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レジデント初期研修用資料 内科診療ヒントブック 改訂2版
第 3 章 呼吸器系の問題 第 43 3章 呼吸器系の問題 43 44 第 3 章 呼吸器系の問題 3.1 ゼーゼーする . . p.45 気管支喘息 病歴聴取 . . p.93 アナフィラキシー 血圧低下 . . p.54 緊張性気胸 . . p.56 心不全 BNP . .p.184 腎不全 . . p.10 急性喉頭蓋炎 頸部/胸部 CT 血液生化学検査 . .p.250 好酸球増多症 . . p.47 Churg-Strauss ANCA アレルギー性肺アスペルギルス症 . . p.48 好酸球増多 X血圧を確認する。アナフィラキシーと緊張性気胸で血圧が低下する。緊急 の対処が必要になる X動脈血酸素飽和度を確認する。酸素吸入を開始する。いかなる疾患におい ても酸素投与は禁忌にならない ■ アナフィラキシーと喘息は診断できない 高頻度な疾患であるにもかかわ らず、診断できる検査は事実上存在しない†1 。 喘息の発作は繰り返すため、患者さんに「喘息の発作ですか?」と尋ねてみ ることが診断に役立つ。 ■ 頸部/胸部画像診断 頸部から胸部にかけてのスライスをお願いする。 . に伴う気道狭窄の診断ができる。緊張性気 . p.10 頭頸部腫瘍や喉頭蓋炎 . は CT で必ず見つかる。腎不全、心不全で胸水と肺うっ血を認める。 . p.54 胸 気管支喘息に肺うっ血を合併することは少ない。 ■ 血液生化学検査 s Churg-Strauss 症候群/ABPA/好酸球増多症候群 ⇒ 好酸球 ↑ ESR↑ CRP↑ s 尿毒症 ⇒BUN↑ CRE↑ s 喉頭蓋炎 ⇒WBC↑ 好中球 ↑ CRP↑ †1 誘発試験はある 3.1 ゼーゼーする 45 N 分からなかったら 原因がはっきりしない喘鳴に対して、まずは胸部 CT にて気胸の除外 診断を行う。酸素投与と気管支拡張薬の吸入を行う。気管支喘息に準 じた治療を開始、落ち着いたら血液生化学検査、BNP、IgE、抗核抗体、 MPO-ANCA、PR3-ANCA、好酸球数、アスペルギルスに対する IgE、IgG 抗体を提出する。 気管支喘息と心不全は合併することもある。鑑別診断が難しいことも 珍しくない。それぞれの治療は、お互いの疾患に悪影響を与えることは ないので、分からないときは酸素投与、利尿薬、血管拡張薬、気管支拡 張薬、ステロイドのすべてを投与して経過を見る。「分からないなら全 部やって挿管」と割り切っても、基本的には問題ない。 気管支喘息 ~ s 外来に呼吸困難を主訴に来院する患者さんの 1/3 は気管支喘息 s 鼻粘膜の腫脹、鼻茸†2 、アトピー性皮膚炎のある患者さんにはより高率に 合併する s 過去に重篤な喘息発作を生じた人は息苦しさに対する感覚が鈍くなってい る。症状と発作の重症度は相関しない s 上気道の閉塞、COPD . 、アレルギー性肺アスペ . 、気管支拡張症 . p.70 . p.52 . 等が鑑 . . . p.47 . p.69 . p.48 ルギルス症 、器質化肺炎 、Churg-Strauss 症候群 別診断の対象になる [1] ■ 検査 s 血液生化学検査、胸部画像所見を提出する。いずれも正常値をとる†3 s 鑑別診断のため、初発あるいは再発を繰り返す患者さんについて、血液生 化学検査、好酸球数、BNP、赤血球沈降速度、IgE、ANCA、アスペルギ ルス抗体を提出、頸部 CT スキャンにて上気道狭窄の有無を確認する ■ 治療 s 今までに「気管支喘息」という診断を受けている患者さんに対して、まず は気管支拡張剤の吸入を行う。中等症の場合、以下を 20 分ごとに繰り返す †2 本態はアレルギー性鼻炎により粘膜が腫脹したもの †3 . を見ている可能性が . p.48 浸潤影を伴う気管支喘息は、肺炎の合併や、アレルギー性肺アスペルギルス症 ある 46 第 3 章 呼吸器系の問題 s サルタノール .R. 6-12 パフ†4 を、スペーサーを用いて吸入 s サルブタモール(ベネトリン .R. ) 0.3-0.5 ml + 生食 5 ml をネブライザー で吸入 s 重篤な発作†5 の場合も、吸入の治療が中心となる s サルブタモール 0.5-1 ml + 生食 5 ml をネブライザーで 20 分ごとに 吸入 s サルブタモール 2-3 ml + 生食 10 ml を 1-2 時間かけて吸入 s これに加えて、イプラトロピウム(アトロベント .R. )†6 4 パフを、スペー サーで 20 分おきに吸入 s 気管支拡張薬を開始するとともに、1 mg/kg のメチルプレドニゾロンを 6-12 時間おきに点滴静注する s 非常に重篤な発作では、心電図モニター下にエピネフリン 0.3 ml の皮下注 を行う s 入院経過中、急激に状態の悪化した喘息患者さんに気胸が合併することが ある。迷ったなら胸部単純 CT で確認する ■ 喘鳴発作中の酸素投与 気管支喘息発作であっても、発作が遷延して呼吸筋 が疲労すると CO2 の貯留を生じうる。 CO2 ナルコーシスと異なり、呼吸筋が疲労した状態に対して投与酸素量を減 量しても、患者さんの状態はむしろ悪化して呼吸停止を生じる可能性がある。 喘鳴発作の患者さんについては、「SpO2 90 ちょうどを目標に酸素投与。意 識が悪くなったり、患者さんの疲労が強ければ早めに挿管」と考える。 ■ アスピリン喘息 s NSAIDs の内服直後†7 に重篤な喘息発作を生じる。鼻汁や鼻閉が先行する ことが多い s 心電図モニター下にエピネフリンの筋注を用いる。ステロイドの急速静注 が禁忌になる。生食等に溶解して点滴する s エピネフリン(ボスミン .R. )0.1-0.3 ml の筋注をまず行う†8 。酸素投与を行 . いラインを確保、デカドロン R. 8 mg の点滴静注を行う s .. R なるべく早期にオノン などのロイコトリエン拮抗薬を内服してもらう †4 この使いかたは「強い」という指摘をいただいた †5 呼吸数 30 回以上、脈拍 120 以上は重症発作 †6 β 遮断薬内服による喘息発作のときにはこの薬が大切 †7 外用薬でも発作を生じうる †8 複数回行ってよい 3.1 ゼーゼーする 47 s NSAIDs 内服後数時間は発作が再発する可能性がある。入院による経過観 察が必要 s ソルメドロール .R. 、ソルコーテフ .R. 、サクシゾン .R. のようなコハク酸エステ .. R .. †9 R ル型のステロイドはなるべく避ける。リンデロン 、デカドロン 等を用 いる ■ 気管支拡張薬に対する反応が乏しい場合 s テオフィリン 250 mg/1A†10 + 生食 100 ml 1 日 2 回点滴静注†11 s 硫酸 Mg 2g + 生食 100 ml を 1 日 1 回点滴静注。2 日間まで。Mg には平 滑筋弛緩作用が期待できる s ステロイドを経口分割投与に切り替える。ステロイドの投与ルートは経口 のほうが効率が高い [60] ■ 17 時に挿管の適応を考える 患者さんが入院した当日、17 時になっても症 状の改善が得られなかったら積極的に気管内挿管を考慮する。喘息の患者さん に気管内挿管を施行するには人手が必要で、気管支喘息は夜間になると増悪す る。17 時というのは手技の上手な先生方を複数コールできる最後のタイミン グなので、ここで決断しないといけない。 ■ 喘息患者さんの挿管 気管内挿管は難しい。喘息患者さんは気管が過敏で、 咳嗽反射が強い。若い人が多く、呼吸困難が強いので、鎮静が効かない。1 回 目の挿管に失敗すると、気管の収縮が強くなってしまい、非常に危険な状態に なる。 . 等の鎮静用薬剤に加えて、筋弛緩剤†12 を用意してもらうこ . p.63 ミダゾラム と、無理しないで細めの挿管チューブ†13 を用いること、科を問わず多くの人を 集め、一番上手な人にやってもらうことを心がける。 通常の気管内挿管に比べて血圧低下のリスクが高いため、事前に十分な補液 を行う [1] Churg-Strauss 症候群 ~ s 小-中動脈に生じる血管炎 . の一つで、気管支喘息症状、副鼻腔炎、咳 .p.307 を生じる [8] †9 8 mg を 6 時間ごとに開始、以後漸減する †10 外来ですでに内服中の患者さんであれば、1/2A でいい †11 古典的な治療ではあるものの、効果のある患者さんはいる . . †12 たとえばベクロニウム(マスキュラックス .R ) 0.08-0.1 mg/kg またはロクロニウム(エスラックス .R ) 0.6-0.9 mg/kg を静注 [32] †13 男性なら内径 7.5 mm-7.0 mm 48 第 3 章 呼吸器系の問題 s 発熱、全身倦怠感、体重減少といった非特異的症状を呈する [2] s 成人に初発した好酸球増多 . を伴う喘息として発症することもある [4] .p.250 s 複合性単神経炎†14 、触知できる紫斑、関節痛を見る。心不全を合併するこ ともある s 腎機能障害は比較的少ない [30] s 神経炎に伴うしびれ感、関節痛、筋痛、脱力が初診時の主訴になることも ある ■ 検査 s 血液生化学検査、好酸球数、BNP、IgE、抗核抗体、RF、MPO-ANCA、 PR3-ANCA、好酸球数、アスペルギルスに対する IgE、IgG 抗体†15 を提出 する。胸部 CT スキャンを施行する s 好酸球の増多を生じる。白血球数の 10% 以上になることは珍しくない [1] s 白血球増多、CRP 上昇、赤沈の亢進を見る [22]。血小板増多を生じること もある [56] s 血清 IgE が増加する。MPO-ANCA が 50-70% で陽性になる。抗核抗体 やリウマチ因子が陽性になることもある [30] s 補体は正常、あるいはわずかに増加する [22] s 胸部 CT で気管支壁の肥厚像、浸潤影を見る。好酸球性肺炎 . に準じ .p.251 た、胸膜に沿った斑状のスリガラス影を認める ■ 治療 s 通常プレドニゾロンを 40-60 mg/日より開始し漸減していく s CRP の陰性化を目標にしながらステロイドの量を調整する s 劇症の血管炎にはステロイドパルス療法、シクロフォスファミド(エンド . キサン R. ) 1 mg/kg/日の内服を併用する アレルギー性肺アスペルギルス症 ~ s コントロールが困難な喘息発作、喀痰、発熱を訴えて来院する s 喘鳴に加えて発熱や倦怠感、喀血を伴うこともある s 結核とまぎらわしいことがある ■ 検査 s 血液生化学検査、好酸球数、IgE、抗核抗体、MPO-ANCA、PR3-ANCA、 好酸球数、アスペルギルスに対する IgE、IgG†16 を提出する。喀痰の培養/ †14 末梢のしびれ感や歩行困難、麻痺を生じる †15 保険未収載 †16 . ではアスペルギルス抗原の上昇を見る . p.77 保険未収載。アスペルギルス感染症 3.1 ゼーゼーする 49 抗酸菌培養/細胞診を提出する。胸部 CT スキャンを施行する s 好酸球増多を生じる。血清 IgE が高値になる [8] s アスペルギルスに対する即時型皮内反応†17 が陽性になる s CT スキャンでは中枢側の気管支拡張を見る。上肺野を中心とした浸潤影 が出現することが多い [2] ■ 治療 s 気管支喘息に準じた治療を行う。1 mg/kg/日のプレドニゾロン内服を開 始し、数ヶ月かけて漸減していく s ステロイド依存例ではイトラコナゾール(イトリゾール .R. ) 200 mg/分 1 の投与を並行して行うと、発作回数の減少と呼吸機能の改善が期待できる [3] s より改良されたボリコナゾール(ブイフェンド .R. )の内服薬 . が、これ . p.78 から広まっていくといわれている †17 侵襲性肺アスペルギルス症はアスペルギルス抗原で診断する 50 第 3 章 呼吸器系の問題 3.2 息が苦しい . . p.54 気胸 胸部写真/CT スキャン . . p.52 COPD . .p.124 収縮性心膜炎 BNP . . p.56 心不全 . . p.54 肺塞栓 肺高血圧症 D-dimer . . p.59 . .p.251 急性好酸球性肺炎 過敏性肺臓炎 心エコー 喫煙歴 . . p.69 . . p.64 間質性肺炎 . . p.10 喉頭蓋炎 血液生化学検査 . .p.239 貧血 . . p.92 敗血症 . .p.200 ケトアシドーシス 血液培養 血糖値 血液ガス . .p.322 一酸化炭素中毒 . .p.110 頻拍性不整脈 . .p.219 神経筋疾患 心電図 筋電図 . . p.45 気管支喘息 病歴聴取 X酸素吸入を開始する。たとえ酸素飽和度が正常でも、呼吸苦を訴える人か ら酸素を取り上げてはいけない X「単なる過換気」なのに SpO2 が 99 か 100 でないのなら、何かの疾患が隠 れている可能性が高い [46] X血糖測定と心電図のモニタリングを行う。ケトアシドーシスや不整脈は呼 吸困難を生じる ■ 動脈血酸素飽和度 血液中の酸素濃度と呼吸困難の程度とは相関しない。 血液ガスを確認することで、ケトアシドーシス、神経筋疾患による CO2 貯 留、一酸化炭素中毒による Hb-CO の増加が確認できる。 . 、神経筋疾 . 、ケトアシドーシス . 、貧血 . 、気胸 .p.200 .p.239 . p.54 . p.72 胸水貯留 . では酸素飽和度正常の呼吸困難を生じる。 . 、一酸化炭素中毒 .p.322 .p.219 患 3.2 息が苦しい ■ 胸部画像検査 51 胸部 CT スキャンを施行する。気胸の有無、胸水の有無、肺 野の繊維化、右室拡大の有無を確認する。造影すれば肺塞栓の診断ができる。 . 、ア . 、上気道の閉塞、貧血 .p.239 . p.54 胸部単純写真正常の呼吸困難は、肺塞栓 . の可能性がある [1]。 . 、ニューモシスチス肺炎†18 . p.81 .p.220 シドーシス 胸水の貯留は心不全の合併による可能性が高い。BNP 検査†19 で診断できる が時間がかかる。 ■ 心電図 . や甲 . は息苦しさを生じる。虚血性心疾患 . p.96 .p.110 頻拍性不整脈 . の原因になっていることがある。 . が洞性頻拍 .p.114 .p.314 状腺機能亢進症 ■ 心エコー 「心機能正常」であることは、心不全を除外診断する根拠になら ない。心機能それ自体よりも、右室拡大がないこと、心嚢水貯留がないことを 確認する。右室の拡大、肺動脈圧推定値の上昇が確認できたら、胸の造影 CT で肺塞栓の有無を確認する。 ■ 血液生化学検査 s 喉頭蓋炎/敗血症 ⇒WBC↑ 好中球 ↑ CRP↑ s 間質性肺炎 ⇒LDH↑ CRP↑ s 過敏性肺臓炎 ⇒WBC↑ 好酸球 ↑ CRP↑ s ケトアシドーシス ⇒ 血糖 ↑ K↑or→ s 甲状腺機能亢進症 ⇒ALP↑ chol↓ 頻拍 s 急性心筋梗塞 ⇒CPK↑ GOT↑ LDH↑ WBC↑ †18 病初期は画像所見が正常であることがある †19 感度は高いが特異度は低い 52 第 3 章 呼吸器系の問題 N 分からなかったら 血糖測定†20 と血液ガス検査を施行する。血液生化学検査、TSH/FT4 、 BNP を提出し、心エコーを施行する [9]。 迷ったら挿管する。具合の悪い、原因の分からない低酸素血症を生じ る患者さんに気管内挿管をためらう理由はない。侵襲の少ない、エレガ ントな治療にはマンパワーが必要で、救急外来では余裕が足りない。 胸部の造影 CT を施行。気胸、肺塞栓を除外診断できたら、人工呼吸 . 、 .p.260 管理とした上で、10000-15000 単位/日程度のヘパリン持続静注 ヒドロコルチゾンで 600-800 mg/日を分割投与、第三世代セフェム系抗 生剤にマクロライド、あるいはキノロン系抗生剤を併用して、血液生化 学検査の結果を待つ。 肺高血圧症が確認された場合には、原因検索のため抗核抗体、RF、 ANCA、抗 Scl70 抗体、抗セントロメア抗体を提出する。 ~ COPD s 呼吸困難で入院する患者さんの 9% を占める s 喫煙が原因になり、慢性的な喘鳴と呼吸困難、喀痰の増加を生じる ■ 検査 s 胸部画像診断、血液生化学検査/BNP を提出する。呼吸機能検査を行う s 胸部単純写真で肺の過膨脹を認める s 呼吸機能検査で FEV が 55% 以下を高度疑い症例、70% 以下を疑い症例 1.0 とする。フローボリューム曲線は呼気時に下に凸の曲線を描く s 精密肺機能検査で肺拡散能の低下、残気率の上昇†21 、肺コンプライアンス の上昇を見る s 増悪の原因を調べるために、胸部写真/CT で気胸、肺炎の有無を確認する。 虚血性心疾患や肺塞栓が呼吸困難の原因になっていることもある [7] ■ 治療 s 外来で COPD と診断されている患者さんなら、まずは気管支拡張薬の吸入 と酸素投与を行う s サルブタモール(ベネトリン .R. ) 0.5 ml + 生食 5 ml を吸入。15 分ごとに 2 回繰り返す †20 ケトアシドーシスを除外診断する †21 DL 60% 以下、残気率 50% 以上 CO 3.2 息が苦しい 53 s イプラトロピウム(アトロベント .R. ) 2 パフの吸入を追加すると相乗効果が 得られる s ヒドロコルチゾン 200 mg 程度を 1 日 3 回点滴静注、漸減していく s 酸素の流量は、SpO 90 ちょうどを目標に調整する 2 ■ 血液ガス評価のやりかた s 外来での血液ガスデータから非発作時の PaO を推定することができる。 2 この値が酸素投与の目標値になる s PaCO が 1 mmHg 上昇すると、pH は 0.008 上昇する 2 s PaO と PaCO の合計は、room air で大体 140 になる。これを利用して、 2 2 患者さんの PaO2 を推定する s 以下に具体例を示す 1. 発作時の血液ガスが pH 7.25 PCO2 90 mmHg PO2 35 mmHg BE 5 mmol/l であったとする 2. 元気なときの pH を 7.40 と仮定すると、変化分は 0.15。CO2 の変化分 は 0.15 ÷ 0.008 で、大体 20 mmHg 3. この患者さんの非発作時 PaCO2 は、90 - 20 で 70 mmHg となる 4. PO2 と PCO2 の合計は大体 140。140 − 70 で PaO2 は 70 mmHg と なる 5. 結 果 、非 発 作 時 の 推 定 血 液 ガ ス は pH 7.40 PCO2 70 mmHg PO2 70 mmHg となる ■ BiPAP の適応 s O 投与だけでは呼吸困難が取れない、CO 貯留を生じてしまう患者さん 2 2 に対して BiPAP の適応がある s マスクを装着後、IPAP 8、EPAP 4 程度から開始する。SpO 90 前後を目 2 標に酸素流量を調整する s 無理な人は我慢できない治療なので、深追いしないで挿管を考慮する ■ 気管内挿管の適応 s 意識状態が悪い、あるいは喀痰の管理が困難な場合 s 低流量酸素療法を行っても CO の貯留がコントロールできない場合 2 s 非侵襲的換気のマスク不快感が強く、継続できないとき s SpO を十分に上昇させれば傾眠がちになるので、浅い鎮静 . で挿管が . p.63 2 可能であることが多い 54 第 3 章 呼吸器系の問題 気胸 ~ s 突然生じた呼吸困難と胸痛/咳で来院する s SpO は正常であることが多い。正常であっても、呼吸困難感は強い 2 s 緊張性気胸の場合、重篤な呼吸困難や血圧低下、内頸静脈の怒脹、病側の 呼吸音消失を見る ■ 検査 s 単純写真でも診断可能。胸部 CT だと確実に診断できる s 心電図で ST-T 変化を生じうる。虚血性心疾患と症状が類似する [31] s 高齢者ではニューモシスチス肺炎 . 、肺腫瘍などを CT . 、COPD . p.52 . p.81 で探す s 腹部エコーのプローベを用いて気胸を診断†22 することもできる ■ 治療 s 緊急の脱気が必要な場合には、第 2 または第 3 肋間の鎖骨正中線上、ある いは第 4 または第 5 肋間の前腋窩線上を穿刺する [31] s 肺野の 15% 以下の小さな気胸では脱気せずに経過観察。それ以上大きなも のはチェストチューブ s 高濃度酸素を吸入してもらうと自然回復率が高くなるという [30] s ドレナージの際、ブラに刺すと致命的になる。余裕があるのなら CT で確 認してからのほうが無難 s 治療後は喫煙/航空機搭乗/ダイビングを控えてもらう s 再発率は 50% 程度と高い。胸腔鏡下ブラ切除術の適応があるので、外科に 相談する 肺塞栓 ~ s 聴診からは原因を特定できない呼吸困難として発症する [31] s 下肢の深部静脈血栓症 . で形成された血栓が肺に飛んで生じる。上肢 .p.125 の血栓が飛ぶことは少ない s 手術後の臥床後、初歩行で生じる例や、食思不振/脱水の患者さん、ICU に 入室した患者さん、脳梗塞で入院した動けない人に好発する s 経口避妊薬の内服、高血圧の既往、喫煙がリスク因子になる s 100 回/分以上の頻脈は肺塞栓の診断を支持する因子の一つ s 塞栓が大きな場合には、血圧の低下、末梢の循環不全や低酸素血症を伴う [2] †22 気胸になると胸膜の動きが消失する、あるいは胸膜のアーチファクトが消失する 3.2 息が苦しい 55 ■ 検査 s 胸部の造影 CT スキャンを施行する。心電図、心エコーを施行する。血液 生化学検査、D-dimer、PT/APTT、抗核抗体、プロテイン C、プロテイン S、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントを提出する s 胸部造影 CT にて、肺動脈内の血栓が証明†23 されれば確定する s 心電図の SIQIIITIII パターン、右側胸部誘導の T 波の陰転化、心エコーで 肺高血圧、右室の拡大を見る s 心エコーの特異度は低いが、感度は高い。右室圧の推定を行うとともに、 心嚢水や大動脈解離の検索を行う [2] s D-dimer が正常値であれば、肺塞栓の診断は高い確率で否定†24 できる s 血清トロポニン I、トロポニン T、BNP も肺塞栓急性期には上昇している s 落ち着いてから凝固異常 . と悪性腫瘍の検索を行う。 . p.21 s ワーファリンの内服を継続する必要があるため、状態が落ち着いたら上部/ 下部消化管内視鏡を行う ■ 治療 s 診断がついた時点ですぐにヘパリンを開始する。p.261 も参照 1. 十分量の酸素を投与する。酸素飽和度が正常になっても呼吸困難感は 取れないことが多い 2. まずはヘパリン 5000-10000 単位をボーラスで静注 3. その後ヘパリン 10000 単位 + 生食 90 ml を 5 ml/h 程度で開始 4. 以後 APTT で 60 秒前後を目標にヘパリンの量を調節 5. 経口可能になったらワーファリンを 5 mg/日から開始し、数日ごとに PT をチェック。PT-INR が 2-3 に入ったらヘパリンを中止しワーファ リンの量を調節する。p.263 も参照 s 血圧低下の合併した患者さんに対して補液を行う。ドパミン . やノル . p.90 . を併用する . p.90 アドレナリン ■ 血栓溶解療法 s ショックを伴う症例、ヘパリンに対する反応が悪い患者さんに適応がある。 p.98 も参照 s 2% の患者さんで出血の合併症を生じる。6 週間以内に手術を行った患者さ ん、コントロールされていない高血圧の患者さん、2 ヶ月以内に脳卒中を 生じた患者さんには禁忌 [1] †23 感度 60%、特異度 80-97%。CT の陰性的中率は必ずしも高くないので、血栓が証明できなかった場合で も、肺塞栓が疑わしい場合には治療の適応となる [1] †24 感度 97%、特異度 45% 程度 56 第 3 章 呼吸器系の問題 s アルテプラーゼ(アクチバシン .R. ) 0.6 mg/kg = 34.8 万単位/kg を準備、 全量の 10% を 1-2 分で投与し、残りを 1 時間かけて点滴静注する。50 kg の患者さんで、この量は 1740 万単位。添付文書上の最大量は 43.5 万単 位/kg で、これだと 2175 万単位。病院に置いてあるのは 2400 万単位のバ イアルなので、体格の大きな患者さんに対しては、1 バイアルを全量投与 するケースが多いと思う s モンテプラーゼ(クリアクター .R. )を 80000 単位/ml の濃度で生理食塩水 に溶解、800000 単位/分の速度で 13750-27500 単位/kg を静脈内投与して もよい 心原性肺水腫 ~ s 呼吸困難、喘鳴を訴えて来院する。気管支喘息 . との鑑別は難しい。間 . p.45 . と診断されるケースもある . p.64 質性肺炎 s β 刺激薬やステロイドといった気管支喘息の治療薬は心不全急性期の予後 を左右しない。鑑別診断がつかなかったら、心不全と気管支喘息の治療を 並行して行う s 収縮期血圧によって治療が異なってくる。収縮期血圧が 140 mmHg 以上 の患者さんは血管拡張薬が、140-100 mmHg の患者さんは少量の血管拡張 薬と利尿薬が、収縮期血圧 100 mmHg 以下の患者さんについてはショッ . への対処が中心となる [29] . p.88 ク ■ 検査 s 心電図、胸部単純写真、心エコー、血液生化学検査/Ca、BNP、TSH/FT 、 4 HbA1c †25 、トロポニン T を確認する s 心電図上は頻脈を生じていることが多い。心筋梗塞をはじめとする虚血性 変化の有無を確認する s 胸部画像検査では胸水貯留を認める。呼吸困難と胸水の貯留があり、他の 原因がはっきりしない場合には心不全の治療を開始する s「心エコー正常」であることは、心不全でないことの根拠にはならない。心 室の動きが正常な心不全は多い†26 s 心エコーは心嚢水貯留 . といった、利尿薬や血 . や大動脈弁狭窄症 .p.105 . p.91 管拡張薬が比較的禁忌になっている心疾患を検索するのに役立つ s 血清 BNP†27 が高値をとる。心房細動や腎不全の患者さんでも BNP 上昇を †25 虚血性心疾患のリスク因子として糖尿病の合併は多い †26 40-60% の症例において心収縮力はほぼ正常 [4] †27 心虚血を引き起こすすべての病態で BNP の上昇を見る。トロポニンより当てになることもあるらしい [53] 3.2 息が苦しい 57 認める s 心筋炎の病初期は白血球増多、CRP と赤沈の亢進を認める。トロポニンの 上昇は全体の 1/3、CK-MB の上昇は全体の 10% 程度でしか認められない [1] s 心収縮力低下の原因がはっきりしなかった場合には、抗核抗体/ANCA/好 酸球数/蛋白分画/TSH/FT4 /ESR/HbA1c /レニン/アルドステロンを提 出する s くも膜下出血 . などの神経疾患が肺水腫の原因になることがある [7] . p.16 s 心臓 MRI は心機能の評価、アミロイドーシス . やサルコイドーシ .p.127 . 、心筋炎の検索に役立つ [7] . p.82 ス ■ 治療 s 利尿薬の静注、血管拡張薬の持続静注、酸素投与または CPAP マスク . 、 . p.58 心電図モニターをそれぞれ開始する s フロセミドを 20-40 mg/日程度静注、ニトログリセリン . またはカル .p.131 . の持続静注を開始する . p.58 ペリチド s 高血圧を伴っていた際には、血管拡張薬を高用量で持続静注するか、ミオ . . コールスプレー R. の噴霧、2.5-5 mg のニトロール R. 、または 1-2 mg のミリ .R. †28 スロール のボーラス静注を併用する s 心原性肺水腫が気管支攣縮の原因となることがある。β2 刺激薬の吸入が有 効 [1] s 塩酸モルヒネ 4 mg の静注には肺水腫を軽減する効果†29 が期待できる [1] s 内服が可能になったら、ACE 阻害薬†30 、フロセミド(ラシックス .R. )20 mg/ . 分 1、スピロノラクトン(アルダクトン R. ) 12.5-25 mg/分 1 の内服を開始 し、静注薬を漸減していく s K の上昇、BUN/CRE の上昇が問題になるので、このときはスピロノラク トンを減量するか中止する s 心不全の初期の症状が安定したら β 遮断薬を少量から開始する。循環器の 医師に相談する s 進行した心不全で、QRS 幅が 140 msec 以上ある左脚ブロックを生じてい る場合、左室/右室同時ペーシングの適応を検討する †28 ニトログリセリン 2mg を 3 分ごとにボーラス静注する方法が紹介されている [25] †29 入院期間を伸ばすので推奨しないと記載する教科書もある [31] . †30 エナラプリル(レニベース .R ) 2.5 mg/分 1、バルサルタン 40 mg/分 1 など。合併症として血管性浮 . を生じうる .p.128 腫 58 第 3 章 呼吸器系の問題 ■ 拡張型心筋症の原因疾患 [4] s 特発性、虚血性心疾患、心臓弁膜症によるもの以外でも、以下の疾患で心 収縮力の低下を生じる s ウィルス感染症 s アルコール . . /脚気心 . p.40 .p.164 s 低 Ca 血症 . . /低 Mg 血症 . .p.237 .p.238 .p.236 /低 P 血症 s 睡眠時無呼吸症候群 s アントラサイクリン系抗腫瘍化学療法 s アミロイドーシス . / ヘモクロマトーシス . / サルコイドーシス . p.82 .p.127 s 多発性筋炎 . / . / RA . /顕微鏡的多発血管炎 . / SLE .p.288 .p.308 .p.289 .p.277 . . p.83 Wegener 肉芽腫 s 好酸球性心筋症 . .p.251 s 甲状腺機能亢進症 . 等、頻脈による心収縮力低下 .p.314 s 一過性のストレスによる心筋障害†31 s 腎血管狭窄等 . の高レニン血症で肺水腫が突然出現することがある [2] .p.132 . ■ カルペリチド(ハンプ .R )の使いかた s 利尿作用と血管拡張作用、肺動脈圧低下作用、心筋保護作用を持つ。静注 用の ACE 阻害薬だと思えば大体間違いない s 血圧が低下するので、大動脈弁狭窄、肥大型閉塞性心筋症の患者さんには 比較的禁忌 s 利尿作用、血管拡張作用を期待するなら 0.05-0.2 µg/kg/min、50 kg の患 者さんで 150-600 µg/h†32 、1 日量で 3600-14400 µg s 状態の安定している患者さんに対して心筋保護作用のみを期待するのなら、 0.02 µg/kg/min 程度、50 kg の患者さんで 1440 µg/日程度から開始する ■ 陽圧換気は有効 s 心不全の患者さんは、陽圧換気に対する良好な反応が期待できる。胸腔内 が陽圧になることで肺うっ血が軽減、横隔膜の仕事量が減少するからであ るといわれている s 通常は CPAP マスクや BiPAP を用い、5-7 cmH O 程度の PEEP をかけ 2 る。10 分程度で酸素化の改善や呼吸困難感の改善が得られる s 非侵襲的陽圧換気が使えない場合であっても、短期間の人工換気で症状の 改善が得られるケースが多いため、心原性肺水腫の患者さんに対しては積 極的に挿管を考えてもいいように思う †31 たこつぼ心筋症 †32 3 バイアルを蒸留水 10 ml+5% ブドウ糖水 90 ml に溶解、5-20 ml/h で調整 3.2 息が苦しい 59 ■ 僧帽弁閉鎖不全の手術適応 s 症状を伴う重症の急性僧帽弁閉鎖不全 s NYHA クラス II、III、または IV の心不全症状を有する重症慢性僧帽弁閉 鎖不全で、心機能が保たれている†33 場合 [7] s 症状を伴わない重症慢性僧帽弁閉鎖不全で、中等度の心機能低下を伴うも の [7] ■ 大動脈弁閉鎖不全の手術適応 s 症状を伴う重症大動脈弁閉鎖不全は、左室機能にかかわらず手術の適応 [7] s 無症候の重症大動脈弁閉鎖不全で、左室機能の低下†34 を伴うもの s 慢性の重症大動脈弁閉鎖不全で、CABG や大動脈の手術が施行される場合 [7] 肺高血圧症 ~ s 息切れ、易疲労感、浮腫を訴え来院する。低酸素血症が合併していること が多い s 特発性の肺高血圧症以外に、COPD . や睡眠時無呼吸症候群、間質性肺 . p.52 . 、慢性肺塞栓や腫瘍性の肺血管閉塞、サルコイドー . 、肝硬変 .p.165 . p.64 炎 . 、 . 、多発性筋炎 . 、強皮症 . 、SLE . や血管炎 .p.277 . p.84 .p.289 .p.307 . p.82 シス シェーグレン症候群に肺高血圧が生じうる s 甲状腺機能亢進症 . にも肺高血圧が合併†35 す . 、甲状腺機能低下症 .p.316 .p.314 ることがある ■ 検査 s 血液生化学検査/PT/APTT、BNP、ACE、抗核抗体、RF、抗 Scl70 抗体、 抗セントロメア抗体を提出する [4]。TSH/FT4 、ANCA、抗リン脂質抗 . を提出する [30]。胸部造影 CT スキャンを施行する。心エコーを .p.258 体 施行する s 睡眠時無呼吸症候群を除外診断するため、夜間の SpO モニターを行う 2 s 胸部造影 CT により肺塞栓 . の除外診断を行う。 . と収縮性心膜炎 .p.124 . p.54 斑状の肺うっ血像が散在していたら肺静脈閉塞の可能性がある†36 s 心エコーで僧帽弁狭窄症 . 、心室中隔欠損症の検索 . 、左房粘液腫 .p.314 .p.105 を行う。平均肺動脈圧が 30 mmHg を超えていたら中等症、45 mmHg を †33 EF≥30%、左室収縮末期径 ≤55mm †34 EF≤50%[7] †35 造影剤の禁忌に入ってくるので注意 †36 特発性肺高血圧症と治療薬が異なってくる 60 第 3 章 呼吸器系の問題 超えたら重症の肺高血圧 s BNP は上昇していることが多い s 最終的には肺動脈圧カテーテル検査を施行し、確定診断と薬剤に対する反 応を検討する s 脚気 . にも肺高血圧症が合併する。病歴から低栄養が疑われた際には . p.40 ビタミン B1 の補充を行う ■ 治療 s 軽症例には Ca 拮抗薬を使用するものの、血圧が下がるために限界がある s プロスタグランジン製剤であるエポプロステノール(フローラン .R. )の持続 . 静注、ベラプロスト(プロサイリン .R ) 60-180 µg/分 3 の内服を用いる s シルデナフィルの内服、エンドセリン拮抗薬のボセンタン内服も用いるこ ともある。専門家に相談するべき薬剤だと思う 3.3 SpO2 が低い 61 3.3 SpO2 が低い . . p.92 敗血症 . . p.64 間質性肺炎 酸素の不足 高濃度 O2 . . p.68 肺炎 . . p.65 ARDS 心不全 PEEP+O2 . . p.56 . . p.52 COPD 機械力不足 . .p.219 神経筋疾患 . . p.10 喉頭蓋炎 気道不安定 BiPAP 気管内挿管/人工換気 . . p.54 気胸 . . p.59 肺高血圧症 肺塞栓 原因に対する対処が必要 . . p.54 X気胸、肺塞栓は酸素吸入に反応しない低酸素血症を生じる。原因に対する 対処が必要になる X重症肺炎や ARDS においても、シャント血流の増大から酸素不応性の低酸 素血症を生じる。気管内挿管と陽圧換気の適応になる ■ 酸素が有効なケース 発熱時には一過性の SpO2 低下が生じる。解熱すれ ば SpO2 は正常化するものの、少量の酸素を供給することで患者さんの不快感 が軽減できる。 間質性肺炎に代表される拡散障害の患者さんは、CO2 貯留の問題がほとん ど発生しない†37 ので、高濃度の酸素を投与できる。陽圧換気を行ってもリザー バーマスク以上に酸素供給量を上昇させるのは難しい。鎮静による酸素需要の 低下を期待する場合に気管内挿管が行われることになる。 肺炎や ARDS の患者さんには換気/血流ミスマッチによる低酸素血症を生じ る。重篤な場合には酸素投与を行っても酸素化が改善しない。健側の肺を下側 にした体位ドレナージの姿勢や、うつぶせ姿勢での呼吸管理、人工呼吸器によ る陽圧換気が酸素化に役立つ。 †37 CO2 のほうが組織透過性が圧倒的に高いため 62 第 3 章 呼吸器系の問題 COPD 増悪の患者さんは、慢性的な呼吸筋の疲労により低酸素血症を生じ る。高流量で酸素の吸入を行うと呼吸停止を生じる危険がある。低流量酸素で も CO2 が貯留してくる場合には、BiPAP や人工呼吸器の適応になる。 ■ 適応は社会的に決まる 気管内挿管の適応は、患者さんの状態だけではな く、施設の能力によって変わってくる。 余裕のない状況で「医学的に待てる」患者さんに挿管をためらってしまうと、 それが本当に必要になったとき、挿管を安全に施行するためのマンパワーが確 保できずに致命的な結果を招く可能性がある。 受け持ち患者さんが多い状況や病棟のマンパワーが少ない場合、「疲れてい て夜間の呼び出しを避けたいとき」や、 「予定のある日の夕方」には、早めの気 管内挿管が決断されるべきだと思う。 ~ 挿管困難への対処 ■ 細いチューブを選択する 男性なら 8.0 mm、女性なら 7.5 mm 程度の内径 を持った挿管チューブが望ましいものの、太いチューブを用いた挿管は思って いる以上に難しいことがある。 0.5 mm、できれば 1 mm 小さなチューブを用いるだけで挿管はかなり容易 になるので、難しいときには細いチューブを考慮する。 成人男性なら 7.0 mm、場合によっては 6.0 mm でも普通に人工換気を行 える。 ■ ガムエラスティックブジーを使う 先端がわずかに屈曲したプラスチック の棒を 1 本使うだけで、挿管が容易になる。 挿管チューブの内腔にブジーを通過させ、ブジーの先端を 5 cm 程度露出さ せた状態でチューブを保持する。喉頭展開を行い、まずはブジーの声帯通過を 試みる。ブジーが通ったら、それをガイドワイヤー代わりにして挿管チューブ を通過させる。 ブジー自体の直径は 5 mm 程度。内径 6 mm のチューブなら問題なく使用 できる。 挿管チューブが声帯を通過する際に、先端が声帯に引っかかることがある。 抵抗を感じたら、反時計回りに 90 度の回転を挿管チューブに加えることで 引っかかりを回避することができる。 ■ 経鼻挿管 気管支喘息重積発作の患者さんに対して、鎮静なしで盲目的経鼻 挿管を行えるようになると、喉頭展開が難しい場合でも挿管できる。古い手技 ではあるものの、もしも教わる機会があったら、いざというときのために知っ 3.3 SpO2 が低い 63 ておくといいと思う。 s 挿管チューブは、男性で内径 6.5 mm、女性で 6.0 mm を通常用いる s 挿管前に、チューブを 70℃ぐらいの温めた生理食塩水につけて加温してお くと、軟らかくなって出血しにくくなる s 咽頭後壁にチューブが当たって進まないときには、チューブを反時計回り に 90 度ねじって進めると出血を減らせる s 挿管チューブの固定位置は 25 cm を目安に、男性で 1 cm 深く、女性で 1 cm 浅く調整する ~ 挿管中の鎮静 . ■ プ ロ ポ フ ォ ー ル( デ ィ プ リ バ ン R. ) 200 mg/20 ml/1A ま た は 500 mg/50 ml/1 バイアル。導入時は 1.5-2.5 mg/kg、50 kg の患者さん で 7-12 ml を 静 注 。そ の 後 0.3-3 mg/kg/h、50 kg の 患 者 さ ん で 原 液 を 1.5-15 ml/h で持続静注†38 を行い鎮静を維持する。 . ■ ミダゾラム(ドルミカム R. ) 10 mg/2 ml/1A。導入時は体重にかかわ らず 5-10 mg を静注。その後 0.03-0.18 mg/kg/h、50 kg の患者さんで 1.59 mg/h、たとえば 5A を 5% ブドウ糖水 90ml に溶解して 3-18 ml/h で持続 静注する。 ■ フェンタニル 循環動態に影響が少ない鎮痛薬。静脈麻酔薬に併用する。 原液で 0.5-2 ml/h の持続静注を行う。 . ■ プレセデックス .R α2 作動薬。鎮静/鎮痛効果を持つ。鎮静中も自発呼吸が 保たれる。徐脈や血圧の低下を生じることがある。 0.2-0.7 µg/kg/h で鎮静維持を行う。6 µg/kg/h で 10 分間のローディング を行うこともある。 ■ 筋弛緩剤 内科の気管内挿管は鎮静薬のみ用いることが多いものの、挿管 . が難しい際にはベクロニウム(マスキュラックス .R )を追加投与する。通常は 0.08-0.1 mg/kg[32]、50kg の患者さんで 4-5 mg を静注する。3 分程度で筋弛 . 緩が得られる。ロクロニウム(エスラックス .R )はベクロニウムの誘導体で、 作用発現が速い。通常は 0.6 mg/kg、50kg の患者さんで 30 mg を静注。挿管 時には最大 0.9 mg/kg まで使用できる。 †38 原液 60 ml を 5% ブドウ糖水 40 ml に溶解した場合は 2.5-25 ml/h で持続静注 64 第 3 章 呼吸器系の問題 投与酸素濃度について ~ 当直時間帯に気管内挿管を行った際には、翌朝まで 100% 酸素を投与しても かまわないと思う†39 。 人工換気の導入直後は、機械のトラブルや挿管チューブの自己抜去等、あら ゆる問題が発生する。投与酸素濃度を 100% にしておけば、すべてのトラブル が酸素濃度の低下として出現するので、何かトラブルがあった際、すぐに対処 することができる。 間質性肺炎 ~ s 発熱と咳嗽、著明な息切れ、特に体動時の息切れと SpO の低下を主訴に 2 来院する s 特発性のもの、リウマチ性関節炎や SLE . 、PM/DM . 、強皮症 . p.84 .p.289 . 、ニューモシスチ . 、サルコイドーシス . に伴うもの、血管炎 . p.82 .p.307 .p.277 . に伴うものがある . p.81 ス肺炎 s ステロイドに対する反応が期待できる疾患†40 と、そうでない疾患とがある。 呼吸器内科にコンサルトを ■ 検査 s 血液生化学検査/CRP/Ca、検尿沈渣、KL-6、ESR、抗核抗体、RF、抗 Jo-1 抗体、ANCA、抗 GBM 抗体、ACE を提出する†41 。胸部 CT スキャンを 施行する s 血液生化学所見では CRP、LDH の上昇を生じる s 胸部単純写真での間質影と線維化、胸部 CT、特に HRCT の所見に注目 する s 本来は、胸腔鏡下に肺生検を行わないと確定診断できない s ANCA は初診時陰性でも後に陽性になることがあり、年 1 回程度フォロー する [75] ■ 治療 s 急性増悪で来院した患者さんに対して、ステロイドパルス療法、シクロフォ . スファミド(エンドキサン .R )の内服、広域抗生物質の投与を行う s ステロイドは入院当日よりメチルプレドニゾロン 1000 mg を 1 日 1 回 3 日間投与、以後 4 日目からは 40 mg/分 1 程度の内服にする施設と、数日 †39 心肺蘇生のガイドラインでは、動脈血酸素飽和度は 94-98% を目標に調整すると記載されている [17] †40 . はステロイドに対する反応が良好とされる . p.69 NSIP、特発性器質化肺炎 †41 経過からニューモシスチス肺炎が疑われた場合には HIV 抗体を追加する 3.3 SpO2 が低い 65 ごとに半減、漸減していく施設とがある s 免疫抑制薬を併用する場合は、シクロフォスファミド 1-2 mg/kg/日の内 服、または 0.5-1.0 g/m2 月 1 回点滴静注を行う s 咳嗽の閾値が低下しており、また咳に伴う SpO の低下が著しいので、コ 2 デインやモルヒネなどの麻薬系鎮咳剤を併用する s 低酸素血症を生じる。リザーバーマスク 10 L/分でも SpO が 90 台ぎり 2 ぎりしかないことが珍しくない s 酸素濃度が保てない症例、呼吸困難感のコントロールがつかない患者さん に対して、気管内挿管と鎮静を行う ~ ARDS s 敗血症や外傷などに伴い、重篤な低酸素血症に両胸のスリガラス状陰影を 生じる s 間質性肺炎と違い、肺は不均一に冒される。CT で見ると正常な肺野と病 的な肺野とが混在している s PaO /FiO 、PEEP の量を用いた重症度分類が提唱されている 2 2 時間経過 新規発症あるいは 1 週間以内の疾患に続発した呼吸障害 胸部画像所見 胸水や肺の虚脱、腫瘤等で説明できない両肺野の透過性低下 肺水腫の原因 過剰輸液や心不全で説明できない肺水腫 酸素化と重症度 軽症 200 mmHg<PaO2 /FiO2 ≤300 mmHg、PEEP or CPAP≥5 cmH2 O 中等症 100 mmHg<PaO2 /FiO2 ≤200 mmHg、PEEP≥5 cmH2 O 重症 PaO2 /FiO2 ≤100 mmHg、PEEP≥5 cmH2O N 表 3.1 ARDS のベルリン定義 [33] ■ 治療 s 通常気管内挿管による人工換気が必要 s FiO を 60% 以下にすることを目標に、PEEP を 7-10 cmH O と高めに 2 2 する s 最高気道内圧が 30 cmH O を超えないように 1 回換気量を少なめに、体重 2 50 kg の人で、1 回換気量は 300-350 ml 程度に設定する†42 s CO の貯留が問題になるが、呼吸回数は 20 回程度と多めになってもかま 2 わない †42 1 回換気量を 7 ml/kg 以下に抑えることで、予後が改善したという報告がある [15] 66 第 3 章 呼吸器系の問題 s 輸液の水分量は少なめに調整したほうが呼吸機能の改善が早くなるのだと いう [1] s うつぶせ呼吸には一定の酸素化改善効果が期待できるが、挿管チューブの 自己抜去などの合併症が生じやすい s ステロイド投与の効果については結論が出ていない。ヒドロコルチゾンで 600 mg/日程度なら使っていいように思う 3.4 咳が出る 67 3.4 咳が出る ACE 阻害薬 薬歴 . . p.45 気管支喘息 . .p.140 逆流性食道炎 治療的診断 . . p.18 後鼻漏/副鼻腔炎 頭頸部腫瘍 頭部/頸部 CT . . p.56 心不全 BNP . .p.302 肺結核 喀痰培養/QFT . . p.68 肺炎 血液生化学検査 . . p.69 過敏性肺臓炎 . .p.251 急性好酸球性肺炎 IgE 肺癌/肺腫瘍 . . p.70 気管支炎/気管支拡張症 ■ 治療的診断について 胸部 CT スキャン 3 週間を超えて持続する咳を慢性咳嗽として区別す る。咳喘息、後鼻漏、逆流性食道炎が主な原因となる。 病歴や検査による診断が難しく、それぞれ吸入ステロイド、抗アレルギー薬 と鎮咳薬の併用、プロトンポンプ阻害薬による治療的な診断を試みることも 多い。 ■ 頸部/胸部画像診断 頭頸部腫瘍は声帯の麻痺を生じ、咳の原因となること がある。嚥下困難や嗄声を伴う場合には、頭部/胸部/頸部の CT スキャンを施 行する。 68 第 3 章 呼吸器系の問題 N 分からなかったら 気管支炎症状を生じうる疾患として気管支肺癌の可能性を検索する。 . も咳の原因となる。 .p.11 インフルエンザ 血液生化学検査、好酸球数、BNP、赤血球沈降速度、IgE を提出する。 百日咳菌抗体、喀痰培養/抗酸菌培養/PCR を提出する。頭部/頸部/胸部 CT スキャンを施行する。肺の線維化を認めた場合†43 には抗核抗体/RF、 ANCA、検尿沈渣を提出する。 肺炎 ~ s 咳嗽、喀痰、発熱、胸部単純写真上の浸潤影を見る s 悪寒戦慄を伴うことも多い [67] s 感染により肺胞腔内が滲出物で満たされる反面、気管支には病変が生じな い。このため air-bronchogram を生じる ■ 検査 s 血液生化学検査、喀痰培養、胸部 CT を施行する s 診断がつかず、感染起炎菌を同定する必要がある場合は BAL を試みる s 血液培養の陽性率は 5-14% と高くない [2] s 尿レジオネラ抗原検査は感度/特異度とも 90% 以上、尿肺炎球菌抗原検査 は感度 80%、特異度 90% 以上。抗生剤開始後でも結果は変わらない s 昏迷状態、BUN≥20 mg/dl、呼吸数 ≥30 回/分、収縮期血圧 90 mmHg 以下、65 歳以上の 5 項目から 2 つ以上が当てはまったら原則として入院の 適応 [71]†44 ■ 治療 s 現在も肺炎球菌が起炎菌として最も頻度が高い s レジオネラやクラミジア、マイコプラズマなどはこうした細菌感染に重複 感染しうる s 肺炎球菌をカバーする抗生物質に加えて、レジオネラやクラミジアをカ バーする抗生物質を併用する s たとえばセフトリアキソン(ロセフィン .R. ) 2 g 1 日 1 回とアジスロマイ . シン(ジスロマック R. )500 mg 1 日 1 回†45 併用、レボフロキサシン(クラ †43 . を参照 . p.64 間質性肺炎 †44 CURB-65 基準 †45 マクロライドに耐性を持つマイコプラズマが増加していることに注意 3.4 咳が出る 69 . ビット .R )500 mg 1 日 1 回投与†46 などが推奨されている [3] ● 治りにくい肺炎について s 治療を行っているにもかかわらず、「治りにくい肺炎」だなと感じたときに . 、細気管支肺胞上皮癌、腫瘍による閉塞性肺炎、クリプト .p.302 は、結核 . を検索する . 、血管炎 .p.307 . p.69 コッカス感染症、特発性器質化肺炎 s 喀痰細胞診/好酸球数、喀痰の抗酸菌培養/PCR、KL-6、SP-D、ANCA、 尿レジオネラ抗原、マイコプラズマ PA 抗体、β-D-グルカン、クリプトコッ カス抗原、クォンティフェロンを提出する ● 特発性器質化肺炎 s 乾性の咳嗽、発熱を生じる s 50-60 歳の患者さんに多い [2] s 画像上も浸潤影を生じる。呼吸器感染症として抗生剤の投与が行われ、 「抗 生剤に反応しない肺炎」として見つかることも多い ■ 検査 s 胸部単純写真にて、片側または両側性の浸潤影を生じる。病変はときに移 動する s 胸部 CT スキャンにて、胸膜直下や気管支血管側に沿った浸潤影を生じる s 白血球増多、CRP 増加、赤沈の亢進を見る。ALP の上昇を見ることがある s KL-6 が上昇するケースは少ない。SP-D が上昇することが多い s 確定診断には TBLB や BAL が必要 ■ 治療 s プレドニゾロンを 0.5-1 mg/日より開始、漸減していく [2] s ステロイドに対する反応は良好であるものの、再発することもある [77] 過敏性肺臓炎 ~ s 発熱、咳、呼吸困難を訴え来院する†47 。労作時の酸素飽和度は低下してい ることが多い s インフルエンザ . 、ウィルス性肺炎、マイコプラズマ感染症、ニューモ . p.11 . 、サルコイドー . 、気管支喘息 . 、細菌性肺炎 . p.45 . p.68 . p.81 シスチス肺炎 . 等で類似した症状を呈 . 、膠原病に伴う肺障害や間質性肺炎 . p.64 . p.82 シス する †46 . に効いてしまうため、結核の診断が遅れる原因になることがある .p.302 ニューキノロンは肺結核 †47 喘鳴は少ない 70 第 3 章 呼吸器系の問題 ■ 検査 s 血液生化学検査/Ca、赤血球沈降速度、好酸球数、IgE、抗核抗体、RF、 ANCA、喀痰培養、β-D-グルカンを提出する。胸部 CT スキャンを施行 する s 血液検査上は赤沈亢進、好中球優位の白血球増多、CRP 高値 [8] s LDH が増加する。症状の回復とともに正常化していく [30] s 末梢血好酸球数や IgE は通常正常範囲 [30] s 気管支肺胞洗浄液において活性化 T 細胞の増加と CD4/CD8 比の低下を 生じる†48 s 胸部 CT でびまん性、あるいは地図状のスリガラス陰影を呈する。ARDS . †49 と違い、病変部位は均一に白くなる . p.65 s 夏型過敏性肺炎の原因である抗トリコスポロン抗体の測定キットが市販さ れている†50 ■ 治療 s 軽症例では入院のみで改善する s ステロイドの投与に反応する。プレドニゾロン 0.3 mg/kg/日から開始し、 4-6 週間かけて漸減中止する 気管支拡張症 ~ s 慢性的な咳嗽、喀痰、血痰などの症状で来院する s 慢性的な感染によるもの、遺伝素因によるもの、リウマチ性関節炎 . 、 .p.288 . 、アレルギー性肺アスペルギルス .p.161 シェーグレン症候群、炎症性腸疾患 . に合併することがある [2] . p.48 症 s 画像上は Wegener 肉芽腫 . との鑑別が必要 . や気管支肺癌、結核 .p.302 . p.83 になる [34] s 低ガンマグロブリン血症や HIV 感染症、悪性リンパ腫 . 、多発性骨髄 .p.310 . といった免疫 . 、血液悪性腫瘍、慢性肝機能障害、慢性腎不全 .p.184 .p.246 腫 力の低下する基礎疾患が原因となっていることがある [1] ■ 検査 s 血液生化学検査、好酸球数、赤血球沈降速度、抗核抗体、ANCA、RF を提 出する。蛋白分画†51 を提出する [30]。胸部 CT スキャンを施行する †48 . は好酸球の増多を見る .p.251 好酸球性肺炎 †49 ARDS の CT 所見は、部位により不均一 †50 保険未収載 †51 低ガンマグロブリン血症を除外診断するために提出する [30] 3.4 咳が出る 71 s CT では気管支壁の肥厚を認める。太い輪状影または平行線として描出さ れる s 難治性の喘鳴を伴っていた際にはアスペルギルス抗体†52 を確認する [2] ■ 治療 s 急性増悪を生じた患者さんに対して、抗生剤の予防的投与が行われる s アミノグリコシドの吸入療法が喀痰を減少させ、肺機能を改善することも ある s 喀血にて入院した際は、止血剤の投与や体位ドレナージに加えてインドメ タシン座薬 25 mg を用いる†53 と止血できることがある s 増悪して入院した場合には COPD の治療 . に準じる。抗生剤、酸素投 . p.52 与、気管支拡張剤の吸入が行われるが、呼吸苦は 2-3 日遷延することが多い †52 . . p.48 アレルギー性肺アスペルギルス症 †53 プロスタグランジンに拮抗して気管支動脈を収縮させるらしい 第 3 章 呼吸器系の問題 72 3.5 胸水貯留 . .p.194 ネフローゼ症候群 . .p.184 腎不全 . .p.316 甲状腺機能低下 . . p.56 心不全 RA / SLE . .p.289 . . p.74 結核 急性膵炎 TSH/FT4 血液生化学検査 BNP . . p.47 Churg-Strauss . .p.288 検尿沈渣 . .p.145 . .p.165 肝硬変 好酸球増多 赤血球沈降速度 ANCA 抗核抗体/RF/補体 QFT/胸水 ADA AMY PT/APTT . . /胆のう炎 .p.144 . p.73 肺炎 . .p.147 食道破裂 悪性腫瘍 胸膜中皮腫 胸部/腹部 CT スキャン . . p.75 ■ 滲出性胸水と漏出性胸水 炎症や悪性腫瘍等で膜の透過性に変化が生じて 出現するのが滲出性胸水。胸水の産生増加や膠質浸透圧の減少により出現する のが漏出性胸水。 胸水穿刺を行った際は、細胞数、糖、アミラーゼ、総蛋白、LDH、pH、細 胞診、一般培養、抗酸菌培養、ADA、コレステロール、Tb-PCR を提出する。 以下の条件があったら滲出性胸水。 s 胸水 LDH が血液 LDH の 6 割以上 s 胸水 LDH が血液正常値の 6 割以上 s 胸水蛋白濃度が血液総蛋白の 5 割以上 . で認め . 、膵炎 . 、肺塞栓 . 、胆のう炎 .p.145 . p.54 .p.144 . p.73 好中球増多は肺炎 . 、リウマチ性関 . p.74 られる。85% 以上のリンパ球増多を見たときには、結核 . を考える [71]。 . 、サルコイドーシス . 、リンパ腫 . p.82 .p.310 .p.288 節炎 . で認められる。胸水中のコレステ .p.147 アミラーゼの上昇は膵炎と食道破裂 . 等、慢性的な経過で貯留した胸 . p.74 ロール増多は、心不全やリウマチ性胸水 水に認められる。リウマチ性胸水、肺膿瘍では 1000 以上の LDH 上昇を生じ る [7]。 3.5 胸水貯留 ■ 胸水ドレナージの適応 73 . であっても、以下の条件に当て . p.73 肺炎随伴胸水 はまれば抜いたほうが早く治る。 s pH 7.2 以下 s 胸水糖濃度が 60 mg/dl 以下 s 胸水 LDH が 1000 IU/l 以上 s 膿性胸水、胸水培養陽性 ■ 血液生化学検査/ESR s ネフローゼ症候群 ⇒alb↓ chol↑ s 甲状腺機能低下症 ⇒chol↑ CPK↑ s SLE/ MCTD ⇒WBC↓ リンパ球 ↓ plt↓ s 急性膵炎 ⇒AMY↑ Ca↓ WBC↑ CRP↑ s Churg-Strauss 症候群 ⇒WBC↑ ESR↑ 好酸球 ↑ s 肝硬変 ⇒TP↓ alb↓ plt↓ s 肺結核は赤沈以外の全データが正常になることがある ■ 胸部画像診断 肺野の腫瘤性病変、うっ血の有無、肝臓萎縮と腹水の有無を 評価する。心エコー正常の胸水貯留を生じた患者さんで、CT にて心膜の石灰 . を考える。 .p.124 化を見たら収縮性心膜炎 心不全は右 ≥ 左の胸水貯留を生じる。逆に左側に限局した胸水を見た場合 には、心不全以外の原因を検索する。 N 分からなかったら 血液生化学検査/AMY/CPK、PT/APTT、C3 、C4 、CH50、抗核抗体、 RF、TSH/FT4 、クォンティフェロン、胸水の細胞診/培養を提出する。 . は、すべての検査が正常値を示すことがある。胸膜 .p.74 結核性胸水 中皮腫をはじめとする悪性腫瘍の検索に、Ga シンチや PET が有効。 膿胸/肺炎随伴性胸水 s 肺炎に胸水を伴い、胸痛を合併する s 歯周囲疾患、口腔内の不衛生のある患者さんで発症頻度が高い s 嫌気性菌の関与が多い ■ 検査 s 血液生化学検査/胸部画像所見は肺炎 . に準じる . p.68 s 典型的な膿胸は、胸部 CT にてレンズ状の胸水貯留を見る ~ 74 第 3 章 呼吸器系の問題 ■ 治療 s 抗生剤とドレナージが基本となる。太いドレーンを入れないと抜けないこ とが多い s 急性膿胸/肺炎随伴胸水に対してセフォタキシム(クラフォラン .R. )2 g を . 1 日 3 回、またはセフトリアキソン(ロセフィン R. )2 g を 1 日 1 回点滴静 注する s 亜急性、慢性の膿胸に対して、上記抗生剤にクリンダマイシン†54 (ダラシ . . ン R. )450-900 mg を 1 日 3 回併用するか、イミペネム(チエナム .R )0.5 g ..R を 1 日 4 回、アンピシリン/スルバクタム(ユナシン )3 g を 1 日 4 回、 . ピペラシリン/タゾバクタム(ゾシン R. )4.5 g を 1 日 3 回、またはセフォ †55 キシチン 等に抗生剤を変更する [3] s 膿胸は胸腔内に隔壁を作り、チェストチューブだけではドレナージが行い にくい。難治例は外科的なドレナージを依頼する 結核性胸水 ~ s 無症状であることが多い s 胸水貯留の原因が不明のときは、結核性胸水の可能性が高い ■ 検査 s 原因不明の胸水に対して、血液生化学検査/AMY/CPK、PT/APTT、抗核 抗体、RF、TSH/FT4 、クォンティフェロン、胸水の細胞診/培養/ADA/ 結核 PCR を提出する s 胸部画像所見では、胸水の貯留以外に異常を認めないことも多い s 胸水培養はほとんどの場合陰性 s 胸水中の ADA が上昇する。リンパ球優位の胸水で、ADA のカットオフ 値を 40 U/L 以下に設定すると、偽陽性率は 2.8% であったという [19] s 確定診断は胸膜生検。結核が原因の胸水患者さんの 60% で肉芽腫を証明で きる ■ 治療 . に準じる。 .p.302 肺結核の治療 リウマチ随伴性胸水 s 関節リウマチ . の 5% に胸水を合併する . 、SLE .p.289 .p.288 s 胸水中の糖が ≤40 mg/dl になる。pH も低いことが多い †54 血圧低下を生じることがあるため、10-60 分かけてゆっくり点滴静注する . †55 国内だとセフメタゾール(セフメタゾン .R )1-2 g を 1 日 3 回 ~ 3.5 胸水貯留 75 s 原疾患の治療を開始しても、数週間は胸水が残存する s 血液生化学検査にて白血球減少、溶血性貧血、血小板減少等が合併してい . を提出することで確 .p.189 たら疑い、抗核抗体、RF、抗 DNA 抗体、補体 認できる 胸膜中皮腫 ~ s アスベスト肺に合併する s 60 歳以上の患者さんが、息切れや漠然とした胸痛、体重減少等を主訴に来 院する s 胸水は血性になることもある。細胞診が陽性になる可能性は低く、確定診 断に難渋することが多い s 胸膜に沿って薄く広がるように浸潤する。嚥下困難や上大静脈症候群を生 じることもある 胸膜癒着術 ~ s 癌性胸膜炎、胸膜中皮腫などで胸水のコントロールをはかるために行わ れる s 痛い治療なので、薬剤を胸腔に注入する前に 1% リドカインを 20 ml 程胸 腔内注入したり、NSAIDs を事前に†56 内服してもらう s 治療を行った日は 38℃台の発熱が 1 日続く ■ 薬剤 以下のどれか一つを用いる。タルクが最も強力だといわれている。 s アドリアシン 1 回 20 mg 胸腔内注入 s ピシバニール 1 回 5-10 KE 胸腔内注入 s ドキシサイクリン 500 mg を 50 ml の生食に溶解して注入 s タルク 4-5 g を 50 ml の生食に懸濁して注入 †56 タルク以外だとそこまでしなくてもいいらしい。事前内服を行うと炎症による胸膜の癒着が生じないた め、痛みや発熱が発生してから内服をしてもらったほうがいいらしい 76 第 3 章 呼吸器系の問題 3.6 血痰が出た . .p.257 凝固異常 PT/APTT . .p.302 肺結核 喀痰培養/QFT . .p.307 血管炎 ANCA . .p.289 SLE 抗核抗体 肺膿瘍 血液生化学検査 . . p.77 アスペルギルス . . p.82 サルコイドーシス 赤沈 特異抗原 ACE . . p.54 肺塞栓 . . p.59 肺高血圧症 僧帽弁狭窄症 心エコー . .p.105 肺腫瘍 胸部写真/CT スキャン . . p.70 気管支拡張症 ■ 赤血球沈降速度 慢性炎症性疾患で上昇する。肺結核は白血球数正常、CRP 正常で赤沈のみ高度亢進していることがある。 ■ 血液生化学検査 s 血管炎 ⇒BUN↑ CRE↑ WBC↑ CRP↑ ESR↑ s 肺膿瘍 ⇒WBC↑ ESR↑↑ CRP↑ s アスペルギルス ⇒LDH↑ WBC↑ β-D-グルカン ↑ ■ 胸部画像診断 . 、アスペルギルス感染症 . 、呼吸器悪 .p.302 . p.77 膿瘍、結核 性腫瘍は直接診断できる。肺動脈の拡張、右室拡大を生じていた際には肺塞 . の可能性がある。 . 、肺高血圧症 . p.59 . p.54 栓 . で気管支壁の肥厚をみる。サルコイドーシスで肺門部リ . p.70 気管支拡張症 ンパ節の腫大を認める。 3.6 血痰が出た 77 N 分からなかったら 検尿沈渣、血小板数、腎機能検査、PT/APTT を提出する [1]。胸部 CT/ 造影 CT を施行する。血液生化学検査、Ca、ACE、ESR、抗核抗体、補 体、PR3-ANCA、MPO-ANCA、クォンティフェロン、β -D-グルカン、ア スペルギルス抗原、検尿沈渣を提出する。結核の喀痰培養、PCR を提出 する。 . 、Good.p.307 蛋白尿や腎不全を合併していたら、ANCA 関連血管炎 pasture 症候群の可能性がある [5]。白血球減少、リンパ球減少、血小板 . の可能性がある。異所性子宮内膜症は喀 .p.289 減少の合併があれば SLE 血の原因になる。 肺アスペルギローマ ~ s 肺結核、間質性肺炎などによって生じた空洞、のう胞にアスペルギルスが 感染、菌球を形成する s 無症状の時期と、病変が拡大する活動期とに病態が分かれる ■ 検査 s 血液生化学検査、ESR、抗核抗体、ANCA、クォンティフェロン、β-D-グ ルカン、アスペルギルス抗原、喀痰の抗酸菌培養、PCR を提出する。胸部 CT を施行する s 採血検査では血清 LDH の上昇、β-D-グルカンの上昇、アスペルギルス抗 原の陽性を認める s 胸 Xp や CT で菌球を確認、喀痰培養で確定診断できる ■ 治療 s ミカファンギン(ファンガード .R. )、ボリコナゾール、アンホテリシン B .. R (ファンギゾン )の静注、イトラコナゾールの内服が用いられる s ボリコナゾールは 6 mg/kg 初日 2 回静注、以降 4 mg/kg 1 日 2 回静注 s 外科的切除も検討される 78 第 3 章 呼吸器系の問題 AMPH-B FLCZ ITCZ VRCZ MCFG カンジダ 4 4 アスペルギルス クリプトコッカス トリコスポロン 4 4 4 ムコール N 表 3.2 抗真菌薬の抗菌スペクトル [61] 肺動静脈瘻 ~ s 陳旧性肺結核 . 等の慢性感染症による喀血も、新生動脈の破綻から生じ .p.302 る点では本疾患と同じ s 気管支動脈造影を行うことで確定診断できる s 肺野内に太い血管が走行しているので、放射線科に CT の読影依頼を行う と診断してもらえる ■ 治療 s 気管支動脈造影後に塞栓術を施行する s 脊髄動脈を閉塞する合併症がある。対麻痺のリスクについて事前に説明し ておかないといけない 血管炎による肺胞出血 ~ s 喀血、胸 Xp 上の肺胞浸潤、呼吸困難、貧血を主訴に来院する s 肺胞出血は 2 日間程度で全肺野に拡大する s Goodpasture 症候群、Wegener 肉芽腫 . 、Churg-Strauss 症候群 . p.83 . などの血管炎で肺胞出血を合併する . p.47 s 免疫機序によらない肺胞出血の原因として、凝固異常、僧帽弁狭窄症 . 、 .p.105 壊死性の肺炎、薬物中毒がある [1] ■ 検査 s 検尿沈渣、血液生化学検査、PT/APTT、Ca、ACE、ESR、抗核抗体、補 体、PR3-ANCA、MPO-ANCA、抗 GBM 抗体、β-D-グルカンを提出す る。結核の喀痰培養、PCR を提出する。胸部 CT、心エコーを施行する s 血液生化学検査では炎症反応の増多を認める。蛋白尿と腎機能障害を合併 していることが多い 3.6 血痰が出た 79 ■ 治療 s 低酸素血症と貧血が急速に進行し、人工換気が必要になることが多いので、 家族への最初の説明が重要 s 血漿交換 . を 2 週間連日で行う .p.268 s 並行してメチルプレドニゾロン 1-2 g/日を 3 日間、以降 1 mg/kg/日の内 服を行うとともに、シクロフォスファミドを 0.5-1.0 g/m2 月 1 回†57 点滴 静注する s p.267 も参照 . †57 エンドキサン .R はパルス量を投与したほうが、2-3 mg/kg 連日内服よりも副作用が少ないらしい 80 第 3 章 呼吸器系の問題 3.7 肺野のびまん性間質影 . .p.184 尿毒症 血液生化学検査 . .p.305 粟粒結核 赤沈/QFT/喀痰 . . p.81 ニューモシスチス肺炎 . . p.64 間質性肺炎 KL-6 . . p.82 サルコイドーシス . . p.78 血管炎 強皮症 ACE/Ca ANCA . . p.56 心不全 . . p.84 β-D-グルカン 心エコー BNP /SLE . .p.289 . .p.251 急性好酸球性肺炎 抗核抗体 喫煙歴 . . p.65 ARDS . . p.69 過敏性肺臓炎 胸部 CT スキャン ガスによる障害 . . p.85 癌性リンパ管症 . . p.16 くも膜下出血 頭 CT スキャン ■ 血液生化学検査/ESR s 尿毒症 ⇒BUN↑ CRE↑ s サルコイドーシス ⇒WBC↓or→ ESR↑ Ca↑ s 間質性肺炎/粟粒結核/ニューモシスチス肺炎 ⇒WBC→or↑ LDH↑ CRP↑ s 血管炎 ⇒BUN↑ CRE↑ CRP↑ ESR↑ s 強皮症/SLE ⇒WBC↓ リンパ球 ↓ plt↓ 溶血性貧血 ■ 頭部/胸部 CT くも膜下出血に肺水腫を合併することがある。頭痛/嘔気、 失神等を伴っていた際には頭部画像診断を施行する。 ■ 心エコー 「心機能正常」であることは、心不全による肺水腫を否定する根 . の . 、HOCM . 、僧帽弁狭窄症 .p.106 .p.105 .p.105 拠にならない。大動脈弁狭窄症 患者さんは、血管拡張薬と利尿薬による治療を開始すると急激な血圧低下を生 じる可能性があるため、治療前にエコーでの確認が必要になる。 3.7 肺野のびまん性間質影 81 N 分からなかったら 結核が否定できるまでは患者さんを個室隔離するとともに、酸素投与 を行う。 免疫抑制剤、あるいはステロイドを用いるかどうかの決断に悩む状況 が生じうる。薬物投与の根拠と、ステロイド禁忌となる疾患、具体的に は B 型肝炎と結核の除外診断が必要になる。 HBs 抗体、HBs 抗原、HBc 抗体、HCV 抗体、血液生化学検査/Ca/CPK、 ESR、β -D-グルカン†58 、KL-6、PR3-ANCA、MPO-ANCA、ACE、抗核 抗体、リウマチ因子、SS-A 抗体、SS-B 抗体、scl-70 抗体、抗 RNP 抗 体†59 、BNP を提出する。クォンティフェロン、喀痰の抗酸菌 PCR、培 養を提出する。 ニューモシスチス肺炎 ~ s 免疫抑制状態の患者さんが、乾性咳嗽と呼吸困難を訴え来院する s 低酸素血症と胸部単純写真上の間質影増強を呈する。胸水は少ない s 労作を契機に急激に増悪する呼吸困難を呈する s ステロイドを減量/中止したことをきっかけに発症することもある s HIV 抗体が陽性で間質性肺炎像を伴った場合、あるいは若年者が数ヶ月の 経過で体重減少と進行する呼吸困難で来院した場合には、HIV 感染症と本 疾患の可能性を考慮する ■ 検査 s 除外診断が重要になる。血液生化学検査/Ca/CPK、ESR、β-D-グルカン、 KL-6、PR3-ANCA、MPO-ANCA、抗核抗体、リウマチ因子、CMV-IgM を提出する。胸部 CT を施行する s 採血検査では LDH の単独上昇†60 、β-D-グルカンの上昇を見る。KL-6 の 上昇も認められる s 喀痰†61 の蛍光抗体染色で診断が確定する†62 。PCR†63 も感度が高い s サイトメガロウィルス感染症との見分けは難しい †58 . . p.81 カンジダ感染症、ニューモシスチス肺炎 †59 . .p.267 肺合併症を生じる膠原病 †60 LDH が 220 以下であれば本症の可能性は低いという [10] †61 痰が出ないのが特徴なので、高張食塩水吸入等で誘発する †62 喀痰の蛍光抗体染色以外にもグロコット染色、鍍銀染色、Diff-Quick 法などで診断できる。各施設で診 断に用いる検査は異なる †63 保険外検査 82 第 3 章 呼吸器系の問題 ■ 治療 s ST 合剤(バクタ .R. )の内服/静注を行う s トリメトプリムで 5 mg/kg を 1 日 3 回、14-21 日間†64 用いる [2]。50kg . の人ならバクタ R. を 9 錠/分 3 で開始する s PaO が 80 mmHg 以下の重症者にプレドニゾロンを併用すると気管内挿 2 管を回避できるという。プレドニゾロン 80 mg/分 2 を 5 日間、40 mg/分 1 を 5 日間、20 mg/分 1 を 11 日間投与する [2] サルコイドーシス ~ s 原因不明の全身性炎症性疾患 [85]。半数は肺間質影、両側肺門リンパ節腫 脹で発見される。無症状の患者さんも多い [30] s 全身症状として発熱、体重減少、疲労・倦怠感、呼吸困難、咳嗽を生じる [7] s 肺結核 . などが除外診断の . 、悪性リンパ腫 . 、過敏性肺臓炎 .p.310 . p.69 .p.302 対象になる [34] ■ 検査 s 血液生化学検査/Ca/CPK、蛋白分画、ESR、ACE、β-D-グルカン、KL-6、 PR3-ANCA、MPO-ANCA、抗核抗体、リウマチ因子を提出する。24 時 間蓄尿中 Ca を提出する。胸部 CT を施行する s 血液検査では白血球減少、赤沈の亢進、20% に高 Ca 血症を認める [1]。 40% に高 Ca 尿症を認める [30]。蛋白分画でガンマグロブリンの増加を認 める s 慢性炎症性疾患では、一般に血清 ACE は減少する。サルコイドーシスの 患者さんは、40-80% の患者さんで血清 ACE が高値†65 をとる s 全患者さんの 90% 以上に何らかの肺実質病変を生じる s CT ではほぼ全例に肺門/縦隔リンパ節の腫大、小粒状の肉芽腫が散在する s 小粒状影は胸膜、小葉間隔壁、気管支血管束に沿う傾向があり、気管支血 管束が結節状に腫大/肥厚して見える [65] s ガリウムシンチで肺門リンパ節の集積、皮膚や心筋の生検で非乾酪性類上 皮肉芽腫を証明できれば診断が確定する s 気管支肺胞洗浄液のリンパ球数が増加する。CD4/CD8 細胞比が高くな る†66 。疾患特異性は低い代わり、病勢を反映する †64 HIV 感染陰性の患者さんは 14 日間、陽性の患者さんは 21 日間 †65 . 、アルコール性肝疾患 . 、甲状腺機能亢進症 . 、副甲状腺機 .p.215 .p.164 .p.314 他に高値をとる疾患は、PBC . 、多発性骨髄腫 . 、珪肺症 [9] .p.235 .p.246 能亢進症 †66 3.5 以上あるとサルコイドーシスである可能性が高くなる [2] 3.7 肺野のびまん性間質影 83 s KL-6 が上昇する。肺病変の機能予後を反映するという ■ ぶどう膜炎 s サルコイドーシスではぶどう膜炎を生じる。眼科依頼が必要になる s ぶどう膜炎はサルコイドーシスのほか、Behçet 病 . 、原田病、炎症性 .p.308 . 、強直性脊椎炎などの全身疾患、ヘルペス感染症に合併する .p.161 腸疾患 ■ 治療 s 患者さんの 2/3 は数年以内に自然寛解、肺病変の軽快を見るので、無症状 の患者さんは経過観察 s 高 Ca 血症、関節炎、中枢神経障害、心サルコイドーシス、肝機能障害、進 行する呼吸器症状を合併した患者さんについては、0.5-1.0 mg/kg/日から プレドニゾロンの内服を開始し、数ヶ月から数年かけて漸減していく [1] s 治療とともに、血清中 ACE の低下を見る。ガリウムシンチや臨床症状/胸 Xp などの反応は 2-4 週で得られる s 反応があったらプレドニゾロンを減量しつつ、最低でも 1 年続ける s TNF 阻害薬のインフリキシマブ(レミケード .R. )に肺外病変に対する治療 効果が期待されている Wegener 肉芽腫 ~ s 全身の中型から小型の動脈に生じる血管炎。難治性の鼻づまりと副鼻腔 . 、中耳炎といった上気道炎の症状で発症する . p.18 炎 s 発熱や倦怠感を伴う。症状が進行するにつれて、咳や血痰、呼吸困難が出 現してくる s 40-50 歳の人に多い s 上気道と肺の壊死性肉芽腫の生検で確定診断する。胸部・副鼻腔 CT で肉 芽腫による占拠性病変が見つかる ■ 検査 s 検尿沈渣、血液生化学検査/Ca/CPK、蛋白分画、ESR、ACE、β-D-グル カン、KL-6、PR3-ANCA、MPO-ANCA、抗核抗体、リウマチ因子を提 出する。胸部 CT を施行する s 3/4 の患者さんで腎障害を生じる。蛋白尿や赤血球円柱が認められる [9] s 白血球数増多、CRP 増加、赤沈亢進を生じる。免疫グロブリン、特に IgA が増加する。リウマチ因子の軽度増加を認める [2] s PR3-ANCA が 患 者 さ ん の 90% で 陽 性 に な る 。10-25% の 患 者 さ ん で MPO-ANCA も上昇している 84 第 3 章 呼吸器系の問題 s 胸部 CT では、両肺野に多発する結節影を生じる。中心に壊死を生じ、空 洞を形成する ■ 治療 s プレドニゾロン 1 mg/kg/日の内服に加えて、シクロフォスファミド 2 mg/kg/日の内服、または 0.5-1.0 g/m2 の月 1 回点滴静注を行う s .. R シクロフォスファミド(エンドキサン )は、パルス投与のほうが副作用が 少ない代わり、効果も少ないという s 併用療法を 3-6 ヶ月行い、患者さんが寛解状態に入ったら、シクロフォス . ファミドの代わりにアザチオプリン(イムラン .R )を最大で 2 mg/kg/日 の投与に切り替えてもよい s 投薬は最低でも 12-15 ヶ月継続する 全身性強皮症 ~ s 皮膚や内臓の線維化と末梢循環障害を特徴とする全身性疾患 [85] s びまん皮膚硬化型全身性強皮症(dcSSc)は皮膚硬化、食道線維化に伴う嚥 下困難、肺線維症、心筋障害や腎障害を生じうる。時にレイノー現象を欠 如する [85] s 限局皮膚硬化型全身性強皮症(lcSSc)はレイノー現象が先行する。肺線維 症は少ない。肺高血圧を生じる。皮膚硬化は長期にわたって軽度で変化が 少ない [85] s 肺高血圧 . や下部消化管病変は両型に共通する。肺線維症の程度とは . p.59 無関係に発生する ■ 検査 s 指先を確認する。爪上皮の出血点、手指陥凹性瘢痕、指腹の萎縮、ソーセー ジ状の手指を生じる s 検尿沈渣、血液生化学検査/Ca/CPK、蛋白分画、ESR、ACE、KL-6、BNP、 PR3-ANCA、MPO-ANCA、抗核抗体、リウマチ因子を提出する。胸部 CT を施行する s 血算では軽度の貧血を認める†67 s 赤沈は正常か軽微な上昇。抗核抗体はほとんどすべてのケースで陽性。リ ウマチ因子は 30% 程度で陽性 s 生化学検査はほぼ正常であることが多い。抗核抗体が陽性であった場合は 抗 scl-70 抗体、抗セントロメア抗体、抗 DNA 抗体を提出する†68 †67 . を合併することもある .p.255 全身性強皮症で、腎機能低下に細血管障害性溶血性貧血 †68 dcSSc で抗 scl-70 抗体が、lcSSc で抗セントロメア抗体が陽性になる 3.7 肺野のびまん性間質影 85 s 血球減少、尿検査の異常、CPK 上昇、抗 DNA 抗体陽性があれば、混合性 結合組織病を見ている可能性がある s 肺高血圧症の有無を検索するため BNP を測定する [2] ■ 治療 s 診断と同時に、寒冷の回避や外傷からの保護、禁煙といった生活指導を行 うとともに、皮膚や末梢循環、肺、心臓、腎臓、食道、下部消化管症状の 有無について評価を行う [85] s 治療の適応については専門家に相談を s 高血圧症と腎機能障害に対して ACE 阻害薬†69 が第一選択となる [2] ■ レイノー現象 s 寒冷などの刺激により、指先の循環不全を生じる s 皮膚の色調変化を伴う。指先あるいはつま先に発症する s 病変部位を暖めることで回復することが多い s 特発性のレイノー病以外に、強皮症、SLE . 、肺高血 . 、PM/DM .p.277 .p.289 . などに合併する。手根管症候群や . 、クリオグロブリン血症 .p.191 . p.59 圧症 . も類似した症状を生じる [34] .p.316 甲状腺機能低下症 s 末梢の拍動を確認、動脈硬化性疾患の有無を確認するとともに、血液生化 学検査、抗核抗体、RF、赤血球沈降速度、蛋白分画、TSH/FT4 を確認する s 症状に対して、ニフェジピン(アダラート .R. )やアムロジピン(ノルバス †70 .. R .R. ク )の内服 を試みる。プラゾシンやドキサゾシン(カルデナリン )を 用いることもある 癌性リンパ管症 ~ s 転移性の肺腫瘍がリンパ管を閉塞して発症する s 胸部画像の変化が軽微なうちから重篤な呼吸困難を生じる s 胸部単純写真、CT にて、肺野末梢から中枢に向かうびまん性線状影を見る s 乾性咳嗽と呼吸困難、血痰を生じる s 胃癌/肺癌/乳癌/膵癌に多い。原発となる悪性腫瘍が、すでに診断されて いることが多い s 原発巣に対する化学療法、症状緩和のためにプレドニゾロンで 1 mg/kg/ 日程度の投与が行われる †69 . を生じうる .p.128 合併症として血管性浮腫 †70 ジルチアゼムの効果は少ないという