...

中公200304全ページ

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Transcript

中公200304全ページ
帝国書院『中学生の公民』
経済学習における活動的な学習方法とその意義
三重大学教授 山根栄次
£
の話や解説を聞かせるだけではなく、生徒が話し
新学習指導要領における活動的な学習の推奨
合ったり、考える場面に遭遇させたり、調べたこ
新学習指導要領の特色は、自ら学び自ら考える
と・考えたことを書かせたりする活動が必要にな
力などの「生きる力」の育成を強調していること
る。たとえば、税のあり方など経済政策上の論争
にあるが、中学校社会科についても、「網羅的で
問題についてディベートを実施すれば、生徒が主
知識偏重の学習にならないようにするとともに」、
体的に調べ、考える経済学習をすることができる。
「学び方や調べ方の学習、作業的、体験的な学習
「理解させる」ことを求めている経済の「内容」
や問題解決的な学習など、生徒の主体的な学習を
についても、単に教師の説明を聞き、教科書を読
一層重視する」ことが求められている。また、学
んで理解するだけでなく、活動を通して実感的に
習指導要領に示されている「内容」についても、
理解することも求められる。それは、とくにその
とくに歴史的分野と公民的分野については、
「考
内容の抽象度が高い場合にはそうである。たとえ
えさせる」ものが多くなっている。
ば、
「福祉の向上」などはその典型であろう。生
経済学習については、とくに、「価格の働きに
徒が車椅子に乗って校外を実際に回ってみるとい
着目させて市場経済の基本的な考え方について理
う活動が普及しているが、これは、実際に車椅子
解させる」こと、「国や地方公共団体が果たして
体験をすることにより街のバリアフリー度を調べ
いる経済的な役割について考えさせる」こと、
「限
ることによって、生徒が自分の市町村における「福
られた資源の配分という観点から財政について考
祉の向上」の程度の一端を実感的に理解できるた
えさせる」ことが考える内容として目立っている。
めであろう。
生徒に「考えさせる」ためには、ただ単に教師
帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.61
−2−
Ó
か下がったかを新聞やインターネットなどで調べ
る。あるいは、
『株式学習ゲーム』のホームペー
経済学習としての『株式学習ゲーム』
中学校の経済学習で用いられる活動として、最
ジによって、自分たちのチームの買った株の現在
近流行しているものに株式売買ゲームがある。こ
の株価、学級における順位、全国の中での順位を
れには、いろいろな主催者のものがあるが、もっ
知ることができる。子どもたちは、なぜ自分たち
ともポピュラーなものは、東京証券取引所・証
の買った株の株価が上がったのか、あるいは、下
券広報センター・日本証券業協会が主催している
がったのかを考える過程において、経済に関連す
『株式学習ゲーム』である。
るニュースや企業についての新たな情報を得、現
この学習ゲームは、ゲームのスタート時に4人
実の経済の動きに触れることができる。
程度からなるグループ1つ1つに架空に1000万円
このように、
『株式学習ゲーム』は、現実の生
を与え、そのお金によって東京証券取引所の第一
きた経済に直接触れながら、経済の仕組みを理解
部に上場されている企業の中の300企業の内から、
し、経済について主体的に考える機会を子どもた
現実・実際のルールに基づいて株を選択・売買さ
ちに与える。子どもたちにはこのゲームは人気が
せ、ゲームの終了時における手持ちの株価総額と
あるようだ。証券広報センターの調べでは、参加
現金の合計が一番多かったチームが勝利するとい
校は年々大きく増加しており、平成13年度の場合、
うものである。
前期と後期を合わせて全国で合計812の中学校で
ゲームのスタート時には、子どもたちは、ビデ
実施されているということである。実施されてい
オ等を通して株式、株式市場、新聞の株式欄の見
るのは、選択教科としての社会の時間においてが
方についての説明を受ける。その後、チーム内で
約三分の二と多いようであるが、公民的分野の経
会社情報を見て調べたり、インターネットで調べ
済の時間を使っても約三分の一が実施されている。
たり、その他いろいろな方法で、どの会社が将来
私も大学の社会科教育法の講義でこのゲームを利
性がありそうかを考え、購入する会社の株式と株
用しているが、学生の評判はすこぶるよい。
数を決定し、購入する。この過程で、子どもたち
経済の学習は、経済学の用語(価格、需要・供
は多くのことを学ぶ。株式、株式会社、株式市場
給など)や経済の制度(日本銀行、公定歩合、税
とは何かを理解することはもちろん、新聞の株式
の種類など)、現在の日本経済の現状や課題につ
欄の見方がわかるようになり、また、どのような
いての教師の説明を受け、それを生徒が理解する
企業がどのような経済活動を行っているのか、最
だけの受け身的な学習に成りがちで、生徒を経済
近の日本経済はどうなっているのかについての一
端を知ることができる。
の学習に引きつけることがむずかしい。しかし、
『株式学習ゲーム』は、ゲームとして生徒を引き
株価は日々変化しているので、ゲームの期間中
つけるだけでなく、ゲームの中で経済に関する用
子どもたちは、自分たちの購入した株が上がった
語を理解してそれらが使えるようになり、新聞や
テレビの経済ニュース
に自然に目や耳を向け
るようになるなど、リ
アリティに富んだ、主
体的な経済学習を実現
することができる。も
ちろん、生徒にはただ
単にゲームをさせるだ
けでなく、その途中で
教師による経済に関す
帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.60
−3−
る用語の説明や、経済
にたつ生産者経済教育が望まれるわけであるが、
事象についての説明も必要である。
その方法が生徒に企業作りを模擬的に体験させる
Î 経済学習としての企業作り(起業家教育)
株式
起業家教育なのである。
株式学習ゲームと並んで現在注目されている実
起業家教育の方法にもいろいろあるが、もっと
践的・活動的な経済学習の方法に、企業作りシミュ
も基礎的なものは、子ども個人やグループに、自
レーションがある。これは、起業家教育(Entre-
分の生産したい財やサービスを生産する企業をど
preneurship Education)という教育運動から出て
のように立ち上げるかをシミュレーションによっ
きたものである。
て考えさせるものである。たとえば、ペットの好
経済学習は、経済の主体の観点から大きく分け
きな生徒が、将来ペットショップをしたいと思っ
れば、消費者経済教育、生産者経済教育、公共人
ているのなら、ペットショップの従業員にどうし
経済教育に分けることができるというのが筆者の
たらなれるのかを考えるのではなく、自らペット
主張であるが、生産者経済教育は、これまでどち
ショップの経営者になるにはどうしたらよいかを
らかといえば企業に勤める労働者の立場を中心に
考えさせるわけである。ペットショップを新たに
学習・内容が編成されてきた。中学校学習指導要
自分で開くには、何を考える必要があるのかから
領の記述についていえば、
「社会生活における職
生徒に考えさせるのである。たとえば他のペット
業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善につい
ショップと比べて自分のペットショップは何を客
て、勤労の権利と義務、労働組合の意義及び労働
への売りとするのか、どこに店を開くのか、資金
基準法の精神と関連付けて考えさせる」とあるの
調達はどうするのか等々を生徒に実際に考えさせ
は、明らかに労働者の立場から企業と生産活動に
るわけである。
ついて考えさせることを意図している。
このような活動により、生徒は実際に自分が経
生産活動に参加する立場には、大きく分けて、
営者・自営業者になるつもりで経済について学習
経営者、自営業者、労働者(被雇用者)の三つが
する。これも生徒にとってよりリアリティに富ん
あるが、公民的分野の経済学習における生産者経
だ、主体的な経済学習を作り出すことになる。
済教育がおもに労働者の立場から内容構成がされ
ていたのは、現実の経済社会では、その三つの立
場のうち、労働者(被雇用者)の立場にある人が
もっとも多く、生徒の多くも将来労働者(被雇用
者)になる可能性がもっとも高いことを考えての
ことであると考えられる。しかし、経済学におい
ては、たとえばミクロ経済学は消費者と企業経営
者の立場からおもに理論構築をしており、マクロ
経済学は国の政策立案者の立場からおもに理論構
築をしている。生産者経済教育は、それゆえに、
経営者や自営業者の立場から学習内容と学習方法
を構成したほうが、経済学との関連がつけやすく
なる。これにくわえて,バブル崩壊(1991年)後
の日本経済は、与えられた仕事を着実にこなす真
面目な労働者よりも、新しい事業や産業を起こす
創造的な起業家を求めているので、起業家精神を
もった経営者・自営業者がより求められるわけで
帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.77
ある。
このことからすると、経営者・自営業者の立場
−4−
わたしの授業実践
現代社会の歩みと私たちの生活
東京都広尾中学校 関 基雄
£
Ó
はじめに
指導の流れ
この第1章はいよいよ中学校三年生になり、は
この単元では、現在の日本の出発点ともいえる
じめて学ぶ公民の学習のスタートとなるところ
高度経済成長期と現在を比べて現在の日本の社会
である。1、2年生で学習してきた地理や歴史は
の特徴をつかむことをねらいとしている。高度経
小学校でも学習の経験がある。しかし、公民は多
済成長期を経て日本がどう変貌してきたのかをつ
くの生徒にとって、「公民」という言葉の意味も
かむことで、現代日本の社会の特徴を捉えること
わからない不思議な科目といえよう。しかし、中
ができる。その際、高度経済成長期の生活のよう
学校3年生になり進路についての意識も高まりは
すを聞き取り調査をすることで教科書などで書か
じめ、公民の学習にも不安とともに大きな期待を
れているよりもより具体的なようすを知ることが
もっていることも事実である。
でき、関心をもつようになる。しかし、1、2年
新学習指導要領でも、この単元の取り扱いにつ
の学習でもすでに調査や発表をやってきている生
いて、地理的分野歴史的分野との関連を図り、調
徒には、あまり新鮮味が感じられないかもしれな
査や討論など多様な学習活動を取り入れたり、適
い。ここでは、仮説を立てた調査ということに取
切な課題を設けて行う学習を取り入れるなどの工
り組ませてみたい。
夫を行うことを求めている。生徒が興味関心をも
高度経済成長の概略を学んで聞き取り調査を行
つような公民の学習になるポイントの一つに生徒
う前に、「今ではあたりまえになっているもので
の身近な生活にかかわらせることがあげられる。
も高度経済成長期が始まった昭和30年代はちがう
この単元でも高度経済成長から現在の変化を自分
はずだ。興味や関心があることがらについてきっ
の生活とかかわるものだという実感をもたせたい。
とちがうだろうという仮説(予想)を立ててみよ
そこで、ここでは身近な人への聞き取り調査を取
う」と指示を出して仮説を立てさせてみたい。こ
り入れた実践を報告したい。
うすることで焦点の定まった聞き取り調査になる。
こうしたことをふまえて次のような指導計画を立
ててみた。
帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.11 ∼ 12
−5−
−6−
Î
・調査結果をもとに適切な結論を導きだすことが
評価について
できているか。
この単元は公民学習の導入にあたるので、調査
評価方法──────────────────
の結果をうまくまとめられたというよりも興味や
ワークシート、活動状況の観察
関心をもって課題を設定し、意欲的に聞き取り調
査を行ったのかという点を重視した評価を行いた
資料活用の技能・表現
い。そこで、評価の方法と観点別の評価規準例を
・発表のときに聞き取り調査の結果などの根拠を
示して発表することができているか。
示しておきたい。
評価方法──────────────────
ワークシート、発表の観察
興味・関心・態度
・聞き取り調査の課題を設定するために積極的に
知識・理解
話し合いに参加して協力しているか。
・調査結果や他の班の発表を聞いて、生活の向上
・何人かの人に聞き取りを行ったり、なるべく具
や情報化、国際化、少子高齢化などの現在の社
体的な話を聞こうとしているか。
会の特色をとらえることができているか。
・聞き取り調査の結果を班の中でわかりやすく報
評価方法──────────────────
告し、発表の準備に積極的に協力しているか。
ワークシート、活動状況の観察
評価方法──────────────────
ワークシート、活動状況の観察、自己評価、相
また、この単元は生徒の主体的な学習の学び方
互評価
を学ぶこともねらいとしているので、それぞれの
活動を振り返る自己評価や模範となるような活動
を認める相互評価にも力を入れたい。
社会的な思考・判断
・適切な仮説を立てた課題設定ができているか。
−7−
わたしの授業実践
第2部 第2章「家計から学ぼう」案
東京都荏原第六中学校 坂本教喜
£
はじめに
解させる」ことをねらいとしている。この部分が、
第2章の「家計から学ぼう」は、学習指導要領
第1・2章での目標ということになる。他方で、
大項目(2)「国民生活と経済」の中項目「ア この箇所は、経済学習の導入の部分でもある。し
わたしたちの生活と経済」の前半部分に対応して
たがって、導入としての位置づけが必要となって
いる。この中項目アでは、「身近な消費生活を中
くる。中項目アの後半部分に当たる第3章「企業
心に経済活動の意義を理解させる」
「価格の働き
について学ぼう」と第4章「福祉社会と財政」に
に着目させて市場経済の基本的考え方について理
つなげていくことが望まれる。
<評価規準>
関心・意欲・態度
思考・判断
消費活動への関心が高まり、自分の生活 家計のシミュレーションゲームを通して、
を見直すとともに、経済活動について考え 「選択と責任」等の経済活動について多面
ようとしている。
的・多角的に考察している。
技能・判断
知識・理解
情報や資料を活用するとともに、家計の 経済活動の基本的な概念を、家計のシ
シミュレーションゲームの過程や結果をま ミュレーションゲームを通して理解し、そ
とめたり、説明したりしている。
Ó
の知識を身につけている。
授業の流れ
取り入れた。シミュレーションゲームを通して、
経済学習の導入として、以後の学習につながる
「第2部 私たちのくらしと経済」の全体を流れる
ように、生徒の関心・意欲を高めながら次章以降
共通テーマである「選択と責任」について考える
につなげるため家計のシミュレーションゲームを
場面を設定した。授業の流れは以下の通りである。
1時間目
時
2・3時間目
学習内容
学習活動
支援と留意点
・基本的事項を一斉授業で確 ・家計の各項目について深入りはしない
・市場経済について
認
が、イメージがもてるように工夫をす
・家計について
る。
・経済の循環(経済の三
・市場経済についての資料として公正取
主体)について
引委員会のホームページ、中学生向け
の副教材などを利用する。
・家計のシミュレーショ ・グループごとに架空の家庭 ・生徒たちの言動は、役割に応じたもの
とさせる。そして、各家庭の家計を考
をつくる。父・母・祖母・
ンゲームの準備
えさせる。
自分・弟・妹などの設定を
・家計のシミュレーショ
・必須条件として、家族構成:父・母・
する。
ンゲームの実施
長男(中2)
・長女(小2)、月の総支
・ここでは、父親が40代で年
出:70万円
収が840万円という設定の
もとで、家計の設計を立て ・総額の70万円は、計算をしやすくする
ために、年収840万円を単純に12か月
ていく。
で割ったものであり、実際はこれとは
・各グループ、月の総額が70
異なる形で月給が支給されていること
万円を超えないようにしな
にふれておく。
がら、住居費からその他の
項目まで、コースを選択し ・各グループが、A∼Cを各項目ごとに
設定する際、項目の内容についての疑
たり、お小遣いを決めたり
問について助言をしていくが、多くを
していく。
−8−
評 価
<知>
基本的事項につい
て理解できる。
<関>
シミュレーション
ゲームの準備、家
計づくりに関心を
持って取り組む。
<思>
どのような条件を
設定するべきかを
考える
<思>
自分たちの設定し
た家計を吟味する。
<関>
話しすぎないように気をつけ、考えさ
・5年間何もおきず、設計し
せる場面の確保に配慮する。
たとおりの消費活動を送っ
たと仮定してゲームをはじ ・ボードゲームの人生ゲームの要領であ
める。5年後の預貯金額は、 ると伝えると生徒はわかりやすい。
グループによってまちまち ・2年間分の家計のシミュレーション
ゲームを行う。出費はかさむが、消費
となっている。長男は大学
による満足度が向上するという相反す
受験、長女は高校受験の時
る価値観に気づかせるために「満足度」
期を迎えている。教師が用
意したカードを引いていく。 と「我慢度」を設定してある。
どのコースを選択したかに
より出費が発生する。
家計の項目と各コースおよびその内容
Aコース
Bコース
Cコース
住居費
一戸建て
中古マンシ
賃貸
ローンは20
ョン
家賃は8万円
万円
ローンは12
万円
食費
グルメタイ 一般的なタ 節約タイプ
プ
イプ
10万円
20万円
15万円
被服費
流行派
一般的なタ 節約タイプ
1万円
5万円
イプ
2万円
光熱・ 快楽タイプ 一般的なタ 節約タイプ
水道費
3万円
イプ
1万円
2万円
交通
贅沢タイプ 一般的なタ 節約タイプ
通信費
7万円
イプ
2万円
5万円
教育費 私立(2人)
公私
公立(2人)
6万円
4万円
2万円
教養・ 贅沢タイプ 一般的なタ 節約タイプ
娯楽費
7万円
イプ
2万円
4万円
自動車 贅沢タイプ 一般的なタ
持たない
ローン5万
イプ
円
2万円
税金等
12万円(どのコースも同じ)
保険
生 命:2万円 火 災:1万円
地 震:1万円 自動車:1万円
ただし、地震保険に入るには、火災保
険にも加入すること
預貯金
( )万円
自由に設定できるが、月の収入の総額
を超えない。
預貯金と保険の合計は12万円を限度と
する。
その他
( )万円
( )万円
( )万円
( )万円
自由に設定できるが、月の収入の総額
を超えない。
シミュレーション
ゲームに関心をも
って取り組む。
<思>
消費活動が、選択
を通じて行われて
いることを考える。
カードの内容の一部
Aコース
外壁の塗り替えで
200万円支払う
☆☆
Aコース
Aコース
Aコース
庭の剪定で植木屋 台風でアンテナが 長男の大学合格祝
さんに20万円支払 故障する。修理代で いでフランス料理
う。☆
10万円支払う。 を食べる。20万円
支払う。☆☆
Aコース
Aコース
A・Bコース
Aコース
長男が免許を取
兄が私立の理系大 家族4人でイタリア 車を買い替え、頭
学に入学し、初年 旅行に行き、150万 金として200万円支 り、30万円支払
払う。
う。 度に250万円かか
円支払う。
☆☆
る。☆
☆☆☆
Bコース
Bコース
Cコース
てんぷら油からボ
長男の大学合格祝 祖父のベッドを 祖父が自分で盆栽 ヤがでる。床・内
いをすし屋で行い、 購入し、75万円支 をはじめる。2万円 装の張替えをし、
7万円支払う。
払う。
かかる。
200万円かかる。
火災保険に入って
☆☆
▲
いる場合は、10万
☆
円で済む。 Cコース
Bコース
Bコース
Bコース
父の昇進で、スー エアコンをつける エアコンをこまめ 忘年会シーズンで
ツを新着する。5万 機会が増え、光熱 に消して1万円で済 父がタクシーを利
んだ。
用する機会が増え
費がかさむ。3万円
円支払う。
た。2万円支払う。
支払う。
▲▲
☆
Cコース
Cコース
Cコース
Cコース
賃貸の更新契約が 長男の大学合格祝 父が昇進し、スー 忘年会シーズンで
あり、16万円支払 いをファミリーレ ツを新着して2万円 あったが、父はタ
う。
ストランで行う。1
支払う。
クシーを利用しな
万円支払う。
▲
かったため余分な
▲
支出はなかった。
▲▲
Cコース
Cコース
Cコース
ラッキーカード
兄が国公立大学に 家族4人で熱海に 大家さんの都合で 父に臨時ボーナス
入学し、初年度に 旅行し、10万円支 引越し。敷金礼金 が支給される。50
80万円かかる。 払う。
で4か月分支払う。 万円を受け取る。
☆☆
☆
ただし、敷金が2か
月分戻ってくる。
<すべて共通>
ラッキーカード
ラッキーカード
兄と姉の子ども併 親戚で結婚式があ
祖父が、競馬で万
母がパチンコで5 せて4人にお年玉 り、5万円の出費
馬券に的中し、50
万円もうける。
を上げる
万円を受け取る。
ただし、教養・娯楽
<すべて共通>
<すべて共通>
<すべて共通>
がAコースのみ。
☆は、満足度を表している。 ▲は、我慢度を表している。
4時間目
時
学習内容
・授業の振
り返り
・家計の見
直し
学習活動
・前時のシミュレー
ションゲームの
振り返りを行う。
・家計の見直しを行
う。
・シミュレーション
ゲームを終えて
の、家計について
の考えをまとめ
る。
支援と留意点
・多くのグループが借金をしている。見直しの
なかで、「選択」の重要性と「選択」にとも
なう「自己責任」について考えさせる。
・予想していなかったカードを引いたことをあ
げさせることで、自己責任について考えさせ
る。
・満足度と我慢度の関係について考えさせ、単
純に節約やB・Cコースにしておけばよかっ
た、という改善案にならないように促す。
・実際の家計は、このように単純ではないこと
を指摘しておく。
−9−
<関>
見直しに関心をもって取り組む。
<関>
家計について、経済活動について
さらに関心をもつ。
<思>
改善点について考える。
<思>
経済活動が、さまざまな条件の中
で選択を通して行われていること
に気づく。
満足度が多く、我慢度が少なくて一見幸せなはずですが、実際は借金だらけで
ボロボロでした。一戸建てというので夢が広がりましたが、支出が多く、予想以
上にお金がかかることを知らされました。自分が選んだことだから、誰にも文句
がいえなくてストレスがたまりそうです。シミュレーションだったので助かりま
したが、これが本当だったら夜逃げです。これを支えている両親は、とても立派
だと思います。
これからは、お年寄りが増えていくので、お金がたくさんかかると思いますが、
その時は自分の収入をよく理解したうえで選択していきたいと思います。
家計を成り立たせていくためには、○○が起きそうだという予想が必要だ
と思います。住みやすさを考えて一戸建てを買いました。実際は、支出が多
く、家計を苦しくする場面がありました。保険は悩みました。火災が起こる
とすごい支出となり、隣の家に火がいってしまった場合は、その分も払わな
くてはいけません。しかし、一生に一度起こるかどうか、起こらない確率の
方が大きいので選択の分かれ目になります。地震も起こらない確率が大きい
ので、火災保険と同様に悩むところです。
その時何を選択したかが、自己責任となって帰ってくるので悩みました。
Î
おわりに
など、価格だけで「選択」しているわけではない
実際の家計は当然のことながら、このように単
ことに気づかせる配慮が必要である。また、価格
純ではない。しかし、このシミュレーションゲー
についても場所によって異なること、スーパーの
ムを通して、自分たちが選択した結果について考
閉店前の値引きにみられるように、時間(時期)
えることができ、自分の経済生活について考えた
によって異なってくることに気づかせる。
り、将来の経済活動に対して想像し、考察してい
そのために、授業後の学習として、選択の際、
たりする生徒が多く見られている。ゲームを通し
価格以外にどのような点で選択が行われているか、
て、生徒は選択の重要性に気づいていく。それと
学校周辺にあるスーパーや商店への聞き取り調査
同時に、親のありがたさに気づくという生徒も出
を行い、レポート提出を行う。企業づくりにつな
ている。ゲーム後、家計のどこを見直せばよいの
がるものとなる。
かを考えさせるが、単純に見直しを行わせただけ
東京都中学校社会科教育研究会・公民専門部会
では、どうしても生徒は、「Aコースでなく、B
では、シミュレーションゲームの後に「商談のシ
コースにしておこう」や「貯蓄を増やせばよい」、
ミュレーション」を取り入れることで、経済活動
「保険に入っておけばよかった」という考えで終
の実感的理解や経済活動の見方・考え方の広がり
えてしまう場合が多い。第3章の「企業について
を視野に入れた実践を行っている。シミュレーシ
学ぼう」につなげるために、もう少し具体的な実
ョンゲームでの「選択」の重要性と「選択」には
際の消費行動の際の選択の場面も考えさせ、環境
「自己責任」が伴うことをより深く、考える場面
に優しい商品、デザインが優れている商品、性能
が設定されている。今年度は、「商談のシミュレ
ーション」を取り入れた計画を考えている。
のよい商品、アフターサービスのよい店舗の商品
−10 −
わたしの授業実践
ボランティア活動などをとおして福祉社会実現のための
生徒たちが行えることなどを学習する実践
富山市立岩瀬中学校 濱谷一男
£
ノートに記録させる。
はじめに
②教科書のp.78∼87までの中で、学習するうえで
第4章「福祉社会と財政」は中学校学習指導要
のキーワードを教師が選び、それについての調
領「
(2)国民生活と経済」の「イ国民生活と福
査を行った。今回は、少子高齢化、介護保険、
祉」に関連する内容である。指導に際して、生徒
年金、バリアフリー、社会保障制度という語句
にとって身近な生活をできるだけ教材としてとり
を知っているか。知っているものについては、
あげ、学習内容が単に知識理解のみに終わること
その内容を簡単に答えさせるような事前調査と
がないように留意した。
した。少子高齢化、介護保険、年金、バリアフ
「生活から始まり、教材を学習し,そして再び
リーについては約80%以上の生徒が知っている
生活へ」というコンセプトで授業を進めたいと考
が、社会保障制度という語句については16%以
えた。
下であった。また、説明までできた語句として
Ó
は少子高齢化とバリアフリーがもっとも多く、
指導事例の展開
それぞれ約70%以上の生徒が内容を把握してい
⑴ 身近なボランティア活動から
ると判断された。
①どの学校でも、「総合的な学習の時間」などと
生徒の実態を事前調査等やノートからの観察な
関連づけてボランティア活動や奉仕活動を展開
どで理解したうえで、教材を使用して学習するこ
している。私が勤務している学校でも、生徒会
ととした。
活動として年々さまざまな企画が展開されてい
⑵ 教材の学習
る。海浜清掃、公園清掃、福祉施設訪問、保育
帝国書院『中学生の公民(最新版)
』p.78∼87
所訪問、海外への物資輸送など体験を重視した
を生徒に通読させ、その中で疑問に思ったことや
活動がたくさんある。これらの活動の自己評価
調査したいことをノートに記録させ、それをもと
を必ずアンケートとして生徒からとり、それを
に各自の学習課題を設定させた。次に、生徒各自
蓄積しておく。または、ある程度の期間をおい
の課題を教師が類型化し、次の授業計画を立てた。
て、それらの活動についての思いや感想などを
学習内容
おもな学習活動
おもな学習活動
1.少子高齢 ○少子高齢社会の現状を資料か ・帝国書院「中学生の公民」p.78 の資料
化について
考える。
ら読み取る。
などから高齢化と少子化が進んでいる
○少子高齢化の理由を資料から
把握する。
ことを理解させる。
(下記参照)
○少子高齢社会の問題点を考 ・各家庭での状況をもとに少子化、高齢
化の問題点を考えさせる。
え、発表する。
−11 −
帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.78
学習内容
おもな学習活動
おもな学習活動
2.介護保険 ○新しく導入された「介護保険制度」に ・介護保険がどうして必要なのか
制度
ついて帝国書院「中学生の公民」p.79
「介護保険制度の導入」から理解する
○社会保障制度の中で介護保険は、社会
保険の中に位置することを確認する。
を考えさせる。
・帝国書院「中学生の公民」p.86
の資料 ②「日本の社会保障制
度」を参照する。
3.年金から ○社会保障制度の中で年金は、社会保険 ・帝国書院「中学生の公民」p.86
考える社会
の中に位置することを確認する。
の資料②「日本の社会保障制度」
保障制度の ○年金の種類を学習する。
を参照とする。また、社会保険
課題
が予算の面でも高い比率を占め
<制度面:国民年金・厚生年金・共済
組合>
ていることを確認する。
−12 −
<支給面:老齢・障害・遺族>
4.「福祉社 ○資料「主要国の65歳以上人口割合」を ・他国に比べても急速に高齢化が
会」再考
もとに、今後の社会の状況及び福祉社
進んでいくことを確認させる。
会の課題について話し合う。
主要国の65歳以上人口の割合
(上から1980年、1990年、2010年、2025年、2050年)
日本の平均寿命の伸び
0%
「公的年金制度って?」
(社会保険庁)
より
10%
20%
30%
40%
日本
アメ
リカ
イギ
リス
ドイツ
フラ
ンス
イタ
リア
中国
インド
(UN“World Population Prospects, 1998)
⑶ 学習を踏まえボランティア活動を見直す
示した。
終末の指導として、今後のボランティア活動を
また、社会保障制度の学習を進める生徒の中に
どのような形で進めればよいかを考えさせるため
は、年金や介護保険のしくみがむずかしくて理解
感想文を書かせた。また、中学生としてできるボ
できないと感想をもらす生徒もいた。
ランティア活動や地域としてできるボランティア
生徒の追究の仕方や理解の度合いには個人差が
活動などのアイディアを考えさせた。
あり、一斉指導だけではなかなか思うような展開
Î
をはかることができなかった。しかし、関連資料
(教材)を読み取っていくなかで、時事問題、そ
おわりに
生徒の中には、社会保障制度の財政面での問題
して自分たちが生きていく将来について関心をも
点に関心をもち、学習を進めようとする生徒もい
って生活しようとする姿勢は高まったと考えられ
たが、次時の学習単元で詳しく学習するように指
る。
−13 −
Fly UP