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山梨県橋梁点検要領(PDF:3592KB)
山 梨 県 橋 梁 点 検 要 領 平成 23 年 4 月 山梨県県土整備部 目 1. 適用の範囲 次 ----------------------------------------------- 1 2. 点検一般 -------------------------------------------------- 2 3. 簡易点検 -------------------------------------------------- 5 4. 定期点検 -------------------------------------------------- 12 1. 適用の範囲 本要領は、山梨県が管理する一般国道並びに県道の橋梁の点検業務に適用する。 【解説】 本要領は、山梨県が管理する一般国道並びに県道の橋梁の点検業務に適用する。 ここで橋梁とは、橋長が 2.0m以上、土被りが 1.0m未満を言い、ボックスカールバ ートも対象とする。 1 2. 点検一般 2.1 点検の目的 橋梁の点検は、安全で円滑な交通の確保、沿道や第三者への被害の防止を図るため、 損傷や変状を早期に発見し適切な処置を講ずるとともに、損傷状況の把握、対策区分 の判定、点検結果の記録を行うことにより効率的な維持管理を行うことを目的に実施 する。 【解説】 点検の目的は、安全で円滑な交通の確保、沿道や第三者への被害の防止を図るた め、損傷や変状を早期に発見し適切な処置を講ずることである。また点検の結果を 蓄積することにより、効率的な維持管理が図れるとともに、維持管理面からみた構 造上の問題点が明らかになり、より耐久性の高い橋づくりにつながることが期待で きる。 2.2 点検の種別 点検の種別は次のとおりである。 ① 日常点検 日常点検は、道路パトロールによる路面点検と、桁下からの目視による点検(以 下簡易点検という)がある。路面点検は、道路の巡回として実施するもので、道 路パトロールカー内からの目視を主体とし、県職員または外部委託により毎月 2 ~5 回実施する。簡易点検は、落橋の恐れのある損傷、重大事故を起こす恐れの ある損傷、橋の機能障害となる損傷について、マクロ的な視点で点検を行うもの で、県職員または外部委託により年 1 回実施する。 ② 定期点検 定期点検とは、橋梁の損傷状況を把握し損傷の判定を行うために、頻度を定め て定期的に実施するもので、近接目視を基本とする。専門家への外部委託により 橋梁形式は 5 年に 1 度、BOX形式は 10 年に 1 度実施する。ただし、定期点検 は、供用後 2 年以内に初回を行うものとし、2 回目以降は、原則として 5 年以内 に行うものとする。 ③ 臨時点検 臨時点検とは、地震、台風、集中豪雨、豪雪等の災害や大きな事故が発生した 場合などに行う点検で、県職員または外部委託により行う。 2 【解説】 点検には日常点検、定期点検、臨時点検がある。また日常点検は、道路パトロール による路面点検と、桁下からの目視による点検(以下簡易点検という)がある。 本要領では、日常点検の内の簡易点検及び定期点検を対象とする。 簡易点検は、県職員または委託業者が、落橋の恐れのある損傷、重大事故を起こす 恐れのある損傷、橋の機能障害となる損傷についてマクロ的な視点で、年 1 回行うも のである。 定期点検は、国土交通省「橋梁定期点検要領(案)」に準拠し専門家が橋梁形式は 5 年 に 1 度、BOX形式は 10 年に 1 度、詳細に調査を行うものである。ただし、定期点検 は、供用後 2 年以内に初回を行うものとし、2 回目以降は、原則として 5 年以内に行う ものとする。 3 2.3 点検の流れ 橋梁点検の流れを図-2.1 に示す。 日常点検 (職員・委託) 路面点検 毎月2~5 回 定期点検 (専門家) 臨時点検 (職員・委託) 簡易点検 目視点検 年に 1 回 BOX 形式 橋梁形式 構造形式 5 年に 1 回 地震時、台風時、 交通事故等によ り、構造物に損傷 が予想される場 合、速やかに実施 10 年に 1 回 橋梁管理カルテシステム 補修工事・計画の見直し 図-2.1図-2.1 橋梁点検に関する流れ 簡易点検の流れ 【解説】 日常点検、定期点検、臨時点検の流れを示した。 本要領では、日常点検の内の簡易点検及び定期点検を対象とする。 4 3. 簡易点検 3.1 点検の目的 簡易点検は、落橋の恐れのある損傷、重大事故を起こす恐れのある損傷、橋の機能障 害となる損傷について行い、橋が最低限確保しなければならない、安全性、使用性、機 能性を確保するために行う。 【解説】 簡易点検は、道路重点パトロールを充実・強化したものと位置付け、原則として 1 年に 1 度、マクロ的な視点で橋面及び支承部を点検するものである。 3.2 点検の流れ 簡易点検の流れを図-3.1 に示す。 橋梁管理カルテの整備 簡易点検 NO 緊急対応(E1, E2)が必要であ る 維持工事(M)で 対応が必要であ る YES YES 緊急対応 維持工事で対応 図-3.1 簡易点検の流れ 5 NO 3.3 簡易点検の頻度及び体制 簡易点検は、2 人以上の体制で、1 年に 1 回、徒歩により、橋面及び下面より目 視により行う。 【解説】 簡易点検は、2 人以上の体制で 1 年に 1 回、 橋面及び下面より目視により行う。 但し、下面からの点検においては危険を伴うことないよう安全を確保するもの とする。 点検内容は、落橋の恐れのある損傷、重大事故を起こす恐れのある損傷、橋の 機能障害となる損傷について行う。 6 3.4 点検の項目及び方法 (1) 簡易点検は点検のポイントを絞り表-3.1 の部材、損傷に対し点検を行う。 表-3.1 簡易点検の点検項目 簡易点検の点検項目を表-3.1 に示す。 チェックポイント 部 材 落橋しないか 主桁 損傷の種類 ①腐食 ②亀裂 ④破断 伸縮装置 ⑭路面の凹凸 支承本体 ④破断 ⑯支承の機能障害 25 沈下・移動・傾斜 沓座モルタル 23 変形・欠損 橋台 25 沈下・移動・傾斜 橋脚 26 洗掘 利用者に被害を 舗装 ⑮舗装の異常 及ぼさないか 伸縮装置 ④破断 ⑬遊間の異常 高欄・防護柵・地 ⑦剥離・鉄筋露出 覆・床版・主桁・ 橋台・橋脚等 機能障害となっ 床版 ⑨抜け落ち 主桁 ③ゆるみ・脱落 照明施設 ②亀裂 高欄・防護柵 ④ 食 ていないか ④破断 23 変形・欠損 排水ます 24 土砂詰り 支承本体 24 土砂詰り 添架物 ⑰その他(添架物本体の変形・欠損 または接合部のずれ、漏水等) (2)点検は、徒歩により、橋面及び下面より、山梨県簡易点検調書に基づき行う。 7 【解説】 (1)簡易点検は、点検のチェックポイントを①落橋しないか②利用者に被害を及ぼさ ないか③機能障害となっていないかの視点で点検を行うものとし、点検項目の絞り 込みを行い、点検の効率化を図ったものである。 (2)点検は山梨県簡易点検調書に基づき行う。簡易点検調書は表-3.1 の点検項目に対 し、損傷状況をチェックする様式となっている。 3.5 対策区分 簡易点検の対策区分は,表-3.2 の判定区分による。 表-3.2 簡易点検の対策区分 簡易点検 対策区分 判定内容 - A0 点検の結果から損傷は認められない。 - A 損傷が軽微で補修を行う必要がない。 - B 状況に応じて補修を行う必要がある。 - C 速やかに補修を行う必要がある。 ○ E1 ○ E2 その他、緊急対応の必要がある。 ○ M 維持工事で対応する必要がある。 - S 詳細調査の必要がある。 橋梁構造の安全性の観点から、緊急対応の必 要がある。 【解説】 (1) 簡易点検では、緊急対応(E1,E2)の必要があるもの、維持工事対応(M)の 必要があるものを判定する。 (2) 山梨県簡易点検調書は、A.落橋しないか、B.利用者に被害を及ぼさないか、C. 機能障害となっていないかのチェックポイントに対し、損傷状況の設問に該当す る場合は、自動的に対策区分がE1、E2、Mに決定される様式となっている。 (3) 本要領で定めた対策区分の判定の基本的な考え方は次のとおりである。 ① 判定区分E1とは、橋梁構造の安全性が著しく損なわれており、緊急に処置 されることが必要と判断できる状態をいう。 例えば、亀裂が鈑桁形式の主桁腹板や鋼製橋脚の横梁の腹板に達しており亀 裂の急激な進展の危険性がある場合、桁の異常な移動により落橋の恐れがある 場合がこれに該当する。 8 ② 判定区分E2とは、自動車、歩行者の交通障害や第三者等への被害の恐れが懸 念され、緊急に処置されることが必要と判断できる状態をいう。 例えば、遊間が異常に広がっており二輪車の転倒が懸念される場合やコンク リート塊が落下し、路下の通行人、通行車両に被害を与える恐れが高い場合が これに該当する。 なお、一つの損傷でE1、E2両者の理由から緊急対応が必要と判断される 場合は、E1に区分する。 ③ 判定区分Mとは、損傷があり、当該部材の機能を良好な状態に保つために日常 の維持工事で早急に処置されることが必要と判断できる状態をいう。 例えば、支承や排水施設に土砂詰りがある場合がこれに該当する。 3.6 点検結果の記録 点検結果は山梨県簡易点検調書に記入を行う。 【解説】 点検結果は山梨県簡易点検調書に記入を行い、 「山梨県橋梁管理データベース」に登録 を行う。 9 山梨県日常点検調書 橋梁名 橋梁番号(分割番号,分割区分) 所管事務所 路線名 緊急輸送路 支所 所在地(自) 地点座標データ 所在地(至) 橋長(m) 有効幅員(m) 適用示方書 径間数 供用年月 設計荷重 緯度 日常点検 年月日 経度 日常点検 点検者名 決裁 所長 次長 課長 担当 上部工形式 径間番号 ・現場に着いて先ず橋梁全体を見ます。落橋の恐れがある損傷、重大事故を起こす恐れのある損傷または橋の機能障害となる損傷がないかチェックします。 チェックポイント 着目点 具体例 損傷の種類 対策区分 該当 点検結果(写真) 点検結果(コメント) 損傷位置 該当 着目点 具体例 損傷の種類 対策区分 該当 点検結果(写真) 点検結果(コメント) 損傷位置 該当 腐食によりフランジ・ウェブ等に著しい断面欠損はないか 橋脚または橋台が洗掘により傾斜していないか 橋台A1 ### 25 沈下・移動・傾斜(e) 主桁 FALSE 横桁 FALSE 主桁 FALSE 横桁 FALSE 橋台A1 FALSE 橋台A2 FALSE 橋脚P 番号 橋台A1 FALSE 橋台A2 FALSE 橋脚P 番号 橋台A1 FALSE 橋台A2 FALSE 橋脚P 番号 主桁等: 橋台・橋脚: E1 FALSE ①腐食(e) 橋台A2 ### E1 対策区分の診断事例集 点検不可 対策区分の診断事例集 P.140,141参照 ### ### P.76参照 橋脚P 番号 A-1.高欄・防護柵の通り が悪く、角折れが起きて いないか A-3-2.部材に破断や亀裂、断 面欠損はないか (桁下面から) フランジ・ウェブ等に亀裂はないか 橋台A1 ### 主桁等: 橋台・橋脚: 26 洗掘(e) E1 ②亀裂(e) 橋台A2 ### E1 対策区分の診断事例集 点検不可 対策区分の診断事例集 P.140,141参照 ### ### P.79参照 橋脚P 番号 伸縮装置で桁側が落ちたような段差がないか ベアリングプレートやローラーが逸脱していないか 橋台A1 ### 支承本体: 伸縮装置: ⑭路面の凹凸(e) E2 FALSE ⑯支承の機能障害(e) 橋台A2 ### 対策区分の診断事例集 A-2.伸縮装置で桁側が 落ちたような段差がない か ### ### P.115参照 橋脚P 番号 P.44参照 A.落橋しないか E1 対策区分の診断事例集 点検不可 (20mm以上) 沓座やモルタルが崩れていないか 支承本体が破断していないか 橋台A1 ### 支承本体: 支承本体: 25 沈下・移動・傾斜(e) E2 対策区分の診断事例集 点検不可 FALSE 橋台A2 ### ④破断(e) E1 対策区分の診断事例集 点検不可 FALSE P.117参照 FALSE FALSE P.114参照 橋脚P 番号 A-4.支承は桁をきちんと支え ているか 鋼部材の腐食や疲労により破断はないか 鈑桁 ### 主桁等: ④破断(e) 沓座モルタル: 23変形・欠損(e) E1 E2 対策区分の診断事例集 点検不可 FALSE 対策区分の診断事例集 FALSE FALSE P.124参照 P.81参照 A-3-1.部材に破断や亀 裂、断面欠損はないか (橋面上から) 沓座モルタルが欠損していないか トラス ### アーチ ### 10 チェックポイント 具体例 着目点 損傷の種類 対策区分 該当 点検結果(写真) 点検結果(コメント) 損傷位置 該当 着目点 伸縮装置が破断し通行の障害となっていないか 具体例 コンクリート片の剥離・剥落はないか 損傷の種類 対策区分 該当 地覆・床版・主桁 損傷位置 該当 高欄 FALSE 防護柵 FALSE 地覆 FALSE 床版 FALSE 主桁 FALSE 横桁 FALSE 橋台A1 FALSE 橋台・橋脚等: 伸縮装置: E2 FALSE ⑦剥離・鉄筋露出(e) 橋台A2 ### E2 対策区分の診断事例集 点検不可 対策区分の診断事例集 P.42参照 FALSE FALSE P.85参照 橋脚P 番号 B-1.橋の利用者に危害 を与えないか 点検結果(コメント) 高欄・防護柵・ 橋台A1 ### ④破断(e) 点検結果(写真) 伸縮装置に異常な遊間の広がりがないか 橋台A1 ### 伸縮装置: ⑬遊間の異常(e) E2 FALSE 橋台A2 ### 対策区分の診断事例集 橋台A2 FALSE P.43参照 橋脚P 番号 落橋防止A1 FALSE 橋脚P 番号 B.利用者に被害を及ぼさ ないか B-3.第三者に危害を与えない か (桁下が道路、鉄道、公園、駐 車場、側道等) 舗装の損傷が著しく床版の抜け落ちが懸念されるか ボルト・ナット(F11T等)の脱落はないか B-2.舗装に亀甲状のひ びわれが生じ陥没の恐 れがないか FALSE 落橋防止P 番号 主桁 FALSE 横桁 FALSE 横構 FALSE 床版 FALSE 橋脚P 番号 主桁等: 舗装: ⑮舗装の異常(e) 落橋防止A2 E1 FALSE 舗装 ③ゆるみ・脱落(e) ### E2 対策区分の診断事例集 対策区分の診断事例集 点検不可 P.40参照 P.80参照 床版の抜け落ちが懸念されるか FALSE FALSE 照明柱の基部に亀裂が生じ、傾斜・転倒の危険はないか 床版: ⑨抜け落ち(e) 照明施設 E1 対策区分の診断事例集 点検不可 FALSE 床版 ### ②亀裂 E2 FALSE 照明施設 FALSE M FALSE 排水ます FALSE 橋台A1 FALSE 橋台A2 FALSE 橋脚P 番号 添架物 FALSE 対策区分の診断事例集 FALSE P.67参照 P.55参照 亀裂 車両衝突等により変形し歩行者、車両等に危険はないか 排水ますに土砂詰まりが生じ路面滞水等を引き起こしていないか 高欄 ### 高欄・防護柵: 23 変形・欠損(e) 排水ます: E2 FALSE 24 土砂詰まり(e) C-2.排水ますに土砂詰まりが ないか 対策区分の診断事例集 対策区分の診断事例集 P.17参照 P.58参照 防護柵 ### 車両衝突等により破断し歩行者、車両等に危険はないか 土砂堆積により鋼製支承の腐食促進や移動の拘束を引き起こしていないか 高欄 ### 高欄・防護柵: ④破断(e) C.機能障害となっていな C-1.高欄・防護柵に損傷 がないか いか 支承本体: E2 FALSE C-3.支承周りに土砂が堆積し ていないか 対策区分の診断事例集 P.16参照 24 土砂詰まり(e) M FALSE 対策区分の診断事例集 P.116参照 防護柵 ### 高欄 ### 腐食により断面欠損が生じ強度が著しく低下していないか 高欄・防護柵: ①腐食(e) E2 C-4.添架物本体の変形・欠損 または接合部にずれや漏水等 がないか FALSE 対策区分の診断事例集 P.13参照 対策区分の診断事例集 P.152参照 防護柵 その他気付いた点 添架物: ⑰ その他(e) 1.その他大きな損傷 2.大きな音・振動 ### 所見と対策 または申し送り事項 3.その他維持工事で対応すべき事項 11 M FALSE 4. 定期点検 4.1 点検の目的 定期点検は、安全で円滑な交通の確保、沿道や第三者への被害の防止を図るため、損 傷や変状を早期に発見し適切な処置を講ずるとともに、損傷状況の把握、対策区分の判 定、点検結果の記録を行うことにより効率的な維持管理を行うことを目的に実施する。 【解説】 定期点検の目的は、安全で円滑な交通の確保、沿道や第三者への被害の防止を図る ため、損傷や変状を早期に発見し適切な処置を講ずることである。また点検の結果を 蓄積することにより、効率的な維持管理が図れるとともに、維持管理面からみた構造 上の問題点が明らかになり、より耐久性の高い橋づくりにつながることが期待できる。 4.2 点検の流れ 定期点検の流れを図-4.1 に示す。 橋梁管理カルテの整備 定期点検 BOX 形式 橋梁形式 構造形式 定期点検の実施 1 回/5 年 対策区分 A0,A,B 定期点検の実施 1 回/10 年 対策区分 C,S 対策措置の 判定 対策区分 S 対策区分 E1,E2,M 対策区分 E1,E2 対策区分M 対策区分 E1,E2orM 緊急対応 対策区分 CorS 対策区分 C 維持工事で対応 図-4.1 定期点検の流れ 12 補修の実施 詳細調査の実施 4.3 定期点検の頻度 定期点検は、供用後 2 年以内に初回を行うものとし、2 回目以降は、5 年以内に行 うものとする。 【解説】 (1)定期点検の初回(初回点検)は、橋梁完成時では必ずしも顕在化しない不良箇 所など橋梁の初期欠陥を早期に発見すること、 橋梁の初期状況を把握してその後 の損傷の進展過程を明らかにすることも目的にしている。 初期欠陥の多くが供用 後概ね 2 年程度の間にそのほとんどが現れるといわれているところから、供用 後 2 年以内に行うものとした。 (2)定期点検の頻度は、次回点検までの間に緊急的な対応が必要になる事態を避け るという観点と補修等の必要性の判定精度(信頼性)の観点から 5 年以内に 1 度と定めた。 13 4.4 点検計画 定期点検の実施にあたっては、当該橋梁の状況等に応じて適切な点検が実施できるよう、点検 計画を作成するものとする。 【解説】 定期点検を効率的かつ適切に行うためには、事前に十分な点検計画を作成する必要があ る。ここでいう点検計画とは、点検作業に着手するための、既往資料の調査、点検項目と 方法、点検体制、現地踏査、管理者協議、安全対策、緊急連絡体制、緊急対応の必要性等 の報告体制及び工程など定期点検に係る全ての計画をいう。 ①既往資料の調査 橋梁管理カルテや橋梁台帳及び既存点検結果の記録等を調査し、橋梁の諸元及び損傷 の状況や補修履歴等を把握する。前回調査までの損傷の進捗状況や規模を、帳票の申し 送り事項や写真で確認した上で現場点検に臨まねばならない。 ②点検項目と方法 本要領 4.5 によるのを原則とする。 ③点検体制 本要領 4.6 によるのを原則とする。 ④現地踏査 定期点検に先立ち、過年度に実施された点検結果を橋梁管理カルテで良く確認したの ち、橋梁本体及び周辺状況を把握し、点検方法や足場等の資機材の計画立案に必要な情 報を得るための現地踏査を実施する。この際、交通状況や点検に伴う交通規制の方法等 についても調査し記録(写真を含む)する。 ⑤管理者協議 定期点検の実施にあたり、鉄道会社、公安委員会及び他の道路管理者等との協議が必 要な場合には、点検が行えるように協議を行わなければならない。 ⑥安全対策 本要領 4.7 によるのを原則とする。 ⑦緊急連絡体制 定期点検の場合は事故等の発生時の緊急連絡体制を構築する。橋梁点検員等から、県 職員、警察署、救急指定病院等へ連絡する場合の手順を明らかにしておく。 ⑧緊急対応の必要性等の報告体制 点検において、橋梁の安全性や第三者被害の防止などの観点から緊急対応の必要性が あると判断された場合の連絡体制を定めておく。 ⑨工程 定期点検を適切に行うために、点検順序、必要日数あるいは時間などをあらかじめ検 討し、点検計画に反映させなければならない。 14 4.5 点検項目及び方法 (1)定期点検では、対象橋梁毎に必要な情報が得られるよう、点検する部位、部材に 応じて、適切な項目(損傷の種類)に対して点検を実施しなければならない。 定期点検の点検項目を表-4.1 に示す。 表-4.1 定期点検の点検項目 工種 部材 材料 損傷種類 ①腐食 鋼 ⑰その他 ②亀裂 21 異常な音・振動 ○ ③ゆるみ・脱落 23 変形・欠損 ○ ④破断 ⑤防食機能の劣化 床版 コンクリート ⑦剥離・鉄筋露出 ⑰その他 ⑧漏水・遊離石灰 ⑱定着部の異常 ⑨抜け落ち ⑲変色・劣化 ⑩コンクリート補強材の損傷 23 変形・欠損 ○ ⑪床版ひびわれ ⑫うき ①腐食 鋼 ⑰その他 ②亀裂 21 異常な音・振動 ○ ③ゆるみ・脱落 22 異常なたわみ ○ ④破断 23 変形・欠損 ○ ⑤防食機能の劣化 上部工 主桁 ⑬遊間の異常 (主構) コンクリート 縦桁 鋼 ⑥ひびわれ ⑰その他 ⑦剥離・鉄筋露出 ⑱定着部の異常 ⑧漏水・遊離石灰 ⑲変色・劣化 ⑩コンクリート補強材の損傷 21 異常な音・振動 ○ ⑫うき 22 異常なたわみ ○ ⑬遊間の異常 23 変形・欠損 ○ ①腐食 ⑰その他 ②亀裂 21 異常な音・振動 ○ ③ゆるみ・脱落 23 変形・欠損 ○ ④破断 横桁 ⑤防食機能の劣化 対傾構 横構 下部工 コンクリート 躯体 鋼 ⑥ひびわれ ⑰その他 ⑦剥離・鉄筋露出 ⑱定着部の異常 ⑧漏水・遊離石灰 ⑩コンクリート補強材の損傷 ⑲変色・劣化 2 ○1異常な音・振動 ⑫うき 2 ○3変形・欠損 ①腐食 ⑰その他 ②亀裂 ⑳漏水・滞水 ③ゆるみ・脱落 21 異常な音・振動 ○ ④破断 23 変形・欠損 ○ ⑤防食機能の劣化 コンクリート 基礎 コンクリート ⑥ひびわれ ⑰その他 ⑦剥離・鉄筋露出 ⑱定着部の異常 ⑧漏水・遊離石灰 ⑲変色・劣化 ⑩コンクリート補強材の損傷 ⑳漏水・滞水 ⑫うき 23 変形・欠損 ○ 25 沈下・移動・傾斜 ○ 26 洗掘 ○ 15 工種 部材 材料 鋼 支承本体 損傷種類 ①腐食 ⑰その他 ②亀裂 ⑳漏水・滞水 ③ゆるみ・脱落 23 変形・欠損 ○ ④破断 24 土砂詰り ○ ⑤防食機能の劣化 25 沈下・移動・傾斜 ○ ⑯支承の機能障害 ゴム 鋼部材 支承部 沓座モルタル コンクリート ①腐食 ⑲変色・劣化 ③ゆるみ・脱落 ⑳漏水・滞水 ⑤防食機能の劣化 23 変形・欠損 ○ ⑰その他 24 土砂詰り ○ ⑥ひびわれ 23 変形・欠損 ○ ⑫うき 台座コンクリート 鋼 落橋防止 ①腐食 ⑤防食機能の劣化 ②亀裂 ⑰その他 ③ゆるみ・脱落 23 変形・欠損 ○ ④破断 コンクリート 鋼 ⑥ひびわれ ⑫うき ⑦剥離・鉄筋露出 ⑧漏水・遊離石灰 ⑰その他 2 ○3変形・欠損 ①腐食 ⑤防食機能の劣化 ②亀裂 ⑰その他 ③ゆるみ・脱落 23 変形・欠損 ○ ④破断 高欄・防護柵 コンクリート ⑥ひびわれ ⑰その他 ⑦剥離・鉄筋露出 ⑲変色・劣化 ⑧漏水・遊離石灰 23 変形・欠損 ○ ⑫うき 鋼 ①腐食 ⑤防食機能の劣化 ②亀裂 ⑰その他 ③ゆるみ・脱落 23 変形・欠損 ○ 地覆 ④破断 縁石 ⑥ひびわれ ⑰その他 ⑦剥離・鉄筋露出 ⑲変色・劣化 ⑧漏水・遊離石灰 23 変形・欠損 ○ 路上 コンクリート ⑫うき 舗装 アスファルト ⑭路面の凹凸 コンクリート ⑮舗装の異常 鋼 伸縮装置 ゴム ⑰その他 ①腐食 ⑭路面の凹凸 ②亀裂 ⑰その他 ③ゆるみ・脱落 ⑳漏水・滞水 ④破断 21 異常な音・振動 ○ ⑤防食機能の劣化 23 変形・欠損 ○ ⑬遊間の異常 24 土砂詰り ○ ⑬遊間の異常 ⑳漏水・滞水 ⑭路面の凹凸 23 変形・欠損 ○ ⑰その他 24 土砂詰り ○ ⑲変色・劣化 16 工種 路上 部材 照明施設 材料 鋼 損傷種類 ①腐食 ⑤防食機能の劣化 ②亀裂 ⑰その他 ③ゆるみ・脱落 23 変形・欠損 ○ ④破断 排水ます 鋼 ①腐食 ⑰その他 ④破断 24 土砂詰り ○ ⑤防食機能の劣化 排水 鋼 施設 配水管 ①腐食 ⑳漏水・滞水 ④破断 23 変形・欠損 ○ ⑤防食機能の劣化 24 土砂詰り ○ ⑰その他 塩ビ ④破断 23 変形・欠損 ○ ⑰その他 24 土砂詰り ○ ⑳漏水・滞水 ①腐食 点検施設 添架物 袖擁壁 鋼 鋼 コンクリート ⑤防食機能の劣化 ②亀裂 ⑰その他 ③ゆるみ・脱落 21 異常な音・振動 ○ ④破断 23 変形・欠損 ○ ①腐食 ⑤防食機能の劣化 ②亀裂 ⑰その他 ③ゆるみ・脱落 21 異常な音・振動 ○ ④破断 23 変形・欠損 ○ ⑥ひびわれ ⑰その他 ⑦剥離・鉄筋露出 23 変形・欠損 ○ ⑧漏水・遊離石灰 25 沈下・移動・傾斜 ○ ⑫うき 17 (2)定期点検の実施にあたっては、必要な点検機械・機器を携行し、点検項目に応じて適切 な方法で実施しなければならない。 表-4.2に定期点検における標準的な方法を示す。 表-4.2 点検の標準的な方法 材料 番号 損傷の種類 点検の標準的方法 鋼 コンクリート その他 共通 ① 腐食 目視,ノギス ② 亀裂 目視,テストハンマー ③ ゆるみ・脱落 目視 ④ 破断 目視 ⑤ 防食機能の劣化 目視 ⑥ ひびわれ 目視,クラックゲージ,写真 ⑦ 剥離・鉄筋露出 目視,写真 ⑧ 漏水・遊離石灰 目視,写真 ⑨ 抜け落ち 目視 ⑩ コンクリート補強材の損傷 目視 ⑪ 床版ひびわれ 目視,クラックゲージ ⑫ うき 目視 ⑬ 遊間の異常 目視,コンベックス ⑭ 路面の凹凸 目視,コンベックス,ポール ⑮ 舗装の異常 目視 ⑯ 支承の機能障害 目視 ⑰ その他 ⑱ 定着部の異常 目視 ⑲ 変色・劣化 目視 ⑳ 漏水・滞水 目視 21 ○ 異常な音・振動 聴覚,目視 22 ○ 異常なたわみ 目視 23 ○ 変形・欠損 目視,水糸,コンベックス 24 ○ 土砂詰り 目視 25 ○ 沈下・移動・傾斜 目視,水糸,コンベックス 26 ○ 洗掘 目視,水糸,ポール 18 【解説】 (1)表-4.1 は定期点検における標準的な点検項目について示したものである。損傷の種類 は国交省のそれと同一として 26 種類とした。表-4.2 は、点検の標準的な方法を示した。 (2)点検は、山梨県定期点検表に基づき行う。山梨県定期点検表は、山梨県の過去の点検 結果をもとに、それぞれの部材にどのような損傷が生じているか頻度を分析し、効果的 な点検ができるよう、損傷の絞り込みを行ったものである。また損傷状況を選択すれば、 対策区分が自動的に決定され、数量を入力すれば概算工事費が求まる様式となっている。 (3)箱桁形式は、箱桁外面にひびわれや漏水等の損傷が認められる場合は、管理者と協議 の上、箱桁内部の点検も行うものとする。 (4)ボックスカルバート形式は、以下のように部材の読み替えを行う。 頂版 → 上部構造の床版 側壁(起点側) → 下部構造のA1 橋台 基礎(起点側) → 下部構造のA1 基礎 側壁(終点側) → 下部構造のA2 橋台 基礎(終点側) → 下部構造のA2 基礎 (5)参考として、一般的に携行することが必要となる機械機器を以下に示す。 ① 点検用具 双眼鏡、点検ハンマー、巻尺、下げ振り、ポール等 ② 録用具 デジタルカメラ、ビデオカメラ、チョーク、黒板、マジック、スケール、記録用紙 ③ 点検用補助機器 照明設備、懐中電灯、清掃用具、交通安全・規制用具、ロープ、ガムテープ ④ 接用具 梯子、脚立 19 4.6 点検体制 定期点検は、橋梁に関して十分な知識と実務経験を有する者がこれを行わなければ ならない。 【解説】 管理技術者は定期点検を行う場合においては、点検計画の案の作成や対策区分の判 定(損傷原因の推定や特定、所見の記録を含む)等を行うものとする。 (1)点検時の標準的な人員構成と点検時の資格を以下に示す。 (a)人員構成 ・徒歩点検、工事用足場 橋梁点検員 1 名、点検補助員 2名 1 名、点検補助員 2 名、点検車運転手 ・橋梁点検車等 橋梁点検員 1名 交通整理員(現場状況に応じ人員を決定する) (b)点検員の資格 橋梁点検員・・・損傷状況の把握を行うのに必要な以下の能力と実務経験を有する ものとする。 ・橋梁に関する実務経験を有すること ・橋梁の設計・施工に関する基礎知識を有すること ・点検に関する技術と実務経験を有すること 管理技術者・・・対策区分の判定を行うのに必要な以下の能力と実務経験を有する ものとする。 ・技術士(建設部門における鋼構造及びコンクリートまたは道路)または RCCM(鋼構造及びコンクリートまたは道路)の資格を有すること 20 4.7 安全対策 点検は、道路交通、第三者及び点検に従事する者に対して適切な安全対策を実施して 行わなければならない。 【解説】 定期点検は供用下で行うことが多いことから、道路交通、第三者及び点検に従事する 者の安全確保を第一に、労働基準法、労働安全衛生法その他関連法規を遵守するととも に、現地の状況を踏まえた適切な安全対策について、点検計画に盛り込むものとする。 主な留意事項は次のとおりである。 ・高さ 2m 以上で作業を行う場合、点検に従事する者が墜落する恐れがある場所では 必ず安全帯を使用する。 ・足場、昇降設備、手摺、ヘルメット、安全帯の点検を始業前に必ず行う。 ・足場、通路等は常に整理整頓し、安全通路の確保に努める。 ・道路あるいは通路上での作業には、必ず反射チョッキを着用し、必要に応じて交通 誘導員を配置し、作業区域への第三者の立ち入りを防止する。 ・高所作業では、用具等を落下させないよう十分注意する。 ・密閉場所で作業する場合は、酸欠状態等を調査の上実施する。 点検時は、通常、橋面あるいは桁下等に自動車交通や列車交通があることから、 「道 路工事保安施設設置基準(案)」に基づき、これらに十分留意し、安全を確保して作業 を行う。 21 4.8 対策区分 定期点検の対策区分は、表―4.3 の判定区分による。 表-4.3 定期点検の対策区分 対策区分 判定内容 A0 点検の結果から損傷は認められない。 A 損傷が軽微で補修を行う必要がない。 B 状況に応じて補修を行う必要がある。 C 速やかに補修を行う必要がある。 E1 橋梁構造の安全性の観点から、緊急対応の必要 がある。 E2 その他、緊急対応の必要がある。 M 維持工事で対応する必要がある。 S 詳細調査の必要がある。 【解説】 (1)点検は、山梨県定期点検表に基づき行う。損傷状況を選択すれば、対策区分が自動 的に決定される様式となっている。 (2)本要領で定めた対策区分の判定の基本的な考え方は次のとおりである。 ① 判定区分A0とは、少なくとも点検で知りうる範囲では、損傷が認められない状 態をいい、判定区分Aとは、損傷が軽微で補修の必要がない状態をいう。 ② 判定区分Bとは、損傷があり補修の必要があるが、損傷の原因、規模が明確であ り、直ちに補修するほどの緊急性はなく、放置しても少なくとも次回の定期点検ま で(=5年程度以内)に構造物の安全性が著しく損なわれることはないと判断でき る状態をいう。 ③ 判定区分Cとは、損傷が相当程度進行し、当該部材の機能や安全率の低下が著し く、少なくとも5年程度以内には補修等される必要があると判断できる状態をいう。 ④ 判定区分E1とは、橋梁構造の安全性が著しく損なわれており、緊急に処置され ることが必要と判断できる状態をいう。 例えば、亀裂が鈑桁形式の主桁腹板や鋼製橋脚の横梁の腹板に達しており亀裂の急激 な進展の危険性がある場合、桁の異常な移動により落橋の恐れがある場合がこれに 該当する。 22 ⑤ 判定区分E2とは、自動車、歩行者の交通障害や第三者等への被害の恐れが懸念 され、緊急に処置されることが必要と判断できる状態をいう。 例えば、遊間が異常に広がっており二輪車の転倒が懸念される場合やコンクリ ート塊が落下し、路下の通行人、通行車両に被害を与える恐れが高い場合がこれ に該当する。 なお、一つの損傷でE1、E2両者の理由から緊急対応が必要と判断される場 合は、E1に区分する。 ⑤ 判定区分Mとは、損傷があり、当該部材の機能を良好な状態に保つために日常の 維持工事で早急に処置されることが必要と判断できる状態をいう。 例えば、支承や排水施設に土砂詰りがある場合がこれに該当する。 ⑥ 判定区分Sとは、損傷があり、補修等の必要性の判定を行うにあたって原因の特 定など詳細な調査が必要と判断できる状態をいう。 4.9 点検結果の記録 点検結果は山梨県定期点検調書に記入を行う。 【解説】 点検結果は山梨県定期点検調書に記入を行い、 「山梨県橋梁管理データベース」に登録 を行う。 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36