...

沖縄におけるRC造住宅の温熱環境改善に関する研究

by user

on
Category: Documents
23

views

Report

Comments

Transcript

沖縄におけるRC造住宅の温熱環境改善に関する研究
沖縄における RC 造住宅の温熱環境改善に関する研究
- その 4 ブロックと芝生を併用した日射遮蔽の実験 -
○古川 修文 *1
正会員
同 朴 賛弼 *2
同 出口 清孝 *3
沖縄 RC 造住宅 温熱環境改善 同 永瀬 克己 *4
遮蔽ブロック 芝生
1. はじめに A 教室の屋根全面には遮蔽ブロックの上に芝生(写真 2)
2002 年 8 月、文部科学省によって、公立小中学校に冷
を覆い、B 教室の屋根には半分、C 教室では無施設の状態
房機器を設置する計画が発表され、室内環境の向上がは
で、各部の温度 30 個所を半年間測定した。
かられることになった。しかし、そこには新たな問題が
(2)A 教室、B 教室、C 教における遮蔽ブロックの上に芝
潜んでいる。冷房機器の設置によって消費されるエネル
生を設置した場合と無施設の場合との天井裏気温を比較
ギー量は大きく、特に本土に比べて日射量の大きい沖縄
では、管理運営において深刻な問題となるであろう。
した。
(3)開南小学校の屋上にある遮蔽ブロック + 芝生を設置
本研究では、遮蔽ブロック上に芝生を設置した場合と
した場合と新城小学校の屋上における遮蔽ブロックのみ
遮蔽ブロックのみを設置した場合の比較を通して室内の
の場合との天井裏気温を比較した。
温熱環境がどの程度改善されるのかを明らかにし、既存
3. 実験結果と考察
の RC 造学校建築の室内温熱環境の改善に応用すべき遮蔽
①遮蔽ブロック + 芝生と無施設の比較
方法を追及することを目的としている。すなわち本研究
日射量の多い日の外気温と天井裏気温の比較について
において日傘効果による室内環境の改善法が確立され、
考察する(図 1)。A、B、C 教室天井裏気温の波形を見てい
冷房機器の使用によってかかるエネルギーを少しでも減
くと、A 天井裏気温(遮蔽ブロック + 芝生)は一日中 30℃
少させることが目的である。地球環境の改善が叫ばれ、各
付近をほぼ水平で推移しているのに対し、B、C 天井裏気
国、各地域で省エネ化の動きが進んでいる現代社会にお
温はどちらも 12 時頃からゆっくりと温度が上昇し始める
いて、日傘効果による電力量の省エネ化は環境改善対策
緩いV字型の波形となっている。屋上に何も設置しな
の一つのモデルとして広く提案していくことができると
かった場合、天井裏には日中、熱を蓄え、夜間(22 時頃)
思われる。
まで熱が累積していることが確認される。また時間帯別
2. 実験方法 に温度を比較してみても、常に A 天井裏気温は B、C 天井
沖縄県那覇市にある開南小学校を対象にした。実験建
裏気温よりも低く、日中で 1.5 ∼ 2.0 度、夜間では 3.0 ∼
築物は RC 造 3 階建てを用いて以下の実験を行った(写真
3.5 度も温度が低くなっている。つまり屋上に芝生・断熱
1)。
ブロックを設置することによって、屋上に何も設置しな
(1)3 階にある三つの教室を(A、B、C 教室)に対応して、
かった場合と比べ日射量の強い日は 1.5 ∼ 5.0 度、天井裏
写真 1. 実験校舎(開南小学校)の屋上
写真 2. 遮蔽ブロックに芝生を設置
Studies on improvement of thermal environment RC construction in Okinawa .
Part 4 The experiment of solar insulating block and grass on RC construction
FURUKAWA Nobuhisa
DEGUCHI Kiyotaka
PARK Chanpil
NAGASE Katsumi
気温を下げることができ、なおかつ天井裏の蓄熱を防ぐ
断熱ブロックが高い断熱性を示していることがわかる。
ことができるため、夜間の天井裏からの放熱がなくなる。
一方、新城小と開南小の比較においてまず外気温を見る
一方、日射量の少ない日は1日を通じて、A 天井裏気温の
と両者の日較差はほとんど差はなく(図 3)、6 時からピー
ほうが C 天井裏気温よりも低くなっていることがわかる。
ク時の 14 時までの気温差は 6.5 度になっている。それに
日射量が弱い日でも、屋上に芝生・断熱ブロックを設置
対して新城小の天井裏気温の日較差は 2.5 度である。こ
することによって天井裏気温を下げることができ、なお
のことから遮蔽ブロック + 芝生の設置の方が天井裏気温
かつ天井裏の蓄熱を防ぐことができる(図 2)。
の日較差を小さくする効果を有しているといえる。しか
(2)遮蔽ブロック + 芝生と遮蔽ブロックとの比較
し、図 4 のように開南小と新城小の天井裏気温を外気温
開南小の天井裏気温は昼夜を問わず一定であることが
を基準にして比較をすると、遮蔽ブロック + 芝生より遮
わかる。特に 7 時から 12 時までの間に外気温の温度差は
蔽ブロックのみの方が天井裏気温を下げるのに有利であ
6度になっているのに対して、天井裏気温の温度差は1
ることがこの実験によって明らかである。
日を通して1度に抑えられている。このことから芝生・
温度(
℃)
35.0
35.0
34.0
33.0
33.0
32.0
温度(
℃)
34.0
32.0
31.0
30.0
31.0
30.0
29.0
28.0
29.0
27.0
28.0
26.0
27.0
25.0
23 01 03 05 07 09 11 13 15 17 19 21
:50 :50 :50 :50 :50 :50 :50 :50 :50 :50 :50 :50
:00 :00 :00 :00 :00 :00 :00 :00 :00 :00 :00 :00
26.0
25.0
時刻
:00
:50
21
:00
:50
19
:00
:50
17
:00
:50
15
:00
:50
13
:00
:50
11
:00
:50
09
:00
:50
07
:00
:50
05
:00
:50
03
:00
:50
01
:00
:50
23
時刻
外気温
A天井裏気温
B天井裏気温
開南小外気温
開南小天井裏気温(
屋上緑化)
新城小外気温
新城小天井裏気温(
断熱ブロック の み)
C天井裏気温
図 1. 外気温と天井裏気温の比較
図 3. 開南小と新城小の天井裏気温の比較
(2002.9.3 全天日射量 25.2MJ/ ㎡) (2002.9.3 全天日射量、開南:25.2MJ/ ㎡開南:23.4MJ/ ㎡) 31.0
遮
蔽
12.0
29.0
10.0
28.0
新城小非設置
8.0
27.0
6.0
度 (℃
温度(℃)
30.0
26.0
温
25.0
24.0
開南小非設置
4.0
新城小遮蔽ブロック
2.0
開南小遮蔽
ブロック + 芝生
0.0
:0
21
:0
18
:0
15
:0
12
:0
09
:0
06
:0
03
:0
00
00
4:
00
4:
00
4:
00
4:
00
4:
00
4:
00
4:
00
4:
時刻
外気温
A天井裏気温
B天井裏気温
-2.0
-4.0
-6.0
C天井裏気温
0:00
3:00
6:00
9:00
12:00
時
15:00
18:00
21:00
刻
図 2. 外気温と天井裏気温の比較
図 4. 開南小と新城小の天井裏気温を外気温
(2002.9.6 全天日射量 9.0MJ/ ㎡) を 0 とした時の比較
*1 法政大学工学部建築学科教授・工博
*2 法政大学工学部建築学科助手・工博
*3 法政大学工学部建築学科教授・工博
*4 法政大学工学部建築学科助教授・工修
Prof., Dept.of Architecture,Faculty of Eng, Hosei Univ.,Dr.Eng.
Assistant, Dept.of Architecture,Faculty of Eng, Hosei Univ.,Dr.Eng.
Prof., Dept.of Architecture,Faculty of Eng, Hosei Univ.,Dr.Eng.
Assoc.Prof., Dept.of Architecture,Faculty of Eng, Hosei Univ.,M.Eng.
Fly UP