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北里大学の沿革 - 学校法人北里研究所

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北里大学の沿革 - 学校法人北里研究所
序章 2 北里大学の沿革
北里大学の沿革
【学祖北里柴三郎の事績】
北里大学の設置者・学校法人北里学園は,昭和 37(1962)年,学祖北里柴三郎博士の創
設による社団法人北里研究所の創立 50 周年記念事業の一つとして,東京都港区白金の地に
設立された。
本学が学祖にいただく北里柴三郎は,明治 19(1886)年より,ドイツのローベルト・コ
ッホ博士に師事して多くの貴重な研究業績を挙げ,とりわけ破傷風菌純粋培養法と破傷風
菌抗毒素の発見は前人未踏のもので,世界の医学界を驚嘆させた。明治 25(1892)年に帰
国,福沢諭吉の援助により芝公園にわが国最初の私立伝染病研究所を創設し,同所が明治
32(1899)年内務省に移管後も所長として活躍した。この間,香港に流行したペストの調
査に出張して短時日でペスト菌を発見した。
北里は,かねがね伝染病の研究は,衛生行政と表裏一体でなければならず,国立伝染病
研究所は内務省所管であるべきであるとの信念をもって伝染病の研究所の運営にあたった。
しかし,大正 3(1914)年,国立伝染病研究所は突如文部省に移管され,北里は素志に反
する政府のやり方を承服できず,所長を辞して直ちに私立北里研究所を設立した。大正 6
(1917)年,福沢諭吉の恩義に報いるために慶應義塾大学医学部を創設し,医学部長とし
て,また顧問として終生その発展に尽力した。また,日本医師会長を始め多くの医学団体
の要職に就き,わが国の公衆衛生とくに結核の予防のほか,医学研究,医学教育の発展と
後継者育成,医事行政に大きな足跡をのこした。
北里の遺志は,その後,北里研究所に集う北島多一,志賀潔,秦佐八郎,野口英世らの
門下生に脈々と受け継がれ,門下生もまた細菌学,免疫学,血清療法,化学療法等の医学
研究と感染症を中心とする疾病の診断・治療・予防にめざましい功績をあげた。
【大学創設・建学の精神】
戦後の復興から立ち直り高度経済成長期を迎えた昭和 30∼40 年代の,発展著しいわが国
は,産業・経済・文化等の社会の各層で大学教育を受けた専門的人材への要請が急速に高
まっていた。とくに医学,薬学,農学等の生命科学領域においては,分子生物学が勃興し
長足の進歩を遂げつつあり,生命科学領域の研究,教育,開発,応用,普及に関わる人材
養成は急務とされていた。
学祖の旺盛なフロンティアスピリットと真理探求へのあくなき姿勢を真髄とし,医学・
生命科学領域の後継者の育成を目的とする北里大学は,
前述の時代背景の下,
昭和 37
(1962)
年に,社団法人北里研究所の特色を受け継ぎ,衛生学,微生物学,病理学など基礎医学領
域と一般化学とを包含する衛生学部(化学科・衛生技術学科)一学部をもって白金キャン
パスに開設した。
建学の精神は,学祖が生涯を通して顕現した言行である,
「開拓」
「報恩」
「叡智と実践」
「不撓不屈」としており,我々はこれらを「北里精神」と呼んでいる。北里精神のなかで
序章 3
序章 2 北里大学の沿革
も,学んで得た知識と技術を実践の場に活かし社会に還元するとの「叡智と実践」は,本
学に集うものすべてが,実学教育の実践とサイエンスの追求という形でその理念を共有し,
日々の教育・学習,研究,診療,社会連携等に込めている。
平成 20(2008)年に旧学校法人北里学園と旧社団法人北里研究所は統合し,学校法人北
里研究所として新たな歩みを刻み始めた。
北里大学は現在,薬学部,獣医学部,医学部,海洋生命科学部,看護学部,理学部,医
療衛生学部の 7 学部と全学の一般教育を担当する一般教育部を有する。大学院研究科は,
薬学研究科,獣医畜産学研究科,医療系研究科,水産学研究科,看護学研究科,理学研究
科の 6 研究科と独立大学院である感染制御科学府からなる。
大学附属病院は北里大学病院,
北里大学東病院,北里研究所病院,北里研究所メディカルセンター病院の 4 病院である。
大学附置研究所は生命科学研究所,東洋医学総合研究所,臨床薬理研究所,基礎研究所の 4
研究所と法人に付設される生物製剤研究所である。附属施設としては,大学図書館,健康
管理センター,高等教育開発センター,看護キャリア開発・研究センターを併設する。こ
のほか法人の下に,北里大学保健衛生専門学院,北里大学看護専門学校の 2 専修学校を設
置する。
キャンパスは,法人・大学の所在地である白金キャンパス(東京都港区)を始め,相模
原キャンパス(神奈川県相模原市)
,十和田キャンパス(青森県十和田市),三陸キャンパ
ス(岩手県大船渡市)
,新潟キャンパス(新潟県南魚沼市),北本キャンパス(埼玉県北本
市)の 6 箇所に展開する。
学生数は 9,130 名(大学 8,056 名,専門学校 1,074 名)
,教職員数は 5,694 名である。大
学は卒業生 55,836 名,専門学校は卒業生 14,836 名を輩出しており,卒業生は実社会の様々
な分野で活躍している。
本学は創設以来 46 年を数える。大学の発展の歴史は,創設期から次々と 5 学部を開設し
教育・研究の対象領域を拡大した約 20 年間の第一期,教育・研究・診療の充実に努め運営
体制を整備した後に,高度な教育・研究の展開を期して大学院の開設を始め学部の改組転
換を進めた約 25 年間の第二期に大きく分けられる。この経過は以下に記す。法人統合を節
目として,本学は第三期に入った。平成 24(2012)年には大学は半世紀を,旧社団法人は
一世紀を経て一つの節目を迎えることとなる。本学に与えられた社会的使命を達成するた
めに,これまでの歩みを検証し新たな発展に向けた将来構想を確立する「将来構想検討委
員会」を設置し,新たな第一歩を踏み出したところである。
【第一期】昭和 37(1962)年∼昭和 56(1981)年
■大学学部
昭和 37(1962)年,本学が「基礎医学・化学領域の研究者・医療技術者の養成」を目的
とする衛生学部(化学科・衛生技術学科)一学部をもって白金キャンパスに発足したこと
は先に述べた。衛生学部は,その後相模原キャンパスに移転し,昭和 43(1968)年に産業
序章 4
序章 2 北里大学の沿革
衛生学科を,昭和 63(1988)年に生物科学科を増設し 4 学科となる。平成 6(1994)年,
学部を分けて理学部と医療衛生学部に発展的に改組する。
昭和 39(1964)年,
「質の高い薬剤師ならびに優秀な研究者・技術者の養成」を目的と
する薬学部(薬学科)を白金キャンパスに開設した。薬学部は翌年,製薬学科を加え,現
在の学部の礎を築くにいたる。平成 18(2006)年,薬学教育 6 年制の移行に伴い,薬学科
(6 年制)
・薬科学科(4 年制)に改組する。
昭和 41(1966)年,
「畜産振興による国民の食と健康の増進の一翼を担う畜産学技術者・
研究者,獣医師・獣医学研究者の養成」を目的とする,畜産学部(獣医学科・畜産学科)
を十和田キャンパスに開設した。畜産学部は,畜産土木工学科を昭和 56(1981)年に増設,
獣医学科 6 年制の移行や学部名変更(昭和 53(1978)年)
,学部改組(平成 19(2007)年)
を経て現在の獣医学部(獣医学科・動物資源科学科・生物環境科学科)に発展している。
医学部の開設を通してわが国の医学・医療を担う後継者を育成することは,社団法人北
里研究所の創設以来,本学の社会的使命を達成する上で大きな目標とされてきた。その医
育機関である医学部(医学科)は昭和 45(1970)年,相模原キャンパスに開設した。医学
部は,
「人間性豊かで,優れた医師の養成」
「学際領域を含む医学研究の推進」
「国際貢献の
推進と地域医療への協力」
「予防医学の推進」を理念とし教育・研究・診療を展開している。
医学生の臨床教育とともにコメディカルの臨床実習(臨地実習)を担い,高度先進医療
機関としてまた地域医療の中核病院として「患者中心の医療」
「共に創りだす医療」を理念
にいだく北里大学病院は,昭和 46(1971)年,医学部の隣に開設した。現在標榜科は 24
科,病床数は 1,033 床である。
本学学生を始め,他の医療系大学・専門学校からも多数の実習生を受け入れ,教育病院
としての役割を果している。広域・市域の高度医療を担う中核的な医療機関としても不可
欠の存在となっている。
昭和 47(1972)年,200 海里漁業規制や水産資源減少を背景として水産業が採る漁業か
ら栽培する漁業へと転換する中,
「水産増養殖技術と水産物の利用に関わる技術者・研究者
の養成」を目的とする,水産学部(水産増殖学科・水産食品学科)を三陸キャンパスに開
設した。水産学部は平成 12(2000)年,二学科を統合し水産生物科学科一学科に改組,さ
らに平成 20(2008)年,学部学科名を海洋生命科学部(海洋生命科学科)に変更した。
5 学部 1 大学病院を擁するまでになった大学は,昭和 48(1973)年,
(財)大学基準協会
の加盟判定審査を受け,4 月より正会員となった。
■大学院研究科
大学院研究科は,学部を基礎とする 5 研究科が開設した。衛生学研究科(昭和 42(1967)
年)
,薬学研究科(昭和 43(1968)年)
,畜産学研究科(昭和 45(1970)年)
,医学研究科
(昭和 51(1976)年)
,水産学研究科(昭和 51(1976)年)である。医学研究科は 4 年制
一貫博士課程,他の 4 研究科はいずれも博士前期課程・博士後期課程を合わせもつ大学院
序章 5
序章 2 北里大学の沿革
である。医学研究科はその後,医療衛生学部の開設に伴い,医学部と医療衛生学部の複数
の学部を基礎とする,わが国ではさきがけ的な大学院である医療系研究科(修士課程医科
学専攻,博士課程医学専攻)に発展的に改組(平成 10(1998)年)した。
■管理運営体制の整備と教育・研究・診療基盤の充実
上述のように,本学は第一期約 20 年間に 5 学部,5 研究科,1 大学病院を 4 キャンパス
に開設し,学問領域の拡大とともに,学生数 5,428 名,教職員数 2,560 名(昭和 56(1981)
年)と急成長を遂げていった。その一方で,学部ごとキャンパス独立的な運営は,大学の
成長に即した運営体制として適切でない面も露呈した。医学部寄付金の不適正な募集に対
して本学は昭和 55(1980)年,社会的な批判を浴び猛省を求められた。理事会の権限強化,
管理運営体制・業務分掌の整備,資金の集中と一元管理などを通して旧弊を一掃し,教学
と経営に二分した運営は,常任理事を中心とする学園本部,事務機能を統括する事務本部
制に改められ,今日につながる基礎を形作った。大学はまた,これまで拡大してきた教育・
研究・診療の充実に努めることを学生や保護者,校友,社会に表明し,安易な学部増設に
は慎重な姿勢をとった。
【第二期】昭和 57(1982)年∼平成 19(2007)年
■大学学部
高齢化社会を迎え慢性的疾患や高度医療に対処できる看護専門職者に対する社会的ニー
ズが高まる中で,本学は,その社会的使命を達成するために看護系の 4 年制学部を開設し,
人材養成の一端を担うべきであると判断した。昭和 61(1986)年,
「看護教育の確立,看
護学の体系化,実践者の育成,社会保健衛生への貢献,生涯教育のモデル化」を目的とす
る看護学部(看護学科)を相模原キャンパスに開設した。
昭和 61(1986)年,医学生やコメディカルの卒前卒後教育機関として,また高齢化社会
に特徴的な慢性難治疾患や精神神経疾患,消化器疾患の治療に特化した診療機関として,
相模原キャンパスから至近の場所に北里大学東病院を開設した。診療科は 22 科,病床数は
現在 557 床である。北里大学東病院はのちに悪性腫瘍の治療に対処する特別病床を有する
病院となる。
平成 3(1991)年,大学教育の大綱化を受けて,6 学部は 4 年(6 年)一貫型教育カリキ
ュラムに改めていった。
平成 4(1992)年,全学自己点検・評価委員会を設置し,自由度が増した教育カリキュ
ラムや学習効果などの検証を開始した。旧大学設置基準の枠組みの中で全学の一般教養教
育を担ってきた教養部は,4 年間の検討を経て平成 7(1993)年,一般教育総合センターに
改組した。その後,一般教育に関わる組織は,学士課程教育の視点から「責任ある教育実
施体制の構築」を目指して一般教育組織(平成 10(1998)年)
,一般教育部(平成 15(2003)
年)へとさらに二度の改組を経ていまに至る。
序章 6
序章 2 北里大学の沿革
平成 6(1994)年,
「生命科学を始めとする学際分野で活躍できる幅広い知識と高度な研
究能力を有する創造力豊な研究者,教育者,技術者の育成」を目的とする,理学部(物理
学科・化学科・生物科学科)を相模原キャンパスに開設した。理学部は衛生学部の発展的
改組をもって発足した第 6 番目の学部である。理学部は教育・研究のキーワードを「生命
現象」
「分子」としている。
平成 6(1994)年,第 7 番目の学部として医療衛生学部(衛生技術学科・リハビリテー
ション学科・医療工学科)を相模原キャンパスに開設した。理学部と同様前身は衛生学部
である。医療衛生学部は,
「社会の求める幅広い専門性と最新技術を獲得するための実践的
(臨床)教育」及び「医学部,看護学部,薬学部など医療系他学部との連携による学際的
教育」を調和させながら実施することを教育理念とする。教育目的は,
「高度な知識,技術
を有する医療従事者の育成」
「学際的なスペシャリストの育成」
「自主性と創造性重視の教
育」
「医療従事者に求められる学生のマナー教育」の下に,8 専攻分野のそれぞれにおいて
リーダーとして活躍できる医療従事者の育成としている。衛生技術学科は平成 19(2007)
年,健康科学科と医療検査学科に改組した。現在は前出の 2 学科のほか,医療工学科に 2
専攻,リハビリテーション学科に 4 専攻を開設している。
その後,大学学部においては獣医畜産学部の学科名変更(畜産学科→動物資源科学科,
畜産土木工学科→生物生産環境学科,平成 11(1999)年)
,水産学部の改組(水産増殖学
科・水産食品学科→水産生物科学科,平成 12(2000)年)
,薬学部の改組(薬学科・製薬
学科→薬学科(6 年制)
・薬科学科(4 年制)
,平成 18(2006)年)
,医療衛生学部の改組(衛
生技術学科→健康科学科・医療検査学科,平成 18(2006)年)
,獣医畜産学部の獣医学部
(獣医学科・動物資源科学科・生物環境科学科)への改組(平成 19(2007)年)
,水産学
部の海洋生命科学部(海洋生命科学科)への学部名変更(平成 20(2008)年)と教育研究
組織を社会の要請に応じて整備してきた。
■大学院研究科・附置研究所
大学院研究科は,昭和 62(1987)年,獣医畜産学研究科修士課程畜産土木工学専攻を十
和田キャンパスに開設した。看護学部を基礎とする看護学研究科(看護学専攻)は,修士
課程を平成 2(1990)年に,博士後期課程を平成 9(1997)年に相模原キャンパスに開設
した。
平成 10(1998)年,本学における生命科学の基礎的領域の研究を目的とする基礎生命科
学研究科(分子科学専攻・生物科学専攻)は,博士前期課程及び博士後期課程を相模原キ
ャンパスに同時に開設した。基礎生命科学研究科は,発足時より,研究分野を充実し他の
研究機関との交流を深める意図の下に連携大学院の形をとったことを特徴とする。研究科
の名称は,理学部との関連性をもたせるために議論を続けた結果,平成 19(2007)年に理
学研究科に変更した。
平成 10(1998)年,医学部と医療衛生学部の二学部を基礎とする医療系研究科(修士課
序章 7
序章 2 北里大学の沿革
程医科学専攻・博士課程医学専攻)を相模原キャンパスに開設した。医療系研究科は,生
命科学の教育・研究を基盤として,
「医学・医療の総合的発展」
「基礎的研究と臨床研究の
調和的発展と充実」
「医学・医療に携わる研究者・教育者の養成」
「医療現場の指導者たる
高度専門技術者の養成」を目的とする。基礎医科学と臨床医科学の密接な連携を目指し,
関連のある複数の主科目をもって構成される学群,複数の学群をもって構成される医科学
専攻,医学専攻を開設し,プロジェクト教育による効率的で発展的な教育を行っている点
を特徴としている。
平成 13(2001)年,旧社団法人から移籍した研究者を中心として北里生命科学研究所を
白金キャンパスに開設した。本学で初めての附置研究所である。生命研は,研究科以外の
教育研究上の基本的組織として翌年開設される感染制御科学府(教育部)の研究部の役割
を担うものと位置付けられて発足した。生命研は,
「感染制御」
「生体機能賦活」
「生物活性
物質探索」
「サーベイランス」をキーワードとして感染症の基礎的研究やワクチン,化学療
法薬の開発に取り組んでいる。
平成 14(2002)年,
「感染制御と創薬の研究者,高度専門技術者の養成」を目的とする
感染制御科学府(感染制御科学専攻)修士課程を白金キャンパスに開設した。博士後期課
程は平成 16(2004)年に開設した。学府は,専門領域の教育・研究に特化した独立研究科
であり,また大学院の新たな教育研究形態による大学院教育部である。学府は,主専攻科
目のほかに専攻科目や副科目も加えた研究指導によるネットワーク型教育,研究部の実施
するプロジェクト研究への大学院生の参加を特徴としている。
平成 15(2003)年,獣医畜産学研究科の専攻名変更(畜産学専攻→動物資源科学専攻,
畜産土木工学専攻→生物生産環境学専攻)を行った。平成 19(2007)年,基礎生命科学研
究科の研究科名を理学研究科(分子科学専攻・生物科学専攻)に改めたことは既述したと
おりである。
平成 20(2008)年,法人統合によって東洋医学総合研究所,臨床薬理研究所,基礎研究
所が新たに附置研究所に加わった。
東洋医学総合研究所は,昭和 47 年(1972)に白金地区に設立され,日本の漢方理論に基
づく煎じ薬を中心とした診療とわが国の伝統的手法に則った鍼灸治療を行っている。漢方
薬局を併設する。東医研は,東洋医学の基礎研究と臨床研究,医史学研究を柱としている。
臨床薬理研究所は,昭和 62(1987)年に白金地区に設立された。臨薬研は,第 I 相試験
と呼ばれる臨床試験をベースに治療学の研究など疾病の予防,診断,治療のための医薬品
開発を目的とする。医学管理部,臨床薬理部,臨床試験コーディネーティング部門,治療
学研究部の 4 部門で構成され,臨床試験の実務と支援並びに免疫療法用薬の研究と製造等
を行っている。
基礎研究所は,社団法人北里研究所の 94 年の歴史の中で研究活動の中心的役割を果たし
てきた。抗生物質の開発やワクチン株の樹立など感染症の制圧を目的とする研究に取り組
んできた。基礎研は,熱帯病研究センター,天然物有機化学研究センター,抗感染症薬研
序章 8
序章 2 北里大学の沿革
究センター,基礎医学検査センター,実験動物管理センターをもって構成されている。
平成 20(2008)年,北里研究所病院と北里研究所メディカルセンター病院が,教育病院
であり,かつ地域医療を担う医療機関として新たに学校法人に加わった。
北里研究所病院は,淵源を北里柴三郎により明治 26(1893)年,白金の地に開設された
日本初の結核専門病院「土筆ヶ岡養生園」に遡る。昭和 29 年(1954)年に養生園跡地に附
属病院を再建,昭和 48(1973)年に結核専門病院から総合病院へ転身,現在,診療科は 24
科を開設し,病床数は 294 床である。北里研究所病院は,
「心ある医療」
(患者様中心の全
人的医療)の理念の下に,美容外科,アレルギー科,スポーツクリニックなど特色ある診
療科も加えて地域医療を実践している。
北里研究所メディカルセンター病院は,平成 1(1989)年,地域医療の中核として高度
で先進的な医療を行うとともに,地域文化の発信基地としての使命をもって北本地区に開
設した。とくに地域市民の要望が強い救急医療に傾注している。診療科は 14 科を開設し,
病床数は 380 床である。北里研究所メディカルセンター病院は,
「真心の医療」を病院の理
念の第一に掲げて実践している。医療環境科学センターを併設している。
さらに新学校法人には,生物製剤研究所が加わった。生物製剤研究所は,人体用,動物
用の生物学的製剤(主としてワクチン)の開発,研究,製造,供給を主たる業務とする事
業所(収益事業部門)である。大正 4(1915)年にコレラワクチンの製剤化に成功して以
来,今日まで多くのワクチン,血清,トキソイド,診断薬を開発,供給し,感染症の予防
と治療の一翼を担ってきた。平成 5(1993)年に北本地区へ移転し,平成 14(2002)年に
家畜衛生研究所を併せて現在の姿の事業所に至る。原液製造部門,製剤部門,品質部門,
開発研究部門,品質保証部門などから構成されている。
【年譜】
1962 昭和 37 年
北里研究所創立 50 周年記念事業として学校法人北里学園を設立
北里大学衛生学部(化学科・衛生技術学科)を開設
1964 昭和 39 年
薬学部(薬学科)を増設
1965 昭和 40 年
薬学部(製薬学科)を増設
1966 昭和 41 年
畜産学部(獣医学科・畜産学科)を増設
1967 昭和 42 年
大学院衛生学研究科修士課程を開設
1968 昭和 43 年
衛生学部(産業衛生学科)を増設
大学院薬学研究科修士課程を増設
教養部を開設
1970 昭和 45 年
医学部(医学科)を増設
大学院畜産学研究科修士課程を増設
1971 昭和 46 年
北里大学病院を開設
1972 昭和 47 年
水産学部(水産増殖学科・水産食品学科)を増設
大学院畜産学研究科博士課程を増設
1973 昭和 48 年
大学院薬学研究科博士課程を増設
序章 9
序章 2 北里大学の沿革
1975 昭和 50 年
大学院衛生学研究科博士課程を増設
1976 昭和 51 年
大学院医学研究科博士課程を増設
大学院水産学研究科修士課程を増設
1978 昭和 53 年
大学院水産学研究科博士課程を増設
畜産学部および畜産学研究科を獣医畜産学部,獣医畜産学研究科に改称
1981 昭和 56 年
獣医畜産学部(畜産土木工学科)を増設
1986 昭和 61 年
看護学部(看護学科)を増設
北里大学東病院を開設
1987 昭和 62 年
大学院獣医畜産学研究科修士課程(畜産土木工学専攻)を増設
1988 昭和 63 年
衛生学部(生物科学科)を増設
1990 平成 2 年
大学院看護学研究科修士課程を増設
1994 平成 6 年
衛生学部を改組
理学部(物理学科・化学科・生物科学科)および医療衛生学部(衛生技術
学科・リハビリテーション学科・医療工学科)を増設
1995 平成 7 年
教養部を一般教育総合センターに改組
1997 平成 9 年
大学院看護学研究科博士課程を増設
1998 平成 10 年
大学院基礎生命科学研究科修士課程,博士課程および大学院医療系研究科
修士課程,博士課程を増設
一般教育を再改組(3 センターへ移行)
1999
平成 11 年
獣医畜産学部(畜産学科)を(動物資源科学科)に,
(畜産土木工学科)を(生物生産環境学科)に改称
2000
平成 12 年
水産学部(水産増殖学科・水産食品学科)を(水産生物科学科)に改組
大学院水産学研究科(水産学専攻)を(水圏生物科学専攻)に改組
2001 平成 13 年
北里生命科学研究所を開設
2002 平成 14 年
大学院感染制御科学府修士課程を増設
2002 平成 15 年
大学院獣医畜産学研究科(畜産学専攻)を(動物資源科学専攻)に,(畜
産土木工学専攻)を(生物生産環境学専攻)に改称
一般教育組織を一般教育部に改組
2004 平成 16 年
大学院感染制御科学府博士課程を増設
2006 平成 18 年
薬学部(薬学科(6 年制)・薬科学科(4 年制))を増設
医療衛生学部(衛生技術学科産業衛生学専攻)を(健康科学科)に,(衛生
技術学科臨床検査学専攻)を(医療検査学科)に改組
2007 平成 19 年
獣医畜産学部(獣医学科・動物資源科学科・生物生産環境学科)を獣医学部
(獣医学科・動物資源科学科・生物環境科学科)に改組
大学院基礎生命科学研究科を大学院理学研究科に改称
2008 平成 20 年
水産学部(水産生物科学科)を海洋生命科学部(海洋生命科学科)に改称
社団法人北里研究所と学校法人北里学園が統合し,学校法人北里研究所が発
足
大学の附属施設として,東洋医学総合研究所,臨床薬理研究所,基礎研究所,
北里研究所病院,北里研究所メディカルセンター病院を設置
法人に付設される事業所として生物製剤研究所を設置
序章 10
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