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[ムンディ]
9
2014 September No.12
2014
SEPTEMBER
No.12
[ムンディ] 平成26年9月1日発行(毎月1回1日発行) 編集・発行/独立行政法人 国際協力機構
〒102- 8012 東京都千代田区二番町5-25 二番町センタービル TEL 03-5226-9781 FAX 03-5226-6396 http://www.jica.go.jp/
特 集 インフラ整備
ISSN 2188-0670
世界に発信 !
日本の技術力
m y photo
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あ な た の 作 品 募 集 中!
境問題などを
「 my photo 」では、あなたが 撮影した写真を募 集しています。貧困や環
人や開 発 途
日本
動に励む
線で活
前
力の最
協
際
テーマにした写 真 、国 内 外 問わず国
の暮らし
景や人々
地の風
い土
じられな
かなか報
上 国の人の 姿 、テレビや 新 聞ではな
えて
ードを添
のエピソ
時
影
撮
真を、
られる写
など、国 際 協 力や途 上 国を身 近に感じ
す。
ただきま
させてい
ーで紹介
本コーナ
、
ご応募ください。応募作品 の中から毎号1枚
応 募 / 問 い 合 わ せ 先
関する肖
応募条件 ①応募者本 人が撮影した作品に限ります。②被写体に
③写真は、
します。
のと
れているも
了解が得ら
任において
応募者の責
像権は、
また画像の 記録方
で撮影されていること、
解像度が3 00万画素 以上(目安)
式はJPEGを推奨します。
、
(300∼350字)
エピソード
、
(電話番号とEメール)
連絡先
応募方法 お名前、
送り
記名の可否をご記入の 上、写真とともに応募先アドレスまでEメールでお
ください。
せていただく場合があ
*応募作品は本コーナーの他に、事前確認の上でJICAの広報 活動に活用さ
しません。また、応募作品はご
ります。ご記入いただいた個人情報はこれら以外の目的では使用いた
あらかじめご了承ください。
返却いたしませんので、
j i c a - p h o t o @ i d j . c o . j p
(『mund i』編集部宛 )
SEPTEMBER 2014 No.12
編集・発行/独立行政法人 国際協力機構
Japan International Cooperation Agency : JICA
「mundi」はラテン語で“世界”
。開発途
上国の現状や、現場で活動する人々の
姿を紹介するJICA広報誌です。
Contents
02
04
my photo
手編みのマフラーの宝物 シリア
特集 インフラ整備
世界に発信!日本の技術力
安全・安心のドライブを スリランカ
街と川をつなぐ橋 タイ
地下から都市を支える インドネシア
成長を続ける海の玄関口 ケニア
世界が注目! Made in JAPAN
18
20
JICA Volunteer Story
PLAYERS
森田 章一 シニア海外ボランティア/コロンビア/プラスチック加工技術
栄養改善で子どもたちの
健やかな成長を
NPO法人ISAPH
22
世界とつながる教室
グローバルな視点で羽ばたく 山梨英和中学校・高等学校
24
JICA STAFF
小柳 桂泉 JICA社会基盤・平和構築部 運輸交通・情報通信グループ 兼 計画・調整課
25
JICA UPDATE
26
ココシリ
28
Voice
30
・・ ・・
「ここが知りたい」いろんなトピックを分かりやすく解説!
渋谷 敦志 フォトジャーナリスト
地球ギャラリー
イラン
ペルシャの誇り
37
イチオシ!
本・映画・イベント
39
MONO語り
コットンが生み出す未来
40
私のなんとかしなきゃ!
パックン タレント
表紙 撮影:久野真一
JICAのビジョン
すべての人々が恩恵を受ける、
ダイナミックな開発を進めます
Inclusive and Dynamic Development
1983年に日本の協力で完成
したコンゴ民主共和国のマタ
ディ橋。日本と現地の技術者
が共に建設に取り組み、両国
の友好の象徴となっている
特 集 インフラ 整 備
世界に発信!
日本の技術力
道路、橋、電気、水道 ⋮。
私たちの生活の基盤をつくっているインフラ。
開発途上国がさらなる成長を遂げるために、
イ ン フ ラ 整 備 を 進 め て き た 日 本。
だ。第二次世界大戦後、大規模な
日本においても、もちろんそう
な役割を果たしている。
こでも、国づくりの柱として重要
れ、開発途上国であれ、世界中ど
るこれらのインフラ。先進国であ
路⋮。私たちの日々の生活を支え
る。そこで、途上国が力を借りた
だけで進めていくには限界があ
資金や技術者が足りず、自国の力
後 の 日 本 が そ う で あ っ た よ う に、
大きく、時間も手間もかかる。戦
インフラは何を造るにも規模が
だ。
そう簡単に事は運ばないのが現実
気 や 水 道 の 普 及 率 も 低 い ま ま ⋮。
横尾賢一 郎 一 般社団法人日本経済団体連合会 国際協力本部長
国際社会からも多くの支援が寄せ
いと思っているのが先進国。世界
編集協力
インフラ整備の現場で日本のさまざまな技術が生かされている。
成長のネックとなる
インフラ整備の遅れ
蛇口をひねれば、いつでも水が
出る水道。通勤・通学に使うバス
や電車。夜道を照らす街灯、安全
られ、終戦後の1950年代から
でも指折りの技術力を誇る日本も
に通行できるように舗装された道
年 代 に か け て、東 海 道 新 幹 線、
られたインフラは 件。その恩恵
ど、世界銀行から融資を受けて造
東名高速道路、各地の電力設備な
備に貢献してきた。
界各地でさまざまなインフラの整
その一つだ。実際にこれまで、世
経済成長の真っただ中にある途
中だ。
長。
﹁アベノミクスの効果もあり、
合会の横尾賢一郎・国際協力本部
は、一般社団法人日本経済団体連
﹁日 本 企 業 の 海 外 展 開 は、途 上
上国でも、インフラは最重要課題
日本の景気も上向きになってきて
を受けて見事復興を遂げ、日本の
の一つだ。しかし成長のスピード
います。企業としてステップアッ
国はもちろん、日本経済の活性化
があまりにも速く、その整備が追
プを図るために、とりわけ最近で
に も つ な が り ま す﹂
。そ う 話 す の
い付いていない。人口が集中して
は中小企業が東南アジアなどでの
技 術 者 に よ り 維持 管理 さ れ て き た
いる都市の道路は常に大渋滞、電
インフラは、今も現役として活躍
31
04
September 2014
September 2014
05 60
日本企業が工事を担当しているベト
ナムの首都ハノイのニャッタン橋は円
借款の支援によるもの。市内の渋滞
解消への貢献が期待されている
(撮影:高橋智史)
特集 インフラ整備
世界に発信! 日本の技術力
世界に広がる
日本のインフラ技術
©Shinichi Kuno
❻
❽
ケニア
Kenya
自然に優しいエネルギー開発
インド
いつでもどこでもスムーズに移動
車やバイクがひしめく首都ニューデリーでは、渋滞緩和の手段とし
てデリーメトロの建設が進行中。三菱電機株式会社の電力回生
ブレーキや日本信号株式会社の信号通信システム、東京メトロの
安全対策などが結集した世界でもトップレベルの都市鉄道だ。
首都ナイロビから北西に約120キロ、豊富
な地下資源を有するオルカリアで地熱発電
所を建設中。豊田通商株式会社が受注し、
株式会社東芝が納入したタービンを使用。
電力需要が増しているケニアで、再生可能
エネルギーを通じた発電能力向上に貢献し
ている。
❷
❽
❷
❸
❸
❺
空の玄関口を拡大
タイ
❶
がインフラ整備で培ってきた技術
CAと、長年の実績に裏付けされ
業経験とネットワークを持つJ I
んでいるのが、途上国で豊富な事
事業に積極的です﹂と話す。日本
を課題解決に生かすことはもちろ
る〟だけでなく、適切に維持管理
ん、途上国のパワーを取り込みな
され、安全に長く使われることが
た技術力を持つ民間企業や地方自
こういった流れの中で、日本が
大切だからだ。
がら、共に成長していこうという
近年打ち出しているのは、インフラ
想像を超えるスピードで発展を
治体。円借款や無償資金協力を通
そのものを造るだけでなく、設計
遂げている多くの途上国。インフ
戦略だ。
から施工、維持管理や運営方法ま
ラ整備が追い付かず、より窮地に
オールジャパンで
取り組むインフラ整備
で、その全プロセスを包括的に支
追い込まれるのは草の根レベルの
→ 12ページへ
援していこうという方針。内閣官
コロンボと南部をつなぐ大動脈である
高速道路の渋滞や事故を減らすため、
日本の交通管制システムを普及中。
下水道整備の遅れが目立つ首都ジャカル
タで、地下を掘り起こさずに下水道管整備
を進める技術を移転中。
人々だ。一人でも多くの人が一刻
Sri Lanka
Indonesia
房長官が議長を務める﹁経協︵経
❺
スリランカ
インドネシア
済協力︶インフラ戦略会議﹂を日本
❹
も早く、経済成長の恩恵を肌で感
→ 10ページへ
政府は定期的に開催するなど、こ
バンコク首都圏の渋滞解消を目指し、
チャオプラヤ川にタイ初のエクストラド
ーズド橋を建設中。
災害に強い橋を造る
主要幹線である国道20号線と中米道路網
13号線上に位置し、陸上輸送の要となる2
つの橋を株式会社安藤・間が建設。ハリケ
ーンや地震などが発生した際も最小限の被
害で済んだ頑丈なもの。現在は地震により
損傷した部分の補修工事を実施中。
❶
Thailand
ホンジュラス Honduras
じながら豊かな生活を送ることが
❹
→ 14ページへ
Viet Nam
観光客やビジネスマンなど利用者の増大を受けて、首
都ハノイのノイバイ国際空港で第2ターミナルビルの新
設工事を大成建設株式会社が担当。手荷物の受け取
り時間を短縮するためにターンテーブルが倍増され、
最新の旅客手荷物処理装置が導入される他、JICA・
国土交通省・日本国内の空港会社など官民が連携し、
空港運営・維持管理をサポートしている。
❼
❻
ベトナム
の新たな挑戦を後押ししている。
アフリカ東部の玄関口であるモンバサ港
の拡張工事を実施中。日本の港湾運営の
ノウハウを学ぶ研修も行われている。
India
→ 8ページへ
September 2014
それを実践する上でタッグを組
じて整備するインフラを、日本の
技術力で使い続けられるものにし
ていく ︱。インフラはそこに〝あ
できるよう、日本ができることは
た く さ ん あ る は ず だ。
﹁日 本 の イ
ンフラ整備の技術を包括的な〝シ
ステム〟として発信していくこと
で、途上国での日本のプレゼンス
もより高まっていくのではないで
しょうか﹂と横尾さんは期待する。
多くの自然災害を経験した日本な
らではの防災分野の協力への期待
September 2014
も高まっている。
07 日本の先人たちが培ってきた技
急増する電力需要に対応
長年の紛争や経済制裁により老朽化
が 進んでいる発電所や送配電施設を
修復中。株式会社明電舎が製造した移
動式変電設備が導入されるなど、日本
の技術力が電力供給の安定化と経済・
社会復興に寄与している。
術とノウハウ。それらが今、海を
Iraq
超えて大きく羽ばたき、新たなう
イラク
ねりを生み出そうとしている。
❼
06
特集 インフラ整備
世界に発信! 日本の技術力
Sri Lanka
安全・安心のドライブを
スリランカの最大都市コロンボと観光都市ゴールを結ぶ南部高速道路。
事故や渋滞の情報をいち早く運転手に伝え、安全を確保するため、
登録されている。海外からも多く
残る城壁と街並みは、世界遺産に
そこで 年から、コロンボとゴ
と感じた。
道路だけに、早急に改善が必要だ
日本の技術者たちが奮闘している。
の人が訪れる人気観光スポットの
ゴール
易拠点として栄え、当時の面影が
かつてポルトガルとオランダの交
ス リ ラ ン カ 南 部 の 港 町 ゴ ー ル。
在し、中部の都市キャンディで上
2004年からスリランカに駐
一つだ。
水道整備に携わってい
うちの キロ。堀川さん率いる大
った。日本が担当するのは、その
車線の南部高速道路の建設が始ま
ールを結ぶ総延長 キロ、片道2
高
速道路建設で
地域を活性化
コロンボ
ですが、海岸沿いの1
は約100キロあるの
ロンボからゴールまで
楽 で は な か っ た。
﹁コ
し、その旅路は決して
ゴールまでは、車で1時間半∼2
速道路は無事開通。コロンボから
そして2011年 月、南部高
た﹂と堀川さんは振り返る。
るとどんな苦労も吹き飛びまし
絆をつなぐ道にもなる。そう考え
﹁こ の 道 路 は ス リ ラ ン カ と 日 本 の
成建設が、施工を請け負うことに
車線の道路が唯一の道
時間で行けるようになり、ゴール
た大成建設株式会社の
でした。渋滞がひどく
へ の 観 光 客 が 2、3 倍 に 増 え た。
な っ た。建 設 現 場 は 湿 地 も 多 く、
て、車で6時間も揺ら
インターチェンジ近くには工業団
堀川祐毅さんも、週末
れ て い ま し た﹂
。観 光
地もでき、地域経済の活性化に貢
水分を吸い上げて地盤を強化しな
客 を 運 ぶ だ け で な く、
献している。
が ら 工 事 を 進 め る 必 要 が あ っ た。
地元の人たちにとって
に観光でゴールに出掛
も物流を支える重要な
けたことがある。しか
96
道路が次々に整備され、交通量が
南部高速道路だが、周辺に延びる
現地に劇的な変化をもたらした
設計では考慮しないことを要望さ
たIDを記録したいなど、日本の
が分かるように操作員に割り当て
誤操作があった場合、責任の所在
け て 議 論 を 始 め た。
﹁シ ス テ ム の
ン カ 入 り。
RDA職 員 と 導 入 に 向
員にシステムの操作方法を伝える
完 了 す る 予 定。そ の 後、
RDA職
気込む。今年の年末ごろに工事は
備していきたい﹂と武市さんは意
増すような交通管制システムを整
車。日本の技術への信頼がさらに
﹁ス リ ラ ン カ の 車 の 大 半 は 日 本
増え続けている。
ているところだ。
そうなると気になるのが、安全
研修を行い、来年3月には運用を
この時間を短縮し、高速道路の
安全を確保しようとRDAが目を
付けたのが、日本の交通管制シス
テムだった。日本の高速道路では、
道路脇に監視カメラや交通量を測
る機器が設置され、問題発生を確
認してから、わずか5分で電光掲
示板に情報が流れる仕組みになっ
ている。
2014年1月、交通管制シス
11
21
41
いく。
れたこともありました﹂と三菱重
改良した。
性だ。高速道路に事故や渋滞は付
計画では、延伸部分を含め約1
高速道路の建設から安全管理ま
しかし、南部高速道路を管理す
20キロにわたり、高速道路上の
開始する。
るスリランカ道路開発庁︵RDA︶
車両をカウントするカメラを
工ICTソリューション本部主席
の 体 制 に は 改 善 の 余 地 が あ っ た。
台、天候を把握するための雨量計
技師の武市義典さん。それでもR
ある日、トラックの荷台から路上
を 台設置し、そこから得られた
き物。万が一トラブルが発生した
に荷物が落下した時のこと。近く
情報を分析する交通管制室を整
時、いち早く周囲の運転手に状況
を走る運転手から通報を受けたR
備。さらに、道路上に電光掲示板
ランカの明るい未来を切り開いて
DA職員がパトロール車で現場に
を 台建て、事故や渋滞、速度制
で︱。日本のインフラ技術がスリ
向かい、状況を確認。車上の掲示
入れ、スリランカ用にシステムを
板で、周囲の運転手に状況を伝え
限 な ど の 情 報 を 発 信 す る。現 在、
DA職員の意見をできるだけ取り
た。幸い事故には至らなかったが、
各機材の取り付け工事が進められ
までに 分もかかった。
落下物が発生してから情報の伝達
を知らせ、二次被害を防がなけれ
テムの整備に積極的に取り組む三
11
菱重工業株式会社の社員がスリラ
南部高速道路の建設を率いる堀川さん。現場は地盤がゆるく、技術的に苦
労も多かった(撮影:谷本美加)
ばならない。
道路上の変化を
いち早くキャッチ
67
ベトナムの首都ハノイの高速道路では、
す
でにパナソニック システムネットワークス株
式会社が交通管制システムを整備。モニタ
ー右にカメラの映像、左に事故や渋滞など
の交通状況が表示される
電光掲示板の設置予定地で、基礎工事の
状況を確認する三菱重工の社員と現地の
技術者
30
08
September 2014
September 2014
09 07
スリラ ン カ
from
2012年11月、南部高
速 道 路で発 生した土
砂 崩れ。R D A 職員が
事 前に斜 面の亀 裂を
発見し、道路を封鎖し
たため難を逃れた
「前方で事故発生。制限速度50
キロ」。南部高速道路に設置さ
れる予定の電光掲示板。英語だ
けでなく、現地語のシンハラ語と
タミル語で表示する
特集 インフラ整備
世界に発信! 日本の技術力
渋
滞解消のカギを
握る川
目の前に立ち並ぶ高層ビル。下
に目を移すと、見慣れたブランド
ショップが軒を連ねている。タイ
の首都バンコク。疑いなく、アジ
アの代表的な都市の一つだ。
この 年で、バンコクの街並み
は大きく変わった。いわゆる〝タ
イらしい〟建物もちらほら見える
が、東京とそん色ない都会だ。1
ドーズド﹂という、タイ初となる
な 挑 戦 を し て い る。
﹁エ ク ス ト ラ
日本の技術が凝縮した
橋を架ける
低くて済むため利用者への圧迫感
内側にあった補強材を、外側に配
ップクラスの橋の建設技術を誇る
プラヤ川に架けた橋は8つ。現地
エクストラドーズド橋です。その
ルーウェイブリッジが世界初の
年に完成した小田原ブ
に駐在しているプロジェクトマネ
ベトナムなど、海外での橋の施工
上、イ ン ド ネ シ ア、フ ィ リ ピ ン、
約200メートル。エクストラド
と高橋さん。橋の建設地の川幅は、
の建設も進んでおり、首都のベッ
ブリ県。市内から延びる都市鉄道
そんな高橋さんたちは今、新た
い存在だ。
管理に従事してきたという頼もし
しかし当初、高橋さんたちはあ
件だという。
題でした﹂と高橋さん
成させるかが大きな課
い。いかに工期内で完
なければ工事は進まな
術があっても、人がい
が深刻化している。﹁技
ッシュ で、労 働 者 不 足
らにバンコクは建設ラ
ていませんでした﹂。さ
野に長けた人材が育っ
かし、タイでは専門分
をつくって臨みます。し
の作業指導者がチーム
熟練の職人と、シニア
〝 多能工 〟と呼ばれる
模 な 橋 を 建 設 す る 時、
足 だ。
﹁日 本 で は 大 規
た。地元の技術者の不
ることに悩まされてい
ーズド橋が、効率的に機能する条
ドタウンとして人口増加が進んで
現地で施工管理を担当する三井住友建設の小藤吉仁さん
(右)
とタイの技術者
(撮影:久野真一)
現在、建設が進められているチャオプラヤ川に架かる橋。新しく取り入れられたエクストラドーズド橋の
建設技術は日本が最先端だ
街と川をつなぐ橋
アジアの成長をけん引してきたタイの首都バンコク。
その影響から車の量が増大し、日々の交通渋滞は深刻だ。
には カ国を超える国籍のスタッ
る よ う に 人 員 を 補 給 し た。
﹁現 場
入〟して、2交代制で作業ができ
躍しているタイの熟練工を〝逆輸
次々とスカウト。さらに海外で活
ピ ン か ら、優 秀 な 技 術 者 た ち を
ンガポール、マレーシア、フィリ
ットワークを駆使して、日本、シ
そこで三井住友建設は独自のネ
は振り返る。
チャオプラヤ川に架かる橋は、両岸の交通渋滞の緩和に
貢献(撮影:久野真一)
その解消を目指して、街を縦断する川に架かる橋の建設が進められている。
9 97 年 の ア ジ ア 通 貨 危 機 以 降、
経 済 の 落 ち 込 み か ら は い 上 が り、
順調に成長を遂げたタイ。日本か
ら手軽に行ける観光地としても人
気だ。
し か し 急 速 な 発 展 と 引 き 換 え
に、さまざまな課題に直面してい
る。中でも目に見えて明らかなの
が、慢性的な交通渋滞だ。自動車
の所有率は、この 年で約1・5
倍に増加。都市鉄道の整備も進め
られているが、バンコクを含む首
都 圏 は 依 然 と し て〝車 依 存 社 会〟
だ。
﹁今 日 は 家 に 帰 る ま で 2 時 間 も
かかっちゃったよ﹂
﹁で も、こ こ を 通 ら な い と 家 に
帰れないから﹂
そんな会話は日常茶飯事。渋滞
が起これば、当然、ヒトやモノの
流れが滞る。産業の活性化にも影
響が及んでしまう。
いる地域だ。それ故に、車の渋滞
その解決のカギを握るのが、街
も悪化していた。
全長460メートルの橋の建設
い う。
﹁
がなく、コスト削減にも有効だと
形式の橋の建設だ。従来は橋桁の
を手掛けるのは、三井住友建設株
してきた。
ジャーの高橋克行さんは
られている。設置場所は、バンコ
建設を担当したのが当社でした﹂
そして今、さらにもう一本、日
年以
本の協力で新たな橋の建設が進め
橋のうち の建設を円借款で支援
置するというもの。主塔の高さも
日本は、これまでタイの発展に貢
式会社だ。これまで同社がチャオ
和に大いにつながる。世界でもト
献すべく、チャオプラヤ川の の
流れを生み出せば、周辺の渋滞緩
を縦断するチャオプラヤ川だ。こ
バンコク
こに橋を架けることで新たな車の
タイ
94
20
ク中心部から北に キロのノンタ
15
月5日のタイの国王誕生日の開
今 年8 月 末 に は 約9 割 が 完 成。
す﹂と高橋さんは話す。
フたちの踏ん張りに感謝していま
い時期もがんばってくれたスタッ
れを取り戻し始めています。苦し
チームワークができて、工事も遅
フが共に働いています。少しずつ
10
10
30
通を目指して、一致団結して、ラ
ストスパートをかけているところ
ドーズド橋は、その機能性に加え
だ。アジア最大規模のエクストラ
て、タイ人のデザイナーが意匠を
もの。タイらしい鮮やかなライト
凝らしたオリエンタルな外観も見
アップも計画されている。
の土地に残り、現地の人たちに使
﹁自 分 た ち が 手 掛 け た も の が そ
い続けてもらえることは大きなや
ランドマークとして親しんでもら
りがいです。特に大型の橋は街の
上の醍醐味はありません﹂と高橋
えるので、橋梁屋としてはこれ以
さん。タイの人々の希望の象徴と
なる橋の完成はもうすぐだ。
10
September 2014
September 2014
11 12
Thailand
from
10
13
図面を見ながら橋の設計につ
いて議論する高橋さん
(右)
特集 インフラ整備
世界に発信! 日本の技術力
Indonesia
from
その急激な成長のスピードに、インフラ整備が追い付いていない。
人口が1000万人に迫る勢いのインドネシアの首都ジャカルタ。
地下から都市を支える
インド ネ シ ア
そこである日本企業が、技術者の人材育成に力を入れている。
で飛び交うクラクションの音。朝
ププーッ、ププーッ。あちこち
多く、人口はこの 年間で約2倍
求めて地方から移住してくる人も
成長をけん引する大都市。仕事を
高層ビルが立ち並ぶ、アジアの
タだ。
地域では、生活排水は川に垂れ流
都圏全体の2%ほど。それ以外の
深刻だ。整備されているのは、首
その一つ、下水道の問題は特に
追い付いていない。
の生活を支えるインフラの整備が
夕 の ラ ッ シ ュ に 巻 き 込 ま れ る と、
が、インドネシアの首都ジャカル
普段は車で 分の道のりも1時間
大
都市の成長の陰で
先端に回転するカッターが付いた掘進機と遠隔操作パネル。地中を
進んでトンネルを掘っていく
大渋滞を悪化させるわけにはいか
する必要がある。しかしこれ以上、
事をするため、周辺の道路を封鎖
ならない。街中の地面を掘って工
地下に下水道管を設置しなければ
下水道の整備には、当然ながら、
むなど、衛生状態も悪化している。
滞が今や名物になってしまったの
以上かかってしまう。そんな大渋
土を置くスペースを取る必要もな
の掘進機を使えば、掘り起こした
にわたり開発・販売してきた。こ
掘り進められる掘進機を 年以上
い、地上からの遠隔操作で地下を
推進工法だ。同社はその工法を使
れたのが、地面を掘り起こさない
沈下などを極力なくすために生ま
のスピードがあまりに速く、市民
の960万人になった。人口増加
トルを3回に分けて掘ろうとして
ネシアの技術者たちは100メー
進めた方が効率的なのに、インド
術 者 だ。
﹁一 度 に 長 い 距 離 を 掘 り
カ所以上の現場を経験してきた技
路の延伸工事など、日本国内で
する佐々木勝之さん。首都高速道
のは、2013年から現地に駐在
問 題 が あ っ た の で す﹂
。そ う 話 す
ることも多く、下水が街に流れ込
し状態だ。雨期には洪水が発生す
ながら指導している。
ネシアの技術者と共に工事を進め
開発工機の掘進機を使い、インド
す﹂と話す。そこで実際にイセキ
圧力、掘り出した土砂の状態や量
﹁掘 進 機 の カ ッ タ ー の 回 転 方 向 や
適切に使えば300メートルは一
機応変に対応することが必要で
て進むスピードを変えるなど、臨
1970年代には、日本でも下
工機だ。
る 市 場 が ア ジ ア だ。
﹁掘 進 機 は イ
ているが、今、特に目を向けてい
同社の掘進機は国内外で使われ
と、その場その場で条件が違うの
含んでいたり石が大きくなったり
の固さが変化する。地下水を多く
地下を掘り進めていると、地盤
い 位 置 を 管 理 す る 方 法 を 理 解 し、
た の だ。
﹁セ ン サ ー を 使 っ て 正 し
メートル以上も横にそれてしまっ
る。掘進機が真っすぐ進まず、3
かつて大きな失敗をしたことがあ
水道管などを地中に設置するため
ンドネシアでも販売した実績があ
20
渋滞に悩まされているジャカルタの中心部、
スディルマン通り。
この下を横
断して下水道管を設置する工事を進めている
で支えていく。
の技術が、途上国の発展を縁の下
ているイセキ開発工機。日本企業
して他の国への普及も視野に入れ
今後は第2の都市スラバヤ、そ
を見せる。
のやりがい﹂と佐々木さんは笑顔
場所。そこで活動できるのが一番
そ、自分の技術を最大限生かせる
がこれからもっと進むアジアこ
ドネシアをはじめ、インフラ整備
法 の 需 要 は ま だ ま だ あ る。
﹁イ ン
インを通すため、同国での推進工
ガスや通信なども地下にパイプラ
ようになる。下水道だけではなく、
れば、工事がよりスムーズに進む
技術者一人一人の技術が向上す
い﹂と意気込む。
正確に動かす技術を身に付けた
には、道路を掘り起こすのが一般
だ。こ の 道
年 の 佐 々 木 さ ん は、
りました。しかし、その使い方に
気に掘れるんですよ﹂
。
などをチェックし、状況に合わせ
ない。そんなジャカルタに、新た
く、渋滞を起こさずにインフラ整
術者、ゼンディ・ミコライさんは、
その一人、現地の施工会社の技
な風を吹き込んだ日本企業があ
いました。掘進機をうまくコント
備を進められるのだ。
断する下水道管の工事に着手した
のが、トンネルを掘る掘進機の老
30
的だった。その騒音、振動、地盤
舗メーカー、株式会社イセキ開発
40
インフラ整備のカギは
人の力
る。市内の目抜き通りの地下を横
ロールできないのが原因で、実は
掘り進めるスタート地点に設置された
掘進機。
「文化の違いを理解しつつ、
工事を進める際の安全管理はしっか
り教えています」
と佐々木さんは話す
掘進機が稼動すると泥水が発生するため、
それを処理する機械も同時に操作する。
その方法を現地の技術者に指導する
佐々木さん
(手前)
30
12
September 2014
September 2014
13 15
ジャカルタ
佐々木さん
(右端)
とゼンディさん
(手前)。
ジャカルタで共に工事に
携わる大切な仲間たちだ
特集 インフラ整備
世界に発信! 日本の技術力
モンバサ
港 に 接 岸 す る 巨 大 な コ ン テ ナ
ダ、南スーダン、コンゴ民主共和
際貿易港で、近隣の内陸国ウガン
モンバサ港。東アフリカ最大の国
ケニア東部、インド洋に面した
実際に入ってくる量はそれを上回
扱能力は年間約 万TEU ※だが、
量は急増している。現在の貨物取
長により、モンバサ港の貨物取扱
近年、東アフリカ諸国の経済成
をしているのだ。
ターミナルを建設し、貨物取扱能
存のコンテナターミナルの隣に新
た。モンバサ港の拡張工事だ。既
に一大プロジェクトが動き出し
持つ日本の協力の下、2007年
国際貿易港を運営してきた経験を
そこで明治時代からいくつもの
ナを一つ一つ持ち上げては、下ろ
のクレーンがそびえ立ち、コンテ
易を始め、明治時代に入ってから
頼っているため、この地域に暮ら
フリカ諸国は物資や原料を輸入に
めることなくトレーラーが循環し
繰 り 返 す。
﹁ク レ ー ン の 動 き を 止
まうことになる。
経済成長のチャンスをつぶしてし
していく。
は海外との貿易の促進を目指して
港の機能強化で
一行が向かった先は、日本5大
旬、
KPA幹部4人が来日した。
本の事例を参考にすべく、7月上
をいかに効率よく運営するか。日
には解消されない。新ターミナル
ができなければ、船の渋滞は完全
も、スムーズに作業を進めること
しかし、港が拡張されたとして
つき約5台のトレーラーがこれを
ン の も と に 戻 っ て い く 。1 船 に
で運ぶ。降ろしたら、再びクレー
台に載せ、トレーラーが集積場ま
テナを持ち上げ、トレーラーの荷
が行われていた。クレーンがコン
うどコンテナ船の積み下ろし作業
神戸港のターミナルでは、ちょ
量は約250万TEUに上る。
港に発展し、現在のコンテナ取扱
規模を拡大。世界有数の国際貿易
出されている。ここでコンテナの
面にはターミナルの全体図が映し
中には数台のパソコンが並び、画
あるオペレーションセンターだ。
いるのが、ターミナルの司令塔で
こうした地上での作業を支えて
心していた。
ン・ウマズィ・ムワムレさんは感
貨物ターミナル責任者のイブリ
て も 効 率 的 で す﹂と、
KPA一 般
ていて、まったく無駄がない。と
ビジネスチャンスを呼び込む
港の一つ、神戸港。
﹁大輪田泊﹂と
おおわだのとまり
呼ばれた平安時代から近隣国と貿
動 き を 管 理 し、出 荷 先 別 に 分 け、
が下にくるよう操作している。K
船に積み込む際には重いコンテナ
いうもの。2016年2月の完成
を目指し、工事が進められている。
目 標 は、企 業 活 動 の 活 性 化 だ。
K
カ進出を促すため、東京でセミナ
PA幹部たちは日本企業のアフリ
ーに臨んだ。集まったのは、物流
続いて、ターミナルに併設され
ている倉庫へ移動。ターミナルに
モンバサ港の工事の進捗を報告し
会社や商社などから100人以上。
た他、今後さらに港を拡張し、港
般倉庫に、食品類を冷蔵倉庫に一
時 保 管 し、通 関 や 検 疫 の 手 続 き
業誘致のための経済特区の新設な
と市街地を結ぶ道路の整備や、企
ど を 進 め て い く と 説 明 し た。
﹁モ
サ港では、港から数キロ離れた場
所に倉庫があるため、こうもスム
チャンスをアピールできたと思
う。日本企業も大きな関心を示し
ンバサ港で拡大し続けるビジネス
や時間を抑えることができます﹂
胸を張る。
てくれました﹂とンドゥア総裁は
の中に倉庫があると、輸送の費用
宏 朗 さ ん。
KPA幹 部 た ち は そ の
港の整備を通じて経済を活性化
の未来の姿を思い描いていた。
ニアと日本は1つの目標に向かっ
し、人々の生活を豊かにする。ケ
て、より一層、絆を深めている。
新ターミナルが整備され、コン
話に耳を傾けながら、モンバサ港
と、神 戸 港 の 運 営 に 携 わ る 中 嶌
ー ズ に は 出 荷 で き て い な い。
﹁港
後、出荷している。一方のモンバ
上がった貨物のうち、雑貨類を一
画面を見つめていた。
PA幹部たちは、食い入るように
万TEU 増 や す と
力を年 間 約
ケニアの行政官たちが港湾運営のノウハウを学びに日本を訪れた。
り、まさにパンク状態。このまま
年々増え続ける貨物量に対応すべく、
で は 物 流 が ス ト ッ プ し て し ま い、
東アフリカの貿易拠点、ケニアのモンバサ港。
国、ルワンダなどへとつながる重
成長を続ける海の玄関口
要 な 玄 関 口 に な っ て い る。
﹁東 ア
っているため、数日間〝渋滞待ち〟
が並んでいる。港が他の船で埋ま
に目を移すと、数隻のコンテナ船
み下ろし作業。ところが、ふと沖
絶え間なく続く、コンテナの積
総裁は話す。
のフランシス・ギチリ・ンドゥア
理 す る ケ ニ ア 港 湾 公 社︵KPA︶
要な港です﹂と、モンバサ港を管
す約1億5000万人にとって重
ナイロビ
船。岸壁には約 メートルの高さ
沖
まで続く
船の渋滞
Kenya
from
14
September 2014
September 2014
15 ケニア
テナの取扱量が増えれば、次なる
KPA幹部らがプレゼンした東京でのセミ
ナー。会場はアフリカ進出を狙う日本企
業で埋まり、関心の高さがうかがえた
90
神戸港のターミナル。
阪神・淡路大震災後も
異例のスピードでオペ
レーションを回復させた
※20フィートコンテナを1として、
港の貨物取扱量を表す単位。
神戸港のオペレーションセンターを視察し、
「モンバサ港と同じコンテナ運用のシステムを使っているので参考になりまし
た」
と話すKPAのムワムレさん
奥に見えるのがモンバサ港の既存のターミナルで、手前が建設中の新ターミナル。今後さらに拡張
する計画だ(提供:東洋建設株式会社)
58
50
神戸港のターミナルに併設される倉庫を見学するKPAのンドゥア総裁
(左)
たち。作業の効率化のため、港で荷物を梱包して出荷している
常 設 型自
視装置
監
水
漏
動
L-sign
水道テクニカルサービス株式会社(神奈川県)
漏 水を常 時 監 視!
開
視装置L-signだ。配水管や給水管に取り付けるだけで、漏水の音を自動
的に感知してLEDが光って知らせてくれる。
通常、漏水は給水時の音を聞いて調べる。
しかし、バンガロールでは週
発途上国では、24時間いつでも水が出るわけでは
2日、5∼8時間しか給水されない地域がほとんど。わざわざそのタイミング
ない。配水管や給水管から水が漏れたり、違法に水
に合わせて人を派遣して調査するのは手間がかかる。L-signは給水時間
が盗まれてしまうなどして、水道局の収入にならない無収水
に合わせて起動するようにカスタマイズでき、5年間は監視を続けることが
が発生することも。水分野の課題は尽きない。
できて効率的だ。
その解決に自社の技術を生かせると考えたのが、漏水
「L-signで漏水の当たりをつけ、最終的に場所を特定して修理するの
調査を専門とする水道テクニカルサービス株式会社。今、
は人。現状では配水管の敷設や修理の高い技術を持った人材がいないた
インド南部の産業都市バンガロールで導入を目指している
め、
そういった技術も一緒に伝えたい」
と大島健司社長は意気込んでいる。
日東建設株式会社(北海道)
インフラの強 度を点 検!
ア
実際にコンクリートテスターを使ってみるナイジェリアの技術者た
ち。約400グラムで持ち運びもしやすい
のが、
日本の漏水調査会社と共同で独自に開発した常設型自動漏水監
フリカの経済大国ナイジェリアでは鉄道網の整備
が進んでいないため、モノの輸送の9割をそれ以外
日東建設株式会社が開発し、ナイジェリアで普及を目指すのがコンクリー
トテスターだ。ハンマー部分に加速度計が内蔵され、たたくだけで強度を
点検できる。床・天井・壁など、
どんな角度でも使え、測定精度が高いデー
ー
トテスタ
ー
リ
ク
コン
タがテスター内に記録される。その機能性に現地の技術者からは驚きの
声が上がった。
今後、
さらに運輸交通インフラの整備が進むと考えられるナイジェリア。
の陸上輸送に頼っている。
しかし道路や橋などの定期的な
同国の公共事業省や建設コンサルティング企業、施工業者、
ゼネコンな
維持管理はもちろん、新設時に強度などの品質チェックが
ど、販路開拓のポテンシャルは高い。技術開発部の久保元樹さんは、
「こ
されていないのが課題。老朽化したり強度が十分でなけれ
れまで海外展開先として考えていたのは先進国ばかり。でも、ナイジェリア
ば、
いつか大事故が起こりかねない。
を訪れたことで、開発途上国での需要の大きさを肌で感じることができまし
そこで、
コンクリート製建造物の調査技術に強みを持つ
た。自分たちの技術を世界に広めていきたい」
と力強く話している。
世界が注目!
漏水の音を聞き分ける技術を学ぶバンガロール市水道局の職員たち。
これまで漏水調査は行われていないため、技術習得の意欲は高い
in JAPAN
Made 近年、目覚しい発展を遂げるアジアやアフリカの国々。そんな開発 途上国の成長を後押しすべく日本が発信する技術を紹介!
特集 インフラ整備
世界に発信! 日本の技術力
ェッカー
チ
ル
ー
スケ
中外テクノス株式会社(広島県)
配 管 内の汚れを診 断!
約
17 September 2014
そこで活躍するのが、同社が開発したスケールチェッカーだ。石油や水
などが通る配管の外側から微弱で安全な放射線を当てると、内側に付着
した異物をセンサーが感知し、専用のソフトウェアで分かりやすく画像化し
てくれる。
「工場内には人間の血管のように、いくつもの配管が複雑に張
60年にわたり、測定・分析機器を専門に扱ってきた
り巡らされています。1カ所でも配管が詰まると工場が動かなくなり、一大
中外テクノス株式会社。その経験を生かして、新た
事につながります」
と、構造物エンジニアリング事業部本部長の石高星太
な市場として目を付けたのがインドネシアだ。
郎さんは話す。配管の中にカメラを入れる検査法では工場の操業を止め
経済成長に伴い国内のエネルギー消費量が急増し、
ま
なければならないが、
スケールチェッカーならその必要はない。
た輸出産品としても重要な石油。製油所や石油化学工場
現地の検査会社などに紹介すると、
「 今までにない検査方法」
と多くの
の増設が見込まれる中、設備の維持管理体制が十分では
関心を得た。日々の点検で不具合を見付け、壊れる前に直すという日本な
なく、壊れるまでそのまま…ということも少なくない。
らではの予防の意識も伝えていく。
インドネシアの検査会社などに技術を紹介。日本国内の石油化学工
場などでのシェアは7割を超える
September 2014
16
章一
� シ ニ ア 海 外 ボランテ�ア�
森田
プラスチック加工の
スペシャリスト
高 さ 5 メ ー ト ル は あ る 機 械 を 巧 み に 操 り、プ ラ ス チ
ッ ク 原 料 か ら フ ィ ル ム を 作 り 出 し て い く 若 者 た ち。コ
ロ ン ビ ア 南 西 部、サ ン テ ィ ア ゴ・デ・カ リ の 職 業 訓 練
校 で は 実 習 が 行 わ れ て い た。指 導 に 当 た る の は、シ ニ
ア海外ボランティアの森田章一さんだ。
年
大 学 卒 業 後、得 意 科 目 の 化 学 で 自 動 車 開 発 に 携 わ り
た い と、自 動 車 メ ー カ ー に 就 職 し た 森 田 さ ん。約
大 学 の 学 費 が 払 え ず 、無 償 の 職 業 訓 練 校 で 学 ぶ コ ロ ン ビ ア の 若 者 た ち 。
彼 らが就 職に必 要な知 識と技 術を身に付けられるよう、
a.フィルムを作る際に必要な材料の重量を計算する方法を指導。
しっかり理解できているか、常に生徒の顔を見回している
b.機械の上部でフィルムが作られ、巻き取られていく。生徒たちはフィルム幅が規定通りか巻尺で測定する
c.森田さんが活動する職業訓練校。バスの運賃を払えず歩いて通学する生徒もいる
d.コロンビアで障害者の自立を後押しする青年海外協力隊員の依頼を受け、森田さんは障害者が使いやすいスプーンを試作した
サンティアゴ・デ・カリ
コロンビア
るだろう。
い 指 導 に、コ ロ ン ビ ア の 若 者 た ち は き っ と 応 え て く れ
る よ う に 指 導 し た い﹂と 森 田 さ ん。日 本 の 技 術 者 の 熱
﹁残りの活動期間、少しでも生徒の実技能力が向上す
と期待する。
技術者から最大限のことを学んで技術を磨いてほしい﹂
を 豊 富 に 持 っ て い ま す。生 徒 た ち に は、日 本 の 熟 練 の
せる。
﹁モリタさんは、プラスチック加工の最新の知識
そ ん な 森 田 さ ん に は、オ サ ー ル 先 生 も 熱 い 信 頼 を 寄
を進んで整理整とんするようになった。
。森 田 さ ん の 根 気
としての精神も身に付けてほしい ―
強 い 指 導 に 生 徒 た ち の 態 度 が 少 し ず つ 変 わ り、作 業 場
て 伝 え る こ と が 重 要 で す﹂。技 術 だ け で な く、技 術 者
﹁5Sの中の〝 し つ け 〟は 、 こ う い っ た 実 体 験 を 通 し
な面持ちで聞き入っていた。
わ ぬ け が に も つ な が り ま す﹂と 一 喝。生 徒 た ち は 神 妙
ち ん と し な い と、次 に 使 う 人 が 迷 惑 す る で し ょ う。思
て 帰 っ て し ま っ た。翌 日、森 田 さ ん は﹁ 後 片 付 け を き
の カ ス で 汚 れ て い た の に、一 部 の 生 徒 が そ の ま ま に し
い 方 を 学 ぶ 実 習 で の こ と、機 械 の 周 り が プ ラ ス チ ッ ク
え て い る。あ る 日、プ ラ ス チ ッ ク を 加 工 す る 機 械 の 使
効 率 や 安 全 性 の 高 さ を 支 え る 考 え 方 で あ る 5S も
※伝
そ の 時 間 を 使 っ て、森 田 さ ん は 日 本 の 製 造 業 の 作 業
オ サ ー ル 先 生 の 賛 同 も 得 て、少 し ず つ 増 や し て い る。
と森田さん。座学に比べ、実習の時間が少なかったため、
解 決 策 を 導 き 出 し た 経 験 は、必 ず 次 に つ な が り ま す﹂
あ っ た よ う に、実 際 に 手 を 動 か し て、失 敗 し、悩 み、
そこで、目を付けたのが実習の時間だ。﹁私がそうで
い。
ス を 重 視 し な け れ ば、深 く 理 解 で き ず、応 用 も で き な
強 か っ た の だ。な ぜ そ の 答 え に な る の か と い う プ ロ セ
け た。問 題 の 答 え さ え 分 か れ ば い い、と い う 考 え 方 が
﹁ 技 術 者 の 技 と 心 を 磨 い て ほ し い﹂
Story
d
18
September 2014
※整理・整とん・清掃・清潔・しつけの略。
1951年愛知県出身。大学卒業
後、
日産自動車株式会社、富士
ゼロックス株式会社に勤務。定
年退職後、2012年9月からシニ
ア海外ボランティア
(プラスチッ
ク加工技術)
としてコロンビアで
活動中。
シ ニ ア 海 外 ボ ラ ン ティ ア の 森 田 章 一さ ん は 、プ ラ ス チッ ク の 加 工 技 術 を 伝 え て い る 。
に わ た り、プ ラ ス チ ッ ク や ゴ ム の 部 品 の 開 発 を 手 掛 け、
電気機器メーカーに転職した後も付加価値の高い部品
の 開 発 に 力 を 注 い だ。海 外 で の 仕 事 も 多 く、ベ ル ギ ー
に は 3 年 半 駐 在。現 地 で の 業 務 を 経 て、も っ と そ の 土
地 に 根 差 し、現 地 の 人 の た め に な る 仕 事 が し た い と 思
うようになった。
そ ん な 中、会 社 の 元 同 僚 か ら、定 年 退 職 後 に シ ニ ア
海外ボランティアに参加したという話を聞く。﹁自分の
経験を生かして国際貢献できてやりがいがあった﹂。そ
の 言 葉 に 心 を 突 き 動 か さ れ た 森 田 さ ん は、イ ン タ ー ネ
ッ ト で 募 集 要 項 を 見 て み る こ と に。い く つ も の 職 種 が
。
―
ある中、﹁プラスチック加工技術﹂に目が留まった。自
分以外にこの職種の適任者はいないのではないか
森田さんは心を決めた。
a
b
c
技 術 者の心 構えを
伝える
コ ロ ン ビ ア に は、政 府 が 運 営 す る 職 業 訓 練 校 が 全 国
各 地 に あ る。高 校 卒 業 後、大 学 の 学 費 が 払 え な い 若 者
た ち の た め に、1、2 年 間、無 償 で 教 育 を 提 供 し て い
る の だ。工 業 科、商 業 科、調 理 科、看 護 科 な ど、卒 業
後 の 就 職 に 直 結 す る コ ー ス が 用 意 さ れ、約 1 0 0 万 人
が学んでいる。
森 田 さ ん が 配 属 さ れ た の は、樹 脂 加 工 や 金 属 加 工 を
学 ぶ サ ン テ ィ ア ゴ・デ・カ リ 市 内 の 学 校。担 当 は、フ
ィ ル ム や チ ュ ー ブ の 製 造 な ど、プ ラ ス チ ッ ク の 加 工 技
術 の 指 導 だ。﹁学 業 不 振 や 経 済 的 理 由 で 卒 業 で き な い
生 徒 が 約 4 割 い る と 知 り 、全 員 が 技 術 を 身 に 付 け 、 就
人 の ク ラ ス を4 つ 受
職できるよう後押ししたいと思いました﹂。同僚のオマ
ー ル・オ サ ー ル 先 生 と 共 に、約
け持つことになった。
何 回 か 授 業 を こ な す う ち に、生 徒 た ち の 課 題 を 見 付
25
September 2014
19 20
PROFILE
JICA
Volunteer
M ORITA
S h oic h i
「状態をよく見て、慎重に操作してください」。チューブを伸ばす作業を指導する森田さん
研修員がつないだ縁で
マラウイへ
スよく食べる必要がある。日本では常
識だが、アフリカの南東部、マラウイ
の食生活は真逆だ。
ズを聞いたことがあるはず。健康を保
日本人なら、そんなキャッチフレー
の粉をお湯で練ったシマに、ゆでたホ
ない人もいる。昼と夜はトウモロコシ
かゆと紅茶。そもそも朝食を食べてい
朝食はトウモロコシの粉で作ったお
つためには、さまざまな食材をバラン
す るNGOだ。
栄養バランスの良い食事を取れず、健康に暮らせない人が多い開発途上国。
その現状を改善しようと立ち上がっ
長に良くない。
体重が増えなかったりと、子どもの成
は栄養が偏り、身長が伸びなかったり
し。この食事がほぼ毎日続く。これで
げている。
め、現在はマラウイにも活動の場を広
オスで乳幼児の栄養改善に取り組み始
添って力になりたい﹂という思いからラ
入れる中で、
﹁現地の人々にもっと寄り
健 医 療 分 野 でJ ICAの 研 修 員 を 受 け
した。これを機に、かつてマラウイで助
たちが診療所を建てられるよう後押し
マリア病院の職員が寄付を募り、村人
け た い﹂
。そ ん な 彼 の 思 い を 聞 き、聖
建てて、保健医療サービスを人々に届
っ た。
﹁故 郷 の ム ジ ン ゲ 村 に 診 療 所 を
NPO法人ISAPHはマラウイの人々を巻き込みながら、
村がISAPHの活
数キロなんてことも多くて大変でし
き取り調査を始めました。隣の家まで
も把握されていなかったので、まず聞
動 場 所 だ。
﹁子 ど も の 出 生 数 も 死 亡 数
人ほどが暮らす
ロ。ムジンゲ村も含め、1万5000
首都リロングウェから北に400キ
現地の人たち自身が
立ち上がるための後押し
民への健康教育を開始した。
協力事業を通じて、2013年から住
れ る 命 が あ る ︱。J ICA草 の 根 技 術
さん。きちんと栄養が取れれば、救わ
知っている人が少ないのです﹂と齋藤
ます。栄養と健康が結び付いていると
落ち、感染症にかかりやすくなってい
の感染症ですが、栄養不良で抵抗力が
﹁直 接 の 死 因 は マ ラ リ ア や 下 痢 症 な ど
る 前 に 命 を 落 と し て し ま う 子 は 多 い。
しかし、いまだ5 歳の誕生日を迎え
療も受けられるようになった。
域を管轄するヘルスセンターの巡回診
は公的な施設として認定され、この地
療所が機能するようにサポート。今で
Gの齋藤智子さんを現地に派遣し、診
産師として活動した青年海外協力隊O
に来日したマラウイ保健省の研修員だ
栄養改善で子どもたちの
健やかな成長を
26
未来を担う子どもたちの栄養改善に向けて奮闘中だ。
マラウイ
リロングウェ
シマのおかゆを食べる子ども。
成長に欠かせない栄養素を離
乳食に加えることで抵抗力を上
げて、
病気を予防する
く。
よう、
ISAPHの挑戦はこれからも続
ウイの子どもたちが大きく成長できる
まだまだやるべきことはある。マラ
かけの導入などを検討中だ。
シマにかけるだけで栄養が取れるふり
といった栄養価が高い換金作物の栽培、
ティーの共用菜園でのニンニクや大豆
APH理 事 は そ う 意 気 込 む。コ ミ ュ ニ
クトマネジャーを務める浦部大策IS
養改善につながるはずです﹂
。プロジェ
らえるレシピを広められれば、必ず栄
〝子どもに食べさせたい!〟と思っても
っ た ら 驚 く ほ ど の 勢 い で 普 及 し ま す。
いくら高価なものでも、本当に必要だ
まだこれからだ。
﹁携帯電話のように、
家庭で日々実践してもらうには、まだ
男 性 優 位 の 文 化 を 変 え る の は 難 し い。
し か し 母 親 だ け に 知 識 を 伝 え て も、
評だ。
子ど も の 健 康 を 守 る こ と が で き る と 好
作り方を伝えることに。少しの工夫で、
などを加えた栄養たっぷりの離乳食の
に母親グループを立ち上げ、野菜や卵
に栄養が偏っている。そこで地域ごと
さらに、離乳食のおかゆもデンプン質
いることも分かった。
かゆ、シマや野菜まで与えてしまって
ない生後6 カ月未満の乳児に、水やお
回数が少ない。消化機能が発達してい
畑で働く母親が多いが、母乳を与える
彫りになった。日中は乳幼児を連れて
調査の結果、さまざまな課題が浮き
た﹂と齋藤さんは苦労を話す。
毎月子どもたちの身長と体重を測るヘ
ルスセンターの職員。村のボランティア
に正確な計測方法を指導する
ISAPH
NPO法人
サ ッ プ
イ
ア
その縁をつないだのは、2000 年
年 以 上 に わ た り、保
ウレンソウなど野菜の付け合わせを少
﹁一日 品目を食べましょう﹂
国 際 協 力 の 担 い 手 た ち
家族構成や健康状態などをマ
ラウイ看護大学の教員が聞き
取り調査。活動のベースとなる
貴重なデータだ
ムジンゲ
齋藤さんらから離乳食の作り方を学んだ母親が、
近所の女性たちにデモンストレーションし、知識を
広めていく
たのが、NPO法人ISAPH。福岡県
30
久留米市にある聖マリア病院を母体と
新しく支援を始める村を訪れ、
どん
な活動をするか説明する齋藤さん
(右から3人目)
と現地スタッフ
20
September 2014
September 2014
21 30
iPadを使ってMDGsについて調べる生徒たちと吉野先生。自分自身で調べることで、理解が深まる
丘の上にたたずむ
歴史ある学校
7 月 の3 連 休 の 初 日、東 京 か ら の 特
急電車は、大きな旅行か ば んを抱 え た
観 光 客 で に ぎ わ っ て い た。そ ん な 中、
向かった先は山梨県甲 府市。甲府 駅 で
下車し、前方にたたずむ 愛 宕山に 向 か
って5 分ほど歩いた小 高い丘 に、山 梨
英和中学校・高等学校は立っている。
その名前に聞き覚えのある人もいる
かもしれない。そう、この学校は、
NH
Kの朝の連続テレビ小説﹃花子とアン﹄
の主人公、村岡花子が かつて 教 べんを
執った学校。1889 年に山 梨 英和女
学校として産声を上げ、キ リ ス ト教の
教えに基づいた女子教育 を 推進。村岡
花子の生涯からも分かる よ うに、英語
教育にも積極的な学校だ。
﹁おはようございます!﹂
校 内 に 入 る と、生 徒 た ち が 元 気 よ く
あいさつしてくれた。これか ら1 時 間
人が机を並べてチャ
目の授業が始まるところ。高 校1 年 生
の 教 室 に は、約
の声に耳を傾ける生徒たち。土曜の1、
〟について
nnium Development Goals
勉強します﹂
。英語科の糟谷理恵子先生
﹁今 日 は ミ レ ニ ア ム 開 発 目 標〝 Mille-
育もこの学校の売りの一つだ。
た ち に よ り リ ア ル に 伝 え た い と 思 い、
ていた吉野先生。
﹁世界のことを子ども
年海外協力隊としてマラウイで活動し
の3 月まで現職参加制度を使って、青
目標について調べてみましょう﹂
。今年
Gs の中で達成が近い目標、遅れている
吉 野 華 恵 先 生 だ。
﹁そ れ で は 次 に、
MD
ク上で管理されているた め、予習復 習
年目だ。授業で使う資料はネ ットワ ー
梨英和。高校1 年生にと っ てはも う3
ち 早 く i Pa d を 授 業 に 取 り 入 れ た 山
ICT教 育 の 一 環 と し て、県 内 で も い
生徒たちが取り出したのはiPadだ。
仕事 を得るのが 難しいこと、貧 しく て
して しまう人がい るこ と、女 性た ちは
IV/ エイズ などの感染 症で 命を 落と
影してきた写真をスライドに映した。
H
盤。吉 野 先 生 は、自 身 が マ ラ ウ イ で 撮
DGs は 持 続 可 能 な 開 発〝 sustainable
題や国際協力について学ぶ科目だ。
﹁M
の経験を交じえながら、途上国の現状
協 力 隊 に 参 加 し ま し た﹂と 話 す。自 身
際理解教育の強化を目指しています﹂
。
﹁iPadの導入を通じて、英語や国
現地で出会った人たちのストーリーを、
ととして 考えて ほしい︱。吉野 先生 が
顔に影を 落とし ている問題 を、自分 ご
いる こと⋮。現地の 人たち の明 るい 笑
学校に通えない子どもたちがたくさん
生徒たちはじっと聞いていた。
そう話すのは、今年の3 月ま で 教頭を
それが彼女の役割だ。
生 も、青 年 海 外 協 力 隊 の 経 験 者。今 か
目だ。
﹁自分で情報を取
生の発案で始まった科
ーズ﹂も、そんな中安先
﹁グローバルスタディ
の普及に努めてきた。
に な り、国 際 理 解 教 育
ました﹂
。帰国後は教員
せられるように応募し
偶 然 見 つ け て、引 き 寄
で説明会のポスターを
リーマンをしていた頃、電 車の中 吊 り
理数科教師として活動していた。
﹁サラ
〝世界〟に触れてほしい。それが先生た
な いこと ばかり。さ まざま な方 向か ら
で こぼこ の道路など、日本 では 経験 の
慣 れない 気候や食べ 物、ひた す ら続く
き た い﹂と 高 校 1 年 の 望 月 海 帆 さ ん。
た。私 に もで きる国際協 力を 探し てい
ーシアに行って一気に身近になりまし
で見て いた 貧困 や環境の問 題 が、マ レ
ーに参加するチャンスもある。
﹁テレビ
などの活動を視察するスタディーツア
ン カ でJICAボ ラ ン テ ィ ア や N G O
語学研修 に加え、マレーシ ア やスリ ラ
和では、カナダ やオースト ラ リアで の
協力を学ぶという新し
を 組 み 合 わ せ て、国 際
ようになりたい﹂
。そう目を輝かせなが
勉 強して、もっと世 界の こと を 学べる
ちは確実に変わり始めている。
﹁英語を
山 梨 英 和 で の 学 び を 通 じ て、生 徒 た
い ス タ イ ル。現 場 で 活
女性 たち が山梨英和 で育ち、社会 に羽
ら 話 し てくれ た。未来 を担う 頼も しい
ばたいていく。
躍 す る 人 を 招 き、講 演
る。
を し て も ら う こともあ
ほしい﹂
。英語とICT
ちの願いだ。
教 室 で の 学 び だ け で は な い。山 梨 英
ら 年以上も前、ケニアの奥地の村で、
務めていた中安隆信先生。実は 中 安先
〟を目指すものです﹂
。M
development
DGs の8つの目標について、糟谷先生
と カ ナ ダ 出 身 のク レ イ グ・ミ ュ レ ル 先
生 が 英 語 で 説 明 し、生 徒 た ち が 復 唱 す
MDGs の達成状況を調べるために、
総合的に
グローバル人材を育てる
や 日 本 の 国 際 協 力 に つ い て 伝 え る ︱。
あっという間に、こ の 日 の 授 業 も 終
今 年 度 か ら 始 ま っ た、開 発 途 上 国 の 課
大きなスクリーンに映し
出されるアフリカの地
図。視聴覚教材を多用
することによって、生徒
たちも理解しやすくなる
2時間目は﹁グローバルスタディーズ﹂
。
グローバルスタディーズの
英語を担当する糟谷先生
とミュレル先生。
「 生徒た
ちには国境にとらわれずに
世界に羽ばたいてほしい」
が効率よくできる。
生徒たちが〝世界とつながる〟ための工夫が散りばめられている。
今年度新設された﹁グローバルスタディーズ﹂の授業には、
古くから英語教育に力を入れてきた山梨英和中学校・高等学校。
グローバルな視点で羽ばたく
イムが鳴るのを待ってい た。少 人数教
20
捨選択しながら知識を
30
深 め て、視 野 を 広 げ て
マレーシアのスタディーツアーでは、
コタキナバルで環境保護の取り組みなども視
察。
「おなかを壊したりもしたけど、
それも含めていい思い出です」
と生徒たち
る。
続 い て 教 壇 に 立 っ た の は、社 会 科 の
スリランカでは、現地の子どもたちと折り紙や歌などで交流。中学3年の橋本彩良
さんは「国際協力にずっと興味があったので貴重な経験でした」
22
September 2014
September 2014
23 世界 と つながる
教室
From Headquarters
本島にある学校や病院、市場などへと通じ
る唯一の橋だけに、早急に対応が必要だと
思いました。
事に憧れるようになりました。大学では土
た。道路脇には銃を持った兵士が並び、上
しかし前回とは街の空気が一変していまし
ン ト と 共 に あ ら た め て 現 地 入 り し ま し た。
向けた本格調査を進めるため、コンサルタ
木工学を専攻し、また、バックパッカーと
空には戦闘機が飛んでいました。内戦が激
視察の5カ月後には、新たな橋の建設に
して海外を旅していました。訪問国の一つ
いう巨大インフラが完成し、地図に残る仕
のエジプトでは、日本企業が改修したスエ
化していたのです。
高校生の時、瀬戸大橋と青函トンネルと
世界に誇る
日本のインフラ整備の技術
ヒ ト と モ ノの 移 動 を 活 性 化 す る
イ ン フラ を 整 備 し たい
港 や 道 路 、鉄 道 な ど のイ ンフラ 整
備に取り組 むJICA社 会 基 盤・平
和 構 築 部 。小 柳 桂 泉 さ んは 、民 間
企 業 で 長 年 インフラ 整 備 を 手 掛 け
ズ運河を見学。日本が世界に誇る工事を目
ましたが、それでも何とか事業を始められ
ひとまず、調査団を引き上げることにし
の需要増に対応していくのか。ケニア政府
込みです。どうターミナルを拡張し、将来
ん でいますが、今後も需要は増え続ける見
の当たりにして、海外のインフラ整備に興
ないか模索しました。現地のJICA職員
度が不十分だったため﹁新しい開発計画を
は
卒業後はゼネコンに就職し、日本国内の
味を持ちました。
と 密 に 連 絡 を 取 り な が ら 治 安 状 況 を 確 認。
は 必 ず 必 要 な も の だ と 確 信 し て い た の で、
バサ港が今後きちんと機能していくために
決裂。一時はあきらめかけましたが、モン
しかし、ケニア側は﹁必要ない﹂と協議は
に内戦が終結したため、橋は平和の象徴と
0 年についに橋が完成しました。その前年
開発を進めた方が効果的﹂と粘り強く交渉。
﹁将来の需要予測を精緻に行い、それを基に
今、新たな開発計画作りが始まったところ
半年後、ようやくケニア側が納得してくれ、
され、国を支えるインフラ整備に協力でき
パキスタンでは道路舗装技術の研究
施設の建設予定地を視察した
たことにやりがいを感じました。
半年の調査を経て建設が始まり、201
年に開発計画を作成していますが、精
港湾工事の現場管理や設計などの業務に
立てましょう﹂と打診しました。
いという気持ちが強くなり、5年目にJI
CAに転職しました。
平和を呼び込む
橋を建設
JICAに入って3年目には、念願の海
外のインフラ整備を手掛けることに。内戦
が続くスリランカへ出張しました。北西部
仮 設 の 橋 が か ろ う じ て 架 か っ て い る 状 態。
衝撃的な光景でした。橋は内戦で爆破され、
向かったのですが、そこで待っていたのは
協力で新コンテナターミナルの建設が進
港。近年、貨物の取扱量が急増し、日本の
の国際貿易港であるケニア東部のモンバサ
しています。その一つが、東アフリカ最大
現在は、主にアフリカの港湾整備を担当
いと思います。
るようなインフラ整備に取り組んでいきた
国の人々の生活を改善し、経済が活性化す
やモノの移動が活発になります。開発途上
港や道路、橋などが整備されれば、ヒト
です。
バスが通ればぐらつき、いつ崩落してもお
将来を見据えた
開発計画
か し く な い。マ ナ ー 島 の 住 民 に と っ て は、
に浮かぶマナー島と本島を結ぶ橋の視察に
遣しました。
見計らい、警備を強化して再度調査団を派
大学卒業後、
ゼネコンに就
職。退職後、2001年にJIC
Aに就職。JICA沖縄、無償
資金協力部(当時)、パキス
タン事務所、JICA東京を経
て、
2013年4月から現職。
1 カ月後、情勢が落ち着いたタイミングを
小柳 桂泉
携 わりました。残念ながら海外での仕事を
KOYANAGI Yoshimoto
担当する機会はなく、やはり挑戦してみた
JICA社会基盤・平和構築部
運輸交通・情報通信グループ
兼 計画・調整課
09
てきた 経 験 を 生かし 、アフリカの港
の整 備に奔 走している。
ケニアのモンバサ港で進む新ターミナルの建設現場を視察する小柳さん(左から2人目)
24
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SEPTEMBER 2014
ーとして認知されている日本で発表
安 全 保 障 に 関 し て、世 界 的 な リ ー ダ
を最大限活用して貢献していくこと
国連開発計画︵UNDP︶が1990
会を開催できることをうれしく思う﹂
開発協力に関心がある人にはおな
年以降、毎年発行しているものです。
を表明しました。続いてヘレン・クラ
先進国を含む各国の開発の度合いを
と 述 べ、来 年 3 月 に 宮 城 県 仙 台 市 で
ー クUNDP総 裁 は、
﹁防 災 と 人 間 の
測 定 す る﹁人 間 開 発 指 数﹂を 発 表 し、
開 催 さ れ る 第3 回 国 連 防 災 世 界 会 議
じ み の﹃人 間 開 発 報 告 書﹄
。世 界 で 人
その時々の国際潮流に沿ったテーマ
についても言及しました。
靭な社会をつくる﹂
。日本は度重なる
発展のために脆弱性や強靭性と向き
国 の 現 場 に 身 を 置 く 中 で、持 続 的 な
中 明 彦JICA理 事 長 は、
﹁開 発 途 上
イラク、パレスチナ自治区、シリ
ア、南スーダンなどでは、近年、長
期 化 す る 内 戦 や 紛 争、頻 発 す る 大
規 模 自 然 災 害 に よ り、人 道 支 援 の
日、
JICAと 国 連 人 道 問 題
必 要 性 が 強 ま っ て い ま す。そ こ で
7月
調 整 事 務 所︵OCHA︶は、新 た な
パートナーシップに向けて業務協
力 協 定 を 締 結。田 中 明 彦JICA
理事長と、訪日中のヴァレリー・エ
イモス人道問題担当国連事務次長
兼緊急援助調整官が署名を行いま
した。
害 対 応 能 力 の 向 上 に 向 け、災 害 対
両 機 関 は、特 に 開 発 途 上 国 の 災
応 を 担 う 政 府 機 関 へ の 支 援、緊 急
援 助 へ の 貢 献、援 助 調 整 へ の 積 極
もう使わなくなってしまったけれ
ど、ま だ 使 え そ う な 物 が 家 に 残 っ
ている方はいませんか。
の 分 野 で、開 発 途 上 国 で 必 要 と さ
教 育、福 祉、ス ポ ー ツ、文 化 な ど
れている物品を日本で募集し、
JI
届 け る﹁世 界 の 笑 顔 の た め に﹂プ
CAボ ラ ン テ ィ ア を 通 じ て 各 国 に
ログラム。個人ではもちろん、
学校、
企 業、地 域 な ど、さ ま ざ ま な 形 で
参加できます。
∼ 月 日︵金︶
︻参加申込書受付期間︼ 月1日
︵水︶
をお待ちしています。
歩 に な り ま す。た く さ ん の ご 応 募
たの身近にある物が国際協力の一
な わ と び や 書 道 用 具 な ど、あ な
「世界の笑顔のために」プログラム物品募集中
間中心の開発を普及・推進するため、
を分析しています。
イ ザ リ ー・パ ネ ル に 参 加 し て い る 田
同報告書作成に助言を行うアドバ
自 然 災 害 を 乗 り 越 え、国 際 社 会 で 防
合 う こ と は 不 可 欠 と 感 じ て い る﹂と
ぜい
20 1 4 年 版 の テ ー マ は、
﹁人 々 が
災分野の協力をけん引していることか
述べました。その上で、ミレニアム開
じん
ら、こ の 国 際 公 式 発 表 会 の ホ ス ト 国
発目標︵MDGs︶が終了する201
03 ︻TEL︼03 5
- 226 9
- 196
︻URL︼ www.jica.go.jp/partner/
ラム係
局﹁世 界 の 笑 顔 の た め に﹂プ ロ グ
︻問い合わせ︼青年海外協力隊事務
10
進歩し続けるために 脆弱を脱し強
日、会 場 と な っ た 国 連 大
年ぶりに務めることになりまし
的な参加などを共に支援していき
ま す。田 中JICA理 事 長 は、
﹁こ
の 連 携 に よ り、人 道 支 援 と 開 発 援
助 の つ な が り が 強 化 さ れ、切 れ 目
のないより効果的な支援が実現で
14
を
5 年 以 降 の 開 発 目 標 で は、社 会 的 に
た。7 月
学本部ビル︵東京・渋谷︶には350
や、紛 争 や 自 然 災 害 な ど の リ ス ク に
脆弱な状況にある人々に対する配慮
備える視点が必要と指摘しました。
J
人以上の参加者が集まりました。
大 臣 は、社 会 の 強 靭 性 の 柱 と な る 防
最初に登壇した安倍晋三内閣総理
ICAは こ れ か ら も 途 上 国 の 強 靭 な
11
smile/
September 2014
25 災 分 野 に つ い て、国 際 社 会 やUND
日本が防災分野で支援しているペルーの国家緊急オペレーショ
ンセンター
23
きると信じています﹂と述べました。
ガーナの子どもたちに届けられた鍵盤ハーモニカ
社会づくりに貢献していきます。
安倍総理に
『人間開発報告書2014』
を手渡すクラークUNDP
総裁(右から2人目)。マリクUNDP人間開発報告書室長(右
端)
、田中JICA理事長
(左端)
Pと 連 携 し な が ら 日 本 の 知 見 や 技 術
署名を終えて握手を交わすエイモス人道問題担当国連事務
次長
(左)
と田中JICA理事長
24
18
02
国連人道問題調整事務所と連携強化
01
『人間開発報告書』2014年版の発表会を日本で開催
棄物処理、水産などの分野で協力し
ていくと表明しました。また、国連
億 26
開発計画︵UNDP︶との連携の下、
カ リ ブ8 カ 国 を 対 象 と し た
00万円の環境・気候変動対策無償
くの日系人が暮らす中南米地
その他にも、メキシコ、コロンビ
した。
資金協力を実施することで合意しま
域は、日系企業の主要な進出
ジルを訪問。ルセーフ大統領との会
ア、チリに加えて、2014FIF
談では、造船、インフラ整備、石油・
先の一つ。安倍晋三内閣総理大臣は
ガス開発、医療などの分野における
Aワールドカップが開催されたブラ
両国の経済関係の強化について意見
今回の歴訪を通じて、各国との関係
ト リ ニ ダ ー ド・ト バ ゴ の 訪 問 は、
強化を図りました。
カ国の首脳
日本の総理大臣として初めて。カリ
さらに今回の訪問には、日本の経
交換しました。
ブ共同体︵カリコム︶
などと﹁日・カリコム首脳会合﹂を
ぜい
行い、小島しょ国特有の脆弱性を克
済界や政府機関、学術関係機関のト
興国ブラジルへの事業展開に高い関
心が示され、日本からの投資の増加
にルセーフ大統領からも期待が述べ
られました。両国のビジネス関係者
が集まったセミナーでは、安倍総理
がかつて〝不毛の大地〟と呼ばれた
セラードが、日本の協力により一大
穀倉地帯に変ぼうを遂げた例に触れ
るとともに、今後は人的交流をさら
に拡大していきたいと述べました。
また、夏季オリンピックが201
6 年にブラジルのリオデジャネイロ
で、その4年後の2020年に東京
で開催されることに触れ、日本政府
のスポーツを通じた国際貢献策﹁ S﹂プログラムを
port for Tomorrow
中南米で展開していくことを表明
しました。
向け、
今回書簡の交換が行われた﹁経
は、ウクライナの経済状況の改善に
また、クリムキン外相との会談で
力の引き渡し式にも出席しました。
避難民などに対する緊急無償資金協
示しました。また、ウクライナの国内
大統領も日本との関係強化に期待を
に支援したいと述べ、ポロシェンコ
推進するための取り組みを積極的
安定を確保し、民主化・経済改革を
ロシェンコ大統領の表敬では、国の
高まっているウクライナを訪問。ポ
続いて、緊迫した情勢への懸念が
人が同行。成長著しい新
ップら約
日、岸田文雄外務大
中南米との絆を
深める
済改革開発政策借款﹂も含めて、最
首都:メキシコ・シティ
首都:ポート・オブ・スペイン
首都:ボゴタ
面積:196万㎢(日本の約5倍)
面積:5,128km²(千葉県よりやや大きい)
面積:113.9万㎢(日本の約3倍)
人口:1億2,230万人(2013年)
人口:134.1万人(2013年)
人口:4,832万人(2013年)
言語:スペイン語
言語:英語、ヒンディー語、フランス語、スペイン語
言語:スペイン語
主要産業:製造業、鉱業、運輸・通信業
主要産業:エネルギー、鉄鋼製品、食料品、セメント
主要産業:農業、鉱業
1人当たり国民総所得(GNI)
:9,940ドル(2013年)
1人当たり国民総所得(GNI)
:1万5,760ドル(2013年)
1人当たり国民総所得(GNI)
:7,560ドル(2013年)
フィジー日本国大使館は大洋
在 フィジー日 本 国 大 使 館 コロンビア
州の複数の国を管轄していま
すが、その1つであるキリバスは太
平洋のど真ん中に位置し、赤道をま
た ぐ よ う に 東 西 南 北に 点 在 す る の
万 人。か つ て 輸 出 し て
環礁からなる国です。
としての経験を生かした支援を行
の港。
これに対して日本は、海洋国家
り生活に必要な物資を調達するため
不可欠なのが、人の往来の玄関であ
キリバスのような島しょ国で必要
ます。
場には、日本の漁船も多数訪れてい
料 が 大 半 を 占 め て い ま す。豊 か な 漁
収入源は日本などからの漁業権益
いたリン鉱石は枯渇し、現在、政府の
人 口 は 約
33
「安倍総理、中南米歴訪」
大約1500億円の支援を着実に実
トリニダード・トバゴ
10
服するため、日本の技術や知見を生
∼
ODA政策
施していくとしました。
安倍総理の訪問国
在
日・カリコム首脳会合で一堂に会した各国の首脳たち
(写真提供:内閣広報室)
15
かし、防災、環境、エネルギー、廃
月
臣はキルギスとウクライナを
訪問しました。今年は、中央アジア
諸国と日本が共に地域の安定と発展
周年の
を図ることを目的とした﹁中央アジ
ア+日本﹂対話を開始して
記念の年。キルギスで開かれたこの
対話枠組みでの外相会合では、この
年を総括するとともに、次の 年
の 展 望 に つ い て 意 見 交 換 し ま し た。
岸田外務大臣は、農業、防災、麻薬
対策、国境管理などの分野において
協力を強化していく旨を表明し、ま
た、キルギスとの間で、新たに道路
70
さらなる協力強化を目指す
人口:2億40万人(2013年)
言語:スペイン語
言語:ポルトガル語
主要産業:鉱業、農林水産業、製造業
主要産業:製造業、鉱業、農牧業
1人当たり国民総所得(GNI)
:1万5,230ドル(2013年)
1人当たり国民総所得(GNI)
:1万1,690ドル(2013年)
っています。
っています。
なり、物流コストの削減にもつなが
に3、4日要していたのが1、2日に
図りました。
結果、コンテナの陸揚げ
業の効率化と輸送コストの低減を
連絡橋および係留桟橋を増設し、作
船でも直接着岸できるよう、沖側へ
そのため、日本の協力により大型
全面でも問題となっていました。
り作業効率が落ちるだけでなく、安
替 え 作 業 を 行 っ て い ま す。こ れ に よ
船させ、海上で作業用の船への積み
かったため、コンテナ船を沖合に停
した船舶の大型化に対応していな
は、近年の輸送コスト削減を目的と
国内唯一の国際港であるべシオ港
二等書記官
人口:1,762万人(2013年)
國場 幸恒
面積:851.2万km²(日本の約22.5倍)
チリ
首都:ブラジリア
面積:75万6,000㎢(日本の約2倍)
ブラジル
首都:サンティアゴ
コロンビア
ブラジル
トリニダード・トバゴ
メキシコ
26
September 2014
September 2014
27 維持管理のための機材整備と人材育
成の2件の協力に合意しました。
生まれ変わった海の生命線の港
いろんなトピックを分 かりやすく解 説します!
14
7月25日∼8月4日、安倍晋三内閣総理大臣は
中南米 地 域を歴 訪し 、各 国首脳と会 談しま
した。
Message from Kiribati
「ここが 知りたい 」。国 際 協 力 に 関 係 する
18
メキシコ
ベシオ島とバイリキ島を結ぶ道「ニッポンコーズウェイ」
は日本の
協力の象徴
15
チリ
拡張前後の
ベシオ港
10
キルギスのオリガ・ラヴロヴァ財務大臣と無償資金協力の交換公文に署名
「岸田外務大臣、キルギスとウクライナを訪問」
ODA政策
10
ウクライナの国内避難民支援のための緊急無償資金協力にかかる引き渡し式
多
7
10
現地からのメッセージは、ODAメールマガジン
(www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/mail/)
でご覧いただけます。
12
人情のブラジル
フォトジャーナリスト
渋谷 敦志
ロにある法律事務所で研修を受けたことがあ
モフラージュできなくなってきているのは間
耳目を集めるようになり、社会的な矛盾をカ
ネイロでの夏季オリンピックを控えて世界の
ワールドカップ、そして2年後のリオデジャ
る。そ れ 以 来、
〝ブ ラ キ チ︵ブ ラ ジ ル 大 好 き
違いない。
年前、大学を休学して1年間、サンパウ
人間︶
〟を自認して、写真を撮りながらブラ
問した際、現地はさぞ高揚しているのかと思
しかし、今年2月にリオデジャネイロを訪
話題にもしたくないような悪夢なのだろう。
ショックを受けたのだから、ブラジル人には
い、しばらく放心状態だった。僕でさえ相当
ドイツ戦で史上最悪のスコアで大敗してしま
ていたら、サッカー王国ブラジルは準決勝の
ブラジルの決勝戦を見てから書こうと油断し
0 14FIFAワールドカップが始まる前。
所のような活動から始まり、今では全国 カ
NGOだ。貧しい家庭の子どもを預かる託児
地区の子どもたちを救済しようと設立された
アスにある Lar Fabiano de Cristo
︵LFC︶は
1958年、社会から見捨てられていた貧困
リ オ デ ジ ャ ネ イ ロ 北 部、ドゥケ・デ・カシ
いと思う。
満や抗議の声の向こうにある現実を垣間見た
今年訪問した2つのNGOの活動から、不
その僕にこの原稿の依頼があったのは、2
ジルを旅している。
18
ンパーティー〟を家で開き、食べ物を持ちよ
は娯楽が少ない。若者らは週末に〝アメリカ
社会に深刻な影を落としている。貧困地域に
大麻やコカインなどドラッグのまん延も、
と、
LFCのマガリャンス校長は指摘する。
なかなか難しく、ずっとボウサの中にいる﹂
︵GDP︶で世界第7位まで経済が発展した。
らあった。しかしブラジルは今、国内総生産
同じような問題は、僕が住んでいたころか
なっている。
福祉のサービス 。
…街中で聞いたこれらの声
は、後に各地で頻発した抗議デモの主張と重
拡大する格差社会への不満、不十分な医療や
金の浪費、サッカー界の行き過ぎた商業化、
だった。今回のワールドカップへの巨額な税
いきや、しらけている人が多かったのが意外
た時、体の大きい2人の息子を起こすことだ
﹁私がプレッシャーを感じるのは、朝起き
く、柵である社会を変えることなのだという。
のチャレンジは障害者を育てることではな
れ る。
ヴィヴィ ア ー ニ さ ん は、社 会 で の 本 当
入れ、子どもの好奇心を育む教育を与えてく
し か しCRIARTは ど ん な 障 害 者 も 受 け
て社会的に自立することだが、学歴なしでは
の入り口になっている。出口は仕事を見付け
ているが、
﹁効果は一時的で、逆に援助依存
の公的給付金﹁ボウサ・ファミリア﹂を受け
る環境を失っている。ほとんどが貧困層向け
マザーだ。性的な暴力を受けたり、夫が犯罪
LFCに来る子どもの親の多くがシングル
ズが増えているということだろう。
所の施設を持つほどになった。それだけニー
子どもは刑務所に送られないからだ。ブラジ
年を麻薬を売買する組織は取り込んでいく。
進 む こ と が で き る の﹂。ヴィヴィ ア ー ニ さ ん
け。
CRIARTは 毎 日 発 見 が あ る か ら 前 に
けられている。
女性のようにセックスの話をしている。子ど
っただけだ﹂
。彼のブラジル社会への見方は
だよ、今のブラジルは。金で装飾が立派にな
ブ ラ ジ ル 人 の 親 友 と 再 会 し た。
﹁金、金、金
滞在の終わりに、リオデジャネイロに住む
もの世界にセックスとドラッグが入り込んで
もう一つは、リオデジャネイロ市内にある
は、まさに装飾で彩られたイメージだ。それ
ワ ー ル ド カ ッ プ を 通 じ て 見 え る ブ ラ ジ ル
なった理由はそこじゃない。ブラジルの魅力
を否定するわけではないが、僕がブラキチに
NGOだ。行政の財政支援はずっと滞ってい
は何といっても人だ。友人や家族を何よりも
を持つ人たちとその家族をサポートしている
て運営は容易でないようだが、この地域では
大事にする人情や、どんな人種も差別なく受
け入れる寛容さなど、日本社会に足りないも
したまま装飾を重ねてほしくはない。ブラジ
不可欠な存在となっている。
族だという。
ルに は 人 に 優 し い 社 会 づ く り を 追 及 し て ほ
のがブラジルにあった。
﹁木の柵で囲まれた道を牛が歩く。その道
しいと思うのは、ブラキチの独り善がりだろ
自閉症の息子2人を育ててきたヴィヴィア
は牛しか通れない。この社会は柵なのよ。そ
うか。
その 魅 力 を か す ま せ る よ う な 問 題 を 放 置
こ を 通 る 以 外 の 選 択 肢 を 与 え て く れ な い﹂
。
ーニさんにとって、CRIARTは第2の家
障害者支援の活動をする団体が少ないため、
CRIARTという、主に自閉症や発達障害
前よりも手厳しかった。
いる﹂とマガリャンス校長は視線を落とした。
遊んでいた 歳の少女が、翌日まるで大人の
少年だけではない。
﹁かわいらしい人形で
いるわけではないのだ。
の持ち前の明るさに、他の母親たちは勇気付
に手を染めたりして、子どもを安心して育て
り〝ドラッグ〟をする。そんな 歳以下の少
65
ルだからといって、みんながサッカーをして
18
28
September 2014
September 2014
29 11
空から一望したリオデジャネイロの街並み
LFCで教育を受ける子どもたち
CRIARTに通うヴィヴィアーニさんと2人の息子
<Profile>
しぶや・あつし
1975年大阪府出身。高校生の時にベトナム戦争の写真を見てフォトジャーナリストを志す。大学在学中にブラジル・サンパウロの法律事務所で研修しながら本
格的に写真を撮り始める。2002年London College of Printing
(現ロンドン芸術大学)
卒業。現在は東京を拠点に、紛争や貧困の地で生きる人々の姿を写
真と言葉で伝えている。MSF
(国境なき医師団)
フォトジャーナリスト賞、
日本写真家協会展金賞などを受賞。共著に
『ファインダー越しの3.11』
(原書房)
。
ペ ルシャの 誇 り
第2の都市マシュハドで、歩きながら新聞を食い
入るように読む女性。イスラムの国だが、女性の
社会進出は著しい。ホテルやオフィスでてきぱき
働く女性たちに“閉ざされた”
イメージはない
地球ギャラリー
vol.72
Iran
[イラン]
写真・文=鈴木革(写真家)
古都シラーズの靴屋の店先。日本の空間を生かした商品陳列とは正反対で、店内をびっしりと埋め尽くすのが流儀なのだろうか
vol.72
地球ギャラリー
めてまれで、やっとのことで入手し
当時は日本からの個人旅行など極
96年だった。
初めてイランを訪れたのは、19
人々が、イランでは〝日本のプラス・
ンのマイナス・イメージ〟を残した
えてくれていたのだ。日本に〝イラ
日本の美しさや日本人の親切さを伝
か つ て 日 本 に 渡 っ た 労 働 者 た ち が、
年から8年にわたって続いたイ
け ら れ た。彼 ら は 大 変 な 親 日 家 だ。
うちで夕食を食べないか﹂と声を掛
ま た 幾 度 と な く﹁日 本 人 な の か。
上品さがあるように感じた。
中でも紳士的で、物腰が柔らかくて
国人に親切だと思うが、イラン人は
れたからだ。総じて中東の人々は外
た、イラン人の明るさ、親切さに触
なく消え去った。全く想像しなかっ
しすぐに、準備した警戒心はあっけ
そんな不安から始まった旅。しか
本人の頭に焼き付いた。
のないマイナス・イメージとして日
集の姿は連日メディアに流れ、実体
公園はイラン人であふれた。その群
日本に出稼ぎにやって来て、都内の
したかと思いきや、大量の労働者が
に深く染み付いている。やっと終結
ラクとの戦争は、今でも世界の記憶
覚えている。
不安な思いでいっぱいになった のを
審 査 に 並 ぶ 見 慣 れ ぬ 人 々 の 行 列 に、
たビザを頼りに空路で首都テヘラン
滝つぼの即席テラスでピクニック。
テヘランの北に連なるエルブルズ山
脈は、重要な水源であり、市民の憩
いの場としても人気だ
[ 右 ]バザールは女性たちの
パラダイス。衣料・装飾品や
日用品など、何でもそろう。品
物選びの真剣なまなざしに洋
の東西はない
[左]古い町では伝統工芸が
盛ん。イスファハンの職人街
の彫金師は撮影の依頼に少
しこちらを見て黙々と作業を
続けた
イメージ〟の発信源だったのである。
ザグロス山脈でハイキングをする男
性たち。食事マナーも客人優先。
車座ながら、
みんな礼儀正しい
へ向かった。現地の空港では、入国
シーア派の聖地マシュハドでは、黒いチャドル姿の女性が圧倒的な存在感を放つ。それに反して子どもたちの派手さが楽しいコントラストを見せる
80
確かにペルシャ語は﹁インド・ ヨー
違う﹂といったことをよく口にする。
イ ラ ン 人 は﹁ペ ル シャ は ア ラ ブ と
こ の
だに過ぎない。
アレクサンドロスが領土を引き継い
の〝自慢〟になっているが、実際は、
年、訪 れ る た び に イ ラ ン は
ロ ッ パ 語 族﹂で、﹁セ ム 語 族﹂に 属
カスピ海沿岸の町に広がる広大な麦畑。日焼けした農民たちは、控
えめで紳士的な笑顔を見せてくれた
変 化 し た。こ の 国 は さ ま ざ ま な 困 難
の 来 訪 者 も 増 え、西 側 の 風 が 吹 き 込
す る ア ラ ビ ア 語 と は 異 な る。だ が、
史的な誇りだ。
み始めた。
に 直 面 し、今 は グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ
彼 ら の 祖 先 が 築 い た ア ケ メ ネ ス 朝
し か し ど ん な 変 化 が 起 き よ う と
彼らが伝 えたいのは そういうことで
は、ロ ー マ が ま だ 片 田 舎 に 過 ぎ な か
も、ペルシャの地に根差した誇りは
ンの波が絶え間なく押し寄せてい
った紀元前5世紀、東は中央アジア
消えることがない。そして日本人と
は な い。同 じ イ ス ラ ム の 国 で あ り な
やインド、西はギリシャを脅かすほ
し て は、同 様 に 親 日 家 と し て の 一 面
る。豊富な観光資源を求めて外から
ど の 帝 国 で あ っ た。年 表 上 は、紀 元
も持ち続けてほしいと願うばかりで
が ら も、ペ ル シャ だ け が 持 ち 得 る 歴
前4世紀にアレクサンドロス大王が
ある。
vol.72
地球ギャラリー
15
アケメネス 朝を倒したこ とが西洋史
南西部カーゼルーン近郊を走る道路。大渋滞の犯人である牧童は至って涼しい顔だった
イラン人は大のコメ好きで、各地に水田が点在する。カスピ海南岸
のサリの水田風景はまるで日本だ
世界遺産にも登録されているイスファハンのイマーム広場。17世紀の街並みに馬車が似合う
シラーズ近 郊にあるアケメネス
朝の象徴ともいえる王都ペルセ
ポリス。床は切 石が 高さ1 2 ∼
14メートルに積み上げられ、広
さは300×400メートルもある
e
c
a
l
P
人々が集まる憩いの場といえば
トチャール山
休日は自然の中でケバブをほおばる。
ラフな格好でのんびり過ごす穏やかな時間
「Berim‘Baam’
e Tehran !(テヘ
たテヘランだが、トチャール山ならき
ランの屋根に行こう!)」。そう誘わ
れいな空気を楽しめる。夜にはテヘ
れたら、あなたも立派な地元っ子。
ランの夜景を一望できるのも人気
イランの首都テヘランでは、車にチ
の理由だ。
ャイやケバブを積んで、家族や友人
山頂のスキー場へは、世界一標
とピクニックやハイキングに出かけ
高が高く、世界一長いといわれる全
るのが人気の休日の過ごし方だ。
長7,500メートルのゴンドラが運ん
特におすすめのスポットが、
“テヘ
でくれる。冬には若者たちで大にぎ
ランの屋根”と呼ばれるトチャール
わいだ。砂漠の国のイメージが強い
山。市街地から麓までは車で30分
イランだが、実は雪質の良さは折り
ほどで行ける。盆地のため風があま
紙付き。ヨーロッパの一流スキー選
り吹き抜けず、車の排気ガスなどに
手が、お忍びで練習に来ることもあ
よる大気汚染が深刻になってしまっ
るとか。
イランのイメージを覆す白銀の世界。スキーはまだまだお金
持ちのスポーツだ
サフランで色付けした氷砂糖などと一緒に、
いつでもどこ
でも熱い紅茶を飲むのがイラン流
取材協力:筒井清香(元JICAイラン事務所 企画調査員)
地球ギャラリー
イランの文化を
知ろう!
イラン料理の味の決め手はハーブ
とスパイス。肉の串焼きやシチュー、
コロッケなどに、ミントやバジル、ク
ミン、コリアンダーなどを加えること
し寿司のように、盛り付けにこだわ
で、独特の香りや酸味が出る。
るのがポイント。ペルシャじゅうたん
そんな香辛料の中で、少し高価だ
のような幾何学模様に具を並べてい
けれど人気があるのがサフラン。イラ
くのが一般的で、お祝い時の食事の
ンでは3,000年以上も前から栽培さ
定番になっている。味付けは薄めで、
れてきたといわれ、今もなお、世界の
サフランの香りや果実の酸味がより
生産量の9割を占める。さわやかな
楽しめる。
香りと鮮やかな黄色が、今も昔も好
そんなイラン料理を豊富に取りそ
まれている。
ろえるのが東京・阿佐ヶ谷のレストラ
イランの代表的な料理の一つ、
「モ
ン「ジャーメ・ジャム」。
「食を通して
ラッサ・ポロ(シーリン・ポロ)」はサ
イラン文化を紹介したい」と、店主の
フランを使った炊き込みご飯。
“飾ら
モーセン・キャラバンディさんが腕を
れたご飯”という意味で、日本の散ら
振るう。
イラン料理といえば
さわやかな香りの
炊き込みご飯
モラッサ・ポロ
【RECIPE】
●材料(4人前)
鶏 肉 8 0 0 g /コメ5 0 0 g /
アーモンド50g/オレンジ
の皮100g/レーズン50g/
ピスタチオ50g/サフラン
小さじ2分の1/塩コショウ
少々
❶ 鍋に分量の半分のコメとサラダ油、お湯を少量入れた
ら、ゆでておいた鶏肉を乗せ、残り半分のコメ、細かく
【SH O P I N F O R M AT I O N】
砕いたアーモンド、オレンジの皮、塩コショウを入れる。
さらにお湯に溶かしたサ
❷ ❶に鶏肉のゆで汁を少量加え、
フランを入れる。
レーズンと
❸ ❷にふたをして、弱火で約30分煮込んだら、
細かく切ったピスタチオを加えて混ぜる。
❹ ❸にバターを乗せて溶けたら出来上がり。
ジャーメ・ジャム
〒166-0004
東京都杉並区阿佐谷南2-20-7
TEL:03-3311-3223
営業時間:17∼24時、年中無休
URL:www.jamejam.jp/
September 2014
36
新 着 情 報
M
B
OVIE
『バルフィ!人生に唄えば』
生まれつき耳が聞こえず、話すこともできないインドの青年バルフィ。
身振り手振りや視線で感情をストレートに表現する彼に、2人の女性
が恋に落ちた。資産家の男性と結婚し何不自由なく暮らすシュル
ティと、バルフィの幼なじみで人とうまく付き合えず心を閉ざしていたジ
ルミル。時に言葉の壁や身分の差に苦しめられながらも、バルフィの
優しさに触れながら、彼女たちの人生が変わり始める。
OOK
『戦争の現場で考えた空爆、占領、難民
カンボジア、ベトナムからイラクまで 』
1980年からインドシナ難民の救済活動に取り組み、
その後も
アジアやアフリカの紛争地域などで人道支援や難民救済に力
を注いできた著者。ポル・ポト政
権崩壊後、NGO職員としてカン
ボジアに入国して水が行き届い
ていない地域で井戸掘りをした
り、
イラク戦争勃発直後には、紛
争の爪痕が残る過酷な環境の
中で医 療 支 援に奔 走した。本
書では、著者が30年にわたる自
身の活動を振り返り、現場で見
たもの、各地で出会った人々の
声などを届ける。
この本を
1人の方に
プレゼント
c UTV Software Communications Ltd 2012
○
2012年/インド/151分
監督:アヌラーグ・バス
出演:ランビール・カプール、
プリヤンカー・チョープラー、
イリヤーナー・デクルーズ他
公開:8月22日
(金)
よりTOHOシネマズシャンテ
(東京)他 全国順次公開
URL:barfi-movie.com/
配給:ファントム・フィルム
詳細は
38ページへ
B
熊岡路矢 著
彩流社
2,052円
(税込)
OOK
『ミャンマーのすてきな手仕事をめぐる旅』
E
VENT
『グローバルフェスタJAPAN2014』
今年で24回目を迎える国内最大級の国際協力イベント。テーマは、
「Smile Earth!地球の明日へ
“笑顔”
のタネまき!」。国際機関や政
府機関、NGO、民間企業などが集結し、
ブースの出展やワークショッ
プの開催、各国料理の提供などを通して、開発途上国の現状や国
際協力の取り組みを紹介する。メーンステージでは、今年3月にカン
ボジアを訪問したアーティストの倉木麻衣さんによるトークショーや、
ロックバンドのアンダーグラフによるスペシャルライブなどが予定され
ている。盛りだくさんの2日間、国際協力の世界をのぞいてみよう。
会期:10月4日
(土)、5日
(日)10∼17時
会場:日比谷公園(東京)
問:グローバルフェスタJAPAN 2014実行委員会事務局
TEL:03-5355-0700
URL: www.gfjapan2014.jp/
37 September 2014
135もの民族が存在するといわれる多民族国家、
ミャンマー。
異なる文化を持つ人々が暮らし、身にまとう伝統衣装もまた多
彩だ。そんなミャンマーの刺しゅうや織物に魅せられて、手芸作
家の著者が現地へ飛んだ。東
部の村で出会ったのは、
カラフ
ルな刺しゅうの帽 子や、
ビーズ
細工が施された衣装を着るアカ
族。北部では、
カチン族が伝統
のひし形の柄を布に織り込んで
いた。現地の人々の作業風景を
レポートしながら、
それぞれの布
の織り方も紹介。きめ細やかな
手仕事から、人々の温かさが伝
わってくる。
この本を
1人の方に
プレゼント
詳細は
38ページへ
春日一枝 著
グラフィック社
1,728円(税込)
国 際 協 力 を 楽しむ 秋
暑 さ の 中 に も 時 折、秋 の 気 配 が 感 じ ら れ る よ う に な り ま
し た。夏 バ テ 気 味 だ っ た 体 も 元 気 を 取 り 戻 す こ の 季 節、食
欲 の 秋、ス ポ ー ツ の 秋、芸 術 の 秋 な ど 味 わ い 方 は さ ま ざ ま
年前のこの日、
60
で す が、今 年 は〝国 際 協 力 の 秋〟を 楽 し ん で み て は い か が
月 6 日 は﹁ 国 際 協 力 の 日 ﹂で す 。 日 本 は
10
でしょうか。
ア ジ ア・太 平 洋 地 域 の 開 発 途 上 国 を 支 援 す る 国 際 機 関﹁コ
ロ ン ボ・プ ラ ン﹂へ の 参 加 を 決 め、翌 年 か ら、途 上 国 か ら
の研修員受け入れや日本人専門家の派遣などを通じた技術
協 力 を 開 始 し ま し た。例 年 こ の 前 後 に、国 際 協 力 に 関 連 し
60
たイベントが各地で開催されます。
周 年 を 迎 え る こ と も あ り、こ れ ま で 以
10
今年は国際協力
添付のアンケートはがき、Eメール、FAXから、本誌に対す
るご意 見やご感 想 、
またJ I C Aへのご質 問を、氏 名・住 所・
電話番号・職業・年齢・性別・ご希望のプレゼントを明記の
上、お送りください。ご記入いただいた個人情報は統計処
理およびプレゼント発送以外の目的で使用いたしません。
当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。
月 4、
プレゼ
ント
付き
5 日 に 東 京・日 比 谷 公 園 で 開 催 さ れ る﹁グ ロ ー バ ル フ ェ ス
回目を迎える国内最
24
上 に 多 彩 な 企 画 が 検 討 さ れ て い ま す。そ の 一 つ、
タ J A P A N 2 0 1 4﹂ は 、 今 年 で
本誌へのご意見・ご感想や
JICAへのご質問を
お寄せください。
大 級 の 国 際 協 力 の イ ベ ン ト 。 国 内 の N G Oや 各 国 大 使 館 、
日には、名古屋で﹁ワー
26
国 際 機 関、民 間 企 業 な ど が そ れ ぞ れ の 切 り 口 で 国 際 協 力 に
、
25
つ い て 紹 介 し ま す。そ の 他 に も、コ ン サ ー ト や ト ー ク イ ベ
月
10
ン ト、各 国 の 料 理 や 雑 貨 の 販 売 な ど、幅 広 い 世 代 が 楽 し め
る企画が満載です。また
カ 所 に あ る J I C Aの 事 務 所 で は 国 際 協 力 に 関 す る
ル ド・コ ラ ボ・フ ェ ス タ 2 0 1 4 ﹂が 開 か れ ま す 。そ の 他 に も 、
全国
各地のイベント情報をホームページで発信していますので、
ぜひご確認ください。
国 際 協 力 へ の 関 わ り 方 は 多 種 多 様 で す。こ う し た イ ベ ン
ト を 通 じ て、国 際 協 力 を よ り 身 近 に 感 じ て い た だ き、そ れ
ぞ れ の 興 味・関 心 に 合 っ た 国 際 協 力 の 形 を 見 つ け て い た だ
け れ ば と 思 い ま す 。 広 報 室 長
西野恭子
16
本誌をご希望の場合は
下記方法で
お申し込みください。
申込方法
本誌をご希望の方には、送料をご負担いた
だく形でご送付いたします。巻末の払込取
扱票に、氏名・住所・電話番号・ご希望の送
付期間・送付開始月を明記の上、指定の金
額を郵便局でお支払いください。入金の確認後、発送手配をいたします
(入金から
◎応募締切: 2014 年 10 月 15日
1週間程度かかることもありますのでご了承ください)。複数冊、
またはバックナンバ
ーをご希望の方は送料が異なりますので、下記までお問い合わせください。
Eメール : [email protected]
F A X : 03-3221-5584(『mundi』編集部宛)
申 込 先 (株)国際開発ジャーナル社 総務部(発送代行)
住 所 〒102-0083 東京都千代田区麹町3-2-4 麹町HFビル9F
T E L 03-3221-5583
F A X 03-3221-5584
Eメール [email protected]
① カンボジアのクロマー
② 書籍『戦争の現場で考えた空爆、
占領、難民
カンボジア、
ベトナムからイラクまで』
(p37参照)
③ 書籍『ミャンマーのすてきな手仕事をめぐる旅 』
(p37参照)
次 号 予 告(2014年10月1日発行予定)
地域発の国際協力
3
1
2
私たちの日々の生活を支えるさまざまな知恵や技術。実は、開発途上
国が直面する課題解決に貢献できるものも多い。そんな日本の地域の
強みを生かした“日本も世界も元気にする国際協力”を紹介します。
SEPTEMBER 2014 No.12
編集・発行/独立行政法人 国際協力機構 Japan International Cooperation Agency : JICA
〒102-8012 東京都千代田区二番町5-25 二番町センタービル
TEL:03-5226-9781 FAX:03-5226-6396 URL:http://www.jica.go.jp/
バックナンバーはJICAホームページ
(http://www.jica.go.jp/publication/mundi)
でご覧いただけます。 本誌掲載の記事、写真、
イラストなどの無断転載を禁じます。
September 2014
38
C
BODIA
AM
und
i
ER
EMB
SEPT NO.71
14.
O
NO
M
M
m
20
-GATARI FR O
©Yuki Asada
コットンが生み出す未来
大地に点在する高床式の住居。その
ることが難しい村の女性たちを助けた
そばの田畑で、家族のために、朝からせ
い―。松島さんは村の職業訓練校の教
っせとコメや野菜を作る女性たち。カン
員や生徒たちと協力して「Tau mock
ボジア南西部、首都プノンペンから約
tiet」を立ち上げた。クメール語で「もっ
150キロのカンポット州の村に広がる日
と前へ、もっと未来へ」の意味。綿100%
常だ。
のクロマーを織る技術を身に付け、自分
青年海外協力隊OGの松島愛さんは、
たちで生計を立てられるようになってほ
この村で2年間暮らす中で、あるアイテム
しいという願いを込めた。
タウ モック
ティエット
手 触りの良い
布は、女性たち
の丁寧な仕事
のたまものだ
が気になっていた。現地の人たちの日々
「今は、身の回りにある植物で染料を
の生活に欠かせない“クロマー”と呼ば
作って糸を染めて、織物にする技術をみ
★クロマーを2人にプレゼント!→詳細は38ページへ
れるチェック柄に織り込まれた布だ。
んなで学んでいます」と松島さん。手織
★ Tau mock tiet の商品は、ホームページ(www.tau
頭や首、腰に巻くのもあり。タオルや風
り独特のふんわりとした肌触りが特徴。
呂敷としても、使い勝手が良い形だ。使
日本でも販売を始めている。
い古したものは、足ふきマットとして大活
自然の恵みから生まれた優しい色合
躍。日本の手ぬぐいとどこか似ている。
いのクロマー。生活のあらゆるシーンで
そのクロマーを使って、外で仕事を得
お役立ちアイテムになりそうだ。
mocktiet.com/)
から購入可能。
カンボジア
カンポット州
Vol.71 カンボジア
私の
]
国際協力で世界を平和に
9
タレント
パックン
Patri ck Harl an
2014
SEPTEMBER
No.12
Vol. 47
[ムンディ] 平成26年9月1日発行(毎月1回1日発行) 編集・発行/独立行政法人 国際協力機構
〒102- 8012 東京都千代田区二番町5-25 二番町センタービル TEL 03-5226-9781 FAX 03-5226-6396 http://www.jica.go.jp/
PROFILE
1970年アメリカ・コロラド州出身。ハーバード大学比
較宗教学部卒業後に来日。福井県で英語講師として
過ごした後に上京し、役者の道へ進む。97年にお笑
いコンビ
「パックンマックン」
を結成。テレビやラジオ出
演をはじめ、執筆活動や映画の字幕監修など幅広く
活躍。2012年より東京工業大学非常勤講師。出演
番組に『未来世紀ジパング』
(テレビ東京、毎週月曜
22時∼)
など。
ISSN 2188-0670
実は20数年前に日本に来るまで、全く
教一つ取ってもそう。小さい頃から道徳
た社会はやはり変えていかなければなら
日本には興味がなかったんです。それど
は宗教とつながっているという教えを受
ない。賄賂や犯罪は、本人はもちろん、
ころか、海外ですらメキシコとの国境を
けてきましたが、日本は人がやるべきこ
家族や地域、国など、誰のためにもなり
10分くらい越えたことがあるだけ。外の
ととして考えています。銃もみんなが当た
ません。衛生環境や感染症も心配です。
世界とは無縁の生活を送っていました。
り前のように持っていたけれど、完全に
そのような課題一つ一つを、日本の経験
ところが大学卒業後、人生が大きく変
なくしてしまえば安全な社会をつくるこ
を生かして解決している国際協力の取り
わりました。中学の時からの親友が日本
とができる。それは全て、母国を離れな
組みは素晴らしいと思います。
で英語を教えることになり、一緒に行っ
ければ気付かなかったことです。
世界各地で日本人が現地の人に寄り
てみないかと誘われたのです。その時、
最近プライベートでは、アジアの国々に
添い、汗を流して活動しているのには本
彼が別の国に行くと言ったら、日本とは
よく足を運びます。とても優しくて人なつ
当に頭が下がります。そのように国際協
一生縁がなかったかもしれません。そう
こい人が多く、子どもを見る目が優しい
力を通じてさまざまな国と信頼関係を築
思うとこれは運命だと思います。
のが印象的です。そして、特に強く感じ
いていくことは、安全保障にもつながる
それまで抱いていた日本のイメージ
るのが生命力。スラムで雨にさらされて
と確信しています。僕も多くの国に足を
は、暗くてまじめ、勤勉なサラリーマン。
暮らしている人たちなど、厳しい環境の
運んで、現場で何が起こっているのかを
でも実際に来てみて、大きく変わりまし
中から生まれた力強さがあります。
もっと見て、皆さんと話をしてみたい。途
た。みんな楽しくて、優しい人ばかり。自
また西洋化しながらも、それぞれの国
上国から学びながら、成長していければ
然もきれいで食べ物もおいしく、一気に
の味や雰囲気が色濃く残っています。日
いいですね。
この国が好きになりました。最初は日本
本もアメリカも、先進国はどこか均一化
語はできなかったのですが、周りのみん
されてしまって、個性を失いつつあり、開
なが先生ですから、毎日誰かと話すこと
発途上国の伝統を守り続ける精神を見
全てが勉強でした。最初の2年半を過ご
習わなければならないと思います。
した福井は僕にとっての青春です。
でも、やはり気になるところもたくさん
日本で生活することで、生まれ育った
あります。その一つが治安です。貧しさ
アメリカについても発見がありました。宗
故に起こる問題でもありますが、腐敗し
「なんとかしなきゃ!プロジェクト」は、開発途上国の
現状について知り、一人一人ができる国際協力を
推進していく市民参加型プロジェクトです。ウェブサ
イトやFacebookの専用ページを通じて、
さまざまな
国際協力の情報を発信していきます。
なんとかしなきゃ で
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