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函南原生林
函 南 原 生 林 静岡 観察ガイ ド 自然 県 21 ク ブッ 静 岡 県 自 然 観 察 ガ イ ド ブ ッ ク 1 ⃝ 函南原生林 KANNAMI-GENSEIRIN 自然保護憲章 (昭和49年6月5日制定) 自然をとうとび,自然を愛し,自然に親しもう。 自然に学び,自然の調和をそこなわないようにしよう。 美しい自然,大切な自然を永く子孫に伝えよう。 出かける前に 大きな声を出さないで,静かに観察しましょう。 生きものはとらないで,観察のために必要なときは,観察が 終わったらもとの場所にかえしましょう。 危険な場所,危険な生きものには注意しましょう。 ごみは出さないようにし,もし出したら持ち帰りましょう。 たき火をしたり,タバコを吸いながら観察したりすることは やめましょう。 自然観察の持ち物 自然観察の服装 ぼう し リュックサック フィールドノート 手ぶくろ とえんぴつ 帽子 すいとう 長そで シャツ お弁当 雨具 水筒 〈あると便利なもの〉 ゆったりした 長ズボン ず かん そうがんきょう 双眼鏡 運動ぐつ または長ぐつ 地図 ルーペ ビニールぶくろ 図鑑 巻尺 1 箱根峠へ 国道 1号 線 富士箱根 ランド 学習の N アカガシ 農場前 み た だ 石 函南 原生林 大 ブア ナカ ガ シ 林道 道 街 旧 道 農 雲助徳利の墓 山中城跡 らせん橋 来 山中 光 函南 原生の森 川 W.C. J R 三 島 駅 へ JR函南駅へ 2 紫水の池 山 中 城 跡 町営 木立 キャンプ場 観 音 滝 函南ゴルフ場 月光天文台を経て JR函南駅へ(約8km) 箱根峠へ 交 通 案 内 鞍掛山 1004m R1 芦ノ湖 無線中継所 東名 高速 富士箱根ランド入口 箱根峠 道路 箱根へ 県 熱道 海 箱 根 峠 線 道 三島市 函南町 熱海 湯河原峠 大観山・湯河原へ R414 函南原生林前 R136 N 十国峠・熱海駅へ W.C. …バス停 ●バスで …駐車場 JR熱海駅から伊豆箱根鉄道バ …トイレ ス「元箱根行」で48分,函南原 原生林(学習の道)コース 生林前で下車。または同50分, 原生の森コース キャンプ場コース 0 500m 富士箱根ランドで下車。 1km 3 函 南 原 生 林 と そ の 周 辺 の 自 然 函南原生林と その周辺の自然 かんなみげんせいりん はこ ね がいりんざん くらかけやま 函南原生林は,箱根外輪山の一つである鞍掛山の標高840m付近 しゃ めん らい こう がわ の南西斜面から来光川上流域の550m付近に広がっている総面積 かん なみ ちょう すい げん かん よう りん 223haの自然林で,下流の函南町の田畑をうるおす水源涵養林と して,300年以上も手厚く保護されてきた森林です。 きんばつりんない 昭和59年に,函南町はこの禁伐林内に「学習の道」と呼ぶ自然 遊歩道を整備し,その後,平成 5 年に原生林とその南西側一帯を しずおかけん げんせいりん し ぜんかんきょう ほ ぜん ち いき 林野庁と静岡県が原生林自然環境保全地域に指定し,「原生の森」 と呼ぶ自然公園が整備されました。ここでは「原生林(学習の道) コース」 「原生の森コース」,それに「キャンプ場コース」の 3 か 所を案内します。 み しま はこ ね とうげ 函南原生林は,三島方面から国道 1 号を箱根峠方面に登って行 やまなかじょうあと き,山中城跡を通り過ぎると,右手の南側の来光川の深い谷の向 ふ じ はこ ね こうに見えるうっそうとした森です。また,富士箱根ランドから の入口付近からも森の全体のようすが見られます。 「学習の道」自然遊歩道は 3 か所から入ることができます。一周 コースから遊歩道には,樹令100年ぐらいのブナやヒメシャラ, アカガシ,ケヤキ,カエデなどが多く見られます。なかでも樹令 500年以上といわれるアカガシや樹令700年以上といわれるブナは しょう ちょう 函南原生林を象徴する樹木で,函南町は平成元年,原生林地域を ふ ばつ 「不伐の森」として後世に残すことにしました。この原生の森か ら原生林に向かう遊歩道はケヤキ,アブラチャン,イタヤカエデ, オオモミジ,スダジイ,アラカシ,ウラジロガシなどがうっそう と茂る森を作っています。 し すい 原生の森公園は,周りの谷から流れ出た水を蓄えた「紫水の池」 4 を中心に手入れが行き届いている自然公園です。公園の西側の遊 歩道は草原が広がり,秋にはマツムシソウをはじめいろいろな草 こんちゅう が花を咲かせ,その花には多くの昆虫が集まります。野草や昆虫 に親しむよい場所です。 うまさかしゅうらく キャンプ場は函南駅から馬坂集落を通って原生の森に行く途中 かんのんだき にあります。近くには観音滝があり,来光川に注いでいます。滝 付近にはヤマミズ,ヤマネコノメソウといった湿った場所を好む 植物が多く見られます。また,コバノカナワラビ,イノデ,ヒロ ハイヌワラビなどのシダ植物も観察できます。 らくようじゅ じょう りょくじゅ 函南原生林は,冬に葉を落とす落葉樹と葉を落とさない常緑樹 とくちょう が混ざって生育しているのが特徴です。ブナやヒメシャラ,ケヤ キ,アカガシ,カエデは根を大地にしっかり張りめぐらせて養分 を吸収しているだけでなく,降った雨水を蓄えていますので,こ た がたへい や れらの,樹木が生育している森林は,田方平野をうるおす水源涵 養林として大切に保護されてきました。森にはカタツムリの一種 であるヒカリギセルやヒキガエル,ヤマアカガエル,サワガニな どの小動物も観察できます。それにいろいろのコケ類やシダ類も 生育しています。 早春のころには,めだたない花を咲かせるコチャルメルソウ, セントウソウ,ミヤマカタバミ,ニリンソウが,葉のない落葉樹 こずえ の梢から降り注ぐ太陽の光をいっぱい受けています。初夏には, もえ ぎ いろ 萌黄色の若葉が森をいろどり,梢の先を吹く風がヤマボウシの花 あおむらさき をゆすり,地表にはヤマルリソウは青紫色,ヤマジオウは紫色の 小さな花を咲かせます。秋の函南原生林は,色とりどりの葉に染 まり,森は一時のにぎわいとなります。晩秋から冬には,遊歩道 は落ち葉でうまり,落ち葉を踏みしめながら山道を歩くとき,や わらかな山道の感触が足の裏から伝わってきます。 5 函 南 原 生 林 と そ の 周 辺 の 自 然 ●函南原生林の生い立ち かんなみげんせいりん はこ ね きんばつりん 「函南原生林」は,かつて「箱根禁伐林」と呼ばれていましたが, いつのころからか「函南原生林」という呼び名が一般的となり, 最近では「箱根禁伐林」の名は忘れ去られようとしています。 すいげんかんようりん この森を源流とする来光川下流域の人々の水源涵養林(水源を 確保するための林)として,その名が示すとおり,森の樹木はいっ さい切ることを禁じ,たきぎ取りや落ち葉かきのために森の中へ 入ることさえ許さず,地元の人たちの自ら定めた厳しい決まりに え ど じ だい 守られながら,江戸時代以来,何百年もの間,森は手厚く保護さ れてきました。 とくがわばく ふ ご しかし,徳川幕府はこの箱根禁伐林を見過ごすはずがなく,御 りん 林として取り立てようとしたり御用炭の供出を強制したりしまし たが,そのつど,関係町村の首長たちは,この森が下流域の人々 の水源涵養林であることを訴え,取り立ての中止願いを出して幕 府に中止させたり,計画の縮小をさせてきました。 幕府にとっても,この森が箱根の関所と地続きであることから, い てっぽう で おんな (武 当時,幕府がもっとも恐れていた江戸への「入り鉄砲に出女」 器としての鉄砲の持ち込みと,人質として江戸に残された諸大名 の奥方が逃亡すること)の関所破りのぬけみちとして利用される ことを防ぐための,自然のとりでとしての機能を重視していたら しく,あまり強制できない弱みがあったこともうかがえます。 めい じ い しん ち けん 明治維新後も,明治 6 年の地券発行の際,官有地の取り扱いを いりあい 受けましたがこれを退け,明治13年に2,670haの入会使用権が認め られました。このうち,317haを水源涵養林として,生木立は絶 対切らないという方針のもとに,「禁伐林組合」が設立され保護 管理運営に当たることになり,明治23年市町村制施行にともない み しま し 「函南村外 3 ケ村禁伐林組合」 ,昭和16年の三島市制施行にともな 6 ▲函南原生林の全景 い「箱根山禁伐林組合」と改称され,今日に至っています。 しかし,昭和初期に管内で起きた水騒動によって大量の資金が さかさがわかんのんだき 必要となり,現在の原生林から逆川観音滝に至る禁伐林は一部25 haが,方針を破って伐採,売却されてしまったのです。 箱根山禁伐林組合では,二度とこの過ちを繰り返さないことを せき ひ 誓い, 「原生の森」側からの原生林入口に「不伐の森」の石碑を 建て,自らをいましめています。 とうげ じっこく りょうせん しかし,上部地帯は箱根峠と十国峠を結ぶ稜線近くで展望に優 れていることから,早くも昭和 8 年には自動車専用道路(現,箱 根スカイライン)が開通し,戦後もゴルフ場やホテル,レジャー 施設の建設が進みました。学校建設費用のための木立売却案や動 ゆう ち 物園誘致案のうわさが流れたこともありました。 箱根禁伐林は私たちの祖先が何百年もの間,命がけで守り続け い ず てきた森で,全国有数の観光地,伊豆と箱根の接点にあります。 この函南原生林を,今後どのように守り,後世に引き継いで行 くべきでしょうか。私たちも「ふるさとの自然」の保護について, ここで,一度真剣に考えてみましょう。 7 函 南 原 生 林 と そ の 周 辺 の 自 然 ●観察できる植物 かんなみげんせいりん 函南原生林やその周辺は,ややすずしい場所を好むいろいろな 種類のカエデやブナ,ヒメシャラ,ケヤキ,リョウブ,ヤマボウ シなどに混じって,温かい地方の山地を好むアカガシやヤブニッ せいいくかんきょう ケイ,ウラジロガシなどの樹木が見られます。生育環境を異にす る樹木が同じ場所に一緒に生活していることはたいへんにめずら しく,貴重な場所といえます。そのうえ,数百年以上に渡ってこ の森の樹木を切ることを禁止し,保護されてきたので,この森で はオオモミジ,ブナ,イヌシデ,ヒメシャラ,アカガシ,ケヤキ, ハリギリなどの大木が観察できます。中でもブナとアカガシは日 本でも一・二を争う巨木といわれています。 原生林にある大ブナは樹令 700年以上といわれ,幹は大人が 7 人ぐらいでないと取り巻くことができません。大ブナは老木で, か この数年,枝の枯れがめだつようになってきました。 しずおかけん 静岡県内では,ブナの生育場所は標高1,000mぐらいの山地です が,函南原生林は標高700m前後の 場所で観察できます。 森に入るとほかの樹木の木肌とち あわ せきかっしょく がって淡い赤褐色をした樹木がめだ ちます。ヒメシャラです。幹に触れ てみましょう。どんな感じがするで しょうか。 カエデの仲間の樹木もめだちます。 秋には紅葉したカエデの落ち葉を拾 い,19ページの図を参考にしながら 名前を調べてみるのも,楽しみのひ とつです。 8 ▲ヒメシャラとブナの林 竹ぼうきを逆さにしたような枝ぶりの樹木が空に枝を広げてい こずえ ます。ケヤキです。晩秋になり葉を落としてしまうとその梢に青 き せいしょくぶつ 々と葉を広げている植物がめだちます。ヤドリギという寄生植物 ですが,夏にはケヤキの葉が茂っていて見えにくかったのです。 箱根を代表する植物の一つヤマボウシは梢の先に花を咲かせる ので,花を近くで見るのはむずかしいですが,原生林を一望でき る場所から見てください。 遊歩道の足元にも注意を向けてみましょう。春から初夏には, スミレの仲間がかわいらしい花を咲かせています。花や葉の形か ら何という名前のスミレか調べてみると親しみが深まると思いま す(21ページ)。どれが花なのかはっきりしない植物もあります。 コチャルメルソウという植物で,近くで見てみると,ちょっと変 わった形をした花が観察できます(23ページ) 。 枝についている葉が左に 2 枚,右に 2 枚と,あまり見かけない 植物があります。葉は強いにおいがするコクサギです。葉のつき とくちょう 方に特徴があるので,注意していると見つけることができます。 地面をはっていて一年中青々とし せ たけ た葉をつけている 背 丈 が40∼50cm の低い植物で,初夏のころには円す い状の白い花をつけ,熟した紅色の 実も見られるのはツルシキミです。 有毒植物なので気をつけましょう。 くき 茎の高さが20cmぐらいで,輪生する 三枚の葉の真ん中に花をつけている の は,エ ン レ イ ソ ウ で す。漢 字 で 「延齢草」と書き,これも有毒植物 の一つです。 ▲新緑の函南原生林 9 観察地 1 観 察 地 1 ⃝ 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス 原生林(学習の道)コース N 熱海駅・箱根峠へ 小さな社 富士箱根ランド 富士箱根ランド 可 学習の道 W.C. アカガシの大樹 (No.2) 山 中 城 跡 へ 函南原生林 林道 沢 観察広場 テーブル・ベンチ ブ ナ の 大 樹 急坂 高 ア 圧 カ 線 ガ シ の 大 樹 (No.1) 函 南 原 生 林 前 熱 海 駅 へ 案内板 原生の森 (くわしくは34ページ) 紫水の池 0 100m 函南駅へ(約8km) 10 箱 根 峠 へ 鉄とう 木道 木 立 キ ャ ン プ 場 へ 2 ∼ 3 台 可 500m ●コースの案内 「学習の道」への入り口は 3 本ありま ふ じ はこ ね す。第一の道は富士箱根ラインを下がり かんなみ 函南原生林が一望できる場所が入り口 です。少し急な坂道を下って行くとス ズタケの間からヒメシャラやブナが独特 の木肌を見せてくれます。右手にアカ ▲大ブナ ガシの大木が目に入ります。 そこで学習の道の 1 周コースに合流します。 あた み 第二の道は県道箱根峠熱海線のバス停「函南原生林前」から下っ て行く最短距離のコースで,高圧線の鉄とうを過ぎた所で学習の 道に合流します。 第三の道は「原生の森」から登り道を進んで行くと,いろいろ な種類の樹木の間を抜け,尾根を越え谷間の小川を渡り,しばら く進むと学習の道に合流します。 学習の道は 1 周約 2 kmの道程で,標高差150mほどです。観察 をしながら歩くと,思った以上に時間がかかります。 至 富士箱根ランド 観 察 マ ッ プ 0 100m 200m 300m 400m 500m 標高705m ブナ ヒメシャラ ブナ ウラジロガシ ブナ アカガシ (大) アカガシ(大) ケヤキ オオモミジ イタヤカエデ コクサギ ツルシキミ ブ ス ナ ズ タ ケ 函南原生林 タンナサワフタギ エゴノキ イヌガヤ N ヒメシャラ バイケイソウ 標高643m ブナ ヤドリギ ヒメシャラ ブナ ヒメシャラ チドリノキ ブナ ケヤキ コクサギ ブナ イヌシデ エンコウカエデ 至原生の森 ハ コ ネ ダ ケ ヤマボウシ ツルアジサイ アカガシ(大) シラキ コ チ ャ メ ル ソ ウ ツ ル シ キ ミ リ ョ ウ ブ ア ブ ラ チ ャ ン ブナ(大) ス ズ タ ケ ハ リ ギ リ シキミ アカガシ(大) ハコネダケ 標高775m シラキ イワガラミ ヤブ ニッケイ リョウブ マユミ リ ョ ウ ブ 鉄とう オオバウマノスズクサ シラキ ガマズミ 至 箱根峠 標高850m 函南原生林前 至 熱海駅 11 観 察 地 1 ⃝ 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス ●函南原生林の樹木 かんなみげんせいりん え ど じ だい 函南原生林は江戸時代 より水源涵養林として木 を切ることを禁じてきま した。このため,今でも みごとな自然林が残され ています。高木のアカガ あ こうぼく ▲学習の道入口から見た函南原生林全景 シやブナ,亜高木のシキ だんたいりん おんたいりん ミやエゴノキ,低木のツルシキミ,アオキなど暖帯林や温帯林を 代表する樹木が混生し,すきまもなく茂っています。 アカガシ アカガシはドングリをつ ける仲間ですが,一年中葉 じょう りょくじゅ を茂らせる常緑樹です。新 芽や材質が赤いのでこの名 がつけられました。材質は 固く,ささくれにくいため, 木刀を作ります。 ▲アカガシ オオカミノケタケ アカガシの老木には,人 の黒髪に似たものが垂れ下 がっています。長いものは 1 m以上もあります。ホウ ライタケ(キノコ)の一種 で,この森ではよく見かけ ますので,探してみましょ う。 12 ▲オオカミノケタケ ブナとアガリコ ブナは日本中の森で見られ,森 を構成する重要な樹木の一つで, 「森の母」とも呼ばれています。 大木となり,秋には大量の葉を落 らくようじゅ とす落葉樹で,その数は 1 本で数 十万枚ともいわれ,木の下にスポ ンジ状に積もり,地下には 5 トン から 8 トンの水を蓄えることがで ▲ブナ きます。ですからブナの森は土の表面が乾くことがなく,すがす がしく感じられます。 ブナの別名を「シロブナ」とも 呼び,木肌は白くスベスベしてい ますが,ブナの幹にはすき間ない ち い るい きんるい そうるい きょうせいたい ほど地衣類(菌類と藻類の共生体) まだら も よう が付着して幹は斑模様に見えます。 大木なので材木は大量に採れます が腐りやすい欠点があり,材木と しては中級以下です。 ▲ブナとその種子 せんぱくざい 今では工夫して建築材や船舶材, ナメコの栽培にも使われます。 大木となったブナをよく観察し てみてください。たいへん大きな コブが見られます。切り口などが 大きくふくらんだためにできます。 これを「アガリコ」と呼んでいま す。 ▲ブナにできたコブ(アガリコ) 13 観 察 地 1 ⃝ 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス ヒメシャラ 赤くつやのある木肌がめだちま す。スラッと伸びた木の姿がきれ いです。白くて小さいツバキに似 た花が咲き,いい香りがします。 材質も赤く割れにくいために家具 やフローリングに,また皮付きの はこ まま床柱に利用されています。箱 ね 根はヒメシャラの東限です。 ▲ヒメシャラ ミズナラ オオナラとも呼ばれ20mを越え る高木になります。毎年つけるド ングリはリスやイノシシの大好物 です。木材としても優れ,家具や ワインのたる,キノコの原木にな り,炭は「ナラマル」と呼ばれ, パチパチと火花が出ない優良炭で す。 ▲ミズナラ シキミ 森の中に自生する中低木です。 香花(コウバナ)と呼んだほうが なじみがあり,墓地に供えられま あわ す。 3 ∼ 4 月に香りのよい淡い黄 色の花を咲かせ, 9 ∼10月に星の 形をした実をつけ,熟すとさけて 種が飛び出しますが,実は有毒で す。 14 ▲シキミの花と実 ケヤキ よく街路樹として植えられてい ます。原生林でめだつ高木の一つ です。夏はたくさんの葉を茂らせ ますが,秋にはすべて落葉し,林 内は明るくなります。 材質は木目が美しく湿気にも強 いので寺や神社の建築には欠かせ ない優良材です。 ▲ケヤキ イヌガシ カシと名がついていますが,カ シやナラの仲間ではなく,ドング リは作りません。黒く柔らかい実 をつけ,葉は光沢があって,もむ と香りがします。クロモジやクス ノキ,ヤブニッケイの仲間です。 シラキ ▲イヌガシ 林内の沢沿いの少し光の射し込 む所に生える10m以下の低木で, カキの葉に似た葉をつけ,秋には 黄色から赤へと紅葉する美しい木 です。枝や葉を傷つけると白い乳 液を出します。材質が白いことか ら,この名がつきました。 ▲シラキ 15 観 察 地 1 ⃝ 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス マメザクラ ふ じ さん はこ ね 富士山や箱根を中心とした地域 に多く,フジザクラとも呼びます。 全体に小型の樹木で,花は小さく て下を向いて咲きます。 葉の柄に小さいイボのようなも のが左右に一つずつついています。 みつせん これを蜜腺と呼び,サクラの仲間 とくちょう の特徴です。 ▲マメザクラ アオキ 高さ2mくらいの低木で,庭木 としても植えられています。名前 の通り,葉も若枝も濃い緑色をし ています。花は 3 ∼ 5 月ごろに咲 きますが,秋に熟した赤い実が翌 年の 5 月ごろまで残るので,花と 実を同時に観察できます。 ▲アオキの実 ツルシキミ 林内に生えるもっとも小さな木 の一つです。高さ50cmほどで, くき 下の茎が地をはっています。 3 ∼ 5 月ごろに小さな花をたくさん つけ,秋には真っ赤な実を10個ほ どつけているのでめだちます。有 毒な植物なので気をつけましょう。▲ツルシキミ 16 ▲雌花 ▲雄花 タンナサワフタギ 名前のような沢をふさぐような 大きな木にはなりません。木肌は 白くボロボロとして弱々しい感じ がしますが,材は白く固く,ち密 いんかん で,印鑑や床柱として利用されま たん な す。函南地方を「丹那」と呼びま すが,タンナサワフタギの「タン かんこく さいしゅうとう ナ」は韓国の済州島のことです。 ▲タンナサワフタギ アブラチャン かわいらしい名ですね。アブラ ちゅう ごく ご は「油」,チャンは 中 国 語 で「れ せい き 青(油のしぼりかす)」のこと なので,「アブラアブラ」という ことです。 樹皮からも実からも油が採れ, 灯明に使われました。葉は生でも よく燃え,枝は弾力があるので, ▲アブラチャン ものをしばることもできます。 クロモジ 「オーイ,クロモジをくれ」とお すし屋さんなどで今も聞かれます。 この木はよい香りがするので, つまよう じ 皮を付けたままけずって,爪楊枝 にします。今でも高級和菓子につ いています。安い楊枝はシラカバ などを使っています。 ▲クロモジ 17 観 察 地 1 ⃝ 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス ●よく似た仲間の木 ミズキとヤマボウシ この森には同じ仲間のミズキとヤマボウシがあります。よく似 た姿の樹木で見分けにくいのですが,下図を参考によく観察して ください。そのちがいが理解できます。 名前 葉 花 実 ミ ズ キ 柄が長い 中 央 が 花 ヤ マ ボ ウ シ 総包は白い 花弁のよう 柄が短い 木の高さ 用途 食 べ ら れ な い 約 20 メ ー ト ル こ け し ・ げ た 食 べ ら れ る 約 10 メ ー ト ル 庭 木 ・ 器 具 材 イワガラミとツルアジサイ ともによく似たつる植物です。つるから気根を出して高い木に よじ登り,光をたくさん得ようとしますが,決して木の養分を取っ たり,成長をさまたげたりはせず,木と共存共栄しています。ち がいを比べてみましょう。 イワガラミ 飾り花は1枚 若い葉は赤色の はん紋がある 葉のふちの切れ こみがあらい 18 ツルアジサイ 飾り花は4枚 葉のふちの切れ こみは細かい ●カエデの仲間 この森では,カエデの仲間が 7 種類以上観察できます。モミジ と呼んでもまちがいではありませんが,植物名を知るためにはカ エデの仲間と覚えてください。 カエデの仲間は種類が多く,いずれも秋には美しく色づく代表 つい 的な樹木といえます。葉は枝から 2 枚ずつ対になってつき,果実 よく とくちょう は必ずプロペラのような翼があるのが特徴です。カエデ類は紅葉 が美しいばかりではなく,建築材,器具材,工芸品などにもたく さん使われています。イロハモミジは床柱や工芸品。イタヤカエ デからはスキー板,バット,ボウリングのピンを作り,ウリハダ カエデはピアノのけんばんやフローリングの床材として利用され, オオモミジは庭木やぼんさいに,高さも10m以上となり公園樹や 建築材としてたいへん役立っています。 ▲イロハカエデ (イロハモミジ) ▲イタヤカエデ ▲ウリハダカエデ ▲オオモミジ ▲カジカエデ ▲チドリノキ 19 観 察 地 1 ⃝ 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス ●原生林を彩るかわいい草花 かんなみげんせいりん 函南原生林は高い木が生い茂っていて,よく陽の当たる草原は ありません。だから草花たちは,葉と葉の間からちらちら入って くるわずかな陽の光で生活しています。小さくてめだたない花が 多いのはそのためです。 「学習の道」を進みながらよく見ると,足も踏み込めないくらい ぐんせい にタニギキョウやヤマジオウが群生しているのに気づきます。そ してさらに観察すると,林にいろどりをそえているかわいい草花 たちに,たくさん会えることでしょう。 文中の( )は,花が咲いている時期です。 タニギキョウ( 5 ∼ 8 月) ちらちらと陽の光がゆれている 木かげで,緑と白のじゅうたんの ように群生しています。高さ10cm ほどですから, 1 本ではめだちま せんが,たくさんの白い花が咲い ているとみごとです。 ▲タニギキョウ ヤマジオウ( 8 月) うっかりすると見落としそうな 草ですが,うすいピンクの花がと てもきれいです。たくさんの仲間 が集まって生えています。 熱を下げる薬になる「ジオウ」 という草の縮れている葉が似てい ▲ヤマジオウ 20 るので,この名前になりました。 ●スミレの仲間 林内で多く見られるスミレを比べてみましょう。 エイザンスミレ( 4 ∼ 5 月) 日かげが好きです。花が大きく, 葉にギザギザが多くて「スミレか な?」と思うくらいです。 ▲エイザンスミレ ナガバノスミレサイシン ( 3 ∼ 5 月) たいへいようがわ 太平洋側の雪の少ない地方にだ け生えています。全体にスマート な感じです。 ▲ナガバノスミレサイシン シコクスミレ( 4 ∼ 5 月) し こく 四国で最初に発見されました。 おもに太平洋側の山地に見られ, 花はほかの 3 種より小さく,白く ▲シコクスミレ て四角っぽいです。 タチツボスミレ( 2 ∼ 5 月) 日本中,たいていのところで見 くき られます。茎の途中から柄を延ば ▲タチツボスミレ して花をつけます。 ! スミレの仲間のびっくり! へい さ か スミレの仲間には, 「閉鎖花」という種だけの花があり,1 個に50 し ぼう 個前後の種があります。種にアリの好む脂肪があるので,アリが遠 くまで種を運びます。花が終わり秋になると,葉や茎が春の 2 倍く らいに大きくなります。日本ではスミレの仲間は草だけですが,外 国ではスミレの仲間は木のほうが多いです。 21 観 察 地 1 ⃝ ヤマルリソウ( 4 ∼ 5 月) しゃめん 春の林の湿り気の多い斜面に よく咲いています。 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス ワスレナグサの仲間です。株 を作って次々とかわいいルリ色 の花をつけます。それで名前に むらさき ルリが入っていますが紫色や青 やピンクなどの花もあります。 ▲ヤマルリソウ ネコノメソウ( 4 ∼ 5 月) 2 つくっついている実がネコ の目に似ていることから名前が つきました。湿っている所が好 きで,林内でも集まって生えて いることが多いです。 くき 花も葉も茎も実も,同じよう な色です。探してみましょう。 ▲ネコノメソウ ニリンソウ( 4 ∼ 5 月) 春を待っていたように白い花 をいっぱい開きます。ふつうは 2 個の花をつけますが, 1 個の ことも 3 個のこともあります。 根が地下で横に伸びたり,な なめに伸びたりして増えるので, かたまって生えていることが多 ▲ニリンソウ 22 いです。 ハルトラノオ( 4 ∼ 5 月) 真っ直ぐに立った茎の3∼15cm ほ の先に白い穂のような花が咲きま す。それが,トラの尾のように見 えます。 春の早い時期に咲くので,名前 に ハ ル が つ き ま し た。「春 が 来 た!」と知らせてくれる花の一つ です。 ▲ハルトラノオ ウラシマソウ( 3 ∼ 5 月) うらしま た ろう 花の先が,童話の浦島太郎がも っている釣り糸のように見えます。 葉や茎などのしるが体につくと かぶれるので,注意しましょう。 栄養のあるなしでその年によっ て同じ草がメスになったり,オス になったりすることがあります。 ▲ウラシマソウ コチャルメルソウ( 4 ∼ 6 月) 谷に沿って集まって生えていま す。土の中に茎を伸ばして増える からです。小さな花に近づいてよ く見てください。実はたいへん変 ちゅうごく わった形で,中国の楽器のチャル メラに似ています。屋台のラーメ ▲ ン屋さんがふいているラッパです。▲コチャルメルソウ 実 23 観 察 地 1 ⃝ ダイコンソウ( 6 月∼ 8 月) 学習の道に沿って,黄色い花を咲 かせます。根元近くの葉がダイコン 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス の葉に似ています。 花が終わると,トゲがいっぱいあ る丸い実がなります。その実にカギ 形の毛があって,人の衣服や動物の 毛に引っかかって運ばれます。 ▲ダイコンソウ エンレイソウ( 4 ∼ 6 月) ひし形のような大きめの葉 3 枚の 上に 1 ∼ 2 cmの地味な花をつけま す。さみしそうで変わった姿なので すぐ覚えられます。 根が胃の薬になることから「エン レイ(命が延びる)」の名前がつい たと言われています。 ▲エンレイソウ バイケイソウ( 7 ∼ 8 月) 早い春,芽を出す草木も少ない林 の中で,ひときわあざやかな緑色の 大きな新芽を出します。おいしそう ですがシカも食べない毒草です。 夏には,ウメの花に似た小さな くき 白っぽい花をたくさんつけます。茎 ▲バイケイソウ 24 は 1 ∼ 2 m以上にもなる草です。 キッコウハグマ( 9 ∼10月) こう ら キッコウとはカメの甲羅のこと です。つやのある葉をよく見ると カメの甲羅に似ています。 花は,先が5つにさけている小 さな花が3個集まっています。種 はタンポポのように,綿毛をつけ て飛んで行きます。 ▲キッコウハグマ ツルリンドウ( 8 ∼11月) 茎はつるになっています。小型 のリンドウみたいな花が咲きます。 か 木の葉が散ってほかの草花が枯れ あかむらさき たころ,ハッと目を引く赤紫色の はでな実をつけます。 花と実が同時に見られることも あります。 ▲ツルリンドウ ! タンポポQ&A Q:タンポポの花は,原生林の中で,見つかるでしょうか? A:タンポポの花は原生林の中ではほとんど見られません。原生林 は葉が茂っていますので,日の光は緑の葉を通って地面に届きます。 タンポポの仲間は,緑の葉を通った光では成長できません。ですか ら,たとえ強い生命力を持っているセイヨウタンポポでも,原生林 の中で花を咲かせることはむずかしいのです。 25 観 察 地 1 ⃝ 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス ●昆虫・鳥以外の小動物 せきつい この森の中には,ウサギ,ネズミ,ヘビ,カエルのような脊椎 どうぶつ こんちゅう 動物の仲間と,カニ,貝,昆虫,クモのような脊椎(背骨)をも む せきついどうぶつ たない無脊椎動物の仲間の小さな動物たちが住んでいます。 カナヘビの仲間 脊椎動物でヘビやカメな どのは虫類でトカゲに似て います。原生の森の明るい と こ ろ な ど に 住 み,長 い シッポを使ってあぶなっか しいところなどもすばやく 動き回って虫などを捕らえ て食べています。 ▲ニホンカナヘビ アズマヒキガエル 脊椎動物でイモリなどと同じ りょうせいるい 両生類です。春早く水たまりな どに卵を産みます。オタマジャ クシから成長したカエルは,水 を離れて暗い森の中の湿った場 所などに住み,動く虫やミミズ などを長い舌ですばやく捕らえ て食べています。 ▲アズマヒキガエル ! 毒ヘビに注意! 森の中などに入るときは,マムシ,ヤマカガシなどの毒ヘビにかま れないように注意しよう! 26 キセルガイの仲間 無脊椎動物でタコや貝を含む なんたいどうぶつ 軟体動物の仲間です。陸に住む めずらしい巻き貝の一つで,形 がタバコを吸う道具のキセルに 似ているのでついた名前です。 木の穴の中,木のかげなどの暗 いところに生息しています。 ▲ヒカリギセル サワガニ 無脊椎動物でエビやカニを含 こうかくるい む甲殻類の一つです。谷川の流 れなどに住んでいますが,森の 中の湿った場所にもよく現れま す。ハサミで小さな虫などを捕 らえて食べています。 ▲サワガニ ザトウムシの仲間 無脊椎動物で 8 本の足をもつ クモに近い仲間ですが,クモの ように胸と腹の間は細くくびれ ていません。長くて細い足のう もうもく ち,前から 2 番目の足を,盲目 の人(ザトウ)が頼りにして歩 くつえのように動かしながら歩 くことからついた名前です。 メクラグモともいいます。 ▲ナミザトウムシ 27 観 察 地 1 ⃝ 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス ●「原生林」の昆虫 かんなみげんせいりん 函南原生林は禁伐林として扱われてきたため,ブナ,アカガシ うす などの大木が頭上をおおっていて,林の中は昼間でも薄暗くなっ こんちゅうるい ています。昆虫類を見つけるのはむずかしいのですが,昆虫が住 かんきょう む環境を覚えれば,いろいろな昆虫を見ることができます。 キマワリ こうちゅう くち木や葉などの上には甲虫の仲 間が見つかります。とくに湿ったく ち木は,ある種の甲虫にとってエサ であり,また,かくれ家にもなって います。キマワリはそのような場所 にいる甲虫です。光沢のある黒色ま せきどうしょく たは赤銅色の体に長い足をもってい て,名前の通り木の幹を盛んに歩き ▲キマワリ 回っています。 オサムシの仲間 後ろ羽が退化して飛べない甲虫で しずおか す。住む場所で変化が大きく,静岡 けん 県に住むアオオサムシは名前とはち がって赤い銅色でシズオカオサムシ という別名をもっています。このほ か数種のオサムシが見られますが, いずれも夜に活動します。 まん が か て づかおさ む 漫画家の手塚治虫さんはオサムシ が好きで, 「治虫」というペンネー ムをこの虫からつけたことでも有名 です。 28 ▲アオオサムシ キリシマミドリシジミ 函南原生林を代表する樹木アカガ シの新芽を幼虫が食べて育つチョウ です。オスは緑がかった金色の輝く 表と銀色の裏の羽をもつ小型のチョ ウで, 7 月の終わりごろ林の上部を 飛んでいます。メスは10月ごろまで 生きて,アカガシやアラカシなどの 冬芽の脇に卵を産んでいきます。 ヒカゲチョウの仲間 ▲キリシマミドリシジミ ヒカゲチョウの仲間は,幼虫がサ サ類を食べること,暗いところにい るなど生活が似ているため,函南原 生林の中では比較的よく目にする チョウです。ヒカゲチョウ,クロヒ カゲ,ヒメキマダラヒカゲ,ヤマキ マダラヒカゲがいます。いずれの種 も目玉模様が羽の裏側についた茶色 ▲ヒカゲチョウ 系の地味なチョウですが,青い金属 光沢のリング状模様が目玉の周りに あり,よく見るととてもきれいです。 この仲間の前足は退化していて, 足が 4 本しかないように見えます。 ヒメキマダラヒカゲは花に集まりま すが,ほかは樹液や動物の死がいに きています。 ▲クロヒカゲ 29 観 察 地 1 ⃝ 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス ●原生林と原生の森の野鳥 原生の森の池とその周辺には,ハクセキレイ,キセキレイ,セ こずえ グロセキレイ,梢にはホオジロ,早春にはカルガモ,夏にはツバ メがいます。ツバメが水面すれすれに飛びながら水を飲むところ を見ることができます。 かんなみ 池から函南原生林へ向かう途中の林では鳥の鳴き声を多く聞け じょう りょくじゅ るところです。常緑樹が多いせいか,冬でも葉が多く,木が高い ため,鳥の姿を見つけにくいかもしれません。アオゲラがくちば か しで枯れ木をたたく音(ドラミング)を聞くこともできます。朝 晩には,トラツグミの「チィーン」とか,「ヒーイー,ヒョー」 という鳴き声を聞くことができます。また,遠くの方からアオバ トの「オーアオー,オーアオー」という鳴き声も聞こえてきます。 ここで紹介する以外にも,メジロ,ヤマガラ,エナガ,キジバ ト,カケス,アカハラ,ホトトギス,キビタキ,ヤブサメ,ミソ サザイ,イカル,ツグミ,アオジなどの声も聞けます。最近は夏 にはサンコウチョウ,ヨタカの声はめったに聞けません。 セグロセキレイ(通年) 頭から胸,体の上面は黒く, まゆ 眉の上,くちばしの上下と腹 は白色。 「ジジッ,ジジッ」 とにごった声で鳴きます。 なわ張り性が強く,車のフ ェンダーミラーに写った自分 の姿を攻撃することもありま ▲セグロセキレイ(全長21cm) 30 す。 アオゲラ(通年) 顔から首は灰色,頭とほほは おうりょく しょく 赤く,背中は黄緑色で腹部に黒 い横じま模様があります。 「キョ ッ,キョッ」,「ケレケレケレ」, 春には「ピョー,ピョー,ピョ ー」と鳴きます。学習の道と原 ぶん き てん 生の森の分岐点あたりでよく観 察できます。 ▲アオゲラ(全長29cm) コゲラ(通年) 「ギィー,ギィー」という戸が きしむような音で,いることに 気づきます。頭上から体の上面 くろかっしょく つばさ は黒褐色で,背と翼には白い横 じまがあり,体の下面はうすい わきばら 灰色で,脇腹に褐色のたてじま があります。 ▲コゲラ(全長15cm) ウグイス(通年) ささ 笹やぶか小枝が密生している 所にいて,見つけにくいです。 「ホーホケキョ」と鳴き,春を 告げます。 「ケッキョ,ケッキョ, ……」という谷渡りの声も出し ます。冬でもやぶの中で, 「チャ ッ,チャッ」と鳴きます。 ▲ウグイス(全長雄16cm,雌13cm) 31 観 察 地 1 ⃝ クロツグミ( 4 ∼10月) もっともすばらしい森林の歌 い手。「キッコ,コッキィーョ, 原 生 林 ︵ 学 習 の 道 ︶ コ ー ス コッキーョ,ケコケコ,チョコ」 などとオスはさえずります。 けしずみいろ オスは消炭色で,くちばしと 目の周りは黄色,腹は白くて黒 さんかくはん の三角斑がたてに並んでいます。 ▲クロツグミ(全長22cm) シジュウカラ(通年) スズメくらいの大きさで,白 いほほ,胸から腹に黒いネクタ とくちょう イが特徴です。さえずりは「ツ ツピー,ツツピー」とくり返し ます。秋冬には,ヒガラ,エナ ガ,メジロ,コゲラなどと群れ を作り,えさをとりながら,林 ▲シジュウカラ(全長14cm) を渡って行きます。 コガラ(通年) 黒いベレー帽をかぶった小鳥。 つばさ かっしょく み はいいろ 背と翼は褐色味のある灰色。の どは黒く,ほほから胸と腹は白 わき はい かっ しょく くて,脇 は 灰 褐 色。「フチィー フチィーフチィー」とか, 「ピッ ピィーピ」とか, 「ピッピィーピ」 とさえずります。 ▲コガラ(全長12cm) 32 ホオジロ(通年) こずえ 池の周辺の木の梢などめだつ ところで,細い声で早口に「チ ョッピーチリーチョーツク」な どとさえずります。「チチッ, チチッ」とも鳴きます。下面と こし あかちゃいろ 腰の赤茶色,顔の黒白模様が特 徴です。 ▲ホオジロ(全長16cm) ルリビタキ(11∼ 4 月) 「ヒッ,ヒッ」とか「グワッ, グワッ」という鳴き声で林内に いることに気づきます。オスは わきばら 背中がルリ色,脇腹がだいだい 色をしてます。枝に止まり尾を 振ります。メスは背中がオリー ブ褐色です。 ▲ルリビタキ(全長14cm) ヒヨドリ(通年) みつ ツバキの蜜と木の実を好み, 全身が灰褐色で,ほほが茶褐色 の中形の鳥です。「ピーヨ,ピ ーヨ」とよく鳴くので,ヒヨド リという名前がつけられたとい かんなみげんせいりん われます。函南原生林に来ると, いつも鳴き声が聞こえます。 ▲ヒヨドリ(全長27cm) 33 観察地 2 観 察 地 2 ⃝ 原 生 の 森 コ ー ス 原生の森コース 山中城跡へ N 函南原生林へ 木立キャンプ場 函南駅へ 車 止 め 案内板 林 道 管 理 道 遊 歩 道 紫水の池 遊歩道 芝生広場 展パ 望ノ 台ラ マ P JR函南駅へ 約8km 0 100m ▲ヤマボウシ 34 管 理 棟 W.C. 500m ▲パノラマ展望台からの富士山 ●コースの案内 かんなみげんせいりん らいこうがわ 「原生の森公園」は函南原生林の南西,来光川の源流部に位置す る自然公園です。国土保全・保健休養の場として整備されたもの し すい あずま や で,調整地の機能をもつ「紫水の池」を中心に,東屋,トイレな こうようじゅ どの公園施設が整備され,従来からあったヒノキや広葉樹のほか にヒメシャラ,ケヤキ,アラカシ,マメザクラ,ヤマツツジなど 約90種の花木が植えられ,その中を遊歩道がめぐり,四季折々の 花が観察できます。「紫水の池」や沢では魚類の姿も見られます。 はこ ね やません しば ふ 林道箱根山線をはさんで「紫水の池」の反対側には 3 か所の芝生 ひろ ば 広場があり,その周囲はせまいながら草原になっています。この こんちゅう ような明るい場所ではチョウ,トンボなどの昆虫の活動を目にす ることができます。この公園は函南原生林に接していることから, 小動物や鳥類などを観察することもできます。 函南原生林への起点であると同時に,手軽な自然観察のコース になっています。 ▲駐車場から見た「紫水の池」周辺 35 観 察 地 2 ⃝ 原 生 の 森 コ ー ス ●春の植物 コブシ 葉を広げる前に白い花を枝先に らくようじゅ つける落葉樹です。早春の山野で はよくめだちます。秋にはにぎり こぶしのようなゴツゴツした実を つけることから,この名がつけら れています。実は熟すると,皮が さけて赤色の種を白い糸でつりさ ▲コブシ げます。 ヤマブキ 4 月ごろ,根元から群がって生 くき えるしなやかな細い茎に,あざや こ がねいろ かな黄金色の花を咲かせます。黄 金色のことを「ヤマブキ色」とい うくらいです。花弁は 5 枚の直径 や え ざ 3 ∼ 5 cmほどの花ですが,八重咲 きもあります。函南原生林に接す ▲ヤマブキ わき る遊歩道脇に植えられています。 メタセコイア ちゅうごく 中国で発見され,生きている化 しんようじゅ 石として有名な針葉樹です。公園 などによく植えられています。カ ラマツとともに冬に葉を落とす針 葉樹の一つで,春の新緑とともに, 秋の紅葉もみごとです。クシ歯状 とくちょう のうすい葉が特徴です。 36 ▲メタセコイア スミレ 地上部に茎をもたないスミレで, むらさき 花は濃い紫色です。葉はヘラのよう ようへい よく な形で葉柄に翼をもっています。コ ンクリートのすき間にも生える強い 草ですが,周りに背の低い草が生え てくると消えてしまいます。公園内 では,遊歩道の脇や芝生広場の中で 見ることができます。 ▲スミレ タンポポ しゃめん 駐車場横の斜面を黄色に染めてい るのは,おなじみのタンポポです。 昔から日本にある種類と外来種とが ありますが,公園で見られるのは, ▲タンポポ がく 萼が反り返っている外来種のセイヨ ウタンポポです。花は小さな花が集 まったものです。虫メガネを使って 観察してみましょう。 ▲在来種 ▲外来種 ホオノキ 高さ20mを超す大木になる落葉樹 です。長さ20∼30cmの長だ円形の大 きな葉が枝先に集まっているのが特 徴です。 5 月ごろ,枝先に 6 ∼ 9 枚の花弁 をもつ直径15cmほどの大きな花を つけるのですが,葉がじゃまをして, よく見えません。 ▲ホオノキ 37 観 察 地 2 ⃝ 原 生 の 森 コ ー ス ●夏・秋の植物 マツムシソウ( 9 ∼10月) あおむらさきいろ とうじょう か 夏から秋に淡い青紫色の頭状花 くき を茎のいただきにつけます。外側 ぜつじょう つつじょう につく舌状の花と内側につく筒状 の小さな花とでできています。茎 たい せい は60∼90cmで 対 生 して枝分かれ し,葉も対生で羽状に分かれてい しば ふ ひろ ば しゅうへん ます。公園南側の芝生広場周辺に 見られます。 ▲マツムシソウ ヤマラッキョウ( 9 ∼11月) 秋になると細長い葉の間から30 か けい ∼40cmの花茎を出し,その先に数 あかむらさきいろ 十個の赤紫色の花をつけます。花 には短い柄があり,半ば開き,お しべは花びらよりも長く突き出し ています。公園南側の芝生広場周 しゃめん 辺の斜面に見られます。 ▲ヤマラッキョウ オトコエシ( 8 ∼10月) 山野によく生えている 1 mくら いの多年草で,全体に白い毛が生 えています。根元から地面に沿っ て伸びる枝を出して繁殖します。 花は対生で切り込みが深く,茎は 上部で多数に枝分かれし, 8 ∼10 月に白い花をつけます。実にうち ほう わのような包があります。 38 ▲オトコエシ ミゾホウズキ( 6 ∼ 8 月) 谷川のほとりや湿地に生えるやわ らかい草で無毛です。茎は四角で根 なな 元から枝分かれし斜めに立ち上がり わき ます。 6 ∼ 8 月に上部の葉の脇に黄 がく 色の葉をつけます。萼は筒状で花の しんけい し 先は5つにさけ,やや唇形です。紫 すい 水の池東側の沢沿いに見られます。 コムラサキ( 6 ∼ 7 月) ▲ミゾホウズキ らくようていぼく 湿地を好む落葉低木の園芸種で枝 た は弓なりに垂れることが多いです。 初夏に葉の付け根より少し上がった あわ ところから出る柄に,淡い紫色の小 さな花が集まってつきます。実は秋 になると美しい赤紫色になります。 芝生広場周辺に植えられています。 函南原生林のものは白い実をつける 種類がほとんどです。 ▲コムラサキ オニドコロ( 7 ∼ 8 月) ご せい つる性の多年草で,葉は互生,先 のとがった丸いハート型をしていま おうりょく しょく す。花は黄緑色で茎は右巻きです。 よく似ているヤマノイモは,葉が 対生で,細長いハート形で,柄の元 にムカゴがつきます。花は白く茎は 左巻きで,根は食用になります。 ▲オニドコロ 39 観 察 地 2 ⃝ 原 生 の 森 コ ー ス ●「原生の森」の昆虫 こんちゅう 人の手が加わった公園なので,町中でも見られる昆虫と山の昆 し すい 虫の両方を見ることができます。紫水の池周辺では,トンボの姿 こうちゅう が多く,草木の花にはチョウをはじめ,ハチや甲虫の仲間が食事 に来ています。地面を歩き回っている昆虫もいます。まだほ装し ていない遊歩道は,これらの昆虫のよい観察場所です。 トンボ 群れを作って止まることなく飛 うす き いろ び回っている薄黄色のトンボは, ウスバキトンボです。このトンボ は大陸方面から春に飛んできて分 布を広げています。ほかにナツア カネ,コノシメトンボ,シオカラ トンボ,オニヤンマなどのトンボ が見られます。ナツアカネとアキ アカネはよく似ていますが,胸の 模様で区別できます。 ▲ナツアカネ(夏ごろ) マルハナバチ 黄色と黒のしま模様をもつ,ず んぐりとしたハチで,体は毛でお おわれ,まるでぬいぐるみのよう です。花から花へせわしなく移動 して,幼虫のエサになる花粉を集 めています。このことを利用して, この仲間のハチが温室のトマトを 受粉させるため,昆虫の性質が応 用されています。 40 ▲アザミに来たトラマルハナバチ ヤマトシジミ 青い羽をもつ小さなチョウが地面 近くを飛び回ります。ヤマトシジミ のオスです。もっとも普通に見るこ とができるチョウの一つで,幼虫の エサとなるカタバミがあれば,都会 の中でも見ることができます。メス は黒い羽をしています。カタバミの みつ 花で蜜を吸っています。 ▲ヤマトシジミ ジャノメチョウ しば ふ ひろ ば 夏,芝生広場の中をゆっくりと飛 び,草むらに忍び込むように止まる 黒いチョウが見られます。羽に目玉 じゃ 模様があるジャノメ(蛇の目)チョ ウです。 ススキの生える明るい草原に住み, メスは大型で色が薄く,オスとは簡 単に区別できます。 ▲ジャノメチョウ ●甲虫 夏から秋にかけて,花の上に小型 のカミキリムシがいます。アカハナ カミキリ,ヨツスジハナカミキリな どハナカミキリの仲間が食事に来て いるのです。色,模様ともに変化に 富んだ種類が多くいます。近づいて も逃げないので,花の上にいるよう すをゆっくり観察できます。 ▲アカハナカミキリ 41 観察地 3 観 察 地 3 ⃝ キ ャ ン プ 場 コ ー ス キャンプ場コース えん提 N 原生の森へ3km 山中城跡へ 町営木立キャンプ場 管理棟 炊飯棟 W.C. 観音滝 P 逆川 来 光 川 J R 函 約南 6.3 駅 km へ 0 水道タンク 100m 300m ▲キャンプ場の管理棟 42 ●函南町立木立キャンプ場 かんなみげんせいりん らいこうがわ 函南原生林の西,来光川のほ こ だち とりにある木立キャンプ場は, ヒノキやスギの人工林に囲まれ, 本来の自然にはとぼしいものの, 付近には四季を通じて多くの野 の草花が,訪れる人たちの目を 楽しませてくれます。 収容人員は160名,30区画のテ ▲キャンプ場 ントサイトと,管理棟,炊飯棟,トイレ棟,各 1 か所のほか,キ ャンプファイヤー広場,炊事広場,駐車場(15台)からなる町営 かんのんだき キャンプ場です。近くには「原生の森」「原生林」「観音滝」があ り,自然観察をかねたトレッキングが楽しめます。 *開設期間:4/20∼10/31(要予約) た がたぐんかんなみちょうかみざわ *申込み,問い合わせ:〒419-0122 田方郡函南町上沢81 函南町教育委員会社会教育課(中央公民館内) (0559-79-1733 ●観音滝 キャンプ場の下流300mほどのと ころにある滝,水量は多くないが, 一年中絶えることなく,一部,簡易 水道の水源として飲料水に利用され ています。 昔はこの辺りが原生林の入口で, 滝の上には胸の高さの幹の周りが 456cmのケヤキや,318cmのウラジ ロガシなどの巨木のほか,周辺には シダ植物の種類が豊富です。 ▲観音滝 43 観 察 地 3 ⃝ キ ャ ン プ 場 コ ー ス ●付近の植物 ヘクソカズラ( 8∼ 9 月) 林のふちなどに生える多年草のつ くき あく る植物です。茎は左巻き,全体に悪 しゅう 臭があります。 たいせい 葉は対生,葉柄の基部には左右の たくよう 托葉が合わさってできた三角形の合 つつがた 成托葉があります。花は筒形で先が 5 つにさけていて,筒中は暗紅色で 外は白く美しいです。 ▲ヘクソカズラ ヤブヘビイチゴ( 4 ∼ 5 月) ヘビイチゴの実は表面がでこぼ おうりょく しょく こしており,葉は黄緑色でつやが なく,日なたに生えますが,ヤブ ヘビイチゴの実は表面がなめらか で,葉は濃い緑色でつやがあり, やぶの中や林のふちなどのやや日 かげに生えています。 ▲ヤブヘビイチゴ クサギ( 7 ∼ 8 月) 山野に生える小低木。葉は長い柄 らんけい があって対生し,三角状卵形の葉, ふちはなめらかで,短い毛が密生し, 悪臭があります。花は白く,長い筒 部の先は 5 つにさけて開き,よい香 りがします。果実は丸く青色でつや あかむらさきいろ がく があり,星形の赤紫色の萼が残って いてたいへん美しいです。 44 ▲クサギ アケボノソウ( 9 ∼10月) 山野の湿地に生える 1 ∼ 2 年草で す。茎は高さ60∼90cm,枝別れが多 いです。茎は対生し, 3 本の脈がめ だちます。 花は白く,径 2 cmの筒状で,基部 まで深く 5 つにさけてたくさんの黒 あわ はんもん 点があり, 2 個の淡い緑色の斑紋は ▲アケボノソウ みつを分泌します。 マツカゼソウ( 8 ∼10月) 野山の木かげに生える多年草で, とうらんけい 葉は倒卵形の小葉が集まってでき ており,透かして見ると半透明の 油点が見られます。 花は白色で径 5 mmほどの小花 ほ じょう が穂状に集まって咲きます。花弁 がくへん 4 ,萼片 4 ,おしべ 7 ∼ 8 本,め しべ 1 本です。 ▲マツカゼソウ ゲンノショウコ( 7 ∼10月) 草原や道端に生える多年草です。 茎は地上をはい,葉は手のひら状 に 3 ∼ 5 に深く切れ込み,長い柄 たん があって対生します。花は白,淡 こうしょく こう し しょく 紅色,紅紫色など地域変異があり, この辺りでは白色が普通です。花 径15mmくらいで花弁 5 ,萼片 5 , ▲ゲンノショウコ おしべ10本,めしべ 1 本です。 45 観 察 地 3 ⃝ キ ャ ン プ 場 コ ー ス ノササゲ( 7 ∼10月) 林のふちなどに生える多年草 のつる植物です。葉は 3 枚の小 くき 葉からなり,茎とともに無毛で, たん おう しょく 花径18mm前後で 淡 黄 色 です。 がくへん ほかのマメ科植物の萼片にはギ ザギザがありますが,これはす っぱり切ったような形なのでひ と目で区別できます。 ▲ノササゲ センニンソウ( 7 ∼10月) 林のふちなどに見られる多年 草のつる植物です。葉は 3 ∼ 7 たいせい 枚の小葉からなり対生で,花は 円すい形に集まって白い花を多 数つけます。花弁はなく,花弁 のように見えるのは萼片で 4 , おしべ,めしべとも多数です。 ▲センニンソウ ミズヒキ( 8 ∼10月) やぶかげに生える多年草です。 長さ 5 ∼15cmのだ円形の葉で, はん その上面には黒いハの字形の斑 もん 紋があります。花は花弁がなく, 深く 4 つに割れた萼片がまばら ほ じょう な穂状につき,花の上面が赤く, 下面が白いので,のし袋の紅白 みずひき の水引に見立てて名前がつけら れました。 46 ▲ミズヒキ ●観音滝周辺のシダ植物 ▲クリハラン ▲クラマゴケ ▲マメヅタ ▲ジュウモンジシダ ▲イワガネゼンマイ ▲キヨタキシダ ▲リョウメンシダ ▲イブキシダ ▲キヨスミヒメワラビ 47 MEMO 48 富士山憲章 (平成10年11月18日制定) (行動規範) めぐ 富士山の自然を学び,親しみ,豊かな恵みに感謝しよう。 はぐく 富士山の美しい自然を大切に守り,豊かな文化を育もう。 かんきょう ふ か きょうせい はか 富士山の自然環境への負荷を減らし,人との共生を図ろう。 富士山の環境保全のために,一人ひとりが積極的に行動しよう。 けいしょう 富士山の自然,景観,歴史・文化を後世に末長く継承しよう。 静岡県・山梨県 ◇著 者 (この本をつくった先生がた) 大嶋 章(長泉町) 鈴木 昭紀(三島市) 大嶋よし子(長泉町) 谷川 久男(三島市) 岡本 由美(裾野市) 花野井忠司(三島市) 川添 雅則(三島市) 真辺征一郎(清水町) 杉本 文雄(韮山町) 湊 清(三島市) ◇写真協力 富永 保 静 岡 県 自 然 観 察 ガ イ ド ブ ッ ク 2 ⃝ 『静岡県自然観察ガイドブック』シリーズ 好評発売中 1 引佐渋川 1 3 安倍峠 ⃝ ⃝ 2 1 4 寸又峡 ⃝ 浜北森林公園 ⃝ 3 天城峠とその周辺 1 5 水窪自然林 ⃝ ⃝ 4 大井川河口 1 6 愛鷹山麓とその周辺 ⃝ ⃝ 5 佐鳴湖 1 7 西伊豆の自然 ⃝ ⃝ 6 城ヶ崎海岸 ⃝ 7 丸火自然公園 ⃝ 1 8 ⃝ 桶ヶ谷沼 1 9 ⃝ 小笠山 8 県民の森 ⃝ 2 0 ⃝ 三保と久能山 9 岩岳山 ⃝ 1 0 日本平 ⃝ 2 1 ⃝ 函南原生林 1 1 ⃝ 伊豆須崎 1 2 ⃝ 御前崎海岸 ※この本は古紙100%配合の 再生紙を使用しています。 自然観察ガイドブック7 函南原生林 函 南 原 生 林 表紙写真:大ブナ 定価300円 (本体286円+税) 企画編集/静岡県 〒420-8601 静岡市追手町9-6 環境部自然ふれあい室 Tel 054-221-2849 (自然ふれあい係) (社) 静岡県出版文化会 〒420-0856 静岡市駿府町1-12 県教育会館2F Tel 054-255-4451 FAX 054-254-5779 著 作/大嶋 章 鈴木 昭紀 大嶋よし子 谷川 久男 岡本 由美 花野井忠司 川添 雅則 真辺征一郎 杉本 文雄 湊 清 制作発行/ (株) 静岡教育出版社 〒422-8006 静岡市曲金5-5-38 Tel 054-281-8870 FAX 054-286-6590 0103