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全文 - 産学官の道しるべ

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全文 - 産学官の道しるべ
2013
6
Journal of Industry-Academia-Government Collaboration
Vol.9 No.6 2013
特集
http://sangakukan.jp/journal/
ベンチャーだからできること
学生ビジネスコンテストの夢を実現 イービーエム株式会社 心臓外科手術訓練シミュレータの世界展開
創業 10 年で従業員 200 人 ノーベルファーマ株式会社 アンメットニーズ分野で次々に新薬開発
窮地に経営戦略を見直し 株式会社イクシスリサーチ ロボット技術で社会の「安全・安心」を実現
■集中連載 日本流リサーチ・アドミニストレーター像を探る
■ 持続可能な科学技術イノベーション創出能力の強化に貢献する URA
■ 大学のあるべき姿を具体化する
産学官6月号.indb
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2013/06/11
11:29:18
巻 頭 言
健康科学・医療融合拠点の形成に向けて
高橋はるみ… ……… 3
特 集
ベンチャーだからできること
学生ビジネスコンテストの夢を実現 イービーエム株式会社
創業 10 年で従業員 200 人 ノーベルファーマ株式会社 窮地に経営戦略を見直し 株式会社イクシスリサーチ 心臓外科手術訓練シミュレータの世界展開
アンメットニーズ分野で次々に新薬開発
ロボット技術で社会の「安全・安心」を実現
東京都立産業技術研究センター
中小企業の海外展開を支援
CONTENTS
朴 栄光… ……… 4
塩村 仁… ……… 7
山崎文敬… …… 10
西野義典… …… 13
釜石電機製作所+岩手県工業技術センター
溶射による光触媒換気装置で畜舎の環境改善
JAXA の産業連携活動
福島県の産業振興を ICT で支援
… …… 15
渡戸 満 / 三保和之… …… 18
― 新たな産学官連携体制の会津大学復興支援センター ―
岩瀬次郎… …… 21
産学官連携プロジェクトからリハビリ・ヘルスケア用ゲーム
松隈浩之… …… 23
日本流リサーチ・アドミニストレーター像を探る
整備事業で 15 大学が人員配置
集中
連載
持続可能な科学技術イノベーション創出能力の強化に貢献する URA
~イノベーション・パイプライン・ネットワークを紡ぐ役割への期待~
柘植綾夫… …… 26
大学のあるべき姿を具体化する
福島県、再生可能エネルギー産業集積へ
産学金官連携で研究成果を早期事業化
産学官連携
ジャーナル
アーカイブ
科学技術イノベーションへの道(2)
先端技術の実用化の方策を提言
視点 / 編集後記
2
産学官6月号.indb
… …… 25
高橋真木子… …… 28
小柏美津夫… …… 30
… …… 33
… …… 35
Vol.9 No.6 2013
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11:29:19
巻
頭
言
■健康科学・医療融合拠点の形成に向けて
高橋 はるみ
たかはし はるみ
北海道知事
見渡す限り続く大地、四方を囲む豊穣の海、優美な山々からもたらされる清らかな水をたた
える湖沼・河川、四季の移ろいを鮮やかに映す豊かな自然。
こうした世界に誇りうる優れた環境を背景として、安全・安心で、おいしく高品質な農・林・
水産食材と、豊潤な水に恵まれた北海道は、わが国における食料の生産地域として、今後とも
重要な役割を果たすことが期待されている。
一方、わが国においては、世界に例を見ない速度で高齢化が進んでおり、年々増加を続ける
国民医療費の抑制は、喫緊の課題となっている。また、海外に目を転じてみても、いわゆる先
進地域においては、今後急速に高齢化が進展するものと見込まれている。
こうした中、
「食」や「環境」の分野で高い優位性を有する北海道が、
「健康」や「医療」に
関する高度で先進的な知識と技術を集積し、世界をリードする「健康科学・医療融合拠点」と
して先導的な取り組みを展開していくことは、国が進める健康長寿社会の実現にも大きく貢献
するものと考えている。
このため、北海道では、道内の産学官が一体となった「北大リサーチ&ビジネスパーク」を
中核として、本道の素材を活かした機能性食品の開発や機能性評価・分析拠点の形成等を目的
とする「さっぽろバイオクラスター“Bio-S”
」や、道内の 300 を超える医療機関が連携し、医
師主導型治験ネットワークの構築を目指す「オール北海道先進医学・医療拠点形成」など、ラ
イフサイエンス分野における数々のプロジェクトを展開し、本年 3 月には国内初となる細胞製
剤を用いた再生医療の医師主導型治験を開始した。また、水産・農畜産物の機能性食品の開発
等を推進する函館や十勝地域のバイオクラスター、さらには、北海道フード・コンプレックス
国際戦略総合特区の取り組みなどともさまざまな連携を図り取り組みを進めている。
さらに、平成 23 年に「地域イノベーション戦略推進地域(国際競争力強化地域)
」の指定を
受け、健康科学・医療融合拠点の形成に取り組んでいるほか、本年 3 月には、家庭を核とした
食・医融合を目指して、北海道大学、北海道、道内外の企業等が共同で取り組む「フード&メディ
カルイノベーション国際拠点」事業が、
「地域資源等を活用した産学連携による国際科学イノ
ベーション拠点整備事業」に採択されたところである。
北海道では、今後とも、わが国をけん引し、世界をリードしうる健康科学・医療融合拠点の
形成に向け、一層積極的な取り組みを展開して参りますので、引き続きご支援をいただくよう
よろしくお願いしたい。
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11:29:21
特集
ベンチャーだからできること
学生ビジネスコンテストの夢を実現
イービーエム株式会社 心臓外科手術訓練シミュレータの世界展開
心臓は、表面を覆っている冠動脈が動脈硬化などによって狭くなると、十分な血液を得る
ことができない。
体内の健康な血管を縫合することで十分な血液量を確保するための手術が冠動脈バイパス
手術である。
冠動脈は直径 2mm。外科医は髪の毛より細い糸で縫合する。若い医師にとっては、安全
に訓練を重ねて、技術を向上させることが課題である。
その手術訓練用のシミュレータを開発し、事業化しているのがベンチャー企業のイービー
エム株式会社。社長の朴氏が大学院時代にビジネスコンテストで提案した夢が実現した。
朴 栄光
ぱく よんがん
■心拍動下冠動脈バイパス手術と訓練シミュレータ開発のきっかけ
天皇陛下も受けられたことで脚光を浴びた冠動脈バイパス手術。全身に血液を
送り出す心臓自体も血液を必要とし、心臓表面を覆っている冠動脈を通じて新鮮
イービーエム株式会社 代表取締役社長
早稲田大学 理工学術院
客員講師
な血液が供給されている。動脈硬化などにより冠動脈が狭くなる(狭窄)と、心
臓は十分な血液を得ることができない。そこで、狭くなって血液が流れにくく
なってしまった血管部位の先に、体内で採取した健康な血管を縫合することで、
十分な血流量を確保するための手術が冠動脈バイパス手術である。冠動脈は直径
2mm 程度と細く、
外科医は髪の毛よりも細い糸を使って縫合する。まさに匠(た
くみ)の技である。
手技が患者の命に直結する心臓外科手術の分野では、若手の医師が実際に手術
を訓練する機会は少ない。安全に訓練を重ねて、医師の技術向上を図ることが
課題になっている。従来の冠動脈バイパス手術の訓練には、食肉用の豚の心臓
や 100 万円ほどの海外製シミュレータが使用されていた。豚の心臓に関しては、
準備 ・ 保管する手間や後片付け等があり、医師が日常的に訓練を行えるという状
況にはなかった。また、シミュレータに関しても、大型かつ煩雑であり、血管の
感触も実際とはほど遠い状態であった。筆者が早稲田大学修士課程に入学した
際、こうした背景を知り、手軽に使える訓練装置を実現すること
によって、若い外科医に“外科医としての生きがい”を持っても
らいたいと考え、装置の開発に乗り出した。
■冠動脈モデル YOUCAN と拍動装置 BEAT
筆者が開発したトレーニングシミュレータは、冠動脈を再現し
たモデル「YOUCAN(ヨウカン)
」と拍動装置「BEAT」から
なる(写真1)
。BEAT の動作部に YOUCAN を設置して、血
管縫合のセルフトレーニングを行う。BEAT は、人工筋肉と呼
ばれる特殊な形状記憶合金を使用することで、スムーズかつ静か
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写真1 心 拍動冠動脈バイパス手術訓練シミュレータ BEAT
と冠動脈モデル YOUCAN(黄色いモデル)
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特集
な拍動を再現する装置で、心筋表面の運動を再現している。拍動数、拍動パター
ン、振幅もリアルタイムで調節できる。フレキシブルジョイントにより、全ての
冠動脈の位置、
姿勢を再現することができる。心臓を丸ごと再現することはせず、
あくまで拡大鏡を付けた心臓外科医の視野から見て重要な冠動脈付近のみをシン
プルに再現した。YOUCAN は、実際の冠動脈に近いリアルな感触、手術訓練
において重要な物性を十分に再現することを重視して開発した。
大学における基礎研究を元に、手術訓練においては血管の針糸による引裂強度
(脆さ)と、弾性率(固さ)が重要であることを明らかにし、これらの物性値を
コントロールするため、素材と配合に関して研究した。試作して
は、何度も心臓外科医のもとを訪れ評価を繰り返し、研究を始め
てから3年後にようやく製品レベルのものが完成した。
訓練シミュレータは、使われなければ意味がない。例え高性能
なものでも、操作が難しかったり、持ち運びが大変であれば、敬
遠されてしまう。では、良い手術訓練シミュレータとは何か? それを学ぶために、当初、超一流の心臓外科医を訪ね続けた(写
真2)。日本のみならず、心臓外科の本場、米国ピッツバーグに
まで通い続け、若手心臓外科医の目線で、手術訓練を理解するこ
とができた。その結果「いつでも、どこでも、何度でも」
「手技
のスコアリングシステム」
「Simple but Enough」というコンセ
プトが固まり、オリジナルなシミュレータ設計の基盤となった。
現在までにディスカッションをしてきた心臓外科医の数は 3,000
人を超える。
写真2 ピッツバーグ大学心臓外科にて(2008 年)
(左:筆者、中央:津久井宏行医師、右:Dr. Pellegrini)
■研究から事業へ、研究室から社会へ
修士学生として早稲田大学で研究を続ける中で、臨床現場の現状を深く知るよ
うになった。
「このシミュレータを研究で終わらせず、現場の先生方に届けるた
めには事業化する必要がある」と思うようになり、ビジネスプランのコンテスト
に応募した。その結果、2006 年 3 月に「第 2 回キャンパスベンチャーグランプ
リ全国大会」で文部科学大臣賞、7 月に「第 9 回早稲田ベンチャーフォーラム」
で最優秀賞をそれぞれ受賞した。同年 8 月にこれらの賞金を元手に資本金 400
万円でイービーエム社を設立し、家賃 2,000 円の東京・大田区の産学連携施設
内にオフィスを構えた。従業員は社長1名からの出発である。
医学の世界で EBM というと通常 Evidence Based Medicine(根拠を元にし
た医療)を指す。これに対し、本社名の EBM は、
(筆者の指導教授である)早
稲田大学理工学部・梅津光生教授の哲学である Engineering Based Medicine
(工
学的知見を基盤とした医療)から付けた。第 1 期売り上げは約 120 万円。開業
当初は、生産方法も確立しておらず、1 人で試行錯誤の日々が続いた。3 年目に
ようやく小額の給与を自分に払うことができ、7 年目の現在では売り上げ 1.5 億
円、従業員 3 名に成長した。
「公的資金による研究成果を、大学発ベンチャーが
社会に還元する」というロールモデルを確立したいという想いから、操業以来黒
字経営を続けている。従業員は少なくても、早稲田大学、大田区ものづくり企業
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との連携を活かし、研究開発、製品化、品質管理、さらには経営手法までも学ぶ
ことができた。
創業当時から「経営は何度も失敗して学ぶものだ」と周囲から言われ続けたが、
大学が本来有している「高度な人材」と「集積した情報」を徹底的に活用するこ
とで、事業は順調に成長することができた。優秀な理系学生アルバイト、学会を
通じたマーケティングは経営上も有用であった。
しかしながら、販売ルートを持たなかったイービーエム社は、営業活動を開始
した当初、日本国内の大学や病院に、YOUCAN と BEAT をな
かなか導入してもらうことができなかった。装置開発に協力して
くれた外科医たちが、個人的に装置を購入してくれることで、小
さな売り上げを積み重ねていた。そうした取り組みの中で筆者
は、ある学会で心臓移植の世界的権威であるコルモス教授と出会
う。「ぜひこの装置をアメリカに持ってきなさい」という声に応
じ、試作品をスーツケースに詰め込み、ピッツバーグ大学病院を
訪問する。次から次へと米国医師を紹介してもらい、
丁寧にデモ、
ニーズヒアリング、改良を重ねた。最終的には 2009 年に最も権
威のある米国胸部外科学会において公式に採択され、世界のエキ
スパートの訓練に使われるようになった。この海外での実績が国
内におけるシェア拡大の契機となり、現在 100 施設以上に導入
されている(写真3)。
写真3 シミュレータによるセルフトレーニング
■バイパス手術トレーニングの国際標準化に向けて
本手術訓練事業が今後さらに発展するための鍵は、手技の定量的評価すなわち
スコアリング技術にあると考えている。縫ったモデル内部の血流をコンピュータ
でシミュレーションすることで、血管縫合の出来栄えを評価する。この評価技術
を本年中に実用化、商業サービスとして世界展開する予定である。全世界の心臓
外科医のトレーニングに対する評価プラットホームをオンラインで提供すること
で、バイパス手術訓練の国際標準を目指している。そのためには、今後も大学と
大学発ベンチャーの間において、互恵的関係の構築が必須である。
世界中の心臓外科医が、このシミュレータを通じて切磋琢磨(せっさたくま)
する未来を実現したい。
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ベンチャーだからできること
特集
特集
創業 10 年で従業員 200 人
ノーベルファーマ株式会社 アンメットニーズ分野で次々に新薬開発
製薬ベンチャー企業のノーベルファーマ株式会社は会社
設立からちょうど 10 年。順調に新薬の開発、販売を進め、
業容を拡大している。同社が照準を定めているのは、患
者や医師から強く望まれているのに、既存の製薬会社が
研究開発を手掛けない医薬品(アンメットニーズ医薬品)
。
具体的にはオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)
、効
能外で使用されている医薬品、小児用医薬品など販売額
の小規模な医薬品である。製薬業界では生き残りをかけ
て国際的な合従連衡が行われており、大手企業はブロッ
クバスター(国際的な規模で年商 10 億ドル[約 1,000
億円]を超える医薬品の通称)一辺倒。アンメットニー
ズ医薬品というニッチな市場を、経験豊富な人材を活用
して効率的に攻めようというのが同社の戦略だ。
代表取締役社長 塩村 仁 氏
これまでに、子宮内膜症に伴う月経困難症治療薬、ウィルソン病治療薬、新生児けいれん、て
んかん重積状態の治療薬など 6 つの医薬品の製造販売承認を得ている。このほか、他社から製
造販売承認を承継し、自社で販売している品目が 3 つある(表1)
。
2012 年 12 月期の売上高は 50 億 5,600 万円で、税引前当期利益は 5 億円。同期で繰越損失
を一掃した。会社設立時、8 人だった従業員はおよそ 200 人にまで増加している。
現在臨床試験中のものもいくつもあり、来年末には上市している医薬品が 15 品目くらいにな
りそうだ。成長の背景について塩村社長に聞いた。
(聞き手・本文構成:登坂和洋)
表1 上市した医薬品
商品名
効能・効果
ライセンス元
治験届年月 / 試験
承認年月
販社
ルナベル
子宮内膜症に伴う
月経困難症
ヤンセン
ファーマ社
2004 年 11 月
PⅢ
2008 年 4 月
日本新薬社
富士製薬工業社
ノベルジン
ウィルソン病 OD
テバ社
2004 年 8 月
PⅢ
2008 年 1 月
アルフレッサ
ファーマ社
新生児けいれん OD
てんかん重積状態
自社開発品
2005 年 9 月
P Ⅲ / 医師主導
2008 年 10 月
アルフレッサ
ファーマ社
機能性月経困難症
ヤンセン
ファーマ社
2008 年 7 月
PⅢ
2010 年 12 月
日本新薬社
富士製薬工業社
ファイザー社
2009 年 3 月
PⅢ
2011 年 7 月
エーザイ社
エーザイ社
2009 年 3 月
P Ⅰ / Ⅱ(最終)
2012 年 9 月
エーザイ社
SBI ファーマ社
(メダック社)
2010 年 4 月
PⅢ
2013 年 3 月
―
ノーベルバール
ルナベル
(効能追加)
ホストイン
てんかん重積状態
術後てんかん発作発現抑制等
ギリアデル
悪性神経膠腫 OD
アラベル
悪性神経膠腫の診断 OD
ホスカビル
サイトメガロウイルス網膜
クリニジェン社
症、同血症、同感染症 OD
承継品
2012 年 1 月
自販
インダシン
未熟児動脈管開存症 OD
ルンドベック社
承継品
2013 年 1 月
自販
コスメゲン
ウイルムス腫瘍、絨毛上皮
ルンドベック社
腫、小児悪性固形腫瘍等
承継品
2013 年 1 月
自販
OD =オーファンドラッグ
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2013/06/11
11:29:53
― わが国の創薬系のベンチャーは、米国などに比べると振るわないと言われています。
塩村 原因は 4 つあると思います。まず、ベンチャー企業の絶対数が少な過ぎ
ることです。成功確率は高くないですから、分母の数が必要です。第 2 に、こ
れは数が少ないことの原因でもあるのですが、資金を供給する機関・人が少ない
ことです。資金供給の多様性もありません。第 3 に、研究開発への公的な補助
金が少ないことです。特に臨床試験に対する補助金は米国より 2 桁少なく、話
にならないくらいです。人を対象にした最初の臨床試験はリスクが高く、市場規
模が小さい場合、
企業がそのリスクを全面的に負うのは厳しいのです。米国では、
この「谷間」を国が埋めています。多額の資金を投入しています。その臨床試験
がうまくいけば、
資金を出す人も現れます。特に市場の小さい医薬品については、
国がやらないと開発がなかなか進みません。
4 つ目の理由は日本の国民皆保険制度に関わります。医薬品や医療技術を保険
で償還するこの制度のおかげで日本は世界一の長寿国になりました。問題は、医
薬品の価格を決めるのは最後、
つまり製造販売承認が取れてからということです。
ノーベルファーマ
株式会社
・設 立
2003年6月6日
・資本金
1億6,165万円
・代表者
代表取締役社長
塩村 仁
・株 主
久 永 アンド カンパ
ニー有限会社、稲畑
産業株式会社
株 式会社日本 政 策
投資銀行(優先株)
・本 社
東京都中央区
日本橋小舟町
投資をし終わっているのに最後の最後の取引開始の時に納入価格を下げろと、立
場が圧倒的に優位な買い手に言われたらどうします。一企業の立場は弱いもので
す。最後の最後まで投資した資金が回収できるかどうか分からないということで
はなかなか前に進めないと思います。
― 必要とされているけれども誰もやらない薬の開発が御社のミッションですね。そうい
う分野の「開発ベンチャー」は日本では少ないですね。
塩村 少ないと思います。理由は今述べたことです。し
かし海外ではありますよ、普通にみられるベンチャー企
業です。当社の場合は、資金を出してくれる人がいたこ
とと、私が、割と早く上市できるようなシーズを知って
いたことが起業のきっかけになりました。
― 塩村さんは製薬会社で幅広い分野のマネジメント経験が
豊富ですね。
塩村 経営にもプロフェッショナルが必要です。開発、
生産、営業、さらに市販した後の安全性確保、これら各
業務にプロがいるわけですが、経営もプロの仕事です。
経営なんて誰でもできるような気がしてしまいますが、
大きな間違いです。会計、財務、税務、人事管理につい
て、一通りちゃんと知っていて、かつ意思決定ができる
ことが求められます。私は製薬会社以外の仕事はしたこ
とがありません。そういう意味では私は製薬会社経営の
プロです。しかし、多くの大学発ベンチャーにはそこが
難しいように感じられます。
― 従業員は 200 人ほどで、ベテランぞろいと聞いています。
塩村 平均年齢は 56 歳です。製薬会社の再編が進み、
人材が流動化していたので、人を集めやすかったという
ことはありました。製薬企業で部長をやっていた人が何
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特集
人もいます。開発部門では、実際に認可を取ったことのある人、営業部門では医
薬品の営業経験が豊富な人が多いですね。
― ある意味で知識集約型の効率的な経営ですね。
塩村 製薬業界がこれまで蓄積してきたノウハウを、当社は設立時から、そのま
ま活用できているわけです。ただ、昨年から、有能な若手人材の採用を開始しま
した。一方、当社は給与計算は全部外注。支払い業務もほとんど外注です。です
から従業員が 200 人いても、人事、経理、総務の 3 部門のスタッフは合わせてたっ
た 5 人です。研究所もありません。アカデミアの成果を活かすという意味で日
本中、世界中の大学が当社の研究所くらいに考えています。製造も外部に委託し
ています。従業員の半分近くは営業です。アンメットニーズ医薬品なので営業な
んかなくても売れると思っていたのですが、医家向け医薬品はインターネットだ
けでは売れないんですね。これは少し見誤りました。
― シーズは他の製薬会社から導入するものが多いのですね。
塩村 海外の企業とライセンス契約を結ぶものが多いです。外国の製薬会社は合
併により総じて規模が大きくなっています。このため、特許が切れかけていると
か、あまり利益が見込めないなどの理由で、日本で開発しない薬があります。わ
れわれはそういうものも結構手掛けています。一つ一つは大きくなくても、数を
打ち、数で稼ぐというのが当社の方針です。シーズには、純粋に大学から出てき
たものもあります。また、当社は大学との提携が多いと思います。提携といって
も、大学に臨床試験や研究を委託するといった形でなく、大学の研究者と共同研
究する、あるいは研究者に研究協力をする形です。独立行政法人国立病院機構名
古屋医療センターに研究協力し開発したものもあります。もうじき申請する膀胱
がんの診断薬については、高知大学に研究協力して開発しました。
― 創薬のイノベーション創出に向けて一言。
塩村 初めの話に戻りますが、アンメットニーズ医薬品など市場の小さい医薬品
の開発における「官」の役割について議論してほしいことと、薬の価格の決め方
をもう少し合理的なものにしてほしいということです。
悪性神経膠腫という重い脳腫瘍の患者は年間 2,000 人とか 3,000 人です。な
かなかいい薬がなかったのですが、当社はその治療薬を今年1月に発売しまし
た。その薬は術後 1 回の投与ですので 300 万円くらいの薬価をお願いしましたが、
約 120 万円に査定されました。手術の技術料より高いのが問題だという発想で
す。技術料の評価が低すぎると考えるべきで、そのことは別の場で、正当に評価
されるよう議論してほしいと思います。
別の薬ですが、厚生労働省から開発要請書をもらい、それに応えて開発したも
のがあります。これは、当社の希望価格を減額されました。当社はベテランのス
タッフがいくつもの医薬品を効率的に開発しているので何とか経営をやっていま
すが、普通の会社ではまずやれません。注目されている再生医療でも、開発が進
むとこうした問題が改めて認識されることになるのではないでしょうか。
― ありがとうございました。
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Vol.9 No.6 2013
産学官6月号.indb
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2013/06/11
11:30:09
特集
ベンチャーだからできること
窮地に経営戦略を見直し
株式会社イクシスリサーチ ロボット技術で社会の
「安全・安心」
を実現
ロボット開発ベンチャーの株式会社イクシスリサーチが目指しているのは「使い続けられ
るロボット」だ。状況が変化しても現場で当たり前のように毎日使えるものである。学生
時代に世界中のロボット大会を渡り歩き、
「試合で必ず動かす」ためのものづくりの経験
が原点である。ターゲットとしているのは、老朽化している社会インフラのメンテナンス
や医療福祉の分野だ。
■趣味が高じて会社設立
山崎 文敬
やまさき ふみのり
四半世紀ほど前になるが、私は早稲田大学大学院で人工心臓の研究を進める傍
ら、趣味でロボット開発にまい進し、RoboCup をはじめ、世界中のロボット大
株式会社イクシスリサーチ
代表取締役社長
会を渡り歩いていた。しかし、その遠征費とロボット開発費がついに捻出できな
くなった。1998 年 6 月のことである。
開発したロボットはロボットコンテストで上位の成績を収めており、そのロ
ボットを売ってほしいという大学などの研究者からのニーズもあったので、資金
難に陥った時、後先考えず 30 分で起業を決断した。
「ロボットをビジネスにす
れば開発費を生み出せるかもしれない」と考えたのである。その 1 週間後、遠
征費とロボット開発費捻出のために株式会社イクシスリサーチを設立した。
■ロボット技術で社会の安全・安心に貢献
そんな安易な考えで立ち上げた会社は、当時のロボットブームの流れに乗り、
大学や研究機関向けに人型ロボットなどを試作開発してきたが、2005 年の愛知
万博後そのブームが下火になり、ロボット関連のベンチャー企業は氷河期に突入
した。ここに至って当社は、経営戦略を見直し、しっかりとした事業計画の策定
を迫られるようになった。
私が目指したのは、状況が変化しても現場で当たり前のように毎日使える洗練
された道具(ロボット)を作るということであった。背景には、
ロボット大会に出場していた時の「試合で必ず動かす」ためのも
のづくりの経験や、大学で学んだ生体信号処理の知見がある。
そこで経営理念を
「使えるロボット」
「使い続けられるロボット」
とし、
「メンテナンスロボット事業」
「医療福祉機器ロボット事業」
を柱としたビジネスモデルの構築を始めた。
メンテナンスロボットは、各所で深刻な問題となっている社会
インフラの老朽化にすぐに役立つと考えられた。しかし実際に参
入を試みると、メンテナンス業界は成熟産業であるが故に参入障
壁が高い。そこで自社の経営理念に基づき、現場の作業手順や文
10
産学官6月号.indb
マグネット吸着型 橋梁超音波探傷ロボット
Vol.9 No.6 2013
10
2013/06/11
11:30:19
特集
化風習を学び、どのようなロボットを作れば現場が受け入れてくれるかを
考え、機能、操作性、コストの 3 方面から検討したシンプルなロボットを
提案していった。
当社が提案したロボットは、作業員の誰でも直感的に使える、構造がシ
ンプルで故障が少ない、かつ低価格で導入が容易である――という理由で
各方面から注目を集めた。このロボットの特徴は、機能を最小限に絞り、
現場に立ち会っている作業員の補助を最大限活用することと、モーターを
1 個しか搭載していないことである。
一般に、省力化を目的としたロボットなどに前向きに関与する作業員は
少ない。導入が決定されれば自身の雇用も危ぶまれるからである。こうし
たロボットは、少しでも不具合が見つかれば、鬼の首を取ったような勢い
で「使えない」の烙印(らくいん)を押されてしまう。
われわれが作るべきロボットは、作業員の今までの経験を十分生かせ、
かつ、彼らの作業をより安全に、効率的に進められるものである。つまり、
マグネット吸着型
石油化学プラント壁面検査ロボット
作業員の「身体の拡張」をするロボット。見えない所をカメラで覗き、手の届か
ない所にセンサーを投入し、その結果、作業員は安全な場所で自身の経験に基づ
いてそれらの検査結果を評価できるものである。その際に、作業員の技量の差を
埋めるのに必要な情報を併せて提示してくれるシステムであるとなお良い。作業
の質の均一化が図れるからである。
■顧客ニーズの本質を見抜くことが事業成功の秘訣
ロボットの顧客だけでなく開発メーカーも、ニーズを全てロボッ
トのみで解決しようとする傾向がある。しかし、
顧客のニーズには、
そもそもロボットを開発することでその問題を解決するものでは
ないことも多い。つまり、顧客自身も本当のニーズが分かってい
ないこともある。
例えばメンテナンス業界で省力化のためのロボットを検討する
際、作業員が実施している検査作業を、より短時間でロボットに
実施させようとする場合が多い。しかし、作業員より短時間で効
橋梁狭隘部目視検査ロボット
率的に作業できるロボットは容易には開発できない。現在の検査方法は作業員
が実施することを前提にしているからだ。一方、検査業務の工程はデータ取得
より複雑で、取得したデータを手作業で整理して解析し検査報告書を作るまで
に数週間を要している。
検査業務の時間を短縮化するのは容易である。メンテナンスロボットにおい
て最も重要なのは、ロボット自体を高性能化することではなく、トータルな時
間短縮を目的として、ロボットで取得したデータをデータベース化し、容易に
欠陥の深刻度や経年変化を観察できるシステムを開発することである。ロボッ
トが作業員よりも少々検査に時間を要しても誤差の範囲なのである。
このように、顧客ニーズの本質がどこにあるかを見極め、それを最小限の機
能で実現できるロボットを提案することが事業成功の秘訣である。顧客から要
求されたことに事務的に応えるだけでは埋もれてしまう。
プラント高所配管検査ロボット
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ベンチャー企業とはいえ、
作りたいものだけを追い求めても駄目で、
顧客のニー
ズに応えるだけでも駄目である。
■産学連携が新規参入の壁を低くする
一方、もう1つの事業の柱である医療福祉機器ロボットは薬事法をはじめとす
る各種規制により、
容易に参入できる分野ではない。特に対象が患者であるため、
開発時に社内で性能評価することができず、また、いつでも病院で評価すること
もできない。さらに困難なことは、患者によって症状が違うだけでなく容態も一
定ではないことである。患者の症状は日々変化し、快方に向かう場合もあれば悪
くなる場合もある。
そのため、ある患者に特化して機器を調整しても、他の患者に使えないだけで
なく、日々変化する症状のためにその患者にもしばらくすると適用できなくなる
か、再調整が必要となる。
このような機器を 1 機種開発して全国展開しようとしても、受け入れる側の
医療機関も適用可能患者が少ないだけでなく、患者の一時期にしか使えないため
採用が困難である。またメーカーもそのサポートを全国規模で実施することは難
しい。福祉機器ロボットは、多種のロボットを同時に導入し、どの症例の患者の
どの時期にでも、どれかのロボットが使える環境を構築し機器の稼働率を上げる
必要がある。
次のようなスキームが求められる。
1.開発したロボットを評価できる病院が、さまざまな症状や容態の患者に対
して効果的なロボットを使ったリハビリプログラムを構築する
2.それに必要なさまざまなロボットを企業が開発する
こうしたことが実現すれば、病院主導で、治験も容易となり参入障壁が下がる
ことが期待される。
つまり、1 機種のみを研究開発するベンチャー企業では対応できないのである。
■日本でのベンチャー事業
日本は米国に比べ資金調達が困難だとよく言われる。確かにアーリーステージ
での資金調達は難しい。しかし顧客のニーズの本質を見極め、そこへ最短で解決
できるビジネスモデルを構築すれば、早い段階で利益を得ることができる。むし
ろ、事業化が早くなることが期待されるので良いことであると考えるべきだ。
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東京都立産業技術研究センター
中小企業の海外展開を支援
製品輸出を目指す企業が増えている中、仕向け先の国・地域の規格を知ることや、
製品がその規格に適合しているかどうかを調べることは大きな負担だ。中小企業
のこうした要望に応えるため昨年 10 月、広域首都圏輸出製品技術支援センター
(MTEP)が設立された。東京都と 8 県の公設試験研究機関が参加している。
■はじめに
東京都立産業技術研究センター(以下「都産技研」
)は、2006 年 4 月に地方
独立行政法人として東京都の組織から分離し独立した。都産技研は中小企業の
ニーズに基づき技術面で中小企業を支援することを目的としている。目的の 1
つにお客さまの製品の評価試験を行うことがある。お客さまの製品について、国
西野 義典
にしの よしのり
地方独立行政法人東京都立
産業技術研究センター
輸出製品技術支援センター長
内、海外市場を問わず規格に沿った試験を行う。しかし、技術分野や地域別・国
別にさまざまな規格があり、全てを網羅することは困難であった。お客さまの要
求は試験ばかりでなく「規格書を参照したい」や「CE マーキング(欧州連合=
EU =地域に販売される指定の製品に貼付を義務付けられる基準適合マーク)の
技術文書を作成してほしい」など多様であった。
規格に対するお客さまの多様なニーズに応えるために、2012 年 10 月、広域
首都圏輸出製品技術支援センター(MTEP)を設立した。広域のお客さまに対
応するために MTEP には都産技研に加え、関東地域の公設試験研究機関(以下
「公設試」)が参加している(当初参加は埼玉県、千葉県、神奈川県、長野県の 4
県、2013 年 4 月からさらに茨城県、栃木県、群馬県、山梨県の 4 県が加わる)
。
以下で MTEP の役割、実績について述べる。
■ MTEP の役割
MTEP には、①海外規格閲覧サービス ②専門相談員による規格技術相談 ③適
合性評価試験サービス ④海外適合規格設計支援および情報提供サービス、の 4
つのサービスメニューがある。
その中から①および②について説明する。
(1)海外規格閲覧サービス
MTEP では一般財団法人日本規格協会(JSA)と提携して IEC(電気・
電子機器に関する国際標準規格)、ISO(国際標準化機構で策定された国
際規格)および JIS(日本工業規格)の規格閲覧サービスを実施している。
都産技研の MTEP 本部に規格閲覧用の専用端末を設置し、JSA のデータ
ベースをアクセス可能とした(写真1)
。これにより JSA の保有する約 2
万点の規格が PDF で参照できる。また、CISPR 規格(国際無線障害特別
委員会の規格)や EN 規格(欧州統一規格)など一部の規格については書
写真 1 規格検索専用端末
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籍での閲覧も行える(約 200 冊所有)
。
規格閲覧サービスは予約すれば誰でも使うことができる。
(2)専門相談員による規格技術相談
都産技研の MTEP では、海外規格に詳しい 11 名の専門相談員が配置さ
れている。特に、ニーズの高い CE マーキングや RoHS/REACH(EU の
環境規制の 1 つ)の専門家は重点的に配置した。それぞれの専門家が日替
わりで相談に応じる。
相談は予約制で、MTEP ホームページ* 1 から相談内容を入力する。
また、相談は原則 MTEP 本部での対面相談が中心であるが、遠隔地で
MTEP 本部まで来るのが大変な方には、各県の公設試にテレビ会議設備
が配置してあり、テレビ会議での相談もできる(写真2)
。
写真 2 相談用テレビ会議システム
■ MTEP の都産技研での実績
* 1
MTEP には 2012 年 10 月の開設以来多くの相談が寄せられた。MTEP の相
http://www.iri-tokyo.jp/
mtep/mtep_form.html
談受付の方法としてはホームページからの入力(メール)
、来所、電話がある。
実際の回答を出す方法は、対面での相談(来所)が一番多い、次いでメールでの
回答、電話での回答と続く。分野別では、CE マーキング関係で 63%、RoHS 関
係 30%、その他 7%となっている(図1)
。CE マーキングと RoHS の相談
その他
7%
が多いことが分かる。
規格から見たときの中小企業の課題は、①規格を担当するエンジニアが少
ない ②規格を勉強する時間がない ③経営層の理解が得られない、などがあ
RoHS
30%
る。そのために、MTEP では単なる相談以外にセミナー等での情報発信も
行っている。昨年実施した CE マーキング入門(2012 年 11 月)や RoHS
EMC 指令/低
電圧指令
51%
指令入門(2012 年 10 月)は各回 130 名以上の参加があり、関心の高さが
うかがえる。2013 年 3 月には定員を絞ったミニセミナーを 8 回実施した。
いずれも多くの応募があり、盛況だった。
機械指令
12%
図 1 分野別 MTEP 相談内訳
■おわりに
MTEP は開設以来相談が順調に増えている。それだけ認証取得に困っている
会社が多いということだろう。企業の製品の輸出先は欧州、北米から中国、韓
国、東南アジアなどさまざまな国に広がっている。初めて海外に製品を輸出する
会社は、「CE マーキング取得は初めてです」と一から相談するために来所する。
RoHS に関しては同じ傾向の問い合わせが多い。いわく「改正 RoHS が良く分
からない」
「そもそも RoHS とは何か」
「RoHS の試験はどこで行うのか」など。
MTEP では今後、対応できる規格や対応できる仕向け地を増やしていく予定
である。企業の皆さまの規格の駆け込み寺として体制を整えるので、ますますの
利用をお願いしたい。
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釜石電機製作所+岩手県工業技術センター
溶射による光触媒換気装置で畜舎の環境改善
畜産県・岩手県で、牛、豚、鶏の畜舎内の臭気や浮遊菌を減らす光触媒空気浄化
装置の開発が産学官連携で進められている。光触媒には、金属の表面に直接酸化
チタンを吹きつける「溶射」という技術を活用。基本の技術と装置は、釜石電機
製作所と岩手県工業技術センターが共同で開発。現在、産学官のネットワークを
拡大して、製造コストの大幅引き下げ、機能強化に取り組んでいる。
電気・機械器具の修理 ・ 製作、溶射(金属などの表面に材料を燃焼ガスによっ
て溶かしながら吹き付けて表面処理する方法)加工、コイル製作などを行ってい
る株式会社釜石電機製作所(岩手県釜石市、佐藤一彦代表取締役)は岩手県工業
技術センター(岩手県盛岡市、阿部健理事長)と共同で溶射による光触媒加工の
新しい技術とそれを用いた空気浄化装置を開発し、事業化している。マーケティ
ングの主な対象は牛、豚、鶏の畜舎で、装置により畜舎内の臭気や浮遊菌を減ら
す。家畜の成育へのプラスの効果も期待されている。
現在、岩手大学の研究者らを加え、酸化チタンを主とする複合粉末開発による
光触媒皮膜の高機能化、畜舎環境改善の家畜成育への影響のメカニズム解明にも
挑戦している。
■ 1994 年に最新の溶射設備を導入
釜石電機製作所は旧新日本製鐵(現在の新日鐵住金株式会社)
・釜石製鉄所と、
日鉄鉱業株式会社・釜石鉱業所の協力会社として 1949 年に設立された。
従来の光触媒製品は、酸化チタンなどの光触媒を溶剤と混
ぜて基材の表面にコーティングしていた。同社が岩手県工業
技術センターと共同開発したのは、溶射技術を使って基材の
表面に直接「酸化チタン皮膜」を形成する技術である(図1)
。
溶剤を混ぜていないので、表面に露出するのは酸化チタンだ
けとなり、高い抗菌・消臭効果を発揮する。
1994 年に同社が最新の溶射設備を導入したとき、岩手県
工業技術センターの人材育成講座に技術者を派遣したのが、
連携するようになったきっかけだ。当時、同センターの客員
研究員でもあり、日本の溶射技術をリードしていた大阪大学
接合科学研究所の大森明教授(現・名誉教授)に溶射技術に
関する指導を受けた。2002 年初め大森教授から溶射技術に
よる光触媒加工を勧められ、同センターと共同で取り組んだ。
2 年弱で開発にめどがつき、品質も安定。2004 年 2 月、共
同で特許(
「溶射法による酸化チタンの固定化技術」
)を出願
した。
図1 溶射技術の模式図
上)一般的な光触媒 下)本発明の光触媒
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■酸化チタン皮膜プレートを重ねる
開発した、脱臭・除菌機能を有する光触媒
換気装置(写真1)の中核は、酸化チタン皮
膜プレートを何枚も重ねてユニット化したも
の(写真2)。
図2は牛舎に換気装置を設置する場合のシ
ステムを示したものである。牛舎内にダクト
光触媒換気装置の概要
写真1 光触媒装置サンアールエコクリーン
写真2 光触媒ユニット
を張り巡らし、多くの吸込口から臭気を取り
込む。その臭気をファンで換気装置内の光触
媒ユニットを通過させる。臭気や浮遊菌が減
少した“清浄な”空気はダクトを通って吹出
口から牛舎内に満遍なく行き渡るという仕組
みである。岩手県のような寒冷地では、冬季
は畜舎内温度の低下対策で窓を閉め切る必要
があり、畜舎内の環境は悪化する傾向がある。
この装置は、室内の温度を保ったまま、臭気
や粉塵量を低下させることができ、寒冷地の
畜舎への応用が期待されている。
■冬季の子牛呼吸疾患対策も
図2 光触媒換気装置の概要
換気装置の開発を目指すきっかけは、JA 遠野の組合長から釜石電機製作所に
「堆肥センターの臭いを何とかできないか」と相談があったことである。
佐藤社長らが案内された堆肥センターは体育館のような大きな施設。続いて見
学した牛舎は 100 坪ほどの広さ。最初は「どうやったらいいか」と見当もつか
なかったという。畜産業が盛んな遠野地域は民話の里として知られ観光客も多い
ので、畜舎から出る臭気の対策は地域の大きな課題であった。
そればかりではない。関係者に話を聞くうちに、冬季の牛舎内の飼育環境は子
牛の呼吸疾患と深い関わりがあり、飼育業者は臭いの対策に頭を悩ませているこ
とを知った。
冬季、閉め切られた牛舎内では、敷料等から発生する粉塵、糞尿からの臭気ガ
スなどが、牛の気管や肺の粘膜を刺激し病原体の進入、付着、増殖を容易にする。
生後1~6カ月の子牛で最も発生率の高い疾患が肺炎だ。外の新鮮な空気を取り
入れるのが一番の対策だが、冬季、この地域の外気は零下 20 度にもなる。子牛
は寒さに弱いので頻繁な換気は難しい。
そこで、佐藤社長らは、牛舎内の温度をあまり下げずにアンモニア臭や浮遊菌
を減らすことに挑戦することにした。2005 年 12 月のことだった。
「一般的に牛は生後 2 カ月で 65 ~ 70kg になるが、当社が光触媒換気装置を
試験的に導入した牛舎で育った子牛は、40 日くらいでその体重になった。臭気
や浮遊物の対策が子牛の成育に良い影響を及ぼしているらしいことが分かり、研
究テーマも広がった」
(佐藤社長)
。
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経済産業省の「新連携」事業に採択されて、2006 ~ 2010 年度の 5 年間共同
研究を行った。畜舎向けに開発した大型で据え置き型の装置は、鶏舎内では大量
の微細な羽が舞っているので、そのまま換気装置に通すと光触媒プレートに付着
してしまう。豚は臭いが強いので、より強力な装置が必要となるなど畜種によっ
て装置の仕様を変更することが必要であることも分かった。さらに大きな課題は
換気装置のコストである。100 坪ほどの牛舎に装置を設置すると、一式で 700
万~ 800 万円ほどかかる。飼育業者が簡単に導入できる価格ではない。
ただ、比較的低価格で持ち運びができる小型装置は、公共施設向けに約 80 台
の販売につながっている。
■農林水産業への本格展開
2011 年度に、農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
(現場ニーズ対応型研究)
」に採択され、
「空気清浄(脱臭・除菌)機能を有する
畜舎用光触媒換気装置の開発と実用化」というテーマで研究開発を続けている。
事業申請当時は、東日本大震災発生直後で、東北新幹線が不通になっていたため
羽田への飛行機の臨時便でヒアリングに行くなど記憶に残る事業開始となったよ
うだ。
この事業では、岩手県工業技術センターが管理機関となり、農林水産関係の
大学、試験研究機関などと農工のコンソーシアムを結成している。目標は、①
装置性能の向上 ②装置の低コスト化 ③家畜への効果検証とメカニズム解明で
ある。光触媒粉末とカキ殻粉末の複合化をはじめとする粉末開発などによって、
光触媒プレートの基本性能を従来の約 2 倍
【臭気濃度】
再検討によってコストも従来の半分にまで
低減させることができ、装置普及に向けて
大きな成果が得られている。「試験畜舎での
結果では、臭気成分や粉塵量の低減、浮遊
【試験畜舎】
(岩手県農業研究セン
ター畜産研究所)
試験区
(岩手大学農学部
御明神牧場)
X10-4 (ppm)
に向上させることに成功。また装置構造の
【装置有】
【装置無】
【落下細菌数】
められ、家畜の罹病割合も少なく、装置設
大腸菌
置により家畜の健康保持効果があることが
コロニー数
確認されている(図3)。最終年度は、モニ
ター農家へ装置を設置して、完成度を高め
る予定である」(岩手県工業技術センターも
桑嶋孝幸氏)。
メチルメルカプタン
対照区
細菌数の減少など畜舎環境の改善効果が認
のづくり基盤技術第1部上席専門研究員の
硫化メチル
一般細菌
【装置有】
【装置無】
図 3 試験畜舎での効果検証に関する成果
釜石電機製作所は最終的には、広範囲の産学官連携の研究成果をもとに、東日
本大震災で大きな痛手を受けた地域産業への貢献を目指して事業展開を行ってい
くという。
(登坂和洋:本誌編集長)
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JAXA の産業連携活動
宇宙航空の研究開発から生み出される技術を、国民生活の質の向上、安心安全な
社会の実現、地球環境問題への貢献、国際協力の促進など、さまざまな分野で
活用するため、産業界との連携が強く求められている。宇宙航空研究開発機構
(JAXA)の取り組みを紹介する。
渡戸 満
わたんど みつる
独立行政法人宇宙航空研
究開発機構 産業連携セ
ンター 次長
三保 和之
■はじめに
みほ かずゆき
独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙科学の研究を中心と
する宇宙科学研究所(ISAS)
、航空技術の研究開発を中心とする航空宇宙技術
研究所(NAL)
、ロケットおよび人工衛星の開発を中心とする宇宙開発事業団
独立行政法人宇宙航空研
究開発機構 産業連携セ
ンター 成 果 活 用 促 進グ
ループ長
(NASDA)が統合されて発足してからほぼ 10 年が経過し、宇宙航空の研究開発
とともに、産業とのつながりが重視されるようになってきた。本稿では、産業連
携センターを中心とした JAXA の「産業界との連携」の活動状況について述べる。
■「産業界との連携」の狙いと現状
1.連携の狙い
JAXA は、宇宙航空技術の研究開発を通じて技術力を高めつつ、国民生活の質
の向上、安心安全な社会の実現、地球環境問題への貢献、国際協力の促進など、
さまざまな分野で宇宙開発の成果を最大限に利用・発揮することを目指している。
この目標の実現のため、JAXA 産業連携センターでは、
「宇宙産業強化に向けた連携事業」
「宇宙航空産業の裾野
拡大に向けた連携事業」の 2 つの方針を掲げて取り組
んでいる。
これを模式的に示したものが図1である。宇宙産業の
強化のために力をつける活動とともに、産業の担い手と
ユーザーを広げるための活動によって、宇宙航空に関わ
る産業の全体が強化・拡大されていくことが狙いである。
2.宇宙産業強化に向けた連携事業
2008 年に宇宙基本法が成立し、国家として宇宙産業
を 21 世紀の戦略的産業としてよりいっそう強化するこ
とが決定された。
JAXA は、引き続き宇宙開発プロジェクトを通じて産
業界をリードしていくとともに、優れた日本の技術を掘
り起こしそれらを世界へ羽ばたかせるために、企業と共
同で研究を進めている。
さらに、海外の展示会への出展、国際会議への参加な
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図1 宇宙ビジネスの創出
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どを積極的に進め、それらの技術を広く世界にアピールすることで企業の海外展
開を支援しており、これらの活動を通じて日本企業が通信衛星を国際競争入札で
受注するなどの成果につながってきている。
3.宇宙航空産業の裾野拡大に向けた連携事業
宇宙航空産業の裾野を広げるためには、それらの技術が新たな製品となって
ユーザーを獲得していくことと、新たな企業等が宇宙航空ビジネスに参入してく
ることの両者が求められる。
JAXA は、それらの流れを促進するための仕組みを有し、ビジネスの活性化に
向けた活動を行っている。
(1)知的財産の活用
JAXA の宇宙航空研究開発を通じて得られた成果は、一般社会で広く活用して
いただけるように、特許等の技術紹介だけでなく、特許コーディネーターによる
ライセンス支援、ライセンス製品の宇宙ブランドによる支援まで、事業化を目指
す企業等に向けて積極的な支援を行っている。
参考として、JAXA 成果の民生分野での活用(スピンオフ)における、スピン
オフ技術の起源とスピンオフ先分野について図2、図3に示すが、起源としては
航空分野由来の技術が多く、それらの活用先としては環境・エネルギー分野が多
くなっている。
微小重力 5%
有人宇宙 9%
管理 8%
その他 5%
地球観測 4%
部品 4%
通信 4%
ロケット
3%
宇宙科学
13%
医療・健康
10%
レジャー・教育
11%
安全
8%
機械
11%
その他
4%
情報 2%
航空 44%
図2 スピンオフ技術の起源(2004-2009 年度)
輸送
6%
情報
21%
環境・エネルギー
28%
通信
1%
図3 スピンオフ先分野(2004-2009 年度)
これらの JAXA 特許等については毎年度数十件以上の活用がなされている。
代表的な事例には、ロケットの断熱技術を応用した建築用塗布式断熱材がある。
これは、ロケット打ち上げ時の熱からロケットや衛星を守るフェアリング用
断熱材の特許を応用したものであり、高性能塗布式断熱材として製品化され
ている(写真1)。製品化された断熱塗料は、厚さ 1 ~ 2mm で「- 100℃~
+150℃」の断熱効果を有し、接着性がよく(図4)、ペンキのように塗るだけ
であるため、複雑な表面形状でも対応可能で、建築用だけでなくあらゆる分野
に適用可能な製品となっており、断熱塗料市場で一定の規模を獲得するに至っ
ている。
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(2)オープンラボ共同研究
オープンラボは、JAXA と企業・大学等が連携協力し、それぞれが得意とする
技術・アイデア・知見などを結集して公募方式での共同研究を行う仕組みであり、
JAXA 技術等を活用して宇宙航空発の新しいビジネスモデルを創出する「ビジネ
ス提案型」と、JAXA が提示する宇宙航空関連の技術課題の解決や非宇宙分野の
技術を宇宙に活用することを目指した「技術提案型」がある。
この仕組みによる代表事例としては、宇宙ステーション補給機「こうのとり」
搭載の宇宙船内用 LED 照明や、宇宙船内服研究の技術成果を活用した民生用の
消臭機能衣類がある。
写真1 製品化された断熱塗料
(写真提供:株式会社日進産業)
4.相乗り超小型衛星
宇宙分野の人材育成または宇宙開発利用の拡大につながる研究開発を目的に、
民間企業や大学などの開発した超小型衛星を宇宙で実際に試す機会を公募により
提供している。その方法としては次の 2 つがある。
(1)H-IIA ロケットによる相乗り打ち上げ
国産の H-IIA ロケットで打ち上げる大型衛星と相乗りで超小型衛星を打ち上
げている。超小型衛星のサイズは最大で 50cm の立方体、
重さは 50㎏以下である。
図4 断熱塗料の構造体
上:乾燥前 下:乾燥後
今までに打ち上げた 11 衛星については、大学教育の一環として学生が開発した
ものに加え、
「まいど 1 号」のように企業が開発したものが数例ある。
(2)宇宙ステーション「きぼう」から超小型衛星の放出
宇宙ステーションにある日本の実験棟「きぼう」から超小型衛星を宇宙へ放出
している。こちらは 10cm の立方体を 1 個から最大 3 個つないだサイズで、
ロケッ
ト相乗りの場合よりも小さくなるものの、宇宙ステーションまで貨物として運ば
れるため、衛星の受ける衝撃が小さくなるなどのメリットがある。
■おわりに
JAXA の研究開発領域は多岐にわたるが、それらの全てにおいて産業界との連
携およびビジネスの活性化に向けての活動が求められている。今後、さらなる産
業連携活動の強化・拡大が推進され、JAXA の社会貢献が目に見える形になって
いくよう努力を続けていく所存である。
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福島県の産業振興を ICT で支援
― 新たな産学官連携体制の会津大学復興支援センター ―
コンピューター分野に特化している会津大学(福島県会津若松市)は、今年 3 月
に学内組織「復興支援センター」を設立した。この 2 年間の復興支援の実績を踏
まえ、新しい産学官連携の体制で県内の産業振興、雇用の創出、さらには東北復
興を進めるのが狙いである。
福島県は全国第 3 位の広大な県土を持ち、太平洋岸の浜通り、中央部の中通り、
西の会津の 3 つの地域からなる。今回の震災では、津波は浜通り地方に甚大な
被害をもたらし、原発事故の影響は浜通り地方に加え中通り地方にまで及んでい
る。さらに、原発事故の風評被害は地震の直接的な被害が少なかった会津地方を
含む県内全域に及び、あらゆる産業が大きな打撃を受けている。
岩瀬 次郎
いわせ じろう
会津大学 理事
復興支援センター長
■「復興支援センター」の設立とその使命
会津大学は 1993 年、日本最初のコンピューターに特化した大学として誕生し
た。この公立大学は、
現在約 1,300 人の学生、
約 110 人の教員がおり、
コンピュー
ター分野では国内最大である。各国から招いた第一線級の教授陣を擁し、外国人
教員率は約 40%という理工系ではナンバーワンの国際性も特長である。英語を
公用語とし、大学院での授業は全て英語で行われている。
震災からの復興に向け、本学は、ICT(情報通信技術)の専門性を活かし復興
支援に向けたさまざまな取り組みを実施してきたが、
この 2 年間の実績を踏まえ、
産学官の結集による取り組みを組織的・継続的に展開するため、本年 3 月、新
しい学内組織「復興支援センター」を設立した。この「復興支援センター」の使
命は、ICT 産業を中心とした産業振興、雇用の創出であり、疲弊した福島県の
産業振興、東北の復興に貢献することである。新組織は、次の 3 本柱を掲げ活
動を開始した。
第 1 は、先端 ICT 研究の推進。産学官の連携により、外部資金の活用も図り
ながら事業化を目指した最先端の研究プロジェクトを推進する。
第 2 は、イノベーションを生み出すための「場」の提供。テスト環境スペー
スやデータセンタースペースなどを整備・提供し、イノベーション創出や地元企
業の研究開発の支援を行う。
第 3 は、福島県の産業振興を担う ICT 人材の育成と集積。学生や社会人など
を対象に教育・研修を行い、ICT 企業集積の受け皿づくりの他さまざまな分野
でのビジネスチャンスづくりを支援する。
■「会津オープンイノベーション会議(AOI会議)」による産学官連携
前述の使命を果たすため、「復興支援センター」は、その活動の核となる新し
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い産学官連携体制づくりを進めることとし、横断的な情報交換や新技術の開発・
運用に携わる人材の育成が大きな課題となっている ICT 界の状況を踏まえ、国
内外の ICT 関連企業、会津大学発ベンチャーを含む県内 ICT 企業、ユーザー企
業、行政機関等と共に「会津産学コンソーシアム」を構築した。大学の研究シー
ズを主体に「1対1」の関係で進められる従来型の産学連携ではない、会津産学
コンソーシアム参加企業による「多対多」の新しい産学連携体制の始動である。
その中にオープンな議論の場、
「会津オープンイノベーション会議(AOI 会議)
」
を設け、ニーズの段階から多様な議論を活性化させ、共創される新たなニーズから
具体的なプロジェクトを展開し、さまざまなイノベーションの創出を図っていく。
■多目的データセンター「先端 ICT ラボ」の整備
さらに、「復興支援センター」の活動を多面的かつ効率的に推進するため、研
究スペース、産学官の交流スペース、研修・教育スペース、データセンタースペー
ス等、多彩な機能を備えた「先端 ICT ラボ」の整備・運用に取り組む。運用開
始 5 年後の段階で質の高い安定的な約 500 名の新規雇用を県内に創出すること
を目指している。運用開始は 2015 年度の予定である。
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図1 地域発 ICT グローバル拠点
1
© Copyright 会津大学
■地域発 ICT グローバル拠点を目指して
現存する産業の再建と新しい産業の創出は、東北復興の重要な鍵となる。課題
は山積するが、本学は、大学の特性である先端 ICT 研究が本格的な復興へと進
む大きな助けになると信じている。経済産業省「産学連携イノベーション促進事
業」の採択も受け、
「復興支援センター」を中核に福島県会津の「地域発 ICT グ
ローバル拠点化」
(図1)を目指していく。
本学にとって、今年は開学 20 周年の節目の年である。復興プロジェクト事業
の推進という大きな課題に挑み、新たな歴史を重ねていきたい。
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産学官連携プロジェクトから
リハビリ・ヘルスケア用ゲーム
福岡市にはゲームソフト開発などを行う有力企業が集積している。このため、同
市とゲーム業界、および九州大学は連携してゲームの研究開発やゲーム産業の振
興に取り組んでいる。その一環として社会問題の解決にゲームを活用するプロ
ジェクトがあり、この中から高齢者の人たちのリハビリ用起立訓練支援ソフトが
生まれた。このソフトをもとに企業が医療・介護施設向けのゲームを開発し、今
年3月に売り出した。
松隈 浩之
まつぐま ひろゆき
■福岡市からの委託研究
九州大学は 2009 ~ 2012 年度、
福岡市からの委託研究事業としてシリアスゲー
ムプロジェクト* 1 を実施した。シリアスゲームとは、社会問題の解決を主とした
ゲームである。このプロジェクトはゲーム産業の拡大とクリエイター育成を目的
とし、シリアスゲームの研究・開発および、同分野の普及、啓発活動を行った。
プロジェクト自体は九州・福岡のゲームソフト制作関連会社でつくる任意団体
GFF * 2(GAME FACTORY'S FRIENDSHIP)
、九州大学、福岡市の産学官が連
九州大学大学院芸術工学
研究院デザインストラテ
ジー部門 講師
* 1
http://macma-lab.heteml.jp
* 2
http://www.gff.jp
携して取り組んだ事業である。福岡市は 2006 年に福岡ゲーム産業振興機構* 3 が
* 3
発足するなどコンテンツ産業の振興に力を入れている。
http://www.fukuoka-game.
com
■リハビリ用起立訓練支援の「樹立の森リハビリウム」
前述のプロジェクトの一環として、特定医療法人順和長尾病院と九州大学との
共同研究によりリハビリ用起立訓練支援ソフト
(ゲーム)
「樹立の森リハビリウム」
(写真1)を開発した。起立運動は日常動作の基礎であり、リハビリには重要な
項目だが、単調で厳しい訓練である。このため、ゲームを活用することで利用者
が訓練を楽しめ、リハビリに対する積極性、持続性を向上させることを目的とし
たものである。
利用者の立ち座りの動作を Kinect(キネクト)でセンシングし、ゲーム画面
内の要素である樹木のコンピューター ・ グラ
フィック(CG)と連動させることで、立ち座
りで木を伸ばすという仕様となっている。
また、
ユーザー管理用に NFC タグおよびリーダーを
使用し、各個人の利用状況や達成度、ランキン
グ表示による他者との比較等を行い、モチベー
ションを維持する仕組みである。
開発には 2 年間を要した。ルールや操作方法、
安全性等について病院スタッフとプロジェクト
スタッフの間で試行錯誤があった。企画、プロ
トタイプ、アルファー版の段階では、GFF の
写真1 リハビリ用起立訓練支援ゲームソフト「樹立の森リハビリウム」
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幹事会社である株式会社レベルファイブ、
株式会社サイバー
コネクトツー、株式会社ガンバリオンと共に、内容につい
てディスカッションし、ゲームとしての質を高める取り組
みを行った。
開発終了後、病院および老健施設において安全性と有用
性の検証(写真2)を実施した。双方においてゲームは、
セラピストの立ち会いのもとで行う訓練と同等の扱いであ
り、一人で黙々とリハビリ訓練をするよりは、有用である
というエビデンスが得られている。
写真2 安全性と有用性の検証の様子
■企業が医療・介護施設向けに販売
リハビリ用起立訓練支援ソフト「樹立の森リハビリウム」は、株式会社メディ
カ出版が「リハビリウム起立くん」という名前で 2013 年 3 月 8 日に売り出した。
プロジェクト開始当初の目的の1つであったゲーム産業の拡大へと一歩前進した
ことを示す成果と言える。プロジェクト 3 年目の 2012 年に販売に関する検討
をはじめ、市販に結び付いた。プロジェクトにおいて研究開発した「樹立の森リ
ハビリウム」をプロトタイプとして捉え、同ゲームを基にメディカ出版が製品版
を別途新規開発し、販売するといった経緯である。九州大学、および長尾病院は
監修として参加している。
製品は、家庭用ではなく医療・介護施設向けである。メディカ出版の製品には
起立訓練支援の他にダンス、カラオケ用コンテンツも加えられている。
■今後の展望
超高齢化社会を迎えたが、ゲームに慣れ親しんだ世代が高齢化しているので、
今後、リハビリ・ヘルスケア用ゲームのニーズは増加すると考えている。現在は、
よりリハビリに特化した半側空間無視をテーマとしたゲームやヘルスケアを目的
とした太極拳ゲームを開発中である。
ゲーミフィケーション(社会的な課題の解決や企業の顧客サービスの向上に、
ゲームの技術やメカニズムを利用する活動)等の概念の普及により、リハビリ・
ヘルスケア用ゲーム業界は追い風状態にあるが、一方でこうしたゲームでビジネ
スを展開する企業はまだ少ない。大学等の学術領域におけるゲームに関する研究
も多くないのが実状である。今後、さらに精力的にプロジェクトを推進しゲーム
産業の振興に寄与するとともに、その成果を世間にアピールていくことで、健康
で豊かな社会づくりへと貢献していきたいと考えている。
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集中連載
日本流
リサーチ・アドミニストレーター像を探る
◆整備事業で 15 大学が人員配置
日本の大学でリサーチ・アドミニストレーター(URA)という機能・職
種への関心が高まっている。きっかけは、文部科学省が平成 23 年度にそ
の「育成・確保するシステムの整備」事業を始めたことである。URA とは「研
究者とともに(専ら研究を行う職とは別の位置付けとして)研究活動の企画・
マネジメント、研究成果活用促進を行う(単に研究に係る行政手続きを行
うという意味ではない)ことにより、研究者の研究活動の活性化や研究開
発マネジメントの強化等を支える業務に従事する人材」*1のこと。米国の
大学では 50 年以上前からその取り組みが始まり、現在米国の大学全体で
それに従事する者は 15 万人とも言われる職制である。わが国では研究者
に研究活動以外の業務で過度の負担が生じているため、研究開発マネジメ
ントについて専門性の高い職種を育てることで、大学等における研究推進
体制の充実強化を図ることが目的である。
同事業のもと、23 年度に 5 大学、24 年度に 10 大学が採択され個々の
大学の方針に則した人員配置を開始し、また文部科学省の事業とは別に、
独自の取り組みによる URA 機能の整備を進める大学もある。
6月号~8月号で、URA 制度の設計の背景や目的、
日本における取組状況、
諸外国の状況等を紹介する。
* 1
23 年度同事業公募要領から
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集中連載 日本流リサーチ・アドミニストレーター像を探る
持続可能な科学技術イノベーション創出能力の
強化に貢献する URA
~イノベーション・パイプライン・ネットワークを紡ぐ役割への期待~
わが国の大学で導入が始まったリサーチ・アドミニストレーター(URA)制度。科
学技術イノベーション創出のために、URAにどんな役割が求められているのか。
■第三の国創りの重大変革期にある日本の課題と
大学の構造改革の必要性
日本は今、明治維新、戦後復興に次ぐ第三の国創りの重大変革期にあり、21
世紀においても持続可能な発展を実現するためには、
“強い経済、強い公財政お
よび強い社会保障”を一体的に復元せねばならない。その実現の要は、①“絶え
柘植 綾夫
つげ あやお
公益社団法人
日本工学会 会長
間ない科学技術的価値の創造力”と、②それらの価値を結合して新たな社会経済
的価値創造に結び付ける“イノベーション・パイプライン・ネットワーク(IPNW
と略称)の構築力”であり、同時に、③ IPNW を構成し、協働する“さまざま
な価値創造を担う多様な人材力”である。これらを“科学技術イノベーション創
出の三大能力”と呼ぶ。
21 世紀の今、日本の“科学技術イノベーション創出の三大能力”は、世界レ
ベルに遅れを取り始めている。換言すると、国を挙げた科学技術・教育振興投資
が“新たな社会経済的価値創造に結び付きにくい構造”に陥っていると言える。
この日本の大学の弱点と言える構造の改革と、それを実現するために必須の人材
である URA(大学におけるリサーチ・アドミニストレーター)への期待を述べる。
■知の創造と社会経済的価値創造を結ぶ
イノベーション・パイプライン・ネットワーク
日本が国是とする持続可能な科学技術イノベーション創出の要は、
“絶え間無
い科学技術的知の創造”と、それらを社会・産業と双方向に結合して“社会経済
的価値創造”に結び付けるイノベーション・パイプライン・ネットワーク(IPNW)
である。
IPNW は図1に示すように、幅広い科学技術的知の創造を担う基礎研究群を
基盤として、目的基礎研究、研究開発、社会経済的価値創造(イノベーション)
に至る各ステージで織り成される“時間軸・空間軸において、確率論的かつ不連
続的価値の創造プロセス”と言えよう。
基礎研究から発した社会経済的価値創造を目指した目的基礎研究は、往々にし
て派生技術が思わぬ社会的価値を生み出す場合がある。また、図の中のプロジェ
クトAのように当初は予期していなかった他技術の取り込みがあって、初めて目
的とするイノベーションが創造される事例も少なからずある。また、異分野の基
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集中連載 日本流リサーチ・アドミニストレーター像を探る
礎研究者が協働して、研究
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領域の融合 に 挑 戦 し た 結
製品・サービス
ニーズ
シーズ
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ベーション力強化の要は、
大学等の教育・研究機関と
ゲートⅡ
業 界 と が、 世 界 的 視 野 を
持って IPNW を構築・強
化することである。その重
者が生み出す科学技術・学
術的価値、社会経済的価値
ステージ
ゲートⅠ
バリュー
シーズ
�の創造
要視座は、それぞれの参加
シーズ
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研究独立行政法人および産
非採用技術
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�り込み
派生技術
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派生技術
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絞り込
み
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などの“価値のフローとイ
ンターフェースの重視”で
派生技術���
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経済的/社会的
価値
ステージ
規制
政府調達
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ステージ
ゲートⅢ
標準化
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国を挙げた科学技術イノ
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なくない。
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社会経済的創造のステップ
が生み出された好事例も少
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普 及
果、新たなイノベーション
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出典:柘植綾夫、イノベーター日本、オーム社刊
ある。従来、大学は科学技
図1 IPNW 構築の重要性と URA の使命
術・学術的価値創造だけを重視してきたのではないだろうか。
“その価値を誰に
渡して、次なる価値創造を託すか”について無関心であったのではないか。事実、
その価値のフローとインターフェースを担う URA 等の、全学組織運営上の職種
としての位置付けが希薄であったと言えるだろう。
■大学の国際競争力に必須の
“価値のフローとインターフェース”を担う URA の使命
大学の社会的使命である“教育・研究・社会貢献”の本来の機能を、世界レベ
ルにまで発揮させるための要は、第一に“研究者の知の創造への集中度と質の向
上”、第二に“価値のフローとインターフェース機能を発揮する専門家”である。
学長はじめ大学の各組織の長はこの視座に立って、自らの組織の弱点の点検・強
化に向けた組織改革を図ることが必要だ。
同時に、URA は上記の第二の要の専門家としての能力を磨くことが求められ
る。その役割として、①基礎研究を支える競争的研究資金獲得の企画と、ファン
ディング機関とのインターフェース役 ②異分野融合による新たな価値創造研究
の企画と、スポンサーとのインターフェース役 ③研究者が生み出した派生技術
を社会価値化する企画と産業等とのインターフェース役 ④社会的課題の発掘と
研究者の参画に向けた価値のフローとインターフェース役、などが求められる。
まさに URA は、従来の大学等の研究教育組織の職制には明文化されていな
かった第三の職種と言える。学長はじめ大学の経営陣も、教員と職員も、そして
URA の皆さんも、URA を第三の職種として根付かせることが、大学の世界レ
ベル化と国際競争力の強化、ひいては 21 世紀の日本再生にとって必須であるこ
とを覚悟して、大学改革の柱の一つとして取り組まれることを期待したい。
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集中連載 日本流リサーチ・アドミニストレーター像を探る
大学のあるべき姿を具体化する
国際的な大学間競争が激しくなる中で、わが国の大学は改革を迫られている。研究
開発機能の強化に加え、社会に向かう科学研究という視点も大切だ。求められるリ
サーチ・アドミニストレーター像は?
■世界標準の優れた大学が要する機能とは
今日、大学および公的研究機関(以下「大学等」
)は、2 つのコンテクストに
おいてこれまでとは異なる環境におかれている。1 つは、イノベーション創出に
おける知の源泉としての期待であり、そのための公的研究資金の配分と研究開発
の促進は科学技術政策の大きな課題となっている。その中で国の財政事情による
効率化の要請、研究基盤の維持・発展、研究活動による社会への貢献等にいかに
高橋 真木子
たかはし まきこ
独立行政法人理化学研
究所 経営企画部主幹
(戦略分析課担当)
対応するかが問われている。
もう 1 つは科学研究の在り方自体の変化である。いわゆるブダペスト宣言
(1999 年)では、これまでのディシプリンを深め確立する「知識のための科学」
に加え、創出した知識を融合、再編集して新たな知識を創造する「平和のための
科学」「開発のための科学」
「社会における科学、社会のための科学」という位置
付けが示され、科学者の責務を問うている。
こうした環境の下、大学等が期待される機能を発揮するために、リサーチ・ア
ドミニストレーター(以下「URA」
)は、現在の Needs に対応(不足分を充足)
することに加え、Wants を明確化(あるべき姿から今やるべきことを具体化)
するという発想も併せ持つことが大切である、と考える。
うれしいことに日本においても URA の認知度が上がりつつあり、現場の研究
者や、大学経営層からも URA 機能を要望する声が大きくなっている(平成 23
年度産学官連携支援事業委託事業「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確
保するシステムの整備(スキル標準の作成)
」アンケート調査より)*1。
しかし、その期待は、研究者の研究時間が著しく減少していることから一部業
務を代替する必要性、外部資金獲得能力の向上、という観点からのものが大多数
である。もちろんこれはまず対応を要する重い現実である。しかしこれらは最終
目標ではなく、背景にある環境の変化と変化に対応し続けるために必要な機能を
併せて考えていくことにより、研究者を惹きつける優れた研究環境を提供する大
*1
学術研究懇談会(RU11)を中
心とし、各大学で URA 類似職
を配置していない 52 組織(本
部組織、学部、附置研究所、研
究室、研究プロジェクト等)の
長を対象にした調査。調査期間
2012 年 3 月 19 日~ 3 月 30 日。
http://www.u-tokyo.ac.jp/
res01/pdf/H23houkokusyo_
final.pdf
学を実現することが大切である。
■ URA の業務とそのミッション
URA の業務は大きく 3 つに区分される。プロジェクトの企画から設計、調整、
申請までを担う「プレアワード業務」
、プロジェクト採択後の適正な運営に関す
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集中連載 日本流リサーチ・アドミニストレーター像を探る
る「ポストアワード業務」
、そして国の科学技術政策の調査分析や学内研究資源
の把握等からなる、プレアワードの前の「研究戦略推進支援業務」である。プレ
アワード、ポストアワード業務は、ファンディングエージェンシーの研究企画、
プロジェクトマネジメント、大学等の各事務組織、産学連携関連の役割と重複す
る部分があり、
研究戦略推進支援は政策研究やビブリオメトリクスとも関係する。
これらの業務の重なりが、時として関係者間の摩擦と共に職種の切り分けや業務
区分の議論を呼び起こしているようだ。筆者が考えるに、本質的な違いは、産学
連携担当者がイノベーション創出を標榜(ひょうぼう)し、ファンディングエー
ジェンシー担当者が公的研究資金の最適な活用をミッションとするのに対し、
URA は大学に所属し大学等の研究力強化を目指し研究活動を推進支援すること
に力点を置いて活動する点にある。この時、大学等の研究開発活動への期待、社
会に向かう科学研究、という2つの観点が URA の行動規範となるはずである。
現在の URA の業務が多様で広範なのは、各大学等がその特性に応じ重視する
業務全体を映していることによると思われる。URA の定着・展開には、これま
での政策とその効果*2を踏まえ、現場でのきめ細やかな検討を経た実装が不可欠
である。
■ URA の今後に向けて
URA の普及・定着に不可欠な段階の1つとして、職種確立のためのある程度
の共通像が必要となる。詳細は次号に譲るが、そのための重要な取り組みとして
行われているのが、URA のスキル標準の策定である。研究戦略推進支援、プレ
アワード、ポストアワード、という3段階の業務の整理と、それぞれで必要とな
* 2
具体的には、1998 年大学等技
術移転促進法(TLO 法)に始ま
り、
日本版バイ・ドール法(1999
年)
、国立大学法人化(2004 年)
を経た現在、日本の大学では産
学連携関連の人材が多様な職名
で既に活躍している。例えば、
産学連携コーディネータ、知的
財産マネジャー、ライセンシン
グアソシエイト、科学技術振興
機構(JST)や新エネルギー・
産業技術総合開発機構(NEDO)
等の個々のプロジェクトに専従
するプロジェクトマネジャー、
研究参事、事業統括等が挙がる。
るスキルと技能のセットは、日本における URA 機能の全体像の把握とともに、
URA 実務者にとっては自身の位置付けを見極める良い指標となるはずである。
身近なロールモデルが無く組織自体も新しく知名度も低い、という状況で、自
らの実務を通じて職種を確立していく苦労は想像に難くない。その途上で奮闘し
ている URA 実務者に、最近知ったある言葉を紹介したい。
「先祖より受け継ぎ
し商いにあらず、子孫より預かりしものなり」
。福岡の造り酒屋の家訓であるが、
日本の URA の現状に照らしても示唆に富む。私自身も URA 機能を担う当事者
の一人として、定着に向けたこの時期に居合わせた幸運と責任を想いつつ何らか
の貢献ができればと考えている。
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福島県、再生可能エネルギー産業集積へ
産学金官連携で研究成果を早期事業化
福島県は、県内の産・学・金・官でつくる「ふくしま地域再生可能エネルギーイ
ノベーション推進協議会」を中心に同エネルギーの産業集積を目指している。県
内4大学は文部科学省の「地域イノベーション戦略支援プログラム」事業に採択
されて次世代太陽電池、小型風水力発電、熱電変換素子、スマートグリッドの研
究開発に取り組んでいる。研究成果を早期に事業化する。
福島県・県内 4 大学(福島大学、日本大学工学部、いわき明星大学、会津大学)
・
金融機関などで構成されるふくしま地域再生可能エネルギーイノベーション推進
協議会(以下「協議会」)は 4 月 24 日、県内で利用への取り組みが進む再生可
能エネルギー関連の研究開発に関する発表会を開いた。
協議会は、再生可能エネルギーの飛躍的推進による新たな社会づくりを目指し
小柏 美津夫
おがしわ みつお
公益財団法人福島県産業
振興センター 技術支援部
地域連携コーディネータ
て、2012 年 7 月に設立された。県内の産学金官連携によって地域イノベーショ
ンを創出するための戦略の策定、その実現に向けた各参画機関が取り組みおよび
成果の確認などを行っている。4 月 24 日の協議会の会合で、
再生可能エネルギー
産業集積へ向けた研究成果の早期事業化が決定された。
■ 4 大学が研究成果発表
県内企業の再生可能エネルギー分野担当者ら約 230 人が
出席した。米国・国立再生可能エネルギー研究所のダン・ア
ルヴィズ所長が記念講演を行い(写真1)
、
「世界的に再生可
能エネルギー分野への投資は加速しており、早期参入で大き
な恩恵が得られる状況だ」
と述べ、
世界の再生可能エネルギー
産業の現状を紹介した。
続いて、文部科学省の地域イノベーション戦略支援プログ
ラム事業採択を受け、研究開発を行っている県内 4 大学の
担当者が次世代太陽電池の開発や地中熱利用システム、小型
風水力発電、熱電変換素子、スマートグリッドの研究・開発
状況を紹介した。
写真1 研究成果発表会での記念講演の様子
4 大学は採択を受け、同プログラムで地域の産学官連携プロジェクト「再生可
能エネルギー産業の集積」を推進している(図1)
。
福島大学は、小型風水力発電の研究過程と極薄型ヘテロ接合型太陽電池の実現
に向けた基礎プロセス確立の発表を行い、出席者へ「新たな産業集積に向けて、
太陽電池の従来に無い技術・マーケットにチャレンジするので、
一緒に福島にソー
ラバレーを築きましょう」とメッセージを発信した。
日本大学工学部は、地中熱利用システムを実用化するために、地中熱利用型住
環境の事業化ロードマップを紹介し、製造・施行・販売・保守等を一緒に行う企
業を募集したいと述べた。
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図1 プログラムの全体計画
いわき明星大学は、熱電変換素子を利用した 200W 熱電発電・充電試験シス
テムの実証事例を発表し、研究・開発段階から実証化段階へ進んだ熱電変換技術
の技術移転について積極的にアピールした。
会津大学は、スマートグリッド情報基盤に関連したエネルギーマネジメントシ
ステムの調査・研究状況の紹介を行い、今後の実証化について、産業技術総合研
究所(以下「産総研」
)や日本大学および県内の IT 企業との連携を推進したい
と表明した。
再生可能エネルギー産業の人材育成プログラムに関して、福島大学は再生可能
エネルギー分野の事業化に対応できる「事業プランナー」育成計画の実施を発表
した。2013 年度から県内企業の人材を 30 名程事業プランナーとして育成する。
■地域イノベーション戦略支援プログラム
福島県内 4 大学が取り組んでいる地域イノベーション戦略支援プログラムの
事業は、具体的には福島県が事務局を担当する「再生可能エネルギー関連産業推
進研究会」の参加企業約 400 社へ再生可能エネルギー分野における最新情報を
提供するとともに、企業と連携した実証研究を進めている。日本大学工学部の地
中熱利用型住環境の事業化においては、地元企業と連携した「ロハス(健康と環
境に配慮した持続可能な生活スタイルを目指した LOHAS)の家」が建設され、
いわき明星大学の熱電変換素子を利用した企業との連携では、熱電変換素子の事
業化に特化したベンチャー企業の立ち上げが検討されている。
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■大学と研究機関の連携
産総研は 2014 年春、福島県郡山市に再生可能エネルギー分野の研究開発拠点
を開設する。このため、すでに産総研と福島大学との間で、太陽電池開発に関す
る共同研究契約が締結され、福島大学は産総研の研究者を招聘(しょうへい)し
次世代太陽電池の研究・開発を進めている。また、日本大学工学部と地中熱利用
分野で、いわき明星大学と熱電変換素子開発、会津大学とはスマートグリッド分
野での連携が図られている。
産総研の福島拠点(郡山西部第二工業団地内)は、政府の「東日本大震災から
の復興の基本方針」
(2011 年 7 月 29 日、東日本大震災復興対策本部決定)およ
び「福島復興再生基本方針」
(2012 年 7 月 13 日、閣議決定)を受け、再生可能
エネルギーの技術開発から実証まで行う研究開発拠点を整備し、世界に開かれた
再生可能エネルギー研究開発を目的に設立される。
福島拠点のミッションとして、①世界に開かれた再生可能エネルギー研究開発
の推進 ②産業集積と復興への貢献 ③再生可能エネルギー利用と省エネルギーの
実践 ④再生可能エネルギー関連人材の育成を遂行の 4 点が挙げられている。
また、福島拠点で取り組む技術開発は、①再生可能エネルギーネットワーク実
証 ②エネルギー貯蔵・利用技術 ③風力発電の高度化技術 ④地中熱の適正利用技
術の 4 項目である。
■事業化の加速
再生可能エネルギー産業の集積、新技術の開発に取り組む県や県内 4 大学な
どは、新技術を応用した商品開発や技術移転を進めるため、2013 年度に県内企
業とコンソーシアム(共同体)を設立し、再生可能エネルギー分野の事業化を加
速させる。また、県内 4 大学の再生可能エネルギー関連の研究開発を、当初計
画の 2016 年から 2 年間前倒しすることで、技術移転を早期に実現する。
これまで、研究・開発を主体としていた大学が、地域の産業を支えるために、
研究・開発成果の事業化に向けたコンソーシアムを形成することは、
「産学連携」
の新しいモデル(福島モデル)となる。このモデルでは、コンソーシアムに参加
する企業が研究成果の実用化を目指し、品質、コスト、性能、製造方法、販売チャ
ネルを検討しながら、地域特性を活かした産業集積を図っていく。
さらに、民間企業が大学や研究機関と共に事業化への取り組みを加速させるた
めに、ふくしま地域再生可能エネルギー推進協議会内に事業化推進委員会を設置
し、企業参入を支援する体制を構築した。
この取り組みを産学金官が一体となって行い、イノベーションを創出し、再生
可能エネルギー産業集積のための基盤整備(人材の育成と地域への定着・高付加
価値産業への転換)を実施し、ふくしまの復興(雇用の創出と地域社会再生への
貢献・災害に強い地域づくり・地域資源の活用)を目指す。
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産学官連携
ジャーナル
アーカイブ
科学技術イノベーションへの道(2)
先端技術の実用化の方策を提言
わが国の経済環境が厳しさを増している中、科学技術イノベーションへの期待はま
すます高まっています。前号(2013年5月号)から、イノベーション実現のためのヒン
ト―産業界、大学、支援機関等にはどんな課題があり、その課題をどう解決して
いけばいいのか―を「産学官連携ジャーナル」の過去の記事から探っています。
過去の記事はすべて小誌のホームページでご覧になれます。登録は不要です。テー
マ、都道府県、記事の種類、発行号などで記事を検索することができます。
(編集長:登坂和洋)
4.実用化への支援モデル
前号(2013 年 5 月号)の「2.試作品と実用化」で、事故を起こした東京電
力福島第一原子力発電所の原子炉建屋に国産ロボットとして初めて投入された
「Quince(クインス)」(千葉工業大学の小栁栄次教授が開発)をめぐる話題を
取り上げた。
背景には次のような問題があった。
東海村の核燃料加工会社「JCO」の臨界事故のあと、原子力事故の現場で使
用するために開発したロボットは『平成 13 年に試作を終了した後、実用化に向
けた開発を行うべきユーザーがいなかったために、継続的に維持管理する費用を
捻出できないまま経過し、直ちに使用できる状況ではなかった』
(平成 24 年版
科学技術白書)
。
専門家を対象にした科学技術政策研究所の調査で『災害に対応できるロボット
が商品として販売されている米国と、研究レベルである我が国』の取り組みの相
違などについて意見が寄せられたことも、同白書は紹介している。
過酷な災害現場で使用するロボットなどを、企業が実用化し世の中に送り出す
には何が必要かが論点の 1 つだった(小栁教授は、さらに、オペレーターが日々
トレーニングを積んでおくことが大切だと指摘)
。
先端的技術―かつ特殊な用途であるため通常のビジネス展開が難しい技術―
を、産業化するための方策について提言しているのが次の記事である。
● 2011 年 9 月号 瀬戸篤氏、特集:深化する産学官連携とイノベーションの課題「日本にテクノロ
ジー・ベンチャーを育てる国家戦略を」
「テクノロジー・ベンチャー」をテーマにしているが、
大企業が対象であっても、
先端的な技術を実用化するための方策、と読み替えることは可能だ。
瀬戸氏はわが国の技術イノベーションの成功例として、1944 年に実用化され
たプロペラ戦闘機『疾風』
(2000 馬力級単座戦闘機・陸軍四式戦)の開発経過
を紹介している。以下の 3 ステップを踏んでいたという。
・ステップ①競争試作…競合する2社程度に、計画する仕様を示し、十分な試作
開発費を与え「試作機2機単位」を発注。
・ステップ②プロトタイプの決定と量産試作発注…採用機を決め、「実験・量産
試作機10機単位」を発注。
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・ステップ③量産命令…「量産機100機単位」をステップ②と同じ会社に発注
『疾風』の場合、1941 年 12 月試作発注、1943 年 3 月試作 1 号機完成、そ
して 1944 年 4 月実用化という経過だった。氏は「注目すべきはステップ②だ」
として、次のように述べている。
軍は、開発メーカーに十分な開発資金を与えて完成した試作機を、
〈実験・
量産試作機〉として 10 機単位で発注購入し、
これを軍施設でテストパイロッ
トによりあらゆる面でテストし、性能吟味、改善箇所、実用配備課題をメー
カー側へ正確にフィードバックした。これらのデータを基に、メーカーは直
ちに設計改良と製造方法確立を急ぎ、絶えることなく量産試作機として軍に
納入し、やがて制式機(実用機)として前線に送られた。つまり、ライバル
民間企業間の熾烈(しれつ)な開発競争と国の適切な資金注入・評価システ
ムがバランスよく組み合わされた技術イノベーション実用化の頂点に
『疾風』
があり、そこで蓄積された開発技術とノウハウは戦後の自動車産業発展へと
引き継がれた。
引用部の最後の『戦後の自動車産業発展へと引き継がれた』というのは、同機
エンジン『誉』と機体を設計・開発・製造した中島飛行機出身のエンジニアたち
が戦後、トヨタ・日産(プリンス)
・ホンダ・スバルなど自動車メーカーに転じ、
わが国の自動車産業発展の基盤をつくったことを言っている。
瀬戸氏はこの記事で『疾風』に代表される戦前戦中のわが国航空機開発プロセ
スをもとに、大企業と大学の共同研究・産学連携の新しい在り方や、
『大学発等
テクノロジー・ベンチャーが開発した実験・量産試作品に対する政府責任発注』
というモデルを具体的に提案している。
一方、大学発ベンチャーなどの先端的な技術を新産業創出に結び付けるために、
新しい公的資金投入の仕組みを提案しているのが次の記事である。
● 2011 年 10 月号
南部修太郎氏、
「日本版エンジェルの創成が日本の新産業創出を活性化する!」
コア技術を核とする新産業創出では、初期投資をいかに効率的に行うかが極め
て重要であるという。
例えば、Later Stage は民間資金に任せ、公的資金投入はリスクのある初
期投資に限定し、かつその投資判断を、日本に埋もれているエンジェル素質
のある人材を発掘し、責任とインセンティブを与えて任せ、その能力の育成
を図るのはどうか。また株式会社産業革新機構の資金を活用して多数の小
ファンドを作り、その運営をエンジェル素質のある人材に任せ、成果を競わ
せて育成を図る施策も効果的と思われる。
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視 点
連携したくなるパートナーを目指して
異分野融合によるイノベーション
★景気回復への期待が膨らんでいる。先行き
★川上(素材)と川下(最終商品)の連携は
の不透明さを思いつつも、明るい明日を感じ
させるニュースと皐月の風とが相まって、街
全体が明るい気分に包まれ始めた。
山本七平氏は、日本人は「空気」に支配さ
れやすいと説いた。空気とは場を支配する雰
囲気のことである。いったん空気が出来上が
ると、誰もが逆らうことなく空気を読んで行動
するようになり、また、空気が変わると、すぐ
に新しい空気になじむことができるという。
産学連携の世界は今、空気の変わり目にあ
るのかもしれない。企業が連携したくなる
パートナーとして、大学がこれまで以上に輝
く努力を続けることが、空気を霧消させない
方法であると思う。
従前より活発に行われている。ただし、その
協力関係が長期にわたると、新鮮なアイデア
が時として生まれ難くなることもある。そこ
で、最近は異分野との連携を求める動きが活
発になっているようだ。技術用語や慣習の違
いから、初めは手探りのコミュニケーション
となることも多いが、異なる技術分野での連
携は新鮮でもある。成功のためには、「前向
きに取り組む姿勢」と「技術同士をつなぐ
『目利き』のスキル」が重要であろう。その
意味でも、リサーチ・アドミニストレーター
の役割は重要だ。本号掲載のベンチャー企業
や JAXA の技術も、異分野連携でどんなイ
ノベーションを生み出すのだろうか。
金澤 良弘 日本大学産官学連携知財センター 副センター長
編 集 後 記
坂本 敦男 株式会社資生堂 技術企画部 参与
経営はプロの仕事
本号の特集で取り上げた知られざる創薬ベンチャー企業・ノーベルファーマの躍
進は本当に驚きである。大手製薬会社が開発を手掛けない“隙間”を攻略し、会社
設立から 10 年で 9 つの新薬を上市。文字通り、新しい市場を創出している。10
年ほどで従業員 200 人規模に成長しているベンチャーがほかに幾つあるだろうか。
塩村仁社長は製薬会社経営のプロを自任するが、大学のライフサイエンス分野の研
究者が起業し社長になることにも理解を示す。しかし、「ただし書き」がつく。「1
年間ビジネススクールで経営を学べばいい。研究成果を出す優秀な人材なのだから」
と。創薬ベンチャーというと、とかくシーズに注目が集まりがちだが、もっと経営
に目が向けられると流れが変わるかもしれない。
国の「科学技術イノベーション総合戦略」は、産学官連携・府省間の連携強化で“イ
ノベーション・システムを駆動”し、規制緩和の推進等で“イノベーションを結実”
させる――とうたっている。重点的な取り組み課題の工程表も掲げられている。こ
の空前の規模の産学官連携プロジェクトの中で大学そしてベンチャー企業への期待
もこれまでになく高い。
産学官連携ジャーナル(月刊)
2013 年 6 月号
2013 年 6 月 15 日発行
PRINT ISSN 2186 - 2621
ONLINE ISSN 1880 - 4128
Copyright ©2005 JST. All Rights Reserved.
(編集長・登坂和洋)
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独立行政法人 科学技術振興機構(JST)
産学連携展開部 産学連携支援担当
高橋 富男
東北大学 高度イノベーション博士
人財育成センター 事業推進主幹
JST 産学連携支援担当
多田羅、登坂
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Vol.9 No.6 2013
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