...

超高速分光とナノワールド:䈊 - 筑波大学 電子・物理工学専攻

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

超高速分光とナノワールド:䈊 - 筑波大学 電子・物理工学専攻
はじめに:近年のフェムト(femto)ーアト(atto)秒科学
超高速分光とナノワールド:䈊
フェムト秒オプトエレクトロニクス
フェムト秒-アト秒レーザー物理
発生・制御技術
ナノ構造における電子・フォノンの制御に向けて䈊
(ナノ物性Aイントロダクション)�
◆  超高速全光スイッチ(サブピコ秒)
◆  フェムト秒情報通信(近赤外域:光
ファイバーを用いた長距離データ送
信)
◆  THz電磁波の発生と応用(空港での
危険物検査や分光への応用)�
◆  アト秒(=10-18sec)パルス光源
の開発(XUV領域)
◆  近赤外域レーザーのモノサイクル
パルス化へ(波長800nmでは、光
電場の1サイクルは2.7fs)
筑波大学 数理物質系 物理工学域!
超高速物理・化学現象と材料加工
State-to-State Manipulation
����������長 谷 宗 明�
◆  コヒーレントフォノン発生・制御・イ
メージング!
◆  半導体やナノ構造における電子励起状態
の位相緩和・エネルギー緩和過程!
◆  化学反応動的過程の観測・制御!
◆  レーザーアブレーション・相転移・融解!
何故超高速現象の研究が重要か?
-シリコンデバイスにおけるキャリアーフォノン散乱-
超短パルスレーザー励起による超高速過程�
Si is a most fundamental
semiconductor used for modern
electric devices, e.g. integrated
circuits (ICs).
~ 10 nm
光学遷移!
電子� (電子-正孔励起)
!
格子�
Operation speed of silicon devices can
be controlled by generation and/or
relaxation of free carriers that are
entangled with phonons. Understanding
of carrier-phonon interaction is very
important.
Nano-meter size
実現しつつあるナノデバイスの
ゲート長は、電子の平均自由行程
に迫りつつある(バリスチィック伝
導領域)
オシロスコープ!
により観測可能�
パルス光!
励起�
電子ー電子!
散乱�
コヒーレント!
フォノン(k=0)励起�
結晶
構造�
電子ー光学!
フォノン散乱�
光学フォノンー!
電子散乱�
非熱的融解�
電子ー音響!
フォノン散乱�
光学フォノンー!
音響フォノン散乱�
構造相転移�
電子ー正孔!
再結合緩和�
音響フォノン!
(k " 0) 伝搬�
熱的融解�
!
10-15! 10-14!
フェムト秒 (fs)!
10-13!
10-12!
10-11!
時間 (sec)
10-10! 10-9!
ナノ秒 (ns)!
超短パルスレーザー励起による超高速過程!
(直接遷移型半導体の場合)�
Femtochemistry by AH Zewail
(Novel Prize winner in 1999)
伝導帯
nonthermal electron
phonon emission
distribution
momentum
scattering
-e
V
Intraband relaxation:
パルス光!<100 fs 数ps
励起�
Eg
recombination:
~ 1 ns
コヒーレントフォノン励起や
非熱的融解が起こる領域
Product
(laser-induced
fluorescence)
V2
1
V0
probe
pump
Electronic excitation:
< 1 fs
価電子帯
Femtochemistry by AH Zewail
(Novel Prize winner in 1999)
Figure from Novel Lecture by Prof.
Zewail
コヒーレントフォノンとは?�
パルスレーザーによって作られた位相が揃った格子振動�
Figure from Novel Lecture by Prof. Zewail
コヒーレント光学フォノンの発生メカニズム
コヒーレントフォノンの性質�
" (2) (# 0 ;#1,$# 2 )
!
!
Acoustic mode
"
0
#
a
"
a
光学フォノン周波数: f ~ 3 THz (Bi)
3
音速: �������
! ! (= f ") ~ 3x10 m/sec
"1
k
Time delay
"2
"2
! P" 0
!
Pump
光学フォノン波長:� " ~ 1 nm #
励起光パワー
= 10-120 mW
(1.5-18.4 !J/cm2)
プローブ光パワー
= 5 mW (0.8 !J/cm2)
集光された
ビーム径 :
~ 70 µm
!
!
( )
( )
( )
" # = " b$ b # + " ph # $
( )
( )
= "1 # + i" 2 #
# 2p
(
# # + i%
Ground
states
Probe
45' 465'
)
Mode locked
Ti:sapphire laser
122$3-").#'
Zeiger et al., Phys. Rev. B, 45, 768 (1992).
実験装置(長谷研究室)
実験配置:ポンプープローブ法による反射率測定�
"R 1 % #R (
1 % #R (
= ' *"$1 + ' *"$2
R0 R0 & #$1 )
R0 & #$2 )
Excited states
!
Y. -X. Yan et al., J. Chem. Phys. 83, 5391 (1987).
!
" ~ 800 nm
"$ ~ 30 fs (AC)
Rep. ~ 87 MHz
"1
phonon
!
!
" (2) (#1;# 2 ,# 0 )
!"#$%&'()$*+',"-./0'
(ラマンと同じ
フォノンを見てい
る)�
Optical mode
!
Displacive Excitation of coherent
phonons(DECP)
: semimetals (Bi, Sb, Te)
Impulsive stimulated Raman scattering
(ISRS)
: molecular crystals, ferroelectrics
k=0
"(k )
レーザーのスペクトル�
800 ~ 900 nm
< 20 fs @80 MHz
n型-GaAs!
半金属 Bi におけるコヒーレントフォノンの励起
(~ !J/cm2の弱励起)
Ref) T. K. Cheng et al., APL, 57, 1004 (1990);M. Hase et al., APL, 69, 2474 (1996).
半金属における"
コヒーレントフォノン制御
trigonal A1g(2.9 THz) Raman
Tensor:
! a 0 0$
# 0 a 0&
#
&
" 0 0 b%
R3m
Eg(2.2 THz)
# c 0 0&
% 0 "c d (
%
(
$0 d 0'
コヒーレントフォノンのダブルパルス制御
T=340 fs
半金属Bi!
コヒーレント光学フォノンのモード選択励起
試料:Bi 0.31 Sb 0.69混晶(3モード型)�
Bi-Biモードのみ
選択的に励起�
"t
マイケルソン干渉系の利用!
(これを2段組にしたものは4
パルスを生成することも可
能)�
M. Hase et al., Appl. Phys. Lett., Vol.69, 2474
!
(1996).
M. Hase et al., Jpn. J. Appl. Phys. Vol.37, L281 (1998).
シリコンにおける光吸収
Si
40
シリコンにおけるコヒーレント
フォノン:ファノ干渉
E1, E0’
ε2
30
Our laser
3.1 eV
20
10
0
1.0
Fig. シリコンのバンド構造.
E1:3.396 eV, E0’:3.320 eV
10フェムト秒パルスの自己相関波形及びスペクトル
(ピッツバーグ大学で共同開発)
2.0
3.0
Energy (eV)
4.0
5.0
400 nm( 3.1 eV)のレーザーを
使えば、直接バンドギャップを励起
することも可能
ファーストスキャンを用いたポンプープローブ分光測定�
~ 10 fs
2.67 fs
< 15.6 fs
(#~ 10 fs)
Pump:40 mW
Probe: 2 mW
>150 nm
< 10 fs
24 Hz
40 mW の場合、約5x1019cm-3 の光励起キャリアを生成�
Siにおけるコヒーレント光学フォノンの観測
ラマン散乱分光で観たシリコンのファノ干渉
Cerdeira et al., Phys. Rev. B 8, 4734 (1973).
p型Si
64 フェムト秒�
デバイス中の電子ー格子相
互作用研究に期待�
Siにおけるコヒーレントフォノンを世
界で初めて観測�
Fano 干渉とは?�
Discrete (resonant) Continuum state
state
VP
"E
"P
Tp
!
interaction
(transition
operator)
Te
!
M. Hase et al.,
Nature Vol. 426,
51 (2003)
!
"i
( )
F " ,q
(q + ")
#
2
1+"2
1 Tp
q"
:Asymmetry
#Vp Te
parameter
コヒーレント光学フォノンのフーリエ
変換スペクトル
Without interference
!
Discrete
Continuum
I (") = C
!
+
2
(1+ " )
2
+ const.
" = ( E # E0 # $E) %
With interference
!
!
U. Fano, Phys. Rev. 124, 1866 (1961).
(q + " )
ウェーブレットで観たシリコンにおける量子干渉効果
時間-周波数解析:wavelet 変換
at 3.1 eV
Mother waveletのトランスレート
(シフト)とスケール(伸縮)�
信号と wavelet及びこれらの積の例�
Wavelet変換の定義:!(W" f )(b,a) =
%
$
#$
1 & x # b)
"(
+ f ( x) dx
a ' a *
!
信号の例�
Waveletで測った信号の「大きさ」の信号平面上のプロッ
ト例�
ファノ効果による破壊的干渉の原因:電子ー格子
相互作用による"-位相シフト
"
#( t ) = H #( t )
"t
M 1
+ % 0 $ aq+ aq + $ 1/02 c k+c k +q ( a'q + aq+ )
&
q
q
kq
Time-dependent Schrödinger equation i
H = $" h d#+ d# + $"kc c k+# c k#
k#
k#
+$ j ( k ) ( A0e
i% 0)
c k+# d'+# +*() ) + !
$ j ( k ) ( A1e i%1) c k+# d'+# +**() )
k#
k#
60
50
40
30
20
10
0
ファノ効果による破
壊的干渉: 電子-格
子結合による$位相
シフトが原因と考え
られる。�
カーボン材料への応用:ナノチューブ・グラフェン�
•  次世代の低消費電力の単電子トランジスタ材料
として有望!
•  極めて高い電子移動度(20,000cm2/Vs)�
Electronic part
60
50
40
30
20
10
0
Frequency (THz)
!
Frequency (THz)
Electronic part + phonon part
電子系と格子系の応答
が重畳した複雑な信号�
Time (X10 fs)
Time (X10 fs)
JD. Lee, J. Inoue and M. Hase, Phys. Rev. Lett. 97, 157405 (2006).
グラフィンでできた原理検証用デバイスを持つジョージア工科大学Walt de Heer教
授(左)と原理検証用グラフェンデバイスの拡大画像(右)。背景はグラフェンのパ
ターニング画像
カーボンナノチューブにおけるイメージポテンシャル
A few nanometer
チューブの表面から
電子の波動関数がし
み出している。
M. Zamkov et al., PRL
93, 156803 (2004).ç
2PPE実験結果
紫外光励起
赤外光プローブ
超高速X線回折法によるグラファイトのアブレーション
超高速X線回折法で見たグラファイトのダイナミクス
圧縮 膨張
電子励起:t~120 fs(パルス幅)
電子ーフォノン結合による
コヒーレント音響フォノンの
発生:t~500 fs
コヒーレント音響フォノンの
緩和:t=5 ps~10 ps
disordering!
F. Carbone et al., PRL 100, 035501 (2008).
Observation of coupling between Lysozyme and CNT
CNT
Coupling through $-$
stacking and van der
Waals bonding
Raman-active phonon modes in CNT
47.52 THz
Lysozyme
◆ Possible change in optical phonons in CNT
• Frequency-shift of the optical phonons in CNT
• Change in the dephasing time of the optical phonons in CNT
• Change in the amplitude of the optical phonons in CNT
長谷研&白木研との共同研究
47.55 THz
47.7 THz
Radial Breathing Mode (RBM)!
0.66 THz
3.51 THz
4.95 - 8 THz
depends on a diameter
11.04 THz
Coherent phonons in CNT with Lysozyme and
Hemoglobin
Coherent optical phonons in CNT with Lysozyme
at 295 K!
Pump = 40 mW!
スペクトル強度
の減少
Probe = 2 mW!
Radial breathing mode!
"#
1
R
相互作用の!
変化か?
R!
!
R~ 0.9-1.0 nm!
Plans to future!
Phase-change material, Ge2Sb2Te5, narrow-gap semiconductor:
From DVD to PCRAM (phase change random access memory)
technologies
Y-1990~2003�
DVD-RAM�
Y-2004~2010�
PCRAM�
IBM�
Samsung�
Laser diode�
PCRAM technology appeals faster switching
time and lower programming current which may
overcome Si-based flash memory technologies. �
ナノ物性 A"
①!
分子コンピュータ
分子エレクトロニクス
これまでの半導体産業では、微細化
に微細化を重ねてきた。言わばこれは
「トップダウン(top-down)」の手法
だ。しかし一方で、原子や分子といっ
た物質の最小単位から、コンピュータ
を組みたててはどうかという「ボトム
アップ(bottom-up)」の手法も考えら
れるようになってきた。�
春学期� 金曜4限@3B302!
スピントロニクス!
これまでのエレクトロニクスは電子の
電荷に基礎をおいていた。しかし電子
にはもう一つ重要な性質、スピンが存
在している。近年、この電子スピンをエ
レクトロニクスに積極的に取り入れよう
とする試みが強まってきた。�
担当:物理工学域�長谷宗明�
有機エレクトロニクス
③!
有機ELディスプレイ!
今のディスプレイは「薄型&フラット」
がセールスポイントになっているが、じ
きにフラットではなくて「フレキシブル」
というのが流行るかもしれない。有機
ELディスプレイは、電気を光にかえる
「エレクトロルミネッセンス」という現象
を利用したディスプレイである。�
有機トランジスタ!
急速に展開してきた有機エレクトロニ
クスにより、無機結晶の半導体ではな
く導電性高分子を使ったトランジスタ
などが試作されるようになってきた。い
ずれは、プラスチックで出来た集積回
路がインクジェットプリンタやハンコと
いったお手軽な装置で大量安価に作
ることが可能になるだろう。�
電子ペーパー!
電子ペーパーというのは、10分の数ミ
リ程度の厚さしかなく、電気的な手段
でデータの表示・消去が可能なディス
プレイである。見た目はクリアファイル
の中に紙が挟まれているかのようで、
液晶ディスプレイなどと比べても非常
に見やすい。しかも、軽くて消費電力も
小さいことが特徴である。�
量子コンピュータ
量子力学的な重ねあわせを用いて並列性
を実現する次世代のコンピュータである。実
験的には、超伝導素子、非線形光学、レー
ザー冷却、量子ドット、核磁気共鳴などによ
る実現法が研究されている。2009年現在
で量子計算機特有のアルゴリズムがいくつ
か知られており、代表的なものはShorのア
ルゴリズム及びGroverのアルゴリズムの二
つである。�
量子テレポーテーション、量子暗号!
量子テレポーテーションは、絶対に傍受され
ない暗号通信を可能にすることができると期
待されている。量子コンピュータと合わせて、
将来の量子情報の基礎となると考えられて
いる。量子暗号(Quantum
cryptography)とは、通常は量子鍵配送の
ことを指す。�
ナノマテリアル
導電性高分子
1970年代に白川英樹先生らによるポリア
セチレンフィルムの合成により電気が流れ
る高分子、つまり導電性高分子に関する研
究が飛躍的に発展し、現在、様々な可能性
が生まれつつある。例えばコンピュータデ
バイス材料というのは、真空管がその役目
を終えてからというもの、ずっとシリコンなど
の無機結晶半導体の一人舞台だったが、
導電性高分子の登場によって、必ずしもそ
うとは言えなくなってきた。�
カーボンナノチューブ
ナノチューブ (nanotube) とは、筒状の
微細構造を持つ物質の総称。おおむ
ね、筒の太さがナノメートルスケールの
もの。カーボンナノチューブなど人工的
に合成されるものは、ナノ材料としてナ
ノテクノロジーの分野で利用される。�
量子ドット!
量子ドットは半導体原子が数百個から
数千個集まった10数nm程度の小さな
塊である。量子ドットはそのサイズを変
えることで、電子のエネルギー状態を
簡単に変えることが出来るという変わっ
た性質がある。つまり、量子ドットによっ
て、まったく新しい材料の創出が可能に
なるというわけである。�
②!
フラーレン
④!
20年ほど前までは、もはや炭素化学で
は面白い発見はあり得ないだろうと言わ
れていた。ところが、それまでの炭素化
学をひっくり返すような大きな発見が起
きたのだ。それがこのフラーレンである。
おそらくC60は、分子のなかで最も対称
性に優れ、かつ美しくといえるのではな
いだろうか。�
フォトニック結晶
フォトニック結晶(photonic crystal)
とは、屈折率が周期的に変化するナノ
構造体であり、その中の光(波長が数
100-数1000nmの電磁波)の伝わり
方はナノ構造によって制御できる。基
本研究とともに応用開発が盛んに進
められており、商業的な応用も登場し
ている。�
フラーレン䈊
⑤!
- フラーレン発見までのドラマ- はじめてバッキーボールが人工的に生成された
クラスター分子線をイメージしたもの。超新星爆
発と似た環境を再現できるということで、ハロル
ド・クロトー、リチャード・スモリーらによって、この
実験が行われた。�
成長管を取り付け
て安定なものだけ
を取り出した炭素ク
ラスターの質量ス
ペクトル�
1984年に米国ライス大学のリチャード・スモーリーの
研究室で行われた、「レーザー蒸発クラスター分子
線装置」での実験。この装置を使ってグラファイトを
レーザー光線で照射すれば、人工的に超新星爆発
と似た環境を作り出すことができると考えた。�
1990年、アメリカとドイツ
の研究チームのクレッチ
マーとハフマンによって、
「抵抗加熱法」を用いて、
真空容器の中で炭素棒を
抵抗加熱して蒸発させ、
このガラス容器の内壁面
に付着したススに、C60が
約10%ほど含まれている
ことを発見した。�
フラーレン!
ポリマー�
Hot Carrier Solar Cell�
⑨!
高運動エネルギー
のキャリア電流
高い電圧が得られ、
高効率。
変換効率:" #
!
C60を含む炭素クラスターの質量スペクトル⑥!
JVmax
Ep
Rohlfing et al., J. Chem. Phys. 81, 3322 (1984). !
Kroto et al., Nature 318, 162 (1985). !
Quantum Dot Solar Cell�
⑩!
Fly UP