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特定高齢者の転倒・認知症予防に対する集団作業

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特定高齢者の転倒・認知症予防に対する集団作業
○平成21年度奨励研究
「Square-Stepping Exercise(SSE)を用いた転倒・認知症予防教室に参加した独居女性
と同居女性の抑うつと社会交流に関する検討」
作業療法学科 助教 真田 育依
1.研究目的
高齢者の抑うつは社会的な注目を集めており,その要因についても多くの研究がなされている.抑うつの要
因の1つに家族構成があげられており,特に独居高齢者への抑うつへの介入は必要であると言われている.そ
のため,健康増進および介護予防事業として転倒予防教室や認知症予防教室を開催する地域が多くなってき
ているが,心身機能の向上と共に,抑うつ改善や予防も教室の大きな目的になっていることが多い.
本研究の目的は,効果的な作業療法介入にあたり,転倒・認知症予防教室に参加した在宅高齢者の独居と
同居女性の抑うつと社会交流の関係ならびに地域における健康増進事業開催時における両群の特徴を検討
することである.
2.研究方法
対象者は24名(平均年齢71.5±3.8歳 年齢幅65-79歳)であり,同居群17名(平均年齢70.7±3.2歳 年齢幅
66-76歳)と独居群7名(平均年齢73.3±4.6歳 年齢幅65-79歳)とした。対象者はすべて以下の3条件を満たす
者であった.
1)茨城県K市K地区およびT地区在住の在宅高齢者
2)健康増進事業および介護予防事業にて毎週開催される運動教室に3ヶ月間継続参加したもの
3)説明の上,同意が得られたもの
評価尺度は,抑うつ度(Geriatric Depression Scale:以下GDS)と社会交流尺度(Lubben Social Network
Scaleの一部抜粋:以下社会交流度)である.社会交流度は質問の一部である①家族や親族との交流について
と②友人や隣人との交流についてを点数化した.
教室の頻度は週1回,2時間であった.
プログラムは,①ウォーミングアップ②大藏らが開発したSquare-Stepping Exercise(SSE)を用いた転倒・認知
症予防プログラム③ボールやタオルを使用したゲーム感覚を取り入れた集団体操④クールダウン⑤骨格標本を
用いた健康講話から構成されていた.
対象群全体のGDSと社会交流度(家族や親族および友人や隣人との交流),および対象者を独居群と配偶
者との同居群(以下同居群)に分けて,それぞれのGDSと社会交流度について相関関係を検討し,相関が高か
った社会交流に対しては,さらに各社会交流度の質問について分析した.また、両群の教室前後のGDSについ
ても比較検討した.
3.研究結果
GDSと家族・親族との交流については,全体ではr=-0.25,独居群ではr=0.51,同居群ではr=-0.43で
あった.GDSと友人・隣人との交流については,r=-0.60,独居群ではr=-0.39,同居群ではr=-0.66であ
った.比較的GDSと相関の高かった友人・隣人との交流に関して,さらに下位質問について分析した.GDSと
友人の数については,全体ではr=-0.56,独居群ではr=-0.20,同居群ではr=-0.63であった.GDSと連
絡をとる友人の数については,全体ではr=-0.57,独居群ではr=-0.39,同居群ではr=-0.61であった.G
SDと親しい友人と会う・連絡をとる回数については,全体ではr=-0.40,独居群ではr=-0.30,同居群ではr
=-0.44であった.
教室前後のGDS得点は、同居群の平均値は4.25±2.93から3.56±3.56、独居群の平均値は4.38±2.93から
3.25±1.91となり両群とも改善しているが、有意差は認められなかった。
4.考察(結論)
同居群の友人や隣人との交流は抑うつと比較的高い相関をもっている可能性が示唆された。これは「独居高
齢者の抑うつには注意が必要である」といった専攻研究の知見とは異なる視点の示唆が得られた。
つまり、健康増進・介護予防事業においては、独居群以上に、同居群に対する心理社会機能の賦活の視点
を必要とすることが示された。このことは本教室のプログラムが、有意差は認められなかったが、独居群以上に同
居群の抑うつへの効果的アプローチとなりうることが推測された。
教室運営における仲間つくりは必須であり、そのためにも地域における作業療法士のプログラム立案・進行に
果たす重要性が示唆された。
5.成果の発表(学会・論文等,予定を含む)
第44回日本作業療法学会(仙台)にて発表予定
6.参考文献
1)浅川達人,安藤孝敏:高齢者の情緒的一体感に関する研究-親密性を基に生起する関係と親密性によらな
い関係とは-,東海大学健康科学部紀要,4,25-29,1998
2)福澤陽一郎,石橋照子,吾郷ゆかり,有田茂夫,小中綾子:漁村部の高齢者のうつ状態の背景要因と対策
上の課題,島根県立看護短期大学紀要,6,149-154,2001
3)津軽谷恵,湯浅孝男:老人クラブ所属の在宅高齢者における精神的健康度について,秋田大学医学部保健
学科紀要,12(2),114-120,2004
4)吉本隆明,天野直二:認知症の予防 うつ病,臨床と研究,85(4),538-542
5)前田雅也,佐藤新:単身高齢者の抱える問題-自殺とうつを中心に-,老年精神医学雑誌,15(2),162-
168,2004
6)和泉京子,阿曽洋子,山本美輪,福島俊也:「軽度要介護認定」高齢者のうつに関連する要因,老年社会科
学,28(4),476-486,2007
7)村田千代栄,近藤克則,平井寛,吉井清子,末盛慶,竹田徳則,尾島俊之:地域在住高齢者における結婚
生活満足度と抑うつの関連,老年社会学,29(2),207,2007
8)出村慎一他:地方都市在住の在宅高齢者における抑うつと生活要因との関係,日本生理人類学会誌,8(2),
1-5,2003
9)村木敏明:地域在住高齢者における健康関連の生活の質と日常生活身体活動量評価の検討-男性と女性
との相違に関する一考察-,日本ジェンダー研究,3,17-29,2000
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