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平成 年度 塚本学院教育研究補助費申請書 ①
3D プリンターで鋳込み成形の原型を作る試み 大阪美術専門学校 総合アート学科 教授 伊 藤 均 研究の背景 陶磁器制作における、PC/CAD の導入は大命題であ る。近年、 「3D CAD」・「3D CG」ソフトも安価なも のや無償のソフトが提供され、樹脂や金属を積層して 立体物を自動で作製する「3D プリンター」も出現、 制作環境の進化によって大掛かりな設備がなくても、 「PC/CAD」を用いた「モノづくり」が可能となり、 各機関で注目を集めている。長崎県窯業技術センター では、 「3D スキャナー」で取り込んだデータで形状を 出力後データを微調整し、再度原型を出力し従来の石 膏原型と同様に鋳込み型を制作している報告がある。 本研究は、「3D CAD ソフト」と「3D プリンター」 を併用し、原型制作から鋳込み型の石膏取り、鋳込み 成形、焼成までを実施する試みである。 研究計画 「3D プリンター」の出力方式は、樹脂溶融押出積 層式で造形物の内側を空洞とする。 1:「一輪生け」の原型を出力し鋳込み型の原型 磁器土の収縮率は 15%と設定し出力する。 一辺 59.5 ㍉の立方体を出力し、3 面割の鋳込み型を作り、鋳込 み成形の後、焼成する。焼成に伴う収縮、歪み、を原 型でどのように修正するかが課題である。 2:「マグカップ」の原型を出力し鋳込み型の原型 カップは焼成後の寸法を、直径6cm・高さ7cm の 筒型のマグカップ及び6面体・8面体の3種の形状を 基本とする。 3:「ハンドル」の鋳込み型の原型 「123D Design」は「3D CAD ソフト」でありなが ら、 「3D CG ソフト」の様な操作も可能で、曲線の作 図も簡単な操作で様々なフォルムをモデリングでき る。 4:原型と石膏型との離型の考察 原型は樹脂の積層で出力される為に僅かな凹凸が あり、石膏との離型が可能であるかを確認する。 ドで、最も「3D CAD」らしいコマンドで 、 〈任意の 平面を直線方向に押し出し〉、特に多面体の筒状の形 態に有効である。〈断面をある軌道に沿って動かす〉 ハンドルの曲線の形状を作図するとき、〈断面をある 軸に沿って動かし〉シンメトリーな形態を、〈複数の 断面をつなぐ〉 、などの形状を作る機能がある。 Modify を使う事で一度作成した形状を修正する事 ができる。〈押す/引く〉、〈任意の面を傾ける〉、〈面の 分割〉、 〈面取り〉 、 〈任意の半径で丸める〉 、 〈面全体を 分割〉、〈任意の一面をくりぬき箱にする〉、などの機 能 を 使 い 多 様 な 形 状 が 得 ら れ 、『 Primitives ・ Construct・Modify』のコマンドを主に使いモデリン グを実施した。 出力した原型から、鋳込み成形の型に使う石膏は、 「サンエス石膏 特急 緑」を用いた。原型から石膏型 を取り出すとき、従来の原型が粘土の場合、さして問 題は無いのだが、今回の場合、原型が樹脂であり、石 膏型から原型を取出すとき原型を変形さす事はでき ないので、従来1面型で鋳込み成形が可能な形態も2 面割にした。そして片面の石膏取りができた段階で、 一度型と原型との離型を試み、石膏面にカリ石鹸を塗 布しもう一面の型を制作した。懸案であった、樹脂と 石膏の離型に関してはさほど問題にする必要は無い ようである。積層時の段差も、ノズル孔径が 0.4mm で積層しているのでさほど問題は無かった。 鋳込み素地は、 「日本陶料 磁器土」10kg に解膠剤 は珪酸ソーダを 0.5%添加した。この素地の流動性は すこぶる良く、特にハンドルの排泥には流動性が要求 されるのだが特に問題はなかった。原型の段差は鋳込 み成形後、型から外した時はさほど気にならないのだ が、乾燥した時点では器物の表面に筋状の痕跡が発生 したが、器物の仕上げの段階で、ハケで水拭きする事 で筋状の紋様は無くなり焼成後もその痕跡が見られ なかった。 マグカップとハンドルの接着は本体とハンドルが、 完全に乾燥した時点でおこなった。接着面の整合性に 多少の時間がかかったが、焼成後変形や歪みは認めら れなかった。ハンドルの鋳込み成形は、排泥後、着肉 層が完全に硬化してから脱型した方が、乾燥時の歪み が少なかった。 研究成果 研究結果 「一輪生け・マグカップ・ハンドル」の原型の制作 は、 「123D Design」を使いモデリングを実施した。 Primitives の Box を使い一辺 59.5 ㍉の立方体のモ デルを作成し、その後、Transform の Scale で作成し たソリッドを拡大/縮小しイメージを確認した。 Primitives は立体の基本形状を作成するコマンドで、 直方体、球、円柱、円錐、ドーナツ形状、があり又平 面は、長方形、円、楕円、多角形、を作る機能があり 陶磁器のほぼ全ての形状を作成できる。 Construct は、スケッチから立体を作成するコマン 「3D プリンター」と手作業を併用する事で、デザ インした形状のイメージを短時間で確認でき、学生の 造形力や表現力の領域が大きく広がる。鋳込み成形は、 比較的新しい成形技法であり、石膏型があれば同一の 物が数多く作れる利点があり、クラフト制作などに適 した技法である。その為にも型の生命ともいえる原型 の重要性が問われる。新たに「3D プリンター」 ・パソ コン、で原型づくりを導入することでクラフトの分野 だけでなく、装飾タイルや立体造形物の分野にも創作 領域が広げられる可能性が大いにある。 - 49 -