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ロシアの自動車産業政策に変化
みずほインサイト 欧 州 2012 年 3 月 26 日 ロシアの自動車産業政策に変化 政策調査部主任研究員 明らかになった「工業アセンブリ措置」の変更点 03-3591-1317 金野雄五 [email protected] ○ これまでに多くの日系およびその他外資系の完成車・部品メーカーが、「工業アセンブリ措置」に よる輸入関税率の減免を享受するかたちでロシアでの現地組立に着手 ○ 昨年12月に妥結したWTO加盟交渉の結果、ロシア政府は、同措置の適用条件の1つである現地調達義 務を緩和する一方で、部品・原材料の輸入関税率の減免期間を短縮することを約束 ○ ロシア政府は工業アセンブリ措置の変更により関税コストが増大する完成車・部品メーカーに対し て何らかの補償措置を講じる可能性があり、今後の動向が注目される 1.はじめに 工業アセンブリ措置は、近年のロシアの自動車産業政策において重要な位置を占めてきただけでな く、これまでに同措置の適用を受けてロシアでの現地組立に着手した日系およびその他外資系の自動 車メーカーにとっても死活的に重要なものとなっている。この工業アセンブリ措置は、昨年12月のロ シアのWTO(世界貿易機関)加盟合意により、部分的に変更されることが決まったが、同措置の変更 点について日本語で詳細に解説した公刊資料は見当たらない。そこで本稿では、工業アセンブリ措置 の概要とその適用状況、WTO加盟合意における変更点の詳細を紹介する。 2.「工業アセンブリ措置」適用の新・旧条件 工業アセンブリ措置とは、生産能力や現地調達率に関してロシア政府が定める基準を満たすことを 条件に、自動車(完成車および部品)の現地組立プロジェクト(ロシア資本、外資の別は問われない) に対して、部品や原材料の輸入関税率を一定期間、ゼロまたは3~5%に減免する特典が供与される措 置である(関税減免を含む同措置の適用に関する協定の有効期間は、完成車組立の場合、最長で8年間。 詳細は図表1参照)。ロシアで工業アセンブリ措置が最初に導入されたのは2005年であり、同年以降、 多くの外資系の完成車・部品メーカーが、この工業アセンブリ措置の適用を受けた上でロシアでの現 地生産に踏み切った。 その後、工業アセンブリ措置の適用条件は2011年から大幅に厳格化された。例えば、完成車組立に 関して工場を新規に建設する場合(グリーンフィールド方式)、厳格化される前の条件(以下、旧条 件1)は、①工業アセンブリ措置の適用に関する協定発効後、30か月以内に溶接・塗装ラインを設置し 1 てCKD(コンプリートノックダウン)方式2の生産を開始すること、②協定発効後8年以内に生産能力 を年間2万5千台以上とすること、③減免税率による部品・原材料の輸入価額を、CKD開始から2年後に 部品・原材料総額の10%相当分減少させ、3年半後と4年半後にさらに10%相当分ずつ減少させること 等であった。 しかし2011年以降、工業アセンブリ措置の適用条件(以下、新条件3)は、①生産能力を協定発効後 4年以内に年間30万台以上とし、②部品・原材料の現地調達率を協定発効後4年目に30%以上、5年目に 40%以上、6年目以降は60%以上にすることとされた。さらに、従来は無かった条件として、③生産さ れる自動車の30%に国産のエンジンおよび(または)トランスミッションを装備すること、④協定発 効後4年以内にプレスラインを設置すること、⑤協定発効後4年以内にR&Dセンターを設置することが 新たに義務付けられた。 図表 1 完成車 組立 部品 組立 工業アセンブリ措置の新・旧条件の比較 旧条件 <グリーンフィールド方式の場合> (1) 工業アセンブリ措置の適用に関する協定の有効 期間(最長 8 年間)内に生産能力を 2 交代制下 で年間 2 万 5 千台以上とする (2) 協定発効後、30 か月以内に組立・溶接・塗装ラ インを設置して CKD(コンプリートノックダウ ン)による生産を開始する (3) 減免税率による部品・原材料の輸入価額を、CKD 開始から 2 年後に部品・原材料総額の 10%相当 分減少させ、3 年半後と 4 年半後にさらに 10% 相当分ずつ減少させる 新条件 <グリーンフィールド方式の場合> (1) 協定発効後 4 年以内に生産能力(CKD)を年間 30 万台以上とする(協定の有効期間は最長 8 年間) (2) 部品・原材料の現地調達率を協定発効後 4 年目 に 30%以上、5 年目に 40%以上、6 年目以降は 60%以上にする (3) 生産される自動車の 30%に国産のエンジンおよ び(または)トランスミッションを装備する (4) 組立・溶接・塗装ラインの他に、協定発効後 4 年以内にプレスラインを設置する (5) 協定発効後 4 年以内に R&D センターを設置する <ブラウンフィールド方式の場合> (1), (3):上記と同じ (2) 協定発効後、18 か月以内に溶接・塗装ラインを 設置して CKD による生産を開始する <ブラウンフィールド方式の場合> (1) 協定発効後 3 年以内に生産能力を年間 35 万台以 上とする (2) 部品・原材料の現地調達率を協定発効後 1 年目 に 35%以上、2 年目に 40%以上、3 年目に 45% 以上、4 年目に 50%以上、5 年目に 55%以上、6 年目以降は 60%以上にする (3)~(5):上記と同じ (1) 協定の有効期間は 2020 年末まで (2) 組立てる部品に応じて、現地調達率の下限を、 ①2011~14 年、②2015~17 年、③2018~20 年に それぞれ下記の通りとする(以下は一部抜粋) ・エンジン、トランスミッション部品(ギアボッ クス、ドライブシャフト)、ハンドル装置:① 15%、②30%、③45% ・ディスクブレーキ、バンパー:①15%、②③45% ・シート:①~③:30% ・車体プレス部品:①~③15% (1) 協定の有効期間は、エンジンおよびトランスミ ッション部品(ギアボックス、動軸)について は最長 7 年間、その他の部品については最長 5 年間 (2) 協定の有効期間内に生産能力を以下のようにす る(以下は一部抜粋) ・エンジン(2,500cc 以下):2 交代制下で年間 2 万 5 千基以上 ・ギアボックス(トルク 30kg・m 以下) :年間 2 万 5 千基以上 ・ドライブシャフト:2 交代制下で年間 5 千基以 上 (注)生産台数に関する規定は、個別協定ごとに定 (3) 減免税率による部品・原材料の輸入価額を、CKD められるとみられる。 開始から 1 年半後に部品・原材料総額の 10%相 当分減少させ、2 年半後と 4 年 4 ヶ月(40 ヶ月) 後にさらに 10%相当分ずつ減少させる (出所)2005 年 4 月 15 日付経済発展貿易省・産業エネルギー省・財務省共同指令 No.73/81/58 等より みずほ総合研究所作成. 2 なお、完成車組立プロジェクトに対する旧条件での工業アセンブリ措置適用に関する協定の締結は、 当初、2007年11月10日までしか認められていなかったが、2009年に例外規定が導入され、極東地域な ど経済発展が遅れた地域でのプロジェクトについては、大統領もしくは首相の承認を得た上で、旧条 件に基づく工業アセンブリ措置の適用が認められることになった4。 2.外資系メーカーへの工業アセンブリ措置の適用状況 (1)完成車メーカーへの適用状況 こうしてロシアでは現在、多数の完成車組立と部品組立プロジェクトのそれぞれに関して、旧条件 または新条件のいずれかに基づいて工業アセンブリ措置の適用に関する協定が締結済みか、もしくは 締結されつつある5。外資系メーカーによる完成車組立プロジェクトについて、新・旧条件別に工業ア センブリ措置の適用に関する協定の締結状況をみると、まず新条件に基づいて協定が締結されたのは、 ①ルノー/日産/AvtoVAZ/IzhAvto連合、②フォード/Sollers連合、③VW、④GMの4つとなっている(図 表2)6。これら4つのプロジェクトは、いずれも既存の工場を増強するブラウンフィールド方式がとら れており、なかでもVWを除く3つのプロジェクトについては、2005~07年に旧条件に基づいて協定が 締結された複数のプロジェクトがコンソーシアムを組んだ上で、新条件に基づいて協定を締結しなお すかたちとなっている7。 図表 2 外資系完成車メーカーによる工業アセンブリ措置協定の締結状況 プロジェクト(メーカー) ・Toyota Motor Manufacturing Russia ・Suzuki Auto MFG Rus ・PSMA RUS ・Hyundai Motor CIS ・Sollers-Isuzu ・Sollers-Bussan ・Mazda Motor Manufacturing Rus プロジェクト(メーカー) ・ルノー/日産/AvtoVAZ/IzhAvto 連合 -Avtoframos -Nissan Manufacturing RUS -AvtoVAZ -United Auto Group《IzhAvto》 -Mercedes-Benz Trucks Vostok -KAMAZ ・フォード/Sollers 連合 -Ford Motor Company -Ford Sollers ELABUGA -Sollers-KAMA ・VW -Volkswagen Group Rus ・GM -General Motors Cars -GM-AvtoVAZ 旧条件 工場所在地 サンクトペテルブルク サンクトペテルブルク カルーガ州 サンクトペテルブルク タタルスタン共和国エラブガ (極東地域) (極東地域) 新条件 工場所在地 モスクワ サンクトペテルブルク サマラ州トリヤッチ ウドムルト共和国 タタルスタン共和国ナベレジニエ タタルスタン共和国ナベレジニエ レニングラード州 タタルスタン共和国エラブガ タタルスタン共和国ナベレジニエ カルーガ州 サンクトペテルブルク サマラ州トリヤッチ (出所)WTO 資料より みずほ総合研究所作成. 3 協定締結日または発効日 2006 年 6 月 12 日 2007 年 6 月 8 日 2007 年 6 月 9 日 2007 年 9 月 14 日 2007 年 11 月 30 日 2011 年 2 月 17 日 2011 年 6 月 22 日 協定締結日 2011 年 5 月 30 日 2011 年 5 月 31 日 2011 年 5 月 31 日 2011 年 5 月 31 日 他方、現時点において、旧条件に基づく工業アセンブリ措置が適用されている、もしくはその適用 が決まっている外資系完成車メーカーのプロジェクトは7つある。このうち、Sollers-Bussan(トヨタ車 を生産予定)とマツダの極東工場は、前述の例外規定によって、旧条件に基づく工業アセンブリ措置 の適用が2011年に認められたプロジェクトである。その他の5つ(トヨタのサンクトペテルブルク工場 等)は、2006~07年に旧条件の下で協定が締結され、今後、新条件に基づいて協定を締結しなおす予 定が無いとみなされるプロジェクトである。 (2)部品メーカーへの適用状況 部品組立プロジェクトについては、2011年末の時点で、50を超える外資系メーカーが新条件に基づ く工業アセンブリ措置の適用に関する「メモランダム」を締結済みである(図表3)。このメモランダ ムは、協定締結の前段階として位置付けられていることから、今後、これらのメモランダムを締結し たメーカーの一部が正式な協定締結に至るものとみられる。なお、新条件に基づく工業アセンブリ措 置適用に関するメモランダムを締結した外資系メーカー50社以上のうち、半数近くの約20社は、旧条 件に基づく工業アセンブリ措置適用に関する協定を締結済みのメーカーである8。 図表 3 外資系部品メーカーによるメモランダムの締結状況 プロジェクト(メーカー) メモランダム締結日 プロジェクト(メーカー) Grupo Antolin Saint-Petersburg 2011 年 2 月 25 日 Cummins Kama * Trading Company DensoRus 2011 年 2 月 25 日 メモランダム締結日 2011 年 2 月 28 日 Mercedes-Benz Trucks Vostok 2011 年 2 月 28 日 Eberspaecher AvtoVAZagregat exhaustsystems * 2011 年 2 月 25 日 Eberspaecher Exhaust Systems Rus 2011 年 2 月 28 日 ZF Russia 2011 年 2 月 25 日 Webasto Rus 2011 年 2 月 28 日 Visteon Rus * 2011 年 2 月 25 日 MANN + Hummel 2011 年 2 月 28 日 FUSO KAMAZ Trucks Rus 2011 年 2 月 25 日 Voith Turbo Kazan * 2011 年 2 月 28 日 Tenneco Automotive Volga 2011 年 2 月 25 日 Continental Tires Russ 2011 年 2 月 28 日 Faurecia ADP * 2011 年 2 月 25 日 Autoliv 2011 年 2 月 28 日 Continental Automotive Rus 2011 年 2 月 25 日 TRW Automotive 2011 年 2 月 28 日 Delphi Samara 2011 年 2 月 25 日 Automotive Komponents International Rus * 2011 年 2 月 28 日 LEONI Wiring Systems 2011 年 2 月 25 日 Mefro Wiles Russia Schmitz Cargobull Russland 2011 年 2 月 25 日 Avtoframos 2011 年 2 月 28 日 Magna Technoplast * 2011 年 2 月 25 日 MAHLE Technologies RUS Ltd. 2011 年 2 月 28 日 Magna Togliatti * 2011 年 2 月 25 日 Takata-Petri Rus 2011 年 2 月 28 日 Volvo Vostok 2011 年 2 月 25-26 日 Visteon Avtopribor Electronics 2011 年 2 月 28 日 Bosal * 2011 年 2 月 25-26 日 Robert Bosch 2011 年 2 月 28 日 Toyota Motor Manufacturing Russia 2011 年 2 月 25-26 日 Benteler Automotive * 2011 年 2 月 28 日 Johnson Controls International * 2011 年 2 月 25-28 日 BASF 2011 年 2 月 28 日 Automotive Lighting * 2011 年 2 月 25-28 日 Toyota Boshoku * 2011 年 2 月 28 日 Knorr-Bremse Kama system for the KTS * 2011 年 2 月 26 日 Mobis module CIS * 2011 年 2 月 28 日 Federal-Mogul Naberezhnye Chelny * 2011 年 2 月 26 日 Valeo Service 2011 年 2 月 28 日 Federal-Mogul Pauertreyn Vostok 2011 年 2 月 26 日 Valeo Climate Control Tomilino 2011 年 2 月 28 日 Tee Ai Automotive * 2011 年 2 月 26 日 Schaeffler Russland 2011 年 2 月 28 日 Dura Automotive Systems 2011 年 2 月 26 日 Robert Bosch Saratov 2011 年 2 月 28 日 Shin Yang Rus * 2011 年 2 月 26 日 Toyota Tsuse Mashineri 2011 年 2 月 28 日 Yura Corporation Rus * 2011 年 2 月 26 日 Gestamp-Severstal-Kaluga 2011 年 2 月 28 日 ZF KAMA * 2011 年 2 月 26-28 日 Gestamp-Severstal-Vsevolozhsk 2011 年 2 月 28 日 (注)* は、旧条件に基づく工業アセンブリ協定を締結済みのプロジェクト(メーカー). (出所)WTO 資料より みずほ総合研究所作成. 4 2011 年 2 月 28 日 3.WTO 加盟に伴う工業アセンブリ措置のルール変更 ロシアのWTO加盟交渉の過程では、工業アセンブリ措置の適用条件として課されている部品・原材 料の現地調達義務が、WTOのTRIM(貿易関連投資措置)協定に違反するとして問題視された9。そし て、最終的にはロシア政府が妥協するかたちで工業アセンブリ措置のルールを部分的に変更すること を約束した。 (1)現地調達義務が緩和 ロシア政府が約束したルール変更とは、第1に、完成車組立に関する新条件の現地調達率に関する義 務の緩和である。旧条件が義務付けている現地調達率(30%)と新条件のそれ(60%)とでは、現地 調達率の算定基準が異なるため単純な比較はできないが、仮にどちらかの算定基準で統一した場合で も、新条件の現地調達義務は旧条件のそれよりも格段に厳しいことが確実とみられていた10。このため、 WTO加盟交渉では新条件の現地調達率の高さに対して批判が集中し、最終的にロシア政府は、新条件 の現地調達義務の緩和を余儀なくされた。すなわちロシア政府は、新条件が義務付ける現地調達率で ある60%が、旧条件の算定基準では(旧条件の義務を5ポイント上回るだけの)35%に相当するとみな すこととし、事実上、この35%基準を現地調達義務の履行状況チェック等において用いることを約束 したのである。 (2)優遇税率の適用期間が短縮 工業アセンブリ措置に関するルール変更の第2点目は、工業アセンブリ措置の適用期間の短縮である。 具体的には、旧・新条件のいずれに基づくものであるかを問わず、また、完成車・部品組立のいずれ のプロジェクトであるかを問わず、工業アセンブリ措置の適用に関する協定はすべて2018年6月末をも って失効することが約束された。この約束により、2011年に協定が締結された完成車組立プロジェク ト(外資系では、旧条件による2つのプロジェクトと新条件による4つのプロジェクト)については、 当初予定で2019年頃までと見込まれていた部品・原材料輸入に対する減免関税率の適用期間が1年程度、 短縮されることになるとみられる。また、これから新条件に基づいて工業アセンブリ措置協定が締結 される予定の部品組立プロジェクトについては、減免関税率の適用期間が一律で2020年末までと規定 されていたことから、今般のロシア政府の約束により、これらすべてのプロジェクトに関して減免関 税率の適用期間が1年半ずつ短縮されることになる。なお、減免関税率の適用期間の短縮により、工業 アセンブリ措置の適用を受けて現地組立を行う各完成車・部品メーカーは関税コストの増大による損 失を蒙ることになるが、こうした損失については、現在ロシア政府がその補填方法を検討していると の情報があり、今後の動向が注目されている11。 5 1 完成車組立プロジェクトへの工業アセンブリ措置適用の旧条件は、2005 年 4 月 15 日付経済発展貿易省・産業エネルギー省・財務 省共同指令 No.73/81/58 による。 2 コンプリートノックダウンとは、加工度が低い、より細分化された部品から完成車を組立てる方法である。これに対して、すでに ある程度組立てられた部品から完成車を組立てる方法をセミノックダウンという。 3 完成車組立プロジェクトへの工業アセンブリ措置適用の新条件は、2010 年 12 月 24 日付経済発展省・産業商業省・財務省共同指令 No.678/1289/184 による。 4 完成車組立プロジェクトに対する旧条件での協定締結に関する例外規定は、2009 年 12 月 17 日付経済発展省・産業商業省・財務省 共同指令 No.533/1018/137 による。 ただし、 この例外規定による協定締結も、 2011 年 6 月 23 日をもって締め切られた(WTO, 2011, Report of the Working Party on the Accession of the Russian Federation to the World Trade Organization, Nov. 17)。 5 2011 年末時点における完成車・部品別、新・旧条件別の締結済み協定数は次の通りである(国内メーカーと外資系メーカーの合計 数)。完成車・旧条件:31、完成車・新条件:4、部品・旧条件:42、部品・新条件:0。なお、後述する「メモランダム」の締結件数 は、国内メーカーと外資系メーカーを合わせて 178 件である(WTO, 2011)。 6 完成車メーカーによる新条件に基づく協定の締結期限は、2011 年 6 月 1 日であったとされる(WTO, 2011) 。 7 VW(Volkswagen Group Rus)については、旧条件による工業アセンブリ措置協定が 2006 年 5 月 29 日に締結され、2011 年 5 月 31 日に新条件による協定が新たに締結されている。 8 逆に言えば、旧条件に基づく工業アセンブリ措置の適用協定を締結した外資系部品メーカーのほとんどが、新条件の適用に関する メモランダムを締結している(旧条件に基づく協定を締結した外資系部品メーカーでメモランダムを締結していないのは、筆者が確 認できた範囲では、NVH Rus および The joint venture Vittsenmann Russiya の 2 件のみである) 。なお、このメモランダムの締結期限は 2011 年 2 月 28 日であったとされる。また、部品メーカーによる旧条件に基づく協定の締結期限は 2010 年 12 月 31 日であり、新条件 に基づく協定の締結期限は、すでに旧条件に基づいて協定を締結済みの部品メーカーについては 2011 年 12 月 31 日、それ以外の部品 メーカーについては 2013 年 12 月 31 日であるとされる(WTO, 2011) 。 9 TRIM 協定は、貿易歪曲的な効果を有する投資関連措置を禁止するものであり、ロシアの工業アセンブリ措置を巡っては、とくに EU がロシアへの自動車部品の輸出量が減少することに強い懸念を持ち、現地調達義務の早期撤廃を求めていたとされる。なお、ロ シアの WTO 加盟交渉の経緯や加盟条件の概要は、金野雄五(2012) 「決定したロシアの WTO 加盟:加盟条件の概要とビジネス環境 への示唆」 『みずほインサイト』3 月 22 日[http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/eu120322.pdf ] 参照。 10 旧条件の現地調達率(30%)は、完成車 1 台あたりの組立に要した部品・原材料(輸入品および国産品)の総額に占める現地調達 の部品・原材料の割合であるのに対して、新条件の現地調達率(60%)は、完成車の販売価格(ただし VAT、物品税を除く)に占め る現地調達の部品・原材料の割合である。なお、新条件の現地調達率(60%)を旧条件の算定基準に従って換算すると、約 50%であ るとの説がある。 11 坂口泉(2012) 「WTO 加盟でロシア自動車産業はどう動くか?」 『ロシア NIS 調査月報』2 月号, pp.10-25 による。 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに 基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 6