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アナログ/ディジタル・ ビデオ信号の基礎知識 アナログ/ディジタル・ ビデオ
第 7章 走査,同期,インターレース,ITU-R BT.656規格,ITU-R BT.601規格など アナログ/ディジタル・ ビデオ信号の基礎知識 本特集を読み進める上で欠くことのできないビデオ信号の基礎 知識について解説する. (編集部) 漆谷正義 ● 映画は毎秒 24 枚,テレビは 30 枚 それでは毎秒の画像数(フレーム・レート)はどの程度必 要なのでしょうか.映画は毎秒 24 枚,PAL ・ SECAM 方 画像を記録する機器には,静止画像を撮影するための 式のテレビは毎秒 25 枚,NTSC 方式のテレビは毎秒 30 枚 ディジタル・スチル・カメラと,動画像を記録するための の画像を伝送・表示しています.また,昔の 8 ミリ映画は ビデオ・カメラがあります.ここでは静止画像と動画像の 毎秒 18 枚でした. ちがいと,アナログ・ビデオ信号,ディジタル・ビデオ信 号の仕組みについて解説します. 人間の目は,1 枚 1 枚の画像を続けて見た場合,次の画 像との切り替え部分で不連続なちらつきを感じます.従っ て映画では,シャッタを設けて 1 枚の画像を何度か写し, 1.ディジタル・ビデオはアナログ・ ビデオの理解なしには語れない また,次の画像との間に「ブラック」を入れます(図 2).液 晶テレビなども同じようなことを行っています.ブラウン 管の場合は蛍光体の残像時間が短いので,特別な配慮は必 ● 動画像は静止画像の寄せ集め 要ありません. 動画像は,図 1 のように動画像を「めくり絵」のようにサ 映画の場合はシャッタにより,また,ビデオ信号の場合 ンプリングして,こまぎれの静止画像とし,これを次々と は,後述の飛び越し走査により,毎秒の像数は 50 ∼ 60 枚 表示するものです.デジタル・カメラの静止画を連続して となっています. 多数撮影して表示させることと同じです. もちろん実際の被写体は図 1 のような不連続な動作をし 光源 シャッタ ているわけではなく,なめらかな連続した運動をしていま す.人間の目は動きに対する追従能力が低く,また,残像 と呼ばれる一定の蓄積時間があるので,毎秒数十枚程度の レンズ 画像を送ればなめらかな動作と感じるようになります. 掻き落とし爪 図2 図1 動画像は静止画像の寄せ集め Keyword 80 映写機のシャッタ 次の画像との間に「ブラック」を入れている. 同期信号,インターレース,ITU656 規格,ITU-R BT.601 規格,飛び越し走査,NTSC,フィールド, ブランキング,タイミング・コード Design Wave Magazine 2008 July 図3 画像の走査のイ メージ 帰線 走査は画面の左上か ら始まり右下で終わ る.帰線の部分があ り,この部分は無信 号(ブラック) . 走査線 (a)正常 図5 第1フィールド走査 第2フィールド走査 まず1枚の画像を, 走査線1本おきに描く 次に,第1フィー ルド走査で描いた 走査線の間に描く (b)垂直同期外れ (c)水平同期外れ 正常な画像と同期の外れた画像 飛び越し走査(フレーム) 第1フィールド走査の 画像と,第2フィール ド走査の画像を重ねる 映像信号 等化バルス 1 1H 水平同期信号 (a)フィールド1 0.5H 垂直同期信号 2 (b)フィールド2 図6 第1フィールド走査 によってできる画像 図4 第2フィールド走査 によってできる画像 飛び越し走査によって できる画像 飛び越し走査 飛び越し走査によって毎秒枚数を 2 倍(60 枚)にしている. 3 帰線期間に設けられた等価パルス に変換すると,どこが画像の始まりか分からなくなります. 4 そこで画像の始まりには印が付けられます.これはアナロ グもディジタルも同じです.これを同期信号といいます. 5 ビデオ信号には画像の始まり(上端)と水平走査(ラインと ● 走査による画像変換 もいう)の始まり(左端)におのおの,垂直同期信号と水平 2 次元画像を1 次元の通常の電気信号にするために,CCD 同期信号が挿入されています.図 5 は正常な画像(a)に対 などの撮像素子によって画像を走査します.図 3 はこの様 して,(b)は垂直同期が外れた場合, (c)は水平同期が外 子を表しています.走査は画面の左上から始まり,右下で れた場合の画像を示します. 終わります.走査には,帰線の部分があり,この部分は無 信号(ブラック)となります.ビデオ信号では,ブランキン ● 等化パルスは飛び越し走査に必要な信号 グ期間と呼びます.ブランキング期間はブラウン管の走査 同期信号が画像信号中に埋め込まれた信号を合成映像信 に必要な電子線の戻り時間です.ディジタル・ビデオ信号 号といいます.さらに図 6 のように垂直同期信号と水平同 処理においては,信号を一挙に転送するのに好都合な時間 期信号を合成して 1 本にしたものを複合同期信号と呼んで です. います. 飛び越し走査の場合は図 6(b)のように,次のフィール ● 飛び越し走査(インターレース)で毎秒枚数を 2 倍に ドの走査は水平ラインの半分(0.5H)だけシフトします.こ 毎秒 24 ∼ 30 枚の画像では,人間の目にはちらつき(フ のときテレビの水平発振回路は急激な位相変化についてい リッカ)が残ります.そこで映画では,前述のシャッタに けず,画面上部に曲がり(スキュー)が出る場合がありま よって,見かけ上の毎秒枚数を増やしました. す.この対策として図 6 の等化パルスを挿入しています. 従来からのアナログ放送では,飛び越し走査によって毎 秒枚数を 2 倍(60 枚)にしています.図 4 のように,1 枚の 画像を上下方向にわずかにずれた 2 枚の画像に分解して,2 倍の速度で送ります. ● NTSC ビデオ信号の規格 今回使用するカメラ・モジュールの出力は,ディジタ ル・ビデオ信号の伝送規格である ITU 656(ITU-R Reco mmendation BT.656)に基づきます.従って,National ● ビデオ信号には同期信号が必要 動画像は静止画像の集まりですが,走査により電気信号 Television Standards Committee(NTSC)が定めたアナ ログ・テレビジョン方式の規格値が随所に出てきます.こ Design Wave Magazine 2008 July 81 6 7