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アクサ生命保険株式会社(Jean-Louis Laurent Josi 氏)
サクセスストーリー/在日外資系企業エグゼクティブの声 アクサ生命保険株式会社(Jean-Louis Laurent Josi 氏) フランスの大手保険・資産運用グループである AXA は、日本拠点を設立して以来、保険事業、資産運 用事業、アシスタンス事業等、多岐にわたるビジネスを展開している。同社の日本でのビジネス状況や今 後の展望について、日本法人代表執行役社長兼 CEO の Jean-Louis Laurent Josi 氏に聞いた。 AXA は、世界 56 の国と地域において約 1 億 200 万 現在日本では約 330 万人のお客さまがおり、約 9,000 人の顧客を持つ、世界でも有数の保険・資産運用グル 名の従業員を雇用、グループ全体の収益の約8%は日 ープである。日本では 1994 年に初めて拠点を設立、保 本でのビジネスから生まれている。これは在日フランス企 険事業、資産運用事業、アシスタンス事業など多岐に 業としては最大の規模である。日本進出当初に掲げて わたるビジネスを手掛け、順調に拡大してきた。同社は いた目標はこの 20 年間で達成したといっていい。 日本におけるビジネスについてどのように捉えているのか、 日本法人アクサ生命保険株式会社(以下アクサ生命) 代表執行役社長兼 CEO のJean-Louis Laurent Josi氏にインタビューを行った。 アクサ生命の強み 当社の強みは、AXAグループの一員として、高いブラ ンド力と強固な財務基盤を有していることだ。さらに AXA がグループ全体で蓄積してきた経験やノウハウ、アイデア を共有・活用できることも、他社との差別化に貢献してい る。例えば新しい商品やサービス投入する場合、グループ が持つノウハウを活かすことで迅速かつ低コストで立ち上 げることができる。 また、販売チャネルの多様さも当社の強みである。当 社の商品は、商工会議所や全国に配置しているフィナン シャルプランアドバイザー、独立系のブローカーや代理店、 またインターネット上でも購入できる。さらに日本各地の 日本法人代表執行役社長兼 CEO の Laurent Josi 氏 50 以上の地方銀行でも、当社の商品を取り扱っていた だいている。特に商工会議所とは、80 年にもわたり良好 日本でビジネスを開始した時期とその理由 当社は、1994 年に日本でのビジネスを開始した。日 な関係を築いており、全国の中小企業へのアクセスという 観点でも重要な販売チャネルとなっている。 本は AXA の世界展開において重要な市場であり、ポテ ンシャルがあったこと、生命保険分野においては世界第 二位の大きな市場規模を有していたことなどが進出した 理由だ。 日本でビジネスを行うメリット まずは市場規模が挙げられる。日本の生命保険市場 は世界で2番目に大きく、また GDP は世界第 3 位の規 模を有している。グローバルに事業を展開する当社にとっ 日本への市場参入を進める上で苦労した点 日本市場へ参入すること自体が難しいかと聞かれれ て日本は重要な市場であり、今後もより多くのお客さまに 貢献していけると信じている。 ば、答えは「No」だ。時機を捉え、かつ適切な人材を登 また、日本が抱える高齢化という課題についても、当 用すれば問題なく参入できるだろう。日本でのビジネスを 社は新たなビジネスチャンスと捉えている。「今後増大す 拡大していく中で日本団体生命と経営統合したが、当 る高齢者層のニーズにどのように対応していくか」を考える 社は他国でも同様の経験を積んでいたため、比較的ス 上で日本は非常に重要な市場である。高齢化は今後、 ムーズに統合を進めることができた。グローバル展開するう 欧州やアジアの国々でも直面しうる課題であり、日本で えでは、全く異なる文化的背景を持つ企業と提携するこ 得た知見は将来にわたって活かすことができるだろう。将 ともありうるが、他国と比較して、日本が参入ハードルの 来的に日本では社会保障改革が進むことが予想される 高い国だとは思わない。 が、そのような状況下では、保険会社としての当社が日 Copyright (C) 2014Japan External Trade Organization (JETRO). All rights reserved. 本の皆様に貢献できることは大きいのではないかと考えて いる。 また、2014 年 11 月には事業継続計画(BCP)の一環 として本社機能を分散させるため、「札幌本社」を設立し 最後に低金利状態が続く日本の厳しい経営環境下 た。保険会社の使命は「人々をお守りすること」。有事の で実践してきた経営ノウハウは、今後他国でも応用可能 ときこそお客さまの力になることが我々の使命だ。東日本 だろう。金利が低い状態は保険会社にとって難しいビジ 大震災を機に、いかなる状況下でもサービスを継続でき ネス環境といえるが、当社はそのような環境下でも順調 る体制を整える必要性を痛感し、本社機能の分散を決 に拡大してきた。例えば欧州では現在金利の下落が続 断した。自治体の皆様には、本社設立準備の際に多大 いており、日本と同様の状況に直面している。欧州各国 なご支援をいただいた。さらにオープニングセレモニーでは、 のグループ会社には、当社のこれまでの対応策が大いに 高橋北海道知事や上田札幌市長、高向札幌商工会 参考になると思う。 議所会頭にも駈けつけていただいた。 日本で開発された他国の先行事例となる商品・サービス 今後の日本での展開 例えば、3 年前に開発した「アクサメディカルアシスタン 当社は日本で事業規模をさらに拡大し、投資を継続 スサービス」がある。これは優秀専門医によるセカンドオピ していく。我々の将来のため、会社組織の変革のため、 ニオンや最適な医療を選択するためのアドバイスを 24 時 日本市場でお客さまのニーズによりきめ細やかに対応す 間 365 日受けられるサービス。アシスタンスという観点では るため、そして市場シェアを獲得するためだ。実際、当社 グループ内でもトップクラスのクオリティであり、特にリタイア はこの 3~4 年で、過去の投資額の倍以上の投資を行っ メント層からも評価の高いサービスとしてグループ内での てきた。 注目度も高かった。 また、企業として社会的責任を果たすための取組にも 注力している。当社は 2 年前から東日本大震災の被災 日本における地方での事業展開 当社は日本全国に 550 もの拠点を有している。AXA 地の就学支援を継続しているが、今年は震災の記憶を 風化させぬよう寄付金額を倍増した。復興に必要な金 は世界中で中小企業向けにもサービスを提供しており、 額に比べれば 1 社の寄付金はわずかなものだが、同じ志 日本市場においても商工会議所を通じた中小企業の を持つ企業や人々の想いが数多く集まれば、人々はより 市場は当社の重要な事業基盤である。中小企業の多く その効果を感じるようになるだろう。当社の試みが他社に は地方に集積していることから、地方でのビジネスを重視 も影響を与え、社会が抱える課題解決に少しでも役に している。 立てばと考えている。 (2014 年 11 月) 同社沿革 1817 年 フランスで AXA の前身となるコンパニー・ダシュランス・ミューチュエル・コントル・ランサンディ設立 1994 年 AXA の 100%出資日本法人アクサ生命保険株式会社設立 2000 年 アクサと日本団体生命が包括的資本提携に合意し、経営統合 2014 年 事業継続計画(BCP)の一環として「札幌本社」を開設、東京の本社機能を地方に分散 アクサ生命保険株式会社(日本法人) 設立: 1994 年 7 月 事業概要: 生命保険業 親会社: アクサ・エス・アー(AXA) 住所: (本社)東京都港区白金一丁目17番 3 号 NBF プラチナタワー URL: http://www.axa.co.jp/ 経済産業省のウェブサイト内「CEO Voices in Japan」で、本インタビューの一部が動画でご覧いただけます。 CEO Voices in Japan (使用言語:英語) Copyright (C) 2014Japan External Trade Organization (JETRO). All rights reserved.