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1.渋滞多発箇所でのマナー ①走行車線を走りましょう(キープレフト走行
ITS 時代の渋滞緩和につながる道路利用マナーを実践しませんか? ~高速道路サグ渋滞の研究成果より~ 国土技術政策総合研究所 ITS 研究室 国総研では、 『サグ部』と呼ばれる渋滞多発箇所の渋滞削減を目指して、研究を行ってき ました。その研究成果である、渋滞緩和につながる道路利用マナーをご紹介します。 一度、実践してみませんか? ITS 時代の渋滞緩和につながる道路利用マナー 1.渋滞多発箇所でのマナー ①走行車線を走りましょう(キープレフト走行) ②交通量が多い場合、頻繁な車線変更は控えましょう ③車間は詰めすぎず、空けすぎずに走りましょう 2.ACC の使い方 ①ACC を走行車線で使いましょう ②渋滞時は「車間:短め(S モード) 」設定で 速やかに追従しましょう その理由は → P2 へ → P3 へ → P4 へ その理由は → P5 へ → P6 へ <※サグ部と呼ばれる渋滞多発箇所> サグ部とは道路の線形が図 1 のような凹部の底部を指しますが、本研究では勾配が緩や かに変化する(1)~(5)の区間もサグ部としています。 サグ 出典:大口敬、高速道路サグ部における渋滞の発生と道路線形との関係、土木学会論文集 No.524/IV-29, pp.69-78, 1995.10. 図 1.サグ部のイメージ図 1 またサグ部は、勾配の変化がとても緩やかであるため、ドライバがその場所に気付きに くいという問題があります。そこで下記写真のような標識が設置されている事例がありま す。これらの標識が設置されている箇所で、道路利用マナーを実践してみてください。 出典:NEXCO 東日本、NEXCO 中日本、NEXCO 西日本のホームページより引用、本州四国連絡高速道路より提供 http://www.e-nexco.co.jp/pressroom/press_release/head_office/h18/0908/syosai01.html http://www.c-nexco.co.jp/corporate/pressroom/news_old/index.php?id=1476 http://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/shikoku/h27/1127/ 写真1.サグ部を知らせる標識の例 次に、なぜこの道路利用マナーが効果的かということを、研究成果を交えて説明します。 1-①走行車線を走りましょう(キープレフト走行) 本研究では、渋滞がどのように発生するかというメカニズムを解明することから始めま した。その結果、まず下記のことが分かりました。 ・追越車線に車が集中することから渋滞が発生し始めること。 ・追越車線に比べて、走行車線にスペースができやすくなること。 このことは次に示すデータからも読み取ることができます。 図2は高速道路に設置されている車両感知器(トラフィックカウンタ=トラカン)のデ ータを車線別に統計したものです。交通量が少ないと追越車線の利用率は低いのですが、 交通量が多いと追越車線の利用率が高くなっています。また図3のビデオ映像からも同様 のことが言え、さらに走行車線にスペースができていることが分かります。 2 交通量が少ない場合(100台/5分相当) 交通量が多い場合(450台/5分相当) 60 交通量 50 利用率 40 低い 利用率 50 増 30 20 車線利用率(%) 車線利用率(%) 60 10 高い 40 30 20 10 減 0 走行車線1 走行車線2 追越車線 0 走行車線1 走行車線2 追越車線 東名高速道路大和サグ部(下り)のトラカンデータより国総研にて作成 図 2.交通量変化に伴う車線利用率の偏り したがって、追越車線と走行車線の利用率を同 程度にする(平準化する)、つまり走行車線を走 る(キープレフト走行をする)ことで、利用率の 偏りを抑えることができ、渋滞緩和につながるの です。 追越に比べ走行に スペースがある 図 3.追越車線への偏りの様子 1-②交通量が多い場合、頻繁な車線変更は控えましょう 本研究では、シミュレーション結果等から下記のことも分かりました。 ・無理な車線変更が、渋滞発生に至ってしまうこと。 ・頻繁な車線変更を繰り返して急いでもあまり早くないこと。 図 4 は追越車線から走行車線へ無理な車線変更をしている様子です。その影響で後続車 がブレーキをかけています。さらにその後続車がブレーキをかけ、それが続いていくと最 終的には渋滞に至ることが分かりました。また車線変更を頻繁に行うドライバ(アグレッ シブドライバ)と一般的なドライバとで、東名高速道路大和サグ部を含む 3km を渋滞発 生前 1 時間の所要時間をシミュレーションしましたが、車線変更を行って急いでも所要時 間に差がないことも分かりました(表 1)。 3 表 1.ドライバ別の所要時間比較 一般的な ドライバ 114.4[秒] ≒1.90[分] 114.2[秒] ≒1.90[分] 平均車線変更回数 0.5[回] 1.6[回] 最大車線変更回数 21[回] 45[回] 最少車線変更回数 0[回] 0[回] 平均所要時間 無理な車線変更に アグレッシブ ドライバ よるブレーキ 図 4.無理な車線変更の様子 出典:牧野浩志他「車線変更行動に着目したサグ部渋滞発生 要因に関する一考察」第 50 回土木計画学研究発表会 1-③車間は詰めすぎず、空けすぎずに走りましょう 渋滞発生メカニズムには、車間のばらつき(詰めすぎ・空けすぎ)も大きく関係してい ました。それは図 5、図 6 から下記のことが分かります。 ■車間を詰めすぎていると・・・ →先行車がブレーキをかけた際に、うまく速度調整ができず、 急ブレーキをかけがちになる。 →それがその後続車にも伝わり、やがて渋滞発生へとつながる。 ■車間を空けすぎていると・・・ →この車両の後ろに車間を詰めすぎる車両が次々と連なってしまい、 やがて渋滞発生へとつながる。 車間詰めすぎに 車間空けすぎによる よるブレーキ 後続車両の連なり 次第に後続車へ 伝わっていく 図 5.車間詰めすぎの様子 図 6.車間空けすぎによる車両の連なり このように、車間に大きなばらつきがある場合も、渋滞に至ることが分かりました。し たがって、これらの道路利用マナーを守ることで渋滞緩和につなげることができます。 4 2-①ACC を走行車線で使いましょう 1項で走行車線を走る(キープレフト走行する)ことが渋滞緩和につながると述べまし たが、走行実験のドライバアンケート結果で下記のことが分かりました。 ・自由走行に比べ、キープレフト走行はストレスを感じやすいこと。 ・キープレフト走行で ACC を使用すると、ストレスは軽減され、 乗用車・大型車ドライバによらず 7 割以上が快適・やや快適な運転と 感じるようになること。 図 7、図 8 は公道を3種類の方法で走行した際のアンケート結果です。乗用車ドライバ は自由走行に比べ、キープレフト走行すると快適・やや快適が 85%から 32%へ減少、不 快・やや不快が 0%から 32%に増え、ストレスを感じる傾向があります。 そこで自動車技術の ACC を使用してキープレフト走行を実施してもらい、同様のアン ケートを実施したところ、快適・やや快適が 71%に増え、不快・やや不快が 11%に減少 し、ストレスが軽減されています。また大型車ドライバも 8 割以上が快適・やや快適と回 答しました。これは ACC を使用することで、アクセル・ブレーキ操作の支援が受けられ、 楽で快適に運転ができたためと考えられます。 約 3 割→1 割 へ減少 乗用車ドライバ 快適だった やや快適だった やや不快だった 不快だった 39% 自由走行 キープレフト走行 (ドライバ操作) 7% キープレフト走行 (ACC走行) 7 割以上 0% 46% 25% 21% どちらとも言えない 36% 20% 40% 不快だった 7% 0% キープレフト走行 (ドライバ操作) 7% 80% キープレフト走行 (ACC走行) 7% 4% 100% 8 割以上 図7.乗用車ドライバの走行快適性評価 ア ダ プ テ ィ ブ やや快適だった やや不快だった 自由走行 18% 60% 快適だった 14% 0% 32% 50% 大型車ドライバ ク ル ー ズ 71% 64% 43% 0% どちらとも言えない 20% 14% 7% 0% 29% 0% 43% 40% 60% 14% 0% 80% 100% 図8.大型車ドライバの走行快適性評価 コントロール なお ACC とは、「Adaptive Cruise Control」の略で前方車両との車間を計測し、自 動的に加減速を行い、車間時間を一定にするシステムです。ACC を使うことで無理なく快 適な走行が期待されます。 ※ACC については一般社団法人自動車連盟(JAF)の ACC サイトでも詳しく解説され ています。(URL:http://jaf-acc.jp/) 5 2-②渋滞時は「車間:短め(S モード) 」設定で 速やかに追従しましょう ACC は下記のことから、渋滞時にも効果的であると言えます。 ・渋滞時は、ACC の車間短め(S)モード設定で速やかな追従が可能。 ・渋滞時に ACC の車間長めモード(M モード、L モード)を使用すると、 車間が長くなり、効果が得られにくい。 渋滞に長時間巻き込まれると、漫然運転となり、図 9 のように前方車両への追従が遅れ がちになります。このときに ACC を使用し、車間短め(S)モードで前方車両を追従する と、ACC は図 10 のように車間時間のばらつきが少ないため、車間が長くなりすぎるのを 防止し、速やかに追従することができます。ACC には車間設定が 3 段階(長め[L]、普通 [M]、短め[S]モード)あるのが一般的ですが、渋滞時に長め(L)や普通(M)モードを 選択すると、図 10 にある渋滞後のドライバ操作による日常運転の車間とあまり変わらず、 効果を得られにくい場合が想定されます。また車間短め(S)モード設定は、ドライバ操 作による日常運転の範囲内の短め設定であるため、安全に走行可能な範囲内であると考え られます。したがって、渋滞時の追従走行には車間短め(S)モードが効果的と考えられ ます。 車間が長く、 追従が遅れがち ACC(M),(L)設定の範囲 図 9.渋滞時の車間空きがちの様子 図 10.日常運転と ACC の車間ばらつき もちろん空いている場合は、車間 M や L モードでも構いませんが、渋滞時には車間 S モードを実践してみませんか。 6 この研究は、有識者、道路管理者、自動車メーカー、国土交通省からなる 産学官一体となった共同研究組織 「高速道路サグ部等交通円滑化研究会」 (座長:東京大学生産技術研究所 大口敬 教授) の成果をもとに作成したものです。 これらの研究成果の詳細は、下記アドレスに記載しています。 国土交通省 国土技術政策総合研究所 高度道路交通システム(ITS)研究室ホームページ http://www.nilim.go.jp/lab/qcg/index.htm 「路車連携した高速道路サグ部等における交通円滑化に関する研究」の 中間とりまとめ ページ http://www.nilim.go.jp/lab/qcg/japanese/2reserch/1field/36smoothingsag/index.htm 7