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英語の未来表現にっいて - 奈良教育大学学術リポジトリ

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英語の未来表現にっいて - 奈良教育大学学術リポジトリ
',:I'卜蝣ftfi I ,-`わ 蝣ォ: fA.i与.y¥i '蝣: 、こ蝣ii;こ、 .いいこtl
Bull.
NaraUnil′.
Educ.,
Vol.43,
No.
]
(Cult.
&Soc.),
1994
英語の未来表現について
-begoingtoを中心にして-
託 見 千 秋'' ・米 倉
iV
(奈良教育大学英語科教室)
(平成6年4月13日受理)
は じめに
一般的に、英語には「未来時制」 (futuretense)がないと言われている。しかし、学校文法で
は、よく「未来時制」という概念が用いられている。これは、時間という概念と時制という概念
を結び付けて考えているもので、この考えによると生徒に教える場合には役に立つ。
また、古くから言われているように英語にはいくつかの未来時を表わす表現がある。
will/shall +動詞の原形不定詞:
I will be free tomorrow afternoon.
be going to +動詞の原形不定詞:
My sister is going to see them tomorrow.
現在進行相:
Tom is giving a birthday party next Sunday.
現在時制:
She arrives at Kyoto Station at six.
will/shall +進行相:
I will be leaving for China next week.
be {about) to +動詞の原形不定詞:
I am to see her tomorrow.
She is about to leave tomorrow.
これらは、意味的には未来時を表わすが、文法的にはすべて現在時制である。さらに、未来時を
示す副詞(句・節)を伴わなければ、未来時を表わしているのか分からない場合もある。
フランス語やラテン語と異なり、英語の動詞のシステムには「未来時制」が存在しない。その
ため、英語には上で示したように多くの未来時を表わす、達吉的な(periphrastic)表現がある。
そこで本論考では、これらの表現が完全に同じ意味を担っているのか、あるいは別の表現に置き
換えることができないのかということを、特に現在進行相とbegoingto、 willを選んで、それぞ
'本論考は託見千秋が第一原稿を作り、それを米倉の指導の下で修正補筆したものであるO従って、本
論考に評価される点があるとすれば、それはすべて託見千秋の業績であり、批判される部分があると
すれば、すべて米倉の責任である。
''現在、奈良教育大学大学院研究生0
1
託 見 千 秋・米 倉 緯
れを比較し、検討してみようと思う。
I 進行相とbegoingto
1.1進行相
いわゆるbe動詞と、ある動詞の-mg形の結合はしばしば進行相(progressiveaspect)を表わ
すために用いられる。 『新英語学辞典』によると、 「相」 (aspect)を「動詞に関する文法範晦の
一つで、動詞の表わす動作・状態の様相のとらえ方およびそれを示す文法形式」と定義している。
英語では、 「時制」と「相」は対立しない。なぜなら各々異なる文法範暗に属しているからである。
そして、相には「進行相」と「完1相」 (perfectaspect)の二種類があるが、ここでは、進行相、
特に現在進行相を詳しく見ていく。
安藤(1983 : 116)は、進行相の本質的意味を「現在・過去・未来の基準時における主語の活
動を表す」と定義している。つまり現在進行相は「今」という基準時(pointofreference)にお
ける主語の活動を表わすことになるoそして一般にその活動は進行しており、 Palmer (1987 : 36)
も「進行中の動作」 action in progress)を示すと言っている。
Leech (1987 : 19)は進行相の意味を次のように3種類に分類している。
(A) The Progressive Form indicates duration.
(B) The Progressive Form indicates limited duration.
(C ) The Progressive Form indicates that the ha仲'ening need not be complete.
それぞれを詳しく述べるつもりではないので、ここでは「継続」 (duration)に関してのみ、
Leech (1987 :19 が比較している例を見てみる。
1) a. Thehousefalls down!
b. The houseisfalling down.
-Leech 1987 : 19
例(1a)は突然の動きを表わし、例(1b)はより漸進的な動きを示している。それゆえ、進
行相を用いるとある出来事(event)は過去時と未来時へと広がって、その出来事はもはや瞬間
的なものではないのである。
palmer (1987:55)によると、しばしば進行相は活動が末完了であることを表わし、非進行
形は完了していることを示すという。 「活動が未完T」という概念によって、現在進行相が未来
時を表わすという用法が発達したのであろう。さらに、その活動は時間の流れに従って、未来時
には完了するかもしれないということを意味する。現時点においては完了していなくても、いつ
かその活動には終了する時が来る。これは上のLeechの分類(C)にあてはまる。
Quirketal. (1985 :215)によると、未来時を表わす現在進行相は、 「現在の取決め、計画、
予定から生じる未来」を意味すると言う。しかし、先にも述べたように、現在進行相が未来を表
わす時は、未来時を指す副詞表現を伴わなければならない。もし未来を表わす副詞を伴わないと、
英語の未来表現について
進行形の文が未来を表わしているのか「進行中の活動」を表わしているのかどうかあいまいになっ
てしまうからである。
さて、ここで尾野(1990:16-7)の進行相についてのアプローチを示す。彼は、進行相を「基
準時においてのみ成立しうる現実世界(現象)に対する話者の観察(描写)行為を表す」と定義
している。彼のアプローチによると進行相は「話者の観察活動」を表わしている。例えば、進行
相では話者が観察できないような、瞬間的な出来事は表現できないのである。また、状態動詞は
進行相では用いられないと言われる。なぜなら、状態動詞はそれ自身に継続的な意味があり、状
態動詞で示される現象というものは基準時においてのみ成立しうるというものではないからであ
り、それゆえ、状態動詞は進行相で用いられないのである。
1.2 begoingto
Greenbaum andQuirk (1990 : 57)によると、 be going toには、 「現在の意図の未来での達成」
と「現在の原因の未来での結果」という2通りの意味がある。前者の「現在の意図の未来での達
成」は、主に人間の主語をとる。例えば、
2) Whenare yougoingto get married?
それに対して、後者の「現在の原因の未来での結果」は、主語には人間でも人間でなくてもよい。
例えば、
3) a. It'sgoingtorain.
b. Shesgoingtohaveababy.
例(3)では、それぞれ「雨雲が見える」、 「妊娠している」ということが前提として存在してい
る。また、安藤(1983:101)はこの用法で使われる動詞は、意味素性[自制不可能([-selfcontrollable])を担っていると言う。なぜなら、主語の意図を表わしているのではないからであ
る。
さて、大江(1982:211)によると、 begoingtoを伴う文はあいまいであるという。では、次
の例(4)を考えてみよう。次の文の意味は3通りに解釈できる。
am going to see him.
-大江1982:211
解釈(a) 「今、私は彼に会うために向かっているところである」
解釈(b) 「まもなく、私は彼に会うために出かけるところである」
解釈(C) 「いつか、私は彼に会うつもりである」
それぞれの解釈を分析してみよう。まず、歴史的に考えると、解釈(a)が進行形のもともとの
意味である。進行相は進行中の活動を示すものである。だから、例(4)の話者はある場所にい
く途中で誰かに出会って、そしてその人に"Iamgoingtoseehim.''と言ったのかもしれない。
託 見 千 秋・米 倉 締
また現在進行相はしばしば未来の意味を表わし、解釈(b)では進行形isgoingは未来を示し
ている。そのため、例(4)の話者はまだ家にいて、誰かにこれから会いに行く人のことを話し
て、 "Iamgoingtoseehim."と言ったとも考えられる。
解釈(C)におけるbegoingtoは準助動詞として使われていて、 「未来時制」の標識である。
そしてこの解釈においては、上の2つとは異なり、 begoingは動詞goの意味を純粋には持って
いない。例(4)の話者は未来のいつか、例えば来週に彼に会いに行くつもりであり、そしてあ
る日誰かに出会ってそのことを"Iamgoingtoseehim."と言うのであろう。
もし上で示したようなコンテクストが与えられるならば、これらすべての解釈が可能になる。
しかし、例(4)のような文を耳にすると、一般には解釈(C)が与えられる。
さて、ここで生成文法の理論によってbegoingto構文を考えてみようと思う。上記の例(4)
は次のようなD構造を持っていると考えられる。
')I
5) eisgoing [Itoseehim]
この構造において`I'は`isgoingの主語ではなく、不定詞句`toseehim'の主語として用いられ
ている。例(5)では、 「私が彼に会いに行く」という出来事が今すでに起こっている、あるい
は未来時において起こるであろうということを表わしている。 OED第2版の定義によると、動
詞goは「-という結果になる(turnout)」、 「なる(become)」という意味を持っている。したがっ
て、例(5)の解釈が正しいものであると考えられる。
上述の解釈(b)では進行形isgoingはある出来事がまもなく起こるということを意味するこ
とができる。前に述べたように、進行相で表わされる出来事は、過去時と未来時へと広がって、
未来-と進んでいる。すなわち、 「私が彼に会いに行く」という出来事はすでに始まっており、
そして未来時へと進んでいるのである。それゆえ、 begoingto +不定詞という構文は「未来にお
いて起こるであろう」という意味を持つ進行形isgoingから派生したものと考えられる。
ここで先ほどの尾野(1990 の進行相-のアプローチを例(5)に適応してみる。 「私が彼に
会いに行く」という現象は基準時においてのみ起こり得る、と考える。しかし、この場合は「現
象」という術語よりも「意図」 (intention)あるいは「徴候」 (sign)という語を用いたほうが良
いかもしれない。ところが、例(5)には主語がなく、主語の「意図」を表わすことはできない。
それゆえ、 isgoingという句は、 「私が彼に会いに行く」という「徴候」を示しており、例(5)
はその「徴候」の存在のみを表わしているのである。
安井(1982:73)は次の例について、 「年をとるのは、本人の意図とは関係がないから」、例
b)を用いることはできないと言う。
6) a. rlJ beeighteennextspring.
t
b. 1amgoingto be eighteen next year.
-」# 1982:73
しかし例(5)の解釈では、例(6b)は来年「私が18才になる」という「徴候」を表わしてい
ると考えられ、非文法的ではない。そのため、次の例で表わされる内容も、普通ならば本人の意
図とは関係ないものである。
英語の未来表現について
I'm going to be sick!
-LDCE
誰も「病気になる」ことを本人の意図では思っていない。しかし、この例でも「徴候」を示して
いると考えるとよいのである。
最後に例(5)をS構造へと変形する。
(7) Iamgoingftoseehim.
これで例(7)は例(4)と同じ構造で同じ意味を表わしていると考えられる。先ほどは、 D構
造には主語がないために、 「意図」より「徴候」という解釈を与えた。しかし、 S構造には必ず
主語が現れるから、 begoingtoを伴う文は「意図」と「徴候」のどちらかを示すと考えることが
できる。
1.3 否定
否定に関して、 Palmer (1990 : 146)は「BEGOINGTOは否定文ではまれであるが、 wILLは普通で
ある」と述べている。前節で、 begoingto構文は進行形15goingにto不定詞を伴ったものから派
生したということを論じた。そのため、派生したものが否定文でまれであるということは、その
基となった進行相も否定文ではまれであるのではないだろうか。
しかし否定文での進行相の例がいくつかある。
(8 ) Aren't you ratherjumping to conclusions?
-荒木1984 : 263
9 ) I gotta overcome it. I know I gotta overcome it. I'm not dressing to advantage, maybe.
-DS 29
(10) "The proof is that here, unlike Eastern Europe, the government is not changing, even
though we have far worse economic pressures.
-Time, Dec. 6th, p. 21
(ll) Or as Spielberg told the cast, "we're not making a film, we're making a document.''
-Time, Dec. 13th, p.47
これらの例は必ずしも「進行中の動作」を表わしてはいないようである。また、例(ll)は「∼
をしているのではなく、 -・をしている」というような対比を示している。なぜ進行相が否定文で
は一般的でないかという理由は、もう既に進行中の動作を否定することはできないということか
ら説明できる。
次は否定のbe going toの例を示す。
(12) The task isnotgoing to be easy.
-Time, Nov. 8th, p. 17
託 見 千 秋・米 倉 緯
(13) "Rome wasn't built in a day, Harold, and your heart isn't going to be rebuilt in a week."
-RR 236
(14) I haven't worked very hard this term. I'm afraid I'm notgoing to pass ray exams.
-Hornby 1975 : 200
(15) I'm notgoing to marry someone who leaves his pyjamas on the floor!
-Wekker 1976 : 126
(16) 'Now I'm justnotgoing to pretend I was as bright as I might have been.
-MOE 90
例(14)はHornby (1975:200)によると「見込みについての話者の感情」を表わしていると
いう。また、例(12)と(13)は「徴候」、例(15)と(16)は「意図」をそれぞれ示している
ようである。
では、否定文のbegoingtoはまれであるというPalmerの考えはどのように扱えばいいのだろ
うかOそこで例(5)の解釈をbenotgoingtoにあてはめてみようと思う。例えば、例(14)に
ついては次のように2通りにパラフレーズができる。
(17) a. e isnotgoing [Ito pass myexams]
b.
ど
isgoing
[Inotto
pass
myexams]
しかし、例(14)の解釈は後者の例(17b)のほうが良い。つまり、 「私が試験に通らない」と
いう出来事が起こっている、あるいは未来に起ころうとしていると考えるほうが、より自然であ
る。というのは、例(17a)のように置き換えると、この構造からは否定文しか生成されないこ
とになってしまい、例(17b)より生産性の低い構造であることになる。
例(12)から(16)について、これらは「話者の感情・徴候・意図」を表わしていると述べた。
そして、例(17b)については、 to不定詞句`topassmyexamsの主語の`I'の「感情・意図」
を示しているのではなくて、 「私が試験に通らない」という「出来事の徴候」を表わしているに
すぎないのである。
このような解釈によって、ときおり現れる否定文の'.goingtoを理解することができる。
1.4 進行相vs. begoingto
1.1節で進行相、 1.2節でbegoingtoについて述べたO どちらの表現も未来時を指すのに用いら
れる。では、この2つの表現に意味や用法の違いはあるのだろうか。この節では、進行相とbe
goingtoとを比較してみようと思う。まず次の例を考えてみる0
(18) a. I'm meeting Tom at the station at six.
I'm going to meet Tom at the station at six.
-Thomson and Martinet 1980 I 171
ThomsonandMartinet (1980:171)によると例(18a は「Tomとの取決め」、すなわち、 「私
英語の未来表現について
はTomに会うと約束した」ということを含んでいるという。それに対して、例(18b,にはそ
のような含みはなく、もし私がTomに会うために駅に行ったならば、彼は驚くかもしれないの
で`。fs」
(19) a. I'mgoing to take Mary out for dinner this evening.
b. I'm taking Mary out for dinner this evening.
-Leech 1987 : 63
先に述べたように、現在進行相は「現在の取決め、計画、予定から生じる未来」を意味し、一方、
begoingtoは2つの意味を持っており、それは「現在の意図の未来での達成」と「現在の原因の
未来での結果」である。 Leech (1987:63)によると、 「意図」とは話者の現在の心の状態の一
部であるという。そのため、例(19a)は「Maryを夕食に連れて行く」という現在の私の意図
を表わしている。しかし、 Leech (1987:63)は「話者が現在どのように思っていても、取決め
というものは過去においてすでに決められているものである」と言っている。言い換えると、例
(19b)に関して、 「私がMaryを夕食に連れて行く」というけ'J来事は他の誰にも変えることが
できないのである。
基本的に現在進行形は「進行中の動作」を表わしている。しかし、未来時を表わす場合は「進
行中の計画・予定」を示していると考えられる。そのため、次の例のように現在進行相を用いる
と、ある誘いを断る言い訳とすることができる。
(19) c. I'm sorry, I'd like to have a game of billiards with you, but I'm taking Mary out for
dinner.
-Leech 1987 : 63
例(19c)の話者は、 Maryを夕食に連れていくという計画を変えることがまったくできないの
である。
また、未来を表わす現在進行欄はたいてい[+human]という意味素性を担う主語を伴ってい
ることが次の例から分かる。
(20) We are going to a musical show tonight.
一荒木1984:266
(21) I'm taking the children to the Zoo on Sunday.
一Hornby
1975
:
97
(22) Next they're playing a piece by Schubert.
-Leech and Svartvik 1975 : 72
(23) I haven't started to pack, and the plane is leaving at three!
-荒木1984 : 266
(24) I'm leaving early tomorrow.
-DS49
託 見 千 秋・米 倉 緯
しかし、例(23)では主語の'theplane'は意味素性 ト ate]を持っているが意味素性[+r controllable]を担っていると考えられる。なぜなら、意味素性[+human]を持つパイロットが
飛行機を操縦するからである。
次に以下の例を考えてみよう。
(25) a. It'sgoing to raintomorrow.
t
It's raining tomorrow.
cf.
It'・s
raining
now.
「明日雨が降る」という出来事を「前もって考えられた計画・予定」とみなすことは全く不可能
である。誰も雨を降らすという計画はたてられないのであり、実際に降らすこともできないので
ある。
また、次のような例が見られる。
(26) a. "But even when our brand is fashionable, it's still going to rain, and even when our
brand is not fashionable, it's still going to be cold.
-Time, Nov. 29th, p. 25
It's still raining.
例(26a)では、 'goingtoに'still'を伴っており、このような例はあまり見られないOそれに
対して、例(26b)のような例は一般的である。そこで、例(26a を考える際に、 1.2節で述
べた生成文法の理論を用いる。すなわち、例(26a)は「雨が降る」 (この例では比倫的な意味
である)という出来事が起こるであろうことを強調しているのである。進行相は、基準時におい
てのみ起こり得る現象を示すということを述べた。また、 `still'を用いることにより、この基準
時の幅を広げているようである。そのため、例(26b は「まだ降っていない」という意味にな
り、そして例(26a)は「まだ降ろうとしている」という意味になる。現在という基準時におい
てのみ成立する「徴候」を示すというbegoingtoの構文において、その表わされる出来事が起こ
り得る可能性は未来時にも広がるのである。
n wmとbe going toの比較
一般に、 willは未来を表わす助動詞と考えられている。しかし、 willはモダリティーを示す法
助動詞なのである。モダリティー(modality)とは『新英語学辞典』によると、 「叙述内容に関
する話者の心的態度を文法的手段によって表わしたもの」と定義してある。また、すべての法助
動詞には2種類の用法があり、それぞれに異なる意味を持っている。その2つの用法とは、 「認
識的用法」 (epistemicuse)と「根源的用法」 (rootuse)である。そして、 willには認識的意味
として「予測」 (prediction)、また根源的意味として「意志」 (volition)が与えられている。し
ばしば、学校文法で「∼だろう」、 「-するつもりである」と教えられるものである。
そして、どの法助動詞も根源的意味がその語の本来の意味であり、そこから認識的意味が派生
したものと考えられる。そのため、 willに関しても「意志」がもともとの意味で、それから「予
英語の未来表現について
測」という意味が派生したのである。さらに、この「予測」という意味は、現在時の予測だけで
なく、未来時における予測も表わすようになり、今では一般的な「未来性」 (futurity)という意
味も持つようになったのであろう。
ところで、 willとbegoingtoはそれぞれ未来だけでなく、それぞれ「意志」あるいは「意図」
を表わしている。そして、どちらの表現も元から未来を意味してはいない。しかし一般には、こ
れらは英語には存在しない「未来時制」の標識と思われている。この節ではwillとbegoingi を
意味と用法から比較をしてみようと思う。
まず例(1)と(2)を見てみよう。
1 ) Tomorrow is going to be another hot day. Temperatures will be around 30 degrees by
mid-morning and there will be very little wind.
-Close 1975 : 255
2 ) The night's going to be rather cloudy, but most places will remain dry. The temperature
will fall around 4 C. near the coast,.
-Wekker 1976 : 125
どちらの例も天気予報である。そしてどちらの事例においてもbegoingtoが最初に現われ、続い
てwillが用いられている Palmer (1990 : 146)は「臼EGOINGTOは未来時を現在時と関連付けるこ
とによって状況を設定する。しかし、一度状況が固定されるとWILLが用いられる」と述べている。
例(1)、 (2)においてbegoingtoは「明日」 (tomorrow)あるいは「夜」 (thenight)について
の状況を設定するために使われている。そしてその状況が決まってしまうとwillが現われる。
またPalmer (1990: 144)によると、 begoingtoは現在の視点からの未来を表わしているという。
言い換えると、 begoingtoは未来時を現在時と結び付けるために使っているのである。そのため、
be going toは「現在志向」 (presenLorientation)で、それに対してwillは「未来志向」 (furureorientation)と考えられている。この2つの術語はMclntosh (1966 : 306)に見られる。
しかし、次の例では同じ文の中でwillがbegoingtoより先に現れている。
3 ) Come on, we'/( catch Biff, and, honey, we're going to paint this town!
-DS 91
例(3)では、 willは未来時の「予測」ではなく、 「我々がBiffをつかまえる」という主語の「意
志」を表わしているようである。 -一一一方、 begoingtoは「ばか騒ぎをする」という「意図」を示し
ている。この場合、 begoingtoは未来時と現在時を結び付けているようには思えない。そして、
begoingtoで表わされる「意図」は、現在においてのみ存在するものであると考えることができ
る。これは、 1.2節で述べた尾野のアプローチを応用したものである。しかし、 「ばか騒ぎをする」
という意図により未来時において我々はそうすることもできるのである。というのは、 begoing
toが現在の視点からの未来を表わしているからである。
ところが、 begoingtoで表わされる未来時の出来事は実際起こらないかもしれないのである。
なぜならbegoingtoが現在の「意図」のみを表わしているにすぎないからである。例(3)につ
いて言うと、今からBiffを追いかけて行くであろうが、その後ばか騒ぎをするかどうかは分か
託 見 千 秋・米 倉 縛
10
らないのである。それゆえ、 begoingtoで表わされる出来事はwillより確実性が低いのである。
このことはLeech (1987 :70)でも述べられている。彼は確実性の度合いによって未来の表現を
次のように分類している。
1 現在時制
(最も確実である)
2 will/shall +動詞の原形不定詞
will/shall +進行相
(最も確実でない)
3 begoingto 動詞の原形不定詞
現在進行相
同じことが次の例でも言える。
4) a. I'mgoingtobeaprofessorwhenIgrowup.
b. rJI beaprofessorwhenIgrowup.
一尾野1990:23
例(4a)は「私が教授になる」という現在の「意図」を表わし、例 4b)は「私はいつか教
授になるかもしれない」ということをほのめかしているにすぎない。また、 willは遠い未来の出
来事をも言及できる。それゆえ、 willで表わされる「私が教授になる」という可能性はbegoing
toよりも大きいのである。というのは、例(4b)では例 4a)よりも私が教授になるために
長い時間が費やされ得るのであるO なぜなら、 Leechの分類からも分かるように、 willで表わさ
れる出来事はbegoingtoよりも確実なのであるO
しかし、次の例はどのように考えるとよいのだろうか。どちらも殺人をほのめかす脅迫状であ
る。
The first letter ran as follows :
'Though you'd doublecross us and get away with it, did you? Not on your life. Were
out to GET you, Ratchett, and we WILL get you!
-MOE 52
この脅迫状に続いて、 2通日の手紙も届く。
(6)
…
Poirot
picked
up
the
second
letter.
`We're going to take you for a ride, Ratchett. Some time soon. We'γe going to GET you,
see?
-MOE 52
どちらの例においても、 「我々はおまえを殺す」ということを未来表現を用いて表わしているの
だが、最初の手紙ではwillを用い、次の手紙ではbegoingtoを使っている。先ほどの、 willが遠
い未来を表わすという考えからいくと、例(5)ではただ漠然と「未来のいつか」ということを
表わしているように思える。ところが、例(6)では'soon'という表現からも、とても近い将来
英語の未来表現について
ll
のことを表わしているようである。いわゆる「近接未来」の表現である。したがってこの場合は、
Leechの確実性の分類にあてはまらないかもしれない。あるいは、例(5)のwillは、根源的意
味の「意志」を示しているとも考えられる。
さて、 Binnick (1972:3)によると助動詞のwulを伴う文はしばしばそのままでは「省略的」
(elliptical)であるように感じられるという。次の例を見てみよう。
7 a The rock・// fall.
The rock is going to fall.
-Binnick 1972 : 3
例(7 b)のようにbegoingtoを含む文はいつもそのままで完結しているが、 willは省略的であ
る。ところが、 if節のような副詞節が生じると例(7a)は文法的に可能になる。
(7) c. Therock'Jl fall ifyoupull thewedgeoutfromunderit.
-Binnick 1972 : 3
あるいはあるコンテクストが与えられても例(7a)は文法的に可能になる。
(7) d. Don't pull the wedge out from under that boulder, you nitwit!
The rockJJ fall.
-Binnick 1972 : 3
これらのことは、よくwillが条件文の帰結節に現れるということと、関係があるかもしれない。
また、上で述べたようにwulは法助動詞であり、必ずモダリティーを示す。認識的意味の「予言・
未来性」を表わすためには法助動詞willはある条件性を必要とするようである。そのため条件
節を伴わないとwillを含む文は「省略的」に感じられるに違いないのである。
同じような例がほかにも見られる。
i) a. Biff, first thing we gotta do when we get time is clip that big branch over the
house. Afraid its gonna fall in a storm and hit the roof.
-DS 21
ここでは口語的表現のbegonnaが用いられている。例 a)は家の上に大きな枝が覆いかぶさっ
ていて、嵐の時にはその枝が落ちてきそうだという現在の「徴候」のみを示している。ところが、
この例でbegonnaの代わりにwillを用いると、 「もし嵐がくると」という条件性が前面に現れて
くる。
;) b. it'JJfallin astorm.
託 見 千 秋・米 倉 緯
12
従って、枝が落ちてくる可能性は、現在においてはbegoingtoを用いた例(8 a)の方がwillを
用いた例 b)よりも高いが、未来においては例 b)の方が枝が落ちる可能性も危険性も
冒L5B
また、 begoingtoはよく帰結節で用いられる。この場合、 begoingtoはwillとは異なる意味合
いを持っている。
(9) a. Theiceisgoingtomeltwhenthesuncomesout.
b. Theice will meltif the sun comes out.
-Hornby 1975 : 200
非人称の主語が:goingtoと用いられると必ず「現在の原凶の未来での結果」を意味して、未来
の出来事の「徴候」を表わす。つまり、例(9a)は太陽が出てくるときには氷が解けるという
「徴候」を示しているだけなのである。ところが、例(9b)では氷が解けるということは太陽
が出てくるかどうかにかかっているのである。
また、同じような例がある。
(10) a. When the sun sets, we'll be frozen.
When the sun sets, were going to be frozen.
-Binnick 1972 : 4
例(10a)では、 「我々が凍死する」という出来事は日の入りに依存している。太陽というもの
は絶対に沈むものであるが、例(10a)は「もし太陽が沈まなければ我々は凍死しないかもしれ
ない」と解釈することができる。また、 『ラーナ-ズプログレッシブ英和辞典』は例(10b)に「太
陽が沈むころには凍死しかけていることだろう」という日本語訳を付けている。そして、例(10
b)では「我々が凍死する」という出来事は「実現の可能性が高い」とも言っている。さらに、
初めに述べたことと同じであるが、例(10a には「太陽が沈めば(それが理由で)凍死してし
まうであろう」という日本語訳を付けている。そして、例(10a)は客観的で、それに対して例
(10b)は主観的であるとも言っている。この例においては、 begoingtoを用いた方が確実性が
高く、先ほどのLeechの分類とは矛盾してしまう。
さて、しばしばwiuは条件節では生じないと言われている。ところが条件節にwillが生じる
こともあり、その時は「意志」、すなわちモダリティーの「根源的意味」を表わすのである。
(ll) Poirot pushed a sheetof paper across to him.
'If you will sign this, and put your permanent address, pie
-MOE 131
(12) 'If you will forgive my saying so, it seems somewhat of a waste of time.
-MOE 134
しかし、 begoingtoは条件節でよく用いられる。
英語の未来表現について
l.X
(13) `Ifwearegoingto accept it as true, we must see if there is any confirmation of it.I
-MOE 147
(14) "Harry, you must eat a solid breakfast," Janice calls, "if you're going to play golf
right through lunch.
-RR 43
(15) The train stops suddenly, throwing passengers forward. As though it just remembered
that this was the stop where Joe needs to get off if he is going to find her.
-Jazz 181
(16) If I'm going to take a fade the boss can call any number where I'm supposed to be and
they'll swear to him that I just left.
-DS48
Palmer (1990 : 146)は「未来時を言及するために」begoingtoは条件節に生じると言うが、例(13)
から(16)ではbegoingtoは未来時を表わしているのではなく条件節の主語の「意図」を示して
いるように思える。
荒木他(1977:436)によると、 begoingtoも「予言」と「意図」という2つの意味を持って
おり、前者の「予言」は認識的意味として、後者の「意図」は根源的意味として考えられている。
つまり、荒木他はbegoingtoをwillなどのように法助動詞として扱い、 「認識的」と「根源的」
の2種類の法的意味を与えているのである。このことは、 Coates (1983:198)でも述べられて
い/^)、_
したがって、条件節におけるwillとbe going toについて次のようにまとめることができそう
である。もし条件節でwillが用いられると、そのwillは未来性ではなく「意志」を表わす。そ
して、条件節にbegoingtoが現れると「意図」を示す。 「意志」も「意図」もそれぞれの表現の
根源的意味として考えられているものである。それゆえ、条件節内では必ず、法助動詞は根源的
助動詞として用いられているのである。
i*m,pM3m華
今まで述べてきたことから、次のようなことが言える。未来を意味する現在進行相はしばしば
人間の主語をとり、そして話者の「意図」ではなく既に決められた「計画・予定」を表わしてい
る。それに対して、 begoingtoは人称主語の場合は、話者の「現在の意図」を示している。さら
に、 begoingtoはある出来事が起こるという「徴候」を示しているとも考えられる。また、未来
を示す代表的な表現である、 willとbegoingtoもそれぞれ異なる用法を持っていることも分かっ
た。例えば、 willはそのままでは「省略的」であると述べた。このことは、 willが必ず何か条件
性を持たなければならないことから説明できる。そのため、純粋に未来表現といえるものは、現
i
代英語ではbegoing toだけかも知れない、 。
注
1)尾野はvander Laan (1922,斎藤1949 : 20)の「直接観察」 (DirectObservation)と、細江(1931 : 131)
託 見 千 秋・米 倉 緯
14
の「集注叙述」の考えを受け継いでいるという。
2)記号βはその場所が「空」 (empty,)であることを示す。また、例(6)のように文の前にある星印(*)
はその文が文法的に誤り、非文法的であることを示す。さらに、例(7)にある記号Jは「痕跡」 (trace)
e」3J!
3)歴史的に見ると、古英語期[500年-1100年]では現在時制で未来を表わしていた。
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Ih
The Future Expressions in English
With Special Reference to be going to
Chiaki Takumi and Hiroshi Yonekura
(Department of English, Nara University of Education, Nara 630, Japan)
(Received April 13, 1994)
There are some expressions referring to future time in English because English has no
`future tense'equivalent to that of Latin or French. In general, English has six types of future expressions. However, all of the expressions do not indicate the same meaning. Each of
the expressions has some different usages.
The progressive aspect originally refers to `action in progress' and when it expresses
futurity the present progressive means 'future arising from present arrangement, plan or programme.
The combination of be going to with the infinitive generally has two meanings : 'future
fulfilment of a present intention'and `future result of a present cause. In this paper we make
it clear that be going to implies `intention'and sign.
The modal auxiliary will always means `modality'. The type of `modality can be divided
into two : 'root'and `epistemic'. Each type of `modality has a specific meaning ; with respect
to will the root modality means `volition and the epistemic modality means prediction.
The event expressed by the present progressive can never be changed by anyone. And
be going to only indicates the present 'sign that the event expressed by be going to will occur
or
the
speaker's
`intention'of
present
time.
It
is
一east
certain
whether
the
event
referred
to
by these two expressions will really happen.
The construction be going to is regarded as 'present-oriented , whereas mil as 'futureoriented' In order to connect future time with present time be going to occurs first, and then
will follows.
The sentence containing mil is considered as `elliptical'without a conditional clause. The
auxiliary will frequently occurs in the apodosis, because will needs some conditionally.
While will is rare in the protasis, be going to is often used there. In this case, will or be going
to expresses the meaning of root modality.
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