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平成25年度国際エネルギー使用合理化等対策事業 (機器

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平成25年度国際エネルギー使用合理化等対策事業 (機器
平成25年度国際エネルギー使用合理化等対策事業
(機器分野の省エネ普及促進事業)
平成26年3月
目次
はじめに(背景と事業目的)........................................................................................................ 3
第一部
事業概要 .......................................................................................................................... 6
1. ASEAN ...................................................................................................................................... 6
1.1. 事業背景 ................................................................................................................................ 6
1.2. 活動概要 ................................................................................................................................ 6
1.3. 今後の展開(課題など含む) .............................................................................................. 10
2.1. 事業背景 .............................................................................................................................. 12
2.2. 活動概要 .............................................................................................................................. 12
2.3. 今後の展開(課題など含む) .............................................................................................. 14
3. 中国......................................................................................................................................... 14
3.1. 事業背景 .............................................................................................................................. 14
3.2. 活動概要 .............................................................................................................................. 15
3.3. 今後の展開(課題など含む) .............................................................................................. 18
4.省エネシンポジウム (S&L 制度支援事業)~アジアにおける省エネ基準・ラベリング政策
の調和と国際協力の現状~)...................................................................................................... 19
4.1. 背景...................................................................................................................................... 19
4.2. 活動概要 .............................................................................................................................. 19
4.3. 今後の展開(課題など含む) .............................................................................................. 20
第二部
我が国から他国に普及することが有益な機器分野の省エネ普及促進制度に係る考察 21
1. ASEAN .................................................................................................................................... 21
1.1. 現状把握 .............................................................................................................................. 21
1.2.
分析・提言 ......................................................................................................................... 49
2. インド ..................................................................................................................................... 55
2.1. 現状把握 .............................................................................................................................. 55
2.2. 分析・提言 ........................................................................................................................... 57
3. 中国......................................................................................................................................... 58
3.1. 現状把握 .............................................................................................................................. 58
3.2.
提言 .................................................................................................................................... 59
3.資料編................................................................................................................................... 60
はじめに(背景と事業目的)
事業背景と目的
我が国のエネルギーセキュリティ確保、地球温暖化対策等の観点から、エネルギー需要の急増
が見込まれるアジアを中心とした新興国において省エネルギー対策を促進する必要がある。その
ためには、我が国の優れた省エネルギー機器等がビジネスベースで同地域に広く普及することが
重要であり、この観点から、各国において機器分野の省エネルギー普及促進制度を構築し、整備
することが有効な手段となる。
本事業では、省エネルギー性能の優れた機器が適正に評価され、ASEAN 各国に普及すること
を目的に、アジア各国に対する省エネルギー政策・制度の整備や執行に関する能力育成などを通
じて、当センターが培った省エネルギー普及促進制度に関する知見やネットワークを活用し、各
国の特性を踏まえ、かつ各国の省エネルギー普及促進制度調和も見据え、また ASEAN におけ
る二国間・多国間での同種の取組と連携しつつ、機器分野の省エネルギー普及促進制度の構築支
援を実施してきた。また、こうした制度構築は短期にその成果が獲得できるものではなく、相手
国の事情を踏まえた継続的な支援の実施が必要不可欠であることから、国内外の機器分野の省エ
ネルギー普及促進制度に関する国際的なイニシアティブとの連携と関係強化、ネットワークの拡
大も併せて実行してきた。
本事業の 25 年度の取組みの概略については以下のとおりである。
まず ASEAN に対して省エネ促進事業を進めて行くにあたっては、本事業を如何にして
ASEAN 全体の取組みとして位置付けて行くかがポイントであった。このため、ASEAN エネル
ギーセンター(ACE)
、エネルギー効率・保全に関するサブセクター・ネットワーク(EEC&SSN)
が主導する「ASEAN 省エネ基準調和会合」
(2013 年 11 月)にて、日本の S&L 制度の概要と機
器の省エネ性能に関するデータベース構築・運用の重要性を訴え、具体的な取組みとして、
ASEAN におけるエアコン省エネ性能ランキングリストの作成に言及した。当センターは本取組
みを、ASEAN に対する新たなプロジェクト EMTIPS(Energy Efficiency Market
Transformation with Information Provision Scheme)として提案、SOME-METI 高級事務レベ
ル会合で了承され、ACE と EEC&SSN のもとで進められる公認の事業として位置付けることが
できた。平成 25 年度の事業としては、ASEAN 各国における機器分野の省エネ普及促進の現状
を把握するため、
「省エネ性能カタログ」作成を目標に各国の省エネ基準及びラベル表示制度を
中心に調査を行った。調査の結果は、ASEAN10 カ国でも、既に制度を施行(5 カ国)、間もな
く施行予定(2 カ国)
、目途が立っていない(3 カ国)と施行の進捗には格差があり、かつ、既
に制度を施行している国々においても制度内容や省エネ性能データの公開に対する考え方と方
法に違いがあるなど、ASEAN としての足並みが揃っていないことが、あらためて浮き彫りにな
っている。EMTIPS は始動したばかりであるが、ASEAN 経済圏での調和に向けては、各国事
情を踏まえつつも、日本の経験を活かし一つ一つ成功事例を作り上げ、そのメリットを ASEAN
全体で確認しつつ進めて行くことが肝要である。
3
次にインドでは、ルームエアコン販売台数が 354 万台であるが、インバーターエアコンは 7%
程度と低い普及状況にある。今後国内で急速な普及が見込まれるなか、インバーターエアコンを
普及させることが、インドの省エネ担当部局 BEE(Bureau of Energy Efficiency)の懸案事項と
なっている。25 年度事業は、BEE から“インバーター機と一定速機を同一の評価方法にて評価
する方法の指導”とのニーズを引き出し、これに応えるために、日本の各企業・関係団体との意
見調整を重ねたのち、
望ましい評価指標として ISO 基準に準拠する CSPF の提案を行ってきた。
本提案に基づき、BEE は CSPF を採用した新制度施行について電力省に提案する意思を固めて
いる。しかしながら、BEE が自ら主催するテクニカルコミティ(議長:BEE、メンバー:CLASP
(S&L 関連事業関連組織)
、ESCO 関連組織、コンサル企業、試験機関、RAMA(インド冷凍
空調工業会)、製造企業、等)には、一定速機の市場を守ろうとの国内空調業界の強い意向も存
在するため、制度化に向けて踏むべきステップとなる同コミティでの審議決定(2013 年度 3 月
目途)は予断を許さない状況にある。また、省エネラベリングについても、インバーター機と一
定速機は別の基準値により評価したいとの意見もあることから、高効率エアコン普及という当初
目的を満たすためには、引き続きの BEE に対する支援が必要である。
中国における S&L 事業は、エアコンの適正指標の検討と、適正に評価しうる試験所の構築と
測定能力向上について、過去 4 年間にわたり、中国標準化研究院(CNIS)を中心とする技術会合
や APF 研究会を組成し精力的な活動を展開してきた。主な活動としては、気象条件を異にする
各地域における使用実態調査や APF 効率評価システムの実行可能性研究、日本空調冷凍研究所
(JATL)・中国国家試験所・メーカー試験所の間でのラウンドロビンテスト(RRT)を通じた試験所
能力向上があげられる。以上の日中協力活動の成果として、APF 基準は 2013 年 6 月 9 日に公
布、10 月 1 日に施行され導入が進んでいる状況にある。また、インバーターエアコンの適正評
価と APF 基準の確実な運用にとって必要となる試験機関の測定能力向上については、中国家用
電器研究院(CHEARI)や広州威凱検査技術研究院(CVC)の両国家試験機関や参加メーカー試験
所が、RRT を通じて高度な測定能力を保有するに至っている。一方で、国内の制度運営で影響
力を持つ地方の試験機関の均質な能力向上とこれを進めるための共通のマニュアルの整備が不
可欠である。25 年度事業では、日中の技術専門家で構成される APF 研究会マニュアル策定専門
家検討会(2014 年 2 月)を実施し、長きにわたり調査・研究を続けてきた日中協力事業の総仕
上げとして空調能力試験マニュアル(バランス式、空気エンタルピ式)を完成(2014 年 3 月末
完成版印刷・配布目途)に導いた。なおも中国では州・県試験機関の能力向上が課題となるが、
今後は完成されたマニュアルに基づき、高度な技術力を獲得した国家試験機関がイニシアティブ
をもって展開していくことが期待されるところである。
最後に、本年 1 月末の国際省エネシンポジウム『アジアにおける省エネ基準・ラベリング政
策の調和と国際協力の現状』では、海外の招聘講師、日本の講師により、各国の法制度の整備運
用状況、二国間・多国間の協力事業等について情報提供が行われたが、①各国は機器の標準及び
ラベリングの設定を行い、或いは開発を実施しているが、各国の状況は、法制度、運用上の課題、
などそれぞれの事情を踏まえて同一ではない、②調和に向けては、まずこの“違い”をしっかり
4
理解し進めなければならない、ということを各国講師や S&L 事業推進に関係を持たれる来場者
の方々と改めて認識・共有できる良い機会につながったことを付け加えたい。
2014 年 3 月
(一財)省エネルギーセンター
5
第一部
事業概要
1. ASEAN
1.1. 事業背景
ASEAN では機器分野における省エネ普及促進に関する様々な取り組みが ASEAN 各国や ASEAN 全
体で進められている。これら取り組みの状況を踏まえつつ平成 25 年度の ASEAN に対する本事業
は、次の活動を行った。
① 「ASEAN 省エネ基準調和会合」への参加
第 1 の事業は、ASEAN 全体で行われている取り組みの一つとして ASEAN エネルギーセンター
(ACE:ASEAN Centre for Energy)及びエネルギー効率・保全に関するサブセクター・ネットワ
ーク(EEC&SSN: Energy Efficiency and Conservation Sub-sector Network)が主導して開催し
ている「ASEAN 省エネ基準調和会合」への参加である。本年度は APEC を介して日本が資金提供
をしている「エアコンの試験方法に関する基準の ASEAN 内での調和」に関する事業の総括会合に
参加する機会を得ることができた。これらの機会を捉えて、日本における機器分野の省エネ普及
促進制度の内容や経験を ASEAN 各国と共有したり、我が国として貢献できる部分を提示したりす
ることは、機器分野の省エネ普及促進における日本の存在を ASEAN に示すことにおいて重要であ
ると考えられる。なお、当該基準調和事業は EU からの資金を受けて国際銅協会(ICA:
International Copper Association)が事務局として引き続き実施することになっている。
② ASEAN に対する機器分野の省エネ普及促進支援会合の開催
第 2 の事業は、ASEAN 各国及び当該地域における機器分野の省エネ普及促進を支援するワーク
ショップ等の開催である。具体的に支援を進めるためには、まず初めに各国の現状を把握するこ
とが必要となる。例えば、機器分野の省エネ普及促進の基幹的制度である機器の省エネ基準・ラ
ベル表示制度の場合、既に施行している国は ASEAN10 カ国のうち 6 か国(インドネシア、マレー
シア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)あるが、各国とも独自の制度を運用してお
り、消費者に対する省エネ機器の情報提供に関しても手法や方針は様々である(各国の現状につ
いては第 2 部参照)。
日本は機器分野における省エネ普及促進に関して 10 年を超える経験があり、
この日本の経験を活かして ASEAN 各国における機器の省エネ制度改善や ASEAN 地域における機器
の省エネ制度調和を支援していくことは、ASEAN 及び日本の双方にとって有益と考えられる。
③ 経済産業省が実施するその他関連事業との協働
なお本事業の実施においては、経済産業省による ASEAN に対するその他関連事業との協働を図
り、不要な業務重複を避けた効率的・効果的な実施が求められた。
1.2. 活動概要
ASEAN に対する本事業の活動概要を以下に示す。
①「ASEAN 省エネ基準調和会合」への参加
「ASEAN 省エネ基準調和会合」が 2013 年 11 月 14 日にタイバンコクにて開催され、ECCJ から
2 名が派遣された。ASEAN におけるエアコンの試験方法調和の取り組みに関する報告があるなか、
6
ECCJ からは日本における機器の省エネ基準及びラベル表示制度の概要と、機器の省エネ性能に
関するデータベース構築・運用の重要性について日本の経験を交えて発表を行った。さらに本事
業の②において取り組む予定の ASEAN におけるエアコンの省エネ性能ランキングリスト作成に
ついても説明を行った。
②
ASEAN に対する機器分野の省エネ普及促進支援会合の開催
機器分野の省エネ普及促進支援をより具体的に進めるために、ASEAN に対する新たな取り組み
が考案された。この新たな取り組みは、EMTIPS(Energy Efficiency Market Transformation with
Information Provision Schemes)プロジェクトと命名され、SOME-METI 高級事務レベル会合に
て了承された事業として、ASEAN エネルギーセンター(ACE)とエネルギー効率・保全に関するサ
ブセクター・ネットワーク(EEC&SSN)の協力のもと実施される ASEAN 全体の取り組みに位置づけ
られた。
本プロジェクトが新規事業であることを考慮し、平成 25 年度は試験的事業(パイロットプロ
ジェクト)として各国の現状把握に重点を置いて実施された。本プロジェクトにおける活動内容
としては、
「製造事業者(輸入事業者)
・小売事業者・消費者」の関連性を重視した日本の機器分
野の省エネ普及促進政策を参考に、消費者に対する機器の省エネ性能情報提供ツールである「省
エネ性能カタログ/省エネ性能データランキングリスト」の作成を目標に掲げ、関連情報の収集
を行った。さらに ASEAN 各国の機器分野におけるその他の省エネ普及促進の取り組みについても
情報収集するために、属性に基づいた省エネ制度の分布を表すことができる「省エネ制度マップ」
(図 1 参照)の概念を紹介し、ASEAN 各国の自己分析による制度マップ作成を行った。
規制
(直接的働きかけ)
第 2 象限
情報関連規制
(例:製品情報表示義務)
第 1 象限
金銭的規制
(例:罰金)
金銭
情報
第 4 象限
金銭的支援策
(例:補助金制度)
第 3 象限
情報支援策
(例:ラベル表示制度)
(間接的働きかけ)
市場誘導
凡例
消費者
製造事業者
濃色の凡例:現行又は既に終了した省エネ機器の普及促進政策
薄色の凡例:将来的に実施を希望・予定の省エネ機器の普及促進政策
関係者:当該制度の第 1 関係者
小売事業者
図1.制度マップの概念図
7
「機器の省エネ性能データランキングリスト」の作成においては、ASEAN 各国の関心が高いエア
コンを対象品目に取り上げた。エアコンは「ASEAN 省エネ基準調和会合」等の既存の取り組みに
おいても対象品目であることから、ASEAN 各国の参加を促すことにおいて有効であった。さらに、
エアコンに対する省エネ基準及びラベル表示制度を有する ASEAN の国々(マレーシア、フィリピ
ン、シンガポール、タイ、ベトナム)を本取り組みの「賛同国」として位置づけることによって、
より一層の参加協力を求めた。また ASEAN 内の平等性を考慮し、
「賛同国」に該当しない国々に
よる本取り組みへの参加も受け入れ、ASEAN 全体による情報共有と総体的な省エネ水準の向上を
目指した。
表 1. ワークショップ等の会合開催一覧
日程
1
概要
2014 年
初回会合(Inception Workshop)(於:ジャカルタ)
2 月 6-7 日
参加国:カンボジア・インドネシア・ラオス・タイ
• EMTIPS パイロットプロジェクトの目的や主旨の説明
• 日本の省エネ基準及びラベル表示制度の概要と、エアコンを例
とした制度適正運用の事例紹介
• ASEAN 各国及び日本におけるエアコンの市場状況発表
• 「制度マップ」の説明とワークショップ
• 小売事業者の販売店舗訪問
2
2014 年
フィリピン訪問(於:マニラ)
2 月 17-18 日
• EMTIPS パイロットプロジェクトの目的や主旨の説明
• 日本の省エネ基準及びラベル表示制度の概要と、エアコンを例
とした制度適正運用の事例紹介
• 「制度マップ」の説明
• フィリピンの省エネ基準及びラベル表示制度の概要
• エアコンの省エネ性能データランキングリスト作成に関する
意見交換
• 小売事業者の販売店舗訪問
3
2014 年
マレーシア訪問(於:クアラルンプール)
2 月 24-25 日
• EMTIPS パイロットプロジェクトの目的や主旨の説明
• 日本の省エネ基準及びラベル表示制度の概要と、エアコンを例
とした制度適正運用の事例紹介
• 「制度マップ」の説明
• マレーシアの省エネ基準及びラベル表示制度の概要
• エアコンの省エネ性能データランキングリスト作成に関する
意見交換
• 小売事業者の販売店舗訪問
4
2014 年
シンガポール訪問(於:シンガポール)
8
2 月 27-28 日
• EMTIPS パイロットプロジェクトの目的や主旨の説明
• 日本の省エネ基準及びラベル表示制度の概要と、エアコンを例
とした制度適正運用の事例紹介
• 「制度マップ」の説明
• シンガポールの省エネ基準及びラベル表示制度の概要
• エアコンの省エネ性能データランキングリスト作成に関する
意見交換
• 小売事業者の販売店舗訪問
5
2014 年
最終会合(Wrap-up Workshop)
(於:バリ)
3月6日
参加国:カンボジア・インドネシア・ラオス・マレーシア・ミャ
ンマー・フィリピン・タイ・ベトナム
• 本年度 EMTIPS パイロットプロジェクトのまとめ
• ASEAN 各国によるエアコンの省エネ性能データ保有状況と制度
マップ発表
• 本事業に関する来年度に向けた提案とこれら提案に対する意
見交換
③経済産業省が実施するその他関連事業との協働
平成 25 年度においては ASEAN に対する以下の関連事業との協働を図り、関係者との情報交換を
通じて効率的な事業実施に努めた。
表 2. 類似事業との協働・情報交換実績一覧
日程
1
関連事業名
協力活動概要
2013 年
「省エネルギー等普及基
10 月 2 日
盤構築支援調査事業
• 左記事業を経済産業省より受託してい
家
る基準認証イノベーション技術研究組
庭用エアコン及び冷蔵庫
合・一般社団法人日本電機工業会と、経
の国際標準化に関する支
済産業省担当官を交えて情報交換を行
援調査事業」
った。
• 双方の事業を認識し可能な場合におい
ては協働することを確認した。
2
2013 年
「国際エネルギー使用合
11 月 8-15 日
理化等対策事業
• ECCJ は左記事業を経済産業省より受託
省エネ
していることから、省エネ基準及びラベ
ルギー人材育成事業」
ル表示制度に関係する対 ASEAN 人材育成
研修の機会を捉え、本事業(EMTIPS パイ
ロットプロジェクト)を説明した。
3
2014 年
「省エネルギー等普及基
1 月 22 日
盤構築支援調査事業
• ASEAN のエアコン試験関係者を日本に招
家
聘して開催された、左記事業における関
9
庭用エアコン及び冷蔵庫
係者限定のセミナーに参加した。
の国際標準化に関する支
援調査事業」
4
2014 年
「省エネルギー等普及基
1 月 30 日
盤構築支援調査事業
• 本事業において開催した国際シンポジ
家
ウム「アジアにおける省エネ基準・ラベ
庭用エアコン及び冷蔵庫
リング政策の調和と国際協力の現状」
の国際標準化に関する支
に、左記事業を受託している基準認証イ
援調査事業」
ノベーション技術研究組合の専門家を
講演者として招聘した。
5
2014 年
「国際エネルギー使用合
3月6日
理化等対策事業
• 左記事業の平成 25 年度最終会合と本事
省エネ
業の EMTIPS パイロットプロジェクト最
ルギー人材育成事業」
終会合を同地にて連続開催することに
より、ASEAN 及び日本側双方の不要な負
担を軽減し、効率的な会合開催を行っ
た。
1.3. 今後の展開(課題など含む)
ASEAN に対する本事業の今後見込まれる展開と課題に関する考察を以下に示す。
「ASEAN 省エネ基準調和会合」への参加
「ASEAN 省エネ基準調和会合」は、EU からの資金に基づき国際銅協会(ICA)が事務局と
して運営している「エアコンの省エネ基準・ラベリング基準の ASEAN 内の調和」を目的とし
たプロジェクト内の会合である。このプロジェクト(2013 年~2016 年)は 7 つの作業計画で構
成されており、本年度は第 2 作業計画の最終年であった。日本はこの第 2 作業計画に APEC を
介して資金を提供していたことから、本会合に参加し ASEAN におけるエアコンの省エネ基準
調和に対する日本の考え方や取り組みを打ち出すことができた。しかし、第 2 作業計画の継続
作業と第 3 作業計画以降(エアコンの性能評価基準の調和、人材育成等)の日本の参加につい
ては未定のままであり、日本がどのような方法で、またどのような立場で今後の「ASEAN 省エ
ネ基準調和会合」に関わっていくのかが課題として残る。
ASEAN に対する機器分野の省エネ普及促進支援会合の開催
平成 25 年度の本事業では、ASEAN 各国における機器分野の省エネ普及促進の現状を把握す
るため、エアコンの省エネ性能データランキングリスト作成を目標に各国の省エネ基準及びラベ
ル表示制度を中心に調査を行った。その結果、ASEAN10 か国のうち 5 か国(マレーシア、フ
ィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)は既にエアコンに対する当該制度を施行し、2 か国
(ブルネイ・インドネシア)については間もなく施行予定であり、3 か国(カンボジア・ラオス・
ミャンマー)については目途が立っていないという現状が明らかとなった。このように、機器の
10
省エネ基準及びラベル表示制度の施行状況には ASEAN 各国間に格差があり、既に当該制度を
施行している国々においても制度内容や省エネ性能データの公開に対する考え方と方法に違い
があるなど、ASEAN としての足並みは揃っていない。しかし、ASEAN は 2015 年に経済面に
おける「ASEAN 共同体」の実現を目指しており、将来的には家電製品等の機器市場の統合も考
えられることから、機器の省エネ制度や省エネ性能情報の公開方法などを共通化・共有化するこ
とが ASEAN にとって有用であるという認識が高まりつつある。ASEAN 各国並びに将来の
ASEAN 統合市場において省エネ型機器の普及を促進するためには、本年度着手した機器の省エ
ネ性能データランキングリスト作成事業を ASEAN 全体の事業として継続し、ASEAN 内の消費
者の省エネ意識向上や機器に関する省エネ知識向上を支援する ASEAN 版「省エネ性能カタロ
グ」の作成や、将来的には ASEAN 共通データベースの開発を目指すことが望まれる。
経済産業省が実施するその他関連事業との協働
平成 25 年度は、
経済産業省による委託事業である「国際エネルギー使用合理化等対策事業
エネルギー人材育成事業」及び「省エネルギー等普及基盤構築支援調査事業
省
家庭用エアコン及
び冷蔵庫の国際標準化に関する支援調査事業」と協働する機会を多く得ることができた。前者は
政府機関関係者を対象とした省エネ人材育成事業、後者はエアコンと冷蔵庫に関する試験技能の
向上や適切な試験方法並びに省エネ評価指標の導入を支援する事業であり、双方とも ASEAN
に対する支援を数年間にわたり継続している。ASEAN に対し今後も本年度事業(「機器分野に
おける省エネ普及促進支援事業」)を推進する場合には、ASEAN 各国間における機器分野の省
エネ制度の整備格差や、インバーター等の最新省エネ技術に対応する試験設備及び試験技能の不
足などの関連する問題も考慮しなくてはならないため、上述のような関連事業との協働は重要で
あり、引き続き関係者間の綿密な協力が必要になると考えられる。
11
2. インド
2.1. 事業背景
インドにおいて、エアコンなど機器分野に関する省エネ普及促進制度の構築支援のための連携
を進める観点から、日本における機器分野の省エネ普及促進制度の内容及び経験の共有、両国間
で連携出来る事項の議論、並びに我が国として貢献できる部分の考察・助言等をインドにおける
関係機関と実施する。
インドのルームエアコンの販売台数 354 万台のうち、インバーターエアコンの比率は 7%程度
であり、現状、インバーターの販売比率は非常に低い。今後はインド国内でもエアコンの急速な
普及が見込まれており、インバーターエアコンの潜在的な需要は極めて大きい(2011 年度デー
タより)
。
7%
2.2. 活動概要
インドにおいては、家庭部門の省エネ推進のためエアコンの高効率化を進めようとしている。
高効率なインバーターエアコンの普及により省エネ推進を進めるためにはインバーターの効率
を的確に評価し、消費者に判断材料として提供する仕組みが必要である。
インドの省エネルギー担当部局である BEE(Bureau of Energy Efficiency )は、ISO16358 によ
るエアコンの効率評価方法の策定を踏まえ、2012 年よりテクニカルコミティを設けてエアコン
の評価方式の見直しを進めている。
省エネルギーセンターでは BEE を2回にわたり訪問したほか、メールにてフォローを実施する
とともに、あわせてエネルギー関係調査機関である ERI を訪問して意見交換を行い、インドに相
応しい制度の策定を支援することとした。
○テクニカルコミティは BEE の Saurabh Diddi 氏が議長となり、CLASP(S&L 事業関連組織)・EESL
(ESCO 関連組織)・PWC(コンサルタント企業)・試験機関(CPRI・Intertek・Sierra Aircon・UL)
・RAMA(インド冷凍空調工業会)・製造企業8社(日系ではダイキン・パナソニック・日立が
含まれる)等のメンバーで構成される。
BEE においては3ケ所のバランス式試験設備を有する試験機関にてエアコンの性能試験を実
施したが、試験方法や評価方法については各社から様々な提案が出るなど的確な試験の実施と
評価方法を模索していた。
12
このため BEE から ECCJ に対して、インバーターと一定速機を同一の評価方法にて評価する
Methodology を指導してもらいたいとの要請があり、EER,SEER,CSPF の評価方式について今後
インドにおいてエアコンの高効率化に最も適する方策を提案するよう依頼があった。
(注)SEER とは、定格冷房能力と中間冷房能力を4:6等に重みづけをして算出した評価指標。
○在インド日系企業のテクニカルコミティ活動に対する認識や要望は下記の通りであった。
・インバーター機を普及させるためには、インバーター機が一定速機より効率的であることを示
す省エネラベル表示が必要である。そのためには、BEE に対する技術サポートが必要である。
・当面の方法としては、いきなり CSPF を導入するのは技術的難易度が高い上、インドの制度運
用能力を考慮すると、まず不公平さを早期に解消することを優先させ、SEER を導入するのが妥
当と考えられる。
(注)この時点では、一定速機に対する CSPF 評価は不可能であると認識されていた。
・省エネラベルの制度運用についても現状は製造メーカーへの負担が大きく、公平な競争を促す
仕組みにはなっていない。改善を要望したい。
・ピックアップテストが実施されていないため、評価機と市販機では性能が異なることがあり、
試験機関間でのキャリブレーション(較正)も実施されておらず、同一基準での運用とは言い
がたい。
○在インド日系企業の本社の意向は、従来から東南アジアも含め CSPF の普及活動をしているこ
と、輸出先でも日本と同じ評価指標を採用した方が運用しやすいこと、日本が推奨してきた ISO
基準に準拠することが望ましい等を理由に、日本と同じ CSPF を用いた評価方法を導入すべく努
力することが望ましいとの意見が大半であった。
また、一定速機に対する CSPF 評価は EER とも共通の考え方であり導入の敷居も高くないもので
あることは我が国内では共通の認識であった。
〇ECCJ としては日系企業の意向を踏まえて、BEE に対してインバーター機、一定速機の双方に対
して同一の試験方法、評価方法を適用することができる CSPF 算出による方法を具体的に提案し
た。その結果、BEE は 2013 年末に CSPF を導入することを決定し、2016 年 1 月導入を目途に新制
度を上位機関である電力省(MOP)に提案することとなった。
(*)
Weighted EER = 0.4 × EER (100%) + 0.6 × EER (50%)
13
○さらに BEE はラベリング以外の追加方策が必要と考えており、ECCJ に対して日本でのインバ
ーターエアコンの高い普及率をふまえ、日本での APF 設定時の経緯やインバーターエアコンの普
及政策および販売店・消費者に対する啓発活動などの情報提供を求めてきた。
ECCJ からは、ラベリング制度、省エネ性能カタログなどデータベース、啓発活動を含めて普及
支援制度を紹介した。詳細は別添資料(2. -3 インド (CSPF 導入に関する BEE からの質問と回
答))を参照
2.3. 今後の展開(課題など含む)
BEE では 2016 年 1 月からの新制度実施を目指して 2014 年 3 月にもテクニカルコミティにお
いて審議決定し、4 月に電力省に提案をすることを目指しているが、現段階での課題としては以
下が考えられる。
① テクニカルコミティでの空調業界からの支持取り付け
テクニカルコミティにおいては、BEE より提案された新制度に対して、一定速機の市場を守
るべく、特にインバーターを製造していない海外メーカーおよびインド国内の中小メーカーから
強い反対が出されており、合意を得る際の障害となっている。次回のテクニカルコミティは3月
25 日に予定されており、BEE は各メーカーに対する説得活動を展開しているが、現地の空調業
界が賛同し新制度を承認できるかどうかの重要な局面に差し掛かっている。
② 一定速機とインバーター機の CSPF 基準一本化
一部企業においては、CSPF によるラベリング☆レートの設定において一定速機とインバータ
ー機を別の基準値により☆数を決定したいとの意向が出されている。 今回の制度改正の趣旨を
損なう考えであり、高効率エアコン普及という当初の目的を満たすためにも、ラベリングの☆レ
ートは同一基準により制定されるべきであり、BEE の意思が反映できることを期待したい。
3. 中国
3.1. 事業背景
1998 年の省エネルギー法制定を契機に、MEPS や省エネラベルの表示義務など基準・ラベリ
ング制度が導入されている中国において、省エネ型エアコンである家庭用インバーターエアコン
を普及させるためには、同エアコンの性能が適正に測定・評価されることが必要である。このよ
うな背景の下、わが国の省エネ機器に対する測定技術等の知見を活かし、インバーターエアコン
の測定方法に関する標準化を行っている中国標準化研究院(CNIS: China National Institute of
Standardization)と、家電機器等の使用電力状況の測定・調査、機器の性能測定試験の能力向上
のための研究会(APF 研究会)を実施してきた。
14
事業の進捗と状況の変化は以下のとおりである。
○中国における機器分野の省エネルギー普及促進事業は、北京・上海・広州など気候条件を異
にする各地域における使用実態調査や APF 効率評価システムの実行可能性研究、ラウンド
ロビンテスト(RRT)を通じた試験所能力向上、等の支援を 24 年度までの過去 4 年間にわ
たり着実に進めてきている。
○この間、ルームエアコンの販売台数は、「2013 年冷凍年度中国空調市場白書」によれば、2012
年 8 月~2013 年 7 月の間に 3,820 万台を記録し、5 年前には7%程度だったインバーター
エアコンの販売比率は約 52%にまで達している。
○APF 基準は、これまでの日中協力事業の成果として、2013 年 6 月 9 日に公布、10 月1日
に施行され、順調に導入作業が進んでおり、これにより 2014 年にはインバーターエアコン
の販売比率はさらに高まる(中国家電網)と見られている。
○一方、インバーターエアコンの適正評価と APF 基準の確実な運用に必須となる空調能力試
験マニュアルの策定については未完の状態。国内の制度運営で影響力を持つ地方の試験機関
の均質な測定能力向上にとっても、共通マニュアルの策定は必要不可欠である。
以上の認識のもと、25 年度の具体的活動については、これまでの中国支援事業の総仕上げと
して、CNIS を始めとする中国側の関係者、及び APF 研究会との意見交換を通じて、バランス
式と空気エンタルピ式の2種類の試験設備を対象とした空調能力試験マニュアルを完成させる
ことをメインテーマと設定した。
3.2. 活動概要
(1) 25 年度事業の進め方に関する日中間の確認
具体的な活動に入る前に、2013 年 11 月に中国合肥にて、CNIS、BUT(北京工業大学)、CRAA
(中国制冷空調工業会)等中国側関係者との初会合を行い、以下を確認した。
・APF 基準の導入に関しては、日本側の支援により現在は最終仕上げ段階にある。家庭用エ
15
アコンと業務用エアコンの試験マニュアルドラフト版を、12 月末を目途に作成する。
・日本には、これまで直接関係してきた専門家による最終化の支援をいただきたい。
このため、2014 年 2 月に開催予定の APF 研究会に専門家を派遣してほしい。
・2014 年度の事業方針については、次回 APF 会議の際に日中の関係者が集まり協議する。
(2) マニュアル完成のための APF 研究会試験マニュアル策定専門家検討会への参加
11 月に合肥にて確認した中国側の要請に基づき、
以下の 2 点を目的に APF 専門家検討会(2014
年 2 月北京市)に参加した。
・昨年 10 月に施行されたインバーターエアコンの APF 基準による能力評価を適正に行い得
るための空調能力試験マニュアル(バランス式、空気エンタルピ式)を完成に導くこと
・ASEAN 諸国やインドの S&L の取組み状況や今後の家庭用エアコンの発展方向性につい
て情報提供・意見交換を行い、今後の中国側の取組みや支援要望を把握すること
①.空調能力試験マニュアルの完成
今回作成した空調能力試験マニュアルは、既に存在する日本の試験マニュアルに対して、
日本・中国協働で実施した RRT を通じて得たノウハウを加えて、再編集したものである。
バランス式は広州市の広州威凱検査技術研究院(CVC)が、空気エンタルピ式は北京市の
中国家用電器研究院(CHEARI)がそれぞれドラフト版を作成、CRAA が監修する方式で
進めてきた。仕上げの段階で日本側の技術専門家が加わり、マニュアル中の図面・図表の不
備、説明不足等の技術的疑問から項目立てのアンバランス、テキスト文章と図表のズレ、誤
表記等編集上の改善に至るまで、仔細に亘る助言や意見交換を行い、加筆・修正事項を確認
した。
完成版については、上記打合せ内容、ならびに日本側で用意した前書文(本マニュアルを
日中協力事業の大きな成果として位置付ける)を反映させた修正版を CNIS にて最終確認
を行い、3 月中の印刷、関係機関への配布を目指すこととなった。また、今回作成された空
調能力試験マニュアルは、今後国家標準(GB21455)の実務マニュアルと位置づけ、試験機関
の登録登記条件の一つとして活用される予定である。
以上により、今年度事業の目標であり日中協力事業の締め括りでもある試験マニュアルの
完成には目途をつけることができた。今後は現実的に APF 基準を適正に運用していくため
に、同マニュアルに基づいた適切な測定方法を普及・浸透させていくことが肝要。特に、現
16
マニュアルは専門家を対象としたレベルとなっており、地方試験機関やメーカー(企業)試験
機関等全国規模で実施させていくためには、測定現場の誰でも理解できる単純明快、且つ詳
細な手順書に作り直していくことが必要である。
②.今後の中国側の取組みや支援要望の把握
まず日本側から、S&L 事業等に関する情報提供として、下記 2 テーマについて説明し意
見交換を実施。この中で、中国側の今後の計画や日本に対する支援要望について情報収集を
行った。
・日本・アセアン等、諸外国の S&L 制度構築の取り組み(ECCJ)
・中日空調機 S&L 事業の今後と空調機の将来(JEHC:(一社)日本エレクトロヒートセンター)
■日本・アセアン等、諸外国の S&L 制度構築の取り組み
・日本・インド・アセアンでの S&L 制度構築の取り組みを、ⅰ.日本のトップランナー
制度の歴史、ⅱ.アジアの省エネ性能評価制度構築の状況、ⅲ.インバーターエアコン
普及の政策、ⅳ.今後の課題に分けて紹介した。
・特に、インド・アセアンにおいて、一定速機、インバーター機共通の指標として、リ
アルワールドとの相関で望ましい CSPF の採用を薦めていることを情報提供。
・また、日本の S&L 運用面の工夫として、消費者志向とメーカーの製品能率向上を促
す仕組みとしての省エネラベルのタイムリーな改定(多段階評価基準の改定)につい
ても情報提供し、理解をいただいた。
・中国側では現在 PM2.5 問題への対応に苦慮しているため、北海道等の寒冷地における
ヒートポンプ式エアコンの普及状況に強い関心が示された。石炭暖房を代替できる地
中熱を利用した地域熱供給等のシステムの導入により解決に近づくため、日本の技術
保有企業にとっては大きなビジネスチャンスとなる可能性が高いと考えられる。
■中日空調機 S&L 事業の今後と空調機の将来
・更なる試験技術の向上と普及を図るため、中国国家試験所(CHEARI,CVC 等)、日本
の試験所(JATL:(一社)日本空調冷凍研究所)、中国地方試験所・メーカー試験所、と
の間での RRT の継続実施と試験設備の精度化研究事業を行うことを提案。
・また、中国の気候・生活に合致した評価指標の設定方法の共同研究、特に中国・イン
ド・東南アジア等の発展途上国では寝室向けに廉価で競争力が高い製品の提供が求め
られていることから、中国内の海南島等で次世代機を共同開発することも併せて提案。
・以上の提案に対しての中国側からの反応は、研究課題として重要であるが、事業予算
の問題など国内関係機関との調整も要するため回答は保留された。
17
3.3. 今後の展開(課題など含む)
中国における適正な S&L の推進にとって重要な基盤整備の一つともなる空調能力試験マニュ
アル完成以降の課題や今後の展開については、以下が考えられる。
①.空調能力試験マニュアルの普及浸透
まず、地方の試験機関や空調メーカーに本マニュアルを使用してもらい、同じ試験結果が
得られるかを検証する。次に、実践と検証から得られた計測ノウハウを織り込み改定して行
く。現実的には、昨年から各地方の試験機関による抜取検査の頻度が格段に増加しており、
適正な検査が行なわれ得るために、メーカーからも試験マニュアルの提供を求められている。
メーカーにとってのリスク回避のためにも、検証を速やかに進める必要がある。また、試験
マニュアルの作りの面では、先述の通り、中国各試験機関の現場サイドで誰でも理解・活用
できる平易な手順書に作り直すことも必要である。
試験能力の向上については、日本の JATL と北京市の CHEARI が連携して技術指導にあ
たることの可能性について期待感が示された。この分野は真にニーズがあると考えられ、コ
ンサルタント的な業務として中国側からの予算で対応することも考えられる。
なお、中国は、アメリカ、マレーシア等、諸外国との技術交流や意見交換も進めており、
今後は対象国を拡大してさらなるレベルアップを図って行きたいとの考え方がある。
一方、APF 基準採用の最終目的は、省エネ効率の高い製品を一般消費者に購入してもら
うことにある。測定試験を加速させることにより APF データの整理を急ぎ、これらデータ
をラベリング制度に反映させ、店頭での表示をはじめ TV 等での PR や展示会の開催等各種
普及促進イベントの実行を通じて、APF という言葉の理解浸透も含めて広くマーケットに
発信していくことが望まれる。
②.APF 研究会の活動
11月中国訪問時点では、従来から技術交流の範囲は限定しておらず、エアコン以外の他
製品にも広げて行きたいとの意思表示があり、具体的にヒートポンプ給湯器等の製品分野が
挙げられていたが、2月訪問時点では最終的にはそこまでの言及はなかった。むしろ、下記
③のような喫緊の課題を解決するためのヒートポンプ技術に高い関心が寄せられていた。
また、JEHCから、RRTの継続実施とAPF基準改善の中日共同事業を実施していくために、
従来のAPF研究会の構成員を踏襲する新たな研究会の立ち上げが提案されたが、中国側関
係機関での調整事項となった。
③.今後のインプリケーション
現在中国では、北京市、天津市、河北省を始めとして PM2.5 等による冬場の重度汚染
(AQI:Air Quality Index 大気汚染指数 301 以上)が拡大、深刻化している。APF 専門家検
討会の席上でも日本の高いヒートポンプ技術に興味が寄せられたところであるが、暖房強化
型のヒートポンプ式エアコンの開発加速により石炭暖房システムを置換することが考えら
18
れており、2014 年から 6 地域で改造プロジェクトを立ち上げるとの情報がある。本プロジ
ェクト等への日本からの参画は、空調業界やコンサルタント会社など日本企業への裨益や汚
染物質の越境緩和にも貢献するものと考えられる。
4.省エネシンポジウム (S&L 制度支援事業)~アジアにおける省エネ基準・ラベリン
グ政策の調和と国際協力の現状~)
4.1. 背景
現在各国では、機器の標準及びラベリングの設定、あるいは整備のための開発を実施してきて
いるが、制度の状況はエネルギーや法制度などそれぞれの事情により同一ではない。このような
状況下で、最終的な制度調和、具体的には、効率評価指標、評価基準、ラベリング制度の各国間
の差異の縮小、または統一に向けては、協力相手国との継続的な関係の構築・維持や国内外の同
種取組みや関係機関との情報共有、ネットワーク拡大がとりわけ重要となる。このため、国際省
エネシンポジウムを開催した。
4.2. 活動概要
・日程:2014 年 1 月 30 日(木)13 時 30 分~17 時 40 分
・開催場所:ベルサール汐留
・プログラム:別添資料参照
・参加者:129 名(事前登録 181 名)
・Q&Aセッション議事録:別添資料参照
・交流会:招聘講師・参加者間のネットワーク形成の場としてシンポ終了後に開催
Q&Aセッションの様子
シンポ会場風景
今回は、ASEAN 諸国からは、域内エネルギー諸問題に関しての ASEAN イニシアティブでもある
ASEAN エネルギーセンター局長、タイ、マレーシア、ラオスの政策担当、インドのエネルギー資
源研究所から、合わせて 5 人の講師を招請し、地域としての取組みや各国のエネルギー事情、省
エネ法制度の整備状況、特に S&L 制度構築状況等について、また、日本からは、当センター含め
19
3 人の講師から、二国間、多国間の協力活動の現況や今後の展開について情報提供ならびに Q&A
セッションが行われた。全体を通じて、①各国は機器の標準及びラベリングの設定を行い、或い
は開発を実施しているが、各国の状況は、法制度、運用上の課題、などそれぞれの事情を踏まえ
て同一ではない、②調和に向けては、まずこの“違い”をしっかり理解し進めなければならない、
ということを各国講師や S&L 事業推進に関係を持たれる来場者の方々と改めて認識・共有でき
る良い機会につながった。
4.3. 今後の展開(課題など含む)
公開での開催・参加募集であるため、事前登録に対して 71.3%の参加率で、かつテーマとは
直接の関係をお持ちでないと思われる方々も多数見受けられた。シンポの有効性を高めるために、
今後は、参加人数を絞り(例えば 100 名以下)、テーマの目的から直接の関係者にあたる機器メ
ーカー、ならびに関係団体・委員会に対して早い段階から周知を行い、こうした方々の参加比率
を高める。併せて、来場者参加型の運営に工夫していく。以上が可能であれば、事業推進上必要
となるステークホルダー間のネットワーク形成・拡大の環境についても、特に交流会として個別
に設定をしなくても、シンポジウムの中で醸成されるものと考える。
20
第二部
我が国から他国に普及することが有益な機器分野の省エネ普及促進制度に係
る考察
1. ASEAN
1.1. 現状把握
以下に、本事業に参加した ASEAN9か国における機器分野の省エネ普及促進策の現状について
記す。本事業において重点的に実施したエアコンの省エネ基準、省エネラベリング制度を中心に
取り上げている。記載する国の順番は、最初にエアコンの省エネ基準、省エネラベリング制度が
ある国のアルファベット順、次にない国のアルファベット順としている。
1.1.1. マレーシア
機器分野の省エネ普及促進策をマッピング形式で整理したものを図1に示す。Regulation(規
制)、Market Orient(市場誘導)、Information(情報)、Money(金銭)の4象限に分類している
(詳細は第一部参照、以降の国も同様)。
図1
マレーシア 機器分野の省エネ普及促進策マップ
Regulation
COA (Certificate
of Approval)
(Act Directly)
Regular Consultation,
Seminars, Comms Plan
MEPS, Fine
Other government
agencies
Labelling, Fine
[Present & Past Measures]
Consumers
Information
Consultation
Program
Money
Database
Education
Program
Incentice
Sales Tax &
Duty
Rebate (SAVE)
Import
(Act Indirectly)
Market Orient
Manufacturers
Retailers
[Future Measures]
Consumers
Manufacturers
Retailers
(Energy Commission 作成)
(1) 省エネ基準、省エネラベリング制度
エネルギー・グリーン技術・水省(MEGTW: Ministry of Energy, Green Technologies and Water、
KeTTHA: Kementerian Tenaga, Teknologi Hijau Dan Air)の所管により、省エネ基準、省エネラ
21
ベリング制度が導入されている。
① 省エネ基準
製品の MEPS(Minimum Energy Performance Standard、最低エネルギー消費効率)を定めて
いる。2013 年 5 月から義務化された。対象品目は以下である。
(MEPS 対象品目)エアコン、冷蔵庫、テレビ、扇風機、照明
*洗濯機、給湯器、炊飯器、電気ケトルが対象として検討されている。
② 省エネラベル
省エネ性能のレベルを星の数で表すラベル(以下「多段階ラベル」、図2)の製品への貼付
を義務付けている(強制)
。2013 年 5 月より、任意プログラム(図3左ラベル)から強制プロ
グラムに変わった。それに伴い、従来の多段階ラベルの5つ星製品であることを示す認証ラベ
ル(任意、図3右ラベル)は、廃止された。なお、施行後 1 年間(2014 年 5 月まで)は移行
期間のため、任意プログラムに基づいた貼付も認められている。ラベルは製造事業者・輸入事
業者が作成、貼付する。
(多段階ラベル対象品目)エアコン、冷蔵庫、テレビ、扇風機
図2
多段階ラベル
等級(5つ星が最高ランク)
品目名
モデル番号
等級を与えられた年*
年間消費電力量(kWh/y)
3つ星製品の平均と比較した省エネ割合(%)
テスト基準
承認番号*
*任意プログラム時のラベルから追加
図3 任意プログラムにおける多段階ラベル(左)
、認証ラベル(右)
③
エアコンの省エネ
基準、省エネラベル
冷房能力 25,000Btu/h
(約 7.3kW)までの壁掛け形・シングルスプリッ
ト形を対象としている。
省エネ基準の評価指標は、EER(Energy Efficiency
22
Ratio、単位:Btu/Wh)であり、インバータータイプは以下の式により求める加重 EER(Weighted
EER)を用いる。多段階ラベルの2つ星が MEPS 値に相当する。
加重 EER=(0.4×100% 負荷
EER)+ (0.6×50%負荷 EER)
表1に多段階ラベルの各等級基準の EER 値を示す。
表1 エアコン
多段階ラベルの等級基準
(単位:上段 Btu/Wh、下段 kW/kW)
冷房能力(CC)
★
★★
★★★
★★★★
★★★★★
9.00≦EER
≦9.55
9.56≦EER
≦10.36
10.37≦EER
≦11.15
11.16≦EER
≦11.93
EER ≧
11.94
2.63≦COP
≦2.79
2.8≦COP≦
3.03
3.04≦COP
≦3.26
3.27≦COP
≦3.49
COP≧3.5
7.5≦EER≦
8.02
8.03≦EER
≦8.93
8.94≦EER
≦9.82
9.83≦EER
≦10.70
EER ≧
10.71
2.19≦COP
≦2.35
2.36≦COP
≦2.61
2.62≦COP
≦2.87
2.88≦COP
≦3.13
COP≧3.14
CC<4.5kW
4.5kW≦
CC≦7.1kW
出典:2014 年政府資料
性能試験は、MS ISO 5151(2004)(Non-ducted air conditioners and heat pumps – Testing and
rating for performance)(ISO 5151(1994)に準拠)による。政府機関である SIRIM (マレーシ
ア工業標準研究所)および認証された機関が行う。
(エアコンの市場状況)
図4に、エアコンのタイプ別・冷房能力別の割合を示す。ノンインバータータイプが多いが、
近年インバータータイプが増加している。冷房能力は 4.5kW 以下が多い。多段階ラベルの5つ星、
4つ星製品が全体の 46%を占める。
図4 エアコン
16.74%
タイプ別・冷房能力別割合
9.07%
2.32% 0.04%
インバーター,
11%
インバーター
CC≦4.5kW
4.5kW<CC≦7.1kW
7.1kW<CC≦14.0kW
ノンインバーター
CC≦4.5kW
ノンインバー
ター, 89%
4.5kW<CC≦7.1kW
71.83%
出典:2014 年政府資料(2012 年調査時)
図5にノンインバータータイプの COP 分布、図6にインバータータイプの加重 COP 分布を示す。
23
図5 エアコン
COP 分布(ノンインバータータイプ、冷房能力 4.5kW 以下)
Non-inverter RAC(<=4500)
40%
35%
Market Share
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
2.49 2.5 2.55 2.6 2.65 2.7 2.75 2.8 2.85 2.9 2.95
EER(W/W)
3
3.05 3.1 3.15 3.2
出典:2014 年政府資料(2012 年調査時)
図6
エアコン
加重 COP 分布(インバータータイプ)
(冷房能力 4.5kW 以下(左)、冷房能力 4.5kW 超、7kW 以下(右)
)
Inverter RAC(4500<CC<=7000)
45%
40%
40%
35%
35%
30%
30%
Market Share
Market Share
Inverter RAC(<=4500)
45%
25%
20%
25%
20%
15%
15%
10%
10%
5%
5%
0%
0%
3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 4 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6
Weight EER(W/W)
3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 4 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7 4.8 4.9 5 5.1 5.2 5.3
Weight EER(W/W)
出典:2014 年政府資料(2012 年調査時)
(2) 製品省エネ性能リストの作成・公表
エネルギー委員会(Energy Commission)は、エアコン(壁掛け形・シングルスプリット形)、
冷蔵庫、テレビ、扇風機に関し、5つ星、4つ星(一部3つ星)製品の、ブランド、型番、多段
階ラベルの等級から成るリストを作成しウェブサイトで公開している(図7)
。PDF ファイルの
ため、検索機能はない。なお、エネルギー委員会は、2、3つ星製品を含めた製品データを保有
しているが、メーカーの了解が得られず現在のような公表状況になっている。
(サイトの URL)
http://www.st.gov.my/index.php/consumer/electricity/
efficient-use-of-electricity/energy-efficient-products.html
24
図7
省エネ性能リスト(エアコンの例)
出典:Energy Commission ウェブサイト
(3) 店舗における情報提供
① 省エネラベルの貼付状況等(2店舗における現地調査結果)
調査をした 2014 年2月は、任意プログラムから強制プログラムへの移行期間中のため、5
つ星製品のみ(一部4つ星製品)に貼付が行われていた。また、EU などのラベルが貼られて
いる製品もある。
(エアコン)
各メーカーの製品を3ランクに分類して、(メーカーによって異なるが)Deluxe, Standard,
Basic などの名称で陳列している。インバータータイプが高級機種である。それぞれのランクに
ついて1台陳列され、同じシリーズの 1、1.5、2、2.5 馬力の製品の価格が一緒に掲示されてい
る。同一シリーズの製品は、冷房能力が異なっても省エネ性能の程度が大きく異なることはない
が、多段階ラベルの等級が必ず同じとは限らない。つまり、たとえば、陳列製品が5つ星であっ
ても、陳列製品以外の能力の製品が5つ星ではない可能性もある。
冷房能力 1 馬力(約 2.8kW)のものが売れ筋。
能力別(型番別)の価格(陳列製品と異な
メーカーは、Panasonic、Mitsubishi, Hitachi,
る能力の省エネ性能はわからない)
。
Electrolux, Samsung など。窓形はない。
25
(テレビ)
(冷蔵庫)
画面サイズ 40 から 50 インチが売れ筋。
容量 550 から 600L 程度、2 ドアの製品が売
れ筋。メーカーは、Panasonic、Mitsubishi,
Hitachi, LG, Samsung など。
(扇風機)
省エネラベルの対象であるが、貼られた製品はなかった。
② 店員による情報提供(店員へのヒアリング結果)
マレーシアでは、所得の高い世帯など1日中エアコンを利用する世帯では、省エネに対する
意識も高く、インバーターエアコンへの関心も高まっており、店員も積極的に販売促進してい
る様子が伺える。一方で、所得の低い世帯、日中不在世帯など就寝時の 6~8 時間のみ使用す
る世帯には、価格の安いノンインバータータイプの需要が高い。販売店における研修制度はな
く、製品に関する情報はメーカーから入手している様子である。
(4) その他の普及策
①
販売税等の免除
5つ星ラベル製品の製造事業者、輸入事業者に対する販売税、輸入税の免除(2012 年 12 月
に終了)
。
②
購入に対する補助金
5つ星製品のエアコンを購入すると RM100(1RM=約 32 円)、冷蔵庫を購入すると RM200 割
引になる制度(既に終了)
。
26
1.1.2. フィリピン
機器分野の省エネ普及促進策をマッピング形式で整理したものを図8に示す。
図8 フィリピン
機器分野の省エネ普及促進策マップ
[Present &
[Future
Past
Measures] Measures]
REGULATION
Act Directly
M
M
INFORMATION
R
R
Labeling
(Comparative)
Database
R
M M
Reporting
Obligation
R
Retailers
standard
M
M
Sanctions /
Penalty
Display of Label
Obligation
M
Manufacturers
C
C
Consumers
MONEY
Labeling (Energy
M Performance Ranking)
M Labeling
(Energy Star)
Database on Ranking
C
C Information/Education
/Awareness
C
Website /Social Media
(www.wattmatters.org
.ph)
Act Indirectly
MARKET ORIENT
(DOE 作成)
(1) 省エネ基準、省エネラベリング制度
エネルギー省(DOE: Department of Energy)、通商産業省(DTI:Department of Trade and
Industry)の所管により、省エネ基準、省エネラベリング制度が導入されている。図9に各組織
の役割、関係を示す。
図9
省エネ基準・省エネラベリング制度に関わる組織の役割、関係
DOE
ERTLS
DTI
Industry
Organization
PAIA/ PLIA
BPS
SD/PCD
LATL
-ラベルの承認
-基準開発、公布
Reg’l/Prov’l Offices
CWRD
-市場モニタリング
-罰則適用
ERTLS: Energy Research and Testing Laboratory Services
LATL: Lighting and Appliances Testing Laboratory
BPS: Bureau of Product Standards(製品基準局)
出典:2014 年政府資料
27
① 省エネ基準
製品の MEPS を定めている。対象品目は以下である。
(MEPS 対象品目)エアコン、照明
*テレビが対象として検討されている。
基準の設定、改定は技術委員会で審議する。図 10 に策定プロセスを示す。
図 10 基準設定、改定プロセス
基準設定/既存基準改定
調査
技術委員会
小委員会
ワーキンググループ
回覧
コメント
YES
NO
最終案
承認
発効
(2014 年政府資料)
②
省エネラベル
製品のエネルギー効率などを示す省エネラベル“Energy Guide”(図 11 左)の製品への貼付
を義務付けている(強制)
。省エネ性能のレベルを星の数で表すラベル(以下「多段階ラベル」、
図 11 右)への改訂について、DOE の承認は既に終了し、BPS での検討が行われている段階である
(2014 年 2 月時)。ラベルは製品本体に貼付され、作成、貼付は製造事業者・輸入事業者が行う。
販売店はその確認義務があり、貼付されていない製品は販売することができない。
(省エネラベル対象品目)エアコン、冷蔵庫、照明、安定器
図 11 現行の省エネラベル(左)、改定予定の多段階ラベル(右)(エアコンの例)
冷房能力
消費電力
EER
MEPS
コスト計算式
28
③
エアコンの省エネ基準、省エネラベル
冷房能力 10kW 以下の窓形およびスプリット形のノンインバータータイプを対象としている。
省エネ基準の評価指標は EER(単位:kJ/Wh)であり、表2に示す値が MEPS 値である。
表2
エアコン
MEPS 値
*(
)内は COP(kW/kW 換算値)
冷房能力 CC
EER
CC<12,000 kJ/h(約 3.3kW)
9.1 kJ/Wh (約 2.53kW/kW)
CC≧12,000kJ/h(約 3.3kW)
8.6 kJ/Wh (約 2.39kW/kW)
性能試験は、PNS 240 (1998)(Non-ducted air conditioners and heat pumps – Testing and
rating for performance(ISO 5151(1994)に準拠)による。政府の公式な試験機関である LATL、
その他2か所の民間試験機関が行う。エアコンの試験料金は US$300~800 である。図 12 製品認
証プロセスに示すとおり、BPS は製造事業者の工場や輸入事業者の倉庫において無作為サンプリ
ングを行い確認している。試験報告書は 1 年間有効である。
図 12 製品認証プロセス
Factory
Assessment
& Product
Evaluation
DTI - BPS
Release of
product to
market
Manufacturer’s
Production line
Importer’s
Warehouse
or
Random Sampling
DOE - LATL
BPS – TC
Performance/Labeling
Safety Requirements
Requirements
Issuance of PS or
DTI – BPS
ICC License
Test Report Evaluation
出典:2014 年政府資料
(エアコンの市場状況)
図 13 にエアコンのタイプ別・冷房能力別の製品モデルの割合を示す。窓形が約6割を占める。
図 13 エアコン
タイプ別・冷房能力別製品モデル割合
スプリット形・
12,000kJ/h
(約3.3kW)以上,
370, 26%
スプリット形・
12,000kJ/h
(約3.3kW)未満,
162, 12%
窓形・
12,000kJ/h
(約3.3kW)未満,
507モデル, 36%
窓形・
12,000kJ/h
(約3.3kW)以上,
360, 26%
N=1,399
出典:DOE 製品情報サイトのデータより作成
29
図 14 に COP の分布を示す。
図 14 エアコン COP 分布
250
250
200
200
冷房能力 12,000kJ/h(約 3.3kW)未満
モ 150
デ
ル
数 100
モ 150
デ
ル
数 100
50
50
冷房能力 12,000kJ/h(約 3.3kW)以上
0
0
2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9
3
3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.7 3.8
COP(kW/kW)
2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9
N=669
冷房能力 12,000kJ/h(約 3.3kW)未満
3
3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.7 3.8
COP(kW/kW)
N=730
冷房能力 12,000kJ/h(約 3.3kW)以上
出典:DOE 製品情報サイトのデータより作成
(2) 製品省エネ性能リストの作成・公表
DOE は、エアコン(窓形)
、エアコン(スプリット形)
、CFL(Compact Fluorescent Lamps、コ
ンパクト蛍光ランプ)、LFL(Linear Fluorescent Lamps、直管蛍光ランプ)FCL (Circular
Fluorescent Lamps、環形蛍光ランプ)、安定器について製品の省エネ性能リストを作成しウェブ
サイトで公開している(図 15)
。PDF ファイルのため、検索機能はない。エアコンの場合の掲載
項目は、ブランド、型番、定格冷房能力(kJ/h)
、消費電力(W)
、EER(kJ/Wh)である。定格冷
房能力の大きい順に並べてある。
サイトの URL: http://www.doe.gov.ph/energy-efficiency/energy-labelling-efficiency-standards
図 15 省エネ性能リスト(エアコンの例)
出典:DOE ウェブサイト
30
(3) 店舗における情報提供
①
省エネラベルの貼付状況等(2店舗における現地調査結果)
(エアコン)
冷房能力 1~1.5 馬力(約 2.8~約 4.2kW)のものが多い。メーカ
省エネ性能の高さを示すメ
ーは、Panasonic、 Hitachi、 Samsung、Carrier、TCL、Gree、
ーカー作成のポップがつい
York など。
た製品もある。
(冷蔵庫)
容量は 7 から 10CF(約 200~280
リットル)程度。ノンインバータ
ータイプもある。メーカーは、
Panasonic、LG、Samsung、Condura、
省エネに配慮した使い方(左)
、適切な容量
選択(右)について書かれた製品もある。
Electrolux、Whirlpool。
(照明)左:CFC、中央:FCL、右:LFL
メーカーは、GE、Philips、Carlson、Omni、Orsam など。
(安定器)
31
②
店員による情報提供(店員へのヒアリング結果)
店員が顧客に対するアドバイザーの機能を果たしていることが伺える。たとえば、エアコンの
場合、能力やエネルギー効率、価格などを伝え、省エネの程度と価格から簡単な経済計算を示す
などを行っている。
(4) その他の普及策
①
ウェブサイトによる情報提供
ウェブサイト“WATTMATTER”(http://wattmatters.org.ph/)において、36 品目の製品リス
トを公開しており、各製品の消費電力(W)がわかるようになっている。また、ブランド、型番、
一日の使用時間、居住地域を入力することで、1 日の電気代を計算して示す“Consumption
Calculator”や、各製品の省エネのための工夫を示すメニューもある。
1.1.3. シンガポール
(1) 省エネ基準、省エネラベリング制度
環境水資源省(MEWR:Ministry of the Environment and Water Resources)、国家環境庁(NEA:
National Environmental Agency)の所管により、省エネ基準、省エネラベリング制度を導入。
①
省エネ基準
製品の MEPS を定めている。対象品目は以下である。技術調査、市場動向調査、製造事業者と
の協議を経て 2013 年に基準が強化された。認証は NEA が行う。
(MEPS 対象品目)エアコン、冷蔵庫
*洗濯乾燥機、照明が対象となる予定。
②
省エネラベル
省エネ性能のレベルを表す省エネラベル“Green Ticks”(以下「多段階ラベル」
、図 16)の製
品への貼付を義務づけている(強制)。ラベルは製造事業者・輸入事業者が作成・貼付し、販売
店はラベルが貼付された製品のみ陳列できる。違反した場合、罰金が科される。
(多段階ラベル対象品目)エアコン、冷蔵庫、洗濯乾燥機
*2014 年 4 月に TV が対象となる予定。
32
図 16 多段階ラベル
①等級(0 tick から 4 Ticks まで、4 Ticks が最高ランク)
②Excellent (4 Ticks), Very Good (3 Ticks), Good (2
Ticks), Fair (1 Tick), Low (0 Tick)
③エネルギー効率(例:COP(エアコン))
④能力・容量
⑤タイプ
⑥ブランド
⑦型番
⑧試験基準
⑨注書:Actual energy consumption may vary from test
results.
③
⑩登録番号
エアコンの省エネ基準、省エネラベル
カセット形・窓形、シングルスプリット形(インバーター、ノンインバーター)
、マルチスプリ
ット形(インバーター、ノンインバーター)を対象としている。省エネ基準の評価指標は COP(単
位:W/W)であり、インバータータイプは以下の式により求める加重 COP(Weighted COP)も用
いる。
加重 COP=(0.4×100% 負荷 COP)+ (0.6×50%負荷 COP)
表3に MEPS 値を、表4に多段階ラベルの各等級基準の COP 値を示す。
表3
タイプ
エアコン
冷房能力(CC)
カセット形、窓形
8.8 kW まで
シングルスプリット
CC < 10 kW
(インバーター)
MEPS 値
COP(単位:W/W)
COP100% 2.90
Weighted COP 3.34
and COP100% 3.06
10 kW ≦ CC
Weighted COP 2.78
シングルスプリット
CC < 10 kW
COP100% 3.34
(ノンインバーター)
10 kW ≦ CC
COP100% 2.78
マルチスプリット
CC < 10 kW
(インバーター)
Weighted COP 3.34
and COP100% 3.06
10 kW ≦ CC
Weighted COP 2.64
マルチスプリット
CC < 10 kW
COP100% 3.34
(ノンインバーター)
10 kW ≦ CC
COP100% 2.64
33
表4
タイプ
エアコン
冷房能力(CC)
カセット形、窓形
シングルスプリット
(インバーター)

8.8 kW まで
NA
CC < 10 kW
CC < 10 kW
NA
2.78 ≦
Weighted COP
< 2.92
NA
10 kW ≦ CC
NA
CC < 10 kW
NA
2.64≦
Weighted COP
< 2.92
NA
2.64≦
Weighted COP
< 2.92
10 kW ≦ CC
シングルスプリット
(ノンインバーター)
マルチスプリット
(インバーター)
10 kW ≦ CC
CC < 10 kW
マルチスプリット
(ノンインバーター)
多段階ラベルの等級基準
10 kW ≦ CC
COP(単位:kW/kW)


2.90 ≦
3.2≦COP100%
COP100%<3.2
NA
3.06≦COP100%
2.92 ≦
3.34≦
Weighted
Weighted COP
OP<3.34
3.34≦COP100%
NA
2.78 ≦
3.2≦COP100%
COP100%<3.2
NA
3.06≦COP100%
2.92≦
3.34≦
Weighted COP
Weighted COP
<3.34
NA
2.92 ≦
COP100% < 3.34
3.34≦COP100%

NA
3.34≦COP100%
3.76≦
Weighted COP
NA
3.34≦COP100%
3.76≦
Weighted COP
NA
性能試験は、ISO5151(2010)(Non-ducted air conditioners and heat pumps – Testing and
rating for performance) 、 ISO15042(2011)(Multiple split-system air-conditioners and
air-to-air heat pumps - Testing and rating for performance) による。
(エアコンの市場状況)
図 17 にエアコンのタイプ別製品モデルの割合、図 18 に販売数の割合を示す。製品モデル数で
はシングルスプリット形が6割以上と最も多いが、販売数ではマルチスプリット形が最も多い。
図 17 エアコン タイプ別製品モデル割合
カセット形
1%
シングルスプリット
図 18 エアコン タイプ別販売数割合
窓形
3%
8%
マルチスプリット
1%
ノンインバーター
12%
シングルスプリット
カセット形、
窓形, 7%
マルチスプリット
31%
シングルスプ
リット, 23%
マルチスプリッ
ト, 70%
インバーター
88%
57%
N=323
出典:(図 17)NEA 製品情報サイトのデータより作成、(図 18)2014 年政府資料
図 19 に各等級の製品モデル数、図 20 に、2008 年から 2012 年第2四半期までの各等級の販売
割合の推移を示す。図 20 より MEPS 導入により省エネ性能の高い製品が増えていることがわかる。
34
図 19 エアコン 等級別製品モデル数
図 20 エアコン 等級別販売割合推移
250
0
200
モ 150
デ
ル
数 100
232
インバーター
25
50
0
ノンインバーター
0
1-Tick
14
6
2-Ticks
46
3-Ticks
4-Ticks
N=323
出典:NEA 製品情報サイトのデータより作成
出典:2014 年政府資料
表5に、各等級のブランド別製品モデル数を示す。
表5 エアコン 各等級ブランド別製品モデル数
ブランド
Daikin
Samsung
Panasonic
LG
York
Fujitsu
Mitsubishi Heavy Industries
Mitsubishi Electric
Toshiba
EuropAce
Carrier
Midea
Saijo Denki
Hitachi
General
Sanyo
Sharp
FEDDERS
Electrolux
KIMURA
Trane
GREE
Fujiaire
Trends
合計
1-Tick
2-Ticks
3-Ticks
2
3
1
20
71
2
4
7
1
0
4-Ticks
28
36
25
22
13
13
15
16
9
8
2
4
8
8
4
3
1
5
4
1
3
4
3
3
2
1
8
1
7
7
11
7
4
2
5
2
7
1
232
合計
38
37
34
33
31
20
19
18
14
11
9
8
8
8
7
6
4
4
4
3
3
2
1
1
323
出典:NEA 製品情報サイトのデータより作成
図 21 から図 24 にタイプ別の COP 分布、加重 COP を示す。
35
図 21
カセット形・窓形 COP 分布
図 22
ノンインバータータイプ COP 分布
N=12
N=27
図 23 シングルスプリット・インバータータイプ COP 分布(左)
、加重 COP 分布(右)
N=183
N=183
図 24 マルチスプリット・インバータータイプ COP 分布(左)
、加重 COP 分布(右)
N=101
N=101
図 19~図 22 出典:NEA 製品情報サイトのデータより作成
(2) 製品省エネ性能リストの作成・公表
NEA は、エアコン(インバータータイプ、ノンインバータータイプ)
、冷蔵庫、洗濯乾燥機に
関する製品データベースを作成し、ウェブサイトで公開している(図 25)。
エアコンの場合の掲載項目は、ブランド、型番、タイプ(カセット形、窓形、シングルスプリ
ット、マルチスプリット)
、省エネ等級(Green Ticks)、冷房能力(kW)
、COP、50%負荷時の COP
(インバータータイプのみ)、消費電力量(kWh)、50%負荷時の消費電力量(インバータータイ
36
プのみ)
、電気代(S$)である。消費電力量と電気代は、入力された1日の使用時間、年数、電気
代単価に基づき計算される(初期値は、1 日 8 時間、1 年間利用、電気代 S$0.2745/kWh)
。
ブランド、タイプ、省エネ等級(Green Ticks)による絞込み機能もあり、また、すべての項
目で、並べ替え(COP の小さい順など)ができる。データのエクセルファイルへの出力も可能で
ある。
(サイトの URL)
https://app.mels.nea.gov.sg/Pages/Search/PublicSearchProduct.aspx?param=goods&type=p
図 25 省エネ性能リスト(エアコンの例)
出典:NEA ウェブサイト
(3) 店舗における情報提供
①
省エネラベルの貼付状況等(3店舗における現地調査結果)
(エアコン)
省エネラベルのほかに、販売店が作成した年間電気
代(1 日 8 時間運転)の表示がある製品もある。売
れ筋は、スプリット形、インバータータイプ、
9,000Btu/h(約 2.6kW)
、Panasonic、Mitsubishi な
ど。消費者の関心は、価格、エネルギー効率の順に
高く、省エネラベルについてよく知っている。
(冷蔵庫)
37
(衣類乾燥機)
販売店が作成した年間電気代の表示がある製品もある。
(照明)
電力表示
②
ランプの電力を表示する器具による
(W)
情報提供。
店員による情報提供(店員へのヒアリング結果)
省エネに関して内部研修、内部試験を受け、認定者だけが客に省エネに関する説明する体制に
なっており、知識がある店員が客に対するアドバイザーの機能を果たしていることが伺える。
適切なサイズとエネルギー効率、省エネラベルについての説明や、電気代を計算して示すなど
を行っている。
1.1.4. タイ
機器分野の省エネ普及促進策をマッピング形式で整理したものを図 26 に示す。
図 26 タイ
HEPS
機器分野の省エネ普及促進策マップ
Regulation
(Act Directly)
[Present & Past Measures]
Label display (information /mark)
MEPS
harmonization
Energy Blds.Code
Information
Money
Label no. 5
Thai Green label
Tax Rebate
Promotional campaign
EE housing label
Education Program
Manufacturers
Retailers
training
Energy lab.network
Consumers
[Future Measures]
Subsidy : gov. blds
Consumers
Subsidy: SME investment
Manufacturers
Application No.5
Retailers
(Act Indirectly)
Market Orient
(DEDE 作成)
38
(1) 省エネ基準、省エネラベリング制度
エネルギー省(MOE:Ministry of Energy)の代替エネルギー開発・効率化局(DEDE:Department
of Alternative Energy Development and Efficiency)、タイ発電公社(EGAT:Electricity
Generating Authority of Thailand)および 工業省(MOI:Ministry of Industry)の Thai
Industrial Standards Institute(TISI)所管により、省エネ基準、省エネラベリング制度が導
入されている。
① 省エネ基準
製品の省エネ基準として、強制基準である MEPS(以下「強制 MEPS」
)、任意基準である MEPS(以
下「任意 MEPS」
)を定めている。基準は、最初の数年は任意 MEPS として導入し、その後状況を
考慮して強制 MEPS に移行するものがある。また、より省エネ性能の高い機器を示す基準である
HEPS(High Energy Performance Standard)もある。
MEPS 値は、市場にある製品のエネルギー効率の低い方から3%、HEPS 値は高い方から 20%を
基準としている(図 27)
。強制 MEPS の対象品目は、エアコン、冷蔵庫、任意 MEPS の対象品目は、
照明、三相モーター、LPG ストーブ、断熱材、ディーゼルエンジン、HEPS の対象品目は、エアコン、
冷蔵庫、扇風機、炊飯器、給湯器、電気ポット、チラー、ガラスとなっている。
図 27
MEPS、HEPS の考え方
出典:政府資料
② 省エネラベル
強制 MEPS の認証ラベル(図 28 左)、任意 MEPS の認証ラベル(図 28 右)
、省エネ性能のレベル
を示すラベル(以下「多段階ラベル」)
(図 29)がある。多段階ラベルは、EGAT が行うプログラ
ムで家電製品を対象とした任意のプログラムである。ほかに、DEDE による電気製品以外の家庭
39
用機器、産業用機器を対象とした、省エネ性能が高い機器を認証するラベル(以下「DEDE 認証
ラベル」
、図 30)もある(任意プログラム)
。
・多段階ラベルの対象品目は、エアコン、冷蔵庫、照明、安定器、扇風機、炊飯器、待機時電力
(テレビ、コンピューターモニタ)
、電気ポット、給湯器、アイロン、換気扇用ファン、洗濯機
・DEDE 認証ラベルの対象品目は、LPG ストーブ、可変速ドライブ、断熱材、ガラス、ガソリンエ
ンジン、ディーゼルエンジン、三相モーター
図 28 強制 EPS の認証ラベル(左)
、任意 MEPS の認証ラベル(右)
図 29 多段階ラベル(家電製品向け)
表示項目
等級(Level5: Excellence、Level4: Good、
Level3:Medium、Level2: Fair、
Level1: Poor)
年間消費電力量(kWh/y)
コスト(Baht/y)
EER(Btu/Wh)
ブランド、型番
図 30
DEDE 認証ラベル(家電製品以外の家庭用機器、産業用機器向け)
レベル5以外のラベルはない
③
エアコンの省エネ基準、省エネラベル
窓形、スプリット形を対象としている。省エネ基準の評価指標は EER(単位:Btu/Wh)であ
る。表6に MEPS 値および HEPS 値、表7に多段階ラベルの各等級基準の EER 値を示す。多段階
ラベルの等級基準は、市場の状況に合わせて3から4年ごとに見直しをしている。
40
表6 エアコン
冷房能力 CC
MEPS 値、HEPS 値
単位
MEPS 値 EER
HEPS 値 EER(2009 年)
Btu/Wh
9.6
11.0 – 14.0
kW/kW 換算
2.82
3.22 – 4.1
8kW <CC
Btu/Wh
8.6
11.0 – 14.0
≦ 12kW
kW/kW 換算
2.53
3.22 – 4.1
CC ≦ 8kW
出典:2014 年政府資料
表7 エアコン
冷房能力 CC
多段階ラベルの等級基準(2011 年 12 月)
単位
Level3
Level4
Level5
Btu/Wh
10.6
11.0
11.6
kW/kW 換算
3.11
3.22
3.40
8kW <CC
Btu/Wh
9.6
10.6
11.0
≦ 12kW
kW/kW 換算
2.81
3.11
3.22
CC ≦ 8kW
出典:2014 年政府資料
(エアコンの市場状況)
図 31 にタイのエアコンの国内販売数と、それに占める省エネラベルの Level5製
品の販売数を示す。2012 年は全体の 74%を Level5製品が占める。
図 31 エアコン
販売台数
国内販売数の推移
Level 5 製品の販売台数
3,000
(
販 2,500
売
台 2,000
数
1,500
単
位 1,000
千
台 500
2,410
2,595
2,320
2,046
1,940
1,911
1,568
1,312
)
0
2009
2010
2011
2012
年
出典:2014 年政府資料
製品は、壁掛け形・スプリット形が多く、能力は 3~4kW、Mitsubishi、Samsung、Daikin
製などがある。インバータータイプの価格は、ノンインバータータイプに比べて約
30%高い。消費者は、販売店のチラシ、店舗での表示、店員から製品情報を得ている。
インバータータイプの割合は、2007 年の約5%に比較して 2012 年は約 20%と増加し
41
ているが、その需要は急速に拡大しているとは言えない状況である。知見や情報の不
足、価格の高さなどが要因にある。
(2) 製品省エネ性能リストの作成・公表
タイでは製品データは性能試験機関が保有しているものの、一般には公表していない。
(3) その他の普及策
① キャンペーン
消費者に対する Level5製品購入への働きかけ
② 学校教育
③ 政府調達
政府の施設ではエアコンの購入時は、Level5製品とすることを規定
④ 減税
高効率機器への更新、投資をした事業者に対し、法人税 25%の減税
⑤ 補助金
高効率機器への更新、投資をした中小事業者に対し、30%補助。また、高効率機器
への更新をした政府施設に対する補助。
1.1.5. ベトナム
(1) 省エネ基準、省エネラベリング制度
商工省(MOIT: Ministry of Industry and Trade)
、科学技術省(MOST: Ministry of Science and
42
Technology)、標準・計量・品質総局(Directorate for Standards, Metrology And Quality –
STAMEQ)所管により、省エネ基準、省エネラベリング制度が導入されている。
1) 省エネ基準
製品の MEPS を定めており、消費電力 60W 超の白熱電球については義務化された模様
である。MEPS の対象品目は以下のとおりである。
(MEPS 対象品目(家電製品))
エアコン、冷蔵庫、扇風機、テレビ、洗濯機、炊飯器、照明
2) 省エネラベル
省エネ性能のレベルを星の数で表す多段階ラベル(図 32 左)
、高効率レベルを達成し
ていること示す認証ラベル(図 32 右)がある。ラベルの貼付は、既に義務化された
模様である。
図 32 多段階ラベル(左)
、認証ラベル(右)
(2) 製品省エネ性能リストの作成・公表
MOIT は、エアコン、扇風機、洗濯機について、多段階ラベルの認定を受けた製品リストを
ウェブサイトで公開している(図 33)。エアコンの場合の掲載項目は、製造事業者名、製品名、
型番、冷房能力、エネルギー効率、等級レベル、平均価格、認証番号などである。エネルギー
効率の指標は、ノンインバータータイプは COP、インターバータイプは CSPF(Cooling Seasonal
Performance Factor、冷房期間エネルギー消費効率)である。2014 年 3 月現在登録されてい
る製品(56 製品)のほとんどが DAIKIN INDUSTRY THAILAND 製である。 品目、等級レベル、
価格、製造事業者などによる絞込み機能もある。
(サイトの URL)
http://nhannangluong.com/products
43
図 33 省エネ性能リスト(エアコンの例)
出典:MOIT ウェブサイト
1.1.6. カンボジア
カンボジア政府が検討・計画している機器分野の省エネ普及促進策をマッピング形式で整理し
たものを図 34 に示す。
図 34 カンボジア 機器分野の省エネ普及促進策(計画)マップ
Regulation
Reporting Obligation
Consumers
Fine
Manufacturers
Retailers
Information
Ranking
Catalogue
Procurement
Order
Awarding
Money
Labeling
(Comparative)
Tax Reduction
Labeling
(Energy Star)
Database
Education
Awarding
Website for Estimation
of Replacement
Market Orient
(MME 作成)
44
(1) 省エネ基準、省エネラベリング制度
現在、省エネ基準、省エネラベリング制度はない。製品の輸入品の約 50%はタイからのため、
シェムリアップ州において、エアコン、冷蔵庫、扇風機を対象に、タイの多段階ラベルを
クメール語に翻訳したラベル(図 35)を製品に貼付するパイロットプロジェクトが行われ
た。
図 35 タイの多段階ラベルを基にしたクメール語のラベル
1.7. インドネシア
インドネシア政府が検討・計画(一部実施)している 機器分野の省エネ普及促進策をマッピ
ング形式で整理したものを図 36 に示す。
図 36 インドネシア
機器分野の省エネ普及促進策(計画)マップ
Regulation
Label(CFL)
[Present & Past Measures]
(Act Directly)
MEPS
HEPS
Label(AC, Fan, etc.)
Consumers
Manufacturers
Reporting
Obligation
Information
Procurement
Order
Advertisement
Retailers
Awarding
Seminar, etc.
Website
Money
Subsidy
[Future Measures]
Rebate
Database
Consumers
Manufacturers
Retailers
Competition
EE Ranking
Catalogue
(Act Indirectly)
Market Orient
(MEMR 資料より作成)
(1) 省エネ基準、省エネラベリング制度
45
エネルギー鉱物資源省(MEMR:Ministry of Energy and Mineral Resources)所管により、省エ
ネラベリング制度が導入されている。
1) 省エネ基準
エアコン、三相モーターに関する基準(MEPS)が 2015 年までに施行される予定である。
2) 省エネラベル
省エネ性能のレベルを示すラベル(以下「多段階ラベル」、図 37)の製品への貼付を製造事
業者・輸入事業者に対して義務付けている。対象品目は以下である。
(多段階ラベル対象品目)
CFL(ただし電球色は対象外)
*エアコン、冷蔵庫、扇風機、炊飯器、安定器など他の品目についても検討され
ている。
図 37 多段階ラベル
表示項目
等級(1-star~4-star、4-star
が最高ランク)
エネルギー効率
型番
④
エアコンの省エネ基準、省エネラベル
エアコンの省エネ基準(強制)
、多段階ラベル(任意)について、現在施行の準備が行われて
いる。予定されている省エネ基準の評価指標は EER(単位:Btu/Wh)である。表8に、予定され
ている多段階ラベルの各等級の EER 値を示す。
表8
エアコン
多段階ラベルの等級基準
(単位:上段 Btu/Wh、下段 kW/kW 換算)
タイプ
インバーター
★
★★
★★★
9.01≦EER
9.96≦EER
11.40≦EER
< 9.96
<11.40
<12.83
46
★★★★
12.83≦EER
ノンインバー
ター
2.64≦COP
< 2.92
2.92≦COP
<3.34
3.34≦COP
<3.76
8.53≦EER
9.01≦EER
9.96≦EER
< 9.01
<9.96
<10.41
2.50 ≦COP
< 2.64
2.64≦COP
<2.92
2.92≦COP
<3.05
3.76≦COP
10.41≦EER
3.05≦COP
出典:2014 年政府資料
多段階ラベルは、製造事業者・輸入事業者がパッケージの前面または背面または側面、
製品の前面またははっきりと見える場所に貼付する(予定)。
(エアコンの市場状況)
製品は、壁掛け形・スプリット形が多く、能力は 3kW 以下、Sharp、LG、Panasonic
製が多い。インバータータイプとノンインバータータイプの価格差は US$150 程度。
消費者は、販売店のチラシ、店舗での表示、店員から製品情報を得ている。
(2) 店舗における情報提供
① 省エネラベルの貼付状況(1店舗における現地調査結果)
(CFL(昼白色))
(3) その他の普及策
① マスメディアによるキャンペーン(2012 年~)
② 展示会(INDONESIA EBTKE CONEX 2013 Conference & Exhibition)
省エネ、再生可能エネルギーに関する展示会(2012 年~年 1 回)
③ ウェブサイト “Energy Efficiency and Conservation Clearing House Indonesia:
EEECCHI”による情報提供(2011 年~)
④ テレビコマーシャル(2013 年に 2 週間)*
CFL の S&L に関する CM
⑤ 消費者教育
47
短期講座、
“Energy SWITCH”(2011 年~)
、女性・学生・小売事業者対象の教育*
⑥表彰制度
ジャカルタ、バンテン州、西ジャワ地域の学校対象(2012 年~)
その他、消費者に対する割引*、製造事業者に対する税制優遇*、政府調達*などついて検討
中である。
*:UNDP(国連開発計画)による BRESL(The Barrier Removal to the Cost-Effective Development and Implementation
of Energy Efficiency Standards and Labeling)プロジェクトにて実施・計画
1.1.8. ラオス
ラオス政府が計画・検討(一部実施)している機器分野の省エネ普及促進策をマッピング形式
で整理したものを図 38 に示す。
図 38 ラオス
機器分野の省エネ普及促進策(計画)マップ
(MEM 作成)
(1) 省エネ基準、省エネラベリング制度
現在、省エネ基準、省エネラベリング制度はない。エアコンに関しては、タイからの輸入が
80%以上を占めるため、タイの多段階ラベルを参考に知見を得ている段階である。
(エアコンの市場状況)
製品は、壁掛け形・スプリット形、窓形、カセット形、タワー形があるが、スプリッ
ト形の割合が増えつつある。冷房能力は 3kW 以下が多く、Mitsubishi、Hitachi、Saijo
DENKI、Daikin、Trane、York、Gree、Samsung、LG などの製品がある。消費者は、メー
48
カーのカタログなどから製品情報を得ている。
1.1.9. ミャンマー
ミャンマー政府が検討・計画している機器分野の省エネ普及促進策をマッピング形式で整理し
たものを図 39 に示す。
図 39 ミャンマー 機器分野の省エネ普及促進策(計画)マップ
Consumers
Regulation
standard
Manufactures
Obligation
Information
education
Retailers
Money
Labeling
Subsidy
education
Market Orient
(MOI 作成)
(1) 省エネ基準、省エネラベリング制度
現在、省エネ基準、省エネラベリング制度はない。科学技術開発法(Science and Technology
Development Law)にて、ミャンマー科学技術研究局(MSTRD:Myanmar Scientific and
Technological Research Department)が機器などの規格化を行うことと明記されている。
1.2.
分析・提言
前節では、ASEAN 諸国の機器分野における省エネ普及促進の取り組みの現状をまとめた。これ
らの結果から、
「省エネ基準と省エネラベリング制度」「省エネ性能リストの作成・公表」
「店舗
における情報提供」の各分野から1つずつ ASEAN における現段階のベストプラクティスを選出し、
日本がこれまで行ってきたこれら分野における取り組みと照らし合わせて、ASEAN 諸国において
機器分野の省エネ普及をさらに効果的に進める取り組みについて提言する。なおこれら取組みの
効果の程度については、その国の経済状況、社会環境などによって影響されるため、ここで整理
された取組みについては適切な環境下で実行しなければ効果は限定的となってしまう可能性が
あることに留意が必要である。
49
1.2.1. 省エネ基準と省エネラベリング制度
「省エネ基準と省エネラベリング制度」に関する現段階の ASEAN におけるベストプラクティス
には、タイの MEPS 基準および HEPS 基準の運用が挙げられる。タイでは MEPS で効率の低い製品
を排除し、HEPS で高効率な製品の市場投入を促すという方法がとられており、高効率な市場に
発展させるという日本におけるトップランナー制度と同様の意図を有している。ただしトップラ
ンナー制度が効果的に機能する条件等については様々な分析が行われており、現時点で ASEAN
諸国においてトップランナー制度そのものが有効に機能するかどうかについては別途検討が必
要と考えられる。少なくとも現在 MEPS が運用されている国においては、多段階ラベルや HEPS
などを利用することで、高効率市場への発展を促すことがまずは現実的な選択肢と考えられる。
また、タイにおいては下表に示すように、多段階ラベル基準の見直しが行われている。これは、
消費者が高い等級の製品を選べば、その時の市場において効率の高い製品を選ぶことにつながる
という意味で重要なポイントである。
表
タイのエアコンに対する多段階ラベル基準の見直し
Cooling Capacity
Energy Efficiency Ratio (EER)
2006
No.3
≤ 8,000 W
(≤ 27,926 Btu/hr)
>8000-12,000 W
(>27,296 - 40,944 Btu/hr)
No.4
Dec,2011
No.5
No.3
No.4
No.5
9.6
10.6
≥11.0
10.6
11.0
≥11.6
9.6
10.6
≥11.0
9.6
10.6
≥11.0
日本においては、多段階ラベルの等級をどのように設定するかについて細かな規定が定められ
ており、毎年定期的に経済産業省が開催する委員会にて検討が行われている。規定に則った検討
の結果に基づきラベルの等級基準が見直された場合には、下図に示すように等級ごとの製品の分
布が変化し、等級の高い製品の優位度が確保される。
50
H22年10月時点データ
トップランナー基準
多段階評価
達成率
★★★★★ 109%以上
★★★★
100%以上109%未満
★★★
90%以上100%未満
★★
80%以上90%未満
★
80%未満
基準達成モデルの割合
図
H22年10月時点データ (★基準見直し後)
トップランナー基準
登録
モデル数
多段階評価
達成率
モデル数
比率
★★★★★ 121%以上
19
5.8%
★★★★
114%以上121%未満
14
4.2%
★★★
107%以上114%未満
45
13.6%
★★
100%以上107%未満
239
72.4%
★
100%未満
13
3.9%
基準達成モデルの割合
96.0%
登録
モデル数
モデル数
比率
73
22.1%
244
73.9%
3
0.9%
9
2.7%
1
0.3%
96.0%
日本におけるエアコンの多段階評価基準の変更前後の製品分布の例
このように日本では多段階評価ごとのモデル数の年次変化に着目し、継続的に市場の高効率化
が促進されるように働きかけをしている。この状況が日本において実行できている背景には、次
項以降に触れる、機器の省エネ性能リストの作成とそれに基づく店舗での情報提供が密接に関連
していることに留意が必要である。
1.2.2. 省エネ性能リストの作成・公表
「省エネ性能リストの作成・公表」に関する現段階の ASEAN におけるベストプラクティスには、
シンガポールの製品データベース運用及びウェブサイト公開が挙げられる。シンガポールでは対
象製品については販売開始前に当該データベースに登録することが製造事業者等に義務付けら
れており、市場を反映した適切なデータベースが運用されていると考えられる。また登録データ
はオンラインにより一般公開されており、誰でも製品検索やエクセル形式によるダウンロードが
可能である。このようなシステムは省エネ型製品を選択するためのツールとして有用であり、消
費者あるいは販売事業者に対して活用を促すことで省エネ型製品が普及しやすい環境を作るこ
とが期待できる。
日本においては、消費者への情報提供の観点から 1997 年に「省エネ性能カタログ」が作成さ
れた。当時は製造事業者が作成している製品カタログを収集し、その中から省エネ性能等の情報
を整理してランキング化するというものであった。この機器の省エネ性能の公開およびランキン
グ化という取り組みは、その後「省エネ型製品情報サイト」というデータベースの作成につなが
った。このデータベースには製造事業者等が直接入力した省エネ法に基づく性能等の最新の製品
情報が蓄積されており、オンラインにより一般公開されている。
51
図
日本における省エネ製品を普及させるための施策の展開状況
この省エネ型製品情報サイトのデータベースはさらに様々な場面で活用されている。例えば、
「しんきゅうさん」というウェブサイトでは、省エネ型製品情報サイトに登録されている情報を
利用し、今使用している機種と販売されている機種を比較して、買い替える場合にどれくらいエ
ネルギーを削減できるか計算することができる機能を提供している。これは省エネ型製品情報サ
イトのデータベースにおいて、最新機器の情報に加えて過去の機器性能も整理されているために
可能となっている。
シンガポールのように適切なデータベースが構築されている場合には、日本の「しんきゅうさ
ん」のような新旧モデルの省エネ性能を比較し買い替えを促進するツールに発展させることも可
能であり、省エネ型機器を普及しやすい市場づくりの発展に大きく影響を与えると考えられる。
1.2.3. 店舗における情報提供
店舗における情報提供に関する現段階の ASEAN におけるベストプラクティスには、フィリピン
の販売店における取り組みが挙げられる。フィリピンの販売店には、対象製品に省エネラベルが
貼付されていることを確認し、違反を発見した場合には政府に報告することが義務付けられてい
る。省エネラベルに対する意識も高く、製造事業者が貼付した省エネラベルの付いた製品を店頭
で展示している。製造事業者が作成した省エネ性能の高さを示すポップや、販売店が作成した家
電製品の賢い使い方のポップなども表示されており、消費者が省エネに関する情報を目にする機
会が多く提供されている。
図
店舗における省エネラベルの貼付状況と省エネ性能に関する各種ポップ
52
日本の店舗における情報提供で特徴的なことは、多段階ラベルの貼付が店舗の努力義務になっ
ていることである。多段階ラベルのデータは国が運営するデータベースに集積されており、販売
店が最新の基準に基づいていつでもラベルを作成することができるように設計されている。すな
わち、これにより市場の変化に応じて多段階ラベル基準を適切に変更することができ、既に販売
が開始されてしまっている製品のラベルも販売店で変更することが可能である。なお、ASEAN 諸
国においては、製造事業者にラベルの貼付を義務付けていることが多く、ラベルを変更するため
には出荷段階での対応が必要となり、多段階ラベル基準の変更に柔軟に対応することが難しい仕
組みになっていると考えられる。
図
日本の店舗におけるラベル表示の例
その他特筆すべき点は店員の育成である。フィリピンの販売店の店員はエネルギー効率を含め
た製品の性能について良く理解していることから、顧客に対するアドバイザーの機能を果たして
いると考えられる。エアコンを顧客に勧める場合には、要求される容量(部屋の広さ、人数)か
ら始まって、勧めるブランド、エネルギー効率の話をし、さらに価格を伝える。省エネルギーの
程度と製品価格の兼合いでどれを選ぶかについては、簡単な経済計算を示して顧客の決断を助け
ている。この製品内容に関する店員の理解度の高さは、製造事業者が開催する製品に関するセミ
ナーに店員が参加しているためであり、そのセミナーでは製品の省エネ性能等についても説明さ
れるとのことである。
販売員の行動は、消費者の購買行動に影響を与えやすい。特に製品の機能や性能などに対する
細かな情報を自分自身で認識し処理することが難しい場合には、販売員のお勧め製品を選択する
などの行動が起きやすくなる。そのため、販売員の教育は非常に重要なポイントである。
我が国では店舗で正確な省エネ情報が提供される仕組みを作るために、販売事業者へ多段階評
価ラベルの貼付を努力義務にするとともに、その初期段階においては販売店向けの表彰制度など
を構築した。このような仕組みによって、日本では販売店によるラベル貼付と店員の省エネ知識
向上が大きく促進された。
53
1.2.4. まとめと課題
日本においては製造事業者(及び輸入事業者)、販売事業者、消費者の3者を、省エネ機器を
普及させるための市場におけるステークホルダーと位置づけ、3者の関係が有機的につながり、
より一層の効果をもたらすように、様々な施策が打たれてきた。
製造事業者
(輸入事業者)
促進制度:
 エネルギー消費効率基準
 省エネ機器表彰制度
省エネ型機器の
開発・製造
小売事業者
省エネ型機器および
製品情報の流通
省エネ型機器の
販売
省エネ型機器の
購入
促進制度:
 消費者教育支援
 省エネラベル表示制度
 省エネ性能カタログ
 購入補助金制度
 グリーン購入法などの指針
促進制度:
 省エネラベル表示制度
 販売優良店表彰制度
 省エネ機器購入補助金制度
図
消費者
省エネ型製品を普及させるためのステークホルダー
トップランナー制度は製造事業者に高効率な製品を市場に提供することを求める規制である
が、表示義務やラベリング制度を通して消費者に高効率製品の選択を促す仕組みとつながってい
る。また、販売事業者が多段階評価ラベルを貼付することを努力義務化しつつ、その当初におい
ては販売店向けの表彰制度などを構築し、販売事業者に省エネへの意識づけを行うことで、製品
購入時に消費者が高効率製品を選択する機会を高める仕組みを作ってきた。消費者には行動によ
る省エネ効果、買換えによる省エネ効果など、様々な省エネ情報を提供することで、省エネを嗜
好する消費者を増やし、製造事業者、販売事業者が省エネ製品を開発、製造、販売することを促
している。それぞれの施策が相互に有機的につながることにより効果が発揮されている。
この日本の例は、日本の製造事業者、販売事業者、消費者の環境の中で効果が発揮された例で
ある。その市場に合っていることが有効な施策の条件の一つであることを考慮した場合に、日本
あるいは他国の良い施策を ASEAN 諸国にそのまま導入するだけでは限定的な効果しか望めない
と考えられる。
日本は経済状況も豊かであり、エアコンは 1960 年代から本格的な普及が始まり、現在の普及
率は 90%を超えている。ASEAN 諸国においては国ごとに差があるものの、経済発展とともに家電
製品の家庭への普及も今後ますます本格化すると予想される。現時点では省エネ性能よりも価格
が重視されることがあったとしても、経済が発展し成熟するとともに、機器の省エネ性能がより
重要な選択ポイントとなることが想定される。
54
我が国には 10 年を超える機器分野における省エネ普及促進の経験があり、その目的のために
これまで様々な施策を実行してきた。この豊富な日本の経験を活かしつつ、その国の製造事業者、
販売事業者、消費者という環境の中で現在求められていることを的確につかみ、市場の急激な成
長などとともに今後必要とされるであろう施策、すなわち、省エネ型製品が普及しやすい市場を
構築するための効果的な施策の実施に協力することが望まれる。
2. インド
2.1. 現状把握
(1) 法制度
インドでは第 11 次五カ年計画に基づき 2017 年までにエネルギー効率を 20%改善(インド第
11 次五カ年計画(2007 年-2012 年))する国家目標を掲げており、家電等を対象にした機器分野
の基準ラベリング制度は目標達成上の主要施策となっている。
機器分野の基準ラベリング制度は、インド市場で製品を製造・販売・輸入する事業者を対象と
して最小エネルギー効率基準(Minimum Energy Performance Standard - MEPS)の遵守とラベリン
グの表示を定め、2003 年開始以来、対象品目別に規制と任意に区別し運用されている。規制と
なっているのは直管型蛍光灯(直管型)
、冷蔵庫(霜取り・蒸気圧縮型)、ルームエアコン(冷却
能力 11kW までの単相・単一スプリット型)
、配電用変圧器の全 4 品目であり、その他、14 品目
が任意制度として対象機器が指定されている。
尚、本制度では通常最初に任意で実施し、その後約 1 年間以上の期間でヒアリングや議論があ
り、その後の法制化を受けて強制化に至るプロセスが採られている。現状の対象品目は以下の通
り。
<強制(4 品目)>
直管型蛍光灯(直管型)
、冷蔵庫(霜取り・蒸気圧縮型)
、ルームエアコン(冷却能力 11kW まで
の単相・単一スプリット型)、配電用変圧器
<任意(14 品目)>
ルームエアコン(強制ラベル対象以外の壁掛型等の 10kW 以下の窓型及びスプリット型以外のカ
セット、床置き形、天井型、コーナー型)
、冷蔵庫(直冷式)
、誘導モーター、ポンプ、天井ファ
ン、LPG ストーブ、電気湯沸かし器、カラーテレビ(ブラウン管、液晶タイプ(CCFL と LED バッ
クライティング)とプラズマ)
、洗濯機、コンピューター(ノート型、ラップトップ型)
、安定器
(管型蛍光灯(TFL)とシングルエンドタイプ(ハロゲン電球)の電磁安定器と電気安定器)、イ
ンバーター、ファクシミリ、コピー機
55
エアコンの基準ラベリング制度
インドではルームエアコン(冷却能力 11kW までの単相・単一スプリット型)が強制、それ以
外の壁掛型等の冷却能力 10kW 以下の窓型及びスプリット型以外のカセット、床置き形、天井型、
コーナー型ルームエアコン(カセット、床置きタワー型、天井型、コーナー型(冷却能力 11kW
まで(3 トン能力未満の単相スプリット型)
)が任意となっている。
省エネラベル
(BEE Star-Label)
省エネラベルの基準と評価
インドにおけるエアコンの☆レーティング評価制度は EER を評価指標として、一定速機のみを
対象としており、表2-1に具体的な省エネラベル表示値を示す。
表2-1.インドにおける省エネラベル表示値(評価指標:EER)
省エネラベル表示
対象
冷房能力
一定速機
~10.5kW
☆
☆☆
☆☆☆
☆☆☆☆
☆☆☆☆☆
2.50-2.70
2.70-2.90
2.90-3.10
3.10-3.30
3.30-3.50
この制度においては、インバーター機にはラベル表示がなく、一定速機にはラベル表示がある
ため、消費者から見ると一定速機の方が省エネ性能が優れているような誤解を与えていた。
そこで、インバーター機と一定速機を CSPF という実際の年間電力消費量を反映させた同一指
標を用いた省エネラベル表示により、消費者等に正しく状況を理解してもらうシステムの構築が
緊喫の課題となっていた。
56
●インバーター機にはラベリング表示がない
●一定速機のラベリング表示(☆5 つ)
(通常の☆表示ではなく、5つ☆以上との説明付き)
(2)
現行ラベリング制度の問題点
インドでは既に 2010 年よりラベリングが義務化されており、販売店においても明確に貼付さ
れているものの、メーカーからは以下のような課題が提起されている。
- インバーター機には義務付けがないことから、ラベルは貼付されておらず一部メーカーは
独自のラベル・説明により効率を表記している。
- 基準数値が 2 年に一度見直しされるが、新基準のラベルを在庫も含めて一斉に張り替える
ことが義務付けられており、メーカーの負担が大きい。
- 試験方法についてもばらつきがあると言われ、試験方法も不透明な点があると言われる。
2.2. 分析・提言
今後、インバーター機に対するラベリング制度を的確に運用していくためには以下の諸点が重
要と考える。
(1) 定期的な市場抜取検査による公平な競争環境の確立
現地の試験機関は米国製のバランス式設備を持ち既に実績を積んでいるが、キャリブレーショ
ン(較正)や試験に係る人材の実務遂行能力のばらつきを是正するために、試験実施方法・手順
等に関する日本の試験機関との技術交流が必要と考えられる。
(2) CSPF 導入後の☆レーティング設定値改定
新評価によるラベリング実施に当たっては、空調機製造企業から性能情報を収集したうえで、
市場実態に基づいた☆レーティング設定値の改定が必要となる。現段階の BEE による原案として
は、☆~☆☆は通常の一定速機、☆☆☆は一定速機のトップ級とインバーター機、☆☆☆☆~☆
☆☆☆☆はインバーター機のトップ級が該当する方向で作成されている。新制度導入にあたり、
一定速機の市場を圧迫するという点から、メーカーからは抵抗があると言われているが、一定速
機とインバーター機が異なる基準による☆レーティングとならないようにする必要がある。さら
にラベリングについてはメーカーの負担が大きくならないよう配慮する必要がある。
57
(3) 普及啓発のための支援制度
ECCJ からは消費者への情報提供の一例として我が国の省エネカタログ、省エネ大賞・優良販
売店表彰制度・省エネ製品普及フォーラム・ウェブサイトツール等を説明した。
インドにおいても既に販売店および消費者に対する啓発用ツールや Web を用いたデータベー
スの提供が企画され、一部は完成しているなど BEE 主導での取り組みが進んでいる。
その他、エコポイントのような補助金制度も消費者の行動に直接影響を与えることができるた
め、有効な手段として BEE も検討しているとのことであった。
インドは、既に我が国をはじめとした多くの国から省エネ方策に関する情報収集と議論が行わ
れている模様であり、我が国として今後この点で協力支援していく分野は限られると思われる。
(4)導入時期
BEE としては 2016 年 1 月からの導入を目指して提案を進めているが、テクニカルコミティに
おける合意遅れの懸念の他、2014 年 5 月に予定されている総選挙により一時活動が停滞するこ
とも予想される。BEE は遅くても 2017 年の導入をめざし、引き続き提案準備を進めていくとの
事であった。BEE は不退転の決意で臨んでいるが、他国空調機メーカーの一部が強く反対してい
るため、実施の見通しが立っていない。我が国をはじめとするインバーターエアコンを製造して
いるメーカー各社はインバーターエアコンの省エネ性、優位性について十分な理解活動を行うと
ともに、市場には効率性の高い機器を導入し、BEE の取り組みを支援することが重要と思われる。
3. 中国
3.1. 現状把握
(1)国家試験機関の測定能力向上
中国では、エアコンのエネルギー効率基準構築にあたって、様々な気象条件、エアコンの使用
実態、基準遵守を監督する試験所の能力向上等諸課題の解決が必要との認識から、一般家庭での
エアコン利用実態調査、家庭での実測調査、エアコン利用とライフスタイルの関係についての検
討、等を進めてきている(IEEJ にて報告済)
。その結果として、冷暖房兼用インバーターエア
コンの効率基準として通年エネルギー効率である APF が適当であると判断し、APF 基準は 2013
年 6 月 9 日に公布、10 月1日に施行されている。
一方で、各メーカーが MEPS 基準やラベリングを遵守しているかの管理を行うためには、エ
アコンの効率評価を適切に行う試験能力の向上が不可欠との認識から、中国の国家試験機関であ
る中国家用電器研究所(CHEARI)と広州威凱検査技術院(CVC)と日本の日本冷凍空調研究
所(JATL)との間で同一のエアコン供試機を用いラウンドロビンテスト(RRT)を行ってきて
いる。
58
各試験機関固有の測定方法の違いによる測定結果の“違い”は、APF 基準の適正な運用を阻
害するものであり、また、メーカー等事業者にとっては製品開発や販売など事業運営上のリスク
につながりかねない存在である。RRT の試行錯誤の中で、上記のリスクを回避するためには、
共通の試験マニュアルが必要との判断(2012 年 11 月 APF 研究会)に及び、今回のバランス式・
エアエンタルピー式マニュアルの策定に至っている。
3.2. 提言
(1)共通マニュアルの新興国への展開
現在、新興国各国では、第一部にもあるように、各国の実情に応じて S&L 制度の整備を図っ
ている最中にあり、また機器能力表示の前プロセスとなる能力測定を行う試験機関の整備や評価
指標(EER、SEER、APF、CSPF、HSPF 等)の採用のあり方も様々な状況にある。あるべき
評価指標の導入と利害を共にするエリア大での評価指標の調和等については、日本の空調関係機
関が CSPF を主軸に提案を行うなどの動きがある。
中国での RRT や APF 研究会での検討からも、評価指標の運用にあたっては、異なる気象条
件、家屋の構造、年間や一日の使用実態(生活習慣)などを踏まえたリアルワールドとの相関に
留意することが肝要である。
また、S&L 制度における試験機関の測定能力向上は、適切な省エネルギー機器の普及促進に
とって不可欠な取組みであり、さらに各試験機関の測定結果の“違い”を回避し適正に測定が行
われるためには、当該国内、あるいは隣接する経済圏で共通のマニュアルを設定していくことが
重要である。このために、JATL 等日本の関係機関の中国での経験と知見が活かされるものと考
える。
(2) インバーター機と一定速機の基準一本化
中国ではインバーター機は APF、一定速機は現在も EER で評価している。市場における公平
な競争環境と消費者に対する分かりやすい情報提供の実現という観点からは、さらに一歩進めて、
インバーター機・一定速機ともに APF で評価するシステムに早期に移行することが必要と考え
られる。
59
3.資料編
1.ASEAN
1. -1 ASEAN (20131114_ECCJ 出張報告 @ タイバンコク)
1. -2 ASEAN (20140206_ECCJ 出張報告 (EMTIPS) Inception WS @ ジャカルタ
1. -3 ASEAN (20140217_ECCJ 出張報告 (EMTIPS) @ マニラ
1. -4 ASEAN (20140224_ECCJ 出張報告 (EMTIPS) @ クアラルンプール
1. -5 ASEAN (20140227_ECCJ 出張報告 (EMTIPS) @ シンガポール
1. -6 ASEAN (20140306_ECCJ 出張報告 (EMTIPS) Wrap-up WS @ バリ島
2.インド
2. -1
インド (201311_ECCJ 出張報告)
2. -2
インド (201403_ECCJ 出張報告)
2. -3
インド (CSPF 導入に関する BEE からの質問と回答)
3.中国
3. -1
中国 (201311_ECCJ 出張報告)
3. -2
中国 (201402_ECCJ 出張報告)
3. -3
中国 (バランス式マニュアル)
3. -4
中国 (マニュアル完成に向けた確認事項(2月専門家検討会))
3. -5
中国 (空気エンタルピ式マニュアル)
4.シンポジウム
4. -1
シンポジウムプログラム(日本語版)
4. -2
シンポジウムプログラム(英語版)
4. -3
シンポジウム QA
以上
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