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食品産業のサプライチェーン
食品産業のサプライチェーン トレーサビリティ導入による消費者の信頼獲得 に向けて 経営学科 依田 明徳 目次 は じ め に .............................................................................................. 3 第 1章 食 品 産 業 の サ プ ラ イ チ ェ ー ン ................................................... 4 第 1節 食 品 産 業 の サ プ ラ イ チ ェ ー ン ................................................ 4 第 2節 食 品 に お け る リ ス ク と ハ ザ ー ド ............................................. 5 第 2章 食 品 産 業 に 関 わ る 不 正 問 題 ...................................................... 7 第 1節 こ れ ま で の 不 正 問 題 と 原 因 .................................................... 7 第 2節 不 正 を 促 す 要 因 .................................................................... 9 第 3章 ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 現 状 ......................................................... 11 第 1節 食 品 ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 定 義 ............................................... 11 第 2節 食 品 ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 取 り 組 み 状 況 .................................. 12 第 1項 EU に お け る ト レ ー サ ビ リ テ ィ .......................................... 12 第 2項 米 国 に お け る ト レ ー サ ビ リ テ ィ ......................................... 14 第 3項 日 本 に お け る ト レ ー サ ビ リ テ ィ ......................................... 16 第 3節 非 政 府 組 織 に よ る ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 取 り 組 み ..................... 18 第 4節 日 本 水 産 株 式 会 社 に よ る ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 取 り 組 み ........... 19 第 4章 ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 意 義 ......................................................... 20 第 1節 ト レ ー サ ビ リ テ ィ に 対 す る 消 費 者 の 意 識 ............................... 20 第 2節 ト レ ー サ ビ リ テ ィ に 対 す る 食 品 関 連 事 業 者 の 意 識 .................. 22 第 5章 安 全 な 食 品 調 達 に 向 け て ......................................................... 23 第 1節 第 1項 ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 課 題 ...................................................... 23 食 品 事 業 者 が 抱 え る 課 題 ................................................... 23 1 第 2項 シ ス テ ム 上 の 課 題 ............................................................. 24 第 3項 リ ス ク 防 止 の 効 果 ............................................................. 25 第 2節 今 後 の 展 望 .......................................................................... 26 お わ り に ............................................................................................. 27 参 考 文 献 ............................................................................................. 28 付 表 .................................................................................................... 32 2 はじめに 2001 年 9 月 に 確 認 さ れ た 国 産 牛 の BSE( 牛 海 綿 状 脳 症 ) の 発 症 に よ り , 食 品安全対策に対する不信が増大した。それにともなう牛肉の産地偽装表示の発 覚が追い打ちをかけ,深刻な社会問題となった。 それ以降も,食中毒や産地偽装,虚偽広告,賞味期限改ざん,異物混入など 食品産業における不祥事が多発した。また,東日本大震災を受けて,食物に対 する放射性物質の影響への懸念から,食の安全に対する関心はさらに高まって きた。 ま た ,日 本 で は ,1960 年 代 に は 70% か ら 90% 程 度 あ っ た 日 本 の 食 料 自 給 率 が年々低下傾向にあり,現在ではカロリーベース,生産額ベースのいずれも主 要先進国の中で最低水準となっているため,海外からの食料の輸入が増加して いる。 食品産業の原料の段階から製品やサービスが消費者の手に届くまでの全プロ セスの流れであるサプライチェーンが複雑化し,国内外で関わる事業者の数が 相当数となり,サプライチェーンのすそ野が大きく広がっている。 こ れ は ,サ プ ラ イ チ ェ ー ン 全 体 の 管 理 が 容 易 な も の で は な く ,サ プ ラ イ チ ェ ー ンの川上のどこかで危害が混入するリスクも高まることを意味している。 これらに対し,食品への信頼を取り戻し,流通経路の透明性を確保すべく, 農林水産省が主導で食品トレーサビリティの導入も進められてきた。 食品トレーサビリティとは,生産,加工,流通段階での食品の移動を把握す るサプライチェーンの管理に有効的な手段であり,産地や流通経路等の情報を 公開することによって,消費者に安心して良い商品を選んでもらえることが期 待されている。 本論では,以上を踏まえ,日本におけるトレーサビリティの現状とその導入 の意味を検討し,それが取引先や消費者の信頼の獲得につながる可能性を探っ ていきたい。 3 第 1章 第 1節 食品産業のサプライチェーン 食品産業のサプライチェーン 1990 年 代 に , サ プ ラ イ ヤ ー に よ る モ ノ や サ ー ビ ス の 供 給 が 顧 客 ニ ー ズ を 満 足させるための組織能力に大きな影響を与えることが明らかになった。これに より,企業のサプライベースや調達戦略にも注目が集まり,高品質の製品を生 産 す る だ け で は 不 十 分 と な っ た 1。 企業にとって,自社内の管理運営だけではなく,直接・間接にモノを供給す る川上の企業ネットワークや最終消費者への物流や製品のアフターサービスな ど を 行 う 川 下 の 企 業 ネ ッ ト ワ ー ク も 管 理 す べ き 対 象 と な っ た の で あ る 2。 現在,多くの企業は市場が突然予想外の展開を見せても,すぐに対応できる よ う に サ プ ラ イ チ ェ ー ン を 整 え て い る 。サ プ ラ イ チ ェ ー ン と は , 「原材料の段階 から最終消費者にいたるモノの流れおよびこれに付随する情報の流れに関わる あ ら ゆ る 活 動 」 3を 指 す 言 葉 で あ る 。 サプライチェーンの構築には複数の要素が 重要となる。第 1 に,短期的な需 給変動に素早く対応し,外的要因による混乱を円滑に処理する俊敏性である。 俊敏性を備えるためには,サプライチェーン内のパートナー企業が素早く行 動できるように,サプライヤーや顧客に積極的に情報を流し,サプライヤー各 社や顧客と協力関係を築くことである。 また,予想外のニーズに合わせてすぐに体制を変更できるように,信頼でき る物流システムを構築することなどが求められる。 第 2 に,市場の構造変化に合わせた サプライチェーンの調整や事業戦略,製 品,技術に適応するようにサプライチェーンを修正する適応力である。 適応力を高めるためには,経済全体の流れから目を離さないことが重要であ る。グローバル・サプライチェーンの場合,コスト,スキル,リスクが絶えず 変化する。また,規制緩和が進むと専門特化した企業が現れる。 1 ロバート・ハンドフィールド,アーネスト・ニコルス・ジュニア著,新日本 製 鐵 株 式 会 社 EI 事 業 部 訳 『 サ プ ラ イ チ ェ ー ン マ ネ ジ メ ン ト 概 論 』, ピ ア ソ ン ・ エ デ ュ ケ ー シ ョ ン , 1999 年 , 2 ペ ー ジ 。 2 同上書,2 ページ。 3 同上書,2 ページ。 4 そのため,世界各地の経済動向を観察し,新たな調達先や販売先を見つける ことや,中間業者を利用して,新たなサプライヤーや流通インフラを発掘しな け れ ば な ら な い 。 ま た , 供 給 過 剰 な ど 「 ム チ 効 果 」 4に よ る 無 駄 を 防 ぐ た め に , 直接の顧客だけではなく,最終消費者のニーズを読み解くことが重要となる。 第 3 に,利害の一致である。部品メーカー,組立会社,物流会社,小売店な ど,それぞれがまず自分の利益を最大化しようと動くため,それぞれの利害を 一 致 さ せ る こ と は 極 め て 重 要 で あ り ,サ プ ラ イ チ ェ ー ン 内 に 1 社 で も ベ ク ト ル のずれた企業が混ざっていると,その企業の行動がボトルネックになってしま う。 そのため,サプライヤーと顧客の間で情報やノウハウを惜しまず交換し,利 害の衝突が起こらないよう,各社の役割を具体的に決める。さらに,リスク, コスト,利益を公平に分配するなどサプライチェーン全体のパフォーマンスが 高 ま る よ う な イ ン セ ン テ ィ ブ 体 系 を つ く る こ と が 重 要 と な る 5。 こうしたサプライチェーンの構築により,企業は持続的な競争優位を確保す ることができる。さらに,近年,食の安心と安全の意識の高まりにより,食品 産業では食品に潜むさまざまなリスクやハザードに対処するべく,サプライ チェーンマネジメントを通じたトータル管理やトレーサビリティ導入の重要性 が叫ばれている。 第 2節 食品におけるリスクとハザード 食 品 の 変 質( 微 生 物 に よ る 味 や 色 ,匂 い 等 の 変 化 や 発 が ん 性 物 質 の 発 生 ,菌 の 繁 殖 な ど )か ら ,食 中 毒 ,感 染 症 ,発 が ん 性 ,ア レ ル ギ ー ,栄 養 不 良 ま で 様 々 なリスク(危険)が存在している。そして,これらのリスクを引き起こす可能 性のある物質または状態をハザード(危害)という。 食 品 に お け る ハ ザ ー ド は ,「 微 生 物 ( 細 菌 , ウ ィ ル ス ) や 自 然 毒 ( キ ノ コ 毒 , 4 小売りにおける小さな変動がサプライチェーンを遡るうちに次第に増幅され ること。サプライチェーンを構成するプロセスが多ければ多いほど,またリー ドタイムが長ければ長いほど,ムチ効果は増幅されやすい。 ハ ウ ・ L・ リ ー ほ か 『 サ プ ラ イ チ ェ ー ン の 経 営 学 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社 , 20 0 6 年 , 38 ペ ー ジ 。 5 同 上 書 , 3-30 ペ ー ジ 。 5 魚 毒 , 貝 毒 ), 化 学 物 質 ( 添 加 物 , 農 薬 , 環 境 ホ ル モ ン ), 重 金 属 , 異 物 , ア レ ル ギ ー 物 質 ,放 射 能 物 質 ,そ し て 腐 敗 ,酵 素 作 用 ,樹 脂 変 敗 」 6 な ど 種 類 や 内 容 が非常に多様である。 リ ス ク の 発 生 と 程 度 は ,次 の 要 素 に 左 右 さ れ る 。 「 第 1 に ,ハ ザ ー ド の 存 在 , 第 2 にハザードに汚染された食べ物をどのくらい食べたかという暴露量,第 3 にどの程度のハザードで健康被害が起こるかの感受性である。最終的な発生リ ス ク の 程 度 は 各 要 素 が 積 み 重 な っ て 決 ま る 。」 7 食品の安全対策は,ハザードの除去,曝露の回避,感受性のコントロールの いずれかを行うか,もしくは組み合わせることで実行する。しかし,食品のリ スクでは,感受性をコントロールして食品リスクを制御することは難しい。感 染症の中には予防接種等でコントロールすることができるものもあるが,食品 リスクでは適用可能ではない。 そ の た め ,多 く の 対 策 は ハ ザ ー ド の 除 去 や 曝 露 の 回 避 が 中 心 と な る 。そ し て , これらの対策を総合的に実行することが最も効果的であることはいうまでもな いが,技術的にも経済的にもすべてを必ず実行するということは困難であるた め,対策の優先順位をつけて実行することが重要である。 食 品 事 業 者 は 第 1 に 危 害 因 子 を 混 入 さ せ な い こ と が 肝 心 で あ り ,製 造 ,流 通 , 保管などの現場を清浄するとともに,温度管理に留意することで,ハザードの 混入,増殖が起こらないようにする。それが,消費者のハザードへの暴露量を 効果的に低くすることにつながる対策上のポイントである。食品に一度混入し てしまったハザードを取り除くには相当なコストがかかってしまうため,食品 加 工 工 程 で の 前 処 理 段 階 で 安 全 ・ 衛 生 を 徹 底 さ せ る べ き で あ る 8。 6 福田晋編『東アジアにおける食を考える 信頼できるフードチェーン構築に 向 け て 』 九 州 大 学 出 版 会 , 2010 年 , 2 ペ ー ジ 。 7 同上書,2 ページ。 8 同上書,2 ページ。 6 第 2章 第 1節 食品産業に関わる不正問題 これまでの不正問題と原因 物 を 食 べ る こ と は ,私 た ち 人 間 が 生 き て い く う え で 必 要 不 可 欠 な 行 為 で あ り , 人と食は切っても切り離せない関係にある。そのため,食品は常に安全な状態 で調達,販売されなければならない。しかし,食品不祥事は絶えず発生してお り ,企 業 規 模 に 関 係 な く「 産 地 偽 装 」や「 賞 味・消 費 期 限 改 ざ ん 」, 「 虚 偽 表 示 」, 「 異 物 混 入 」等 の 事 件・事 故 が 連 日 の よ う に ニ ュ ー ス と な っ て い る 。2001 年 以 降の主な食品不祥事は付表 1 を参照されたい。 食 品 の 事 件 や 事 故 に よ る 自 主 回 収 件 数 は ,2007 年 度 か ら 急 激 に 増 加 し て お り , 前 年 度 と 比 べ 3 倍 以 上 に ま で 増 加 し た 。 そ の 後 も 図 表 1- 1 の と お り 件 数 は 増 加 し ,2014 度 は 過 去 最 高 件 数 と な っ て し ま っ た 。こ れ ら の 自 主 回 収 の 要 因 と し て は ,「 表 示 不 適 切 」 が 例 年 約 半 数 の 割 合 を 占 め て い る 。 出所:独立行政法人農林水産消費安全技術センターホームページ, https://www.famic.go.jp/syokuhin/jigyousya/index.html , ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 13 日 より筆者作成。 2001 年 10 月 に は , 雪 印 食 品 株 式 会 社 関 西 ミ ー ト セ ン タ ー の ス タ ッ フ が 同 年 9 月 の BSE 問 題 を 受 け て 実 施 さ れ た 国 産 牛 肉 買 い 取 り 事 業 を 悪 用 し ,国 外 産 の 7 牛肉を国内産と偽って国内産牛肉のパッケージに詰め込み,農林水産省に買い 取 り 費 用 を 不 正 請 求 し た 。 前 年 に は ,親 会 社 で あ る 雪 印 乳 業 株 式 会 社( 現 : 雪 印 メ グ ミ ル ク 株 式 会 社 )が 雪 印 集 団 食 中 毒 事 件 9 を 起 こ し て い た こ と も あ り ,各 地で雪印グループ製品の不買運動が発生した。 その後,日本食品や日本ハム,西友,ハンナンでも続けて同様の産地偽装問 題 が 発 覚 し , さ ら に は 2007 年 に ミ ー ト ホ ー プ が 補 助 金 詐 取 を 目 的 と す る も の ではなく,以前から利益を得るために国外産の牛肉を国内産と偽装して販売し ていたことがわかった。 こ れ ら の 事 件 は ,BSE 問 題 の 混 乱 に 追 い 打 ち を か け る こ と に な り ,牛 肉 を 扱 う一部の食品・飲食店業者や外食産業企業等に大きな打撃を与え,深刻な社会 問題となった。 そして,偽装の問題は産地のみならず賞味・消費期限でも見られるようにな り ,2007 年 8 月 に 土 産 物 と し て 全 国 的 に 有 名 な 石 屋 製 菓 株 式 会 社 の「 白 い 恋 人 」, 同 年 10 月 に は 株 式 会 社 赤 福 の 「 赤 福 餅 」( 2007 年 10 月 )に お い て そ れ ぞ れ 賞 味・消費期限の改ざんが行われていたことが発覚した。 石 屋 製 菓 に よ る と ,「 白 い 恋 人 」 の 30 周 年 限 定 商 品 の 在 庫 を 処 分 す る た め , 特 別 な 梱 包 か ら 通 常 の 梱 包 に 戻 す 際 に ,本 来 の 賞 味 期 限 の 記 載 よ り 1 ヵ 月 長 く 表 記 す る よ う 指 示 し て 販 売 を し て い た 。さ ら に ,石 屋 製 菓 は 6 月 か ら 7 月 に か けてアイスの一部分から大腸菌群,バームクーヘンの一部商品から黄色ブドウ 球菌を自主検査で検出していたにもかかわらず,店頭回収は始めたが,販売済 み 商 品 は 公 表 せ ず に 消 費 者 か ら も 回 収 を し な か っ た こ と も 発 覚 し た 10 。 赤福については,農水省と保健所の立ち入り検査で,聞き取り調査を行った 結果によると,売れ残り品等の赤福餅を再回収し再度冷解凍を行ったうえで, 製造年月日を再解凍の日付に合わせて包装をしなおす「まき直し」と呼ばれる 2000 年 6 月 ,雪 印 乳 業 株 式 会 社 大 阪 工 場 製 造 の 低 脂 肪 乳 等 を 原 因 と す る 戦 後 最大の食中毒事件。黄色ブドウ球菌が産生する毒素(エンテロトキシン)を原 因 と し , 13,420 人 の 被 害 者 を 出 し た 。 雪印メグミルク株式会社ホームページ, http://www.meg-snow.com/corporate/history/popup/oosaka.html ,ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 7 日 。 10 2007 年 8 月 15 日 付 『 日 本 経 済 新 聞 』 朝 刊 31 ペ ー ジ 。 9 8 行為の他,原材料名の表示についても使用の多い重量順から表示する決まりに 従 わ ず ,「 砂 糖 , 小 豆 , も ち 米 」 と 表 示 す べ き と こ ろ を 「 小 豆 , も ち 米 , 砂 糖 」 と 表 示 し て い た こ と が わ か っ た 11 。 「白い恋人」と「赤福餅」は,地方産の土産物出荷量が上位である人気の商 品で,多くの消費から信頼されていたブランドであった。それらが賞味・消費 期限を偽装し,原材料を再利用していたという事件に非常に大きな衝撃を受け た。 これらの問題はいずれも意図的に行われてきたといえる業者の倫理性が問題 であった。すなわち,経営者や不正を指示した管理の利益追求を第一とした姿 勢が主因といえる。 第 2節 不正を促す要因 食 品 の 偽 装 を 容 易 に さ せ る 要 因 は , 大 き く わ け て 4 つ あ る 12 。 1 つ 目 は , 食 品の保存・輸送技術の発達である。例えば水産物等の場合,冷凍技術の発達に よって,海外で生産したものであってもあまり鮮度を落とすことなく,新鮮な 状態で輸入することが可能となった。そのため,海外産のものを国産と偽装し て販売していたとしても,消費者はその違いに気が付かずに購入してしまうの である。 2 つ 目 は ,食 品 の 場 合 産 地 や 種 に よ っ て 価 格 が 異 な る こ と で あ る 。一 般 的 に , 生鮮食料品については,国産品の方が輸入品よりも価格が高い傾向にあるが, 政 策 金 融 機 関 で あ る 株 式 会 社 日 本 政 策 金 融 公 庫 の 調 査 ( 2015 年 3 月 4 日 ) に よると, 「 割 高 で も 国 産 品 を 選 ぶ 」選 ぶ と 回 答 し た 人 は ,64.0% と な り ,前 回 調 査 か ら 2.4 ポ イ ン ト 上 昇 し て い る 。 そ の た め , 安 い 海 外 産 の 食 品 を 国 内 産 と 偽 装して,実際よりも高い価格をつけて販売してしまう企業が出てきてしまう。 この価格差は,原価を抑える上で大きな効果をもたらすため,偽装する企業に 2007 年 10 月 23 日 付 『 日 本 経 済 新 聞 』 朝 刊 43 ペ ー ジ 。 有 路 昌 彦「 な ぜ 相 次 ぐ 食 品 偽 装 ? 背 景 に 4 つ の 理 由 」 『 日 本 経 済 新 聞【 電 子 版 】』, 2013 年 12 月 3 日 付 , http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1802Y_Y3A111C1000000/ ア ク セ ス 日 2015 年 11 月 30 日 。 11 12 9 とっては,偽装が単純な儲けの動機になってしまうのである。 3 つ 目 は , 法 的 な 理 由 で あ る 。 2013 年 10 月 , 株 式 会 社 阪 急 阪 神 ホ テ ル ズ が メニュー表示と異なった食材を料理に使用していた問題がニュースに取り上げ られたことをきっかけに,次々と外食産業でメニューの偽装表示が発覚した。 その結果,レストラン等で出される外食のメニュー表示に対して厳格な法規制 が整備されていないという問題点が浮き彫りになった。 また,外食のメニュー表示に偽装があった場合,不当表示から消費者の利益 を 保 護 す る 「 景 品 表 示 法 」 13 が 適 用 さ れ る が , 景 品 表 示 法 の 趣 旨 ・ 内 容 が 事 業 者 や 関 係 業 界 に 十 分 に 周 知 さ れ て お ら ず , 遵 守 が 徹 底 さ れ て い な い こ と や ,景 品 表 示 法 に お い て は「 優 良 誤 認 表 示 」 14 が 禁 止 対 象 と な っ て い る が ,そ の 具 体 的なルールが明確にされていなかったことが問題であった。 4 つ目は,消費者が食品について得られる情報が少なく,食品そのもののこ とをよく知らないということである。消費者は,店頭に並べられている食品が 実際にどこでつくられ,どのような業者が関わり,どのような経路を通って店 頭に並べられたかを識別することができないため,企業が偽装をしてもわから ないという状況になりやすい。 以上のことから,本論では,特にこのような状況を解消させ,消費者が偽装 の な い 信 頼 で き る 食 品 を 購 入 で き る よ う に す る 1 つ の 方 法 と し て ,ト レ ー サ ビ リティの導入について,次章以降で論じる。 13 不 当 景 品 類 及 び 不 当 表 示 防 止 法 ( 景 品 表 示 法 ) は ,「 不 当 景 品 類 及 び 表 示 に よる顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を 阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消 費者の利益を保護」を目的としている。 消費者庁ホームページ, http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/index.html #pamphlet, ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 7 日 。 14 事 業 者 が ,自 己 の 供 給 す る 商 品 ・ サ ー ビ ス の 取 引 に お い て ,そ の 品 質 ,規 格 そ の 他 の 内 容 に つ い て ,一 般 消 費 者 に 対 し ,(1)実 際 の も の よ り も 著 し く 優 良 で あ る と 示 す も の (2)事 実 に 相 違 し て 競 争 関 係 に あ る 事 業 者 に 係 る も の よ り も 著 しく優良であると示すものであって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による 自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止して い る ( 優 良 誤 認 表 示 の 禁 止 )。 消費者庁ホームページ, http://www.caa.go.jp/representation/keihyo/yuryo .html, ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 7 日。 10 第 3章 トレーサビリティの現状 第 1節 食品トレーサビリティの定義 ト レ ー サ ビ リ テ ィ ( Traceability) と は ,「 Trace( 追 跡 )」 と 「 ability( 可 能 性 )」 の 2 つ の 単 語 か ら 成 る 言 葉 で あ り ,「 追 跡 可 能 性 」 と も 訳 さ れ て い る 。 製 品 を 追 跡 す る た め に 行 う 段 階 的 な 取 り 組 み 15 は ,1.入 荷 先・出 荷 先 の 特 定 ( 入 荷 ・ 出 荷 の 記 録 の 作 成 ・ 保 存 の 基 礎 的 な 取 り 組 み ), 2. 食 品 の 識 別 ( 入 荷 品 や 製 品 ロ ッ ト 番 号 を 表 示 し , 記 録 す る 取 り 組 み ) 3. 識 別 し た 製 品 の 対 応 づ け(入荷先と入荷ロット,入荷ロットと製造ロット,出荷先と製造ロットをそ れぞれ対応づける記録の作成・保存の取り組み)によって構成される。 食 品 に お け る ト レ ー サ ビ リ テ ィ は , コ ー デ ッ ク ス 委 員 会 16 ( 2004 年 6 月 ~ 7 月 )に よ り , 「 生 産 ,加 工 及 び 流 通 の 特 定 の 一 つ 又 は 複 数 の 段 階 を 通 じ て ,食 品 の 移 動 を 把 握 す る こ と 」と 定 義 さ れ た 。こ の 定 義 に お け る「 食 品 の 移 動 を 把 握 」 と は ,図 表 2‐ 1 の よ う に サ プ ラ イ チ ェ ー ン の 川 上 方 向 へ の 遡 及( ト レ ー ス バ ッ ク )と 川 下 方 向 へ の 追 跡( ト レ ー ス フ ォ ワ ー ド )の 二 つ の 意 味 が あ る 。つ ま り , 各段階の事業者は食品を取り扱った際の記録を作成し,保存することで,問題 のある食品がどこに行ったか,また,どこから来たかを調べることが可能とな る。 食品トレーサビリティの導入前は,事件や事故が発生した際,原料の供給経 路を遡って調査することができず,原因を特定できなかった事例や,原因や回 収したい食品がわかったとしても,回収したい食品をどこに出荷したか記録が なく,出荷先に回収を依頼できないという事例があった。しかし,食品トレー サビリティを導入することによって,食品の事件や事故が発生した際の食品の 移 動 ル ー ト を 特 定 し ,遡 及 ,追 跡 す る こ と で 原 因 究 明 や 商 品 回 収 等 を 円 滑 に し , 事件や事故による被害の拡大を防ぐことができるのである。 農 林 水 産 省 「 ト レ ー サ ビ リ テ ィ に つ い て 」( 2014 年 4 月 ), http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trace/pdf/tore2604.pdf , ア ク セ ス 日 2015 年 7 月 9 日 。 16 消 費 者 の 健 康 の 保 護 , 食 品 の 公 正 な 貿 易 の 確 保 等 を 目 的 と し て , 1963 年 に FAO 及 び WHO に よ り 設 置 さ れ た 国 際 的 な 政 府 間 機 関 。 農 林 水 産 省 ホ ー ム ペ ー ジ , http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/codex/ , ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 7 日 。 15 11 図 表 2‐ 1 生 産 段 階 加 工 段 階 流通経路の遡及 流 通 段 階 トレーサビリティの流れ 流 通 段 階 問題の発覚 →原因を究明 流 通 段 階 流 通 段 階 消 費 者 流通経路の追跡 →商品を回収 出 所 : 農 林 水 産 省 「 ト レ ー サ ビ リ テ ィ に つ い て 」( 2014 年 4 月 ), http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trace/pdf/tore2604.pdf よ り 筆 者 作 成 。 この食品トレーサビリティは,食品の安全性を確保する直接の手段ではない が, 「 食 品 の 安 全 性 に 関 わ る 事 故 や 不 適 合 が 生 じ た と き に 備 え ,ま た 表 示 な ど 情 報 の 信 頼 性 が 揺 ら い だ と き に 正 し さ を 検 証 で き る 仕 組 み 」 17 で あ り , 消 費 者 や 取引先からの信頼の獲得に大きく役立つことが期待されている。 第 2節 食品トレーサビリティの取り組み状況 第 1項 EU に お け る ト レ ー サ ビ リ テ ィ 欧 州 連 合( European Union,以 下 EU)が 食 品 安 全 を め ぐ る 包 括 的 な 枠 組 み の 構 築 に 踏 み 切 っ た の は ,BSE 問 題 が 社 会 に 大 き な イ ン パ ク ト を 与 え た こ と が き っ か け で あ る 。 1996 年 に 英 国 政 府 が BSE は 家 畜 か ら ヒ ト へ 感 染 す る こ と を 報 告 し た の を き っ か け に , EU 各 国 の 消 費 者 の 間 で 食 の 安 全 に 対 す る 危 機 感 が 急激に高まり,人々は大きな不安に包まれた。 し か し , BSE 問 題 に 対 し て 有 効 な 対 策 を 取 ろ う と し て も , EU の 食 品 関 連 法 は品目ごとに制定された法令の集積として発展し,すべての食品・すべての事 業者に適応される法律は存在していなかったため,規制内容が複雑化し,かつ 17 農林水産省「食品トレーサビリティシステム導入の手引き(トレーサビリ テ ィ ガ イ ド ラ イ ン )」( 2005 年 ) 15 ペ ー ジ , http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trace/pdf/tebiki_rev.pdf ,ア ク セ ス 日 2015 年 5 月 29 日 。 12 規 制 の 及 ば な い 空 白 が あ る な ど ,BSE 問 題 は EU に お け る 食 品 関 連 法 の 欠 陥 を 浮 き 彫 り に さ せ た 18 。 欧 州 委 員 会 は , こ れ を 真 摯 に 受 け 止 め , 翌 年 の 1997 年 に は , 食 品 安 全 対 策 を優先的な政策課題として掲げたグリーンペーパーを提出した。そして,議論 を 重 ね た 結 果 ,2001 年 1 月 に は 包 括 的 な 食 品 安 全 対 策 を 示 し た「 食 品 安 全 白 書 」 を採択し,食品安全に対する広範な政策提言を行い,その後 2 年間の議論を経 て 2002 年 1 月 に 「 一 般 食 品 法 ( 2005 年 施 行 )」 が 採 択 さ れ た 19 。 「 一 般 食 品 法 」 は , EU 加 盟 国 共 通 の ル ー ル を 示 し た も の で あ り , 同 法 第 18 条において,事業者のトレーサビリティ要件が以下のように述べられている。 < 一 般 食 品 法 規 則 第 18 条 20 > 1. 食 品 ,飼 料 ,食 品 生 産 の た め の 動 物 ,そ し て 食 品 や 飼 料 に 組 み 入 れ ら れ る こ と が 意 図 さ れ て い る あ る い は 予 期 さ れ る す べ て の 物 質 の ト レ ー サ ビ リ テ ィ が ,生 産,加工および流通の全段階で確立されるものとする。 2. 食 品 事 業 者 お よ び 飼 料 事 業 者 は ,食 品 ,飼 料 ,食 品 生 産 の た め の 動 物 ,そ し て 食品や飼料に組み入れられることが意図されているあるいは予期されるすべ て の 物 質 を 供 給 し た あ ら ゆ る 人 を 確 認 で き な け れ ば な ら な い 。こ の 目 的 の た め に 事 業 者 は ,要 求 の あ り 次 第 ,管 轄 当 局 が こ の よ う な 情 報 を 入 手 で き る よ う な システムや手続きを所有しているものとする。 3. 食 品 事 業 者 お よ び 飼 料 事 業 者 は ,彼 ら の 生 産 物 の 供 給 先 の 事 業 者 を 確 認 す る シ ス テ ム や 手 続 き を 保 有 し て い る も の と す る 。こ の 情 報 は 要 求 の あ り 次 第 管 轄 当 局に利用可能であるものとする。 4. 共同体の市場に出される,あるいは出される可能性のある食品および飼料は, 駐 日 EU 代 表 部 公 式 ウ ェ ブ マ ガ ジ ン EU MAG ホ ー ム ペ ー ジ , http://eumag.jp/feature/b0613/ , ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 12 日 。 19 駐 日 EU 代 表 部 公 式 ウ ェ ブ マ ガ ジ ン EU MAG ホ ー ム ペ ー ジ , http://eumag.jp/feature/b0613/ , ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 12 日 。 20 社 団 法 人 食 品 需 給 研 究 セ ン タ ー 「 一 般 食 品 法 に つ い て の 規 則 ( EC) No178/2002 の 第 の 第 11, 12, 16, 17, 18, 19, 20 条 の 実 施 に つ い て の 手 引 き 」( 2004 年 12 月 20 日 ), 8 ペ ー ジ , http://www.fmric.or.jp/trace/h16/178_2002guidance_rev_jp.pdf , ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 13 日 。 18 13 ト レ ー サ ビ リ テ ィ を 容 易 に す る た め に ,よ り 詳 細 な 規 定 の 関 連 要 件 に し た が っ て,文書や情報を通じて,適切な表示と識別がなされるものとする。 5. 特 定 の 領 域 に 関 し て 第 18 条 の 要 件 を 適 用 す る た め の 規 定 が , 第 58 条 (2)で 規 定された手続きに従って採択されてよい。 つ ま り ,対 象 と す る も の は 食 品 だ け で は な く ,飼 料 や 食 品 生 産 の た め の 動 物 , 食品や飼料に組み入れられる可能性のあるすべての物質と非常に幅広く,食品 及び飼料等の取引において,すべての段階の直近の出入について記録すべきと され,食品全般においてトレーサビリティが義務化されている。 こ の ト レ ー サ ビ リ テ ィ に お け る 対 象 事 業 者 は ,第 3 条 2 項 と 5 項 に お い て「 食 品の生産,加工および流通の何らかの段階に関係する活動を行うすべての事業 者 」21 と 定 義 さ れ て お り ,EU 一 般 食 品 法 ガ イ ダ ン ス に よ れ ば ,運 送 業 者 や 倉 庫 業者も対象とされている。 また,同ガイダンスでは,最低限の情報を保存することが望ましい項目とし て ,「 1. 供 給 者 の 名 称 ・ 所 在 地 , お よ び 供 給 さ れ た 製 品 の 識 別 , 2. 顧 客 の 名 称 ・ 所 在 地 , お よ び 配 送 し た 製 品 の 識 別 , 3. 取 引 ま た は 配 送 の 日 付 , 必 要 な 場 合 に は 時 刻 , 4 . 量 ( volume), 適 切 な 場 合 に は 数 ( quantity)」 22 が 挙 げ ら れている。 第 2項 米国におけるトレーサビリティ ア メ リ カ 合 衆 国 ( United States of America , 以 下 米 国 ) で は , ト レ ー サ ビ リ テ ィ に 関 す る 法 律 と し て ,2002 年 6 月 に バ イ オ テ ロ 法( 公 衆 の 健 康 安 全 保 障 な ら び に バ イ オ テ ロ へ の 準 備 お よ び 対 策 法 : Public Health Security and Bioterrorism Preparedness and Response Act of 2002 )が 成 立 し ,翌 年 の 2003 社 団 法 人 食 品 需 給 研 究 セ ン タ ー 「 一 般 食 品 法 に つ い て の 規 則 ( EC) No178/2002 の 第 の 第 11, 12, 16, 17, 18, 19, 20 条 の 実 施 に つ い て の 手 引 き 」( 2004 年 12 月 20 日 ), 8 ペ ー ジ , http://www.fmric.or.jp/trace/h16/178_2002guidance_rev_jp.pdf , ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 13 日 。 22 社 団 法 人 食 品 需 給 研 究 セ ン タ ー 「 食 品 の ト レ ー サ ビ リ テ ィ に 関 わ る 諸 外 国 の 制 度 調 査 報 告 書 」 2010 年 3 月 , 6 ペ ー ジ 。 21 14 年 12 月 12 日 に 施 行 さ れ た 23 。 こ の 中 の タ イ ト ル Ⅲ で は ,セ ク シ ョ ン 301 か ら 315 に か け て 食 品 関 係 の 規 定 が 設 け ら れ て い る 。 そ し て ,セ ク シ ョ ン 306 に お い て , ト レ ー サ ビ リ テ ィ と い う言葉は使われていないが,食品施設の食品の受け取りと発送の記録が義務付 けられている。 こ こ で の 「 食 品 」 と は , セ ク シ ョ ン 201 で 「 1. ヒ ト お よ び そ の 他 の 動 物 用 に 食 品 ま た は 飲 料 と し て 使 用 さ れ る 物 品 , 2. チ ュ ー イ ン ガ ム お よ び , 3. そ の よ う な 物 品 の 成 分 と し て 使 用 さ れ る 物 品 」24 と 定 義 さ れ て お り ,EU 各 国 と 同 様 に,人間が口にする食品だけではなく,動物の飼料も対象とされている。 対 象 事 業 者 は , ア メ リ カ 食 品 医 薬 品 局 ( Food and Drug Administration , 以 下 FDA) の ガ イ ダ ン ス に よ る と 「 ア メ リ カ 国 内 に お い て , 食 品 を 製 造 , 加 工 , 梱包,輸送,流通,受け取り,保管または輸送する国内の当事者;食品を輸送 す る 海 外 の 当 事 者 ; お よ び 最 終 容 器 に 直 接 食 品 を 入 れ る 当 事 者 」 25 と さ れ て い る。 こ れ ら の 事 業 者 は , 出 所 の 特 定 の た め に , 受 取 人 は 「 1. 供 給 元 の 名 称 ・ 所 在 地 , 2. 商 標 名 お よ び 食 品 の 種 類 , 3. 受 取 日 , 4. ロ ッ ト ま た は コ ー ド 番 号 ま た は そ の 他 の 識 別 子 , 5. 数 量 お よ び 食 品 の 梱 包 形 態 , 6. 搬 入 し た 数 量 お よ び 食 品 の 梱 包 形 態 」 26 ,ま た ,受 取 人 の 特 定 の た め に ,発 送 者 は「 1.出 荷 先 の 名 称 ・ 所 在 地 , 2. 商 標 名 お よ び 食 品 の 種 類 , 3. 引 渡 し 日 , 4. ロ ッ ト ま た は コ ー ド 番 号 ま た は そ の 他 の 識 別 子 , 5. 数 量 お よ び 食 品 の 梱 包 形 態 , 6. 搬 出 し 23 バ イ オ テ ロ 法 は ,Ⅰ:バ イ オ テ ロ リ ズ ム そ の 他 国 民 の 健 康 に 及 ぼ す 非 常 事 態 に対する国家的対策,Ⅱ:危険な生物兵器毒物兵器への対策強化,Ⅲ:食品医 薬供給における安全保障,Ⅳ:飲料水の安全保障,Ⅴ:その他 の 5 つのタイ トルで構成されている。 Food And Drug Administration「 記 録 の 作 成 と 保 管 に つ い て 知 っ て お く べ き こ と 」 2004 年 12 月 , 3 ペ ー ジ , http://www.fda.gov/downloads/Food/GuidanceRegulation/UCM219816.pdf , ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 13 日 。 24 同 上 。 25 同 上 。 26 社 団 法 人 食 品 需 給 研 究 セ ン タ ー 「 食 品 の ト レ ー サ ビ リ テ ィ に 関 わ る 諸 外 国 の 制 度 調 査 報 告 書 」( 2010 年 3 月 ), 18 ペ ー ジ , http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trace/pdf/h23itaku -gaikoku-seido.p df ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 13 日 。 15 た 数 量 お よ び 食 品 の 梱 包 形 態 , 7. 最 終 製 品 の 各 ロ ッ ト を 作 る の に 使 用 さ れ た 各 原 料 の 特 定 の 出 所 を 特 定 す る た め の 情 報 」 27 を そ れ ぞ れ 作 成 ・ 保 管 し な け れ ばならない。このように,一歩川上,一歩川下を特定するための記録を求めて い る 点 で は , EU の 一 般 食 品 法 第 18 条 と 類 似 し て い る 。 第 3項 日本におけるトレーサビリティ 日本でトレーサビリティへの取り組みが本格的に行われるようになったきっ か け は , EU 各 国 や 米 国 と 同 様 に BSE 問 題 が 大 き く 影 響 し て い る 。 2001 年 9 月 10 日 , 千 葉 県 で 初 め て BSE 感 染 の 疑 い が あ る 国 産 牛 が 発 見 さ れ , 同 年 10 月には,と畜場における牛の特定部位(異常プリオンたん白質が貯まる部位: 頭 部( 舌 ・ ほ ほ 肉 を 除 く ),脊 髄 ,回 腸 遠 位 部 )の 除 去 ・ 焼 却 を 法 令 上 義 務 化 す る と と も に , BSE 検 査 を 全 国 一 斉 に 開 始 し た 。 し か し ,翌 年 に 起 き た「 雪 印 牛 肉 偽 装 事 件 」が BSE 問 題 の 混 乱 に 拍 車 を か け , 牛肉を扱う一部の食品業者や外食産業企業などに大きな打撃を与える深刻な社 会 問 題 と な っ た 。 そ の た め , 2003 年 に BSE 発 生 時 に お け る 迅 速 か つ 的 確 な 関 連牛の特定や,牛肉の生産過程の透明性の確保のために,牛肉に対してトレー サビリティが義務化された。 現 在 ,日 本 で は ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 法 律 と し て , 「牛の個体識別のための情報 の 管 理 及 び 伝 達 に 関 す る 特 別 措 置 法( 牛 ト レ ー サ ビ リ テ ィ 法 )」と「 米 穀 等 の 取 引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(米トレーサビリティ 法 )」 が 制 定 さ れ て い る 。 ま ず , 牛 ト レ ー サ ビ リ テ ィ は ,「 BSE の ま ん 延 防 止 措 置 の 的 確 な 実 施 を 図 る ため,牛を個体識別番号により一元管理するとともに,生産から流通・消費の 各段階において個体識別番号を正確に伝達することにより,消費者に対して個 体 識 別 情 報 の 提 供 を 促 進 」 28 す る こ と を 目 的 と し , 牛 の 耳 標 及 び 牛 肉 に 記 載 さ れている個体識別番号により,インターネットを通じて牛の生産履歴を調べる 27 同上。 農林水産省ホームページ, http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/trace/index.html , ア ク セ ス 日 2015 年 , 9 月 10 日 。 28 16 ことが可能となっている。 牛トレーサビリティの対象事業者は, 「 牛 肉 の 製 造・処 理・加 工 ・流 通・販 売 を 担 う 企 業 , 団 体 , 個 人 」 29 と さ れ , 生 産 段 階 , と 畜 段 階 , 部 分 精 肉 製 造 ・ 卸 売段階,小売り段階のそれぞれの段階で記録の作成・保存・伝達について付表 2 のように定められている。 次に,米トレーサビリティは,対象品目となる米・米加工品の販売,輸入, 加工,製造又は提供の事業を行うすべての事業者(生産者を含む)が対象であ り , 大 き く 分 け て 2 つ の 内 容 か ら 構 成 さ れ て い る 。 ま ず ,「 ト レ ー サ ビ リ テ ィ の確保のため,米穀等(米や米加工品)を取引したとき等にその内容について 記 録 を 作 成 ・ 保 存 す る こ と 」 30 。 次 に , 消 費 者 が 産 地 情 報 を 入 手 で き る よ う に 指定米穀等(米穀から非食用のものを除いたもの)を取引する際にその米穀自 体 や 原 料 に 用 い ら れ て い る 米 穀 の 産 地 を 相 手 に 伝 達 す る こ と 」 31 で あ る 。 記 録 の 作 成・保 存 に つ い て は , 「 1.品 名 ,2.産 地 ,3.数 量 ,4.年 月 日 ,5. 取 引 先 名 , 6. 搬 出 入 し た 場 所 , 7. 用 途 を 限 定 す る 場 合 に は そ の 用 途 等 」 の 記 録が義務付けられているが,飼料用,バイオエタノール原料用等,非食用のも のについては,産地の記録は不要とされている。この点は,動物の飼料など人 間 以 外 が 口 に す る 食 品 も 対 象 と し て い る EU や 米 国 の 取 り 組 み と は 異 な っ て い る。 ま た ,情 報 の 伝 達 に つ い て も ,伝 票 等 又 は 商 品 の 容 器・包 装 へ の 記 載 に よ り , 産地情報の伝達が求められているが,非食用の場合は産地情報の伝達が不要と なっている。 現在,日本では,牛肉と米を除き,一定の水準のトレーサビリティを義務づ け る 法 律 は な い 。2004 年 に 改 正 さ れ た 食 品 衛 生 法 は ,事 業 者 に 食 品 の 仕 入 先 や 販 売 先 等 の 記 録 の 作 成 ・ 保 存 を 求 め て い る が ( 同 法 第 3 条 第 2 項 ), い わ ゆ る 社 団 法 人 中 央 畜 産 会「 国 産 牛 ト レ ー サ ビ リ テ ィ 導 入 手 引 書 」 ( 2003 年 12 月 ), 5 ページ, http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/trace/pdf/beef_trace12.pdf ,ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 10 日 。 30 農 林 水 産 省 ホ ー ム ペ ー ジ , http://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/beikoku/qa -kome_toresa01.html#Q uestion02, ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 10 日 。 31 同 上 。 29 17 「努力義務」に留まっており,事業者自身の判断に委ねられていることが多い のである。 し か し ,近 年 ,品 目 別 ガ イ ド ラ イ ン の 発 行 や セ ミ ナ ー の 開 催 ,給 付 金 の 交 付 , また,消費者の意識の変化により,青果,水産加工品,養殖魚,豚肉,鶏肉等 幅広い品目での導入が進みつつある。 第 3節 非政府組織によるトレーサビリティの取り組み 国際レベルにおいても非政府組織によるトレーサビリティに関する動きがあ る 。イ ギ リ ス・ロ ン ド ン に 本 部 を 置 く Marin Stewardship Council( 以 下 MSC) 32 で は ,水 産 物 の ト レ ー サ ビ リ テ ィ の た め の MSC CoC( Chain of Custody)認 証 に よ り , 水 産 資 源 や 海 洋 環 境 を 保 護 し な が ら 獲 っ た 水 産 物 に MSC エ コ ラ ベ ルを表示する取り組みが行われている。 CoC 認 証 が 必 要 に な る の は , 漁 獲 直 後 の 加 工 も し く は 輸 送 の 開 始 時 点 か ら , 消 費 者 向 け 製 品 の 最 終 パ ッ ケ ー ジ に MSC ラ ベ ル が 表 示 さ れ る 段 階 ま で の , 当 該 水 産 物 の 所 有 権 を 持 つ 全 て の 企 業・組 織 で あ る た め ,結 果 と し て 製 品 の ト レ ー サビリティの確保が可能となる。 「 MSC 認 証 漁 業 の 水 産 物 を 扱 う 認 証 を 取 得 し た 企 業 ・ 団 体 の 数 は , 2014 年 11 月 末 時 点 で 2,800 近 く 」33 に 及 び ,日 本 で は 56 社 34 の 企 業 が 認 証 を 取 得 し て いる。 企 業 は ,CoC 認 証 を 取 得 し , ラ ベ ル 付 き 商 品 を 販 売 す る こ と で , 付 加 価 値 に よ る 差 別 化 や 新 た な 市 場 ・ 販 路 の 拡 大 , PR 効 果 , ブ ラ ン ド イ メ ー ジ ・ ブ ラ ン ド認知度の向上,原料・製品の安定的な調達,認証を通じたトレーサビリティ の向上等のメリットがある。 ま た ,MSC 認 証 で は ,漁 獲 す る 漁 業 の 現 場 は も ち ろ ん の こ と ,水 産 物 の 加 工・ 32 漁業認証と水産物エコラベル制度を通じ,持続可能な漁業を推奨している, 環境に最も配慮した水産物の選択を推奨している国際的な組織。 Marine Stewardship Council ホ ー ム ペ ー ジ , https://www.msc.org/, ア ク セ ス 日 2015 年 11 月 20 日 。 33 Marine Stewardship Council ホ ー ム ペ ー ジ ,https://www.msc.org/,ア ク セ ス 日 2015 年 11 月 20 日 。 34 日 本 水 産 ,マ ル ハ ニ チ ロ 水 産 ,極 洋 ,東 洋 水 産 ,ニ チ レ イ フ レ ッ シ ュ ,三 菱 商事,丸紅,阪和興業,ニチモウ等が取得している。 18 流 通 の 過 程 で も 審 査 が 行 な わ れ て い る た め ,MSC の ラ ベ ル を つ け て 店 頭 に 並 ぶ のは,厳しい審査をパスした信頼ある製品だけである。そのため,消費者はこ の MSC の ラ ベ ル に よ っ て , そ れ が 水 産 資 源 や 海 洋 環 境 に 配 慮 し た 製 品 で あ る ことがわかり,海洋環境保全への貢献やトレーサビリティによる食の安全を得 ることができる。 第 4節 日本水産株式会社によるトレーサビリティの取り組み こ こ で は ,日 本 企 業 に よ る ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 導 入 事 例 の 1 つ と し て ,日 本 水 産 株 式 会 社( 以 下 ニ ッ ス イ )を あ げ る 。ニ ッ ス イ は ,国 内 外 を 問 わ ず 認 定 工 場 制 度 を 採 用 し て い る 。会 社 資 料 35 に よ る と ,こ の 制 度 は 事 業 担 当 部 署 か ら 独 立 し ,社 長 へ の 直 接 の レ ポ ー ト ラ イ ン を 持 つ 品 質 保 証 室 が 調 査 を 行 い , ニッスイの基準に適合した工場でのみ生産ができる仕組みである。 さらに,全生産拠点で世界基準に合わせて確立した品質管理システムや HACCP 相 当 の 自 主 品 質 管 理 を 設 定 す る こ と に よ り ,生 産 管 理 と 品 質 管 理 を 徹底し,定期的に監査を行っている。 ニ ッ ス イ の 製 品 に 使 用 さ れ る 原 材 料 に つ い て は ,安 全 性 を 確 保 す る た め の 基 準 を 制 定 し ,信 頼 で き る 購 買 先 か ら 由 来 や 履 歴 の 確 か な 原 材 料 の み を 使 用 し て い る 。そ し て ,原 料 の 供 給 元 か ら は ,ニ ッ ス イ 指 定 の 原 材 料 規 格 保 証 書 を 提 出 し て も ら い ,こ れ ら 原 材 料 情 報 を 一 元 管 理 し ,ト レ ー サ ビ リ テ ィ を 確 保している。 養 殖 事 業 で は ,2013 年 11 月 に「 境 港 サ ー モ ン 」の 養 殖 事 業 の 運 営 会 社 と し て 設 立 さ れ た「 弓 ヶ 浜 水 産 」に お い て ,最 初 に 卵 を 採 取 す る 種 苗 生 産 か ら 稚 魚 の 淡 水 養 殖 ,海 面 の 生 簀 へ の 移 動 ,加 工・出 荷 ま で を 一 貫 管 理 し て い る 。 水 揚 げ 後 は 最 短 10 分 間 で 箱 詰 め を 行 い , パ ッ ケ ー ジ に は バ ー コ ー ド で 品 種 や 個 数 な ど を 記 載 す る こ と で ,緻 密 な ト レ ー サ ビ リ テ ィ を 可 能 に し て い る 。 ニ ッ ス イ は ,自 社 内 で の 品 質 管 理 を 徹 底 す る だ け で は な く ,ト レ ー サ ビ リ ティの確保ができない事業者からは原材料を購入しないなど,サプライ 日 本 水 産 株 式 会 社 ホ ー ム ペ ー ジ ,http://www.nissui.co.jp/ ,ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 22 日 。 35 19 チ ェ ー ン 全 体 を 意 識 し た 経 営 を 行 う こ と に よ り ,安 心・安 全 な 食 品 の 提 供 を 実現している。 第 4章 第 1節 トレーサビリティの意義 トレーサビリティに対する消費者の意識 2011 年 3 月 11 日 に 発 生 し た 東 日 本 大 震 災 を き っ か け に 起 き た , 東 京 電 力 福 島第一原子力発電所の事故により,消費者は農産物等への放射能汚染を不安視 するようになった。 科学的知見に基づき食品中の放射性物質に関する基準値が設定され,合理的 な検査体制の下,食品の安全が確保されているにもかかわらず,福島県を中心 と す る 被 災 県 産 の 商 品 を 買 い 控 え る 消 費 行 動 が 見 ら れ る よ う に な っ た 36 。 東 日 本 大 震 災 発 生 後 ,自 分 自 身 の 食 生 活 を 見 直 し , 「 健 康・安 全 志 向 」を 優 先 す る 人 が 増 加 し て お り ,2015 年 7 月 の 日 本 政 策 金 融 公 庫 に よ る 今 後 の 食 の 志 向 の 調 査 で は , 図 3- 1 の よ う に 「 健 康 志 向 」 は 43.3% で , 現 在 の 志 向 と 同 様 , 最 多 と な り , 現 在 の 志 向 か ら 2.3 ポ イ ン ト 高 く な っ て い る 。 ま た ,「 安 全 志 向 」 が 現 在 の 志 向 よ り も 3.8 ポ イ ン ト 高 い 24.9% と な り ,「 健 康 志 向 」,「 経 済 志 向 」 に 次 い で 3 番 目 に 高 い 食 の 志 向 と な っ て い る 。 現在の志向では,現状における消費者物価の上昇傾向から「経済性志向」が 上昇する結果となったが,今後の志向は現在の志向の水準を下回っており,消 費 者 の 潜 在 的 な 食 の 志 向 と し て は 「 健 康 志 向 」,「 安 全 志 向 」 が 根 強 い こ と が わ かる。 さらに,消費者が食品を選択する際に,安全性やおいしさの基準として「産 地」が大きな影響を与えている。今後環太平洋戦略的経済連携協定 ( Trans-Pacific Partnership, 以 下 TPP) 37 の 合 意 に よ り , さ ら に 多 く の 外 国 消 費 者 庁「 風 評 被 害 に 関 す る 消 費 者 意 識 の 実 態 調 査( 第 5 回 ) に つ い て ~ 食 品 中 の 放 射 性 物 質 等 に 関 す る 意 識 調 査 ( 第 5 回 ) 結 果 ~ 」, http://www.caa.go.jp/safety/pdf/150310kouhyou_1.pdf ,ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 16 日 。 37 オ ー ス ト ラ リ ア , ブ ル ネ イ , カ ナ ダ , チ リ , 日 本 , マ レ ー シ ア , メ キ シ コ , ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド , ペ ル ー , シ ン ガ ポ ー ル , 米 国 , ベ ト ナ ム の 計 12 カ 国 に よ 36 20 産の輸入食品が流通することが考えられる。近年では国内企業の相次ぐ不祥事 により, 「 国 産 食 品 は 安 全 」と い う 認 識 は 揺 ら ぎ ,輸 入 食 品 を 許 容 す る 意 識 が 出 てきてはいるが,消費者動向調査によると「輸入食品より価格が高くても国産 食 品 を 選 ぶ 」 と い う 消 費 者 は 6 割 程 度 で 大 き く 変 わ っ て い な い 38 。 そ の た め , 食品の産地や経路を確認でき,また,食品事故に迅速に対応することが可能と なり,食の安全性を確保することができるトレーサビリティは,消費者にとっ て大きな意味を持っている。 (%) 図表3-1 2015年7月 食の志向の推移(上位3回答) 50 41 43.3 40 38.4 37.9 30 21.1 24.9 20 現在の志向 今後の志向 10 0 健康志向 経済志向 安全志向 出所:日本政策金融公庫, https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_150304a.pdf ,ア ク セ ス 日 9 月 10 日 よ り 筆 者 作成。 実 際 に ,社 団 法 人 食 品 需 給 研 究 セ ン タ ー が 発 表 し た ,2012 年 3 月 の「 食 品 の ト レ ー サ ビ リ テ ィ に 関 す る Web 意 識 調 査 報 告 書 」 39 に よ る と ,「 食 品 の 追 跡 可 る包括的な経済連携協定。 外 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ , http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/ , ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 7 日 。 38 日 本 政 策 金 融 公 庫 ホ ー ム ペ ー ジ , https://www.jfc.go.jp/n/findings/investigate.html#sec04 ,ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 10 日 。 39 社 団 法 人 食 品 需 給 研 究 セ ン タ ー 「 食 品 の ト レ ー サ ビ リ テ ィ に 関 す る Web 意 識 調 査 報 告 書 」( 2012 年 3 月 ), http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trace/pdf/h23itaku -syohisya-ishiki. pdf, ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 13 日 。 21 能性(トレーサビリティ)を高める取組が生産の段階から小売・外食の段階ま で 広 く 行 わ れ る よ う に な る こ と は , 食 生 活 に お い て 重 要 で あ る と 思 い ま す か 。」 という質問に対して, 「 重 要 で あ る 」, 「 ど ち ら か と い え ば 重 要 で あ る 」と 回 答 し た 人 の 割 合 は , そ れ ぞ れ 34.9% , 45.7%で あ り , 8 割 以 上 の 人 が 重 要 で あ る と 考えていることがわかった。 そ し て ,ト レ ー サ ビ リ テ ィ が 重 要 だ と 考 え る 理 由 で 最 も 多 か っ た 回 答 は , 「食 中毒等の食品事故が発生したときに,食中毒等の原因の解明がより速やかに行 わ れ る よ う に な る こ と 」で 76.7% ,続 い て「 食 中 毒 等 の 食 品 事 故 が 発 生 し た と き に ,問 題 の あ る 食 品 の 回 収 が よ り 速 や か に 行 わ れ る よ う に な る こ と 」66.4% , 「食中毒等の食品事故が発生したときに,責任の所在がより明確になること」 59.2% と い う 結 果 に な っ た 。 消費者は,食品の複雑な流通経路の中で食品事故や不正問題が明らかになっ た際に,その責任の所在をはっきりと断定し,迅速な対応がなされることで被 害の拡大を防ぐことを期待している。 第 2節 トレーサビリティに対する食品関連事業者の意識 近 年 ,SNS の 普 及 に よ っ て 異 物 の 写 真 や 製 造 者 等 の ク レ ー ム 対 応 が す ぐ に 拡 散,共有されてしまい,その情報によって多くの消費者は食品だけでなく,企 業の印象をも左右する事態にもつながってしまい,問題がさらに拡大する危険 性 が で て き た 40 。 食品関連事業者は,事故を未然に防ぐのはもちろんのこと,各段階において 食品の情報を管理し,事故発生時に迅速には対応することがこれまで以上に求 められるようになり,よりトレーサビリティ導入の重要性が増している。 社 団 法 人 食 品 需 給 セ ン タ ー に よ る 2012 年 3 月 の 農 協 , 漁 協 , 食 品 製 造 業 , 食品卸売業へ対する調査によると,トレーサビリティの取組状況は「概ねすべ 2014 年 12 月 ,ま る か 食 品 の カ ッ プ 焼 き そ ば の 中 に ゴ キ ブ リ が 混 入 し て い る のを消費者が発見し,大きな騒動となった。この異物混入事件では,商品を購 入 し た 消 費 者 が Twitter 上 に 実 際 に 混 入 し て い た ゴ キ ブ リ の 写 真 を 投 稿 し た 結 果,そのインパクトの大きさにより,一日で 1 万回以上の人に拡散される結果 となってしまった。 40 22 て の 食 品 で 内 部 ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 取 組 を 実 施 し て い る 」と い う 回 答 が 47.6% , 「 内 部 ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 取 組 を 実 施 し て い な い 」 が 26.4% ,「 一 部 の 食 品 で 内 部 ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 取 組 を 実 施 し て い る 」 が 26.1% と い う 結 果 と な り , 7 割以上の組合や企業が何らかの食品でトレーサビリティを導入していることが わかった。 さらに, 「 ト レ ー サ ビ リ テ ィ に 取 組 む こ と で 得 ら れ た 効 果 」に つ い て の 質 問 に 対して, 「 食 品 の 回 収 ,ク レ ー ム 等 の 問 題 発 生 時 に ,迅 速 か つ 適 切 な 対 応 が で き る よ う に な っ た 」と い う 回 答 が 80.4% と 最 も 多 く ,次 い で「 取 引 先 や 消 費 者 な ど の 信 頼 や イ メ ー ジ が 向 上 し た 」と い う 回 答 が 49.9% と な っ た 。こ れ ら の 回 答 から,迅速かつ適切な対応ができるようになることで消費者の信頼を得ること ができるだけではなく,取引先の信頼を得ることができ,顧客の獲得につなが ることがうかがえる。また,少数ではあるが,従業員の製造に対する心構えな ど意識の向上につながったという回答もあった。 「 効 果 は な か っ た 」 と 回 答 し た 割 合 は 3.5% で あ り , ト レ ー サ ビ リ テ ィ の 取 組を実施したことにより,何らかの効果が得られていることがわかる。 トレーサビリティに取り組んだ食品関連事業者は,食品の回収が必要な際や クレーム等の問題発生時に,迅速かつ適切な対応ができるようになるため,取 引先や消費者などからの信頼やイメージが向上したと実感している。 第 5章 安全な食品調達に向けて 第 1節 トレーサビリティの課題 第 1項 食品事業者が抱える課題 トレーサビリティに取り組むことで消費者や企業にメリットがある一方,課 題 も 多 く 存 在 す る 。ト レ ー サ ビ リ テ ィ を 導 入 す る た め に は ,賞 味 期 限 管 理 ,ロ ッ ト番号管理,温度管理及び精度の高い在庫管理など様々な管理体制が必要とな り,システム化するには膨大な投資を行わなければならない。 また,トレーサビリティ導入にあたっての基本構想と手順書の作成や従業員 の教育・研修を行うなど,社内にトレーサビリティの理解を浸透させるために ノウハウの伝承も行わなければならない。 23 さらにそれらのことに加え,トレーサビリティの導入後にも業務の人件費, 記録用紙・ラベルなどの消耗品費,モニタリングや監査,ソフトウェアや機器 の保守・更新などが必要になるため,普段の業務を行いつつ,その他に膨大な 時 間 や コ ス ト が か か っ て し ま う 41 。 その結果,トレーサビリティの取り組みを行うと作業量が増加し,人手不足 に陥るという理由や導入コストに見合った効果がすぐには得られないことから, トレーサビリティの導入に消極的な中小企業が多いのが現状である。 また,トレーサビリティの取り組みを行うことによる過度な食品関連事業者 への負担は,食品の価格上昇につながる恐れがあり,消費者にとっても負担と なってしまう可能性がある。 国は,トレーサビリティを普及させるために,食品関連事業者へ交付金を交 付するなど対策を行っているが,中小企業でも導入可能な低価格システムの開 発や運用費の削減など根本的な解決が必要である。 第 2項 システム上の課題 現在,生産者や食品関連事業者がトレーサビリティの情報識別媒体として, ID 番 号 や バ ー コ ー ド , 2 次 元 コ ー ド , IC タ グ な ど を 用 い て お り , そ れ ぞ れ の 取り組み主体が独自にトレーサビリティの構築に取り組んでいるため,企業に よっては相互運用性のないシステムが構築されてしまうことによって,不特定 多数の企業と取引する場合や複雑な流通経路を経る場合に運用の効率化を妨げ てしまう可能性がある。 「各企業が既に導入しているトレーサビリティの整合性,企業毎の情報に対 する必要性の差異,独自事情等を考慮すると,生産から小売までのサプライ チ ェ ー ン 全 体 で ,標 準 化 さ れ た コ ー ド を 利 用 す る こ と は 極 め て 難 し い 問 題 」42 で 41 社 団 法 人 食 品 需 給 研 究 セ ン タ ー「 ゼ ロ か ら わ か る 食 品 の ト レ ー サ ビ リ テ ィ 」, http://www.fmric.or.jp/trace/kyozai/zerowaka_booklet.pdf , ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 13 日 。 42 食 品 ト レ ー サ ビ リ テ ィ シ ス テ ム 標 準 化 推 進 協 議 会「 ト レ ー サ ビ リ テ ィ・シ ス テ ム の 相 互 運 用 に つ い て 」, http://www.ftssi.net/trace -sys/trace-system_1.htm,ア ク セ ス 日 2015 年 11 月 28 日 。 24 あるが,各企業は製品あるいは製品群を識別するために最低限度必要な情報を 標準化する必要がある。 第 3項 リスク防止の効果 トレーサビリティは,食品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは 廃棄段階まで追跡し,事故発生時に迅速な対応を行うことができるが,リスク そのものを防ぐものではない。そのため,より確実なリスク管理を行うために は,さらに他のシステムや認証との連携が必要となる。 合 わ せ て 取 り 組 む と 効 果 的 な も の に HACCP と ISO22000 が 挙 げ ら れ る 。 HACCP と は , 「 食 品 の 製 造・加 工 工 程 の あ ら ゆ る 段 階 で 発 生 す る お そ れ の あ る 微 生 物 汚 染 等 の 危 害 を あ ら か じ め 分 析( Hazard Analysis )し ,そ の 結 果 に 基 づいて,製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得 る こ と が で き る か と い う 重 要 管 理 点 ( Critical Control Point ) を 定 め , こ れ を 連 続 的 に 監 視 す る こ と に よ り 製 品 の 安 全 を 確 保 す る 衛 生 管 理 の 手 法 」 43 で あ る。 HACCP は , 従 来 の 抜 取 検 査 に よ る 衛 生 管 理 に 比 べ , よ り 効 果 的 に 問 題 の あ る製品の出荷を未然に防ぐことが可能となるとともに,原因の追及を容易にす ることが可能となるため,トレーサビリティ確保の必要条件ともいえる。 ISO22000 は ,「 HACCP の 食 品 衛 生 管 理 手 法 を も と に , 消 費 者 へ の 安 全 な 食 品 提 供 を 可 能 に す る 食 品 安 全 マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム( FSMS)の 国 際 規 格 」44 の 第三者認証制度である。認証取得を通じて,食品の安全な提供に関わるさまざ まなリスクを低減させ,顧客からの信頼も獲得できる。 ISO22000 の 審 査 で は , 以 下 の こ と が 重 視 さ れ て い る 。 第 1 に , ハ ザ ー ド 分 析である。生物的,化学的,物理的な食品安全ハザードが,明確に管理されて 「 食 品 衛 生 の 一 般 原 則 ( GENERAL PRINCIPLES OF FOOD HYGIENE CAC/RCP 1-1969)」, file:///C:/Users/120201889/Downloads/CXP_001e.pdf , ア ク セ ス 日 2016 年 1 月 13 日 。 44 一 般 財 団 法 人 日 本 品 質 保 証 機 構 ホ ー ム ペ ー ジ , https://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso22000/ , ア ク セ ス 日 2015 年 12 月 30 日 。 43 25 いるかに重点を置き,食品安全ハザードが許容限界を超えないように管理の仕 組みがとられているかを審査している。 第 2 に,現場審査である。文書類で規定された仕組みと現場での業務が整合 しているかを確認し,作成された製造工程図(フローダイアグラム)に整合し た工程の管理とその工程内のハザードが現場において適切に管理されているか を審査している。 第 3 に,マネジメントシステムの有効性である。構築された食品安全マネジ メ ン ト シ ス テ ム ( FSMS) が PDCA サ イ ク ル に 基 づ い て 継 続 的 に 改 善 ・ 更 新 さ れているかを審査し,マネジメントシステムを運用して達成された結果と仕組 みの両面から有効性を検証している。 これらのシステムや認証と,食品の移動を把握するトレーサビリティを併用 することによって,より確実なリスク管理を行うことが可能となる。 第 2節 今後の展望 食材調達先の多様化や流通・加工経路の多様化により,サプライチェーンの 管理が複雑化している。そのような中で,食の安心・安全のために多くの消費 者や食品関連事業者がトレーサビリティの重要性を認識しつつあるが,取り組 みとしては限定的な段階であり,まだトレーサビリティがすべての人々の生活 に浸透しているとはいえないのが現状である。 トレーサビリティに対する啓発活動という点で,食品企業や行政職員,団体 職員,農業者,研究者等を対象にした食品トレーサビリティの講習会や研修会 が開催されるなど様々な取り組みがなされているが,消費者がトレーサビリ ティについて学ぶことができる機会は非常に少ない。 しかしながら,消費者がトレーサビリティに興味・関心を持ち,食品を選択 する際の 1 つのものさしにすることによって ,安心・安全な食料調達が可能に なるだけではなく,トレーサビリティの導入に消極的な企業に対して,トレー サビリティの導入を働きかけることができる。そのためにはトレーサビリティ の重要性を消費者にも周知させることが必要である。 消費者がトレーサビリティの具体的なシステムの内容を理解することは容易 で は な い が , そ の 手 が か り と し て , 第 2 章 で 記 述 し た MSC の エ コ ラ ベ ル な ど 26 を普及させることは有効であろう。 このラベルは,水産物市場を持続可能なものへと転換することで世界の海洋 保全に貢献するためのものであるが,このような認証ラベルは買い物や外食の 際に目につきやすいため,誰にでも簡単に理解することができ,環境に優しい 最良の選択をすることができるようになるだけでなく,消費者がトレーサビリ ティについて興味や関心を持つきっかけにもなるであろう。 食品関連事業者がこうした認証を積極的に取得し、取り組みを行うことは地 球環境の改善だけではなく、食品の安定的供給や人々の食品に対する意識の向 上につながる非常に重要なことといえる。 おわりに 近 年 ,SNS の 普 及 に よ っ て 異 物 の 写 真 や 製 造 者 等 の ク レ ー ム 対 応 が す ぐ に 拡 散,共有されてしまい,その情報によって多くの消費者は食品だけでなく,企 業の印象をも左右する事態にもつながってしまい,問題がさらに拡大する危険 性がでてきた。 食品事業者は事故を未然に防ぐことはもちろんのこと,事故を起こした後の 迅速な対応が非常に重要となっている。また,毎年のように食品不祥事が多発 し て い る こ と や TPP の 合 意 に よ っ て ,海 外 産 の 食 品 の 流 通 が 予 想 さ れ る こ と で , 消費者の食の安全に対する意識が高まっている。 このような中で,流通経路が追跡可能となり,事故原因の解明や食品の回収 を速やかに行うことができるトレーサビリティの重要性がさらに高まっている。 しかしながら,トレーサビリティという言葉だけは知っていても,対象品目 や産地情報の伝達の開始時期,表示方法などのシステムの内容についてはあま りわからないという食品関連事業者や消費者が多く存在しており,トレーサビ リティの重要性についてなかなか理解が得られていない。 そのため,トレーサビリティは多くの時間や資金が必要となるため,これら を無駄なコストと考え,トレーサビリティの導入には至らない企業が多く,現 段階ではまだトレーサビリティは限定的なものといえよう。 今後,トレーサビリティについてより具体的な法整備やシステムの標準化は 27 も ち ろ ん の こ と ,食 品 関 連 事 業 者 や 消 費 者 に 対 し ,そ の 仕 組 み に 加 え , メ リ ッ ト等を説明し周知を行い,食品関連事業者や消費者に一層トレーサビリティに ついて理解を深めてもらうことが必要である。 その結果,トレーサビリティが普及することによって,人々の食に対する安 心や安全に対する満足度が高まることになるであろう。 参考文献 梅沢昌太郎『トレーサビリティ 食の安心と安全の社会システム』白桃書 房 , 2004 年 。 佐 々 木 悟 「 ト レ ー サ ビ リ テ ィ と HACCP に よ る 牛 肉 リ ス ク 管 理 の 現 状 と 課 題 」『 農 業 市 場 研 究 』 第 11 巻 第 2 号 ,2002 年 , 145-149 ペ ー ジ 。 中 嶋 康 博 『 食 の 安 全 と 安 心 の 経 済 学 』 コ ー プ 出 版 , 2004 年 。 新山陽子「食品由来の健康に対するリスク管理―食品安全確保の社会シス テ ム 」『 シ ス テ ム 制 御 情 報 学 会 誌 』 第 47 巻 第 8 号 ,2003 年 , 399-405 ペ ー ジ。 新 山 陽 子「 フ ー ド チ ェ ー ン に お け る ト レ ー サ ビ リ テ ィ:EU に 現 状 と 日 本 の 課 題 」『 京 都 大 学 生 物 資 源 経 済 研 究 』 第 8 号 ,2002 年 ,105‐ 130 ペ ー ジ 。 ハ ウ ・ L・ リ ー ほ か 『 サ プ ラ イ チ ェ ー ン の 経 営 学 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社 , 2006 年。 福田晋編『東アジアにおける食を考える―信頼できるフードチェーン構築 に 向 け て ― 』 九 州 大 学 出 版 会 , 2010 年 。 フランク・ビュンテ・ほか編,下渡敏治・ほか訳『グローバリゼーション とフードエコノミー― 新たな課題への挑戦 ―』農林統計出版株式会社, 2012 年 。 松 田 友 義「 食 品 ト レ ー サ ビ リ テ ィ シ ス テ ム 開 発 の 現 状 と 課 題 」 『システム制 御 情 報 学 会 誌 』 第 50 巻 第 4 号 , 2006 年 , 146-153 ペ ー ジ 。 松 本 恒 雄 『 21 世 紀 の 消 費 者 政 策 と 食 の 安 全 』 コ ー プ 出 版 , 2003 年 。 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加 物 が 使 用 し て い た 。営 業 停 止 命令や食品メーカーに対する製品回収の損害賠償により業績 が悪化し,同年 8 月に自己破産を申し立てた。 2007 年 1月 期限切れ材料使用問題 不二家は消費期限切れの牛乳をシュークリームに使用してい た 。さ ら に ,他 の 製 品 の ず さ ん な 品 質 管 理 も 新 た に 判 明 し ,洋 32 菓子の製造販売業務を全面的に中止した。 2007 年 ミートホープ事件 6月 牛 肉 偽 装 が 浮 上 し た が ,補 助 金 詐 取 で は な く 以 前 か ら 偽 装 を 慣 行していた。 2007 年 賞味期限偽装問題 8月 石 屋 製 菓 は ,「 白 い 恋 人 」 の 一 部 の 商 品 を 本 来 の 賞 味 期 限 の 記 載より 1 ヵ月長く表記するよう指示して販売をしていた。 2007 年 消費期限偽装問題 10 月 2007 赤 福 は 出 荷 の 際 余 っ た 餅 を 冷 凍 保 存 し て ,解 凍 し た 時 点 を 製 造 年月日に偽装して出荷していた。 船場吉兆事件 10~ 11 月 船場吉兆が売れ残った菓子の賞味期限偽装や佐賀県産の和牛 の産地偽装および食べ残しの再提供を行っていた。 2007 年 中国製冷凍ギョーザ 中国河北省の天洋食品製の冷凍ギョーザを食べた千葉県と兵 12 月 中毒事件 庫 県 の 計 10 人 が 吐 き 気 や 下 痢 な ど の 中 毒 症 状 を 訴 え 、 女 児 1 人が一時意識不明の重体になった。 2008 年 事故米不正転売事件 9月 農 林 水 産 省 が 事 故 米 穀 を 工 業 用 と し て 売 却 し た が ,三 笠 フ ー ズ が食用として転売していたことが発覚した。 2011 年 ユッケ集団食中毒事件 4月 「焼肉酒屋えびす」で加熱用食肉をトリミングせずに生食 ( ユ ッ ケ ) と し て 提 供 し , 集 団 食 中 毒 ( O111 ) が 発 生 し た 。 2013 年 中国米産地偽装事件 9月 三 瀧 商 事 が 中 国 産 の コ メ の 産 地 を 偽 装 し て 卸 し ,流 通 大 手 イ オ ン等で販売された弁当に中国産米が混入した。 2013 年 メニュー表示偽装問題 10 月 2014 年 阪 急 阪 神 ホ テ ル ズ 等 で ,メ ニ ュ ー 表 示 と 異 な る 食 材 を 使 用 し て 客に料理を提供していた。 期限切れ食肉問題 7月 マクドナルドのサプライヤーの一つであるアメリカの食肉大 手 OSI グ ル ー プ の 中 国 現 地 法 人 「 上 海 福 喜 食 品 」 が 使 用 期 限 切れの食肉加工品を販売していた。 2014 年 12 月 ぺヤング虫混入事件 消費者がツイッターに投稿したゴキブリ混入の写真をきっか け に , 1 日 40 万 食 の 生 産 を 長 期 間 に わ た っ て 停 止 す る と 決 定 した。 出 所 : 日 経 テ レ コ ン ,htt ps://t21.nikkei.co.jp/g3/CMNDF11.do ,ア ク セ ス 日 2015 年 1 月 13 日 よ り 筆 者 作 成 。( 2001 年 以 降 に 限 定 し た の は , BSE 問 題 を 起 点 と し て ト レ ー サ ビ リ テ ィ が 重 視 さ れ る よ う に な っ た か ら で あ る 。) 33 付 表 2「 各 段 階 に お け る 記 録 の 作 成 ・ 保 存 ・ 伝 達 の 方 法 」 ( 1) と 畜 段 階 ( 食 肉 市 場 ・ 産 地 食 肉 セ ン タ ー ・ そ の 他 の と 畜 場 ) 識別単位 トレーサビリティで管理すべき情報 1. 生体 耳標装着(搬入枝肉の場合は個体識別番号ラベル等の貼付)を確 認し,出荷伝票(搬入伝票)等に記載の個体識別番号 ならびに家 畜個体識別センターで管理されたデータと照合し,照合された個 体識別番号の記録 生体 2. 搬入日,出荷者名,搬入者名,重量 1. 内部識別番号(枝肉番号)を付与し,内部識別番号と対応づけら 枝肉 れた個体識別番号の記録 枝肉 伝達すべき情報 2. と畜日 1. 個体識別番号 2. 枝肉重量・販売日・販売先名 個体識別番号とその枝肉重量 ( 2) 部 分 肉 製 造 段 階 ・ 卸 売 段 階 ( 産 地 食 肉 セ ン タ ー ・ 卸 売 会 社 の 部 分 肉 製 造 工場等) 識別単位 枝肉 トレーサビリティでの管理すべき情報 1. 部分肉 枝肉,部分肉のラベル記載の識別番号と購入伝票を照合し , 照合 した個体識別番号の記録 2. 仕入枝肉(仕入部分肉)重量・仕入先名(枝肉の場合はと畜場名 , 部 分 肉 の 場 合 は 製 造 工 場 名 )・ 仕 入 日 枝肉 1. 部分肉 部分肉 伝達すべき情報 内部識別番号(製造番号,ロット番号)を付与し,内部識別番号 と対応づけられた個体識別番号の記録 2. 部分肉製造日・部分肉製造(製品)重量 1. 個体識別番号 2. 部分肉部位別販売重量・販売日・販売先名 個体識別番号(またはロット番号)とその部分肉重量 34 ( 3) 精 肉 製 造 ( 店 舗 外 ) 段 階 ( チ ェ ー ン ス ト ア ー や 食 肉 加 工 メ ー カ ー の パ ッ クセンター等) 識別単位 部分肉 トレーサビリティでの管理すべき情報 1. 部分肉ごとのラベル記載の識別番号と購入伝票を照合し, 照合し た個体識別番号またはロット番号の記録 部分肉 2. 仕入部分肉重量・仕入先名・仕入日 1. 内部識別番号(製造番号,ロット番号)を付与し,内部識別番号 精肉 と対応づけられた個体識別番号の記録 精肉 2. 精肉製造日・精肉製造重量(商品別パック数量でもよい) 1. 個体識別番号 2. 精 肉 販 売 重 量( 商 品 別 パ ッ ク 数 量 で も よ い ) ・販 売 日・販 売 先 名( ま たは配送日・配送先店舗名) 伝達すべき情報 個 体 識 別 番 号 ま た は ロ ッ ト 番 号 と そ の 精 肉 重 量 (ま た は パ ッ ク 数 ) ( 4) 精 肉 製 造 ( 店 舗 内 ) お よ び 小 売 段 階 ( 食 肉 専 門 小 売 店 , 食 品 ス ー パ ー , チェーン ストアー・生活協同組合店舗など) 識別単位 部分肉 トレーサビリティでの管理すべき情報 1. 部分肉ごとのラベル記載の識別番号と購入伝票とを照合し,照合 した個体識別番号またはロット番号の記録 2. 仕入部分肉重量(パック仕入れ商品は,商品別パック数量でもよ い )・ 仕 入 先 名 ・ 仕 入 日 部分肉 内部識別番号(製造番号,ロット番号)を付与し,内部識別番号と対 精肉 応づけられた個体識別番号の記録 伝達すべき情報 個体識別番号またはロット番号とその問合わせ先 出 所 : 社 団 法 人 中 央 畜 産 会 「 国 産 牛 肉 ト レ ー サ ビ リ テ ィ 導 入 手 引 書 ( 総 論 編 )」( 2003 年 12 月 ),http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/trace/pdf/beef_trace12.pdf ,ア ク セ ス 日 2015 年 9 月 10 日 よ り 筆 者 作 成 。 35