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PPT - Rob Thomson
2013/11/2
Facebookにおける自己呈示の文化差
ー 社会生態学的アプローチからの検討 ー
THOMSON Robert1,2
結城 雅樹1
1北海道大学
大学院⽂学研究科社会⼼理学研究室
2日本学術振興会
www.robthomo.com
2013年11月2日
1
研究背景
個人主義 vs. 集団主義
東アジア人
Chu & Choi (2010)
on Facebook
PROGRESS
1
2013/11/2
2
⽂化的価値観に依らない説明原理?
文化的価値観に依らない説明原理はあるのか?
Self-expressionの理論的な原点に戻ろう・・・
• 人間は自己表現するとき、社会的状況(situation)を考慮
して選択的に表現する(Ichheiser, 1949; Goffman, 1959).
• 他者に対する自己呈示の目標は自己の地位向上と社会関
係の維持である(c.f. Bond, 2013).
•
自己表現=ある社会又は社会状況において社会的地位や社
会関係を向上・維持するための適応⾏動である
PROGRESS
SNSにおける自己呈示の文化差
3
社会⽣態学的アプローチ|関係流動性
• 社会生態学的アプローチ:人間の⾏動は社会的環
境の構造的インセンティブ下の「適応戦略」(Nisbett
& Cohen, 1996; Oishi & Graham, 2010; Yamagishi & Yamagishi, 1994)
• 関係流動性 Relational mobility
•
「ある社会または社会状況に存在する対人関係の選択肢
の多寡」(Yuki et al., 2007)
関係流動性
高
低
新規関係形成機会
多い
少ない
関係の組み換え
容易
困難
地域
北⽶
都会
東アジア
地方
(Schug et. al., 2009; Falk et. al., 2009; Schug et. al., 2010; Wang & Leung, 2010)
PROGRESS
2
2013/11/2
SNSにおける自己呈示の文化差
4
関係流動性と対⼈⾏動戦略
• ⾼関係流動性=「開かれた対⼈関係市場」
•
魅⼒的な相⼿との関係形成・維持のためには、自分もま
た魅⼒的であることが必要 (Falk et al., 2009; Schug, Yuki, &
Maddux, 2010; Yuki, Sato, Takemura, & Oishi, 2010)
•
「選ばれること」「選ばれ続けること」の重要性
•
社会的魅⼒の源泉=社会的地位、類似性
•
積極的に⾃分の優越性、意⾒、関⼼等をアピールするこ
とが必要
PROGRESS
SNSにおける自己呈示の文化差
5
関係流動性と対⼈⾏動戦略
• 低関係流動性=「閉ざされた対人関係市場」
•
対⼈関係は⻑期的で安定、変更が困難
•
•
→関係を良好に保つ上で、⾃⼰の社会的優越性や他者との類似
性の有用性が低い
代替関係の入手が困難→対人関係悪化のコストが高い
•
→他者からの妬みや競争を⽣み出す優越性の誇⽰や、不和を⽣
み出す態度の明確化を避ける(小松、結城、三船、2013)
PROGRESS
3
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SNSにおける自己呈示の文化差
6
Facebookにおける⾏動(予測)
前提:Facebookネットワーク=オフライン対人関係の反映
(Ofcom, 2008; Thomson & Ito, 2012; Levinson, 2013)
• ⾼関係流動性社会(⽶国)
•
•
高地位の関係維持・向上:セルフ・プロモーション
類似した関係維持・向上:社会的反感を回避しない
• 低関係流動性社会(⽇本)
•
関係の維持・向上:社会的反感につながるセルフプロ
モーションや態度の表明の回避、あたりさわりのない内
容の投稿
PROGRESS
SNSにおける自己呈示の文化差
7
予測
P1 米国のFacebook利⽤者は、⽇本の利⽤者よりも
多くのセルフ・プロモーション的な投稿を⾏う
だろう
P2
日本のFacebook利⽤者は、社会的反感を回避
し、あたりさわりのない内容をより多く投稿す
るだろう
P3 上記の⽂化差は関係流動性に媒介されるだろう
PROGRESS
4
2013/11/2
SNSにおける自己呈示の文化差
8
方法
•
•
日本人Facebook利⽤者95名(Mage = 33.9, Lancers.jp)と、アメ
リカ人Facebook利⽤者95名(Mage = 32.9, Amazon Mechanical
Turk)がウェブ調査に参加。
従属変数|自己表現(すべて7件法)
1. セルフ・プロモーション (3項目、αs
•
> .62)
例:「何らかの賞を取ったとき、それについて投稿する」、「仕事で昇進があっ
たとき、このニュースを投稿する」
2. 社会的反感回避 (3項目、
•
αs > .67)
例: 「友達が好まないと思った話題は投稿しない」、「社会的に意⾒が分かれ
ている話題については投稿しない」
3. ライフ・シェアー(4項目、 αs > .66)
•
例: 「自分の参加したイベントについて投稿する」、「友達(Facebook以外も
含む)と一緒にいる、ということについて投稿することがよくある」
PROGRESS
SNSにおける自己呈示の文化差
9
方法
• 媒介変数
•
関係流動性尺度(Yuki et al., 2007)
•
•
短縮版(6項目)、 αs > .79
例:「彼ら(あなたと普段付き合いのある人たち)には、人々と新しく
知り合いになる機会がたくさんある。」「彼らはどの集団や組織に所属
するかを自分の好みで選ぶことができる。」
PROGRESS
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結果|Social graphの前提
Facebook利⽤
新規関係獲得 vs. 既存関係維持
Facebookネットワーク=オフライン対
人関係という前提は成り⽴つのか
「⾒知らぬ人との関係づくりの場」vs.
「今までの関係を維持するもの」
100
80
60
既存関係維持(分析対象)
%
40
日本:81% (78人)
米国:93% (88人)
20
0
日本
米国
既存関係維持
新規関係獲得
χ2 (1, N = 190) = 5.44 , p < .05
Social graphに基づく
SNS環境での⾏動
PROGRESS
SNSにおける自己呈示の文化差
11
結果|文化差
関係流動性:日本(3.97) < アメリカ(4.37), p < .01
PROGRESS
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結果|関係流動性の媒介効果
社会的反感回避:間接効果 β = .033 (95% CI = -.033, .143)
PROGRESS
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結果|国内の変数間の相関
変数
セルフ・プロモーション
社会反感回避傾向
ライフシェアー
アメリカ
関係流動性
.31**
.06
.23*
.08
.18
日本
関係流動性
注.
†p
.18
< .10, *p < .05, **p < .01. 性別統制済み
PROGRESS
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2013/11/2
14
考察
• 結果のまとめ
1. 自己の地位のアピール:アメリカ人>日本人
2. 反感を招く投稿の回避:日本人>アメリカ人
3. 地位アピールの差異の原因の⼀部は関係流動性
•
⾼関係流動性社会における関係獲得・維持戦略としての⾃
⼰アピールという理論と⼀貫
•
インプリケーション
広告のパーソナライゼーション
•
日本のFB利⽤者に対しては、政治など社会的意⾒が分かれるテーマに関する広
告に関しては正確なターゲティングができない可能性
PROGRESS
15
限界と今後の課題
•
⽇本国内では「関係流動性↔セルフ・プロモーション」の
相関が弱かった
1. サンプルサイズ不⾜?
2. ⽇本⼈が、社会の急速な流動化に対応した社会的スキル(適
応⾏動)を⾝につけられていない=⽂化の固着性?
• あくまでも「social graph」に基づいたSNS
(e.g., Mixi, Facebook)を想定した議論
•
オフラインのアイデンティティから乖離したSNSでは?
•
Twitter, Mobagee, 新規関係形成のためのFacebook
PROGRESS
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2013/11/2
16
ご清聴ありがとうございます。
www.robthomo.com
協⼒者
北海道⼤学⽂学部 中村圭太
北海道⼤学社会⼼理学研究室 Culture, Social Ecology, and Psychology Lab http://lynx.let.hokudai.ac.jp/~myuki/
参考文献
Bond, M. H. (2013). Refining Lewin’s formula: A general model for explaining situational influence on individual social behavior. Asian Journal of Social Psychology, 16(1),
1–15. doi:10.1111/ajsp.12012 | Chu, S.-C., & Choi, S. M. (2010). Social capital and self-presentation on social networking sites: a comparative study of Chinese and
American young generations. Chinese Journal of Communication, 3(4), 402–420. doi:10.1080/17544750.2010.516575 | Falk, C. F., Heine, S. J., Yuki, M., & Takemura, K.
(2009). Why do Westerners self-enhance more than East Asians? European Journal of Personality, 23(3), 183–203. doi:10.1002/per.715 | Goffman, E. (1959). The
Presentation of Self in Everyday Life. Anchor. | Ichheiser, G. (1949). Introduction: Why We Are Often Blinded to “Obvious” Facts. American Journal of Sociology, 55(2), 1–
4. doi:10.2307/2770746 | Levinson, P. (2013). New New Media. Boston: Pearson. | Ofcom. (2008). Social networking : a quantitative and qualitative research report into
attitudes, behaviours and use. London: Ofcom. | Schug, J., Yuki, M., Horikawa, H., & Takemura, K. (2009). Similarity attraction and actually selecting similar others: How
cross-societal differences in relational mobility affect interpersonal similarity in Japan and the USA. Asian Journal of Social Psychology, 12(2), 95–103. doi:10.1111/j.1467839X.2009.01277.x | Schug, J., Yuki, M., & Maddux, W. (2010). Relational mobility explains between- and within-culture differences in self-disclosure to close friends.
Psychological science : a journal of the American Psychological Society APS, 21(10), 1471–8. | Thomson, R., & Ito, N. (2012). The effect of relational mobility on SNS user
behavior: A study of Japanese dual-users of Mixi and Facebook. The Journal of International Media, Communication and Tourism Studies, 14. | Wang, C. S., & Leung, A. K.Y. (2010). The cultural dynamics of rewarding honesty and punishing deception. Personality & social psychology bulletin, 36(11), 1529–1542.
doi:10.1177/0146167210385921 | Yuki, M., Schug, J., Horikawa, H., Takemura, K., Sato, K., Yokota, K., & Kamaya, K. (2007). Development of a scale to measure
perceptions of relational mobility in society. CERSS Working Paper 75, Center for Experimental Research in Social Sciences, Hokkaido University. Retrieved from
http://lynx.let.hokudai.ac.jp/cerss/english/workingpaper/index.cgi?year=2007
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