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清風高等学校 研究報告

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清風高等学校 研究報告
清風高等学校
研究報告
<授業内容及び使用コンテンツ(一学期からの取組全て)>
学
年
1年
1年
1年
1年
1年
単
元
理科総合A
落下運動
授
業
内
単元導入
理科総合A
自由落下・鉛直投射
落下運動
の特性確認
理科総合A
水平投射の特性確
落下運動
認
理科総合A
斜方投射の特性確
落下運動
認
理科総合A
斜方投射の特性確
落下運動
認
理科総合A・仕
1年
事・力学的エネ
ルギー
使用コンテンツ
容
(URL)
デジタル実験教室「運動とエネルギー」
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0070/start.html
デジタル実験教室「運動とエネルギー」自由落下
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0070/304311102.html
デジタル実験教室「運動とエネルギー」水平投射
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0070/304331103.html
デジタル実験教室「運動とエネルギー」斜方投射
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0050/hanabi/simuframe_game.html
花火コンテンツ
ゲーム型学習支援ソフト
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0050/hanabi/simuframe_game.html
実写映像とCGを用いたコンテンツによるエネルギ
単元導入
ーの授業
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0360/start.html
99
授業案・指導案NO.1“
<実証授業指導案>
学校法人清風学園 清風高等学校:豊田將章
1.高等学校・普通科1年・理科総合A・落下運動
2.単元の目標
・自由落下・水平投射・鉛直投射・斜方投射の各運動が,何れも等加速度運動の一種であることを系
統的に理解させる。
3.「理科ねっとわーく」活用のポイント
【モデルの提示】
自由落下以外の放物運動は,定量的な分析が困難である。また,実例を示しても一瞬で
現象が終了するため,どのような規則性があるのかを把握しづらい。また,教科書に掲載
されているストロボ写真等では,現象の時系列変化をイメージしにくいという問題があっ
た。
デジタル教材を利用することによって,物体の軌跡や一定時間毎の物体の変位等を時系
列的に提示し,現象の特徴をより鮮明に印象づけるための一助としたい。
<利用コンテンツ名>
デジタル実験教室「運動とエネルギー」
落下運動 自由落下
落下運動 投げ上げ
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0070/304311102.html
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0070/304321102.html
4.指導計画(6時間扱い・本時3/6)
①単元導入
落下運動の種類と特徴の把握(1時間)
②落下運動の理論的考察
速度および変位の公式導出(2時間)
③デジタル教材を利用した自由落下・水平投射・鉛直投射・斜方投射の特性確認
(1時間・本時4/6)
④落下運動の総括
「花火コンテンツ」のゲームを利用した疑似体験型特性把握(1時間)
⑤問題演習
(1時間)
5.本時の目標
→
→
→
等加速度運動をする物体の速度の一般式 v = v 0 + a t
→
→
と,変位の一般式 OP = v 0 ⋅ t +
1 → 2
⋅ a ⋅ t をもと
2
にして,自由落下・鉛直投射・水平投射・斜方投射の各運動が,共通の原理で解釈できることを確認す
る。
原理面での確認を行った後,デジタル教材を利用して,実際の運動と理論の整合性を確認する。
100
6.本時の展開
授業の流れ
使用コンテンツ
●等加速度運動の速度と変位の一般式の確認
→
→
→
・ベクトル式 v = v 0 + a t ・・・ (a) が持つ意味の確認。
→
→
・ベクトル式 OP = v 0 ⋅ t +
・自主開発デジタル教材「ベク
トルによる
等加速度運動の解釈」
1 → 2
⋅ a ⋅ t ・・・ (b)が持つ意味の確認。
2
http://www.seifu.ac.jp/subject/physi
cs/elemets_folder/Vector.xls
●上記(a),(b)2式の自由落下・水平投射・鉛直投射・斜方投射への適用
による公式の導出
・自主開発デジタル教材「鉛直
投射」
・鉛直面内にx-y座標平面を設定し,上記(a),(b)の各ベクトル式に代
入すべき成分について考察する。
・(a),(b)2式に成分を代入し,水平,鉛直のそれぞれの方向について,
運動状態を表す公式を導出する。
http://www.seifu.ac.jp/subject/physi
cs/elemets_folder/1b1_1_1e.xls
・得られた公式をもとにして,速度の時間変化および変位の時間変化をグ
・落下運動
自由落下
ラフに示す。
●デジタル教材を利用した自由落下・水平投射・鉛直投射・斜方投射の特
性確認
http://www.rikanet.jst.go.jp/content
s/cp0070/304311102.html
・公式やグラフから,それぞれの運動の特徴について考察する。
・落下運動
水平投射
・考察によって抽出されたそれぞれの運動の特徴を,デジタル教材の映像
を見て検証する。
・自由落下と水平投射,鉛直投射と斜方投射の関連性についてそれぞれ検
証する。
http://www.rikanet.jst.go.jp/content
s/cp0070/304331103.html
・落下運動
投げ上げ
http://www.rikanet.jst.go.jp/content
s/cp0070/304321102.html
・落下運動
斜方投射
http://www.rikanet.jst.go.jp/content
s/cp0070/304341201.htmll
101
7.参考資料
デジタル実験教室「運動とエネルギー」
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0070/start.html
物理現象のシミュレーション&ビデオクリップ集
http://www.seifu.ac.jp/subject/physics/simulation/sim_dynamics/sim_dynamics.html
8.理科ねっとわーく,及び,デジタル教材の改善について
(授業で活用するために,改善して欲しい点を記入してください。)
・
画像が見づらいので改善してほしい(書き出しの際にインターレースの解除を行うことで解決する
はず)。
・
一定時間ごとの物体の位置(座標)を表示してほしい(定性的分析だけではなく,定量的な分析が
できるようにしてほしい)。
・
字幕を追加するなどして,何を見せたいのかが明確になるように工夫してほしい(タイトルがシン
プル過ぎるため,教師でも何を見せたいのかが分かりづらいコンテンツがある)
。
・
画像をもっと大きいものにしてほしい(640×480以上のサイズ)。
・
ActiveX コントロールのブロックに対する何らかの対応策が必要。
・
コントラスト比が低いプロジェクターや,輝度が低いプロジェクターでもはっきりと映像を見るこ
とができるようにしてほしい(バックが黒で,補助線がグレーになっている場合,補助線が大変見
えにくい)。
102
授業案・指導案NO.2“
1.高等学校・普通科1年・理科総合A・落下運動
学校法人清風学園 清風高等学校:豊田將章
2.単元の目標
・ゲームを通じて,身体的に落下運動の特性把握を行う
3.「理科ねっとわーく」活用のポイント
【モデルの提示】
花火コンテンツの運動シミュレーションで,初速度の向きによってその後の運動状態に
どのような違いが生じるかを確認した後,ゲーム型学習支援ソフト(運動関連学習ソフト)
を使って,落下運動の特性を身体的に把握させる。
<利用コンテンツ名>
花火コンテンツ
運動シミュレーション
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0070/304311102.html
ゲーム型学習支援ソフト
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0050/hanabi/simuframe_game.html
4.指導計画(6時間扱い・本時3/6)
①単元導入
落下運動の種類と特徴の把握(1時間)
②落下運動の理論的考察
速度および変位の公式導出(2時間)
③デジタル教材を利用した自由落下・水平投射・鉛直投射・斜方投射の特性確認(1時間)
④落下運動の総括
「花火コンテンツ」のゲームを利用した疑似体験型特性把握
(1時間・本時5/6)
⑤問題演習
(1時間)
5.本時の目標
多くの場合,テレビゲームのシューティングゲームでは,発射した弾は等速直線運動を行う。しかし,
花火コンテンツのゲームでは,打ち出された弾が放物運動を行うので,かなり勝手が違う。この違いを
ゲーム体験通して,落下運動についての特性を,ゲームを通じて身体的側面から把握する。
103
6.本時の展開
授業の流れ
使用コンテンツ
・運動シミュレーション
●落下運動の総括(その1)
・ 花火コンテンツの「運動シミュレーション」を利用して,初速度の向
きと物体の運動状態の関係を確認(初速度の大きさは同じで,向きだけ
が異なるとき,物体がどのような軌跡を描いて運動するのかを確認)
。
http://www.rikanet.jst.go.jp/content
s/cp0070/304311102.html
・ゲーム型学習支援ソフト
●落下運動の総括(その2)
・ 花火コンテンツの「ゲームが多額集支援ソフト」を利用して,落下運
動の特性を身体的に把握させる。
(勘に頼っていたり,頭だけで考えてい
たりすると,思うようにゲームは進まない。何度も試行を重ねていくう
ちに,放物運動の特性が身体化し,瞬時に的確な条件を見いだせるよう
になることを期待して,ゲームを体験させる。
)
http://www.rikanet.jst.go.jp/content
s/cp0050/hanabi/simuframe_game.html
●問題集を利用した問題演習
・
必要に応じて,デジタル教材を活用。
7.参考資料
花火コンテンツ
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0050/start.html
8.理科ねっとわーく,及び,デジタル教材の改善について
・
大変優れたコンテンツだと感じた。
(時間にゆとりがあれば,生徒にじっくり使わせてみたい作品で
あったが,裏を返せば,時間の制約がある中では,コンテンツの持ち味を十分生かすことが難しい。)
・
授業中に生徒にゲームをさせると,各ステージをクリアするのに時間が掛かりすぎてしまう。教育
目的でゲームを利用したいので,1~3のどのステージからでも始められるようにしてほしい(で
きれば,特定の条件をマニュアル設定できるようにしてほしい)。
・
ActiveX コントロールのブロックに対する何らかの対応策が必要。
104
<一学期の成果>
6月29日の実証授業において,次のようなアンケートを実施した。
(6月18日の授業では,導入段階でこれから取り扱う落下運動についてのイメージ把握を促す
という目的でデジタル教材を用いた。それに続く6月22日と6月25日の授業では「現象から法
則性を抽出する帰納的思考」を促すためにデジタル教材を用いた。また,6月29日の実証授業で
は,公式導出過程を説明した後で「法則と初期条件から起こりうる個別的現象を推論する演繹的思
考」を促すためにデジタル教材を使用した。なお、今回のアンケート実施は,落下運動について一
通りの説明を終えた段階で行っている。)
Q1.自由落下の理解に役立ちましたか?
Q2.水平投射の理解に役立ちましたか?
Q3.鉛直投射の理解に役立ちましたか?
Q4.斜方投射の理解に役立ちましたか?
Q5.現象についてのイメージ把握に役立ちましたか?
Q6.現象についての特徴把握に役立ちましたか?
Q7.現象と公式の関連性についての理解に役立ちましたか?
Q8.自由落下と水平投射,鉛直投射と斜方投射の関連性についての理解に役立ちました
か?
Q9.今後もデジタル教材を活用した授業の実施を希望しますか?
Q1~Q4は,一通りの説明を受けた後の総括として,大枠としての有用性の有無を問うための
設問で,Q5,Q6は授業の導入段階での有用性について,Q7,Q8は現象理解の仕上げ段階で
の有用性についての問いとして項目に挙げた。
複数のクラスを担当しているので,実証授業を行ったクラスの他にも同様のアンケートを実施し
たので,その結果についても期末考査の結果と共に併記しておく。
なお,習熟度が同程度のクラスで,記名・無記名によって違いがあるかどうかを確認するため,
記名アンケートにおいては,一つ一つよく考えながら選択するよう促すために「後ほど選択した理
由を尋ねるかもしれない」と告げた上で実施した。また,無記名のアンケートにおいては素直に感
じたままの感想が結果に反映するように「感じたとおりに自由に書いて欲しい」と告げた上で実施
した。
105
<アンケート結果と対象クラスの期末考査の結果>
アンケート結果①
アンケート結果②
得点
区分
90~100
習熟度:高 記名有り
はい
96%
Q2
96%
Q3
93%
Q4
93%
Q5
89%
Q6
17
7%
80~89
8
17
4%
70~79
9
20
4%
60~69
7
15
7%
50~59
6
13
7
15
7%
40~49
30~39
1
2
20~29
0
0
10~19
0
0
0~9
0
0
平均
70.1
11%
58%
Q7
%
8
いいえ
93%
Q1
人
数
42%
Q8
98%
2%
Q9
100%
0%
累
計
25
32
38
45
46
46
46
46
アンケート結果③
得点
区分
90~100
85%
Q5
85%
Q6
Q8
Q9
29%
80~89
5
12
70~79
3
7
60~69
6
15
12%
50~59
7
17
4
10
15%
40~49
6
15
15%
30~39
20~29
3
7
10~19
1
2
0~9
0
0
平均
61.0
12%
88%
Q4
71%
85%
88%
%
15
15%
88%
Q3
人
数
6
12%
85%
Q2
Q7
いいえ
88%
Q1
いいえ
93%
Q1
93%
Q2
95%
Q3
95%
Q4
95%
Q5
90%
Q6
56%
Q7
12
7%
80~89
7
17
7%
70~79
9
22
5%
60~69
5
12
5%
50~59
5
12
3
7
5%
40~49
7
17
10%
30~39
20~29
0
0
10~19
0
0
0~9
0
0
平均
66.1
12%
93%
Q9
%
5
44%
88%
Q8
人
数
7%
累
計
5
12
21
26
31
34
41
41
41
41
アンケート結果④
習熟度:中 記名なし
はい
はい
8
16
得点
区分
90~100
習熟度:中 記名有り
15%
12%
累
計
はい
6
11
14
20
27
31
37
40
41
41
アンケート結果⑤(実証授業実施クラス)
83%
Q1
78%
Q4
88%
Q5
Q8
Q9
29%
80~89
8
20
70~79
5
12
20%
60~69
5
12
22%
50~59
3
7
40~49
6
15
30~39
5
12
20~29
1
2
10~19
0
0
0~9
0
0
平均
67.0
12%
78%
Q6
22%
71%
44%
56%
95%
%
20
15%
80%
Q3
人
数
8
17%
85%
Q2
Q7
いいえ
アンケート結果⑥
106
得点
区分
90~100
習熟度:中 記名なし
5%
累
計
8
16
21
26
29
35
40
41
41
41
得点
区分
90~100
習熟度:低 記名有り
はい
97%
Q1
89%
Q6
Q8
Q9
57%
14
70~79
5
14
60~69
3
8
50~59
6
17
14
6%
40~49
5
5
14
11%
30~39
20~29
2
6
10~19
2
6
0~9
0
0
平均
58.7
3%
94%
Q5
80~89
5
3%
97%
Q4
8
6%
97%
Q3
43%
91%
100%
%
3
3%
94%
Q2
Q7
いいえ
人
数
9%
0%
累
計
はい
3
8
13
16
22
27
32
34
36
36
得点
区分
90~100
習熟度:低 記名なし
Q1
54%
57%
Q8
Q9
43%
40%
71%
Q5
Q7
34%
60%
Q4
Q6
46%
66%
Q2
Q3
いいえ
51%
29%
49%
37%
63%
57%
43%
86%
14%
人
数
%
0
0
80~89
8
22
70~79
4
11
60~69
4
11
50~59
5
14
40~49
6
17
30~39
4
11
20~29
5
14
10~19
0
0
0~9
0
0
平均
56.5
累
計
0
8
12
16
21
27
31
36
36
36
<アンケート結果の分析>
アンケート結果①,②,⑤に見られるように,記名を求めたときのアンケート結果は,明らかに教科
担当の機嫌を損ねることを懸念して,アンケート結果③,④,⑥に比してデジタル教材の有効性を認
める割合が高い結果となった。(集中力が続かず,少し手を焼いている“アンケート結果⑥のクラス”
を除くと,概ねデジタル教材は,現象の理解に役立っていると考えている。)
記名によってはっきりと浮き彫りになった点は,アンケート結果①,②,⑤の何れについても共通し
た特徴として,Q7の「現象と公式の関連性についての理解に役立ちましたか?」という問に対して
「いいえ」を選択した生徒の割合が,他の項目に比して突出している点である。この傾向は,
「実際の
物体の運動と,速度(あるいは変位)の時間変化のグラフの結びつき」や「速度(あるいは変位)の
時間変化のグラフと落下運動に関する一般式(公式)との結びつき」についてはある程度の理解を示
してはいるが,
「実際の物体の運動と一般式(公式)との結びつき」については,十分な理解ができて
いないという期末テストの結果と符合している。
(なお,授業を行っていて感じたこととして,高校1
年の段階では,暗記に重きを置いた学習が依然として大勢を占めており,論理的な思考を行うことに
慣れていない生徒が多いという点がこの項目に大きく影響しているように思える。)
一方,アンケート結果③および④と⑥とを比較してみると,習熟度が低い⑥の方に「いいえ」と答え
た割合が多いことが分かる。これは,単純に理科総合Aの物理分野に向ける関心の程度が低いという
ことに起因すると判断している。しかし,デジタル教材は「関心の薄い生徒達についても,現象に対
する興味を喚起する」役割を担っているはずであるから「運用の仕方にもっと工夫を加えるべき点が
あるのではないか」と私自身が反省し,今後の授業で,デジタル教材の持ち味をもっと効果的に生か
す工夫をしていきたいと考えている。
107
<実証授業指導案>
授業案・指導案NO.3
学校法人清風学園 清風高等学校:豊田將章
1.高等学校・普通科1年・理科総合A・仕事・力学的エネルギー
2.単元の目標
・仕事と力学的エネルギー
3.「理科ねっとわーく」活用のポイント
【モデルの提示】
仕事および力学的エネルギーの単元導入に際してデジタル教材を利用し,授業で教える
概念全体を俯瞰的に把握させることを促す。
<利用コンテンツ名>
実写映像とCGを用いたコンテンツによるエネルギーの授業
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0360/contents/14_cd/
10_11_shigoto/01/00_shigoto.html#
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0360/contents/14_cd/
10_03_undo/01/00_undo.html
4.指導計画(7時間扱い・本時1/7)
①単元導入
②仕事
仕事の概念およびエネルギーの種類と特徴の把握(1時間・本時1/7)
仕事の定義,仕事の原理(1時間)
③エネルギー
運動エネルギー,位置エネルギー(重力による位置エネルギー,
弾性力による位置エネルギー)の定義と公式導出(2時間)
④力学的エネルギー保存則
⑤非保存力がする仕事
⑥問題演習
(1時間)
(1時間)
(1時間)
5.本時の目標
新たな単元に入るとき,教科書の概念図や板書だけではなかなか概念を把握しにくい。実写映像を見
せることによって,単元で教える内容に対する興味を喚起すると共に,現象の観察を経由することによ
って,より予具体的に概念の把握ができるようにすることを目標とする。
108
6.本時の展開
授業の流れ
使用コンテンツ
●仕事の定義
・ 物体に力を加えて、その力の方向に物体を動かしたとき、その
力は物体に対して、仕事をしたという。物体に加えた力を F [N]、
物体を力の向きに移動した距離を S [m] とすると、この2つの量
の積で仕事の大きさ W [J]を表す(W = FS )
。
http://www.rikanet.jst.go.jp/conten
ts/cp0360/contents/14_cd/10_11_shig
oto/01/00_shigoto.html#
●仕事をしているかどうか
・ ヒトがバケツを持ち歩くとき、ヒトがバケツを支える力は仕事
をしているといえか。
http://www.rikanet.jst.go.jp/conten
ts/cp0360/contents/14_cd/10_11_shig
oto/06/00_shigoto.html
●運動エネルギー
・ 運動している台車を杭に衝突させると、杭を打ち込む(動かす)
ことができる。このように運動している物体が持つエネルギーを
運動エネルギーという。
(運動エネルギーの大きさは、物体の質量に比例し、物体の速さの2乗に比
http://www.rikanet.jst.go.jp/conten
ts/cp0360/contents/14_cd/10_03_undo
/01/00_undo.html
例する。つまり、物体の速さが一定の場合、物体の質量が2倍になれば運動
エネルギーも2倍になるが、物体の質量が一定の場合、速さが2倍になれば
運動エネルギーは4倍になる。)
http://www.rikanet.jst.go.jp/conten
ts/cp0360/contents/14_cd/10_03_undo
/02/00_undo.html
●運動エネルギー(自動車の衝突実験)
・
スピードが違う自動車を衝突させたとき、自動車の持つ運動
エネルギーは速さが大きいほど大きくなり、スピードの速い自
動車の方が、車体のつぶれ方が激しくなる。
http://www.rikanet.jst.go.jp/conten
ts/cp0360/contents/14_cd/10_02_ichi
/01/00_ichi.html
109
●重力による位置エネルギー(小球の木片への衝突実験)
・ 小球を高い位置から転がして木片に衝突させると、木片を動か
すことができる。このように高い位置にある物体が持つエネルギ
ーを位置エネルギーという。
(位置エネルギーの大きさは、物体の
質量と基準面からの高さに比例し、物体の質量が大きいほど、ま
た、基準面からの位置が高いほど、大きい。)
http://www.rikanet.jst.go.jp/conten
ts/cp0360/contents/14_cd/10_02_ichi
/02/00_ichi.html
●重力による位置エネルギー(物体の落下衝突実験)
・ おもりを落下させる高さを一定にし、質量を変えておもりを落
下させると、おもりの質量が大きいほど、杭が打ち込まれる長さ
は大きくなる。(高さが一定の場合、おもりの質量が大きいほど、
位置エネルギーは大きい。)また,おもりの質量を一定にし、おも
りの高さ変えておもりを落下させると、おもりの位置が高いほど、
杭が打ち込まれる長さは大きくなる。
(質量一定の場合、おもりの
http://www.rikanet.jst.go.jp/conten
ts/cp0360/contents/14_cd/10_01_ener
gy/03/00_energy.html
位置が高いほど、位置エネルギーは大きい。)
●弾性力による位置エネルギー(伸ばしたバネ)
・ バネつきの模型の車に力を加えて引くとバネは伸び、手を放す
とバネは元の長さに戻ろうとし、模型の車は動き始める。伸ばさ
れたバネには弾性力による位置エネルギーが蓄えられており、伸
http://www.rikanet.jst.go.jp/conten
ts/cp0360/contents/14_cd/10_04_riki
hozon/03/00_rikihozon.html
ばされたバネは模型の車を動かす能力を持っているといえる。
●力学的エネルギー保存則(糸の長さが途中で変わる)
・
ふりこの糸が途中でくぎに引っかかるようにし、糸の長さが途中
で変わっても、おもりはもとの高さまで上がる。(力学的エネル
ギーは糸の長さには無関係で、おもりが持つ力学的エネルギーの
http://www.rikanet.jst.go.jp/conten
ts/cp0360/contents/14_cd/10_04_riki
hozon/06/00_rikihozon.html
総量はいつも一定。)
・
●力学的エネルギー保存則(ジェットコースター)
・ 遊園地にあるジェットコースターは、一度高い位置まで運び上
げられると、レールに沿って上がったり下がったりを繰り返しま
す。このとき、ジェットコースターの位置が低くなって位置エネ
ルギーが減少すると、速さが大きくなり運動エネルギーが増加す
る。逆に位置が高くなって位置エネルギーが増加すると、速さが
小さくなって運動エネルギーが減少する。ジェットコースターは、
ふりこの運動のように、位置エネルギーと運動エネルギーが互い
に移り変わる運動をする。
110
7.参考資料
実写映像とCGを用いたコンテンツによるエネルギーの授業
http://www.rikanet.jst.go.jp/contents/cp0360/start.html
8.理科ねっとわーく,及び,デジタル教材の改善について
・上記の「小球の木片への衝突実験」や「伸ばしたバネ」の映像は,多くの教科書の挿絵と左右が反
転していると思います。できれば教科書の挿絵の配置をと一致するように映像を左右反転させて欲
しい。
・定良的な分析が可能になるように,運動エネルギーや位置エネルギーに関する映像には,数値デー
タを映像に盛り込んで欲しい。
9.授業風景
111
授業案・指導案NO.3に関するアンケート用紙
<デジタル教材の有効性についての調査>
① 「仕事」に関する映像についての感想として最も適当なものを,次の1~8の中から選び,記入欄
に番号で答えてください。
1
2
3
4
5
6
7
8
制作意図(何を考えてほしいのか)が,
○
映像からよく理解できた。
○
○
×
○
×
×
×
○
○
×
○
×
×
○
×
○
×
○
○
×
○
×
×
「仕事」に関するイメージをつかむの
に役立った
授業内容の理解に役立った
② 「運動エネルギー」に関する映像についての感想として最も適当なものを,次の1~8の中から選
び,記入欄に番号で答えてください。
1
2
3
4
5
6
7
8
制作意図(何を考えてほしいのか)が,
○
映像からよく理解できた。
○
○
×
○
×
×
×
○
○
×
○
×
×
○
×
○
×
○
○
×
○
×
×
「運動エネルギー」に関するイメージ
をつかむのに役立った
授業内容の理解に役立った
③ 「位置エネルギー」に関する映像についての感想として最も適当なものを,次の1~8の中から選
び,記入欄に番号で答えてください。
112
1
2
3
4
5
6
7
8
制作意図(何を考えてほしいのか)が,
○
映像からよく理解できた。
○
○
×
○
×
×
×
○
○
×
○
×
×
○
×
○
×
○
○
×
○
×
×
「運動エネルギー」に関するイメージ
をつかむのに役立った
授業内容の理解に役立った
④ 「力学的エネルギー保存則」に関する映像についての感想として最も適当なものを,次の1~8の
中から選び,記入欄に番号で答えてください。
1
2
3
4
5
6
7
8
制作意図(何を考えてほしいのか)が,
○
映像からよく理解できた。
○
○
×
○
×
×
×
○
○
×
○
×
×
○
×
○
×
○
○
×
○
×
×
「力学的エネルギー保存」に関するイ
メージをつかむのに役立った
授業内容の理解に役立った
<記入欄>
①
「仕事」に関する映像について
②
「運動エネルギー」に関する映像について
A
「重力による位置エネルギー」に関する映像について
B
「弾性力による位置エネルギー」に関する映像について
③
④
「力学的エネルギー保存則」に関する映像について
<何か意見がありましたら書いてください>
理数科・普通科
1年
組
番
氏名
113
<研究を通しての成果と課題>
(1) データ(アンケートのまとめなど)
理科総合Aの力学分野における「仕事」および「力学的エネルギー」の単元導入に際し,
“デジタ
ル教材が授業で教える概念全体を俯瞰的に把握させることにどれだけ貢献するか”を検証するため,
アンケート調査を行った。
「仕事」および「力学的エネルギー」の単元導入の初回授業時に,
それに続く延べ6時間の授業内容のダイジェストとして,独立行政
法人科学技術振興機構(JST)が製作した「実写映像とCGを用いた
コンテンツによるエネルギーの授業」に収められている 13 の映像コ
ンテンツ(右図はその1例)を見せ,その後の授業で,個別の項目
についての理論的説明や問題演習を終えた後にアンケートを実施し
た。(表1参照)
表1 評価の組み合わせと選択番号
1
2
3
4
5
6
7
8
○
○
○
×
○
×
×
×
イメージをつかむのに役立った
○
○
×
○
×
×
○
×
授業内容の理解に役立った
○
×
○
○
×
○
×
×
制作意図(何を考えてほしいのか)が,映像からよく理解でき
た。
高校1年の理科総合Aの授業は,週当たりの配当時間が2時間なので,映像コンテンツを見せて
からその有効性を問うアンケートを実施するまでに,およそ1ヶ月の期間があった。そのため,印
象がかなり薄れてしまっていると思われたが,表2に示すように,①~④のどの項目についても,
映像コンテンツがその後の授業内容の理解を促すことに概ね貢献していると判断できることがわか
った。(1~8のうち2つ以上の○がある項目番号を選んだ生徒は全体の 80%前後を占める結果に
なった。)
表2 単元と評価の組み合わせの選択比率の詳細
1
① 「仕事の定義」の映像
34.6%
2
3
4
5
6
7
14.8%
8.6%
20.4%
3.7%
5.6%
9.3%
43.8%
18.5%
78.4%
② 「運動エネルギー」の映像
53.1%
17.3%
6.2%
の映像
49.1%
9.3%
5.6%
32.7%
17.0%
6.3%
36.5%
85.5%
114
3.1%
21.6%
1.9%
4.9%
12.3%
85.8%
③A「重力による位置エネルギー」
8
1.9%
14.2%
13.2%
1.3%
1.3%
6.9%
9.4%
14.5%
5.0%
③B「弾性力による位置エネルギ
34.6%
ー」の映像
④ 「力学的エネルギー保存則」
10.5%
16.0%
2.5%
43.2%
45.1%
11.1%
2.5%
11.1%
16.0%
77.8%
の映像
6.2%
22.2%
8.0%
35.2%
16.0%
0.6%
2.5%
9.3%
12.3%
7.4%
全く役に
立たな
かった
19.8%
あまり
役に立た
なかった
80.2%
役に
立った
大変役に
立った
※
16.7%
上記のデータは,4クラス162名によるアンケート結果をまとめたものである。
(2) 先生(ICT の使用や授業づくりについて具体的な事例)
① 成果
理科ねっとわーくのコンテンツ作りと年を同じくして,独自で約10年前からMicrosoft Excelを利
用したシミュレーションや,実験の様子をまとめたビデオクリップなどを制作し,その数は 170 を超
え る ま で に な っ て い る 。( 営 利 目 的 で な い 限 り , 自 由 に
http://www.seifu.ac.jp/subject/physics/download/dl.htmlから一括してデータをダウンロードし,使用
することができます。)
理科ねっとわーくのコンテンツを利用する以外に,独自制作のコンテンツから,等加速度運動,速
度の合成,相対運動,鉛直投射,斜方投射,等加速度運動とベクトルの関係,2物体の空中衝突など
のシミュレーションと,真空中での自由落下,同時落下実験器を使った実験,2物体の空中衝突(初
速度大小2種類),放物運動・反発係数,定滑車を使った力のつり合い(3項目:下図参照)などのビ
デオクリップを授業で活用し,現象に関するイメージ作りや概念把握の促進に役立ててきた。これら
のコンテンツは,生徒の意見を取り入れながら制作を行うため,現象に対する生徒の関心の持ち方が
大変高くなるという効果がある。また,コンテンツには,定量的な要素を極力盛り込むように心掛け
ているため,具体的な数値データに基づいて考察を行うことができるという利点がある。
115
②
課題
数は徐々に増えてはいるが,物理の全ての分野を網羅するにはほど遠い状態である。抜けている分
野に関しては,理科ねっとわーくのコンテンツで補完し,徐々に整備していきたいと考えている。
(3) 児童・生徒(授業中の発言、反応、取組の実態から具体的な事例)
① 成果
デジタル教材が現象のイメージ把握に役立っているとする生徒(アンケートにおいて1,2,4,7
を選択した者が)が約 80%を占めることがわかった。また,デジタル教材が授業内容の理解に貢献して
いると考えている生徒(アンケートにおいて1,3,4,6を選択した者)が約 70%を占めており,デ
ジタルデジタル教材によって,教育効果が向上することを裏付けている。
<生徒から寄せられたコメント>(任意に寄せられたコメントの内,成果に関する意見の全てを列記)
1 自動車の衝突実験の映像はインパクトがあり,わかりやすかったです。
2 わかりやすくて役に立った。
3 意味がよくわからない点もありましたが,理解には役立ったと思います。
4 運動エネルギーのときの自動車の衝突実験が一番わかりやすくて良かった 。
5 映像を使うことで,とてもわかりやすく集中しやすかった。
6 普段の授業よりわかりやすかった。
7 動いている映像の方が頭に残りやすくて,教科書の挿絵よりも印象的だった。
8 わかりやすかったが,その後の物理の授業がよくわからなかったので,イメージをつかむだけとい
う形だけになってしまった。
9 特に,仕事をしているか,いないかが,教科書ではわかりにくかったけど,動画で見たらわかりや
すかった。
10 わかりやすかったです。
11 映像はわかりやすい。図ではわからないときが多い。
12 理解するのに役に立った。
13 もっとコンピュータを使った説明を取り入れて欲しいです。黒板だとイメージがわきにくいので,
コンピュータを使った方が分かりやすいです。
② 課題
「映像に字幕やナレーションを追加して欲しい」,「自動車の衝突実験のように,学校では行うこと
ができないようなインパクトがある実験をもっと数多く見たい」という意見が寄せられた。
<生徒から寄せられたコメント>(任意に寄せられたコメントの内,今後の課題に関する意見の全て
を列記)
1 もっと楽しくして下さい。
2 実際に見たり,したりできるものばかりだったので,もっとインパクトがある映像が見たい。
3 仕事に関する映像に登場する女の人の動きが素っ気なくて淋しい。もっと表情豊かに動いた方がよ
い。
4 イメージをつかむのには役立ったが,理論の理解にはつながらなかった。
5 イメージをつかむのには役立ったが,授業の理解には役立たなかった。ジェットコースターの映像
は,スリルはあったが内容が理解しにくかった。
6 重力による位置エネルギーの実験映像では,あまり差がわからなかった。
7 映像にナレーションなどの音声が効果的に入っていればいいなと思った。
8 わかりやすかったけど,もう少しじっくり見たかった。
9 音声説明をして欲しい。
10 デジタル教材をもっと使って欲しい。
11 ビデオは楽しかったけど,あまり物理の内容が理解できず,何も残らなかった。物理はわかりま
せん。
12 字幕とかがもっとあるといいと思う。
13 運動エネルギーの衝突実験の映像などにスローモーションを使って欲しい。早過ぎてよくわから
なかった。
116
117
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