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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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<総説>白色腐朽菌のフリーラジカル生成プロセス
渡辺, 隆司
木材研究・資料 (2000), 36: 34-50
2000-12-20
http://hdl.handle.net/2433/51393
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
総
説 (
REVI
EW )
白色腐朽菌 の フ リー ラジカル生成 プロセ ス*
渡
辺
隆
司**
Fr
e
eRadi
c
alGe
ne
r
at
i
on Pr
oc
e
s
so
rWhi
t
eRotFungl
Takas
hiW
ATANABE
(
平成 1
2年 8月 31日受理)
1. は
じ め
に
21世紀 は,急激 な人 口増加 と化 石資源 の消費 に伴 う co ・
2 濃度 の増加,化 石資 源 の埋 蔵量 の減少 に伴
うエ ネルギ ー,化 学原料不足 が深刻化 す る と予 測 され る。 こ う した次世紀 の資 源,環境 問題 に対処す る
ため,再生産可能 な資源であ るバ イオマスか らエ ネルギ ーのみ な らず化 学原料 な どを作 り出す ポ ス トペ
トロケ ミス トリーの構 築 は極 め て 緊急性 の高 い 課題 で あ る。 バ イ オマ ス はそ の生 産 の過 程 にお い て
C0 2 を固定化 す るため,生 産 と消 費 のバ ラ ンス を壊 す こ とな く有効利用 す れ ば,cO2 濃 度 の一万 的増
大 を もた らす ことな く化学資源 を永続 的に生 産す るこ とがで きる。
生物 的手 法 を用 いて木材 か ら様 々な有用 ケ ミカル ス を生産す るため には,木材 の細胞壁 を固め る役割
を果 た して い る リグニ ンを選択 的に分解 し,酵素や微 生物が木材成 分 にア クセ ス可能 な状態 に変換 しな
けれ ばな らな い 。 また,化学 的手法 に よるバ イオマ ス リフ ァイナ リー を完成 させ るため に も, リグニ ン
を分解 して リグニ ンと多糖 を分離す るこ とが必要 とな る。即 ち,細 胞壁 多糖 を被 覆す る リグニ ンの ネ ッ
トワー クを破壊す る こ とは,紙 の生 産 のみ な らず木 質バ イオマ スを有用 ケ ミカル ス等 に変換 す るための
最 重要課題 の一つ で あ る。 しか しなが ら,現行 の工 業 的 リグニ ン分解法 (
クラフ ト法) は 1
60- 1
7
0℃
付 近 の高 温 反応 を必要 とす るため,CO2 抑制 とい う時代 の要 請 に逆 行す るO また, 反応 に伴 い硫 化 水
素 や メルカプ タンな どの悪 臭有害物 を発生す る。 さ らに,パ ルプ残留 リグニ ンの除去工程 において は ダ
イオキ シ ンや クロロホルムな どの有害 な塩 素化 合物 が副生す る。 これ らの理 由か ら,環境調和型 の選択
的 リグニ ン分解反応 の開発が急 がれて いる。
リグニ ンを穏和 な条件で低 分子化 す るシステ ムを構 築す るために, リグニ ン分解性微 生物 であ る白色
腐朽 菌の酸化 的 リグニ ン分解 システ ム を利 用す るこ とは上記 の 目的 を達成す るための合理的 なアプロー
p, マ ンガ ンペ ル
チ と思 われ る。 こ う した考 えか ら リグニ ン分解酵 素 (リグニ ンペ ル オキ シダーゼ :Li
オキ シ ダーゼ :MnP, ラ ッカーゼ :Lac) の機 能解 明 と応 用研 究 が幅 広 く行 わ れ て きた 。 しか しなが
ら,酵素か ら遠 く離 れた場所 に存在す る リグニ ンを強力 に しか も選択 的 に分解す る白色腐朽 菌が存在す
る こ と卜う
)
や, リグニ ン分解 酵素 を木材 チ ップ と反応.
させ て も脱 リグニ ンに よるパ ル プ化 は起 きない こ
キ ノコの ミラクル木材 分解術- 」 と題 して講演 され た 。
**バ イオマ ス変換研 究分野 (
Labor
at
or
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,Li
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e,Li
gni
n
de
gr
adat
i
on,Bi
omas
sc
onver
s
i
on
-
3
4-
渡辺 :白色腐朽菌 の フ リー ラジカル生成 プロセ ス
と等 か ら, 白色腐朽 菌 の リグニ ン分解 は, リグニ ン分解酵素- リグニ ン間の直接 反応 のみで は説 明 され
ず,低分子物 質の関与 した フ リーラジカル生成 システムが リグニ ン分解 の根 幹 に関与 してい るこ とが次
第 に強 く認識 されつつ ある。本総説 において は, リグニ ン分解酵素 の触媒機構 の最近 の話題 を紹 介す る
と と もに, リグニ ン分解 に関連 した低 分子化 合物 に よるフ リー ラジカル生成 プ ロセ スにつ いて考 察す
る。
2.リグニ ン分解酵素の触媒 サ イクル
2.1 マ ンガンペル オキ シダーゼの触 媒 サ イクル
M nP) は, 白色 腐朽 菌が生産す る薗体外 ペ ル オキ シダーゼで あ り, M n
マ ンガ ンペ ル オキ シ ダーゼ (
(
I
I
)を M n(
I
I
I
)に直接酸化す る。 M nP によって生成 した Mn(
I
I
I
)は シュウ酸, マ ロ ン酸, セ ロ ビオ
l(
Ⅰ
H)のキ レ一 夕-存在下 で拡散可能 な低 分子 酸化 剤 とな り,酵素 か ら離 れ た場所 の リグ
ン酸等 の M I
HⅠ
)の キ レー トは リグニ ンの骨 格構 造 を形 成 す る非
ニ ンを酸化 す る。但 し, こ う して生 成 す る M n(
フェ ノール型 エ ーテル結合 は開裂で きない。
M 。P の触媒サ イクルは, Hor
s
。r
adi
s
h ペ ル オキ シ ダーゼ と同様 ,休 止型酵素 [
Fe
汁 p] が初 め に過酸
poL
I
nd I [
Fe什 -op■
] を生 成 し, CompoundI
化 水素 な どの電子 受 容 体 に よ り 2電子 酸化 されて Con-
が基 質 に よって 2回 1電子還元 され るこ とに よって Compot
l
ndI
I[
Fe
什 op
] を経 て休止型酵素 に戻 り
妙 o
S
Po
,
・
i
u
m の M nP で は, Compot
l
nd Iか ら Compoul
l
dl
l- の還 元 は M n(
I
I
), フェ
完結 す る+)0 P.C
ノー ル の いづ れ を も電 子 供 与 体 と しうるが , Compound IⅠか ら休 止 型 へ の還 元 は電子 供 与 体 と して
M n(
I
T
)を必ず必要 とす る (
図 1)。 M nP は遊離 の M n(
Ⅰ
Ⅰ
)のみで な く M n(
Ⅰ
Ⅰ
)が α-ヒ ドロキ シ酸 な
どのキ レ一 夕- と結 合 してで きた M n(
Ⅰ
Ⅰ
)錯体 とも反応 しうる。 P.c
hr o
S
Po
r
i
u
m の M nPCompound I
I
と Ml
1(
I
I
)の シ ュウ酸 錯体 の 反応 速 度 は MnP と遊 離 の M n(
I
I
)との反応 速 度 よ り高 く, マ ンガ ンイ
n
a
t
i
v
e
C
nat
i
ve
【
F
e
3
十P】
l
Fe
4
'
=OPl
【
Fe
4
+
=OP●
+
】
H202
A・
k
n
a
t
l
V
e
t
F
e
3
+
p
】
AHA・ AH
lr
J
d
"n
i
H2
02
Comp
H
【
Fe
4+
=○
MnS
L
+
Comp
川 二審
【
Fe
4
+
=OP】
√
H
l
FS:
mo
ps
.
・
]
H
Comp
1
【
Fe
4+
-0P●
十
】
"A
n
1
"A
n
A
n
.
2十
Pl
eur
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uTe
f
Tngl
l
A
:2
'
Phane
r
oc
hae
t
echT
TS
OS
POr
i
um
図 1 Li
P お よび M nP の触媒サ イクル
- 3
5-
木材研 究 ・資料
第3
6
号 (
2
0
0
0
)
オ ンの キ レ一 夕-は Mn(
I
I
I
)の安 定化 剤 としてのみで な く酵素 の t
。r
nn.ve
rに も寄与す る:
'.
`
'
)。 この よ
うに P.c
hr
J∫
O
S
Po
r
i
u
m の MnPで は触媒サ イクル を回すため に Mn(
I
I
)を絶対 的に要 求す るため 「マ ンガ
ン依存性ペ ル オキ シダーゼ」 とい う名称が与 え られ た
。
これ に対 し, 最近報告 された Pl
e
u
r
o
t
u
se
r
Jn
gi
iの MnP は,Compound I と compoundI
Iの還 元 の い
Ⅰ
Ⅰ
), フェ ノールの いづ れ を も電子供 与体 と して利用 しうる。 言 い換
づ れの ステ ップにおいて も, Mn(
Ⅰ
Ⅰ
)を Mn(
I
I
I
)に直接酸化 で きるが,触媒サ イクル を回転 させ るため に必
えるな ら, この酵素 は Mn(
ず し も Ml
、(
T
l
)を必 要 と しな い
。 同様 に, Ce
r
i
po
r
i
o
P∫
i
=u
b∼
'
e
r
mi
s
Po
r
aの MnP も CompoundI
,Com-
7)
pou一
一
dIIの還元 にフェ ノール な どの マ ンガ ン以外 の電子 供与体 を利用 しうる。 この場 合, 触媒 サ イク
ルが Mn(
I
T
)の非存在下で 回転す るか否 か は基 質の酸化還元電位 に依存す る。即 ち, C.川bl
'
e
r
mi
∫
Po
r
aの
MnP は O
-ジアニ シジ ンの ような酸化 電位 の低 い基 質 において は Mn(
I
I
)に依存せ ず に基 質 を酸化 で き
I
I
)を必要 とす るH
)
0
るが, グア イアコールの酸化 において は Mn(
l
dI
I
Iを経 てヘ ムの ブ リーチ ング
ペ ル オキ シ ダーゼ は,過 剰 の過酸 化 水素 が存 在下 す る と compoul
を起 こす。 しか しなが ら, MnPの CompoundI
I
Iは, Mn(
I
I
I
)に よ り休 止型酵素 に還元 され同時 に分
子状 酸素 を放 出す る カ タラーゼ用 の触媒機 構 を もつ
。 この機 構 の ため, MnP は他 のペ ル オキ シ ダー
。)
ゼ に比べ て高 い過酸化 水素耐性 を もつ 。MnPの カ タラーゼ活性 は,マ ンガ ンイオ ンの キ レ一 夕-が存
在 しない条件 で特 に強 く観 察 され, 菌体 外 ペ ル オキ シ ダー ゼ を過 剰 の過 酸化 水 素 か ら守 る役 割 を担
う!))0
一般 にペ ル オキ シ ダーゼ の CompoundI
I
Iは, 自己崩 壊 あ るい は基 質 との反応 に よ りス ーパ ー オキ
t
i
vC型酵素 に戻 る機構 を有す る (
図 2)1{')。実際 スーパ ーオキ シ ドの放 出 は
シド(
02 )を鋸 侶 ノて nai
Li
p)の Compoundm にお いて も報告 されて い る 11)。 ところが, これ ま
リグニ ンペ ル オキ シダーゼ (
で MnPの反応系 にお いて は ラジカルメデ ィエ ー ター非存在下 で酵素 か ら直接 スーパ ー オキ シ ドが生成
R を用 いて過剰 の過 酸化 水素 存 在下 で MnP
す る現 象 は確 認 され てい なか った。 最 近,筆者 らは,ES
が直接 スーパ ーオキ シ ドを放 .
1
二
I
け る現 象 を示 した 1'
I)。 この反応 で生成す るスーパ ー オキ シ ドは Mn(
I
I
)
ュ(
I
I
I
)へ の酸化 に も関与す るため,酵素 の ki
l
l
et
i
c
sに影響 を及 ぼす。
の Ml
MI
I
P は リグニ ンペ ル オキ シダーゼ (
Li
p)に比較 して高 い有機 溶媒耐性 を もつ 。水 と混和 す る有機 溶
H)の酸化 は溶媒和 の 自由エ ネルギ ー を示すパ ラメー ター ET3
0と高 い相 関
媒 中での MnP に よる Mn(
が あ る 13・11)。
2.
2 リグニ ンペル オキ シダーゼの レ ドックス メデ ィエ ー ター と酵素表層 での基 質の酸化
リグニ ンペ ル オキ シ ダーゼ (
Li
p)は, M1
1
P と同様 , プ ロ トヘ ムⅨ錯体 を活性 中心 に もつ菌体外 ペ ル
オキ シダーゼであ る0本酵素 は リグニ ンの骨格構造 を形 成す る非 フェ ノール型エ ーテル結 合 を-電子硬
化 に よ り開裂 させ る。
p.c
hl
yf
O
S
Po
r
i
u
m の Li
P は, ベ ラ トリル アル コール (
VA)な どの低 分子 の基 質 の他,還 元型 シ トクロ
ム
。l
う)や合成
リグニ ン1'
'
)な どの高 分子 基 質 を直接酸化 で きる。ベ ラ トリルアル コール (
VA)は P.chl
:
V-
s
o
j
Po
r
はm に よって生 産 され る二次 代 謝 産物 で あ り,Li
P を過 剰 の過 酸化 水素 か ら防御 す る機 能 を果 た
P は他 のペ ルオキ シダーゼ と同様過剰 の過酸化 水素 が存在下す る と CompoundI
I
Iを経 て
す。即 ち,Li
VA)を添加 す る と触媒 サ イ クルに よ り生成
ヘ ムの ブ リーチ ング を起 こすが,ベ ラ トリル アル コール (
した カチ オ ンラジ カル (
VA●
+)に よ り compoundI
I
Iが休止 型酵素 に還元 され るため,酵素 の不可逆
′
Aは I
.
i
Pの Compotll
l
dI
Iを速 やか に休止型酵 素 に変換 す る こ とに よって
的 な失活が 回避 され る 17) ヽ
0
も過剰 の過酸化 水素 に よる酵素失活 を防御す る。,IH・I。)。従来, このベ ラ トリル アル コールカチ オ ンラジ
VA十 )が, リグニ ン分解 酵素 が入 り込 め ない木材細 胞 壁 中に浸透 して リグニ ン分解 の先導役 を
カル (
果 たす こ とが提 案 されて い た。 しか し, 近年 の研 究 は Li
P に よ り生成 したベ ラ トリル アル コール カチ
- 3
6-
渡辺 :白色腐 朽 菌 の フ リー ラジカル生 成 プ ロセ ス
図 2 ペ ル オキ シ ダーゼの触 媒機構 川 )
*MI
Pで は CompoundHIが Mn(
T
IT
) と反応 して nこ
し
t
i
ve酵 素 - 戻 る径 路 が
Pで はベ ラ トリル アル コール カ
存在す る (
Chen らの図 に この反応 を加 筆 )。Li
チ オ ンラジ カル に よる CompoundlIIか ら I
l
at
i
、
′
C酵素へ 戻 る経 路が存 在 す る。
*che1
1らが 示 した 水 酸 化 ラ ジ カ ル 生 成 反 応 。 ***(
二
ompoundIH は CompoundH と H202 の反応 で も生 成 す る。CompoundII
rが さ らに過剰 の H202
と反応 す る とヘ ムの ブ リーチ ングを起 こ して失 活す る。 オキ シ ダーゼ反応 で は
NADH が NAD・に酸化 され,NAD・が酸素 を還元 して スーパ ー オキ シ ドを生
成 し, これが 不 均 化 に よ り H・
_
,
02 とな ってペ ル オキ シ ダーゼ の電 子 受 容体 と
な る。
*
オ ンラジ カル (
VA'
')が , この よ うな拡 散 メデ ィエ ー ター と して作 用す るので はな く,Li
PCompound
H に結 合 した状 態 で高 分 子 基 質 な どの酸 化 を助 け る酵 素 結 合型 レ ドックス メデ ィエ ー ター と して機 能
す る こ と を支 持 して い る 川-25)。 遊 離 の VAl
+ の 半 減 期 が 0.
54ms程 度 な の に対 し, 酵 素 結 合 型 の
vA小 の半 減期 は 37
0msに も及 ぶ こ とか ら も2112`
)
)
,vA'
+ が拡 散 メデ ィエ ー ター と して機 能 して い る
とは考 えが たい。
Amber
t
Bal
ay らは,Li
Pのベ ラ トリル アル コール結 合サ イ トと してヘ ム近傍 の グル タ ミン酸 (
E1
46)
27
)
。 しか し, I
)
oyl
cらは Li
P表 面 に存 在 す る トリプ ト7 7ン (
W1
71
)をフェニ ル ア ラニ ン
を提 案 したL
や セ リ ンへ 置 換 す る とベ ラ トリル ア ル コー ル (
VA)酸 化 能 が 消 失 す る こ とを示 し, Li
P表 層 の l
Vl
71
が ベ ラ トリル ア ル コール (
VA)の結 合 に直接 関与 す る こ とを示 した2
H
)
。 この酵素 表 面 に位 置 す る トリ
プ トフ ァ ン残 基 の Cβ は 自動 触 媒 的 に水酸 化 され て お り2リ), 報 告 され て い るす べ て の Li
P に存 在 す
る3
。
)
o Li
Pが ベ ラ トリル ア ル コール (
VA)存 f
rFで過 酸 化 水素 と反応 す る と compoL
=dIを経 て Li
P
compoundTトVA'
'複 合体 が生 成 し, 酸 化 電 位 の 高 い基 質 を酵 素 表 層 にお い て- 電子 酸 化 す る。 還元
25
)
。 同様 に,
型 リボ ヌク レアーゼ の Ⅰ
.
i
P に よる酸 化 はベ ラ トリル アル コール (
VA)の存 在 に依存 す る<
B.adu
∫
l
aの生 産す る 2次 代謝 物 2chl
or
01,
4di
met
hoxybenz
eI
Cは,Li
Pの レ ドックス メデ ィエ ー ター と
して機 能 し,Li
P単独 で は酸化 が不可 能 な高分子 色素 pol
yR の脱色 を起 こす H )0
Li
Pはベ ラ トリル アル コール (
VA)非存在 下 にお いて合成 リグニ ンを直接 酸化 す るが ,vA の添加 は
- 37-
木材研 究 ・資料
第3
6号 (
2000)
合成 リグニ ンの Li
p- の結 合 に影響 を及 ぼ さな い 1
-̀
)
。 この こ とか ら, トリプ トフ ァン (
W1
71
)は VA
酸化 の鍵 とな るア ミノ酸 で あ るが リグニ ン酸化 は別 の結 合サ イ トで起 こる こ とが示唆 され てい る l
f
i
)
。
いづ れ に して も Li
P の幅広 い基 質特 異性 ,特 に高分子 基質 に対 す る優 れ た反応性 は,酵素 表面 か らヘ
ム- の電子 移動 に よる。
2.3 ペル オキ シダーゼの新 しい触媒機 能
P.c
hr
J∫
0
5
Po
r
l
um の Li
Pが W 1
71を介 して非 フェ ノール性 リグニ ンモデル を酸化 す るので あれ ば,Li
p
の W1
71に相 当す る MnP の ア ミノ酸 を トリプ トフ ァンに置換 す れ ば MnP に非 フェ ノール性 リグニ ン
モ デ ルの酸化 能 を賦 与 で きる こ とが期 待 され る。 実 際, p.c
hl
y∫
0
5
Po
r
i
um の MnP の Se
r1
68 を トリプ ト
3
。
)
。得 られた MnP の組 替 え体 は,
フ ァンに変異 させ る と, MnPが ベ ラ トリル アル コール を酸化 す る(
Mn(
I
I
)の酸化 活性 を保 持 してい るため, Li
P と MnP の両方 の活性 を示 す。 この組 替 え体 で はベ ラ ト
リルアルコール (
VA)の酸化活性 は Mn(
I
I
)に よって阻害 され る。
従 来, MI
-(
Ⅰ
Ⅰ
)の Mn(
I
I
I
)へ の酸化 は MnP特 有 の触媒作 用 と考 え られて いたが ,Aus
tらの グルー
プ は,PIC
hl
Jt
"S
Po
r
i
u
m の Li
P(
H2)が Mn(
I
I
)の直接 酸化 を触媒 す る こ とを示 した。彼 らは P.C
/
l
r
Jj
O
S
Po
7
・
i
um の他 の Li
P ア イ ソザ イム (
HIH6,H7, H8, HI
O)につ い て も解析 を進 め, これ らの ア イ ソザ イ
l
ndI
Iは Mn(
I
l
)を酸化で きないが ,Compoul
l
d Iは Mn(
I
T
) を効率 よ く Mn(
HⅠ
)-醍
ムの Compot
2
,
1
2
3
)
。 この よ うに,近年 の研 究 に よ り Mn(
I
I
)の直接酸化 は MnP特 有 の 反応 で
化 す るこ とを示 した3
I
I
)の酸化 能 を もつ 菌体外 ペ ルオキ シ ダーゼ には,Li
P に近 い
はない こ とが 明 らか に されてい る。Mn(
hr
JS
O
S
Po
r
i
u
m の MnP の ように Mn(
I
I)に依存す る タイプ まで様 々な酵素 が存 在
性 質 を示す ものか ら p.c
P表層 の トリプ トフ ァン残 基 (
wl
71
)は Li
P に特 徴 的で
する (
図 1)。例 えば,先 に述べ た よ うに Li
あ り MnP に は存 在 しない とされ て きた。 しか しなが ら, p.e
r
Jn
gi
iの MnP(
PSl
) は,P.c
hl
yS
吋o
r
i
u
m
の Li
Pの W 1
71に相 当す る位 置 に W 1
70 を もって お り,高分 子 色素 で あ る Re
act
i
veBl
ack5を直接 酸
化 で きる7.3日
4)。Re
ac
t
i
veBl
ac
k5の酸化
は Mn(
I
I
)に よって非 競争 的 に阻害 され, MnP(
PSl
)の マ ン
ガ ン結 合 サ イ ト (
Gl
u36, Gl
u40,As
p1
81
) と高分子基 質 の結 合サ イ ト (
W1
71
)が 異 な るこ とを示す 。
P.e
r
Jn
gi
iの MnP(
PSl
)は, P.c
hr
J∫
O
S
Po
r
i
u
m の M nPlお よび Li
PH2 と塩 基配 列 で そ れ ぞ れ 58%お よび
62%の相 同性 を もち,結 晶構 造解析 にお いて も11
の α-ヘ リ ックス を もつ P.c
hr
J5
0
5
Po
r
i
u
m の MnPlよ り
1
2の α-ヘ リ ックスを もつ Li
P に よ り近 い構 造 を もつ ことが示 されてい る3
2
)
。B
je
r
ka
nd
e
r
〟adu
・
r
l
aの MnP
も Mn(
H)非 存在 下 で グア イア コー ルな どの フェ ノール類 やベ ラ トリル アル コール な どの非 フェ ノー
5
)
o これ らの酵素 は, Mn(
I
I
)の酸化 能 を もつ ため MnP と呼 ばれて い るが,
ル性化 合物 を酸化 で きる3
P と MnP の両者 の機 能 を併せ もつ ハ イブ リ ッ ド型 酵素 と呼 ぶべ きペ ル オ
触 媒機 能 と塩基 配列 か ら Li
∫
t
r
e
at
u
sの MnP3の ア ミノ酸 配列 も, C.∫
ub
u
e
r
mi
s
Po
r
aや P.c
hr
J∫
0
5
Po
r
i
u
m の MnP
キ シ ダーゼ で あ る。 P.o
よ り, む しろ P・c
h
r
J5
0
5
Po
r
i
u
m,Ph
l
e
b
i
ar
ad
i
al
a,B・ad
u
S
l
aな どの Li
P と高 い相 同性 を もつ r
W )。
Anni
bal
e らは, Le
n
t
i
nu
se
d
o
d
e
Sの MnP が非 フェ ノー ル性 基 質で あ るベ ラ トリルア ル コー ル
最近 , D'
muc
onol
act
one と 2量体 生
の酸化 能 力 を もち,ベ ラ トリル アル コールか ら芳 香環 開裂生 成 物 で あ る γ-
I
I
)を必要 とす る点 で ,P.e
r
Jn
gi
lや B.aduf
l
aの 「MnP」
成物 を与 える ことを報告 した. この反応 は M n(
と異 な り,新 しい タイプのマ ンガ ン依 存性 ペ ルオキ シ ダーゼで あ る と考 え られ る37
)
。 こ う した, マ ン
du
s
t
aか らは Mn(
Il
) に よって活性 が 逆 に阻害
ガ ン依 存性 ペ ル オキ シ ダーゼ が報 告 され る一方 で ,B.a
され る菌体外 ペ ル オキ シダーゼ も分離 されて い る'
3
H
)
0
酵素 の結 晶構造解析 と部位特異 的改 変 に よる研 究 か ら, MnP のマ ンガ ン結 合サ イ トに関す る研 究 も
進 んで い る。 p.c
hr
J∫05
Po
r
i
um の MnP に Gl
u35- Gl
n, Gl
u39- Gl
n, の変 異 をか け る と Mn(
I
T
) との
Km 値 が50倍 上昇 し kc
at値 が 300分の 1に減少す る。 また ,Gl
t
1
35- Gl
n と As
p1
7
9-Gl
nの ダブル変異
00倍 に上昇 し,kc
at値 が 1,
000分 の 1に減少 す る3
9
)
。 さ らに,As
p17
9-Gl
n の変位 をか
で は Km 値 が 1
- 38-
渡辺 :白色腐 朽 菌 の フ リー ラジカル生成 プ ロセ ス
け た MnP に はヘ ム近傍 に カチ オ ンの存 在 は認 め られず マ ンガ ン結 合 能が 消 失 した こ とが 示 され て い
/
"
J∫
O
S
Po
'
i
・
u
m の MnP のマ ンガ ン結 合 サ イ
るL
l
。
)
。 こ う した部 位特 異 的 改 変 と結 晶構 造 解析 M l
)
か ら P.C
トはヘ ム近傍 の Gl
u35,Gl
t
1
39,As
p1
7
9か らなる こ とが示 されてい る。
・
Ye
ung らは, シ トクロ ム cペ ル オキ シ ダーゼ (
c
c
p)のヘ ム近傍 に部位 特 異 的改 変 に よ って P.c
hr
J・
o
s
po
mJ
m の MnP に類 似 したマ ンガ ン結 合サ イ ト (
Gl
y41
-Gl
u,Va1
41
う
ー Gl
u,Hi
s1
81
-A
s p) を作 り,
c
c
p にマ ンガ ン酸化 能 を賦 与 した42)○ 同様 に, Wi
l
c
ox らは ,c
c
p に As
p37
- Gl
u,Pr
o
44-As
p,Va1
45
- As
p, Hi
s1
81
-Se
rの 変異 をか けてヘ ム近傍 にマ ンガ ン結 合サ イ トを作 り,c
c
pにマ ンガ ン酸化 能 を
賦 与 した43)。 現 在 の ところ,得 られ た組 替 え酵 素 の マ ンガ ン酸 化 能 は低 いが,ヘ ム近傍 にマ ンガ ン結
合 サ イ トを作 る手 法 はヘ ム を補 欠分子 とす るペ ル オキ シ ダーゼ一般 に適 用で きる と考 え られ今 後 の発 展
が期待 され る。
ペ ル オキ シ ダーゼ は過酸 化 水素 存在 下 で基 質 を1電子酸化 す るペ ル オキ シ ダーゼ反応 を触 媒 す るが,
NADH の よ うに一
一電 子酸化 に よ り酸 素 還 元 能 を もつ ラジ カル を生成 す る基 質 に対 して は オキ シ ダーゼ
と して作 用 す る。 最近 ,cl
l
e
l
lらは, ペ ル オキ シ ダーゼ の反応 と して, ペ ル オキ シ ダーゼ反応 , オキ シ
ダーゼ反応 の他 に水酸 化 ラジ カル を生 成す る新 たな反応 経路 が存在 す る こ とをホ ース ラデ ィ ッシ ュペ ル
HRP) を用 いて示 した 川 )。 図 2に示 した通 り休 I
L型 のペ ル オキ シ ダーゼが スーパ ーオキ
オキ シ ダーゼ (
TIが生 成 す るが ,Compound I
I
Iは Fe(
I
I
)の酸 素 錯 体 で あ り, この
シ ドと反応 す る と compound I
Fc(
H)錯 体 に過 酸 化 水素 が 反応 す る とフェ ン トン反応 を起 こ して水酸 化 ラ ジカル を生 成 す る。結 果 と
して HRP は スーパ ー オキ シ ドと過酸 化 水素 か ら水酸 化 ラジ カ ル を生 成 す る こ とに な る。 この 反応 は
Har
be
r
We
i
s
s反応 と呼 ばれ るが ,HRP は典型 的 な Har
ber
Wei
s
s触媒 で あ る Fe
EDTA 錯 体 よ り 1
01
02 速 く水酸 化 ラジ カル を生 成 す る。
MnP は過 酸化 水素 , Mn(
I
I
),還 元型 グル タチ オ ン (
GSH)存在 下 にベ ラ トリル アル コール を酸化 す
るiヰ)0 Mc
El
d.O。 らは, 後 に HRP も還 元型 グル タチ オ ンと Mn(
TI
)存在 下 でベ ラ トリル アル コールが
II
)非存 在下 で生 成 す る グル タチ イル ラジカル
酸化 され る こ とを見 出 した。彼 らは, HRP に よ り Mn(
(
GS・
)で はベ ラ トリル アル コールの酸 化 が起 きない こ とか ら, 反応 の活性 種 は MnP の反応 で予 想 され
た GS・で は な く,GS・と Mn(
I
T
)の コ ンプ レ ックスあ るい は GSH と Mn(
II
I
)の コ ンプ レ ックスで
あ る と推 定 した45)。 しか しなが ら, 後 述 の よ うに GSH と ラ ッカーゼ に よ り Mn(
I
T
)非 存 在 下 で ア ン
トラセ ンな どの PAH が酸化 された こ とか ら,活 性 種 に関 して は なお検討 が必要 で あ ろ う。HRP に よ
るベ ラ トリル アル コールの酸 化 はジチ オ トレイ トール, メル カ プ トエ タ ノー ル, システ イ ンで も起 きる
が, 同 じ還 元 剤 で も SH 基 を含 まない ア ス コル ビ ン酸 で は起 きな い。GSH は生体 内 にお け る活性 酸 素
の生 成 と消去 に大 きな役割 を担 って い るが,蘭体外 で の木材腐朽 に影響 を及 ぼ してい るか否 か は明 らか
に されてい ない。
2.
4 ラ ッカーゼの新 しい触 媒機 能
ラ ッカーゼ (
Lac
)は分子状 酸素 を電子 受容 体 とす る フ ェ ノール オキ シダーゼで あ り,通常4個 の銅 原
千 (
TypeI,TypeI
T
,2個 の TypeHI
)を補 欠 分子 に もつ。 ラ ッカーゼ が フェ ノー ル,芳 香 属 ア ミン
I
I
)原 子 に受 け渡 され, そ こか ら 1つ の TypeT
Iと 2つ
な どの基 質 か ら奪 った電 子 は ,TypeTの Cu(
IIの銅 電子 か らなる 3核錯体種 に移動 し分子状 酸素 を還元す る。
の TypeI
ラ ッカーゼ は Li
P と異 な りこれ まで非 フェ ノー ル型 リグニ ン構 造 を分 解 で きな と され て きた。 しか
990年 に ラ ッ カー ゼ が レ ドッ ク ス メ デ ィ エ ー ター で あ る Af
i
TS (
2,2′
az
i
nohi
s(
3
し な が ら, 1
e叫 ′
1
bc
I
Zt
hi
a
z
ol
i
、
e
6s
L
l
l
p1
01
i
cac
i
d)の存 在下 で非 フ ェ ノー ル型 リグニ ン構 造 を分 解 す る こ とが示 され
の を契 機 にヰ`'), 非塩 素 系 パ ル プ漂 白へ のr
E
.
用 を 目的 と して各 種 の ラ ッカーゼ メデ ィエ ー ターが化 学 合
成 されて い る。 ラ ッカーゼ メデ ィエ ー ター に求 め られ る条 件 と して は, 1
) 高 い レ ドックスポ テ ンシ ャ
- 3
9-
木材研 究 ・資料
第36号 (
2
000)
ル ,2) ラ ッカーゼの失 活 を起 こさない ,3) メデ ィエ ー ターが副反応 を起 こ さず に リサ イクル される,
4) 毒性 が少 ない, な どの点が求 め られ る。 これ らの条件 を満 たす合成 メデ ィエ ー ター と して現在 の と
ころ Nhydr
oxyNPhe
nyl
ac
et
ami
de(
NHA)が注 目を集 めてお り, ドイツ等 で非塩 素系 パ ル プ漂 白に応
用す る実用化 試験 が行 われてい る。 ラ ッカーゼ存在下 に非 フェ ノール性 リグニ ンモデル を分解 す る白色
腐朽 菌 の代 謝物 として は P
yn
o
po
r
u
∫c
i
n
n
a
b
ar
i
u
Sの生産す る 3hydr
oxyant
hr
ani
cac
i
d(
3
HAA)が報告 され
て い る47)。 しか しなが ら,3
HAA が合成 メデ ィエ ー ターの よ うに ラ ッカーゼ に よる酸化 と基 質 に よる
還元 の後,再 び レ ドックスサ イクルに組 み込 まれて リサ イクル され るか は示 されてい な い 。 ラ ッカーゼ
は シ リ ンガアルデ ヒ ド存在 下 でベ ラ トリル アル コール を酸 化 す るヰ
∼
i
)
。 また, フェ ノー ル, アニ リン,
4-ヒ ドロキ シ安息香酸 の他 ,還元型 の グル タチ オ ン, システ イ ン, メチ オニ ン存在下 に多環式芳香族 炭
化 水素 であ る PAH を分解 す るLL9)。
上 述 の ように, ラ ッカーゼ は酵 素単独 で は非 フェ ノール性 リグニ ン構 造 を分解 で きない とされ て き
u
∫l
i
gr
i
nu
∫の 麦藁 固体 培 養 か ら精 製 した ラ ッカーゼ が 非 フェ
た。 しか しなが ら,Le
ont
i
e
vs
k
y らは Pan
ノール型 リグニ ンモ デルで あ るベ ラ トリル アル コールや β-1型 の リグニ ンダ イマ ーモデ ル を分解す る
と報告 した。 この酵素 は, ブルー ラ ッカーゼ と同様 4個 の銅 原子 を補 欠分子 と して もつ に もかか わ らず
61
0nm の極 大吸収 を もたず イエ ロー ラ ッカーゼ と命 名 され た。酵 素 の分子構 造 は不 明で あ るが,何 ら
かの低 分子化 合物が レ ドックス メデ ィエ ー ター として酵素 に結 合 してい るため に本酵素 が非 フェ ノール
型 リグニ ンモデルの分解力 を もつので はないか と推定 されてい が
(
I
)0
一 方 , p.o
∫
t
r
e
a
l
u
Jの生 産 す る 2つ の ラ ッカー ゼ ア イ ソザ イム (
pIp.
7, pT4.
0)の う ち, pI4.
0の
ラ ッカーゼ ア イソザイ ムは他 の 白色腐朽菌 由来 の ラ ッカーゼ と同様 4個 の銅 を もつ ブルーラ ッカーゼで
あ るが,pI6.
7の ア イソザ イムは 1つ の Cu と 2つ の Zn, 1つ の Fe原子 を もつ新規 な ラ ッカーゼ で
あ る と報告 された。 この酵素 は,600nm 付 近 の ブルー ラ ッカーゼ特 有 の吸収極 大 を もた ない こ とか ら
。非 フェノール性 リグニ ン構 造 の分解 力 は もたず触 媒作 用 に関 し
ホ ワイ トラ ッカーゼ と命 名 され た51)
て はブルーラ ッカーゼ に類似 して い る。 また ,phl
e
bi
ar
ad
l
at
aの ラ ッカーゼは,TypeT
,TypcI
Tの 2つ
の銅原子 しか もた ないが,補酵素 と して PQQ を もつ
0
52)
a
me
l
e
∫v
e
r
s
i
c
o
l
o
r
一般 に ラ ッカーゼ は直接 Mn(
I
I
)を Mn(
I
I
T
)に酸化 す る活性 は もた ないが,最近 Tr
ラ ッカーゼが 高濃度 の ピロフ ォス フェー ト存在 下 で微弱 な らが Mn(
Ⅰ
Ⅰ
)の酸化 活性 を もつ と報告 され
たF
'
'
i)。Mn(
I
I
)を直接 酸化 で きない ラ ッカーゼ も基 質であ るフェ ノールが存在 す る とフェ ノキ シラジ カ
ル を介 して Mn(
TI
)を酸化 す る。 フェ ノキ シラジカルの還元 は, ラジカル カ ップ リ ングに よる高 分子
化 を抑 制す る。
3.低 分子化 合物の関与 した フ リーラ ジカル生成 プ ロセス
3.1 選択的 リグニ ン分解菌 とフ リーラ ジカル発生系 による木材 分解
MnP と Lac生 産菌 で あ る Ce
γ
i
Po
r
i
o
pL
r
i
H uu
e
l
・
mi
J
Po
r
a は, 木材腐 朽 が か な り進 行 した段 階 に なって も,
自分 の生産 した菌体外酵素 を木材細胞壁 内 に進 入 させ るこ とな く,酵素 か ら遠 く離れ た細胞 間層 や細 胞
壁 深層 の リグニ ンを選択 的 に分解す る卜う̀
)
。選 択 的 リグニ ン分解 菌 と呼 ばれ る本菌 は,細 胞壁 リグニ ン
のみ な らず,酵素 か ら最 も遠 い位置 にあ る細 胞 間層 の リグニ ンを腐朽 の初期 か ら激 し く攻 撃す る (
図
3)。 木材 の細胞 同士 を接 着 してい る細 胞 間層 の リグニ ンが腐朽初期 か らダメージ を受 けるため, この
菌 で 2- 4週 間処理 した後 に機械的 なパ ル ビングを行 うと重量減少 をそれほ ど伴 うこ とな く最大47% も
のエ ネルギ ー削減効果 が得 られ る =
l̀
)。
しか も,得 られ たパ ル プは菌処理 を しない機械 パ ル プ よ り最大
2.
2倍 も引 き裂 き強 度 が 強 い l・54)。 また, 本菌 で ス プルー スお よび カバ材 を 4週 間処 理 した 後 にサ ル
フ ァ イ トパ ル プ化 を行 う とそ れ ぞ れ48% と3
0% の カ ッパ 価 の 減 少 が 見 られ る l)o 同 一の 処 理 を
一一
Pha
n
e
γ
o
c/
l
ae
l
ec
hr
J∫OS
Por
iu
m で行 った際 のカ ッパ価 の減少率 は, カバ材 で20%, スプルー ス材 で は 0%に過
- 40-
渡辺 :白色腐朽菌 の フ リー ラジカル生成 プ ロセ ス
選 択 的 リグニン分解
非選択的リグニン分解
■ J jI■ J
r_ I _ L _ _ I
二、
木材細胞壁
細胞間層
細胞間層
図 3 選択 的お よび非選択 的 リグニ ン分解菌 の木材腐朽様式
ぎな い
1)。
こ う した結果 か ら も, C・∫u
I
,
e,
mi
S
Poraが針葉樹 お よび広葉樹材 の細 胞 間層 リグニ ン と細 胞壁
リグニ ンを単期 間の うちに高 選択的 に分解 しているこ とがわか る。木材 の細胞壁 には小 さな孔 が あいて
0-2
0Å 以下で あ る。 これ に対 し,酵素 の分子直径 は 40Å 以 上 は
い るが, その孔 の直径 はおお むね 1
あ るため, 白色腐朽 菌 は木材細胞壁 に大 きな孔 を開 けない限 り, 自分 の出す酵素 を木材細胞壁 内 に進 入
させ ることがで きない。 カ ワラ タケな ど多 くの リグニ ン分解性 白色腐朽 菌 は,木材 に孔 をあ けて 自分 の
出す菌体外酵素 を木材細胞壁 中に進入 させ るこ とに よ り木材 を分解す る。結果 と して木材細胞壁 はぼろ
i), パ ル プ原料 や化 学資 源 と して の価 値 が著 し く低 下 す る。 これ に対 し, C.
∫
ubu
e
,
mi
∫
ぼ ろ に浸 食 され '
po
r
a等 の選択 的 白色腐朽菌 は,木材細 胞壁 に酵素が進 入で きる孔 を開けない まま,酵素か ら遠 く離 れた
場 所 に存 在 す る細胞壁 や細胞 間層 の リグニ ンを広範 囲 に しか も高選択 的に分解 してい る (
図 3)。 この
例 か ら明 らか な よ うに,選択 的 白色腐朽菌 において は,酵素以外 の低 分子化 合物 が リグニ ン分解 に直接
関与 してい る。
選択 的 白色腐朽菌 の リグニ ン分解機構 には,酵素 か ら遠 く離 れた リグニ ン分解 の現場付近で発生 した
ラジカル種 が関与 して いる もの と推定 され る。何故 な ら,仮 に酵素が細胞 内腔 (
ルー メ ン) 内で強力 な
ラジカル を作 った と して も,生成 した ラジカル は単寿 命 なため酵素 か ら遠 く離 れた リグニ ン分解 の現場
に行 く前 に 自己分解 して しまうであ ろ う し,細 胞内腔 で生成 した ラジカルは細胞壁表層 で優 先 的 に反応
n∫
i
l
u型 の ラジカ
す るため であ る (
図 3,4)。 このた め我 々は,選択 的 白色腐朽菌 の リグニ ン分 解 に i
n∫
i
t
u型
ル発生機構 が関与 して い るこ とを提 唱 しう
う
)
, ラジカル発生系 の解析 と応用研 究 を進 めてい る。 i
の リグニ ン分解機構 が成立す るため には, フ リーラジカル連鎖 反応 のみで木材 中の リグニ ンが高選択 的
に分解す る こ との証 明が必要 で ある。
従来 フ リー ラジカル連鎖 反応 のみで -̀
木 材 中の'
'リグニ ンが穏和 な条件で分解す る とは考 え られてい
なか った。例 えば,最 も酸化 力 の強 い ラジカル種 の-一
つであ る水酸化 ラジカル発生系 で木材 を処理 した
場 合で も多糖 の分解 は進行す るが リグニ ンの重量減少 は軽微 であ り,細胞 間層 リグニ ンの分解 に よる木
材 細胞 の剥 離,即 ちパ ル プ化 は観 察 され ない う`;)。我 々は,制御 された フ リー ラ ジカル反応 の可能性 を
追求すべ く過酸化 中間体 となる有機 ヒ ドロペ ル オキ シ ドか ら強力 な フ リーラジカル を発生 させ る系 を探
索 した。その結果, これ まで に白色腐朽菌 の代 謝物 であ る ピ リジ ンお よびその誘導体 の鋼錯体 と有機 ヒ
ドロペ ルオキ シ ドの反応 に よるカーボ ンセ ンターラジカル発生系が室温 ・水溶液 中 とい う穏和 な条件下
51う
3)。 さらに, この反応系 を木
で非 フェ ノール性 高分子 リグニ ンを強力 に分解 させ るこ とを見 出 した5
'
ubu
で
′
・
mi
s
po
'
aや Di
c
h
o
mz
'
l
ufS
qu
al
e
n
∫な どの選 択 的 白色腐朽 菌 と同 じ く細 胞
材 に対 して作 用 させ る と, C.∫
同士 を接着 してい る細胞間層 の リグニ ンが反応 の初期 か ら分解 し,反応 が進行す る と針葉樹 材,広葉樹
材 と も細胞 剥離 の現 象が見 られ が
。 この よ うに, ヒ ドロペ ル オキ シ ドが ホモ リテ ィックに開裂 して
G)
- 41-
木材研 究 ・資 料
第36号 (
2
000)
図4 選択 的 白色腐朽 にお け る フ リー ラジカル発生様 式 とリグニ ン分解 の関係 *
*選 択 的 白色腐 朽 にお い て, 細 胞 壁 深 層 や細 胞 間層 の リグニ ンを攻 撃 す るた め に
は,細胞 内膝 の酵 素 に よって生 成 した ラジ カル (
反応様式 A) で はな く, リグニ ン
分解 の現 場付 近 で発生 した ラジ カルが有利 で あ る (
反応様 式 B卜3) O
次 々 と過酸 化 中間体 や ラジ カル種 を生 成す る反応系 は, ラジカル連鎖 反応 の制 御 に よ り細胞 壁 リグニ ン
のみ な らず細 胞 間層 リグニ ンに対 して も攻 撃 的 な反応 となる。Li
Pの活性 中心 の モデ ルで あ るヘ ム を ヒ
ドロペ ル オキ シ ドを電子 受 容 体 と して反 応 させ る 1電子 酸化 型 ペ ル オキ シ ダーゼ モ デ ル 反応 う̀4)で 木材
を処 理 した場 合 にお いて は,細 胞 内腔 に近 い細 胞壁表 層 か ら リグニ ン分解 が進行 し,細 胞 間層 の リグニ
ンの分 解 は二 次 壁 が脱 .
)グニ ンされ た後 に起 こるた め細 胞剥 離 の現 象 は観 察 されて い な い
o こうし
`
'
∼)
た分解 のパ ター ンの違 い は木材 腐朽 菌 で も観察 されて お り,薗体外 酸化機構 と腐 朽様 式 の関係 を考察 す
る上 で も興味深 い 。
以 上 の よ うに, ヒ ドロペ ル オキ シ ドの ラジ カル連 鎖 反応 に よ り木材 中の リグニ ンが水 溶液 中で高選 択
的 に分解 し, それ に よる木材 の分解 形態 が選 択 的 白色腐 朽菌 の もの と近 い とい う現象 は,選 択 的 リグニ
ン分解 菌 に よる i
n∫
i
l
u ラ ジカル発 生 系 の 関与 を強 く示 唆 す る と と もに, 過酸化 前 駆 体 か らの ラジ カル
連 銀 反応 の制 御 を用 いて多様 な リグニ ン分解 反応 を構 築 で きる ことを示 す。
3.
2 リビッ ドベル オキ シデ ー シ ョン に よる フ リーラ ジカル発 生 システ ム
n∫
l
l
u ラジカル発生系 が 白色腐 朽菌 の リグニ ン分解 に関与 して い る とす れ ば,木材 腐
上述 の よ うに , i
朽 時 に ラジ カルの発 生源 とな る過酸 化前 駆 体 が必要 とな る。 C.j
ubu
e
'
7
ni
j
Po7
・
aは試験 され て いる白色腐朽
蘭 の 中で 最 も効率 よ く木材 中 の脂 肪 酸 類 を分 解 除去 す る川'
)
o 脂肪酸 類 は過 酸 化 に よ りフ リー ラジ カル
- 42-
渡辺 :白色腐朽 菌 の フ リー ラジ カル生 成 プ ロセ ス
を発生 す る代 表 的 な化 合物 で あ る。 最近,我 々 は脂肪 酸 類 の過酸化 (リビ ッ ドベ ルオキ シデ ー シ ョン)
図 5) を示 す と と もに ì7), 本 菌 が 木材腐 朽 の際 に遊 離 の脂
に関連 す る本菌 の新 規 な脂 質 関連代 謝物 (
肪 酸 と リビ ッ ドヒ ドロペ ル オキ シ ドを生 産 し, それ らの消費 に伴 って リビ ッ ドベ ルオキ シデ ー シ ョン分
解 産物 の指 標 とな る TB
ARSが蓄 積 され て い くこ とを示 した'
i
H
)
。 これ らの こ とは, 本 菌 が木 材 中 の過
酸 化前 駆体 を最大 限有効利 用 す る とと もに, 薗 自身 もラジカル発生 源 となる低 分子過酸化前駆体 を生 産
して い るこ とを示 す 。 ラジカル発生 源 とな る過 酸化 前駆 体 と して は,脂肪酸 の他 に もテ ルペ ンや アルデ
ヒ ド, ケ トンな ど多数 の低 分子化 合物 があ り,過酸 化 の 開始機構 も二重結合 や カルボ キ シル基 に隣接 す
る メチ レン基 か らの水素 引 き抜 き, カルボ キ シル基 自身の過酸化 な ど多様 で あ る。 C.∫ub
u
e
r
mi
S
Po
7
・
aは,
Li
P で も酸 化 分解 で きない難分解性 pAH で あ る フル オ レンを 2 日間で 83% 分解 す る。 同一 の培 養 条件
で Li
P 生 産蘭 で あ る P・C
/
1
'
:
V
∫
0
5
Po
l
2
・
u
m の 3つ の菌株 の分解 率 は 1
4- 36% で あ るì
9
)
。菌 体 外 で の酸 化 シス
テ ムの発現 は培 養 条件 に大 き く左 右 され るため,菌株 間の優 劣 の判 断 は下せ ないが , Li
P 非 生 産 菌で あ
川bE
'
e
r
mi
i
Po
r
aが極 めて強力 な酸化機構 を有 して い る こ とは明 らかであ る。
る C..
COOH
COOH
(
Z)
-1,7Nol
adec
adi
ene231
di
car
boxyl
i
caci
dl
NDA)
図 5
Ce
r
l
Po
r
l
O
Ps
z
・
H u
b
u
e
r
mi
J
Po
r
'
]培 養 液 か ら分離 した新規脂 質 関連物 質6
7
)
リビ ッ ドベ ル オキ シデー シ ョンに よる T
)グニ ン分解 に関 して Hammelらの グルー プ は, M nP が不飽
和 脂 肪 酸 の存 在 F
で 非 フ ェ ノー ル性 リグ ニ ンモ デル や PAH を分 解 す る こ とを報 告 した 7O171)。 フ ェナ
ン トレンや フル オ レンな どイオ ン化 ポ テ ンシ ャルが 7.
55e
V 以上 の PAH は Li
P で も酸化 で きないが,
M nP に よる リ ビ ッ ドベ ル オキ シデ ー シ ョンで は これ らの化 合物 が酸 化 され る72-75)。 これ らの機 構 に
は, 脂肪酸 由来 の フ リーラジ カルが 関与 して い る と推 定 されて いたが, これ まで この反応系 で発生す る
ラジカル種 を検 出 した例 は なか った。 また, そ もそ もマ ンガ ンの酸化 酵 素で あ る M nP が なぜ不 飽和 脂
肪 酸 の酸化 を触 媒 で きるか とい う問題 と, 強 い抗 酸化 剤 で あ る M I
l(
Ⅰり の存 在 下 で 脂 質 の過 酸 化 が起
uE
'
e
mi
s
Po
l
・
a と B.,
l
du
∫
l
aの M nP の単 一 ア イ ソザ イ
きる理 由 につ いて も謎 で あ った.筆 者 らは, 罷近 c.∫
ム を リノール酸 お よび リノール酸 の ヒ ドロペ ル オキ シ ドと反応 させ , この反応 系 に よ って リビ ッ ドヒ ド
ロペ ル オキ シ ド中間体 か らア シル ラジ カルが生 成 す る こ とを示 した 7(,)(,M nP/リビ ッ ドの反応系 にお い
て は, M nP の触 媒 サ イ クル で生 成 した M n(
T
TT
)が遊 離 の脂肪 酸 のユ ノー ル型 構 造 か ら水 素 を引 き抜
いて カルボ キ シアル キル ラジ カル を生 成 し, この開始 反応 に よって生 じた ラ ジカル種 が ビスア リル位 の
水素 を引 き抜 くこ とに よって ラ ジ カ ル連 鎖 反応 が 開始 され る (
図 6).
〕 この一 連 の 反応 で生 成 す る リ
ビ
ッ ドヒ ドロペ ル オキ シ ドは, M n(
T
l
)とは反応 しないが M n(
T
I
T
) と反応 して ラジ カル を発生 させ る。
Ml
、(
Ⅰ
り はベ ル オキ シル ラジ カル を トラ ップす る強 い抗 酸 化 作 用 が あ るが, この停 止 反応 で生 成 す る リ
ビ ッ ドヒ ドロペ ル オ キ シ ドは M nP の触 媒 サ イクルで生 成 す る M n(
Ⅰ
Ⅰり に よって再 びホ モ リテ ィ ック
に分解 され るため に, ラジ カル連鎖 反応 が継 続 す る。 この現 象 は, 従来 フェ ノール酸化 剤 と して考 え ら
れ て いた M l
-(
I
I
I
)が過 酸 化 前 駆 体 や リビ ッ ドヒ ドロペ ル オキ シ ドの存 在 下 で は,酵 素 か ら離 れ た場所
で強 力 なラジ カル を発生 させ る ラジ カル連 鎖 の鍵物 質 となる こ とを示 してい る7f')。
リポ キ シゲ ナ ーゼ は シス型 1,4-ブ タジエ ン構 造 を もつ不 飽和 脂 肪 酸 の酸化 を起 こす オキ シゲ ナ ーゼ
で あ る。 リポ キ シゲ ナ ーゼ の反応で は, ビス ア リル位 か らの水素引 き抜 きを経由 して リビ ッ ドヒ ドロペ
ル オキ シ ドが生 成 し, リビ ッ ドヒ ドロペ ル オキ シ ドが Fe(
H)型 の リポ キ シゲ ナ ーゼ を Fe(
I
II
)型 に酸
化 して アル コキ シル ラジカル を生 じる。 この反応系 には遊離 の脂肪 酸 や フェ ノールな どの水素供 与体 が
-
43 -
木材研 究 ・資 料
第 36号 (
2
000)
′
\
ノ
ぞ
〉
C
、
O
H[
O
n
o
l
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_…
こ
こ
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9
…
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1
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‖u
∈二二
二、
/∈==ニー
/
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cal
si
ncl
udi
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adi
cal
図 6 マ ンガ ンペ ル オキ シ ダーゼ に よる ・
)ビ ッ ドベ ル オキ シデ ー シ ョン開始 機構 7<
う
)
* ヒ ドロペ ル オキ シ ドと休 止 型 ペ ル オキ シ ダーゼの反応 に は図 に示 したヘ テ ロ
リテ ィ ックな開裂 の他 にホモ リテ ィ ックな開裂 があ る。 ホモ リテ ィックな開裂
で は ア ル コキ シ ラ ジ カ ル と compound IIが 生 成 す る. 13S-ヒ ドロベ ル オキ
E-オ ク タデ カ ジュ ン酸 は Ce
r
l
Por
i
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L
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、
u
bT
'
e
r
mz
'
j
Po
r
aの MnP の 良 い電
シー9Z,ll
了 の不均化 に よって生 じた HL
,
0{
2(
R-H)
子 受容 体 とは な らない。 従 って ,OL
が休 l
上型ペ ル オキ シ ダーゼ酸 化 の中心 的役割 を担 う。
必要 で あ る。 リビ ッ ドヒ ドロペ ル オキ シ ドか らの アル コキ シ ラジ カルの生 成 は Fe(
Il
)な ど反応 系 に共
存 す る微 量 遷 移 金属 に よって も起 こ る。 リビ ッ ドヒ ドロペ ル オ キ シ ドか ら生 じた アル コキ シ ラジ カル
は,β一開裂 ,エ ポ キ シ化 , 水素 移動 な どに よ り, カーボ ンセ ン ター ラジカル,ベ ル オキ シル ラジ カル,
ア ル コキ シル ラ ジ カル, スーパ ー オキ シ ド, ア シル ラジ カルが生 じる 77)。 リ ビ ッ ドヒ ドロペ ル オ キ シ
ドか らの これ らの ラジ カルの生 成 は, シ トクロム P450 にお いて も観 測 され て い る (
図 7)7H). シ トク
ロ ム P450一脂 質過 酸 化 系 に よ る リグニ ン分 解 は試 験 され て い な い が, リポ キ シゲ ナ ーゼ 反 応 系 で は
Mnp-脂 質過 酸化系 7°)と異 な りク ラフ トパ ル プの脱色 は促 進 され ない こ とが報告 され てい るH
り
)
。
また,先 に述 べ た ラ ッカーゼ - メデ ィエ ー ター反応 は PAH で あ る フ ェナ ン トレ ンをほ とん ど酸化 で
きないが, この系 に不飽和 脂肪 酸 を加 える とマ ンガ ンイオ ンの非存 在下 で もフ ェナ ン トレンの分解が起
きる7
V̀。 これ らの結 果 は, 脂肪 酸 な どの過 酸 化前 駆 体 由来 の あ る特 定 の ラジ カル種 の発生 が 難 分 解性
化 合物 の酸化 分解 を引 き起 こ してい る こ とを示 して い る。 この よ うな ラジカル種 を特 定 し, それ を効 果
- 44-
渡辺 :白色腐朽 菌 の フ リー ラジカル生成 プロセ ス
R
も、
R■
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Hl
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R
・ 02
1
・ 十 H2
。
シ トクロム P450 に よる リビ ッ ドヒ ドロペ ル オキ シ ドか らの フ リー ラジ カル生成
反応
7H)
的 に発生 させ る制御機構 の解 明が, 白色腐朽 菌 の リグニ ン分解能力 の増強や新規 な リグニ ン分解 反応 開
発の鍵 とな るであ ろ う。
M。Pは Mn(
I
I
)存在下で ナ イロ ンを直接 酸化 分解す る他 Hl),不飽和 お よび飽和 脂肪酸 を含 む界面活
ve
e.
、80 や Twe
en 2
0を添加 す るこ とによ りポ リエチ レンを分解す る臼2)。前者 の反応系 で
性 剤 で あ る T、
はマ ンガ ンイオ ンの キ レ一 夕-が 反応 を阻害 す るの に対 して, 後者 の反応系 で はマ ンガ ンイオ ンの キ
レ一 夕-の添加が必要 であ る。 これ らの反応 で は, ラ ッカーゼ/メデ ィエ ー ター/
脂肪酸 反応系 の ように
GSH の反応で提案 された ようにフ リー ラ
フ リー ラジカルその ものが活性 種で あ る可能性 の他 に,HRpジカルのマ ンガ ンコ ンプ レ ックスが 関与 して い る可能性 も否定 で きない。 いづ れ に して も, 反応 が過酸
化 水素 を添加 しな くて も進行す るこ とか ら,有機 ラジカルに よる酸素 の還元 と, それ に よって生成 した
04
_
,
ー)の不均化 が関与 して い ると推定 され る。
スーパ ーオキ シ ド (
3.
3 活性酸素種 と金属酸素錯体 反応
空気 中に存在す る酸素分子 は,三重項酸素 と呼 ばれ分子 中に不対電子 を 2個 もつ ビラジカルで ある。
この三重項酸素 は,金属錯体, ラジカル,光 ,放射線 な どの刺激 に よ り活性酸素種 と呼 ばれ る攻撃的 な
OH・
),一重項 酸 素, スーパ ー オキ シ ド (
02
分子 にな る。 活性 酸 素 種 の 中で, 水酸 化 ラジ カル (
)
は
リグニ ンを酸化す る。 これ らの中で,酸素 (
三重項酸素)の光増感反応 や次亜塩素酸 と過酸化 水素の反
応 に よって生成 す る一重項酸素 は,単離 した爆 砕 リグニ ンとアセ トニ トリル-エ タノール (1:1) 中で
反応 して シナ ピル アル コールや バニ リンな どの低 分子化 合物 を与 える8日
")。
リグニ ンの微 生物分解 に
お ける一重項酸素 の関与が 1980年代 を中心 に議論 されたが,現在 まで菌分解 にお けるこの活性酸素種 の
関与 を示す明確 な証拠 は得 られていない。一重項酸素 は光励起 によって生成す るため, リグニ ン分解 に
関 して は主 に紙の光劣化 との関係 で研 究が進 め られてい る。一重項酸素 は リビ ッ ドの 2重結 合 に直接付
加 して リビ ッ ドヒ ドロペル オキ シ ドを与 える。
- 15--
木材研 究 ・嚢 料
一方 ,酸 素 の- 電子 還 元体 で あ る
0了
第36号 (
2
000)
は高 分子 リグニ ンモ デ ル を低 分子化 で きるほ ど酸 化 力 が強 く
β 不飽和 リグニ ンモ デ
ないが , フ ェ ノキ シラジ カル との反応 で は芳香 環 開裂 生成 物 を与 え る。 また , αル の β-ラジ カ ル と反応 して共役 2重結 合 の CαCβ 開裂 を起 こす 壬iう)。 従 って, 酵素 な ど何 らかの酸化
21 は生 成 した リグニ ン由来 の ラジ カル と直接 反応 して
分解 系 で リグニ ンか らラジカルが生成 す る と OL
分 解 を促 進 す る。0 2 は キサ ンチ ンオキ シ ダーゼ な どの酵素 反応 の他 ,ベ ル オキ シル ラ ジ カルの 崩壊
や有機 ラ ジカ ル に よる酸 素 の還 元 に よ り生 じる。例 え ば, Li
P が ベ ラ トリル アル コール (
VA) を酸化
して生 じるベ ラ トリル アル コール カチ オ ンラジ カル (
VA十 )や Ml
l
P の反応 で生 じる M I
-(
HI
)は, 木
CO 2'
材腐 朽 菌 の代 謝物 で あ る シ ュ ウ酸 と反応 して フ ォー メー トアニ オ ンラジ カル (
酸 素 を還 元 して
0.
2一 が生
じるH…
日。結 果
)
を生 じ, これ が
と して これ らの リグニ ン分解 酵 素 に よる VA や Ml
-(
II
)の
酸 化 が 非競 争 的 に阻害 され る。 同様 に, Mn(
T
I
T
)は, マ ロ ン酸 , グ 1
)オキ シル酸 か ら も酸 素 存 在 F
で
co了
と o{
2
J を生 成 す るn)
。 これ らの 反 応 で生 成 す る CO2
●
ー の 標 準 還 元 電 位 は COL
,
/
CO{--
1.
80V に達 し, プ ロモ トリクロロエ タ ンの脱 プ ロム化り
2
)
, トリク ロ ロ酢 酸 の 脱塩 素 化9
3
)
,Fe(
HT
)の
Fe(
TI
)へ の 還元'
'
2
)を起 こす 。 リ ビ ッ ドベ ル オキ シデ ー シ ョンの過 程 で もフ リー ラジ カル に よる酸 素 の
,が生 成 す る。
還元 に よ り O l, が生 成 し, これが不均 化 して H20L
リグニ ン分解 物 か ら生 じる ヒ ドロキ ノンは ラ ッカーゼ や Ml
ュ
P に よって酸 化 されて セ ミキ ノンラジ カ
CDH)
ル とな る。 この セ ミキ ノ ンラジカル は, キ ノン リダ ク タ-ゼや セ ロ ビオー スデ ヒ ドロゲナ ーゼ (
に よ って ヒ ドロキ ノ ンに還 元 され るが, この一連 の過 程 で生 成 す るセ ミキ ノンラジカル も酸 素 を還元 し
て
0了
を発生 す る.P.C
/
u
y∫
ot
p(
m'
u
m や P.e
l
yl
gi
iな ど多 くの 白色腐朽 菌 は リグニ ン分解 酵素 とキ ノン還
元 酵 素 の両 者 を生 産 す る菌 で あ り, 強 力 な 02 発生 系 を もつ 。 こ う して生 成 す る 0・
2
一 は上述 の よ う
に ラジ カ ル と反 応 して リグニ ン側 鎖 や芳香 環 の分 解 を起 こす他 に, Mn(
r
T
)の Ml
l(
I
II
)- の酸 化 , 不
均 化 に よ る H204
2 の発 生 ,FC(
I
I
I
)の Fe(
I
I
)- の還 元 な ど木材腐 朽 にお い て 多様 な働 きを して い る。
02 に よって FC(
HI
)が Fe(
T
T
) に 還 元 さ れ る と H{
2
0L
2との 反 応 に よっ て さ ら に 水 酸 化 ラ ジ カ ル
(
oH・
)あ るい は鉄 の酸 素 錯体 が生成 す る。 フ ェ ン トン反応 と呼 ばれ る この反応 はセ ル ロー ス を激 し く
損 傷 させ るた め選 択 的 な リグニ ン分解- の寄 与一
は少 ない と思 われ るが , セル ロー スを優 先 的 に分解す る
褐 色腐朽菌 や リグニ ンとセ ル ロース をほぼ 同時 に分解 してい く白色腐 朽 菌で は菌体外 酵 素 を木材細胞 壁
内 に進 入 させ るた め に こ う した OH・発生系 を積極 的 に利 用 して い る と推 定 されて い る。OH・は, 白
e
ur
o
l
u
Je
r
i
n
gi
iの MnP の発現 も誘 導 す るり1)。褐 色腐 朽 薗 Gl
o
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l
Jl
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um l
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'
I
b
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um は,2
,
5-ジ メ ト
色腐朽 薗 pl
キ シー1,4-ベ ンゾキ ノンを生 産 し, この キ ノンと相 当す る ヒ ドロキ ノンとの レ ドックスサ イクルに よ り,
Fe(
HI
) を Fe(
II
)- 還 元 す る。 同 時 に,02
一 由 来 の H2
02が 生 産 され, 結 果 と して OH・が生 成 す
る。 この系 は, ポ リエ チ レング リコー ル を分解 す る。
う
)
oFe(
T
I
T
)の Fe(
I
T
)へ の還 元系 に は, この他 シ
デ ロフ ォア用 物 質。-̀
)
, や糖 ペ プチ ドな どの低 分子 代 謝物 。7.州 ), セ ロ ビオー スデ ヒ ドロゲ ナ ーゼ な どの
糖 酸化 酵 素 札̀
=)
。)も関与 す るo
木材 には,遷移 金属 と してマ ンガ ン,鉄 と と もに銅 が含 まれてい るが, これ まで低 分子銅鐸体 に よる
室 温 水溶液 中での高 分子 リグニ ンの分解 は報告 されて お らず , リグニ ン分解 にお ける銅 鐸体 反応 はそれ
ほ ど注 目されて い なか ったo しか しなが ら,Cu(
I
)が H・
2
0L
,と反応 す る と Fe(
I
I
) と H2
02の反応 と同
様 oH・を発 生 させ, しか もそ の生 成 速 度 は,Fe(
I
I
) と H2
02の場 合 よ り一桁 以上 速 いo 従 って, 木
材腐 朽 蘭 に よる OH・の発生 に木材 中 に もと もと含 まれ て い る銅 イオ ンが 関与 して い る こ とは十分予 想
され る こ とで あ るO また, エ チ レンジア ミン銅 錯 体等 多 くの銅 の配位 化 合物 は遊 離 の銅 イオ ンと同様
H2
02と反応 して OH・を発生 させ るが,銅 の ピ 7
)ジ ン錯体 と過 酸 化 水素 の水 溶 液 中で の反応 は OH・
04型 2量 体 モ デ ルの β-エ ーテ ル を開裂 させ , クラ
を発生 させ ない に も関 わ らず ,非 フ ェ ノール性 βR も酸化 分解 し, フ ェ ン トン反応 に比 べ て セ ル ロー ス に与
フ トパ ル プ を漂 白す る。 本 反応 系 は POLY-
え る ダメー ジが少 ない。 また, 木材 チ ップ と作 用 させ た場 合広 葉樹 材 を部 分 的 に脱 リグニ ンす る5=
i
-u)
0
- 46 -
渡辺 :白色腐朽菌 の フ リー ラジカル生成 プロセ ス
ピリジ ンは白色腐朽 菌 の代 謝物 として知 られてお り, ピ リジ ン骨格 を もつ誘導体 は菌代 謝物 と して普遍
的 に存在す る。 また,3.
1に ヒ ドロペ ル オキ シ ドに よ.
るラジカル連鎖 反応 に よ り針葉樹材 と広葉樹材 の
細胞壁 と細胞 間層 リグニ ンが分解 され るこ とを記 したが, この ラジカル発生系 に もピリジ ン骨格 を もち
カーボ ンセ ンター ラジカル を発生 させ る銅錯体 が有効 であ った。 リグニ ン分解酵素であ るラ ッカーゼ は
活性 中心 に銅 をもち,酸素 を電子受容体 と して フェ ノールを酸化す る。従来 よ りこの ラ ッカーゼの触媒
サ イ トを模 倣す る試 みが行 われてい るが ,上述 の よ うな銅錯体 とヒ ドロペ ル オキ シ ドの反応 は リグニ ン
分解酵素の触媒機構 にはない組 み合 わせ であ り, リグニ ン分解 に関 して は研 究 の扉が よ うや く開 きか け
た ところ と も言 える55157)。過酸化 前駆体 あ るい は過酸 化 中間体 か らの ラジカル連鎖反応 を鉄, マ ンガ
ン,銅 な どの金属錯体 で制御 した り,ベ ルオキ シ錯体 な ど oH・以外 の活性種 を金属錯体 と過酸化 水素
反応 に よって生成 させ る方法 が リグニ ン分解 の戦略 と して今 後重用祝 されて い くであ ろ う。
以上 の よ うに,木材腐朽菌 に よる リグニ ン分解 において は,嫌気性 微生物 に よる リグニ ン分解 1。卜 105)
とは対照的 に,酸素 お よびそれか ら派生す る活性酸素種 が基 質 との反応 や酵素 の発現 に深 く関与 してお
り,酸 素 を巧 みに操 る能力が この種 の微生物 の優 れた木材分解力の一つ の決 め手 とな ってい る。
4.終
わ
り
に
C..
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∼
1
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L
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,
Po
J
・
aな どの選択 的 1
)グこ ン分解菌 はセル ロー スの ダメー ジ を最 小 に して リグニ ンを効 率 良
く分解す る。 しか もこの反応 は酵素 か ら離 れた場で起 きてい る。 白色腐朽菌 の こ うした絶妙 な ラジカル
制御機構 の解 明 は,環境調和型 の リグニ ン分解 反応 の構築 に対 して革命 的な恩恵 をもた らす もの と期待
され る lt)t')。 リグニ ン分解酵 素 の発現 ,制御,触媒機構 の解 明 と合 わせ て,木材腐朽 にお けるフ リー ラ
ジカル生成機構 の全体像 の解明が 白色腐朽 菌 の リグニ ン分解力 の遺伝子工学 的増強 1 7.1。H)や環境 汚染物
。
質 の分解 川!
'
)
, さ らには木 質バ イオマ スの成 分分離 とそ れ に続 くケ ミカル ス,エ ネルギ ー 11`川
1),機能
'
),紙 ・パ ル70
5
=
'
1'
二
i・=う̀
),生 分解性 材 料 114・
1
1
5
)
, 食 品素材 1
1卜̀1
2。)ヤ 等 - の総 合 変換 プロセ
性 ポ リマ ー 11L
"
I
)に大 き く寄与 す るであ ろ う。
ス構築 11。・121111
引
用
文
献
1
) K . M ESSNER and E. SREBOTONIK ‥FEMS MI
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3) E. SREBOTNIK and K . M ESSNER : ノ
4) H . W ARIISHI,L.A KII.ESW ARÅN and M .H . G o‖)‥Bi
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) S.CAMARERO,S.SARKAR ,F.
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