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JICA インターンシッププログラム 活動報告書

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JICA インターンシッププログラム 活動報告書
JICA インターンシッププログラム
活動報告書
2012 年 9 月 2 日〜2012 年 11 月1日
JICA モンゴル事務所
東京工業大学
理工学研究科
国際開発工学専攻
山口・高田研究室
矢野晶太郎(修士 2 年)
1
1
概要:JICA (独立行政法人
国際協力機構)
JICA は、“日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への
国際協力を行っている。
「すべての人々が恩恵を受けるダイナミックな開発」というビジョ
ンを掲げ、多様な援助手法のうち最適な手法を使い、地域別・国別アプローチと課題別ア
プローチを組み合わせて、開発途上国が抱える課題解決を支援している”1機関である。
現在 JICA は前述のビジョンを掲げ、4 つの「戦略」によって、4 つの「使命」を実行し
ている。これらのビジョン、戦略、使命が JICA 事業の大きな柱となり、国内外での活動
を進めて行く上での方針となっている。
Mission 1.
グローバル化に伴う課題への対応
グローバル化の進展は経済発展を促し、人々に新たな機会をもたらすというプラスの側面
がある一方、共に偏在化や国境を超えた気候変動、感染症、テロ、経済危機の拡大と言っ
たマイナスの側面がある。JICA はグローバル化に伴って途上国が直面する多様な課題の解
決に、日本の経験や技術も活用しながら、国際社会と連携して総合的に取り組んでいる。
Mission 2.
公正な成長と貧困削減
開発途上国の貧困層は、経済危機や紛争、災害などの影響に脆弱で、貧困が悪化するリス
クにさらされている。また貧富の格差の拡大は、社会の不安定要因になっている。貧困削
減のためには、貧困層に配慮した公正な成長を通じた雇用機会の拡大や教育・保健などの
公共サービスの強化が必要である。JICA は、途上国の人材育成・能力開発、政策・制度の
改善、社会・経済インフラの整備を支援し、公正な成長とそれを通じた持続的な貧困削減
を図ってゆく。
Mission 3.
ガバナンスの改善
国家のガバナンスとは、その資源を効率的かつ国民の意思を反映できる形で、投入・配分・
管理できるような社会のあり方を意味し、その改善は途上国の安定的な発展に重要である。
しかし途上国では法・司法制度や行政機関が脆弱なため、限定的な住民参加や行政サービ
スの提供等に問題を抱えている。JICA は、国としての基本的な制度の改善と、人々のニー
ズに基づいて公共サービスを効果的に提供する制度の改善、それらの制度を適切に運用す
る為の組織づくり・人材育成を支援する。
Mission 4.
人間の安全保障の実現
グローバル化の進展によって、国境を超えたさまざまな脅威が増大し、途上国の多くの人
が内戦、災害、貧困といった人道上の脅威に晒されている。
「人間の安全保障」とは、ひと
1
独立行政法人国際協力機構:JICA について, http://www.jica.go.jp/about/index.html, (201.01.06)
2
り一人の人間を中心に据えて、紛争、テロ、災害、環境破壊、感染症などの「恐怖」や貧
困、社会サービス・基礎インフラの欠如といった「欠乏」の脅威から保護し、自ら対処す
る能力を強化することで、尊厳ある生命を全うできる社会づくりを目指す考え方である。
JICA は社会的に弱い立場にある人々を様々な脅威から保護するため、社会・組織の能力強
化と、人々自身の脅威に対処する力の向上を支援してゆく。
これらの Mission を達成するために JICA は下記の4つの戦略を掲げている。
戦略 1.
包括的な支援
技術協力・有償資金協力・無償資金協力という 3 つの援助手方を一体的に運用して、途上
国の政策・制度の改善・人材育成と能力開発、インフラ整備を、有機的に組み合わせた総
合的な支援を行う。また、複数の国にまたがる地域横断的な課題や、複数の分野にまたが
る課題に、多様な援助手法と拡大した事業規模を生かして取り組む。
戦略 2.
連続的な支援
多様な援助手法を組み合わせ、紛争や災害の予防から、発生後の緊急支援、早期の復興に
向けた支援、そして長中期的な開発支援まで、つなぎ目の無い連続的な支援を展開する。
JICA は各国の発展段階に合わせた適切な支援を行うとともに、将来にわたって持続的に発
展していけるよう長期的な視点で連続した支援を展開する。
戦略 3.
開発パートナーシップの推進
開発途上国の最良のパートナーとなることを目指し、
「現場」を重視して変化するニーズを
的確に把握し、
「成果」を重視して迅速かつ効果的に相手国の自助努力を後押しする。また
地方自治体、大学、NGO、民間企業などとの連携や、青年海外協力隊・シニア海外ボラン
ティアなどへの参加を促進する。さらに国際協力のプレーヤーが増加し、途上国への支援
が多様化している国際社会において、長年にわたる経験を持つ世界最大規模の援助機関と
しての責任をはたすべく、国際機関やほかの援助機関との連携を推進し、国際協力の枠組
みづくりを主導する。
戦略 4.
研究機能と対外発信の教科
開発途上国の開発課題をめぐる国際潮流は、グローバル化の進展や国際協力の新たなアク
ターの台頭などの状況の中で、大きく変化している。
「JICA 研究所」を設置し、事業の現
場で得てきた知見を生かしつつ、内外の学識者との幅広い連携を図り、日本のみならず世
界の国際協力に新しい知的価値を提供し、新たな開発潮流を主導すべく、研究機能と発進
力を強化する。
3
JICA はこれらのビジョンと使命を、多様な援助手法を有機的に組み合わせ実現できるよう
挑戦している。
様々な国や地域、省庁とプロジェクトを行う JICA はアジア(22 拠点)、大洋州(9 拠点)、
北米・中南米(22 拠点)
、アフリカ(26 拠点)
、中東(9 拠点)、欧州(4 拠点)の計 92 拠
点を構え、プロジェクトや調査を進めている。
2011 年における ODA 実績は総額 198 億 5,737 万ドル(1 兆 5,828 億円)であり、内 1,889
億円は技術協力、6,097 億円は有償資金協力、1,076 億円は無料資金協力に使用されている。
広く知られている青年海外協力隊およびシニア海外ボランティアも JICA の活動の一環
である。JICA ボランティア事業に区分され「開発途上国の発展に貢献すること」を目的と
し、よりよい明日を世界の人々と共有するため、日本が持つ技術や経験を伝え、役立てて
もらうことを意義とすると同時に、開発途上国との友好親善及び相互理解の深化にも焦点
を当てている。20 歳〜39 歳は「青年海外協力隊」
「日系社会青年ボランティア」
「短期ボラ
ンティア」として活動することが可能である。また、40 歳〜69 歳の方は「シニア海外ボラ
ンティア」
「日系社会シニアボランティ」
「短期ボランティア」として活動している。
2
JICA インターンシッププログラム
2.1
概要:JICA インターンシッププログラム
JICA インターンシッププログラムは国際協力・開発援助に関わりの深い研究を行
い、将来同分野において活躍する意思を持っている大学院生(応募資格については
Table1 を参照)、または国際協力に強い関心を有する若手医師を対象に、JICA 各機
関(本部、国内機関、在外事務所)における実習経験を通じて、JICA 事業及び日本
の国際協力・国際援助に関する理解を深めることを目的としている。
実習内容は、配属先における一般業務補助もしくは配属先が設定した特定テーマに
関する業務(補助)となる。具体的な内容は、インターンの配属先の指導担当者との
間で打ち合わせをして最終調整のうえ決定される。
実習機関は実習毎によって異なる。応募者はその期間の内、自らのスケジュールを
考慮し、実習先と相談の上実習期間を決定する。
一つ重要な点は、JICA インターンシップは基本的な費用はインターンシップ生本
人が負担することとなっている。航空券や現地での宿泊、生活費などを考慮にいれ応
募を考える必要がある。
4
Table 1
(1)
応募要件
応募時及び実習期間全体を通じて、
(ア) 日本の大学院(専門職学位課程、修士課程、博士課程)に在学中の者、または
(イ) 海外の大学院に留学中の者
(2)
国際協力・開発援助に関係のある研究を行っていること。
(3)
インターン(医師枠)を希望する者は、上記(1)(2)によらず、「医師免許」の有資格者で、日本の医療現
場での活動経験を有するもの。
(4)
将来国際協力関連の仕事に従事することを希望していること。
(5)
心身ともに健康であること。
(特に海外での実習を希望する者は、配慮を要する既往症や病気にかかって
いないこと。)
(6)
十分な日本語能力及び実習に必要な外国語能力を有すること。英語の場合は英検 2 級以上、TOEIC640
点以上、または TOEFL iBT61(PBT500、CBT173)以上、IELT5.0 以上。フランス語は仏検 2 級以上、
DELFA2以上。スペイン語は西検 4 級以上、DELE 初級以上。なお、実習内容によっては上記レベル
以上の外国語能力が求めることがある。
(7)
これまで本プログラムに参加した経験が無いこと。
(8)
現在、JICA 国内長期研修制度及び海外長期研修制度の受講者でない者。
(9)
希望する実習ポストが指定している「応募資格要件以外に必要な要件」を満たしていること。
(10) 本プログラム参加に要する経費を基本的に自己負担できる者。
2.2
選考方法・選考スケジュール
大学院生インターン及び医師枠インターンの募集は4月に行われる。私が応募した
2012 年度を事例として説明する(Table2
選考日程)。2012 年度 JICA インターンシ
ップの書類応募締め切りは 2012 年 4 月 25 日であった。
Table 2 選考日程
選考
日程
応募締切(必着)
2012 年 4 月 25 日
書類選考結果通知
2012 年 5 月 23 日
5
面接選考
2012 年5月 24 日〜6 月 7 日
面接選考結果通知
2012 年6月 14 日
事前オリエンテーション
2012 年 6 月 22 日
インターンシップへの応募には 7 種類(海外留学中の学生は8種類)の書類の作成
が必要となる(Table3 応募書類)。応募書類で最も大きなウエイトをしめるものは
自己申告書である。自己申告書に、実習ポストの科目(分野)/国(地域)のどうい
う点に興味があってインターンシップに応募したのか、その理由。インターンシップ
を通じて何をどれだけ達成することを期待するか、またその為にどういう基礎知識/
経験がどのくらい自分にあると考えるか、大学院でどのような研究を行っているかと
いうことを記入する。
Table 3 応募書類
1
応募申請書
2
履歴書
3
自己申告書(本プログラム/実習ポストを希望する背景、本実習ポストへの期
待、大学院における研究内容と将来の進路)
4
指導教官の申請状
5
健康に関する質問票
6
在学証明書
7
語学力に関する証明書
8
(海外留学中の方)現在加入している海外旅行保健等の内容を照明する書類
の写し
2012 年度の応募申請書の締切は 4 月 25 日であった。1 ヶ月ほどの書類選考経て、
面接試験へと移行する。面接試験は市ヶ谷にある JICA 研究所にて実施された。面接
は希望実習先の職員 3 人(インターンシップ担当職員、モンゴル事務所次長、所長)
と 20 分程度、スカイプビデオ会議を通じて行われた。インターンシップへ応募した
動機や大学院での研究、モンゴルでの生活、将来の進路などについて質問があった。
また、面接の中で、
「事前オリエンテーションに参加は可能か?」という質問がある
が、これは原則インターンシップ生全員参加必須なので、参加が難しいと解答すると
インターンシップに落選する可能性もある。オリエンテーションの日付はインターン
6
シップ募集要項に記載されている。結果は面接から約 1 週間後に伝えられた。
2.3
インターンシップへの参加準備
選考合格者は6月 22 日に JICA 国際協力人材部総合研修センター(東京、市ヶ谷)
において実施される事前オリエンテーションに参加し、現地での活動や生活、安全面
への講習を受講する。その後、実習先の担当者と連絡を取り合い、実習内容やスケジ
ュール、渡航時期について調整を行う。また、実習場所によっては予防接種が必要と
なる。モンゴル国は A 型肝炎、B 型肝炎、破傷風、狂犬病の予防接種が必要である。
尚、予防接種費用は JICA から補助が支給される。
3
現地での活動
3.1
本インターンシップの目的
現在、モンゴル国では ICT の導入が政府主導で積極的に進められている。日本の
4倍の国土面積に、世界一人口密度が低く、冬期は−40 度にもなり、移動も困難にな
るというモンゴル国の特質を鑑みると、特に教育分野への ICT 技術の導入は、持続
可能な人材育成・教育開発を促進する手法として期待されている。
本インターンシップでは、上記の背景を受け、「モンゴル基礎教育分野への情報技
術の導入に関する調査」というテーマのもと、初等教育分野を中心に教育分野にて
ICT がどのように普及し、使用されているかという現状調査を行った。また、政策
面での調査も実施し、ICT と基礎教育の現状を包括的にまとめた。
また、上記テーマを調査すると同時に、JICA モンゴル事務所内で業務がどのよう
に進み、多くのカウンターパートとプロジェクトを実施している JICA を通じて、国
際協力、国際開発の仕事や実態を学ぶ。
4
現地での生活
4.1
JICA モンゴル事務所:安全講習
JICA に配属された当初行われたのは、モンゴルでの生活の仕方、風邪・怪我への
対処法、外国人への犯罪の警告、夜間の事件事故についての説明であった。モンゴル
国は他の発展途上国と比較しても安全ではあるが、ここ数年でも青年海外協力隊員・
シニア海外ボランティア隊員が深夜帰宅時に窃盗・暴行を受ける事件が発生している。
そのうち 1 件で一人が死亡している。JICA モンゴル事務所では夜間 10 時以降は帰
7
宅することを推奨している。
モンゴル国で特にはやっている病気や疾患は無いが、過去 A 型肝炎が流行したこ
ともあり、手洗い、衛生管理を徹底すること。寒暖の差による体調不良や食あたり等
に関する注意を受けた。
また、モンゴル国は現在建築ラッシュであり、特にウランバートルでは数多くのビ
ルが建設中である。建築現場付近では建材・資材の落下による事故が起きており、建
設現場付近を通行する場合には注意が必要であるとのことであった。
4.2
物価
2013 年 2 月 12 日現在、1 円=14.72MNT(モンゴルトゥグルク)である。このレ
ートの為、日用品、食料品などは日本に比べて安い。しかし、外国語メニューがある
レストランは比較的価格が高く、日本でのレストランとあまり価格は変わらない。ラ
ンチプレートなら 800 円〜1000 円程度、ピザなら 1200 円程度である。
4.3
買い物・食生活
2 ヶ月間のインターンの間、食事はレストランと自炊を併用していた。自炊とレス
トランの割合は 3 対 1 程である。日本から 5kg の米とインスタント味噌汁、おかず
となる缶詰なども持って行ったのでそれらの食材を使いながら、自炊を行っていた。
また、モンゴル国は「ザハ」と呼ばれる小売店鋪集合型商業施設があり、ウランバー
トル市内にも4つほど大きなザハがある。肉、野菜、果物といった生鮮食料は主にザ
ハを訪れて手に入れていた。肉はその場で捌かれ、量売りされるので日本よりも安く
味も良い。
生活必需品はザハや小売店(日本でのコンビニエンスストアのようなもの)
、デパ
ートで購入していた。
4.4
宿泊先
宿泊先にはモンゴル教育大学の留学生寮を使用していた。1 日 20,000Tg(1600 円
程度)で、シャワー、トイレ付きの部屋を使用していた。キッチンスペースは付属し
ていなかったので、窓際にカセットコンロを置いて料理をしていた。シャワーは出な
いことが多く、平均して 1 週間に 2 日〜3 日はお湯で濡らしたタオルを使用し、体を
拭き、頭を洗っていた。
8
4.5
JICA モンゴル事務所
JICA モンゴル事務所はウランバートル市の中心部スフバートル広場の隣のブロ
ックに位置する。私が宿泊していた寮からは徒歩で 20 分弱ほどであった。現在、日
本スタッフ 10 人、モンゴル人スタッフ 16 人が勤務している。プロジェクトマネジ
メント、現地調整、ボランティア活動支援などを主な業務としている。勤務時間は朝
9 時から 5 時までとなっており、水曜日は定時退社日である。
5
JICA での活動
近年の基礎教育分野を取り巻く ICT の現状と課題を分析と JICA の業務を知る為に大き
く分けて4つの活動を現地にて行った。
5.1
NGO やカウンターパートへの聞き取り調査
教育と ICT に関するプロジェクトやそれに関する情報を調べる為に、セーブ・ザ・
チルドレン・ジャパン教育プログラムマネジャー、ゲレルトゥヤ氏とモンゴル教育大
学 IT・コンピュータ学部学科長、ムンフトヤ氏と面会した。
2012 年 6 月よりセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは 4 年間の教育支援プロジ
ェクトが実施されている。世界銀行がマネジメントを行っている日本社会開発基金か
ら援助を受けたプロジェクトであり、モンゴル国の地方のさまざまな困難な地域に住
む子どもの教育成果を向上させることにある。特に社会的にも環境的にも困難な状況
にある 5〜10 歳の遊牧民の子どもたちを対象としている。これらの子どもたちは学校
そして宿舎である寮での生活で困難に直面することが多く、学校を辞めてしまう子ど
もも少なくない。本プロジェクトではそのような子どもたちのために、入学前プログ
ラム、放課後学習プログラム、低学年向け遠隔教育プログラム及び教材開発を計画し
ている。プロジェクトの一環として、教材の開発が行われる予定であるが、その教材
は本、テキスト教材、教育玩具など様々なものが想定されている。その教材のひとつ
として、ICT を用いた教材の作成が予定されている。具体的には VCD や DVD を用
いた映像教材、コンピュータで遊びながら学ぶソフトウェア教材などを、ICT の専門
家と共同で作成する。また、教育設備の強化を目的として、寮の改修・修繕を行う予
定であるが、その一部として ICT 機器の購入、設置も予定している。
ムンフトヤ氏へのインタビューでは現在の大学教育における IT 技術教育を中心に
大学の現状、卒業生の進路などについて調査を行った。1 学年 100 年ほどの学生が在
籍しており、情報技術と情報システムを教える 2 コースがある。モンゴル教育大学
9
の一学部であるから、教員の養成を第一の目的と考えており、情報科学教員、情報数
学教員、コンピュータ及びソフトウェア教員という 3 種類のタイプの教員を育成し
ている。しかし、卒業後の進路は多様であり、教員、プログラマ、SE、携帯などの
情報通信産業などで卒業生は働いている。近年は修士課程・博士課程に進む学生も増
えている。しかし、日本とは違い数ヶ月間勉強し、その後数ヶ月間仕事を行い、また
勉強を行うという方法を取るようである。この学部は他の学部の生徒にも IT 関連教
育を行っているが、実質 IT の授業は学部 1 年生の時に 1 学期または 2 学期程度しか
無く、IT 学部以外の教員を志望する学生が十分な情報技術に関する知識を得ている
のかは不安がある。
本来はこれら以外の NGO やカウンターパートにも聞き取り調査を行う予定であ
ったが、できなかった。なぜならば、インターンシップの直前に国政選挙が行われ、
それまでの第一党が失脚し政変が起こったからである。このため省庁などは人員の配
置換えが頻発し、それまで ICT と教育関連プロジェクトに携わっていた方への連絡
が難しくなり、また新しく配置されたスタッフでは知識が全くないということから、
上記の 2 つのカウンターパートへの聞き取り調査のみにとどまった。
5.2
文献調査
他の活動と同時にこれまでモンゴル国で実施された ICT 関連政策、ICT 関連プロ
ジェクトのドキュメント調査を実施した。モンゴル国では数多くの ICT 関連政策が
実施されており、これらのドキュメントを調査することで、国の方針やこれまで実施
されたプロジェトの概要について情報を収集した。
ドキュメントは聞き取り調査やカウンターパートへのメールを通じた質問、JICA
モンゴル事務所に保管されているドキュメントなどを中心に調査を行った。その結果、
モンゴル国で行われている ICT 政策の概要、また教育機関における ICT インフラの
現状を理解することが出来た。
その反面、文献は省庁がまとめて持っているといったデータベースのようなシステ
ムは無く、個々の機関にその都度連絡を行い、収集を行った。またモンゴル語でしか
書かれていなドキュメントもあり、翻訳作業に時間がかかった。
5.3
JICA「子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクト
フェーズ 2」への参加
JICA が 2006 年度から開始した「子どもの発達を支援する指導法改善プロジェク
ト」は 2009 年からフェーズ 2 に移行している。このプロジェクトでは教員の教授法
10
のスキルや知識向上の為に、指導書の作成や授業観察と行った教育技術改善方法を提
案している。私は 9 月 24 日〜26 日の 3 日間、同プロジェクトの授業観察モニタリ
ングに同行した。モンゴル国北部に位置するボルガン県のソム(村)を訪れた。ゴル
ワンブラグ総合学校にて授業観察を行い、学校でどのような授業が行われているのか、
また教員がどのように授業改善を行っているのかを学んだ。
また、初等教員に聞き取り調査を行い、学校にどのような ICT 機器が整備されて
いるのが、授業でどのように ICT が使われているのか、また ICT を使用する上での
課題を調査した。
5.4
青年海外協力隊員への聞き取り調査
モンゴル国には常時 50 人程度の青年海外協力隊員やシニア海外ボランティア員が
活動を行っている。これは草の根の活動であり、現地に住み、スタッフと生活をとも
にし、2 年間のボランティア活動を行う。私はインターンシップ期間中に 4 名の青年
海外協力隊員に聞き取り調査を行った(Table4)。今回聞き取り調査を行った隊員は小
学校または職業学校で PC インストラクターとして活動しており、聞き取り調査を通
じて学校の ICT の利用に関する現状や直面している課題を調査した。
その結果、PC やインターネットなどは整備されつつあるが、機材の個数が未だに
不十分なこと、海賊版ソフトウェアが一般的に使用されていること、コンピュータウ
イルスが業務を妨げていること等多くの問題が浮き彫りとなった。
Table 4 青年海外協力隊員
Name
Job
Date
Destination
Mr. Adachi
PC instructor
12th, Oct
Baganuur (UB)
Mr. Kaburagi
PC instructor
16th, Oct
Selenge aimag
Ms. Kon
PC instructor
16th, Oct
Selenge aimag
Mr. Komori
PC instructor
17th, Oct
Darkhan aimag
11
Fig 1
6
訪問地域
まとめ
今回のインターンを通じて、モンゴル国の教育分野で導入が進められている ICT の現状
と課題を取りまとめることが出来た。モンゴル国は政府主導で教育分野への ICT の導入を
進めているが、現場レベルでは未だに機器の不足や不正プログラムなどの課題があること
がわかった。本インターンを通じて収集した情報をまとめ、「インターン実習報告書」(51
ページ)を作成した。2013 年 3 年には全 JICA インターンシップ生を集めた報告会でも発
表を予定している。
7
感想
海外に 2 ヶ月滞在したことは初めてであり、生活からインターンシップまで新しいこと
尽くめの体験であった。中でも世界有数の国際機関でインターンシップが出来たことは得
難い経験であった。インターンシップ期間中でも複数のプロジェクトが同時進行で実施さ
れており、プロジェクトの調査やミーティングなど JICA の様々な業務の話しを聴くこと
が出来た。インターンシップでは ICT と教育の情報を包括的に取りまとめることが一つの
目的であったが、
それと同じく JICA を知ることも大きな目標であったので、2 ヶ月間 JICA
モンゴル事務所の方々と机を並べ過ごせたことは、とてもよい勉強となった。本学からの
JICA 海外事務所へのインターンシップは初めてとのことであったが、今後多くの生徒がこ
のインターンシップで国際機関での仕事を学び、視野を広めることを期待する。
1 つ難しい点は、JICA のインターンシップでは航空券や基本的な生活費を自分で負担し
なければならないことである。地域によって JICA からも支援がでるが、学生が JICA イン
ターンシップに応募する時は研究室や学校からの援助も考慮するべきだろう。
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