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『クランフォード』を観て

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『クランフォード』を観て
『クランフォード』を観て
BBC製作のドラマ『クランフォード』のDVD(3枚組)をたまたま本の展示場で見
つけて購入し、英語の字幕を見ながらゆっくり鑑賞した。原作はエリザベス・ギャスケル
という19世紀の女流作家の3つの作品(Cranford 他2つ)であるが、私はこの作家の作
品は読んだことがなかった。が、このドラマを観てすっかり気に入り、NHKにメールを
送り、日本でも放映してもらえないだろうかと頼んだほどである。
一番感心したのは役者さんたちのうまさである。イギリスの役者たちの演技の上手さは
十数年前イギリスに滞在していた時、テレビのドラマなどを観て知っていた。1時間の刑
事もののドラマでも、ベテランの男優も若い女優も迫真の演技をしていた。それもとても
自然に。『クランフォード』を観てそれを思い出した。
この作品の岩波文庫の日本語訳は『女だけの町』となっているように、老嬢や未亡人が
やたらに元気がいい。その一人 Miss Matilda (Matty) を演じた Judi Dench は『恋におち
たシェイクスピア』でエリザベス女王を貫録たっぷりに演じた女優さん。領主夫人の Lady
Ludlow も、Matty の姉のしっかり者の Miss Deborah Jenkyns も、男勝りの Miss Pole も、
優しい Mrs Forrester も、妹想いの Miss Tomkinson も、メイドの Martha もすばらしかっ
た。中でも一番気に入ったのは、Miss Matty の家に里帰りしていた Miss Mary Smith 役の
控え目で落ち着いた演技である。その女優さんの名前 は Lisa Dillon というそうで、まだ
33歳だから今後が楽しみである。
DVDを観た後に『女だけの町』を読んでみた。ところが、めったにないことだが、D
VDの方が良かった。たいていは映画よりも原作の方が良く、映画を観てがっかりするの
に、今回は違った。小説は脱線が多く、スピード感がないのである。ただ、小説を読んで
「そうだったのか」と思った箇所もあるにはあった。それと、DVDでは登場人物の紳士
淑女たちがきちんとお辞儀をしていて、「そうか、英国人もお辞儀をしていたのか」と思っ
たものだが、小説ではそのような記述はあまり出て来ない。ひょっとしたら、監督が指導
したのかもしれない。
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