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パッシブガスチューブ 使用マニュアル - 柴田科学株式会社
パッシブガスチューブ 使用マニュアル 2004年版 はじめに ∼パッシブサンプラーをご利用いただく方へ∼ 近年、化学物質による室内の空気汚染などが原因で、めまいや頭痛などさまざまな 体調不良が生ずるシックハウス症候群が問題になっています。このため、厚生省では、 2000年6月にシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会をおこない、ホルムア ルデヒド、トルエン、キシレン、そして9月においてはパラジクロロベンゼン、エチル ベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ ̶ N ̶ ブチルの室内濃度に関する指 針値を定めました。 また、室内空気中化学物質(ホルムアルデヒドとその他の揮発性 有機化合物)の採取法と測定方法をまとめ、室内空気汚染にかかわるガイドラインを 発表しています。その中で、居住測定の場合には、拡散型(パッシブサンプラー)のサ ンプラーも使用できるとされております。 当社では、 TEA含浸シリカゲルを充填したパッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)、 活性炭を充填したパッシブガスチューブ(有機溶剤用)の2種をラインアップしていま す。パッシブガスチューブは、ポンプを使用せず、ガスの自然拡散によって吸着をお こなうサンプラーです。ポンプを用いて強制的に一定量の空気を捕集するアクティブ サンプリングに比べ、より簡易に空気採取をおこなうことができます。また、ポンプ を使用しないため、騒音もなく、個人暴露量測定の際にも対象者の邪魔になりません。 さらに、同時サンプリングが可能であることから、濃度分布解析に用いられます。同 時に、分析方法についても選択性があります。反面、サンプリング後の保管などに関 して、注意すべき点がいくつかあります。 このマニュアルでは、当社のパッシブガスチューブそれぞれについて、採取法や測 定方法を詳しく紹介しました。ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物の測定をおこな う際のガイドブックとして、取扱説明書と併用してご利用いただけます。 なお、内容には万全を期しておりますが、万一不備、不具合な点などがありました ら、大変お手数ですが、当社までご連絡いただきますようお願い申し上げます。 本書につきまして、ご意見、ご質問などお寄せいただけましたら幸いです。 2000年11月 柴田科学株式会社 環境エンジ部 環境分析課 2004年版発行に際して 2000年11月に第1版を発行した後、厚生労働省でおこなわれたシックハウス(室内 空気汚染)問題に関する検討会において、2001年7月にフタル酸ジ ̶ 2 ̶ エチルヘキシ ル、テトラデカン、ダイアジノンが、2002年1月には、アセトアルデヒド、フェノブ カルブの室内濃度指針値が追加されました。 また、2003年7月の改正建築基準法施 行により、ホルムアルデヒド、クロルピリフォスの規制がなされ、ハウスシック対策 が広まりつつあります。 当社ではアセトアルデヒドが厚生労働省指針値に追加されたのを受け、ホルムアル デヒドとアセトアルデヒドを同時に測定できるパッシブサンプラー、パッシブガスチ ューブ(アルデヒド・ケトン類用)をラインアップに加えました。 本冊子の改訂にあたり、従来のTEA含浸シリカゲルを充填したパッシブガスチュー ブ(HCHO,NO2用) 、活性炭を充填したパッシブガスチューブ(有機溶剤用)に加え、 新たに発売されましたDNPH含浸シリカゲルを充填したパッシブガスチューブ(アル デヒド・ケトン類用)についても、採取法、測定法を紹介いたします。アルデヒド類や、 揮発性有機化合物の測定を行う際のガイドブックとして、取扱説明書と併用してご利 用ください。 なお、内容には万全を期しておりますが、万一不備、不具合な点などがありました ら、大変お手数ですが、当社までご連絡いただきますようお願い申し上げます。 本書につきまして、ご意見、ご質問などお寄せいただけましたら幸いです。 2003年12月 柴田科学株式会社 環境エンジ部 大気水質課 (旧称 環境分析課) 目次 はじめに …3 2004年版発行に際して …5 ■パッシブガスチューブ(HCHO,NO2用)使用マニュアル …7 ■パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル …25 ■パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル …41 ■用語説明 …57 パッシブガスチューブ (HCHO, NO2用) 使用マニュアル 目次 1.概要 …9 2.適用範囲 …9 3.構成・仕様 …10 4.取り扱い上の注意 …10 5.測定方法(サンプリング) …12 6.定量分析 …14 1)使用試薬 …14 2)使用機器・器具 …15 3)標準溶液の調製 …16 4)標準物質の分析 …18 5)検量線の作成 …18 7.パッシブガスチューブからの試料調製 …18 8.試料溶液の分析 …20 9.環境濃度の算出 …21 参考:リン酸を用いたHPLCによるHCHO分析法 …22 8 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 1.概要 当社の製品であるパッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)は、大気中のHCHO (ホル ムアルデヒド) 、NO(二酸化窒素) 2 を簡易に採取して、環境中のそれぞれの濃度を求 めることが可能な無指向性のサンプラーです。この製品は、ポンプや流量計などを必 要とせず、一定期間測定環境に放置させるだけで自然吸着させることができます。採 取に使用したパッシブガスチューブは、分析室に持ち帰って、吸着剤を取り出し、そ の吸着剤から水に抽出した大気中のHCHO・NO2を分析機器(吸光光度計など)で分析 して濃度を算出します。用途として、作業環境測定、室内環境測定、個人暴露測定等 に用いられます。 パッシブガスチューブは吸着剤をPTFE管で覆った形をしています。HCHOとNO2は PTFE管を通して吸着剤へと浸透していきます。 このPTFE管は湿度、風向、風速に 測定物質が影響されないようにするために必要な「緩衝帯」の役目も持っています。吸 着剤にはトリエタノールアミン含浸シリカゲル(TEA)を使用しています。 2.適用範囲 このパッシブガスチューブを用いて採取可能な物質は、ホルムアルデヒド(HCHO)と 二酸化窒素(NO2)です。 有機ガスには、活性炭を吸着剤に使用したパッシブガスチューブ(有機溶剤用)を、 アルデヒド・ケトン類には、2,4--ジニトロフェニルヒドラジン含浸シリカゲルを吸着 剤に使用した、パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)を別途用意していま す。 9 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 3.構成・仕様 ●パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)の標準構成 a b c d e a:PTFE 栓 b:ウレタンフォーム c:TEA 含浸シリカゲル d:PTFE チューブ e:アルミニウムリング 図-1 パッシブガスチューブ構成図 ●パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)の仕様 吸着剤 トリエタノールアミン(TEA)含浸シリカゲル 1.6g 寸 法 約φ10×70mm 重 量 約8g 入 数 10本入り(個別アルミ袋封入) ※専用ホルダーは別売で用意しています。 4.取り扱い上の注意 1)パッシブガスチューブを取り扱う場合は、なるべく両端のPTFE栓の部分を持っ てください。 10 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 2)サンプリングはパッシブガスチューブに水滴がかからないようにしてください。 また、暖房器具や火気の近くでサンプリングする場合は、熱気が直接かからない ようにおこなってください。 3)サンプリング後は汚染などを防止するため、パッシブガスチューブが入っていた アルミ袋へ速やかに収納してください。収納したら、パッシブガスチューブを軸 に中の空気を押し出すようにして袋を丸め、チャックを閉じます。そして輪ゴム 等で固定します(図-2) 。 図-2 サンプリング直後のパッシブガスチューブ 4)サンプリング後は、なるべく早く分析をおこなってください。 やむをえず保管する場合は、清浄で直射日光の当たらない冷暗所または冷蔵庫で 保管してください。 5)タバコ煙は、ホルムアルデヒド、NO2の発生源です。タバコ煙を測定する目的以 外では、タバコ煙を避けて測定をおこなってください。 11 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 5.測定方法(サンプリング) 1)測定地点でパッシブガスチューブの入ったアルミ袋を開けます。測定は、原則と して二重並行測定をおこないます。 2)パッシブガスチューブを取り出して、別売の専用ホルダーなどに固定します(図-3)。 また、トラベルブランクとして、アルミ袋無開封のパッシブガスチューブを数個 そのままの状態で測定現場に放置します。 図-3 専用ホルダーに装着したパッシブガスチューブ 3)測定開始時間を記録します。また、測定地点をあとで確認できるようサンプリン グNo.などを取り出したアルミ袋の記入欄に記録します。 記録には、パッシブガ スチューブに影響を与えないように鉛筆などを用い、インクペンなどは使用を避 けてください。 4)①個人暴露評価等の測定をおこなう場合は、パッシブガスチューブを襟元などに 取り付けます(図-4) 。 喫煙などの測定をおこなう場合には、煙が直接吹きかからない場所に取り付け てください。 休憩や測定を中止する時は、測定担当者に確認してから中止します。 睡眠時には、パッシブガスチューブを装着したホルダーを枕元に置いて測定を してください。 12 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 図-4 パッシブガスチューブ装着例 ②室内環境測定の場合は、ホルダーに固定したパッシブガスチューブを、室内の 中央付近の、壁から1m以上離れた場所で、床下1m以上(1.2∼1.5m)の位置 にセットし、24時間暴露します(図-5)。 図-5 パッシブガスチューブ設置例 ③外気での濃度を測定する場合は、外壁や空調排気口から2m∼5m離れた位置で、 室内環境測定と同じ高さにパッシブガスチューブを固定したホルダーをセット し、24時間暴露します。 13 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 5)サンプリングが終了したら、パッシブガスチューブを元のアルミ袋に収納します。 この際、測定地点とアルミ袋に記入したこととが合致するようにしてください。 トラベルブランクも同時に回収します。 6) 「4. 取扱上注意−3) 」の通り、パッシブガスチューブを収納したアルミ袋を密 封します。 *これより、ご自分で化学分析が可能な方への説明となります。他機関等へ分析依頼 される場合は、21ページの「9. 環境濃度の算出」からお読みください。 6.定量分析 抽出・分析には、化学分析の知識と技術が必要です。習熟されていない 場合は、必ず経験者の指導のもとで実施するか、もしくは分析測定機関 等に依頼してください。 また、以下の事項の有害性のある物質や揮発性の高い物質の取り扱いは、 防護や火災などの対策を講じることが必要です。事前に MSDS 等を入手 し参照してください。 定量には以下の分析方法が適用できます。HCHOの分析をおこなう場合は、お手持 ちの分析機器などにより、どちらかの方法を選択してください。 測定対象物質 NO2 分析方法 ナフチルエチレンジアミン法 AHMT法 HPLC法 分析機器 吸光光度計 吸光光度計 高速液体クロマトグラフ TEAがNO2を効率よく捕 集し、安定を保つ効果が ある。 ●室温で赤色の発色をす る。 特徴 14 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル HCHO ●SO32− やNO2−が共存 しても妨害されないの で、空気試験法に適し ている。 ●分析感度がいい。 ●AHMT法に比べ、分析 時間が短い。 1)使用試薬 ●NO2 ナフチルエチレンジアミン法 ○スルファニルアミド溶液 スルファニルアミド1gに塩酸(20% wt)100mlを加え、温浴中で溶解して調製 します。 ○ナフチルエチレンジアミン N--(1--ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩0.1gに水100mlを加えて溶解して 調製します。 ●HCHO ①AHMT法(吸光光度法) ○4--アミノ--3--ヒドラジノ--5--メルカプト--1, 2, 4, --トリアゾール溶液(AHMT) AHMT0.5gに0.2N塩酸100mlを加えて、温浴中で溶解して調製します。この 溶液は暗所で保管してください。 ○過ヨウ素酸カリウム溶液 過ヨウ素酸カリウム0.75gに0.2N水酸化ナトリウム溶液100mlを加えて、温 浴中で溶解して調製します。 ②HPLC法 ○2, 4--ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)溶液 有害で爆発の恐れがある物質のため、対策を講じてください。 DNPH31mgにアセトニトリル100mlを加え、温浴中で溶解して調製します。 DNPHは安全のため水を添加して販売されているので、使用前にエタノールな どで精製をおこないます。 2)使用機器・器具 ●NO(ナフチルエチレンジアミン法) 2 ,HCHO(AHMT法) ○吸光光度計 (波長550nmが測定できるもの) ○上記吸光光度計用 1cm ガラスセル ●HCHO(HPLC法) ○高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC) 15 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル ○UV検出器 ○HPLC用分析カラム(ODSカラム:内径3∼5mm,長さ150∼250mm) ○HPLC用自動注入装置、もしくはマイクロシリンジ(100μl程度) ○バイアルびん(自動注入装置を使用する場合) ●共通 ○遠心分離装置(10ml 程度の試験管が入るもの) ○ホールピペット、もしくは分注器 ○標準物質希釈用メスフラスコ ○脱着用共栓付き試験管 ○ドラフトベンチ ○カッター(事務作業タイプ:吸着剤取り出し用) ○静電気除去用はけ ○廃液入れ(密栓ができるガラスびんなど) ○試薬保管庫 (毒劇物用は、 一般試薬とは別に用意し、必ず施錠してください。また、 試薬管理台帳を作成して、毒劇物法に準じて管理をおこなってください。) 3)標準溶液の調製 ●NO2標準溶液 105−110℃で3時間乾燥した亜硝酸ナトリウム(特級)0.7509gを精秤し、水に溶 かして全量で500mlとします。この溶液を1ml取り、2% TEA溶液(wt%)で50ml とし、これを標準原液とします(20μg/ml NO2)。 ●HCHO標準溶液 有害で揮発性の高い物質のため、対策を講じてください。 市販ホルマリン(37%)を1ml取り、水を加えて200mlとします。この溶液10mlに ついて、ヨウ素滴定法に基づいてHCHO濃度を求め、1ml中10μgのHCHOを含む 溶液を調製し、これを標準溶液とします。 この標準溶液を調製するときは、2% TEAで調整します。 ●検量線用標準液の作製 ①NO2 NO2標準溶液0.0--0.6mlを25mlの共栓試験管に取り、これに2% TEA溶液をそ 16 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル れぞれ加えて、全量1ml(total)とします。これらの標準系列各々に水4mlを加え て混合し、スルファニルアミド溶液0.5mlを加えて混合後、室温で15分放置しま す。次いでナフチルエチレンジアミン溶液0.5mlを加えて混合後、室温で30分放 置します。 水対照で吸光度(550nm,1cmガラスセル)で測定し、確認します。なお、試薬 ブランクは、2% TEA溶液1mlに水4mlを加えた溶液について、同様の操作をお こなって得られた溶液を用います。 ②HCHO 有害で揮発性の高い物質のため、対策を講じてください。 ○AHMT法 HCHO標準溶液0−1mlを共栓試験管に取り、これらに2% TEA溶液を加えて 2ml (total)とします 。次いで5N水酸化ナトリウム溶液2ml、AHMT溶液2ml を加えて混合後、室温で20分放置します。この際、激しく振り混ぜるとHCHO が揮散する恐れがありますので、栓をして軽く振り混ぜるようにしてください。 次いで、過ヨウ素酸カリウム溶液2mlを加えて軽く栓をして1分間混合した後、 10分室温で放置します。 水対照に吸光度(550nm,1cmガラスセル)を測定します。なお、試薬ブラン クは、2% TEA溶液2mlについて、同様の操作をおこなって得られた溶液を用 います。 ○HPLC法 HCHO標準溶液をさらに10倍希釈させたもの0−1mlを共栓試験管に取り、こ れに2% TEA溶液を加えて2ml (total)とします。 次いで1molのHCl0.5ml、 DNPH溶液1.5mlを加えて混合させ、軽く栓をして50℃に保たれた温水に10分 間浸けてください。20μlをHPLCに打ち込み、測定をおこないます。なお、 試薬ブランクは、2% TEA溶液2mlについて、同様の操作をおこなって得られ た溶液を用います。 ※分析作業は清浄な場所でおこなってください。 17 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 4)標準物質の分析 ●吸光光度計の調整と測定 測定前に、測定波長550nmを設定して、ゼロ点調整をおこなってください。 各検量線用標準液を1cmガラスセルに入れて測定をし、吸光度を記録します。 ●HPLCの調整と測定 カラムエージングを事前におこない、検出器を作動させて、十分ベースラインが 安定していることを確認します。レコーダー、またはPC記録計についても、記録 条件を入力して準備をします。 各検量線用標準液をマイクロシリンジ、あるいはオートサンプラーで20μl程度注 入し、アウトプットされた対象物質の溶出時間や面積値を記録します。 また、溶 媒ブランクを対象として、希釈溶媒のみを20μl注入して測定をおこない、測定器 とカラムの潜在的な値を確認しておきます。 分析条件例を以下に示します。 ◆HPLC分析条件例 分析カラム ODSカラム:内径4.6mm,長さ250mm 移動相 アセトニトリル:水=60:40 移動相の流速 1.0ml/min カラム温度 40℃ UV測定波長 360nm 5)検量線の作成 面積値と各溶液濃度の値を最小二乗法などを用い、回帰直線の切片と傾きを算出し ます。ここで、2変数の相関係数が1に近い値を示すことが必要です。詳細は、作業 環境測定ガイドブック(分析概論)等を参照ください。 18 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 7.パッシブガスチューブからの試料調製 清浄な場所でサンプルを捕集したパッシブガスチューブをアルミ袋から取り出し、 カッターでチューブのアルミニウムリングの脇を切断してください(図-6)。 切断したチューブの中から、ウレタンを取り除き、TEA含浸シリカゲルを取り出しま す。 図-6 パッシブガスチューブを切断する あるいは、ペンチなどでアルミニウムリングを強く挟んで変形させ、PTFE栓を引き 抜いてTEA含浸シリカゲルをチューブの中から取り出します。 この際、「静電気除去 用はけ」等でパッシブガスチューブを除電しておくと、シリカゲルがチューブに残りに くいので便利です。 水15mlを共栓試験管に入れ、60℃に保たれた温水中に10分間浸け、冷ました後振と うします。 遠心分離装置に3000回転/分で5分間かけた後、上澄液の1mlをNO2分析 に、2mlをHCHO分析に使用し、 「6. 定量分析−3)標準溶液の調製」の「○検量線用 標準液の作製」と同様の操作をおこなったものを試料溶液とします。 19 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 吸着剤(TEA含浸シリカゲル) H2O 15ml 60℃─10min 冷ました後、振とう 遠心分離─3000回転/分×5 上澄液 AHMT法 NO2 1ml HPLC法 HCHO 2ml HCHO 2ml H2O 4ml 5N NaOH 2ml 1mol HCl 0.5ml 混合 AHMT 2ml DNPH 1.5ml スルファニルアミド 0.5ml 20分放置 50℃─10min 15分放置 KIO4 2ml ナフチルエチレンジアミン 0.5ml 混合 30分放置 10分放置 Abs.550nm,1cmセル Abs.550nm,1cmセル HPLC測定 360nm 20μl 図-7 分析操作フローチャート 8.試料溶液の分析 「6. 定量分析−4)標準物質の分析」と同様の条件で前項の試料溶液について、それぞ れの測定をおこなってください。 測定された吸光度や面積から、各溶液の捕集量(NO2:μg/1ml,HCHO:μg/2ml)を 算出します。 なお、このときに用いるブランクは未使用のパッシブガスチューブから吸着剤を取り 出し、同様の操作をおこなって得られる溶液を使用します。 20 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 9.環境濃度の算出 1)環境測定の場合 「8. 試料溶液の分析」で算出されたサンプルの捕集量Wa、ブランク値をWbとし、 対応する物質量を①、②の式に代入して濃度を計算します。 2回連続測定、あるいは二重並行測定をおこなって得た測定平均値とそれぞれの測 定値との間に15%以上の開きがある場合は、測定条件に誤差が発生している可能性 がありますので、原則として再度試料採取をおこないます。 2)個人暴露調査の場合 環境測定の場合と同様に濃度を算出します。ただし、休憩時間などを考慮しないで、 測定を一時中止してアルミ袋に入れ、再度測定したときは、実働時間をサンプリン グ時間tとします。 ●計算式 NO(ppm) 2 =(Wa−Wb)×F/(18.6×t)──── 式-1 HCHO(ppm)=(Wa−Wb)×F/(6.7×t)──── 式-2 Wa=検量線によるNO2およびHCHOの捕集量(NO2:μg/1ml,HCHO:μg/2ml) Wb=ブランク値(NO2:μg/1ml,HCHO:μg/2ml) F=希釈係数(NO2=15.0,HCHO=7.5) 18.6=NO2の比例定数(μg/(ppm・hr)) 6.7=HCHOの比例定数(μg/(ppm・hr)) t=サンプリング時間(hr) 21 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル 参考:リン酸を用いたHPLCによるHCHO分析法 この分析法は、HCHO--DNPHの反応をリン酸酸性下で実施することにより、前項の 方法で発生されると考えられる発ガン性物質「bis-クロロメチルエーテル」の生成を防 止するための方法です。 ●試料調製 ○DNPH溶液 アセトニトリル20mlにDNPH0.4gを加えます。過飽和になった場合は、その上 澄液を使用します。 ○TEA含有0.5Mリン酸(検量線作成用) 0.5Mリン酸300mlにTEA6.4mlを加えます。 ●検量線の作成 HCHO標準液を10倍希釈させたもの0--1mlを、それぞれ試験管に入れ、TEA含有 0.5Mリン酸溶液を7ml加えて、次項の「サンプル測定」に準じて調整し、検量線用 標準系列を作成します。 その際、アセトニトリルの量を全量で10mlになるように 調整してください。 面積値と各溶液濃度との値から検量線を作成します。 ●サンプルの測定 パッシブガスチューブから取り出した吸着剤を共栓試験管に入れ、TEA含有0.5M リン酸溶液を7ml加えて、時々撹拌しながら30分放置します。アセトニトリル2.7ml、 DNPH溶液0.3mlを加えて、室温で30分放置し、遠心分離装置に毎分3000回転で 15分かけたものの上澄みを試料溶液とします。 この試料溶液をHPLCに20μl注入し、測定をおこないます。 ●濃度計算 HCHOの捕集量を検量線から算出し、下記の式に代入して濃度を求めます。 HCHO(ppm)=(Wa−Wb)/(6.7×t) 22 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル Wa=検量線によるHCHOの捕集量(HCHO:μg/7ml) Wb=ブランク値(HCHO:μg/7ml) t=サンプリング時間(hr) 吸着剤(TEA含浸シリカゲル) 0.5Mリン酸 7ml 30分放置(時々撹拌する) アセトニトリル 2.7ml DNPH溶液 0.3ml 30分放置(室温) 遠心分離─3000回転/分×15 上澄液 HPLC 20μl注入 図-8 分析操作フローチャート ○参考資料:吉田,松永,安藤;室内環境学会誌,Vol.3,No.1 2000 23 パッシブガスチューブ(HCHO, NO2用)使用マニュアル パッシブガスチューブ (有機溶剤用) 使用マニュアル 目次 1.概要 …27 2.適用範囲 …27 3.構成・仕様 …28 4.取り扱い上の注意 …28 5.測定方法(サンプリング) …30 6.定量分析 …32 1)使用試薬・ガス …32 2)使用機器・器具 …33 3)標準溶液の調製 …33 4)標準物質の分析 …34 5)検量線の作成 …34 7.パッシブガスチューブからの試料調製 …35 8.試料溶液の分析 …36 9.環境濃度の算出 …36 参考1:当社でのサンプリングレート測定方法 …37 参考2:未確認の物質の併行測定方法 …39 26 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 1.概要 当社の製品であるパッシブガスチューブ(有機溶剤用)は、大気中の有機溶剤を簡易に 採取して、 環境中のそれぞれの濃度を求めることが可能な無指向性のサンプラーです。 この製品は、ポンプや流量計などを必要とせず、一定期間測定環境に放置させるだけ で自然吸着させることができます。採取に使用したパッシブガスチューブは、分析室 に持ち帰り、吸着剤を取り出して有機溶剤を抽出します。その吸着剤から抽出した大 気中の有機ガスを分析機器(ガスクロマトグラフィーなど)で分析して濃度を算出しま す。用途として、作業環境測定、室内環境測定、個人暴露測定等に用いられます。 パッシブガスチューブは吸着剤(活性炭)をPTFE管で覆った形をしています。有機ガ スはPTFE管を通して吸着剤へと浸透していきます。このPTFE管は湿度、風向、風 速に測定物質が影響されないようにするために必要な「緩衝帯」の役目も持っています。 吸着剤には椰子殻活性炭を使用しています。これは、測定標準である活性炭チューブ と同じもので、統一されています。 2.適用範囲 このパッシブガスチューブを用いて採取可能な物質は、原理的に活性炭へ吸着する有 機ガスで、溶剤により脱着が可能な物質です。 ホルムアルデヒドには、トリエタノールアミン含浸シリカゲルを吸着剤に使用したパッ シブガスチューブ(HCHO, NO2用)を、アルデヒド・ケトン類には、2,4--ジニトロフェ ニルヒドラジン含浸シリカゲルを吸着剤に使用した、パッシブガスチューブ(アルデ ヒド・ケトン類用)を別途用意しています。 27 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 3.構成・仕様 ●パッシブガスチューブ(有機溶剤用)の標準構成 a b c d e a:PTFE 栓 b:ウレタンフォーム c:椰子殻活性炭 d:PTFE チューブ e:アルミニウムリング 図-1 パッシブガスチューブ構成図 ●パッシブガスチューブ(有機溶剤用)の仕様 吸着剤 椰子殻活性炭(約20∼40メッシュ)200mg 寸 法 約φ7×55mm 重 量 約2g 入 数 12本入り(個別アルミ袋封入) ※専用ホルダーと脱着用バイアルびんは別売で用意しています。 4.取り扱い上の注意 1)パッシブガスチューブを取り扱う場合は、なるべく両端のPTFE栓の部分を持っ てください。 28 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 2)サンプリングはパッシブガスチューブに水滴がかからないようにしてください。 また、暖房器具や火気の近くでサンプリングする場合は、熱気が直接かからない ようにおこなってください。 3)サンプリング後は汚染などを防止するため、パッシブガスチューブが入っていた アルミ袋へ速やかに収納してください。収納したら、パッシブガスチューブを軸 に中の空気を押し出すようにして袋を丸め、チャックを閉じます。そして輪ゴム 等で固定します(図-2) 。 図-2 サンプリング直後のパッシブガスチューブ 4)サンプリング後は、なるべく早く分析をおこなってください。 特に、ケトン類 等を目的としたサンプリングでは注意が必要です。やむをえず保管する場合は、 清浄で直射日光の当たらない冷暗所または冷蔵庫で保管してください。 5)タバコ煙は、有機ガスの発生源です。タバコ煙を測定する目的以外では、タバコ 煙を避けて測定をおこなってください。 29 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 5.測定方法(サンプリング) 1)測定地点でパッシブガスチューブの入ったアルミ袋を開けます。測定は、原則と して二重並行測定をおこないます。 2)パッシブガスチューブを取り出して、別売の専用ホルダーなどに固定します(図-3)。 また、トラベルブランクとして、アルミ袋無開封のパッシブガスチューブを数個 そのままの状態で測定現場に放置します。 図-3 専用ホルダーに装着したパッシブガスチューブ 3)測定開始時間を記録します。また、測定地点をあとで確認できるようサンプリン グNo.などを取り出したアルミ袋の記入欄に記録します。 記録には、パッシブガ スチューブに影響を与えないように鉛筆などを用い、インクペンなどは使用を避 けてください。 4)①個人暴露評価等の測定をおこなう場合は、パッシブガスチューブを襟元などに 取り付けます(図-4) 。 喫煙などの測定をおこなう場合には、煙が直接吹きかからない場所に取り付け てください。 休憩や測定を中止する時は、測定担当者に確認してから中止します。 睡眠時には、パッシブガスチューブを装着したホルダーを枕元に置いて測定を してください。 30 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 図-4 パッシブガスチューブ装着例 ②室内環境測定の場合は、ホルダーに固定したパッシブガスチューブを、室内の 中央付近の、壁から1m以上離れた場所で、床下1m以上(1.2∼1.5m)の位置 にセットし、24時間暴露します(図-5)。 図-5 パッシブガスチューブ設置例 ③外気での濃度を測定する場合は、外壁や空調排気口から2m∼5m離れた位置で、 室内環境測定と同じ高さにパッシブガスチューブを固定したホルダーをセット し、24時間暴露します。 31 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 5)サンプリングが終了したら、パッシブガスチューブを元のアルミ袋に収納します。 この際、測定地点とアルミ袋に記入したこととが合致するようにしてください。 トラベルブランクも同時に回収します。 6) 「4. 取扱上注意−3)」の通り、パッシブガスチューブを収納したアルミ袋を密封 します。 *これより、ご自分で化学分析が可能な方への説明となります。他機関等へ分析依頼 される場合は、36ページの「9. 環境濃度の算出」からお読みください。 6.定量分析 抽出・分析には、化学分析の知識と技術が必要です。習熟されていない 場合は、必ず経験者の指導のもとで実施するか、もしくは分析測定機関 等に依頼してください。 また、以下の事項の有害性のある物質や揮発性の高い物質の取り扱いは、 防護や火災などの対策を講じることが必要です。事前に MSDS 等を入手 し参照してください。 定量には、作業環境測定マニュアルのガスクロマトグラフ分析法−固体捕集法(活性 炭管)の一部が適用できます。GC/MSを使用する場合は、トルエン--d8を内標準とし て使用します。 1)使用試薬・ガス ○脱着溶媒:二硫化炭素、トルエン、塩化メチレン等(各試薬特級以上) ○標準物質:検量線作成用(試薬特級以上) ○内標準物質:トルエン--d8(GC/MS用)、n--ヘキサン等(リテンションインデック ス使用時のみ) ○キャリアーガス:N2、もしくはHe高圧ガス(99.999%純度以上) --FID、FID検出器使用の場合) ○燃焼ガス:H(GC 2 ○高圧空気:高純度(GC--FID、FID検出器使用の場合) 32 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 2)使用機器・器具 ○ガスクロマトグラフ ○ガスクロマトグラフ用分析カラム:測定対象物質によって選択してください。 非極性物質用の代表的充填カラムには、PEG--20Mがあります。キャピラリーカ ラムの場合は、同様の性質であるDB--WAXなどを用いるとよいでしょう。 ○ホールピペット、もしくは分注器 ○標準物質希釈用メスフラスコ ○脱着用バイアルびん ○バイアル専用振とう器 ○ガスクロマトグラフ自動注入装置、もしくはマイクロシリンジ(1∼5μl) ○ドラフトベンチ ○カッター(事務作業タイプ:吸着剤取り出し用) ○静電気除去用はけ ○廃液入れ(密栓ができるガラスびんなど) ○試薬保管庫 (毒劇物用は、一般試薬とは別に用意し、必ず施錠してください。また、試薬管 理台帳を作成して、毒劇物法に準じて管理をおこなってください。) 3)標準溶液の調製 ●保存用標準原液の作製(1000μg/ml) 本作業は、安全のため保護手袋を着用のうえ、安全ピペッターなどを用い、ドラフ トベンチ内でおこなってください。 対象物質の標準原体を100mgとなるように採取(容量はメスピペット、重量は天秤 で測量)し、100mlのメスフラスコに希釈溶媒で溶かして入れ、二硫化炭素溶媒で メスアップを図ります。 この溶液は、容器の気密をしっかりとして冷暗所に保管すれば、希釈物質が化学的 に安定した物質という条件で、約6カ月程度まで使用することが可能です。 ※市販の希釈標準を使用する場合は、この工程は不要です。 ●内部標準原液の調製(1000μg/ml:GC/MSでトルエン--d8を使用 する場合) トルエン--d8を100mg精秤し、100mlメスフラスコを用いて希釈します。 33 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル この溶液を保存用とし、容器の気密をしっかりとして冷暗所に保管すれば、約6カ 月程度まで使用することが可能です。 ●内部標準の作製(100μg/ml) 内部標準原液を、二硫化炭素で10分の1に希釈します。 ●検量線用標準の調製(0.1∼10μg/ml)約1∼100ppb:24時間採取時 保存用標準試薬を、ホールピペットなど(0.01mlから1ml)で採取し、100mlメス フラスコで希釈した濃度系列を5本以上作製します。 これはほぼGC/FIDの場合の 検量線ですが、GC/ECD、GC/MSの場合は、さらに濃度を1/10から1/50程度まで 落として、検出限界を低くすることができます。 GC/MSの場合は、内部標準原液を0.1ml程度、各検量線標準のメスフラスコに加え てから最終調整をします。 4)標準物質の分析 ●ガスクロマトグラフの調整と測定 カラムエージングを事前におこない、検出器を作動させて、十分ベースラインが安 定していることを確認します。 レコーダー、またはPC記録計についても、記録条 件を入力して準備をします。 各検量線用標準液をマイクロシリンジ、あるいはオートサンプラーで1μl程度注入 し、アウトプットされた対象物質の溶出時間や面積値を記録します。また、溶媒ブ ランクを対象として、希釈溶媒のみを1μl注入して測定をおこない、測定器とカラ ムの潜在的な値を確認しておきます。 5)検量線の作成 面積値と各溶液濃度の値を最小二乗法などを用い、回帰直線の切片と傾きを算出し ます。ここで、2変数の相関係数が1に近い値を示すことが必要です。詳細は、作業 環境測定ガイドブック(分析概論)等を参照ください。 GC/MSの場合は、対象物質とトルエン--d8のモニターイオン面積比と濃度の関係を 算出し、これを検量線として用います。詳細は、環境庁大気保全局大気規制課編集 「有害大気汚染物質測定マニュアル」等を参照してください。 34 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 7.パッシブガスチューブからの試料調製 清浄な場所でサンプルを捕集したパッシブガスチューブをアルミ袋から取り出し、 カッターでチューブのアルミニウムリングの脇を切断してください(図-6) 。 切断し たチューブの中から、ウレタンを取り除き、活性炭をバイアルびんに移し替えます。 この際、「静電気除去用はけ」等でパッシブガスチューブを除電しておくと、活性炭が チューブに残りにくいので便利です。 図-6 パッシブガスチューブを切断する 活性炭を入れたバイアルびんへ、二硫化炭素2mlをホールピペットなどで正確に入れ ます。 GC/MSの場合、内部標準液(100μg/ml)を1μl各サンプルバイアルびんにマイ クロシリンジ等で注入してください。 その後室温にて、振とう器(図-7)を使用する場合は1時間振とう、使用しない場合は 約2時間放置(放置中、数回軽く手で振とうする)し、これを試料溶液とします。 図-7 振とう器 35 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 8.試料溶液の分析 「6. 定量分析−4)標準物質の分析」と同様の条件で前項の試料溶液について、GC測 定をおこないます。 GC/MSの場合、SCANモードでの定性分析を事前に実施し、対 象物質のマススペクトルを調べ、SIM測定用質量イオンを選定します。 測定されたクロマトグラフの面積を求めてください。その値から、試料溶液濃度を 算出します。 さらに、試料溶液濃度に脱着溶剤量(2ml)を乗じた値をパッシブガス チューブの全吸着量とし、これをWa (μg)とします。また、トラベルブランクをWb (μg)とします。 9.環境濃度の算出 1)環境測定の場合 試料溶液濃度に脱着溶剤量(2ml)を乗じた値をパッシブガスチューブの全吸着量と し、これをWa (μg)とします。また、トラベルブランクをWb(μg)とします。 WaをWbで差し引いた値を、対応する物質のサンプリングレートSR(表-1)とサン プリング時間t (min)を乗じた値で割った数値が、サンプリング時の平均濃度(ppm) となります(式-1) 。 採取した有機溶剤が表-1に記載されていない場合は、 「参考2. 未確認の物質の併行 測定方法」を参考にサンプリングレートを算出してください。 2)個人暴露調査の場合 環境測定の場合と同様に濃度を算出します。ただし、休憩時間などを考慮しないで、 測定を一時中止してアルミ袋に入れ、再度測定したときは、実働時間をサンプリン グ時間tとします。 ●計算式 平均濃度(ppm)=(Wa−Wb)/(SR×t)──── 36 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 式-1 参考1.当社でのサンプリングレート測定方法 当社では、パッシブガスチューブ(有機溶剤用)のサンプリングレートを以下の手順 で求めています。 ①暴露実験装置による直接吸引法との比較による測定 暴露実験装置にて、標準状態(一定環境要因)で測定しています。暴露濃度は OSHA TWA値の1/10∼1倍、30∼480min測定で確認したものです。 ②フィールドサンプリングでの実際測定での確認実験*1 *1:実際フィールド測定ができない場合、①のみでサンプリングレートとすることがあります。 当社で確認しているサンプリングレートは、以下の33物質です。 表-1 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)のサンプリングレート 分類 有機溶剤 サンプリングレート (μg/(ppm・min)) 脂肪族炭化水素 ○n--ヘキサン 0.179 アルコール類 ○イソプロピルアルコール 0.066 ケトン類 n--ブタノール 0.056 2--ブタノール 0.088 イソブチルアルコール 0.088 イソベンチルアルコール 0.096 ○アセトン メチルエチルケトン ○メチルイソブチルケトン 0.097 0.094 0.184 メチルブチルケトン 0.121 酢酸メチル 0.173 酢酸エチル 0.186 酢酸プロピル 0.191 酢酸イソプロピル 0.163 酢酸ブチル 0.196 酢酸イソブチル 0.179 酢酸ペンチル 0.203 エーテル エチルエーテル 0.165 ハロゲン化炭化水素 塩化メチレン 0.211 クロロホルム 0.241 四塩化炭素 0.288 1, 2--ジクロルエタン 0.216 エステル類 ○1, 1, 1--トリクロルエタン 0.269 37 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 分類 ハロゲン化炭化水素 芳香族炭化水素 有機溶剤 サンプリングレート (μg/(ppm・min)) 1, 1, 2, 2-テトラクロルエタン 0.227 1, 2--ジクロルエチレン(trans) 0.236 ○トリクロルエチレン 0.238 テトラクロルエチレン 0.304 p--ジクロロベンゼン 0.277 ベンゼン 0.178 ○トルエン 0.180 ○キシレン 0.186 シクロ炭化水素 シクロへキサン 0.091 その他 テトラヒドロフラン 0.154 N, N--ジメチルホルムアミド 0.096 *○印のものは、作業環境において、フィールドサンプリングでの実際測定により確認済み。 *この表サンプリングレートは、共同開発先である神奈川県予防医学協会 芦田敏文氏および当社の測定により決定され たものです。 38 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル 参考2.未確認の物質の併行測定方法 1)必要な器具・材料 ○パッシブガスチューブ(有機溶剤用) ○活性炭チューブ(単層)……1個 ○サンプリング用吸引ポンプ(50∼100ml/minが採気可能なもの)……1台 ○接続用チューブ(フッ素系チューブなど)……50cm×2本 ○流量計(50∼100ml/minが測定可能なフローメーター、もしくは石鹸膜流量計) ……1台 2)サンプリング方法 測定地点の代表的な一カ所にて、活性炭チューブ(吸引ポンプによるサンプリング) とパッシブガスチューブで同じ時間サンプリングをおこないます。 活性炭チューブの採気口は、パッシブガスチューブの近くから取れるように設置し てください。 3)サンプリングレートの算出 「8. 試料溶液の分析」と同様に、検量線法で算出した目的物質の捕集量から大気濃 度を求めてください。 ここで、活性炭チューブから求められた濃度をCa(ppm)とし、パッシブガスチュー ブの捕集量をWp (μg)とします。 サンプリング時間をt (min)とすると、式-2によ り、サンプリングレートSR (μg/(ppm・min))が算出できます。 ●計算式 サンプリングレートSR = Wp /(Ca×t)──── 式-2 ※活性炭からの脱着率は、ここではパッシブガスチューブと活性炭チューブが同量かつ同一のもので あるため、相殺されるという前提です。 39 パッシブガスチューブ(有機溶剤用)使用マニュアル パッシブガスチューブ (アルデヒド・ケトン類用) 使用マニュアル 目次 1.概要 …43 2.適用範囲 …43 3.構成・仕様 …44 4.取り扱い上の注意 …44 5.測定方法(サンプリング) …46 6.定量分析 …48 1)使用試薬 …48 2)使用機器・器具 …49 3)標準溶液の調製 …49 4)標準物質の分析 …50 5)検量線の作成 …50 7.パッシブガスチューブからの試料調製 …51 8.試料溶液の分析 …52 9.環境濃度の算出 …53 参考:未確認の物質の併行測定方法 …54 42 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 1.概要 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)は、大気中のアルデヒド類、ケト ン類を簡易に採取し、環境中のアルデヒド類、ケトン類の濃度を求めることが可能な 無指向性のサンプラーです。このサンプラーはポンプや流量計などを必要とせずに、 一定期間測定環境に放置させるだけで、本体へ自然吸着させることができます。 採取に使用したパッシブガスチューブは、分析室に持ち帰って、吸着剤からアセトニ トリルで抽出し、分析機器(高速液体クロマトグラフィー)で大気中の測定対象物質 を分析します。このような方法により、室内環境、個人曝露等の測定に用いることが できます。 本サンプラーは吸着剤をテフロン管で覆った形状になっています。アルデヒド類とケ トン類は、このテフロン管を通して吸着剤へと浸透していきます。同時に、このテフ ロン管は、湿度、風向、風速に測定物質が影響されないようにするために必要な「緩 衝帯」の役目も担っています。 吸着剤は2,4--ジニトロフェニルヒドラジン含浸シリカゲル(DNPH)200mgを使用し ています。 2.適用範囲 このサンプラーを用いて採取可能な物質は、アルデヒド類とケトン類です。 有機ガスには、活性炭を吸着剤に使用したパッシブガスチューブ(有機溶剤用)、ホ ルムアルデヒド・二酸化窒素には、トリエタノールアミン含浸シリカゲルを吸着剤に 使用したパッシブガスチューブ(ホルムアルデヒド・二酸化窒素用)を別途用意して います。 43 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 3.構成・仕様 ●パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)の標準構成 a b c d e f a:ポリエチレン製プラグ b:ポリエチレン製コネクター c:ポリエチレン製フィルター d:DNPH含浸シリカゲル e:PTFEチューブ f:アルミニウムリング 図-1 パッシブガスチューブ構成図 ●パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)の仕様 吸着剤 DNPH含浸シリカゲル 200mg 寸 法 約φ10×70mm 重 量 約8g 入 数 10本入り(個別アルミ袋封入) ※専用ホルダーは別売で用意しています。 4.取り扱い上の注意 1)パッシブガスチューブを取り扱う場合は、なるべくポリエチレン製コネクター部 分を持ってください。また、サンプリング中は、両端のポリエチレン製プラグが 外れていないことを随時確認してください。 44 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 2)サンプリングはパッシブガスチューブに水滴がかからないようにしてください。 また、暖房器具や火気の近くでサンプリングする場合は、熱気が直接かからない ようにおこなってください。 3)サンプリング後は汚染などを防止するため、パッシブガスチューブが入っていた アルミ袋へ速やかに収納してください。収納したら、パッシブガスチューブを軸 に中の空気を押し出すようにして袋を丸め、チャックを閉じます。そして輪ゴム 等で固定します(図-2) 。 図-2 サンプリング直後のパッシブガスチューブ 4)サンプリング後は、なるべく早く分析をおこなってください。 やむをえず保管する場合は、清浄で直射日光の当たらない冷暗所または冷蔵庫で 保管してください。 5)タバコ煙は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの発生源です。タバコ煙を測 定する目的以外では、タバコ煙を避けて測定をおこなってください。 45 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 5.測定方法(サンプリング) 1)測定地点でパッシブガスチューブの入ったアルミ袋を開けます。測定は、原則と して二重並行測定をおこないます。 2)パッシブガスチューブを取り出して、別売の専用ホルダーなどに固定します(図-3)。 また、トラベルブランクとして、アルミ袋無開封のパッシブガスチューブを数個 そのままの状態で測定現場に放置します。 図-3 専用ホルダーに装着したパッシブガスチューブ 3)測定開始時間を記録します。また、測定地点をあとで確認できるようサンプリン グNo.などを取り出したアルミ袋の記入欄に記録します。 記録には、パッシブガ スチューブに影響を与えないように鉛筆などを用い、インクペンなどは使用を避 けてください。 4)①個人暴露評価等の測定をおこなう場合は、パッシブガスチューブを襟元などに 取り付けます(図-4) 。 喫煙などの測定をおこなう場合には、煙が直接吹きかからない場所に取り付け てください。 休憩や測定を中止する時は、測定担当者に確認してから中止します。 睡眠時には、パッシブガスチューブを装着したホルダーを枕元に置いて測定を してください。 46 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 図-4 パッシブガスチューブ装着例 ②室内環境測定の場合は、ホルダーに固定したパッシブガスチューブを、室内の 中央付近の、壁から1m以上離れた場所で、床下1m以上(1.2∼1.5m)の位置 にセットし、24時間暴露します(図-5)。 図-5 パッシブガスチューブ設置例 ③外気での濃度を測定する場合は、外壁や空調排気口から2m∼5m離れた位置で、 室内環境測定と同じ高さにパッシブガスチューブを固定したホルダーをセット し、24時間暴露します。 47 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 5)サンプリングが終了したら、パッシブガスチューブを元のアルミ袋に収納します。 この際、測定地点とアルミ袋に記入したこととが合致するようにしてください。 トラベルブランクも同時に回収します。 6) 「4. 取扱上注意--3) 」の通り、パッシブガスチューブを収納したアルミ袋を密封 します。 *これより、ご自分で化学分析が可能な方への説明となります。他機関等へ分析依頼 される場合は、53ページの「9. 環境濃度の算出」からお読みください。 6.定量分析 抽出・分析には、化学分析の知識と技術が必要です。習熟されていない 場合は、必ず経験者の指導のもとで実施するか、もしくは分析測定機関 等に依頼してください。 また、以下の事項の有害性のある物質や揮発性の高い物質の取り扱いは、 防護や火災などの対策を講じることが必要です。事前に MSDS 等を入手 し参照してください。 定量には、 有害大気汚染物質測定マニュアルの固相捕集−高速液体クロマトグラフ法、 または、室内空気中化学物質の採取方法と測定方法(厚生労働省)を参考にしてくだ さい。 1)使用試薬 ○アセトニトリル(高速液体クロマトグラフ用のもの) ○水(蒸留水を超純水製造装置により精製したもの) ○標準物質(市販されているアルデヒド、およびケトン類のDNPH誘導体) 48 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 2)使用機器・器具 ○高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC) ○UV検出器 ○HPLC用分析カラム(ODSカラム:内径3∼5mm,長さ150∼250mm) ○HPLC用自動注入装置、もしくはマイクロシリンジ(100μl程度) ○バイアルびん(自動注入装置を使用する場合) ○ガラス製注射筒(10ml程度) ○ホールピペット、もしくは分注器 ○標準物質希釈用メスフラスコ ○脱着用共栓付き試験管 ○ドラフトベンチ ○廃液入れ(密栓ができるガラスびんなど) ○試薬保管庫 (毒劇物用は、一般試薬とは別に用意し、必ず施錠してください。また、試薬管 理台帳を作成して、毒劇物法に準じて管理をおこなってください。) 3)標準溶液の調製 ●標準原液 アルデヒドおよびケトン類のDNPH誘導体の市販品を用い、アセトニトリルで希 釈して標準溶液を調製します。 【例】○ホルムアルデヒド(4μg/ml) ホルムアルデヒド--DNPH標準溶液(40μgHCHO/ml:和光純薬製)1ml をメスフラスコに取り、アセトニトリルを加えて溶解し、全量10mlと します。 ○アセトアルデヒド(4μg/ml) アセトアルデヒド−DNPH標準溶液(0.1μgCH3CHO/μl:和光純薬製) 1mlをメスフラスコに取り、アセトニトリルを加えて溶解し、全量 25mlとします。 49 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル ●検量線用標準液の作製 各標準液から5段階程度の希釈系列を作製します。 【例】○ホルムアルデヒド(2∼10μg/3ml) ホルムアルデヒド−DNPH標準溶液0.5−2.5ml取り、アセトニトリル で全量3mlとします。 ○アセトアルデヒド(2∼10μg/3ml) アセトアルデヒド−DNPH標準溶液0.5−2.5ml取り、アセトニトリル で全量3mlとします。 ※分析作業は清浄な場所でおこなってください。 4)標準物質の分析 ●HPLCの調整と測定 カラムエージングを事前におこない、検出器を作動させて、十分ベースラインが 安定していることを確認します。レコーダー、またはPC記録計についても、記録 条件を入力して準備をします。 各検量線用標準液をマイクロシリンジ、あるいはオートサンプラーで20μl程度注 入し、アウトプットされた対象物質の溶出時間や面積値を記録します。また、 媒ブランクを対象として、希釈溶媒のみを20μl注入して測定をおこない、測定器 とカラムの潜在的な値を確認しておきます。 分析条件例を以下に示します。 ◆HPLC分析条件例 分析カラム ODSカラム:内径4.6mm,長さ250mm 移動相 アセトニトリル:水=60:40 移動相の流速 1.0ml/min カラム温度 40℃ UV測定波長 360nm 5)検量線の作成 面積値と各溶液濃度の値を最小二乗法などを用い、回帰直線の切片と傾きを算出し 50 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル ます。ここで、2変数の相関係数が1に近い値を示すことが必要です。詳細は、作業 環境測定ガイドブック(分析概論)等を参照ください。 7.パッシブガスチューブからの試料調製 清浄な場所でサンプルを捕集したパッシブガスチューブをアルミ袋から取り出し、両 端のポリエチレン製プラグを抜いて、その片側にガラス製注射筒を外れないようにしっ かりと接続してください。 アセトニトリル3mlをガラス製注射筒に入れて、ゆっくり(1ml/min程度の流速)押し 流し、DNPH誘導体を抽出します。 さらに、アセトニトリルで3mlにメスアップしたものを、試料溶液とします。 図-6 抽出例 51 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル サンプリング済 パッシブガスチューブ アセトニトリル3mlで抽出 アセトニトリルで3mlにメスアップ HPLC分析 図-7 分析操作フローチャート 8.試料溶液の分析 「6. 定量分析−4)標準物質の分析」と同様の条件で前項の試料溶液について、それ ぞれの測定をおこなってください。 測定された面積から、各溶液の捕集量(μg/3ml)を算出します。 なお、このときに用いるブランクは未使用のパッシブガスチューブから吸着剤を取り 出し、同様の操作をおこなって得られる溶液を使用します。 52 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 9.環境濃度の算出 1)環境測定の場合 「8. 試料溶液の分析」で算出されたサンプルの捕集量Wa、ブランク値をWbとし、 対応する物質量を①、②の式に代入して濃度を計算します。 2回連続測定、あるいは二重並行測定をおこなって得た測定平均値とそれぞれの測 定値との間に15%以上の開きがある場合は、測定条件に誤差が発生している可能性 がありますので、原則として再度試料採取をおこないます。 2)個人暴露調査の場合 環境測定の場合と同様に濃度を算出します。ただし、休憩時間などを考慮しないで、 測定を一時中止してアルミ袋に入れ、再度測定したときは、実働時間をサンプリン グ時間tとします。 ●計算式 平均濃度(ppm)=(Wa−Wb)/(SR×t) Wa=パッシブガスチューブ1本に捕集されたアルデヒドおよびケトン類の量(μg/3ml) Wb=ブランク値(μg/3ml) SR=各物質の比例定数(μg/ (ppm・hr)) 【例】 ホルムアルデヒド:3.9μg/ (ppm・hr) アセトアルデヒド:4.6μg/ (ppm・hr) t=サンプリング時間(hr) 53 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 参考:未確認の物質の併行測定方法 1)必要な器具・材料 ○パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用) ○DNPHチューブ……1個 ○サンプリング用吸引ポンプ(50∼100ml/minが採気可能なもの)……1台 ○接続用チューブ(フッ素系チューブなど)……50cm×2本 ○流量計(50∼100ml/minが測定可能なフローメーター、もしくは石鹸膜流量計) ……1台 2)サンプリング方法 測定地点の代表的な一カ所にて、DNPHチューブ(吸引ポンプによるサンプリング) とパッシブガスチューブで同じ時間サンプリングをおこないます。 DNPHチューブの採気口は、パッシブガスチューブの近くから取れるように設置し てください。 3)サンプリングレートの算出 「8. 試料溶液の分析」と同様に、検量線法で算出した目的物質の捕集量から大気濃 度を求めてください。 ここで、DNPHチューブから求められた濃度をCa(ppm)とし、パッシブガスチュー ブの捕集量をWp (μg)とします。 サンプリング時間をt (hr)とすると、式により、 サンプリングレートSR (μg/ (ppm・hr))が算出できます。 ●計算式 サンプリングレートSR = Wp /(Ca×t) 54 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 55 パッシブガスチューブ(アルデヒド・ケトン類用)使用マニュアル 用語説明 A∼M A Abs Absorbancy 吸光度 AHMT 4--amino--3--hydrazino--5--mercapto--1,2,4--triazole 4--アミノ--3--ヒドラジノ--5--メルカプト--1,2,4--トリアゾール DNPH 2,4-dinitropenylhydrazine 2,4--ジニトロフェニルヒドラジン GC Gas Chromatography D G ガスクロマトグラフィー GC/ECD Gas Chromatography / Electron Capture Detector 電子捕獲型検出器付クロマトグラフィー GC/FID Gas Chromatography / Flame Ionization Detector 水素炎イオン化検出器付クロマトグラフィー GC/MS Gas Chromatography / Mass Spectrometer 質量分析機付クロマトグラフィー H HPLC High Pressure(performance) Liquid Chromatography 高速液体クロマトグラフィー M MSDS Material Safety Data Sheet 製品安全データシート 58 用語説明 P∼T P PTFE Polytetrafluoroethylene 4弗化エチレン樹脂 T TEA Triethanolamine トリエタノールアミン お∼に お オートサンプラー 自動注入装置 カラムエージング 分析に使用する前に、清浄なガスを通して か カラムを使用可能にする操作。 け 検量線 既知の濃度を分析して、機器のレスポンス をあらかじめ得たもの。 さ サンプリングレート 捕集計数 2回連続測定 同じ場所で異なる時間に測定することを指す。 に 59 用語説明 に∼み に 二重並行測定 同じ場所で同じ時間に測定することを指す。 水対照 機器固有の値を知るために、清浄な水で み 測定した値。 60 用語説明 61 用語説明 パッシブガスチューブ使用マニュアル 2000年12月7日 第1版 2003年12月9日 第2版 2005年3月4日 PDF版 Ver.2.3 発行 柴田科学株式会社 編集 柴田科学株式会社 大気水質課 無断複写・転載禁止 Printed in Japan ©2000--2003 SIBATA SCIENTIFIC TECHNOLOGY LTD. シバタホームページ http://www.sibata.co.jp/ 〒110-8701 東京都台東区池之端3-1-25 TEL (03)3822-2111 No.050304N023