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1 - 【別紙 1】
【別紙 1】西武鉄道事件の判決(事件ごと) *石塚洋之「西武鉄道株主損害賠償請求訴訟東京高裁判決の検討(上)」商事法務 1868 号(2009 年)4 頁、5 頁〔別表〕等をもとに作成。被告の表記 は、最判平成 23・9・13 判タ 1361 号 103 頁に依拠(「西」=西武鉄道、 「プ」=プリンスホテル)。 裁判所・年月日 判決 損害 ① 東京地判平成 19・8・28 判タ 1278 号 221 頁 棄却(確定) ② 東京地判平成 19・9・26 判時 2001 号 119 頁 認容(控訴後和解) * ③ 東京地判平成 19・10・1 判タ 1263 号 331 頁 棄却(確定) B1 B1 原告 保有 or 処分 個人 保有 全日空 処分 個人 保有し続け後日 被告 西 プ Y1 ○ ○ ○ Y2 Y3 ○ ○ ○ 組織再編で買取 請求により処分 ④ 東京地判平成 20・2・21 判時 2008 号 128 頁 棄却(確定) B1 個人 保有 ○ ○ ○ ⑤ 東京地判平成 20・4・24 判時 2003 号 10 頁 一部認容 C1 個人 保有・処分ともに ○ ○ ○ 東京高判平成 21・2・26 判時 2046 号 40 頁 原判決変更 C2 最判平成 23・9・13 判タ 1361 号 103 頁 一部破棄差戻し、一 A2 含む 部破棄自判 ⑥ ⑦ 東京地判平成 20・4・24 判時 2003 号 147 頁 棄却 B1? 東京高判平成 21・3・31 金判 1316 号 2 頁 原判決変更 C2 最判平成 23・9・13 資料版商事 332 号 121 頁 破棄差戻し A2 東京地判平成 21・1・30 金判 1316 号 34 頁 一部認容 東京高判平成 23・2・23(新聞報道) 最判平成 24・1・31(新聞報道) 信託銀行 処分 ○ ○ ○ C1 ゆうちょ銀行 処分 ○ ○ ○ 原判決変更 C2 等 破棄差戻し A2 -1- ○ ○ ⑧ ⑨ 東京地判平成 21・1・30 判時 2035 号 145 頁 認容 A1 東京高判平成 22・3・24 判時 2087 号 134 頁 原判決変更 B2 最判平成 23・9・13 資料版商事 332 号 127 頁 破棄差戻し A2 東京地判平成 21・3・31 判時 2042 号 127 頁 一部認容 東京高判平成 22・4・22 判時 2105 号 124 頁 最判平成 23・9・13 判タ 1361 号 114 頁 私学事業団 処分 ○ ○ ○ A1 企業年金連合 処分 ○ ○ ○ 原判決変更 C2 会等 破棄差戻し A2 <上の表の「損害」の列=損害について裁判所が採用した構成> 以下の説明で(ア)~(カ)は、基本的に時間に沿って並んでいる (ア)取得価格 (イ)取得時の想定価格(虚偽記載がなかったと仮定した場合の価格) (ウ)虚偽記載公表直前の株価 (エ)売却価格 (オ)虚偽記載公表翌日~最終取引日の終値の平均 (カ)口頭弁論終結時の株価 A=当該株式を取得したこと自体が損害 [A1]当該株式を取得したこと自体が損害:バージョン 1[⑧⑨地裁にもとづくまとめ] (1)不法行為における損害=加害行為があった場合となかった場合の利益状態の差 (2)虚偽記載がなかったなら、株式を取得することもなかった -2- (3)(ア)取得価格が損害 (4)株価下落分[(ア)-(ウ)]は損害から控除すべきではない ∵虚偽記載が明らかであったならば、株式を買い入れることもなかった (5)(エ)売却価格は損害から控除 ⑧地裁:(ア)-(エ)を損害とする ⑨地裁:(ア)-(エ)を損害とする [A2]当該株式を取得したこと自体が損害:バージョン 2[⑤⑥最高裁にもとづくまとめ] (1)有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が、当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかっ たとみるべき場合 (2)当該虚偽記載により上記投資者に生じた損害の額、すなわち当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額: 投資者が、当該虚偽記載の公表後、上記株式を取引所市場において処分したときは (ア)取得価額-(エ)処分価額 投資者が、株式を保有し続けているときは (ア)取得価額-(カ)事実審の口頭弁論終結時の上記株式の市場価額(上場が廃止された場合にはその非上場株式としての評価額) をそれぞれ基礎とし (3)経済情勢、市場動向、当該会社の業績等当該虚偽記載に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して、これを算定すべき (4)以上の理は、虚偽記載の公表の前後を問わず当てはまるところであるが、虚偽記載が公表された後の市場価額の変動のうち、いわゆるろうばい売りが 集中することによる過剰な下落は、有価証券報告書等に虚偽の記載がされ、それが判明することによって通常生ずることが予想される事態であって、 これを当該虚偽記載とは無関係な要因に基づく市場価額の変動であるということはできず、当該虚偽記載と相当因果関係のない損害として上記差額か ら控除することはできない (5)本件では、虚偽記載公表前の株価の下落は虚偽記載とは無関係な要因に基づくものが多いと考えられるが、公表前に本件虚偽記載が一部解消(コクド -3- が他人名義株を売却など)された頃に本件虚偽記載に起因して株価が下落していた可能性+虚偽記載公表後の株価の下落はすべて虚偽記載と関係 →(3)として控除すべきなのは、虚偽記載公表前の、本件虚偽記載とは無関係な要因による下落分 (6)以上のようにして算定すべき損害の額の立証は極めて困難であることが予想されるが、そのような場合には民訴法 248 条により相当な損害額を認定す べき ◇(3)~(5)から、結局は、≒C の考え方? ⑤最高裁:以上のように損害を認定すべきものとして、一部破棄差戻し。田原裁判官の補足意見=(3)の金額を控除すべき理由を説明。寺田裁判官の意見 =(3)の金額の全額を控除することに反対 ⑥最高裁:以上のように損害を認定すべきものとして、破棄差戻し。寺田裁判官の意見=(3)の金額の全額を控除することに反対 ⑦最高裁:新聞報道なので詳細不明 ⑧最高裁:以上のように損害を認定すべきものとして、破棄差戻し。寺田裁判官の意見=(3)の金額の全額を控除することに反対 ⑨最高裁:以上のように損害を認定すべきものとして、破棄差戻し。田原裁判官の補足意見=機関投資家としては投資株式が監理ポストに割り当てられ ることが明らかになれば即売却の方針を採る以外選択の余地は原則として存在せず。寺田裁判官の意見=(3)の金額の全額を控除することに反対 [*]相対取得+説明義務違反を理由とする不法行為責任を認め、取得自体を損害とする(②地裁) (1)相対取得の事例 (2)相対取得時の説明義務違反→代表者の不法行為についての法人の責任 (3)相対取得時の説明義務違反+説明義務が果たされていれば取得はしなかった→(ア)取得価格が損害 -4- (4)ただし、取得後、虚偽記載公表直前までの株価の下落[(ア)-(ウ)]は損害から控除 (5)また、(エ)売却価格も損害から控除 B=当該株式を高値で取得したことが損害 [B1]当該株式を高値で取得したことが損害:バージョン 1(①地裁にもとづくまとめ) (1)不法行為における損害=加害行為があった場合となかった場合の利益状態の差 (2)本件における損害=(ア)取得価格-(イ)想定価格 (3)取得後、虚偽記載公表直前までの株価の下落[(ア)-(ウ)]は損害から控除=(ア)の価格として実際に用いられるのは、 (ウ)虚偽記載公表直前 の株価 (4)(カ)口頭弁論終結時の株価が(イ)の価格よりも上昇している場合、上昇部分は損害から控除 ①地裁:(カ)口頭弁論終結時の株価>(ウ)虚偽記載公表直前の株価→損害ゼロ ③地裁:(イ)想定価格が(ア)取得価格を下回ることが証明されておらず ④地裁:上場廃止決定日の株価が(イ)想定価格と同一であるとの原告の主張には理由なし。また、株式取得時点において(ア)取得価格と(イ)想定 価格との間に差額が生じていたと認めるに足りる証拠なし ⑥地裁:原告は C1 を主張せず。A1 を排斥。また、原告主張の「高値掴み損害」(=公表前 6 か月の平均から上場廃止決定日の終値までの下落率×取得 価格)[B の変種]を排斥 [B2]当該株式を高値で取得したことが損害:バージョン 2(⑧高裁にもとづくまとめ) -5- (1)株主は、(ア)取得価格-(イ)想定価格の損害を(潜在的に)被る→上場廃止となる可能性(本件瑕疵)が公表されて現実化 (2)虚偽記載公表により本件瑕疵が顕在化して株価が変動→この変動をもとに本件瑕疵を金銭的に評価 (3)変動前の株価=(ウ)虚偽記載公表直前の株価 (4)変動後の株価=(オ)虚偽記載公表翌日~最終取引日の終値の平均 (5)(ウ)→(オ)への下落=瑕疵顕在化による株価下落 (6)本件における損害=(ア)取得価格(の平均)×下落率[((ウ)-(オ))/(ウ)] ⑧高裁:A1 を排斥。B2(6)を損害とする C=虚偽記載の公表によって株価が下落したことが損害 [C1]虚偽記載の公表によって株価が下落したことが損害:バージョン 1(⑤地裁にもとづくまとめ) (1)本件における損害=虚偽記載公表時から株価が下落したことが損害 (2)保有原告については(ウ)虚偽記載公表直前の株価-(カ)口頭弁論終結時の株価 (3)処分原告については(ウ)虚偽記載公表直前の株価-(エ)売却価格 ⑤地裁:A1 を排斥。また、原告主張の「上場プレミアとしての価値相当部分=損害」 [B の変種]を排斥。保有原告については、 (ウ)>(カ)とは認め られないため、損害なし。処分原告については、(ウ)-(エ)を損害とする ⑦地裁:A1 を排斥。また、原告主張の B[(ア)-(イ)を上場プレミアムと呼称]については、一定の変動しない割合を占める上場プレミアムなる部 分が存在したとの事実は認められないとして排斥。(ウ)-(エ)を損害とする [C2]虚偽記載の公表によって株価が下落したことが損害:バージョン 2(⑤⑥高裁にもとづくまとめ) -6- (1)本件における損害=虚偽記載公表時から株価が下落したことが損害 (2)保有原告については(ウ)虚偽記載公表直前の株価-(カ)口頭弁論終結時の株価 (3)処分原告については(ウ)虚偽記載公表直前の株価の 15%(ないし(ウ)の約 15%に相当する 160 円)(民訴 248) ⑤高裁:A1 を排斥。また、原告主張の「上場プレミアとしての価値相当部分=損害」[B の変種]を排斥。保有原告については、損害なし。処分原告に ついては、(ウ)-(エ)を損害とすることは相当でない ∵虚偽記載公表後に株式を保有し続けた者・新たに取得した者もいる ⑥高裁:A1 を排斥。また、原告主張の「高値掴み損害」[B の変種]を排斥。原告は C1 を予備的主張として追加し、これについて C2(3)により損害を 認める ⑦高裁:新聞報道なので詳細不明 ⑨高裁:A1、原告主張の B2 類似の損害を排斥。 (ウ)-(エ)を損害とすることは相当でない -7-