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セルフアドヒーシブレジンセメントのチタンに対する 接着耐久性の高加速

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セルフアドヒーシブレジンセメントのチタンに対する 接着耐久性の高加速
原
著
日本歯科理工学会誌 Vol.29 No. 3 270 − 276(2010)
セルフアドヒーシブレジンセメントのチタンに対する
接着耐久性の高加速寿命試験による評価
林 捷 新 谷 明 喜
In vitro evaluation of bonding durability of self-adhesive resin
cement to titanium using highly accelerated life test
Jie LIN and Akiyoshi SHINYA
Keywords:Self-adhesive resin cement, Titanium, Adhesiveness, Highly accelerated life test, Fatigue test
This study evaluated the effect of cyclic loading on the bonding durability of self-adhesive resin cement to
titanium using the highly accelerated life test (HALT). Three self-adhesive resin cements: Rely X Unicem, Breeze,
and SA luting, were used to bond a pair of titanium blocks. After preparation, the specimens were stored in water
for 24 h at 37℃, and then specimens were kept in the water at 37℃ and subjected to shear cyclic loading testing
regimes of 20 or 30 kgf using a fatigue-testing machine. Cyclic loading continued until failure, and the number of
cycles needed to cause failure was recorded. Data were analyzed using the highly accelerated life test. The mean
time-to-failure of SA luting specimens was significantly higher than the values for samples using Rely X Unicem
and Breeze. The highly accelerated life test can be applied to evaluate the bonding durability and fatigue life of
resin cement on bonding with titanium.
キーワード:セルフアドヒーシブレジンセメント,チタン,接着性,高加速寿命試験,疲労試験
3 種類のセルフアドヒーシブレジンセメントのチタンに対する接着耐久性を繰り返し衝撃荷重負荷による高
加速寿命試験を用いて評価した.接着材は Rely X Unicem,Breeze,SA luting の 3 種類を使用した.接着が完
了した試験片は,37℃の水中に 24 時間浸漬した後,繰り返しせん断衝撃荷重を 37℃の水中環境で最大 50 万
回負荷し,破断に至るまでの繰り返し数を測定した.最大負荷荷重は 20 kgf と 30 kgf の 2 条件とした.破断
繰り返し数の測定値を用いて高加速寿命試験を行った.分析結果から得られた予測疲労寿命が Rely X Unicem
で約 5 万回,Breeze で約 34 万回,SA luting で約 500 万回と推測した.SA luting が Rely X Unicem,Breeze
よりチタンに対する高い衝撃接着耐久性を示した.高加速寿命試験は,レジンセメントのチタンに対する接
着の繰り返し衝撃荷重による耐久性評価に使用可能である.
緒 言
チタンを含む歯科用金属の一般的な接着方法は,合金
に表面処理を施した後,接着性レジンやセメントを用い
チタンは,高い生体親和性,耐食性,そして良好な機
て行う.1980 年代初期に金属の接着法が報告されて以
1 ∼ 4)
来,接着材料の改良とともに各歯冠修復材料の接着理論
械的性質を有しているため
,歯冠修復用材料,イン
プラント材料として実用化されてきた2, 5, 6, 7).
と材料耐久性も明らかになった8 ∼ 11).チタンにおける
原稿受付 2010 年 2 月 18 日,受理 2010 年 4 月 6 日
日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第 2 講座(〒 102-8159 東京都千代田区富士見 1-9-20)
Department of Crown and Bridge, School of Life Dentistry at Tokyo, The Nippon Dental University (1-9-20, Fujimi, Chiyoda-ku, Tokyo 102-8159)
レジンセメントのチタンに対する接着耐久性
271
接 着 は,4-META,MAC-10,MDP な ど の 接 着 性 モ ノ
を用いてチタンに対する同セメントの衝撃接着耐久性に
マーとの反応性が高いチタン酸化物の薄膜を介したシス
ついて検討を行った.
テムで行われている.また,金属表面を機械的に処理
材料および方法
し,凹凸を付与することにより,接着材料がそれらの凹
みに浸入,硬化することで両者が機械的に保持されなが
ら接着させる方法が一般的である.
1.接着材料
本研究で使用した接着材料を Table 1 に示す.接着材
最近開発されたセルフアドヒーシブレジンセメント
は, セ ル フ ア ド ヒ ー シ ブ レ ジ ン セ メ ン ト の Rely X
は,チェアータイムの短縮だけではなく,被着体の種類
Unicem(3M ESPE),Breeze(Pentron Clinical),SA
およびテクニックなどによる影響が少ないとされてい
luting(Kuraray Medical)の 3 種類を使用した.
る
12 ∼ 15)
.このセメントはセルフエッチング・セルフア
2.試験片の作製
ドヒーシブ作用をもち,前処理なしで歯質だけでなくあ
被着体として JIS 第 1 種純チタン T-Alloy(GC)を用
らゆる修復材料に接着性を発揮するといわれている.し
いた.2 種類の寸法(20 × 10 × 10 mm,10 × 10 × 10
かし,これら接着材のチタンに対する接着耐久性につい
mm)のチタンブロックを作製し,ランダマイズして各
ては,明確な結論を得るには至っていないのが現状であ
セ メ ン ト 群 に 分 配 し た. 被 着 面 は 耐 水 研 磨 紙#600
る.
Buehler(#600,Sankei)を用いて一方向に研磨したの
は,歯科
ち,アセトンおよび精製水にて各 15 分間超音波洗浄を
の研究にも応用されてきた.高加速寿命試験とは,製品
最近,工業界で使用する高加速寿命試験
行って大気中で自然乾燥させた.接着面積は 100 mm2
の故障原因となるストレスを加速させ,より短期間で製
とした.
16)
品の疲労寿命を予測する.こうした試験が行われること
3.接着操作
で,試験片について加速条件で得られた寿命データか
レジンセメントの使用方法を Table 1 に示す.ブロッ
ら,数理モデルを使用して使用条件における累積分布関
クの両被着面に接着材を塗布した後,被着面の研磨方向
数,信頼性,故障確率,平均寿命を推定することができ
を一致させ,接着した.定荷重試験機(Seiki)を用い
る.
て 15 kgf,15 分の条件で静的荷重を加え,接着部から
修復装置を長期間機能させるには,歯質と接着材,歯
溢出した余剰レジンセメントを技工用ナイフで除去し
冠修復材料と接着材それぞれの接着界面の接着耐久性挙
た.LED 照射器(G-Light,GC)を使用し試験片 A,B
動を解明する必要がある.前報
では,これら接着材
(Fig. 1C)の接着境界に接着面と平行,両側方向から光
のチタンを含む歯冠修復用金属材料に対する接着強さに
照射を荷重中に行った.各セメントの照射時間を Table
ついて報告した.その結果,チタンなどの非貴金属に対
1 に示す.接着実験条件は ISO/TR 11405 に準じた18).
する接着強さは,貴金属より著しく大きい値を示した.
接着した試験片は,直ちに 37℃恒温漕内で水中浸漬し,
本研究では,その接着耐久性に注目し,高加速寿命試験
24 時間保存した.
17)
Table 1 List of materials used in this study
Product/ Lot No
Main composition
Filler content
Application
Rely X Unicem/
302668
Dimethacrylate, acetate ,
methacrylated phosphoric ester,
glass powder, silica, calcium
hydroxide
70 wt%
Insert capsule into activator. Press down
handle fully. Insert activated capsule into
mixing device. Mix for 10 s. Apply lightcure for 30 s from each side.
Breeze/ 162835
Bis-GMA, UDMA, TEGDMA,
HEMA, 4-MET, silane-treated
barium glass, silica (amorphous),
Ca-Al-F-silicate
Unknown
Mix cement through a dual-barrel syringe.
Apply light-cure for 20 s from each side.
SA luting/ 0005AA
Bis-GMA, TEGDMA, MDP,
barium glass, silica, sodium
fluoride
65 wt%
Hand mix for 10 s. Apply light-cure for 10 s
from each side.
HEMA: 2-Hydroxyethyl methacrylate; 4-MET: 4-Methacryloxyethyl trimellitic acid; Bis-GMA: Bisphenol- A-diglycidyl
methacrylate; UDMA: Urethane dimethacrylate; TEGDMA: Triethyleneglycol dimethacrylate; MDP: 10-Methacryloyloxydecyl
dihydrogenphosphate.
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日本歯科理工学会誌 Vol. 29 No. 3
Fig. 1 The fatigue tester (A), supporting metallic jig (B), and its schematic diagram (C). The schematic shows the specimen
position for cyclic tangential load testing.
4.繰り返し衝撃試験
Fig. 1 に繰り返し衝撃試験機(試作品,Japan MECC)
と繰り返し衝撃試験用のジグを示した.24 時間浸漬し
た試験片は,繰り返し衝撃試験機を用いて 37 ℃水中で
繰り返しせん断衝撃荷重を最大 50 万回負荷し,破断に
至るまでの繰り返し数(破断繰り返し数)を測定した.
最大負荷荷重は 20 kgf と 30 kgf の 2 条件とした.衝撃
試験機の繰り返し条件は,周波数 1.3 Hz,落下速度 30
mm/s,落下距離 6 mm とした.
3 種類のセメントと 2 種類の負荷荷重の組み合せ 6 条
件を設定し,それぞれ繰り返し 6 回,計 36 回の実験を
行った.
5.統計処理
本実験は,20 kgf と 30 kgf の破断繰り返し数を実験
Fig. 2 The relationship between the number of cycles to
fracture and cumulative probability for SA luting at
20 kgf.
計測し,対数正規確率紙を用いて 20 kgf と 30 kgf の平
均破断繰り返し数を算出した19 ∼ 21).以下の式に対数正
規分布の確率密度関数を示す.
平均破断繰り返し数 mean time-to-failure(MTTF)は,
破断繰り返し数の期待値として定義され,次式により算
出する.
x:破断繰り返し数
μ,
σ:破断繰り返し数の自然対数の平均値と標準偏差
例えば,Fig. 2 に示す SA luting,20 kgf の場合は,破
断繰り返し数を実験で計測する.累積確率は Median
ranks により決定する.最小 2 乗法を用いて回帰直線を
求める.μとσは,次式により算出する.
また,逆べき乗法則 Inverse power law(IPL)を用い
て,使用応力の平均破断繰り返し数を推測した.以下の
式に逆べき乗法則を示す.
μ=ln
(x50%)=ln(180000)=12.1
σ=ln
(x84%)ln(x50%)=ln(360000) ln
(180000)=0.8
L
(V)=1/KVn
レジンセメントのチタンに対する接着耐久性
273
L(V):破断繰り返し数
Table 3 に IPL に 関 す る 定 数 K,n お よ び 推 定 し た 10
V:最大負荷荷重
kgf の平均破断繰り返し数を示す.平均破断繰り返し数
K,n:IPLに関する定数
は,負荷荷重 20 kgf と 30 kgf において,Rely X Unicem
で 1,110 回,126 回,Breeze で約 1 万 3 千回,約 2 千回,
咬合力に相当する負荷の目標値は 10 kgf 22, 23) とし,
SA luting で約 24 万回,約 4 万回であった.負荷荷重 10
高加速寿命試験により目標値の平均破断繰り返し数を推
kgf に対し,平均破断繰り返し数が Rely X Unicem で約
測した.
5 万回,Breeze で約 34 万回,SA luting で約 500 万回と
6.エックス線回折(XRD)
推測された.
2.エックス線回折,破壊形態および顕微鏡観察
エックス線回折装置(RINT 1400,Rigaku denki)を
用いて,以下に示すような条件でチタン表面の測定を
チタンのエックス線回折パターンを Fig. 3 に示す.チ
行った.条件は,ターゲット:Cu,フィルター:Ni,
タン合金の表面酸化物の成分 TiO2 はエックス線回折で
電圧:40 kV,電流:80 mA,コリメーター:100 uml,
同定された.
測定角度:5 - 80°,スキャンスピード:8°/min に設定
した.試験片は入射エックス線に対する傾き方向と面方
向の 2 軸回転をかけながら測定を行った.
7.破壊形態の観察
実体顕微鏡(Leica
MZ7.5, Leica
Microsystems,
Wetzlar)を用いて試験片の破壊面観察を行った.破壊
形態は,界面破壊,セメントの凝集破壊および混合破壊
の 3 型とした.
結 果
1.20 kgf と 30 kgf の平均破断繰り返し数および 10
kgf の推定値
Table 2 に対数正規分布に関する定数μ,σおよび算
出した 20 kgf と 30 kgf の平均破断繰り返し数を示す.
Fig. 3 X-ray diffraction patterns of titanium.
Table 2 The lognormal distribution parameters μ and σ and the MTTFs on 20 and 30 kgf cyclic loading
Rely X Unicem
Breeze
SA luting
20 kgf
30 kgf
20 kgf
30 kgf
20 kgf
30 kgf
μ
6.4
4.2
9.0
7.1
12.1
10.3
σ
1.2
MTTF
1.5
3
1.11×10
0.9
2
1.26×10
1.5
1.29×10
4
0.8
3
1.90×10
1.1
5
3.96×104
2.39×10
μ and σ are the mean and standard deviation, respectively, of the variable’s natural logarithm. MTTF (mean time-to-failure) provides
a measure of the average cycles to failure.
Table 3 The IPL model parameters K and n and the MTTFs on 10 kgf cyclic loading
Rely X Unicem
K
1.6×10
10
Breeze
9.1×10
11
SA luting
9.9×10 12
n
5.4
4.7
4.4
MTTF of 10 kgf
4.61×104
3.40×105
5.13×106
When the IPL appears as a straight line: ln(L)= ln(K) nln(V), n and ln(K) are the slope and intercept of this line, respectively.
MTTF (mean time-to-failure) provides a measure of the average cycles to failure.
日本歯科理工学会誌 Vol. 29 No. 3
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久性を評価することができる.本研究では,高加速寿命
試験を歯科接着用材料の耐久性評価に取り入れ,実験を
行った.
1.チタンとの接着
チタンとの接着に有効なモノマーは,カルボンキシル
基( COOH)や 2 価のリン酸基( PO
(OH)2)などの
酸性官能基をもつ.現状でもっとも高い接着性能が得ら
れるシステムは,Taira ら24)が報告した,非貴金属用接
着プライマーと 4-META 接着性レジンを組み合わせた
ものである.チタン表面を大気に曝した場合,ただちに
酸素と反応して 1 ∼ 3 nm の厚さの酸化物層が形成され
る.さらにその酸化物層は大気中の水と反応し,表面は
水酸基( OH)により覆われる8∼10).4-META,MDP な
どのモノマーと非貴金属の接着機構は水素結合が重要な
役割を果たしていると考えられる.本実験で最も高い接
着耐久性を示したのは,セメント自体に MDP を含有す
る SA luting であった.Rely X Unicem は,Breeze と SA
luting より低い破断繰り返し数を示した.しかしながら,
Table 1 にメーカーが公表した Rely X Unicem の組成で
は methacrylated phosphoric ester,すなわちリン酸エス
テル系接着性モノマーを含有することが示されている.
Yang ら25),Lüthy ら26)の研究では,Rely X Unicem のジ
ルコニアに対する接着強さが MDP を含有するセメント
より低い傾向を示し,37,500 回,5 ∼ 55℃のサーマルサ
イクルを加えると接着強さが 0 まで低下した.Rely X
Fig. 4 Microscopic images of debonded titanium block
surfaces for SA luting. A: Debonded surface at 20
kgf, B: Debonded surface at 30 kgf. The debonded
surface at 20 kgf has shorter and denser striated
cracks than that at 30 kgf.
Unicem と SA luting のチタンに対する接着耐久性の違
いについて,接着性モノマー,フィラー含有量以外に,
まだ解明されていない要因があるのではないかと考え
る.
本実験では,高加速寿命試験により接着性モノマー
MDP を含有する SA luting のチタンに対する接着は,
破壊形態は,SA luting では,主に接着材層の凝集破
100 万回以上の繰り返し荷重(10 kgf せん断衝撃荷重)
壊 を 示 し た.Unicem お よ び Breeze で は, 界 面 破 壊,
に耐える結果を示した.工業界では,100 万回を耐えた
また混合破壊を示した.Fig. 4 に SA luting の 20 kgf と
衝撃力で生じる衝撃応力は,許容応力として認められ
30 kgf の破断面顕微鏡像を示す.20 kgf の破壊面は 30
る27).
kgf より浅くて緻密なき裂を示した.
考 察
2.レジンセメントの衝撃疲労破壊および許容応力
長時間の負荷の下で材料が破壊するまでの時間を予測
することは歯科臨床に重要であることはもちろん,歯科
本実験では,セルフアドヒーシブレジンセメントとチ
理工学的にもその機構に興味のあるところである.修復
タン被着体との間の接着力を測るために,機械的嵌合力
装置と歯質を複合化させる接着材を臨床応用すること
の影響をできるだけ少なくし,サンドブラストではな
は,修復装置を長期間口腔内で機能させるだけでなく,
く,耐水研磨紙#600 研磨を使用した.高加速寿命試験
歯の寿命をさらに延ばすことを期待させる.その接着耐
は,工業界で製品寿命の予測に幅広く使用されてい
久性について検討する必要がある.
る .使用応力で製品の寿命を計測することは時間と費
本実験ではせん断衝撃応力によるレジンセメントの疲
用がかかる.高加速寿命試験は,使用応力より高い応力
労破壊を観察した.高分子固体の一般的な疲労特性は,
で製品の寿命を計測し,使用応力の寿命を推定する方法
応力振幅がある値以下になると,疲労破壊を生じず,無
である.その利点は,より短時間,低コストで製品の耐
限回の繰返しに耐えられるような限界応力(耐久限度)
16)
レジンセメントのチタンに対する接着耐久性
が存在する27).レジンセメントの静的応力ひずみ曲線は,
3 つの領域に対応して構造の変化が進行する .すなわ
28)
ち,ひずみの増大とともに,応力がひずみに正比例して
上昇し,応力を取り除くと元に回復する(フック領域),
さらに変形が進むと応力は急速に上昇し応力極大に達し
破断が起こる.領域 1 でフックの法則が成り立つのはひ
ずみが数パーセント以下の範囲であり,変形は可逆的で
ある.衝撃応力は降伏応力に近づき,いわゆる微量な塑
性変形が起こる.その塑性変形の繰返し負荷により微視
的なき裂が発生・進展し,巨視的なき裂に変化して最終
的に疲労破壊が起こる.さらに,そのき裂の進展速度
は,衝撃応力の依存性が大きい.従って,本実験の破壊
面顕微鏡観察の結果は,SA luting,20 kgf の破壊面は
30 kgf より緻密なき裂を示した.本研究では,SA luting
のチタンに対する接着は,10 kgf のせん断衝撃荷重で
100 万回以上の繰り返し荷重に耐える結果を示し,その
衝撃力で生じる衝撃応力は,許容応力として認められ
た.いわゆる衝撃力が許容応力範囲内の場合は,フック
の法則が成り立ち,変形は可逆的であり,き裂の発生が
起こることがないと考えられる.
結 論
本研究では,3 種類のセルフアドヒーシブレジンセメ
ントのチタンに対する接着耐久性を繰り返し衝撃荷重負
荷による高加速寿命試験を用いて,圧縮せん断接着耐久
性および破壊形態について評価を行った.その結果,
SA luting では,Rely X Unicem,Breeze よりチタンに対
す る 高 い 衝 撃 接 着 耐 久 性 を 示 し た. 平 均 咬 合 圧(10
kgf)で生じる衝撃応力は SA luting の許容応力範囲内と
考えられ,チタンに対して接着性モノマー MDP を含有
する SA luting では,前処理なしで使用可能であること
が示唆された.高加速寿命試験は,レジンセメントのチ
タンに対する接着の繰り返し衝撃荷重による耐久性評価
に使用可能であることが示唆された.
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