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研究成果の論文 - 公益財団法人 大林財団
公益財団法人大林財団 研究助成実施報告書 助成実施年度 2008 年度(平成 20 年度) 研究課題(タイトル) 遮熱性舗装の耐久性評価モデルの提案 研究者名※ 早野 公敏 所属組織※ 横浜国立大学大学院 研究種別 研究助成 研究分野 都市環境工学 助成金額 150 万円 概要 道路,舗装整備の進んだ都市部では,ヒートアイランド現象が社会 問題としてクローズアップされている.2004年3月には「ヒー トアイランド対策大綱」が閣議決定されるなど,その対策が急がれ ている.ヒートアイランド現象の原因の一つに,道路舗装で地面を 覆うことにより,熱収支の変化が生じることが挙げられる.そして 熱収支の変化の程度は,舗装面の占める割合が大きい都市において 顕著になる. そこで熱環境改善型舗装とよばれる,熱環境に配慮した舗装の開発 が進められているが,熱環境改善型舗装の本格的導入があまり進ん でいない.最大のネックは,自動車の走行による耐久性が未解明な 点にあると考えられる. 以上の背景から,本研究では熱環境改善型舗装の一つである遮熱性 舗装の耐久性を評価できる手法の提案を目的として検討を行った. 具体的には遮熱性舗装の耐久性および温度抑制効果に関するデータ を取得したのち,耐久性評価手法の検討を行った. 発表論文等 ※研究者名、所属組織は申請当時の名称となります 1.研究の目的 道路,舗装整備の進んだ都市部では,ヒートアイランド現象が社会問題としてクローズアップさ れている.2004年3月には「ヒートアイランド対策大綱」が閣議決定されるなど,その対策 が急がれている.ヒートアイランド現象の原因の一つに,道路舗装で地面を覆うことにより,熱 収支の変化が生じることが挙げられる.そして熱収支の変化の程度は,舗装面の占める割合が大 きい都市において顕著になる. そこで熱環境改善型舗装とよばれる,熱環境に配慮した舗装の開発が進められているが,熱環境 改善型舗装の本格的導入があまり進んでいない.最大のネックは,自動車の走行による耐久性が 未解明な点にあると考えられる. 以上の背景から,本研究では熱環境改善型舗装の一つである遮熱性舗装の耐久性を評価できる手 法の提案を目的として検討を行った.具体的には遮熱性舗装の耐久性および温度抑制効果に関する データを取得したのち,耐久性評価手法の検討を行った. 2.研究の経過 A.遮熱性舗装の耐久性に関するデータの取得 交通荷重が作用する接地圧下で,遮熱性舗装の耐久性に関するデータを取得するためにホイール トラッキング試験を行った.具体的な試験方法は以下のとおりである. ①小型車輪の選定 ホイールトラッキング試験として油圧による載荷装置を採用し,まず交通荷重による接地圧を正 確に再現するために 3 種類の車輪で接地圧の再現精度の確認を行った.この時,ストレートアス ファルト 60/80 の混合物を用い,60℃で検討を行った。検討の結果,接地圧を最もよく再現する ための仕様として,試験輪の幅 35mm,厚さ 15mm のタイヤを採用した. ②アスファルト舗装供試体の作製 アスファルト舗装をモデル化するために 30×30×5cm の供試体を複数作製した.供試体にはスト レートアスファルト混合物を用いた. ③走行試験 作製したアスファルト舗装供試体に対し,前述の小型車輪を表面にセットして,200mm/sec の走 行速度で 10,000 回走行させた.なお走行させるときの温度条件を 10,20,40,50,60℃と変え てそれぞれの実験を行った. ④わだちぼれ量に関するデータの取得 温度が 10,20,40,50,60℃それぞれの走行試験から,走行回数に対してわだちぼれ量がどの程 度増加するかについて走行回数とわだちぼれ量のデータを取得した. B. 遮熱性舗装の温度抑制効果に関するデータの取得 日射が作用する環境で,遮熱性舗装の温度抑制効果に関するデータを取得するために日射試験 を行った.具体的な試験方法は以下のとおりである. ①遮熱性アスファルト舗装供試体の作製 遮熱性アスファルト舗装をモデル化するために 30×30×5cm の供試体を複数作製した.供試体に は遮熱塗料を塗布した.また比較のため遮熱塗料を塗布しない供試体も作製した. ②日射試験 作製した供試体複数を 20 度の恒温室にセットし,それぞれの供試体に対し人工ランプを照射さ せた.なお供試体表面には表面温度の計測のためにあらかじめ熱電対を添付した.照射は最大 6 時 間実施した. ③温度抑制効果に関するデータの取得 日射試験から,通常のアスファルト舗装供試体と遮熱性アスファルト舗装供試体のそれぞれの表 面温度と日射時間に関するデータを取得した. 3.研究の成果 遮熱性舗装の温度抑制効果に関する実験結果から,遮熱材を塗布することによって,夏季の日射 量で照射したときに,最大 13.3℃温度が低減できることが明らかになった.具体的には通常のア スファルトの舗装表面温度が 60℃とすると,遮熱材塗布によって舗装温度を 46.7℃に抑制できる. 一方,遮熱性舗装の耐久性に関する実験結果から,通常のアスファルト舗装供試体が 60 度の温 度環境におかれた場合に,車輪の走行回数が例えば 100 回になるとわだちぼれ量が 6.39mm に到 達することが分かった. また走行試験からは,温度が低くなればなるほど,わだちぼれ量が少なくなる結果が得られた. この結果と,前述の温度抑制効果に関するデータを総合すると,舗装温度が 60℃から 46.7℃に 抑制される場合には,わだちぼれ量が 6.39mm から 3.68mm に減少することが明らかになった. すなわち遮熱材を塗布することによってわだちぼれに対する耐久性が約 40%向上することが推 察され,改質Ⅱ型のアスファルト舗装の耐久性にかなり近づくと考えられる. 4.今後の課題 今後の課題として,より複雑な気象条件の変化に対するする時の遮熱性舗装の耐久性に関するデー タの取得およびその評価手法の高度化を明らかにする必要があると考えられる.さらには,本研究で 得られた知見は室内レベルの試験結果に基づくものであり,実物大の試験施工などにより, 定性的かつ 定量的な評価を実施する必要があると考えられる.