン 対立遺伝子の Polymorphism として解析出来 グ効果の影響を受けていると考えられる遺 るようになり、家畜における MHC と疾病抵抗 伝子が認められることなどが報告された。ま 性との関連に関する研究において、新しい地 た、ウズラ MHC-I や MHC-IIB 領域において高 平が切り開かれつつあることが述べられた。 度な遺伝子重複が認められ、ニワトリではみ 最後の総合討論においては、1)遺伝子重複 られない遺伝子が存在し複雑な遺伝子構造 の様相が種によってかなり異なり、構造的な を有するなど、ニワトリとウズラにおいて相 類似性(対比)からだけでは機能を推論でき 違が認められることが紹介された。 ない。それぞれの遺伝子について機能を調べ 筆者は、魚類 MHC の構造及び機能と抗病性 る必要がある、2)抗体産生等において MHC 以 との関連について話題提供し、1)硬骨魚類の 外の遺伝子が抗病性に関与していることが 場合クラス I、クラス II および補体遺伝子 判っている、3)MHC が多型に富むために多く における連鎖がみられず複合体を形成して 記載されてきたが、先ず MHC と疾患との関連 いないが、軟骨魚類においては両生類以上の を解析した上で他の疾患感受性遺伝子を同 脊椎動物と同様に連鎖している、2)魚類のレ 定すべきである。4)MHC と疾患との相関は結 ベルでもクラス I 遺伝子が多型性に富み、多 果であって原因ではない。機能を調べるべき 様性は対立遺伝子間における著しい組み換 である、などの意見が出された。また、5) えにより生じている、3) サケ科魚類におい ヒトやマウスの後追いをするのではなく、種 て抗病性と MHC との関係が最近いくつか明 の特異性を生かして新しい分野を切り拓い らかになってきたことなどを報告した。また、 て行くべきである。 実を云うと、今回のシンポジウムにおける 魚類において最近注目されている、仲間相互 の識別、雌雄間におけるパートナーの選択、 講演や総合討論に参加するまでは、家畜にお 摂餌行動や攻撃行動等と MHC の関係を紹介 ける MHC と抗病性に関する研究は、産業動物 した。 においてもゲノム解析が進んできたことか 後半のセッションの最後に、東海大学椎名 ら、ヒト HLA における研究に倣って進めてい 隆先生が家畜 MHC 領域の比較ゲノム解析と けば良いものと考えていた。しかし、講演や 題して、1)ヒトゲノムの進化形成過程ならび 総合討論の中で指摘されたように、MHC 領域 に疾患感受性遺伝子の生成機序解明のモデ の構造や遺伝子の機能が種によってかなり ル領域として MHC 領域が好都合であること、 異なることから、家畜を含めた動物 MHC 研究 2)ヒトの MHC 領域の特徴(遺伝子密度が極め を進めていく上では、むしろ種の特異性を生 て高く、免疫関連遺伝子が多く含まれ、100 かした研究が重要であることを知り、あらた を超える疾患感受性を規定し、最大の多型性 めて動物 MHC 研究の独自性と意義を悟った を示し、遺伝子重複の痕跡がみられる)を理 次第である。また、今回のシンポジウムにお 解するには、MHC の起源に遡って進化学的な いて MHC 領域以外の免疫関連遺伝子に多型 見地から解析することが重要であることを が認められ疾患感受性あるいは抵抗性と関 幾つかの比較ゲノム解析例を示して述べら 連していることが指摘され、MHC 領域に留ま れた。また、これまで variation としてしか らずゲノムワイドな解析の重要性を認識し 捉えきれなかった遺伝子の変異について、ゲ た。 4 連載 第2回:ブタ MHC 領域の遺伝子構成とアリル情報 東海大学 医学部 安藤麻子 ブタの主要組織適合抗原複合体(MHC)は、Swine Leukocyte Antigen(SLA)と呼ばれ、その抗 原型は、古くから合成ペプチドやワクチン接種による抗体産生能などの免疫応答性、並びに メラノーマ発症との相関が報告されており、さらに SLA 領域周辺には、背脂肪厚、産子数な どの各種の経済形質がマップされるという特徴がある。これらの畜産学分野における優れた 抗病性や経済形質を持つブタの選択、並びに医学、実験動物学分野における同種、異種移植 研究の推進や SLA 固定純系ミニブタの作出に重要な基盤的情報の提供などを目的として、最 近 SLA 領域のゲノム塩基配列解読が完了した。本稿では、このゲノム配列情報による SLA 領 域の遺伝子構成や SLA 遺伝子のアリル情報などについて紹介する。 1、SLA 領域のゲノム解析、及び SLA 遺伝子 Wellcome Trust Sanger Inst. (英)と筆者ら とアリルの命名の背景 東海大学の合計3グループの共同研究によ ブタは、解剖学的・生理学的にヒトと類似性 る 2.4 Mb の SLA 全領域の塩基配列解読が、 が高く、血液生化学的数値もヒトと近いこと 2005 年末に完了した(1-5)。さらに、最近、 から、特にミニブタは、ヒトへの異種移植ド SLA 遺伝子とそのアリルの名称についても、 ナーとして注目されている他、肥満や糖尿病 この SLA 領域の塩基配列情報に基づいた命 などの疾患モデル動物、医療技術シミュレー 名法が SLA Nomenclature committee により、 ションなどを目的とした実験動物として多 規定された(6, 7)。この SLA Nomenclature 用されている。ブタ-ヒト間の異種移植で問 committee は 、 Baylor Univ. ( 米 ) の Dr. 題となる超急性拒絶反応を抑制したα1,3 ガ Smith を代表者とした 9 名の委員による委 ラクトース転移酵素(α Gal-T)遺伝子のノッ 員会として国際動物遺伝学会内に 2002 年に クアウトミニブタが 2002 年に開発され、次 設定され、筆者も委員としてこの命名法の作 の 段 階 と し て は 、 MHC や KIR(Killer 成に携わることができた。ここでは、ゲノム Immunoglobulin-like receptor)などの急性 塩基配列情報から同定された SLA 領域の遺 及び慢性拒絶反応に関与する遺伝子の種間 伝子情報、及びこの領域の SLA 遺伝子のアリ の違いを明らかすることが重要であると考 ルとマイクロサテライト多型情報について、 えられる。また、畜産学分野においては、抗 概説する。 病性に関連したワクチン接種や各種外来抗 2、SLA 領域の遺伝子数と RNA 遺伝子 SLA 領域は、HLA 領域と同様にクラス II, 原に対する抗体価、並びに背脂肪厚、産子数、 増体重などの重要な経済形質が SLA 領域近 III, I の 3 領域から構成されており、クラ 傍にマップされている。これらの研究を推進 ス II 領域は、第 7 染色体 7q1.1、クラス III するために、SLA 領域の塩基配列情報は、極 とクラス I 領域は、第 7 染色体 7p1.1 にマッ めて重要であり、このような観点から、Nat. プされ、クラス II(長腕)とクラス III, I Inst. of Agronomical Res. (INRA (仏))、 (短腕)領域間にセントロメアが位置すると 5 いう特徴がある(8, 図 1)。ブタ以外の動物 は 132 個、偽遺伝子は 19 個であった(1, 表 種における MHC 領域内のセントロメアの存 1)。SLA 領域の平均遺伝子密度は、15.9 kb 在については、ネコがクラス I 領域内、ウマ に 1 遺伝子であり、HLA 領域の 15.1 kb に 1 がクラス II とクラス III 領域間にその存在 遺伝子と同様に高い遺伝子密度を示す。また、 が報告されている(9, 10) 。 伸長 HLA 領域には、15 個以上の tRNA 遺伝子 SLA 領域の塩基配列解読に用いられた H01 が報告されているが(11)、今回塩基配列解読 ハプロタイプはヨークシャー/ラージホワイ された SLA 領域には、15 個の RNA 遺伝子(tRNA ト種などの産業用ブタに多く見られるハプ 6 個、snoRNA 5 個、rRNA 2 個、miRNA と snRNA ロタイプである。解読された 2.4 Mb の SLA 全 各 1 個)が見出されている(1)。 領域の塩基配列情報から、151 個の遺伝子が 以下に、まず、SLA 全領域のゲノム配列解読 同定され、これらの遺伝子の中で発現 SLA 遺 により明らかになった、SLA クラス I, II, 伝子や新規発現遺伝子と考えられる 3 遺伝 III 各領域の遺伝子構成について記載する。 子を含む機能していると予測される遺伝子 7q Extended Class II region BTNL4 BTNL3 BTNL2 DRA DRB4 DRB3 DRB2 DRB1 DQA DQB2 DQB1 DOB2 SBAB-554F3.8 SBAB-554F3.9 DRB5 DYB DOB1 TAP2 PSMB8 TAP1 PSMB9 DMB DMA BRD2 DOA COL11A2 RXRB SLC39A7 HSD17B8 RING1 Telomere Centromere Class II region 2.6 2.5 2.3 2.2 2.1 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 MCCD1 BAT1 ATP6V1G2 NFKBIL1 LTA TNF LTB SBAB-548A10.9 LST1 NCR3 AIF1 BAT2 BAT3 APOM C7H6orf47 BAT4 CNK2B LY6G5B LY6G5C BAT5 LY6G6E LY6G6D LY6G6C C7H6orf25 DDAH2 CLIC1 MSH5 C7H6orf26 C7H6orf27 VARS2 LSM2 HSPA1L HSPA1A HSPA1B C7H6orf48 NEU1 C7H6orf2 BAT8 C2 ZBTB12 BF RDBP SKIV2L DOM3Z STK19 C4A CYP21A2 TNXB CREBL1 FKBPL C7H6orf31 PPT2 EGFL8 AGPAT1 RNF5 AGER PBX2 GPSM3 NOTCH4 BTNL5 BTNL6 Centromere Class III region 1.1 1.2 Extended Class I region 1.3 Class I region class Ia class Ib 7p Kappa block Beta block Telomere UBD ORF43-3 ORF43-2 ORF-1 GABBR1 MOG Zfp57 C7H6orf12 ZNRD1 PPP1R11 RNF39 TRIM31 TRIM40 TRM10 TRM15 TRIM26 AFP SBAB-207G8.1 SLA-1 SLA-5 SLA-9 SLA-3 SLA-2 SLA-4 SLA-11 TRIM39 RPP21 GNL1 PRR3 ABCF1 PPP1R10 MRPS18B C7H6orf134 C7H6orf136 DHX16 SBAB-1081H9.6 NRM MDC1 TUBB FLOT1 IER3 SBAB-353A11.2 DDR1 GTF2H4 VARS2L SFTPG DPCR1 C7H6orf205 C7H6orf15 CDSN SBAB-499E6.10 PSORS1C2 CCHCR1 TCF19 POU5F1 MIC-2 MIC-1 SLA-8 SLA-7 SLA-6 図1、SLA領域の遺伝子地図 第7染色体7q1.1の伸長クラスII領域から、7p1.1の伸長クラスI領域間に同定された 遺伝子を示す。白色ボックスは発現または、発現が推定される遺伝子、灰色ボックスは 新たに見出された発現候補遺伝子(SBAB-554F3.8は、仮の新規発現候補遺伝子)、黒色 ボックスは偽遺伝子を示す。 6 表1、SLA 領域の遺伝子数 発現 MHC 遺伝子 MHC または MHC-様 a 発現候補遺伝子 発現候補遺伝子数 MHC 発現遺伝子数 偽遺伝子 偽遺伝子数 計 0 6 伸長クラス I 領域 (UBD~MOG 遺伝子間: 108 kb) 非 MHC 遺伝子 6 クラス I 領域 (Zfp57~SLA6 遺伝子間: 996 kb) SLA クラス I 遺伝子 古典的クラス I 遺伝子 SLA-1, SLA-2, SLA-3 3 非古典的クラス I 遺伝子 SLA-6, SLA-7, SLA-8 3 SLA-5 1 SLA-4, SLA-9, SLA-11b 3 7 MIC-2 1 MIC-1 1 2 36 6 42 60 1 61 3 MIC 遺伝子 非 MHC 遺伝子 クラス III 領域 (MCCD1~BTNL6 遺伝子間: 674 kb) 非 MHC 遺伝子 セントロメア クラス II 領域 (BTNL4~DOA 遺伝子間: 418 kb) SLA クラス II 遺伝子 DRB2, DRB3, DRB4, DRB5 DRA, DRB1, DQA, DQB1 4 DOA, DOB, DMA, DMB 非 MHC 遺伝子 4 7 15 9 DQB3, DOB2, DYB 1 10 5 0 5 伸長クラス II 領域 (COL11A2~RING1 遺伝子間: 51 kb) 非 MHC 遺伝子 計(MHC と MHC-様遺伝子数) 10 計(非 MHC 遺伝子数) 計(全遺伝子数) 10 6 11 27 116 8 124 122 19 151 a 新規発現遺伝子(3個)や予想されるORFを含む発現候補遺伝子数。 b SLA-11 遺伝子は、'化石クラス I 遺伝子'と名付けられた非古典的/古典的クラス I 偽遺伝子である(12)。 3、2 つの SLA 遺伝子クラスターを有する SLA さらに UBD〜LTB 遺伝子間の領域はヒトでは、 クラスⅠ領域 β及びκブロックの他、11 個の HLA 遺伝子 ブタの SLA クラスⅠ遺伝子は、1.1 Mb の SLA を含む領域であるαブロックが存在するの クラスⅠ領域を含むユビキチン D(UBD)遺伝 に対して、ブタではαブロックに相当する 子からリンフォトキシン B(LTB)遺伝子間に、 ETF1P1〜HLA-F 遺伝子間の領域(375 kb)を欠 7 個の古典的 SLA クラスⅠ(Ia)遺伝子群と 3 いていること、並びにκブロックの一部に相 個の非古典的 SLA クラスⅠ(Ib)遺伝子群が、 当する HLA-E〜HLA-N 遺伝子間(210 kb)を欠 2 つのクラスターを形成して存在する(図 1)。 いており、両種間のクラス I 遺伝子の数と位 この UBD〜LTB 遺伝子間の距離は、ヒトでは 置が異なっている。一方、ヒトとブタの UBD 2,050 kb であるのに対し、ブタでは約 1,161 〜LTB 遺伝子間の MHC 遺伝子以外の遺伝子が kb であり、ブタのこの領域はヒトより約 890 位置する領域では、ヒト-ブタ間で遺伝子構 kb 短く、クラスⅠ領域の MHC 遺伝子の遺伝 成は高度に保存されている他、各遺伝子間の 子構成は、ブタ-ヒト間で大きく異なってい 領域も含めて互いに塩基配列相同性が高い る。すなわち、ブタの非古典的クラス I 遺伝 ことが明らかになった(4, 5, 12, 13)。この 子群(SLA-6〜8, MIC-1, MIC-2)が位置する ようなクラス I 遺伝子を含むαブロックの 領域は、ヒトでは MICB〜HLA-C 遺伝子間(β 欠損は、ブタ以外には、ネコ(9)や、ウマ(10) ブロック)に相当し、ブタ古典的クラス I 遺 でも報告されている。したがって、このαブ 伝子群(SLA-1〜5, SLA-9, SLA-11)が位置す ロック領域のクラス I 遺伝子は、ブタ、ネコ る領域は、HLA-92 遺伝子付近に相当する。 などの動物種またはそれらの祖先でそれぞ 7 II-III 領域間へのセントロメアの挿入の結 れ独立に欠損が生じたか、あるいはヒトを含 む霊長類/齧歯類の祖先で挿入されたという、 果であると考えられるが、この領域のセント ロメアの存在は SLA 領域の遺伝子構成に大 いずれかの可能性が考えられる。 きな影響を与えてはいない。 4、SLA クラス III 領域とセントロメア周辺 5、ブタとヒトの MHC クラス II 領域の両端 の butyrophilin ファミリー遺伝子 の遺伝子構成の相異 非古典的 SLA クラスⅠ遺伝子クラスター BTNL4〜RING1 遺伝子間の伸長クラス II 領 のセントロメア側の SLA クラス III 領域は、 MCCD1〜BTNL6 遺伝子間に 61 個の遺伝子が同 域を含む 0.58 Mb の SLA クラス II 領域は、 定されており、その遺伝子構成は、HLA クラ 15 個の SLA クラス II 及び、クラス II-様遺 ス III 領域と高い相同性を示している(14)。 伝子を含む合計 30 個の遺伝子が見出されて ヒトとの高い相同性を示すクラス III 領域 いる。この MHC クラス II 領域は、ヒトでは、 において、ブタに見出され、ヒトには見られ 0.7 Mb の BTNL2〜RING1 遺伝子間領域に DR, ない遺伝子としては、NOTCH4 遺伝子のセン DQ, DP, DM, DO の各亜領域に位置する 19 個 トロメア側に位置する butyrophilin ファミ の HLA クラス II 遺伝子群を含め、合計 40 個 リー遺伝子である BTNL5, BTNL6 遺伝子、及 の遺伝子が存在する。 すなわち、 ブタの BTNL4 び LTB 遺伝子のセントロメア側に位置し、転 〜RING1 遺伝子間領域の長さは、ヒトより、 写 が 推 定 さ れ る 新 遺 伝 子 と し て 約 120 kb 短く、この領域のブタの遺伝子数 SBAB-548A10.9 遺伝子が同定されている(1)。 はヒトのそれより 10 個少ない。この両種間 butyrophilin ファミリー遺伝子は、クラス の遺伝子数と領域の長さの違いは、ヒトでは III 領域の BTNL5, BTNL6 遺伝子以外に、セ 5 個の遺伝子から構成される DP 遺伝子亜領 ントロメアと DRA 遺伝子間のクラス II 領域 域が、ブタでは欠損していることと、上述し にさらに 3 個の BTNL 遺伝子(BTNL2, BTNL3, たように、ブタでは BTNL4, BTNL5 の 2 個の BTNL4)が見出されている(図 1)。これらの butyrophilin ファミリー遺伝子がクラス II butyrophilin ファミリー遺伝子は、IgV と 領域に存在することなどに起因する。また、 IgC 様ドメインを有し、BTNL2 遺伝子は、T ブタの DR 遺伝子群は、ゲノム塩基配列解読 細胞活性化の抑制に関与していると考えら に用いた H01 ハプロタイプでは、1 個の DRA れている(15)。さらに、BTNL2 遺伝子は、ほ 遺伝子と 5 個の DRB 遺伝子が存在するが、こ とんどすべての哺乳動物に共通して存在す れら DRB 遺伝子の中で DRB1 遺伝子のみが完 る祖先型の BTNL 遺伝子と推測され、ヒトで 全長であり、DRA 遺伝子との組み合わせによ はこの BTNL2 遺伝子のみが DRA〜HNRPA1 遺伝 り、DR 抗原をコードしている。また、ブタ 子間に存在する。また、BTNL3 遺伝子はイヌ の DQ 遺伝子は、DQ 抗原をコードしている DQA にそのオーソログの存在が認められ、BTNL4, と DQB1 遺伝子の他、DQB2 偽遺伝子が存在す BTNL5, BTNL6 遺伝子と高い相同性を示す遺 る。 DRB5〜DOB 遺伝子間には、反芻動物である 伝子は、齧歯類に複数個存在する。 HLA ク ラ ス II-III 領 域 間 に 存 在 す る ウシやヒツジで報告されている DY 遺伝子の C6orf10, HNRRA1P2, HCG23 の 3 遺伝子は、 偽遺伝子と考えられる DYB 遺伝子が存在す SLA 領域には存在せず、これは SLA クラス る(16)。SLA-DYB 偽遺伝子は、エキソン 2 と 8 エキソン 3 から構成され、これらのエキソン 可能性があり、これまでに発現の報告はない は BoLA-DYB 遺伝子のエキソン 2、エキソン 3 が、組織によっては低レベルの発現の可能性 と相同性を示す。さらに、SLA-DYB 遺伝子の も除去できない(3)。 セントロメア側には、ウシやヒツジの DYA 遺 以下に SLA クラス I, II 遺伝子のアリル情 伝子と相同性を示す 404 bp のゲノム断片も 報と SLA 領域のマイクロサテライト多型に 見いだされている(1, 7)。 ついて、記載する。 また、HLA クラス II 領域には、PSM9〜DMB SLA クラス I 遺伝子とアリルの名称につい 遺伝子間にクラス I 偽遺伝子である HLA-Z が て、2005 年に初めて公式な命名法が報告さ 存在するが、ブタでは SLA 領域に、この相同 れ(6)、現在 80 種類以上の SLA クラス I 遺伝 遺伝子は見出されていない(1)。 子アリルと 17 種類の SLA クラス I ハプロタ イプが IPD-MHC データベースに登録されて さらに、ヒト-ブタ間のクラス II 領域の主 な違いは、クラス II 領域の両端にあり、上 いる(http://www.ebi.ac.uk/ipd/mhc/ 述の BTNL 遺伝子によるクラスターによる相 sla/index.html)。これらの SLA アリルは、 違の他、クラス II 領域の RING1 遺伝子のテ 抗血清による特異性との対応も含まれてい ロメア側領域の遺伝子構成に見いだされる。 る HLA アリルの命名法とは異なり、各アリル すなわち、ヒトの RING1 遺伝子のテロメア側 間の塩基配列相同性について、そのアライン 領域の VPS52(Vacuolar protein sorting 52) メントと系統樹解析の結果のみにより、命名 〜DAXX 遺伝子間には、クラス I 遺伝子のプ されている。 すなわち、SLA アリルの表記は、 ロセッシングに関与する TAP 結合蛋白をコ 最初の 2 桁の番号が、アリル間の塩基配列相 ードする Tapasin(TAPBP)遺伝子を含む 7 個 同性に基づいて分類されたアリルグループ の遺伝子が存在するが、ブタでは、これらの を表し、3 桁と 4 桁の番号は、さらに特定さ 遺伝子は RING1 遺伝子よりさらに約 6.5 Mb れたアリル名を示している。また、複数の品 テロメア側の 7q12 の領域に存在する(13, 種、または複数の機関により、同一のアリル 17) 。 が登録された場合以外は、仮名称として、最 初の 2 桁の前に’w’が付加されている(表 2) 。 ヌルアリル(null allele)や、同義置換など 6、SLA クラス I 遺伝子のアリルと多型性 についての表記は HLA のそれと同様の命名 ゲノム配列解読を行った H01 ハプロタイ プでは、古典的クラス I 遺伝子クラスターに 法に従っている(6)。 は、3 個のクラス Ia 発現遺伝子(SLA-1〜3) 発現している 3 個の SLA クラス Ia 遺伝子 と 3 個の偽遺伝子(SLA-4, SLA-9, SLA-11)、 (SLA-1〜3)は、多型性が高く、IPD-MHC デー 並びに 1 個の転写が確認されていない遺伝 タベースに登録されている SLA クラス Ia 遺 子(SLA-5)の合計 7 個の Ia 遺伝子座位が確認 伝子アリルは、SLA-1 遺伝子が 13 グループ、 されているが、SLA 抗原の血清学的タイピン 23 アリル、SLA-2 遺伝子が 14 グループ、34 グや SLA 領域のマイクロサテライト解析な アリル、SLA-3 遺伝子が 7 グループ、20 ア どにより、以前から、ハプロタイプ間で Ia リルに分類されている。クラス Ib 遺伝子は、 遺伝子座数の相違があると推定されている 他の動物種と同様にブタでも多型性は低く、 (6, 18)。また、SLA-5 遺伝子は、プロモー これらのデータベースの中で、SLA-6 遺伝子 ター領域などの変異が発現に影響している については、3 グループ、7 アリルに分類さ 9 れている(6)。これらのブタクラス Ib 遺伝子 性は認められず、ブタクラス Ib 遺伝子の機 のアミノ酸配列は、ヒトやマウスの特定のク 能は未解明である(2)。 ラス Ib 遺伝子のアミノ酸配列との高い相同 表2、SLA クラス I 遺伝子のアリル表記 SLA-1 Group *01 *02 *03 *04 *05 *06 *07 *w08 *w09 *w10 *w11 *w12 *w13 Total Allele 0101 01rh28 0102 0201 02we02 0401 04gz01 04we01 04gx01 0501 0601 0701 07ce08 w08sz01 w08Lw02 w08sy01 w08sm08 w08ms05 w09sm09 w10sm21 w11sz01 w12Lw01 w13ms21 23 SLA-2 Group *01 *02 *03 *04 *05 *06 *07 *w08 *w09 *w10 *w11 *w12 *w13 *w14 Total Allele 0101 01an06 0201 02Lw02 0301 03sp01 03gz01 0401 04sx01 0501 05th34 05sy01 05th07 05sz01 05th03 0601 06sr01 06sv01 06an03 06me01 w07ss01 w07we01 w07th12 w07an05 w08sw01 w08gx01 w09sn01 w09an01 w10sm21 w10an01 w11so01 w12Lw01 w13sm20 w14yn01 34 SLA-3 Group *01 *02 *03 *04 *05 *06 *07 Total Allele 0101 01rh28 01ev04 01rh12 0301 0302 03an02 03an04 03an05 0401 04sc19 0501 05sm14 05sw01 0601 06an03 0701 0701sm19 07Lw02 07rh34 20 に登録されている(http://www.ebi.ac.uk/ 7、SLA クラス II 遺伝子のアリルと多型性 ipd/mhc/sla/index.html)。 SLA クラス II 遺伝子とアリルの名称につ いても、クラス I 遺伝子と同様に、2005 年 SLA クラス II 遺伝子の多型性の特徴のひ に初めて公式な命名法が報告され(7)、現在 とつとしては、他の動物種では多型性がほと 9 種類のクラス II 遺伝子座について、100 んど見られない DRA 遺伝子について、α1 ド 種類以上のアリル、及び 17 種類の SLA クラ メインの非同義置換を含む 2 カ所の多型が ス II ハプロタイプが IPD-MHC データベース 認められ、3 グループ、12 アリルに分類され 10 ている。一方、SLA-DRB1 遺伝子は、高度な ドメインに 1 アミノ酸の欠失が見られる。一 多型性を示し、合計 12 グループ、51 アリル 方、SLA-DQB1 遺伝子も DRB1 遺伝子と同様に、 に分類されている。また、4 個の DRB 偽遺伝 高度な多型性を示し、合計 9 グループ、27 子は、各遺伝子座に特徴的な欠失や終止コド アリルに分類されている(表 3) 。 ンを含み、DRB2 遺伝子は、9 アリル、DRB3 SLA クラス IIb 遺伝子の多型性としては、 遺伝子は、 5 アリルの多型が報告されている。 また、SLA-DQA 遺伝子は、中程度の多型性を 現在 DMA, DOA, DOB の各遺伝子について、 示し、少なくとも 5 グループ、16 アリルに それぞれ数アリルの報告があるのみである 分類されている。SLA-DQA 遺伝子の 4 種類の (7)。 * アリルグループの中で、 01 グループは、α2 表3、SLA クラス II 遺伝子のアリル表記 DRA Group *01 *02 *03 Total Allele 010101 010102 0101we01 0101ta01 0201 020201 0202mw01 0202Lw02 0202mm16 020301 0203my01 w03ta01 12 Group *01 *02 *03 *04 *05 *06 DRB1 Allele Group 0101 0102 0201 0201br05 02ka05 02ka06 02ka08 02sp02 02sp08 02zs13 0301 0401 04ta01 0402 04ga01 0403 0501 0502 05ch01 05np01 05ka01 05ka03 05sp06 0601 060201 060202 06zs12 06sL47 DQA Allele *07 0701 07ka03 0801 0801hg06 08hg09 08ka92 08ka83 08sp05 0901 0901br04 09ta01 09sL48 1001 10sp07 10ka06 w11br02 w11zs10 w11sp01 w11ac21 w11an01 w12ka02 w12ka05 w12ka12 *08 *09 *10 *w11 *w12 Group *01 *02 *03 *04 *w05 Total DQB1 Allele 0101 01my01 0102 0103 01ch01 0201 020201 020202 0203 02xu01 0301 03ta01 03we01 0401 04ta01 w05ch01 16 Group *01 *02 *03 *04 *05 *06 *07 *08 *09 Total Total Allele 0101 01sh01 0201 02kg02 0202 0203 02zs16 02sh02 0301 0302 0303 0401 04hg09 0402 0402we01 04sp16 0501 0502 05sp06 05an01 0601 06sp10 0701 0801 08ch01 0901 09zh01 27 51 8、マイクロサテライトマーカーによる SLA 94、131、78、236 個存在する。すなわち、 領域の多型性 SLA 領域繰り返し配列の密度は、2 塩基繰り 返し配列が、クラス I 領域は 25 kb に 1 個、 SLA 領域は、様々な種類のマイクロサテラ イト(MS)繰り返し配列が存在し、この領域の クラス II と III 領域は 36 kb に 1 個、3 塩 2、3、4、>4 塩基繰り返し配列は、それぞれ 基繰り返し配列が、クラス I 領域は 25 kb に 11 1 個、クラス II と III 領域は 13 kb に 1 個 基づいて、SLA タイプが固定されたブタを 2 の頻度で見出される。 品種作成し、各種ワクチン接種による抗体産 生と SLA タイプとの関連性の解明を進めて SLA 領域のゲノム多型性を明らかにするた いる。 めに、H01 ハプロタイプの 2.4 Mb の SLA 領 域のゲノム塩基配列情報に基づき、平均 59 kb に 1 個の密度で、40 個の多型 MS マーカー 参考文献 が設定された。11 品種 96 個体のブタを用い 1. Renard C, Sehra HK, Beasley HR, et al.: たこれらの MS マーカーの多型性の検証によ The genomic sequence and analysis of り 、 heterozygosity the swine major histocompatibility と polymorphic information content(PIC)の平均値は、それ complex. Genomics 88: 96-110, 2006. ぞれ 0.71、0.68 であり、HLA 領域と同程度 2. Chardon P, Rogel-Gaillard C, Cattolico の密度と多様性を示すマーカーが設定され L, et al.: Sequence of the pig major たことが明らかになった(18)。SLA クラス Ia histocompatibility region containing 遺伝子の塩基配列は、各遺伝子座間の相同性 all non-classical class I genes. Tissue が高く、部分的な塩基配列解析による遺伝子 Antigens 57: 55-65, 2001. 座の識別は困難な場合があり、アリルの種類 3. Renard C, Vaiman M, Chiannikulchai N, によっては、3 個の発現 SLA クラス Ia 遺伝 et al.: Sequence of the pig major 子座特異的なプライマーの設定による DNA histocompatibility region containing タイピングが難しい例が数多く存在する。し the たがって、SLA 領域に設定されたこれらの MS Immunogenetics 53: 490-500, 2001. マーカーは、SLA ハプロタイプの同定に役立 4. Shigenari A, Ando A, Renard C, et al.: つものと考えられる。 classical class I genes. Nucleotide sequencing analysis of the swine 433-kb genomic segment located おわりに between SLA 領域のゲノム配列解読の完了により、 the non-classical and classical SLA class I gene clusters. ヒトや種々の動物種の MHC 領域との比較ゲ Immunogenetics. 55: 695-705, 2004. ノム解析が可能となり、SLA 遺伝子を初めと 5. Ando A, Shigenari A, Kulski JK, et al.: するこの領域の遺伝子構成と特徴が明らか Genomic sequence analysis of the 238-kb になった。さらに、SLA 遺伝子のアリル命名 swine segment with a cluster of TRIM and 法の確立や SLA 領域上の多型 MS マーカーの olfactory receptor genes but no class 開発など、ここ数年、SLA 研究に必要な情報 I genes located at the distal end of the の整備が進展した。今後は、これまで得られ SLA class I region. Immunogenetics 57: た SLA 研究の成果が、ブタを用いた同種、異 864-873, 2005. 種移植研究や、抗病性品種の選択などの研究 6. Smith DM, Lunney JK, Martens GW, et al.: に活用されることにより、これらの医学や畜 Nomenclature for factors of the SLA 産学分野の研究が進展し、様々な分野におけ class-I system, 2004. Tissue Antigens る SLA 研究のさらなる発展が期待される。現 65: 136-149, 2005. 7. Smith DM, Lunney JK, Ho CS, et al.: 在、筆者らは、SLA 領域のゲノム解析情報に 12 13. Ando A, Chardon P: The swine major Nomenclature for factors of the SLA class-II system, 2005. Tissue Antigens histocompatibility 66: 623-639, 2005. organization and polymorphism. Anim Gene Sci J 77: 127-137, 2006. 8. Smith TP, Rohrer GA, Alexander LJ, et al.: complex: the 14. Shiina T, Inoko H, Kulski JK: Anupdate physical and genetic linkage maps of of the HLA genomic region, locus the swine chromosome 7 reveals that SLA Information and disease associations: spans the centromere. Genome Res 5: 2004. Tissue Antigens 64: 631-649, 259-271, 1995. 2004. Directed integration of 9. Beck TW, Menninger J, Murphy WJ, et al.: 15. Nguyen T, Liu XK, Zhang Y, et al.: BTNL2, The feline major histocompatibility a complex is rearranged by an inversion functions to inhibit T cell activation. with a breakpoint in the distal class J Immunol 176: 7354-7360, 2006. I region. Immunogenetics 56: 702-709, butyrophilin-like molecule that 16. Ballingall KT, Ellis SA MacHugh ND, et al.: The DY genes of the cattle MHC: 2005. 10. Gustafson AL, Tallmadge RL, Ramlachan expression and comparative analysis of N, et al.: An ordered BAC contig map of an unusual class II MHC gene pair. the equine major histocompatibility Immunogenetics 55: 748-755, 2004. complex. Cytogenet Genome Res 102: 17. Barbosa A, Demeure O, Urien C, et al.: A physical map of large segments of pig 189-195, 2003. 11. Horton R, Wilming L, Rand V, et al.: chromosome 7q11-q14: comparative Gene map of the extended human MHC. analysis with human chromosome 6p21, Nature Genet Rev 5: 889-899, 2004. Mammalian Genome 15: 982-995, 2004. 12. Renard C, Chardon P, Vaiman M: The 18. Tanaka M, Ando A, Renard C, et al.: phylogenetic history of the MHC class Development of dense microsatellite I gene families in pig, including a markers in the entire SLA region and fossil mammalian evaluation of their polymorphisms in radiation. J Molec Evol 57: 420-434, porcine breeds. Immunogenetics 57: 2003. 690-696, 2005. gene predating 13 シンポジウム、ワークショップ等のお知らせ (1)第3回動物 MHC シンポジウム開催のご案内 第 143 回日本獣医学会学術集会ワークショップ(2007 年 4 月 5 日、つくばカピオホ ール4階中会議室 406 号(第8会場)にて、第 3 回動物MHCシンポジウムを開催致 しますので、奮ってご参加ください。動物MHC研究会非会員で、動物MHC研究に ご興味をお持ちの方にもお知らせいただければ、幸いです。多くの方のご参加をお待 ちしております。シンポジウムの詳細は、下記をご参照ください。また、会場や学会 の 日 程 な ど は 、 第 143 回 日 本 獣 医 学 会 の ホ ー ム ペ ー ジ (http://niah.naro.affrc.go.jp/jsvs143/index.html)をご参照ください。 第 143 回日本獣医学会学術集会ワークショップ 第3回動物 MHC シンポジウム 「主要組織適合抗原と疾患解析の最前線 −臨床応用への展望−」 日 時:2007年4月5日(木) 9:00〜12:00 場 所:つくば国際会議場(エポカルつくば)4階中会議室 406 号(第8会場) 〒305-0032 茨城県つくば市竹園 2-20-3 主 催:動物 MHC 研究会 共 催:日本獣医学会微生物分科会 本シンポジウムの趣旨 ヒトの組織適合性遺伝子複合体(MHC)領域は非常に多型性に富み、遺伝子密度も高 く、疾患感受性遺伝子が集中的にマップされていることから、疾患の責任遺伝子の同 定が進展している。また、ヒトでは、MHC・ペプチド相互作用の法則性が生化学的に解 析され、自己免疫疾患におけるアロタイプ特異的な親和性を示すペプチドモチーフの 同定などによる疾患発症機構の解明も進展している。 一方、家畜の MHC 領域は、MHC 遺伝子の他に、成長、泌乳量、繁殖性などの経済有 用形質や乳房炎、牛白血病、マレック病などの抗病性に関与する遺伝子が多数マップ されるという興味ある特徴を示すが、これらの形質や疾患の責任遺伝子の同定には至 っていない他、疾患に関連した MHC・ペプチド相互作用の解析などもほとんど行われ ていない。最近、家畜のゲノム配列解読が進展し、経済形質や疾患の責任遺伝子を同 定するためのゲノム配列情報が整いつつあり、動物種によっては、ヒトと同様のアプ ローチによる疾患責任遺伝子同定に向けた解析が開始されている。 本シンポジウムでは、愛玩動物および家畜の MHC における免疫応答性や疾患解析に ついての最新の情報を提供するとともに、ヒト MHC と疾患解析に関連した新戦略を紹 介し、それらの情報を獣医学分野の疾病制御へと役立てるための方向性と臨床応用へ 14 の展望を示したい。 プログラム 9:00〜10:20 座長 小野寺節(東京大学) 、中西照幸(日本大学) 1.動物 MHC 研究会からのお知らせ(理化学研究所、間陽子) 2.ヒト MHC 拘束性癌抗原ペプチドを用いた癌免疫療法(熊本大学、西村泰治) 3.ブタの MHC 及び免疫関連遺伝子の多型と肺炎等の日和見感染症との関連性 の解析(農業生物資源研究所、上西博英・東海大学、安藤麻子) 10:20〜11:50 座長 小沼 操(北海道大学) 、辻本 元(東京大学) 4.ニワトリ MHC とマレック病(東海大学、椎名 隆) 5.白血病および乳房炎感受性とウシ MHC の遺伝的多様性 (理化学研究所、間陽子・竹嶋伸之輔) 6.家猫 MHC 領域の SNP 及びマイクロサテライトタイピング —猫エイズ及び 猫白血病ウイルスに対する感受性への応用— (米国国立癌研究所、柚木直也) (問い合わせ先:理化学研究所、間 陽子 電 話 048-462-4420, mail-address, [email protected]) (2)国際獣医免疫シンポジウムにおける MHC ワークショップ開催のご案内 2010 年神戸で開催される第 14 回国際免疫学会議(8 月 22 日~27 日)に呼応して、 国際獣医免疫シンポジウムの開催が予定されています。そのサテライトとして動物 MHC ワークショップが企画されており、現在、生物資源研究所等の協力のもとに内容 や日程、開催場所等について検討中です。 15 事務局からのお知らせ (1) アニテクス3月号動物 MHC 特集号のご案内 アニテクス(Laboratory Animal Technology and Science)という雑誌に、編集長の 千葉大学医学部伊藤勇夫先生より投稿を依頼され、動物 MHC 特集号を組むことになり ました。動物 MHC 研究会としても活動内容や趣旨をより多くの方々に知って貰う良い 機会と考え、以下の5つの課題について各分野の専門家にレビューを書いていただく ことになりました。各分野の MHC 研究の現状を把握する上で役に立つと思います。 是非ご一読下さい。 なお、アニテクスは、実験動物を題材とした記事を中心に 1989 年より隔月刊で研成社 より発行されている雑誌です。 特集の課題名:「動物 MHC 研究の現状と課題」 1. MHC とは何か 熊本大学医学薬学研究部 2. ブタ MHC 東海大学医学部 安藤麻子 3. ウシ MHC 理化学研究所 4. ニワトリおよびニホンウズラ MHC 5. 魚類 MHC 藤田保健衛生大学 間 千住 覚 陽子 東海大学医学部 細道一善、椎名 隆 J.M. Dijkstra (2) 動物 MHC 研究会主催勉強会のご案内 毎年、動物 MHC における機能、多様性、進化、病気や経済形質との関連性などの 知見が数多く報告されています。ところが、個人が収集できる情報は限られていま す。そこで動物 MHC 研究会が毎年開催するシンポジウムとは別に、これらの知見を 共有し、MHC のイロハから今後の方向性までを探る場、すなわち勉強会を開催するこ とを企画しています。この勉強会より、会員間の交流とともに、動物 MHC 研究の新 たなシーズとなる斬新なアイデアが生まれることが期待されます。開催時期は今年 の6月〜7月を予定しています。場所や会費は未定ですので、決まり次第お知らせ いたします。 まずは場所を決定するために、大まかな人数を把握したいと思いますので、椎名 隆(e-mail address: [email protected])まで下記の種類にわけてお 知らせください。同時に、勉強会にて取り扱って欲しい内容などのアイデア、質問 等がございましたら、併せてお知らせください。 1、是非出席したい 2、都合がつけば出席したい 3、現時点では何とも言えない 4、欠席したい 16 (3) 入会手続きについて 入会方法には、本ニュースレターに添付しました入会申込書(資料2)あるいはホ ームページ(http://www.riken.jp/lab/virus/animalMHC.htm)上に掲載されている入 会申込書に必要事項をご記入の上、下記までご送付ください。入会金等不要です。今 後の本研究会の輝かしい発展のために、もしお近くに動物 MHC 研究にご興味のある方 がいらっしゃいましたら、本研究会の存在をお知らせください。よろしくお願い申し 上げます。 送付先:〒351-0198 埼玉県和光市広沢 2-1 (独)理化学研究所 辻本細胞生化学研究室 分子ウイルス学 (問合先:048-462-4408、FAX:048-462-4399 または [email protected] まで) (4)会員名簿の掲載について 会員名簿 につきましては、本会の個人情報保護指針 (ホームページに記載)に従っ て、氏名、所属及び部署のみをニュースレターに資料4として掲載致しました。 17 日本大学 編集後記 生物資源科学部 中西照幸 当初 12 月発行を予定しておりましたが、諸般の事情により創刊号より 1 年後の 2007 年新 年号になってしまいました。今回の原稿も事務局員が中心となりましたが、動物 MHC に関す る広範囲な情報を発信してまいりたいと思いますので、会員の皆様の投稿、ご意見をお願い 致します。 なお、前号においても紹介させていただきましたが、暫定的な措置として引き続き下記の体 制でやっていきたいと思いますので、ご支援・ご協力の程よろしくお願いします。 会長: 間 陽子(理化学研究所) 渉外幹事: 安藤麻子(東海大学) ・間 庶務幹事: 竹嶋伸之輔(理化学研究所) 会計幹事: 間 編集幹事: 中西照幸(日本大学) ・椎名隆(東海大学) 陽子(理化学研究所) 陽子(理化学研究所) 編集・刊行 動物 MHC 研究会事務局 〒351-0198 埼玉県和光市広沢 2-1 (独)理化学研究所 辻本細胞生化学研究室 (分子ウイルス学) Tel:048-462-4408 FAX:048-462-4399 e-mail:[email protected] 18 資料1 動物 MHC 研究会 会則 1.名称 本会は、動物 MHC 研究会と称する。 2.目的 本会は、動物、すなわち産業動物、実験動物、愛玩動物、野生動物の MHC、並びにそれ に関連した分子に関する学術研究・情報の交流を図り、その研究の促進に資することを 目的とする。 3.事業 本会は、その目的を達するために次の事業を行う。 1)シンポジウム、講演会などの開催 2)ニュース(レター)の発行 3)その他、目的を達成するために必要な事業 4.会員 本会の趣旨に賛同する次のものを会員とする。 1)普通会員(個人) 2)賛助会員(団体、機関) 入会を希望する者は、所定の入会申込書の提出を行うものとする。但し、第1回シンポ ジウム(2005 年 4 月 15 日開催)において登録(アンケート調査)を行った者はこの限り ではない。 5.会費 個人会員は当面無料とし、賛助会員より任意に寄付を仰ぐものとする。 6.役員等 本会に次の役員を置く。 1)会長:本会は会長1名を置く。会長は本会を代表し、会務を統べる。 会長の選出は、取り敢えず幹事会において行う。任期は2年とし、再任を妨げない。 2)幹事:本会は渉外幹事 2 名、庶務幹事 1 名、会計幹事1名、編集幹事2名を置く。 幹事は、当面の間、第1回シンポジウムの事務局員があたる。任期は2年とし、再任を 妨げない。 付則 1.本会の事務局は、庶務・会計役員が所属する機関の施設に置く。 2.当分の間、役員の手当、日当、交通費は支給しない。 3.この会則は、平成18年1月1日より施行する。 19 資料2 入 会 申 込 書 このたび動物MHC研究会に入会いたしたく、下記の通り申込みます。 年 月 日 動物MHC研究会 会長 間 陽子 様 氏名: フリガナ: 所属機関名: 部署名: 住所:〒( )-( ) 都・道・府・県 電話番号: 内線( ) FAX番号: e-mail アドレス: (事務連絡等送付のため、ご記入ください。) 研究内容: 以上 20 資料3 賛 株式会社 池田理化 株式会社 ベリタス 助 会 員 共立製薬臨床微生物研究所 株式会社 尾崎理化 岩井科学薬品(株) レノバサイエンス(株) (社)家畜改良事業団 (財)日本生物科学研究所 (順不同) 21 名 簿