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腸内環境に及ぼすカレー香辛料の影

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腸内環境に及ぼすカレー香辛料の影
122
浦上 財 団研 究 報 告 書VoL5(1996)
腸内環境 に及ぼすカレー香辛料の影響
菅
1.は
原
じめ に
正
義(国 立長岡工業高等専門学校物質工学科助教授)
カ レ ーの 主 要 構 成香 辛 料 で あ る ク ミ ン,コ
日本 人 の 食生 活 に は,カ
レ ー な どの 香 辛 料 を豊
ダー,レ
リア ン
ッ ドペ ッパ ー と油 脂 と して ラー ド を用 い
富 に含 ん だ食 品 が 多 く取 り入 れ ら れ'1,量 的 に も
た カ レー モ デ ル を作 成 し,ラ
重 要 な位 置 を確 立 して い る。 近 年 の エ ス ニ ック食
腸 内環 境 に及 ぼ す影 響 を 中心 に血 中 脂 質,盲 腸 内
品 ブ ーム に よ り,新 た に食 品 メニ ュー に取 り入 れ
菌 叢,盲
られ た新 参 食 品 を も加 え る とそ の摂 取 量 が 増 大 し,
ダ ー ゼ,ニ
栄 養学 的 に もそ の 影響 が無 視 で き な い要 素 とな っ
SOD(superoxidedismutase)活
て きて い る21。これ ら香 辛 料 に は,生 薬 とし て も
ロ ー ル 含 量 を 測 定検 討 した 。 また,そ
利 用 され てい る 薬 効 の 強 い ものが 数 種 類 あ り,そ
の結 果 得 られ た 変 化 をinvitroで
の 他 に も多 くの 生 理 活性 成 分 を含 み,抗 菌 作 用 を
ラ ッ ト盲 腸 内 容 物 希 釈液 に香 辛 料 を添 加 して,嫌
有 す る もの が 多 数 存 在 す る3}。した が っ て,香
気 的 に維 持 して 短 時 間 内 の酵 素 活 性 に及 ぼす 影 響
辛
料摂 食 に よ る宿 主 の 健 康維 持 に対 す る生 理 的 な 影
香辛 料 は,一 般 的 に植物 種 子 や葉 の乾 燥 物 で あ
り難 消化 性 成 分 が 多 く含 まれ,経
口的 に摂 食 後 一
腸 内 β一グ ル コ シ ダ ー ゼ,β 一グル ク ロ ニ
トロ レダ ク タ ー ゼ,ア
ンモ ニ ア,肝 臓
性,コ
レステ
のinvivo
検 証 す る 目的 で,
に つ い て検 討 した 。
2.カ
響 は大 き い と推 察 され る。
ッ トに投与 して そ の
レー モ デル につ い て
研 究 を開 始 す るに 当 た り,多
くの レ シ ピ を検 討
した 結果 カ レー 料 理 とい う定義 が きわ め て広 範 に
部 の 水溶 性 成 分 が 腸 管 内 で溶 出 吸収 され る以 外,
わ た る こ とが わ か った こ とか ら,本 実 験 で は実 験
消 化 管 を通 過 して 大 腸 に まで 至 る。 大 腸 内 に は,
系 を シ ン プ ル にす るた め,ほ
各種の腸内細菌 が安定 なバ ラ ンスを保 ちなが ら
主 要 構 成香 辛 料 で あ るク ミ ン,コ
100兆 程 度 の 菌 数 が 常 在 し て お り,有 害,有
益な
ぼす べ ての カ レー の
ッ ドペ ッパ ー と油 脂 と して ラ ー ドを用 い た カ レー
さ ま ざ ま な代 謝 を行 っ て い る こ と が 知 ら れ て い
モ デ ル を作 成 した 。 ク ミン,コ
る4,5)。
抗 菌 作 用 を有 す る香 辛 料 は,大 腸 内 で こ
ッ ドペ ッパ ー は それ ぞ れ10:10:3と
の 腸 内細 菌 に何 らか の 影 響 を与 え る こ とが予 想 さ
混 合 して以 下 の実 験 に用 い た。
れ る。本 研 究 で は,ラ
ッ トを対 象 と して,カ
レー
粉 を構 成 す る主 な香 辛 料 を経 口 的 に投 与 し腸 内 細
菌 の構 成 に及 ぼ す 影 響 と腸 内 細 菌 の有 す る発 ガ ン
リア ン ダー,レ
2.1供
リア ン ダー,レ
なるように
試 香辛 料
実 験 に 用 い た香 辛 料 の 詳細 を以 下 に示 す。
・ク ミン(Cumin
,Cuyninitimcyminum)セ
リ
関 連 酵素 や 有 害 な腸 内 腐 敗 産 物 の生 成 に及 ぼす 影
科 ク ミン の種 子 を乾 燥 した もの で,主 香 気 成
響 を調 べ た。
分 と して ク ミンア ル デ ヒ ド,フ ェ ラ ン ドレ ン,
しか し,一 言 で カ レー と言 っ て もそ の組 成 は多
リモ ネ ンな どの 成 分 を 含 有 す る。(中 近 東,
種 多様 で あ り,き わ めて 多 種 の香 辛 料 が含 まれ て
モ ロ ッ コ,ソ 連),ハ
い る こ とか ら,ま ず,本
入 り市 販 粉 末 品
実 験 で は,ほ
ぼ すべ ての
ウ ス食 品(株)製
ビン
腸 内環境に及ぼすカレー香辛料 の影響
・コ リ ア ン ダ ー(Coriander
η4耀 初
考 え る と香辛 料 の多 量 摂 取状 態 で あ り,香 辛 料 は
リ科 コ エ ン ドロの 実 を刈 り取 っ
食 物 繊 維 の供 給 源 と して も重 要 な意 味 を持 つ こ と
sativum)セ
て 数 日間 熟 成 後,乾
精 油 を 約3%含
,Co1勿
123
燥 した もの を使 用 す る。
が 推 察 され る。 また,ク
有 し,香 気 成 分 リナ ロー ル,
ミ ン とレ ッ ドペ ッパ ー 中
に は,一 般 的 に食 物 繊 維 と して の生 理効 果 が 強 い
α一ピネ ン,β ゼ ネ ン,p一 シ メ ン な ど を含 む。
と考 え られ る8},水 溶性 多糖 類 が 比 較 的 豊 富 に含
甘 い 特徴 的 な芳 香 とか す か な辛 味 を有 す る。
まれ る こ とがわ か った 。
ハ ウ ス食 品㈱ 製 ビ ン入 り市 販 粉 末 品
・レ ツ ドペ ツ パ ー(Redpepper
frutescensandC.annum)ナ
シの 実
3.ラ
,Capsicum
ッ トにお け る香 辛 料 投 与 の 影響
調 製 した カ レー モ デ ル の腸 内環 境 に及 ぼ す 影響
ス科 トウ ガ ラ
を調 べ る 目的 で,ラ
香 りは あ ま り無 く強 烈 な辛 味 が あ る。
ッ トの半 精 製 飼 料 中 に カ レ ー
モ デ ル を添 加 して 飼 育,腸
内細 菌 叢,腸
内細 菌 の
カ プ サ イ シ ン な ど を含 む。 ハ ウ ス食 品㈱ 製 ビ
生 産 す る酵 素 活 性 ・腐 敗産 物 として の盲 腸 内 ア ン
ン入 り市 販 粉 末 品
モ ニ ア,血
2.2供
試 香 辛 料 の 分析
お,本
本研 究 に用 いた カ レー モ デル を構 成 す る香 辛 料
の 分析 値 を表1に
示 す 。 各 香 辛 料 は 実験 に供 した
粉 末 品 を用 い,一 般 成 分 を常 法 に よ り,食 物 繊 維
含 量 をAOACの
(Sigma)を
酵 素 重 量 法6}に準 じ た キ ッ ト
用 い て分 析 した。 各 香 辛 料 を37℃5
時 間pH7.0の
リン酸 緩 衝 液 で抽 出,フ
ェノール
中脂 質 等 に 及 ぼ す影 響 を検討 した 。 な
実験 で は仮 説 と逆 の結 果 が 得 られ た た め,
追 試 を行 っ た と こ ろほ ぼ 同様 の結 果 とな っ た こ と
か ら,本 報 告 書 で は 追 試 実験 の結 果 につ い て報 告
す る。
3.1動
物 実験
実 験 動 物 と し て は,4週
雄 ラ ッ ト(日 本 チ ャー ル ス リバ ー ㈱)を 準 閉鎖 式
硫 酸 法7)を用 い て 全糖 量 を分 析 して 可 溶 性 糖 量 と
実験 動 物 飼 育 装 置(名
した。 また,こ
導入,微
の 抽 出 液 に4倍 量 の エ タ ノー ル を
齢 のSPF-Wister系
文館 器 械 興 業MK式)内
に
生 物 汚 染 が な い よ う留 意 した環 境 下 で香
添 加 し て,多 糖 類 を 沈殿 させ濾 過 後 の濾 液 の 全 糖
辛 料 を含 まな い 半精 製飼 料 を投 与 して7日 間 予 備
量 を分 析 して,可
飼 育 を行 った 。 実験 環 境,実
溶性 単 糖 及 び オ リゴ糖 と した 。
これ らの 分 析 値 か ら,香 辛 料 は多 くの 脂 肪(脂
溶 性 成 分 を含 む)を 含 有,ま
た,多
くの 食 物繊 維
成 分 を含 む こ とが わ か っ た。 カ レー の 摂 食 形 態 を
表1香
後,8日
1%香
験 飼 料 に馴 化 させ た
目 に体 重 に よ っ て一 群8匹3群(対
辛 料 添 加群,4%香
辛 料 添加 群)に
照 群,
群分 け
を行 い,各 実 験飼 料 を 自 由摂 食 で 投与 し約2週
辛料の組成
間
124
浦上 財 団 研 究報 告 書VoL5(1996)
表2飼
飼 育 を行 っ た 。 この 実験 で 用 い た 実験 飼 料 の飼 料
組 成 を表2に
示 す 。 基 礎 飼 料 は,糖
α一コ ー ンス タ ー チ,タ
質源 として
ンパ ク源 と して カ ゼ イ ン
を用 いた 半 精 製 飼 料 で,通 常 カ レー 料 理 が 多 くの
動 物 脂 を含 む こ とか ら14%の
1,4%香
ラ ー ドを添 加 した 。
辛 料 添 加 は,飼 料 中 の シ ョ糖 の 一 部 を
香 辛 料 で 置 換 して 行 っ た。 実 験 期 間 中 は,毎
日飼
料 摂 取 量 及 び 体 重 を測 定 した。
飼 育 終 了 後,1日
に 解析 可 能 な腸 内 細 菌 叢 の サ
ンプ ル数 の 都 合 に よ って13,14,15日
分 け,毎
目の3回
に
日各 群 同 数 ず つ の ラ ッ トを体 重 の重 い ほ
料組成
実 験 終 了 時,解
体 重,飼
剖 直 前 の 体 重 を 終 体 重 と し,増
料 摂 取 量,飼
料 効 率 を 算 出 し た 。 ま た,
屠 体 重 及 び 各臓 器 重 を測 定 した 。
血 液 は,血
清 を 分 離 後,市
ール 値 を測 定 した
。 ま た,肝
用 い て 抽 出,酵
素 法 を用 い て コ レス テ ロー ル 含量
を 測 定 し た9)。
盲 腸 内 ア ン モ ニ ア 含 量 の 測 定 は,盲
嫌 気 性 希 釈 液 で 希 釈 後,冷
に分 割 後,液
体 窒 素 中 で 凍 結 しデ ィー プ フ リー ザ ー 中 でSOD
及 び肝 臓 コ レ ス テ ロー ル 分 析 時 まで保 存 した 。 ま
腸 内 容 物採
取 後 す み や か に 市 販 ア ン モ ニ ア 定 量 キ ッ ト(和
りラ ッ トを屠 殺 後,速
や か に 開腹 し肝 臓 を生 理 的
セ ト ン:エ
共 に ガ ラス ホ モ ジナ イ ザ ー を
うか ら順 に解 剖 を行 った 。解 剖 は,心 臓 採 血 に よ
液 を除 去 して2つ
コ レ ス テ ロ
臓 は,ア
タ ノ ー ル=1:1と
純 薬)を
食塩 水 で還 流,血
販 キ ッ トを 用 い た 酵
素 法 に よ り 総 コ レ ス テ ロ ー ル,HDL一
Rowlandら
用 い て 行 っ た 。 ま た,盲
光
腸 内 酵 素 活 性 は,
蔵 し て3時
間 以 内 に
の 方 法1°・11}によ り 測 定 し た 。R一 グ ル
コ シ ダ ー ゼ(β
一D-glucosideglucohydrolase),β
一グ ル ク ロ ニ ダ ー ゼ(β
た,盲 腸 は両 端 を結 紮 後 切 除,重 量 測 定 後 内容 物
onosohydrolase),ニ
一D-glucuronideglucur
-
ト ロ リ ダ ク タ ー ゼ は,各
々
を速 や か に嫌 気 的 に嫌 気 性 希釈 液 中 に入 れ,盲 腸
pNP-Q-glucopyranoside,pNP-Q-glucuronide,
内 菌叢 の解 析 に供 し,同 様 に嫌 気 的緩 衝 液 に懸 濁
p一 ニ ト ロ 安 息 香 酸 を 基 質 と し て 用 い,酵
して盲 腸 内酵 素 活 性 ・盲 腸 内 ア ンモ ニ ア の測 定 に
の 結 果 生 ず るp一 ニ トロ フ ェ ノ ー ル 及 びp一 ア ミ ノ
供 した。
安 息 香 酸 を 測 定 し て 活 性 測 定 した 。
3.2分
析
肝 臓 中SOD活
毎 日の体 重 及 び飼 料 摂 取 量 測 定 に よ り,実 験 期
間 中 は全 実 験 群 と も恒 常 的 に体 重 が増 加,特
著 な飼 料 摂 食 減 少 な ど は認 め られ な か っ た。
に顕
性 は,凍
素 反 応
結保 存 肝 臓 サ ン プ ル を
解 凍 ホ モ ジ ナ イ ズ し た 後,McCordandFridvich
の シ トク ロ ムC法
に よ っ て 行 っ た12)。
盲 腸 内 菌 叢 の 解 析 は 光 岡 の 方 法13,14)に 準 じ て 行
腸内環境 に及ぼすカレー香辛料 の影響
実2値
い,嫌
気性 希 釈 液 で 希 釈 後 冷 蔵 して5時
125
用土
喜士
約乃 び嬉 着 冬 件
間以 内 に
危 険 率5%で
の有 意 差 の検 定 を行 っ た15)。また,
培 養 を行 っ た。 嫌 気 性 希 釈 液 を 用 い て嫌 気 的 に
盲 腸 内菌 叢 に お け る各 菌 群 の 検 出 率 の 差 は,Fi-
101∼107ま で段 階 希 釈 を 行 い,非 選 択 培 地3種,
sherの 直 接 確率 計 算 検 定 法 に よっ て行 ったis>。
選 択培 地14種,計17種
類 の 寒 天 平 板 培 地 に塗 抹 し
て 培 養 した。 嫌 気 培 養 は,選 択 培 地 は ガ スパ ッ ク
法(BBL,三
菱 ガ ス 化 学),非
選択培 地は炭酸 ガ
3.4結
果
実 験 期 間 中 の成 長 結 果,飼 料 摂 取 量,飼
解 剖 時 の 肝 臓,盲
ス 加 ス チ ー ル ウー ル ジ ャー 法 に よっ て 行 っ た。 使
表4に
用 培地 及 び培 養 法 を表3に
て体 重増 加,飼
示 す 。 培 養終 了後,コ
ロ ニ ー形 態 とコ ロニ ー 数 を調 べ,す
ー を 釣菌 しBL平
べ て の コ ロニ
板 培 地 を 用 い て好 気 性 発 育 を 調
腸,盲
料効 率,
腸 内 容 物 水 分,pHを
示 す。 この 結 果 か ら,香 辛 料 の 投 与 に よ っ
料 摂 取量 に大 き な影 響 が な か っ た
こ とが わ か る。 また,一 般 的 に ラ ッ トにお い て食
物 繊 維,特
に水 溶 性 食物 繊 維 を負 荷 した 際 に 見 ら
べ た 。 ま た,す べ て の コ ロニ ー の 菌 を ス ラ イ ドグ
れ る 盲腸 の肥 大,盲
ラ ス上 に火 炎 固 定 し,グ ラ ム 染 色 標本 を作 成 して
加 な どの現 象 は,今 回 の実 験 に お いて は認 め られ
鏡検 を行 い,グ
な か っ た。 本 実 験 に 用 い た香 辛 料 混 合 は,約40%
ラム 染 色性,菌
形 態,芽 胞 の有 無
を調 べ た。 以 上 の 観 察 か ら選 択 培 地 の菌 数,好
性 発育,グ
ラム 染 色性,コ
芽 胞 形 成 性,レ
気
ロニ ー 形 態,菌 形 態,
シチ ナ ー ゼ 生 産 性 な どの結 果 か ら,
8種 の嫌 気 性 菌 と6種 の好 気性 菌 に菌 群 レベ ル で
同定 し,各 々 の 菌 数 を湿 盲 腸 内容1g当
た りの 対
数 値 で算 出 した 。
3.3統
の食 物 繊 維 を含 み 約2%の
低 下,盲 腸 水 分 の増
水 溶 性 多 糖 類 を含 ん で
い る が,い か な る理 由 で影 響 を与 えな か った の か
は 明 らか で は ない 。
香 辛 料 投 与 に よる 盲腸 内菌 叢 の 変 化 を図1に 示
す。 本 グ ラ フ に示 した菌 以 外 は,今 回 使 用 した ラ
ッ トか ら は 検 出 さ れ な か っ た 。 好 気 性 菌 で あ る
計解析
Enterobacteriaceae,Enterococci,Staphylococci,
各 測 定 項 目は,測 定 値 を平 均 値 ±標 準 偏 差 で 示
し,平 均 値 の差 の 検 定 は,Wilcoxonの
順 位 和 検 定 法 及 びStudentのt検
腸pHの
符号付 き
定法 に よって
嫌 気 性 菌 で あ るLactobacilli,Bacteroidaceae,
Bifidobacteria,Clostridia,Eubacteriaす
べ て
の菌 群 にお いて 香辛 料 投 与 に よ る顕 著 な 変 化 は,
126
浦 上 財 団研 究 報 告 書VoL5(1996)
表4成
長結果及び飼料摂取結果
Zn-SOD)を
菌 数,各 菌 群 の検 出率 共 に認 め られ な か っ た。
表5に 解 剖 時 に お け る血 清 総 コ レス テ ロ ー ル,
HDLコ
糖 値,盲
レス テ ロー ル,肝
盲 腸 内 の 腸 内腐 敗 産 物 ア ンモ ニ ア の濃 度,量
腸 内容 物 の ア ン モ ニ ア,β 一グ ル コ シ ダ
ゼ 活 性,肝
臓 中 のSOD活
トロレダ クター
性(Mn-SOD,Cu,
content,anderrorbarsshod-SD.
た,盲
腸 内 の発 ガ ン関 連 酵 素 β一グル コ シダ ー ゼ,
腸 内 菌 叢 の変 化
ColumnsshowmeansofLogbacterialcounts/gramofwetcecum
共に
香 辛 料 の 用 量依 存 的 に減 少 す る傾 向 を示 した。 ま
β一グル ク ロ ニ ダ ー ゼ 活 性 は,香
図1盲
辛
料 投 与 に よっ て特 に顕 著 な 変 動 を 示 さ な か っ たが,
臓 コ レス テ ロ ー ル,血
ー ゼ,β 一グル ク ロ ニ ダ ー ゼ,ニ
示 す。 各 血 中 成 分 とSODは,香
辛料の 用量依存
腸内環境 に及ぼすカレー香辛料の影響
表5血
的 に増 大 し,特
に4%香
中 成 分 及 び盲 腸 内 ア ンモニ ア ・酵 素活 性
辛料 投 与 に おい て対 照群
と の 間 に 有 意 差(p<0.05)が
認 め ら れ た。 しか
し,盲 腸 内 容 物 中 の ニ トロ レダ ク ター ゼ 活 性 は,
香 辛 料 投 与 に よ って 変 化 を 示 さ なか った 。
4.invitroに
1`17
調べた。
4.1実
験方法
実 験 装 置 は 図2に 示 す 。 ブ チ ル ゴ ム栓 を有 す る
ガ ス ク ロバ イ ア ル(日 電 理 化硝 子)に,長
おけ る酵素 活 性 に及 ぼ す香 辛 料
の影響
短2本
の注 射 針 をゴ ム 栓 を通 して 刺 し,長 い方 の針 が バ
イ アル の 底 に 届 くよ う にす る。 このバ イ アル 中 に,
前 章 の 結 果 か ら,カ
レー モ デ ル投 与 に よ って 盲
良 く沸 騰 させ 脱 気 した リ ン酸 緩 衝 液(pH7.0)
腸 内 β一グ ル ク ロニ ダ ー ゼ,β 一グ ル コ シ ダ ー ゼ 活
をバ イ ア ル の約1/3量 入 れ長 い 針 か ら還 元 銅 カ ラ
性 が 有 意 に増 加 す る こ とが わ か った 。 これ が生 理
ム を通 し酸 素 を 除 いた 窒 素 ガ ス を穏 や か に通 気 す
的 に どの よ うな 意 味 を 有 す る か は明 らか で はな い
る。 こ の時 バ イ ア ル を アル ミブ ロ ック 恒 温 器 で
が,使
37℃ に保 温 し,20分 後 緩 衝 液温 が37℃ に下 が った
用 した3種
の 香辛 料 の 中 で どの 香 辛 料 の ど
の成 分 が こ の よ うな 影響 を与 え るか を調 べ る目 的
ら各 々 の 香 辛料 を5%濃
で盲 腸 内 容 の 希 釈物 に香 辛 料 混 合 と各 香 辛 料 を 単
バ イ ア ル 中 に入 れ緩 衝 液 中 に懸 濁 した。 ま た,3
独 に添 加 し嫌 気 条 件 下 に保 ち,酵 素 活 性 の 変動 を
章 の動 物 実 験 の対 照 群(基
図2実
験装置
度 にな る よ う に嫌 気 的 に
礎飼 料 の み投 与)の
ラ
128
浦 上 財 団 研 究報 告 書VoL5(1996)
ッ ト3匹 分 の 新 鮮 盲 腸 内 容 を嫌 気 グ ロー ブ ボ ッ ク
含 み,ま た,食
ス 中 で混 合 しバ イア ル 中 に30%濃
素
明 らか に な った 。 カ レー な ど の香 辛 料 料 理 に お い
辛料 の代 わ りに濾紙
考 え る と,香 辛 料 は食 物 繊 維 の供 給 源 と して も興
度 に懸 濁,窒
て一 食 当 た り数 グ ラ ム の香 辛 料 を使 用 す る こ とを
ガ スを通 気 し なが ら4時 間 培 養 を行 った 。
実験 群 は,1.対
粉 末 を5%添
照 群(香
加),2.混
合 群(3章
投 与 した 香 辛 料 混 合 を5%添
(ク ミン を2.2%,濾
リア ンダ ー群(コ
を2.7%添
加),5.レ
ッバ ー を0.7%,濾
し た。4時
で ラ ッ トに
加),3.ク
紙 粉 末 を2.7%添
ミ ン群
加),4,コ
リア ンダ ー を2.2%,濾
ッ ドペ
加)の5群
と
間後 バ イ アル 中 の 液 中 の酵 素 活 性 を3
章 の盲 腸 内酵 素 活 性 の測 定 法 に 準 じて測 定 した 。
4.2結
味深 い。 だが 今 回 の 実験 で は,血 中 脂 質 な ど食物
繊 維 が一 般 的 に関与 す る項 目 に お いて,大
化 は認 め られ な か っ た。 しか し,ラ
紙粉末
ッ ドペ ッパ ー群(レ
紙 粉 末 を4.3%添
物繊 維 も豊 富 に含 ん で い る こ とが
きな 変
ッ トを対 象 と
した食 物 繊 維 の 生 理効 果 の一 つ で あ る脂 質 代 謝 改
善 の検 討 は,高
コ レス テ ロ ー ル飼 料 や 高 脂 肪 飼料
投与 条件 下 で 実 験 され る場 合 が 多 く,こ の 実験 結
果 か ら香 辛 料 の 食 物繊 維 と して の生 理 効 果 を考 察
は で きな い。 現 代 日本人 に とっ て カ レー 料 理 はす
べ て の世 代 にお け る人 気 メ ニ ュ ー で あ り,摂 食 す
果
本 方 法 に よ っ て実 験 を行 った 結 果 を表6に
示す。
る 回 数 か ら勘 案 す る と香 辛 料 の食 物 繊 維 供 給 源 と
本 方 法 で は,再 現 性 に乏 し く3回 実験 を行 った が,
して の生 理 効 果 の 解 明 は 意義 深 い もの で あ り今 後
完 全 に一 致 した結 果 が 得 られ な か っ た。 しか し,
の 研 究 が期 待 され る。
invitroに
性,特
お い て も,香 辛料 混 合 に よ っ て酵 素 活
にQ一 グル ク ロ ニ ダ ー ゼ 活 性 が 上 昇 す る こ
とが確 認 され,そ
の要 因 と して,ク
ミ ンが 関与,
また,カ
レー モ デ ル と して作 成 した 香 辛 料 混 合
投 与 に よっ て,菌 群 レベ ル で の盲 腸 内 菌 叢 は特 に
顕 著 な 変動 が 認 め られ な か っ た。 香 辛 料 の 持 つ 抗
β一グ ル コ シ ダ ー ゼ 活 性 の 上 昇 に は コ リア ン ダー
菌 性 か ら,総 菌 数 の 減 少,特
が 関与 して い る こ とが示 唆 され た 。
の 現 象 を予想 したが,今
5.ま
とめ
度 の 抗 菌成 分 で は,特
これ まで 述 べ て き た一 連 の 実 験 に よっ て得 られ
た知 見 か ら考 察 す る と以 下 の よ う にな る。
まず,今
ミン,レ
回使 用 した香 辛 料(コ
ッ ドペ ッパ ー)は,多
表6innitroに
リア ンダ ー,ク
量 の 脂溶 性 成 分 を
定 の菌 群 の 減 少 な ど
回 の 結果 か ら は香 辛 料 程
に腸 内細 菌 叢 の構 成 バ ラ ン
ス の 変 化 と して観 察 され るほ ど劇 的 な影 響 を及 ぼ
さな か った と考 え られ る。 本研 究 で は,対 象 が ラ
ッ トで あ り,ヒ
トの 大 腸 内 菌 叢 とは構 成 す る菌 種
や そ の バ ラ ン スが 異 な る こ とか ら,必 ず し も直 接
お け る 香 辛 料 の β 一glucosiodase,β
一glucuronidaseに
及 ぼす 影 響
129
腸内環境 に及ぼすカレー香辛料の影響
ヒ トの場 合 に外 挿 で き るわ けで は な いが,比
較的
腸 内 菌 叢 に 及 ぼ す 影 響 は小 さ い と考 え ら れ る 。
しか し,盲 腸 内菌 叢 の 構成 は顕 著 な変 化 を示 さな
か っ たが,代
謝 的 に は大 きな影 響 が 認 め られ た 。
果 を得 た 。今 後,ク
ミン,コ
リア ン ダー 中 の どの
成 分 が この よ うな現 象 を もた らす のか を研 究 す る
予 定 であ る。
今 回の 実験 は,ラ
ッ トにお け る実 験 で あ り,ヒ
す な わ ち盲 腸 内 ア ンモ ニ ア の減 少 と β一グ ル コ シ
トで同 じ現 象 が 示 す か を判 断 で き る よ うな 知 見 は
ダ ー ゼ,グ ル ク ロニ ダ ー ゼ活 性 の増 大 で あ った 。
ま だ ない 。香 辛料 多量 摂 取 地域 の ガ ン発 生 率 が 高
盲 腸 内 ア ンモ ニ ア は,腸 内 腐敗 産 物 の一 っ と して
い とい う疫学 的研 究 報 告 は無 く,こ れ ら両 酵 素 の
分 析 を行 った が,一
大 腸 発 ガ ンへ の 関与 が意 外 に低 い もの で あ るか,
般 的 に 他 の腐 敗 産 物 量 と正 の
相 関 を示 す こ とか ら,盲 腸 内 ア ン モニ アの 減 少 は
また は,ヒ
香 辛 料 摂 取 に よ って,腸
こら ない こ とが考 え られ るが,今 後 の 研 究 課 題 と
内 腐敗 が抑 制 され た こ と
が考 え られ る。 現 在,食 生 活 の 欧米 化 に伴 い タ ン
パ ク質 摂 取 量 の 増 加,脂 肪 摂 取 増 加 に伴 う胆 汁 酸
プ ー ルの 増 大,便
秘 の 増加 等 の 要因 に よ り,こ れ
トで は この よ うな 酵素 活 性 の 上 昇 が 起
して興 味 あ る 問題 で あ る。
以 上 述 べ て きた結 果 及 び 考 察 を ま とめ る と,香
辛 料 投 与 に よ り腸 内菌 叢 の 構 成 に変 化 は与 え ない
ま で の 日本 人 で は 考 え られ な か った 腸 内 細 菌代 謝
が,菌
の影 響 が 発 生 して い る こ とが予 想 さ れ て い る16)。
一 部 有 害 酵素 の活 性 増 加 も引 き起 こす が 腸 内 で の
特 に便 秘 に よ って 大腸 内容 物 の滞 腸 時 間 が 長 くな
有 害 腐 敗 代謝 を抑 制 で き る こ とが示 唆 され た 。
る と,腸 内 細 菌 に よ る腐敗 に よ っ て ア ミノ酸 由 来
の フ ェ ノー ル 類,短
鎖 分枝 脂 肪 酸,ア
ミン類,ア
ン モ ニ ア な どの 有 害 腐 敗代 謝 物 が生 成,宿
叢 を構 成 す る微 生 物 の 代 謝 に影 響 を与 え,
な お本 報 告 書 の一 部 は現 在 日本 栄 養 ・食 糧 学 会
誌 に投 稿 中 で あ る。
主であ
る ヒ トの 健 康 にゆ っ く り と影 響 を与 え,成 人 病 等
終 わ り に,本 研 究 を実 施 す るに 当 た り,多 大 な
の要 因 に な る と考 え られ て い る16)。今 回香 辛料 投
ご援 助 を賜 り ま した浦 上 食 品 ・食文 化 振 興 財 団 な
与 に よ り この 腸 内 腐敗 抑 制 の傾 向が 認 め られ た こ
らび に関 係各 位 に対 し て心 か ら感謝 の意 を表 し,
とは,健 康 の 維 持,成 人 病 予 防 の観 点 か ら も興 味
貴 財 団の 益 々 の ご 発展 を祈 念 い た しま す。 特 に,
深 い デー タで あ り,さ
らに進 ん だ他 の 腐 敗 産 物 へ
私 が 貴 財 団助 成期 間 中 に あ りな が ら文 部 省 在 外 研
の影 響 等 の 研 究 が 期待 され る。 しか し,香 辛 料 投
究 員 と して10か 月 間渡 米 した に もか かわ らず,助
与 に よ っ て β一グ ル ク ロニ ダー ゼ,β 一グ ル コシ ダ
成 期 間 を延長 して い た だ き大 変 ご迷 惑 を おか け い
ー ゼ活 性 が 著 し く増加 した の は意 外 な結 果 で あ っ
た し ま した 。 な お,本 研 究 は鈴 木 紀雄 君 の協 力 に
た。 これ らの 酵 素 は,一 般 に大 腸 発 ガ ン に関与 す
よ る もの で あ り こ こに感 謝 の 意 を 表 し ます 。
る と考 え られ て お り1η,本 研究 で は そ の抑 制 が 当
初 の 目的 で あ っ た 。 しか し,追 試 した に もか か わ
らず同 様 の 結 果 が 得 られ,香 辛 料 が これ らの 酵 素
生 産 菌 代 謝 に影 響 を与 え て い る こ とが 予 想 され た
こ とか らinvitroで
結 果,香
酵 素 生 産 へ の影 響 を検 討 した
辛 料 の影 響 を確 認 し,特 に β一グ ル ク ロ
ニ ダ ー ゼ 活 性 上 昇 に は ク ミン,β 一グ ル コ シ ダ ー
文
田博:浦
2)河
田 照雄:日
3)岩
田 和 夫,中 谷 延 二:香
社,東
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ゼ活 性 上 昇 には コ リア ンダ ー の関 与 を示 唆 す る 結
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・
ど6z(1
Effectsofspicemixturesupplementationnnratcecalfunctions.
Effectsofspicemixturesupplementationonratcecalfunctions.
MasayoshiSugawara(NagaokaNationalCollegeofTechnology)
TheeffectsofaspicemixturethatwasamodelofcurrypowderonratcecalURAKAMI
microflora,cecalR-glucosidase,a-glucuronidaseandnitroreductaseactivities,cecal
ammonia,serumcholesterol,livercholesterolandliverSOD(superoxidedismutase)
activitieswereinvestigated.Thespicemixturewhichcontainedcumin,corianderandred
pepper(10:10:3)wasaddedintheratsemipurifiedfeedwith14%oflard.24SPFWister
ratsweredistributedtothreegroupswhichwerecontrol(nospicesupplementation),1
spicemixturesupplementationand4%spicemixturesupplementation,andwerekeptfor
2weekswithtestfeeds.Ratsweregrownconstantly,andfeedintakeswerenodifferences
amongthreegroups.
Whenratsweredissected,cecalmicroflora,nitroreductaseactivites,pHandmisture,
livercholesterol,total-,Cu,Zn-,Mn-SODactivites,serumcholesterol,HDL-cholesterol,
andbloodsugarwerenodifferencesbythespicemixturesupplementation.Ammonia
concentrationsandamountsofcecalcontentsshowedatendencytodecreasedependently
onthespicemixturedoses.Ceaclβ
一glucuronidaseandβ
一glucosidaseactivitiesincreased
significantly(p<0.05)anddosedependently.
Toinvestigatetheenhancementfunctionofcecalenzymeactivitiesofthespice
mixture,Idesignedtheinvitrostudy.Dilutedcecalcontentswereincubatedwitheach
spiceorthespicemixture,andthenenzymeactivitieswereanalyzed./3-Glucuronidase
activitymightbeenhancedbycumin,andβ
一glucosidaseactivitymightbeenhancedby
coriander.
Inconclusion,bythecurrymodelintake,aputrefactiveproductsuchasammoniain
thececumdecreased,andcecalQ-glucuronidaseand/3-glucosidaseactivitiesincreased,but
thebalanceofcecalmicrofloradidnotchange.Iconsiderthespicemixtureaffectstothe
bacterialmetabolismsinthececum.
131
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