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公表 監査
香芝市監査委員告示第4号 地方自治法(昭和22年法律第67号)第98条第2項において準用する同法第199 条第第2項後段の規定に基づき実施した監査の結果について、同条第9項の規定により次 のとおり公表します。 平成26年11月28日 香芝市監査委員 香芝市監査委員 近 藤 河 杉 洋 博 之 第1 監査の概要 1 監査請求事項 平成25年度香芝市一般会計歳出歳入決算において法令に違反すると疑われる事項に ついて 2 監査対象事項 (1)フォトコンテスト事業について (2)自転車等駐車場管理業務委託事業について (3)自動車駐車場管理業務委託事業について (4)児童福祉法第56条第4項(私人への保育料収納事務委託)について (5)一般廃棄物処理手数料(し尿汲み取り費用)の徴収について (6)臨床心理事業について (7)デマンド交通(タクシー)事業について 第2 監査の実施 1 監査の実施にあたって 地方自治法(以下「法」という。)第98条第2項の規定に基づき、平成26年10月 20日付香議第308号にて市議会議長より請求のあった「監査及び結果報告請求書」を 受け、当該各事業について、法令及び条例等に基づき適正な手続きを経ているかどうか、 違法性のある、または不適正な事実はないか、合議により確認し、法第199条第2項に よる監査を実施することとした。 2 監査対象部・課等 (1)企画部・秘書広報課 (2)市民環境部・生活安全課 (3)福祉健康部・子ども支援課 (4)市民環境部・市民衛生課 (5)福祉健康部・保健センター 3 事情聴取した関係者 秘書広報課長及び課員、市民環境部長、生活安全課長及び課員、福祉健康部次長、子ど も支援課長及び課員、保健センター所長及び課員 4 事情聴取した場所 行政委員会室 1 5 監査期間 平成26年10月21日(火)から平成26年11月27日(木)まで 6 事実関係の調査 平成26年10月24日市長に監査執行を通知するとともに、監査対象部・課長等に関 係書類の提出を求めた。 提出された関係書類に基づき、関係人に出頭を求め、11月11日、14日に事情聴取 をおこなった。 第3 監査の結果報告及び意見 以下、監査対象事項別に、監査の結果報告及び意見を述べる。 記述方法としては、まず(1)議会請求理由を記載し、次に(2)監査結果報告及び意見を記 載した。 1 フォトコンテスト事業について (1)議会請求理由(原文のまま記載した。ただし、便宜的に段落をつけた。) ①著作権法違反等の疑い 平成25年度のフォトコンテストで公募に出品された作品を使用し、カレンダーを作 成した。然し乍ら、カレンダー作成はフォトコンテスト募集要項に条件が示されているが、 販売する旨の記載は一切見当たらない(著作権法第63条各項)。 理事者の意見では「著作権は香芝市に帰属すると記載されているので、その語をもって 行った」と回答するが、募集要項からは利用承諾としか読み取れない。 また地方自治法第238条第5項に規定する公有財産は、平成25年度歳入歳出に関 する説明書に記される財産に関する調書における公有財産額には著作権による財産額が 計上されておらず、本件事案の著作権を香芝市が所有していない証明である。 よってカレンダーの販売を行うことは違法不当であると疑われる。 更になぜカレンダーを市民に販売したのかについて、市の魅力をアピールする為と回 答しているが、100部の作成を行い、79部を販売、その他無償配布している。また無 償配布した特定する者に関する規定は存在しない。 なお販売する法的根拠を求めるが、 「実費弁償で行った」と回答する。実費弁償または 実費徴収とは、仕事(事務)の処理に当たって要した費用(人件費等含む)を言い、それ を受益者が負担する事を言う。よって実費弁償で販売価格を決定したと回答するが、印制 費用しか説明されておらず、実際に要した全ての経費の算定根拠は不明である。 総括すると、著作権に抵触し販売できないものを作成したと解することになり、条例で 販売額も定めることなく実費弁償という理由で販売した香芝市長の行為は違法不当であ ると疑われる。 (2)監査結果報告及び意見 「第1回かしばの四季フォトコンテスト」の写真募集は、平成25年4月1日から9月 30日を募集期間とし、応募資格は市内外を問わず、募集された。募集方法としては、募 集概要を2種類作成し、ホームページ等を利用し広く募集を呼びかけた。応募方法は募集 概要に付属した「応募用紙」に「必要事項」を記入したうえで「写真」を応募するもので ある。 募集概要の応募の「諸条件」又は「応募作品に関するご注意」の第5項に「入賞作品の 著作権は主催者に帰属するものとします。」と明記され、また「入賞作品の使途」の第1 2 項には「『香芝市の四季カレンダー』の発行(H26年版)」と明記されている。 これらの文言によって、 「応募された作品のうち入賞作品については、香芝市に著作権 を無償で譲渡していただき、その入賞作品を使用して香芝市の四季カレンダーを作成し ます。」ということを表現し、さらに「応募されたことによって、これらの条件(注意) 及び使途を承諾されたとみなします。」ということを表現しているものと考えられる。そ してこの募集概要により応募された応募者は入賞作品の著作権を香芝市に無償で譲渡す ることを承諾したものと考えられる。 著作権の譲渡については、著作権法第61条第1項において、「著作権は、その全部又 は一部を譲渡することができる。」と規定されている。 この場合には、著作権法「第二章 著作者の権利 第三節 権利の内容 第三款 著作 権に含まれる権利の内容 第21条から第26条の3まで」において、 「著作者」が専有 する権利と規定されている著作権の全部又は一部が譲渡されるものと考えられる。 すなわち著作権法第26条の2第1項に基づき、 「入賞作品を利用してカレンダーを作 成し、それを市民に有料で販売する」ことも可能となる。 (著作権法第26条の2第1項 「著作者は、その著作物をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利を専 有する。」) なお、著作権はフォトコンテストに応募された時点で香芝市に譲渡されたと考えられ、 「財産に関する調書」への記載が、第三者への対抗要件となるわけではないと思料する。 ただし、「財産に関する調書」における「無体財産権」については、今後調査のうえ、 香芝市全体として適正な記載を行うことを検討していただきたい。 また、フォトコンテスト事業については既に実施されているが、原著作者から譲渡され て市に帰属することになった著作権については、管理簿等を作成し適正に管理されるこ とを望む。 なお、著作権法第27条及び28条の権利は明記されない限り、譲渡人(原著作者)に 留保されたものと推定される。今回の募集概要には、この点の明記がない。したがって今 後において、入賞作品の写真の二次的著作物を作成して利用する場合は、原著作者から承 諾書を得ておく必要がある。今回の「香芝市の四季カレンダー」については、応募された 写真をその「題名」 ・ 「撮影者氏名」 ・ 「撮影場所」を明記したうえで、その写真作品そのも のを利用しているので、二次的著作物の定義には当てはまらないと考えられる。 また、著作権法第63条各項は、著作権者の権利を示している。 「著作者」とは、著作物を創作した者をいう(著作権法第2条第1項第1号)。一方、 「著作権者」は著作権を有している者をいう。 「著作者」は著作物を創作した時点で広義の著作権(著作財産権および著作者人格権) を専有する。したがって、通常は、著作者=著作権者である。しかし、広義の著作権のう ち、著作財産権は譲渡可能である。このように、著作権を譲渡した場合には、「著作者」 ではあるが、「著作権者」ではないという状態が発生する。 参考条文 著作権法 (翻訳権、翻案権等) 第27条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映 画化し、その他翻案する権利を専有する。 (二次的著作物の利用に関する原著作者の権利) 第28条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この 款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を 専有する。 3 (著作物の利用の許諾) 第63条 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。 2 前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その 許諾に係る著作物を利用することができる。 3 第一項の許諾に係る著作物を利用する権利は、著作権者の承諾を得ない限り、譲渡 することができない。 次に、「香芝市の四季カレンダー」の「有料(実費)配布」については、香芝市の事業 (香芝市内で撮影された香芝の四季を感じられる風景、街なみ、イベントや暮らしの写真 を募集)の一環としてカレンダーの作成をしており、希望する市民に配布する場合に、受 益者負担として実費を徴収することは、当然考慮されるべきことであると考える。この場 合の受益者負担金は、条例により定めるべき分担金、使用料及び手数料には該当しないも のであり、市長(または香芝市事務決裁規程による専決事項区分)の裁量により決定でき るものと考えられ、また入賞者及び審査員に対して無料で配布したことについても同様 であると思料する。 なお、カレンダーの価格設定の計算基礎となった費用は、カレンダー印刷費及び印刷指 示用用紙代及びコピー代及び印刷データ用DVD代の合計額であり、 「カレンダー作成に かかる費用相当額すなわち実費」と考えられるものである。 フォトコンテスト事業に関しては、以上の結果であり、特に指摘すべき事項はなかった。 2 自転車等駐車場管理業務委託事業について (1)議会請求理由 平成25年度の自転車等駐車場管理業務委託事業は、香芝市自転車駐車場条例(以下、 「本条例」とよぶ)に規定されるJR志都美駅西自転車駐車場(香芝市上中2010番地) にて行われたものである。本条例は、地方自治法第244条の2第3項の規定にもとづき 本条例第4条に指定管理者により公の施設の管理を行わせることができる規定がされて いる。 以上の事由から鑑みると、香芝市が平成25年度に行った業務委託による公の施設の 管理は、地方自治法第244条の2第3項及び本条例第4条に抵触するものである。更に 地方自治法第243条では「公金の取り扱いは、私人をして行わせてはならない」と規定 されているにも拘らず、委託業者である私人に行わせていた。 よって香芝市長が行った上記の行為による平成25年度の自転車等駐車場管理業務委 託は、違法不当による契約及び支出であると疑われ、公金の取り扱いに関しても違法と疑 われる。 (2)監査結果報告及び意見 自転車等駐車場については、平成25年2月26日防災安全課(当時)の定期監査を実 施し、同年3月29日付け香監委第59号で、「公の施設の管理については、地方自治法 第244条の2の規定を遵守されたい。また、使用料等の徴収の委託については、地方自 治法施行令第158条の規定を遵守されたい。」との意見を提出した。この意見に対し、 香芝市長から平成25年5月29日付け香危第86号で「公の施設の管理については、地 方自治法第244条の2の規定を遵守し、また、早急に指定管理者に移行する準備を進め ていきます。また、使用料等の徴収の委託については、すでに地方自治法施行令第158 条の規定に基づき告示しました。」との措置状況通知を受けた。 4 しかし、平成26年度の徴収委託の告示については、平成26年4月当初には告示され ていなかった。9月議会総務企画委員会で委員の指摘を受け、平成26年9月17日付け で告示されたものである。 また、平成25年度のJR志都美駅西自転車駐車場「管理業務委託契約書」と他の自転 車駐車場の「指定管理者基本協定書」を比較すると、ほとんど変わるところはなかった。 特に「業務の範囲」については、同じ内容であり、これは平成26年度も同様である。 指定管理者制度は「管理代行」であり、「指定」により、公の施設の管理権限を、指定 を受けたものに委任するものである。一方業務委託は「私法上の契約関係」であり、契約 に基づく個別の事務または業務の執行の委託であり、個別の業務を同一の民間事業者に 対して包括的に行わせることは原則として適当ではなく、その場合は当該民間事業者を 指定管理者とするべきである。 また、指定管理制度では、公の施設の管理権限は、指定管理者が有し、業務委託では設 置者たる地方公共団体が有する。そして施設の使用許可等も指定管理者は行うことがで きるが、業務委託の受託者はできない。 以上のことを鑑みると、JR志都美駅西自転車駐車場管理業務に関して、監査意見を真 摯に受け止め措置状況通知のとおりに検討を進められた形跡はみえない。 9月議会決算特別委員会において委員の指摘を受け、平成26年11月1日から臨時 職員を雇用し、「定期券の発行・更新、電話対応、施設管理、庶務事務等」の自転車駐車 場管理業務を行わせており、いわゆる「直営」の管理運営になったといえるものである。 しかしながら、以前に監査委員の意見を受け措置状況通知を提出しているにもかかわ らず、改善されていないことは誠にもって遺憾であり、内部統制が機能不全の状態である といわざるを得ない。猛省を促すとともに、内部統制の機能強化について真剣に検討され ることを強く要望したい。 なお、本件行政行為の違法性については、行政行為に瑕疵があったと思われるが、香芝 市及び利用者そして香芝市民の利益に損害を与えたとまでは言えず、また平成26年度 は直営による管理となったことから、瑕疵は治癒されたと考えられる。 ※「行政行為の瑕疵」については「8総括(2)監査結果報告及び意見」 (24頁)で詳述 した。 3 自動車駐車場管理業務委託事業について (1)議会請求理由 平成25年度の自動車駐車場管理業務委託事業は、香芝市自動車駐車場条例(以下、 「本 条例」と呼ぶ)に規定される近鉄五位堂駅北自動車駐車場(香芝市瓦口2159番地)に て行われたものである。本条例は、地方自治法第244条の2第3項の規定にもとづき本 条例第4条に指定管理者により公の施設の管理を行わせることができると規定されてい る。 以上の事由から鑑みると、香芝市長が平成25年度に行った業務委託による公の施設 の管理は、地方自治法第244条の2第3項及び本条例第4条に抵触するものである。更 に地方自治法第243条では「公金の取り扱いは、私人をして行わせてはならない」と規 定されているにも拘らず、委託業者である私人に行わせていた。 よって香芝市長が行った上記の行為による平成25年度の自動車駐車場管理業務委託 事業は、違法不当による契約及び支出であると疑われ、公金の取り扱いに関しても違法と 疑われる。 5 (2)監査結果報告及び意見 香芝市近鉄五位堂駅北自動車駐車場管理業務については、平成25年度及び平成26 年度ともに、業務委託契約を締結し、同一の民間事業者に対して包括的に行わせている。 業務仕様書によれば業務の範囲は「(1)駐車場の供用に関すること(2)駐車場の施設及び 設備の維持管理に関すること(3)その他必要な業務(4)使用料の徴収に関する業務」と規 定され、特に(4)使用料の徴収に関する業務については「①駐車券と引替えに料金を徴収 すること。②駐車券と引替えに利用券を受け取ること。③徴収した料金の香芝市への納付」 と規定されている。 また、駐車券については、入庫時に受託者が手渡している。すなわち、駐車の許可は、 受託者において行われており、結果として指定管理と同様の権限を有していることにな る。また、平成26年度の徴収委託の告示については、4月当初に告示されていなかった。 9月議会決算特別委員会で委員の指摘を受け、平成26年9月17日付けで告示された ものである。 指定管理者と委託業務の違いは、「2 自転車等駐車場管理業務委託事業についての (2)監査結果報告及び監査意見」で述べたとおりである。 当該駐車場は平成25年3月香芝市土地開発公社解散に伴い、香芝市に引き継がれた ものであり、同年3月議会において、条例の設置について審議されている。 議事録によれば今後の当該土地の有効活用についても審議されており、当面駐車場と して利用することが答弁されている。 その場合は「公の施設」として地方自治法第244条の2の規定を遵守することは当然 であり、「指定管理者による管理運営」か「直営による管理運営」かについて方針を定め ておくべきであったと考える。業務委託としても上記で指摘したように、個別の業務を同 一の民間事業者に対して包括的に行わせることは原則として適当ではなく、その場合は 当該民間事業者を指定管理者とするべきであり、また指定管理制度の導入を見送るなら ば直営を原則として、その管理運営については、十分な検討・準備が必要であった。 9月議会決算特別委員会において委員の指摘を受け、平成26年11月1日から臨時 職員を雇用し、 「入・出庫管理、料金・チケット徴収、電話対応、施設管理、庶務事務等」 の自動車駐車場管理業務を行わせており、いわゆる「直営」の管理運営になったといえる ものである。 以上のことから平成25年度から開始された自動車駐車場管理業務についても、内部 統制が機能せず十分な検討・準備がなされないまま、事業が執行されたと考えられる。自 転車等駐車場管理業務と同様に、内部統制の機能強化について真剣に検討されることを 強く要望したい。 なお、本件行政行為の違法性については、行政行為に瑕疵があったと思われるが、香芝 市及び利用者そして香芝市民の利益に損害を与えたとまでは言えず、また平成26年度 は直営による管理となったことから、瑕疵は治癒されたと考えられる。 4 児童福祉法第56条第4項(私人への保育料収納事務委託)について (1)議会請求理由 香芝市は、児童福祉法第56条第4条(以下、同法とよぶ)の規定により香芝市告示第 37号の告示を行っている。児童福祉法第56条第4条の規定では、 「前項に規定する額 の収納の事務については、収入の確保及び本人又はその扶養義務者の便益の増進に寄与 6 すると認める場合に限り、政令で定めるところにより、私人に委託することができる。」 と規定される。 香芝市は、同法で規定する児童福祉法施行令第44条の2(以下、同施行令とよぶ)の 規定に従い告示を行い私人に委任している。然し乍ら、香芝市告示第37号では、「徴収 事務」を委託しており、同法及び同施行令では収納の事務しか委任を認めておらず徴収事 務の委託はできない。なお事務の委託の期間を定めない告示を行うことは不適切である。 香芝市の回答では、収納事務しか行っていない回答ではあるが、香芝市告示第37号の 告示の内容は無効であることから、告示及び収納事務の香芝市長の行為は違法と疑われ る。 (2)監査結果報告及び意見 「保育料の収納事務の私人委託」については、平成16年の児童福祉法の一部改正によ り、平成17年1月1日から施行されている。香芝市は平成20年4月1日から、運用を 開始した。なお、同法第56条によれば「徴収」は市町村が行うこととされている。 「徴収」と「収納」の違いについては、昭和38年12月19日自治丁行発第93号各 都道府県総務部長宛行政課長通知を参考とする。 「『徴収』とは、普通地方公共団体の歳入を調定し、納入の通知をし、収入を受け入れ る行為をいい、『収納』とは、調定し、納入の通知のあった普通地方公共団体の収入を受 け入れる行為をいう。」とされており、収納は収入を受け入れる行為のみとされている。 香芝市では、平成20年度から、順次私立保育園と業務委託契約を締結しているが、委 託業務の名称は保育料「徴収」業務とされ、仕様書の名称も保育料「徴収」業務仕様書と されている。保育料「徴収」業務の内容としては、「イ 児童福祉課が配布した保育料納 付書により、当該保育園に入所する児童の保育料「徴収」業務 ロ 収納に関する資料の 作成業務 ハ 「徴収」した保育料を香芝市会計管理者へ入金」と規定されている。 香芝市の保育料徴収は原則として口座振替であるが、①口座振替できなかった場合及 び②口座登録が間に合わなかった場合等には現金納付の収納手続きを行う。 以下、子ども支援課から聴取した保育料(公金)の流れによると、 (1)市で納付書(納付すべき金額は記入済)を作成し、私立保育園へ預ける。 (2)私立保育園が集金袋などで保育料を現金で収集し、引き換えに市から預かった納付 書に領収印を押して、領収書を保護者に渡す。 (3)収集した保育料を納付書とともに、市へ提出する。 (4)市が金融機関に入金する。という「収納」事務を行っている。 なお、(4)によれば私立保育園が会計管理者への入金までは行っておらず、 「収納」事務 の途中までを行っている。 また、「徴収」業務については、平成19年8月22日付け雇児保第 0822001 号の厚生 労働省雇用均等・児童家庭局保育課長通知で「市が行う徴収業務の一部を民間に委託する ことが可能」とあるが、香芝市の私立保育園では、「納入相談」などの「徴収」業務は行 っておらず、市が対応している。また、基本的に滞納は発生していない。 また、領収印は、「徴収」業務委託を行っている私立保育園に、市が同園の保育園長名 の領収印を作成し、貸与している。印影は、上から順に「保育料徴収事務委託者」「香芝 市」「日付」「領収」「○○保育園長」となっていた。 また、「徴収」委託告示では、期間について定めず、ただ「平成○○年4月1日から」 と記載されていた。 業務仕様書及び子ども支援課への聴取に基づくと、委託しているのは下記のとおり「収 7 納」業務であると考えられる。 (1) 歳入の調定及び納入の通知は、市で行い私立保育園では行っていない。 (2) 徴収業務の一部委託(納入相談等)も行われていない。 「徴収」委託告示については、9月議会決算特別委員会で委員の指摘を受け、平成26 年10月1日付けで「収納」事務に変更され再度告示された。 また、委託期間も平成27年3月31日までとされている。 なお、収納とは、歳入の調定及び納入の通知のあった普通地方公共団体の収入を受け入 れる行為をいうのであるとすれば、会計年度独立の原則(その会計年度の歳出は、当該年 度の歳入をもってまかなうという原則)に鑑みて、委託期間は、特別の事情のない限り、 原則として一会計年度をその期間とすべきであると考える。 次に、業務委託契約書についても、「収納」業務委託に変更され、平成26年10月1 日付けで再度締結された。委託業務の内容も保育料収納業務に変更されている。また、領 収印の印影は、業務委託契約を「徴収」から「収納」に変更したことに伴い、「保育料収 納事務委託者」に変更されている。 児童福祉法第56条第3項によれば保育料の徴収は市町村が行うことができるのであ り、同条第4項により私人に委託することができるのは、第3項に規定する保育料の「収 納」の事務であることは、条文上明白であり、事実上香芝市においても委託しているのは 「収納」事務と認められるが、法令の遵守は適正な用語の使用にも適用されるものであり、 平成20年度の委託開始以後、「徴収」が「収納」に変更されていないことをみれば、法 令遵守の意識が希薄であると言わざるを得ない。 今後も実施される児童福祉法第56条第4項及び同法施行令第44条の2各項に基づ く私人への収納事務委託については、当該法令を遵守し適正に管理執行されたい。 なお、本件行政行為の違法性については、行政行為に瑕疵があったと思われるが、香芝 市及び保育料納付者そして香芝市民の利益に損害を与えたとまでは言えず、また平成2 6年度は是正措置をとられたことから、瑕疵は治癒されたと考えられる。 5 一般廃棄物処理手数料(し尿汲み取り費用)の徴収について (1)議会請求理由 香芝市は、香芝市廃棄物の処理及び清掃に関する条例第18条(以下、同条例とよぶ) により、一般廃棄物処理手数料(し尿くみ取り料金)を規定している。同条例第18条第 1項では、原則し尿処理手数料は、証紙によって徴収すると規定され、同条例第18条第 1項の但し書きにより「証紙によりがたいと市長が認めるときは、市長が定める他の方法 によって徴収することができる」(以下、同条例但し書きとよぶ)と規定される。 然し乍ら、同条例但し書きの規定される市長が定める他の方法の規定は規則または細 則等にも見当たらない。 また平成26年9月18日の決算特別委員会の担当者の答弁(以下、答弁とよぶ)では、 「現金による徴収を行っている」と回答するが、答弁では地方自治法施行令第158条第 1項に規定する「私人にその徴収又は収納の事務を委託する事ができる」にもとづき委託 は行っておらず、地方自治法施行令第158条第2項にもとづき香芝市長は、その旨の告 示も行っていない。 よって一般廃棄物処理手数料徴収の香芝市長の行為は地方自治法第243条に抵触し 違法と疑われる。 8 (2)監査結果報告及び意見 香芝市廃棄物の処理及び清掃に関する条例第18条では、 「し尿処理手数料は、証紙に よって徴収する。ただし、証紙によりがたいと市長が認めるときは、市長が定める他の方 法によって徴収することができる。」と規定されている。 この規定に基づき一般廃棄物(し尿)の収集及び運搬業務委託契約書第9条第1項では 「し尿汲取手数料の徴収は、発注者が受注者に委託するものとし、香芝市廃棄物の処理及 び清掃に関する条例第18条の規定により、一般家庭及び事業所の区分により、その都度 納付額に相当する額を証紙により徴収しなければならない。」と規定されている。 なお、地方自治法第231条の2第2項では「証紙による収入による場合においては、 証紙の売りさばき代金をもって歳入とする。」と規定されている。 以上のことから香芝市では、証紙を売りさばき人に販売した時点で歳入の調定を行い 「証紙収入」として収納しているため、収集業者がし尿汲取手数料として一般家庭等から 徴収した証紙を市に提出した時には、その証紙は既に調定され歳入として収納されたこ とを示すものにすぎず、したがって私人による公金取扱いの問題は生じない。 しかしながら、香芝市では事実上は下記のように現金による支払いも認めている。 (1)一般家庭等は、汲取りの際に汲取手数料を現金(証紙で足らなかった分または全額) で収集業者に支払う。 (2)収集業者は、証紙を市に提出する時、同時に現金による手数料の金額を報告し、報 告書に基づき市が作成した納付書により、市に現金による手数料を入金する。 現金による手数料徴収について、9月議会決算特別委員会で委員の指摘を受け、条例第 18条第1項の市長が定める他の方法は「現金」による徴収として、平成26年9月26 日付けで告示され、また、し尿の収集及び運搬手数料の徴収委託も、平成26年10月1 日付けで告示されている。 平成26年10月からは領収印を作成し収集業者に貸与して使用している。印影は、上 から順に手数料徴収事務受託者」 「香芝市」 「平成○○年○月分」 「領収」 「受託業者名」と なっている。 また、これらに伴う業務委託契約書の変更も順次行うとされている。 なお現在、現金収入は証紙収入と同じく歳入科目「款12 使用料及び手数料 項3 証紙収入」に歳入として収入されている。 この場合、上記に述べたように、 「証紙」は売りさばき代金が歳入となり、 「現金」は一 般家庭等から徴収した汲取り手数料が歳入となるため、歳入の時期が、 「証紙」と「現金」 で異なっている。 地方財務実務提要によれば、「各地方公共団体において、証紙のうりさばき代金と現金 による収入との相互の調整が図られ、収入経理上の支障がないと判断される場合には、同 一の歳入について、証紙による収入の方法による場合の例外事由を条例により定め、運用 することは可能であると解される。」 (第1巻 第4章 2節 収入の方法 2785頁) しかしながら、 「証紙による収入の方法による場合と現金等による収入の方法による場 合とを明確に区分せず、ただ単に現金併用により収納事務を行うことは、現行制度上認め られない。」 (同2786頁) 以上のことから、現金収入(汲取り手数料)及び証紙収入の歳入については区分される ことを要望する。 また、汲取手数料の支払いについて、現金の取扱いが多くなっており、同時に証紙取扱 店が少なくなっていることから、市民の利便性も考慮に入れ、現金での徴収に切り替えら れることを今後検討されたい。 9 なお、本件行政行為の違法性については、行政行為に瑕疵があったと思われるが、香芝 市及び汲取手数料支払者そして香芝市民の利益に損害を与えたとまでは言えず、また平 成26年度は是正措置をとられたことから、瑕疵は治癒されたと考えられる。 6 臨床心理事業について (1)議会請求理由 【事務内容等について】 香芝市保健センター(以下、センターとよぶ)は、地方自治法第244条の規定される 公の施設であり、地方自治法第244条の2第1項の規定により、公の施設の設置及び管 理に関する事項は香芝市保健センター条例に規定されている。 臨床心理事業(以下、事業とよぶ)は、センターの3階で平成25年4月1日から開始 され、事業内容は、「成人・青少年・乳幼児を対象に臨床心理士がカウンセリングや心の 健康相談・発達相談」を行っている。 利用申し込みは電話予約による完全予約制であり、対象は香芝市民または市内在職の 者に限っている。 費用は上記の事業内容を1回利用するにおいて2,000円の負担金が徴収され、中学 3年生までの方及び保護者、生活保護世帯の方、障害者手帳または療育手帳を持つ者は無 料とする負担金免除が行われている。 (1) 違法不当と疑われる理由1 平成26年9月18日に開催された決算特別委員会の審議は以下のとおりである。 普通公共団体は収入(地方自治法第224条から227条)するには、地方自治法第2 28条第1項の規定により分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、 条例でこれを定めなければならないと規定されている。 然し乍ら、センターで行う事業は、市民等から利用者負担金を徴収しているにも関わら ず、香芝市保健センター条例または他の条例には分担金、使用料、加入金及び手数料に関 する事項の規定は存在しない。 香芝市の答弁では「3階のカウンセリング料につきましては、がん検診等と同等の扱い で、がん検診とかになりましたら体の健康を守るって形ですけれども、心の健康っていう、 健康の部分ということで、自己負担のほうの扱いを一緒にしております。」と回答してい る。決算特別委員会委員から、「地方自治法では、条例で定めなければならないって書い て、明記されているでしょう。これ使用料ですよね。これ不正徴収じゃないですか。」と 疑問が提示された。香芝市の答弁では、 「保健センターで実施している各種がん検診があ るのですが、これは県の実施要綱に基づいて実施しております。実費相当として市民から 負担を求めており、臨床心理のこの心の健康相談においても県のメニュー事業のなかに 含まれ、心理療養センターでの負担も実費相当として負担を求めていた経緯があります。」 と回答した。 平成26年9月24日の議員の一般質問に対する答弁でも「がん検診それから予防接 種、そのときに実費負担を相当は取れるというようなことが予防接種法にもありました ので、それと同じような形で臨床心理センターの負担についてでも実費負担というふう な形で考えさせていただきました。そういう形で取らせていただきました。」と回答して いる。更に「臨床心理のほうにつきましては、あくまでも庁舎の一部を使ったサービスと いうことでございますので、それも使用料等には当たらないというふうに考えておりま す。」とも回答している。 10 以上の香芝市の答弁を総括すると、①がん検診等同等の扱いで、実費相当を市民から負 担、②県の実施要綱に基づいて実施、③庁舎の一部の利用から使用料には当たらない、が 答弁の本旨になる。以上の香芝市の答弁による回答に反論し、違法不当と疑われる理由を 述べる。 ①「がん検診等同等の扱いで、実費相当を市民から負担」について がん検診は、健康増進法(平成14年法律第103号)第19条の2に基づく健康増進 事業として市町村が実施している。厚生労働省では、 「がん予防重点健康教育及びがん検 診実施のための指針」(厚生労働省健康局長通知)を定め、同指針に基づく検診を推進し ている事業である。 厚生労働省が行う「がん検診事業」の要領の費用負担では、がん検診費用は所定の手続 きを経て検診機関が市町村に費用の請求を行い、市町村は国に対し費用の請求をする事 業である。即ち住民の実費相当の負担は、検診費用の一部であり、その他費用は国から支 払われているものである。 よって香芝市が答弁する臨床心理事業にかかる費用負担は、住民の一部負担の収入だ けであり、その他費用は住民の税負担であり、「がん検診等と同様の扱いで、実費相当を 住民から負担」とは異なる。 なお国からの費用負担の収入はなく、奈良県の“自殺対策緊急強化事業補助金”の3, 130,408円が収入としている。その他の事業への収入はなく、事業の実費相当を市 民の税から負担を求めているものであるから、 「がん検診」と同様の実費徴収というので あれば、事業に要したその他の費用負担を市民の税で賄うことは許されず、地方自治法第 243条の2第1項の規定により普通地方公共団体に損害を与えたまたは香芝市長が普 通公共団体に損害を与えたことにより民法の規定により賠償しなければならないと思わ れる。 ②「県の実施要綱に基づいて実施」 香芝市の答弁では、県の実施要綱に基づいて実施していたと回答するが、県の要綱は法 律、条例、規則等の法規とは異なり、行政機関の内部規定である、よって法規ではないこ とから法的拘束力はなく、県の要綱が香芝市の行う事業に拘束力を与えることは一切な く、香芝市が行った事業執行及び香芝市の見解は違法不当と疑われる。 ③「庁舎の一部の利用から使用料には当たらない」について 香芝市の答弁では、「庁舎の一部の利用から使用料には当たらない」と回答するが、セ ンターは地方自治法第244条の2第1項の規定により、公の施設の設置及び管理に関 する事項は香芝市保健センター条例(以下、同条例とよぶ)に規定している。同条例第7 条1項には使用料が規定され、健康増進室1・2及び会議室は庁舎の一部であり、「庁舎 の一部の利用から使用料には当たらない。」との香芝市の回答の根拠はない。 更に、平成25年度の事業の料金と呼称する公金の取り扱いは、決算特別委員会委員の 調査によれば、事業の業務委託を行っている職員が行っていることが判明している。 具体的には、受付は3階または1階の電話にて受付を行い、住民が事業の利用のために 3階に訪れ、事業利用後に、利用負担金とした公金の徴収を受けている。料金の収納は全 て事業委託先の職員が複写の領収書に金額を記入の上発行し、利用者から公金と引き換 えに収納し、事業委託先の職員が香芝市から預かる小さな金庫に保管している。 香芝市職員は利用者からの公金の収納には一切の関与はしておらず、事業の定時終了 後に事業委託先の職員が、1日の公金収納の全てを1階にいる職員に対し公金の引渡し を行っている。 また香芝市職員は、事業により徴収した公金を保管し、月に一度まとめて会計に納付し 11 ている。月に一度にまとめて収納する事件は香芝市会計規則第11条及び第13条違反 と疑われる。 更に「臨床心理事業委託契約書」に記される内容には、公金徴収または収納に関する条 項は設けられておらず、契約以外の行為である。 上記の事由から鑑み、香芝市は「庁舎の一部の利用から使用料には当たらない」と回答 するが、「使用料」または「手数料」の取扱いでないとするならば、一体何の規定にもと づき私人に公金の取扱いをさせているというのか。香芝市の回答の一般私法契約による 収入では、地方自治法施行令第158条第1項に規定する1.使用料、2.手数料、3. 賃貸料、4.物品売払代金、5.寄付金、6.貸付金の元利償還金には含まれず、住民等 から徴収した公金を一般私法契約によるものと解すると、地方自治法施行令第158条 第1項の規定により私人の公金の取扱いはできないと解することになり、論理構成が破 綻しているといえる。 よって香芝市が答弁した事由は違法行為の証明であり、平成25年度に行なわれた事 業執行の事実から、事業は地方自治法第228条第1項に規定する手続きなしには地方 自治法施行令第158条第1項の私人への公金の取扱いは不可能であり、私人が住民等 から公金の徴収または収納はできず、違法不当により公金の徴収または収納を行なった ことになり、地方自治法第243条第1項に抵触し、香芝市長が行なった事業執行及び香 芝市の見解は違法不当と疑われる。 (2)違法不当と疑われる理由2 平成26年9月29日に開催された決算特別委員会では、平成26年9月18日の最 後に決算特別委員長から「鎌田副市長が本日の条例関係について、理事者が再度精査した い旨の申し出がございましたので、改めて9月29日に決算特別委員会の再開を予定し ております」との事由により、精査した結果が答弁された。 再度精査した回答は、小寺一也法律事務所の弁護士・小寺陽平氏から香芝市に対し平成 26年9月24日に報告された回答(以下、報告とよぶ)を香芝市の見解とされた。報告 の内容は決算特別委員会の委員に全て配布された。然し乍ら、回答は決算特別委員会で審 議されていた内容に対し全く別次元のことが回答されている。その理由は3点存在する。 第 1 に、「分担金の対象とならないこと」と回答されているが、分担金に限る徴収の審 議は議事録からは一切確認できない。即ち、「分担金において住民等から料金の徴収を行 なえ」との審議など一切行なっていない。「違法不当と疑われる理由1」でも述べたが、 条例で公の施設として規定されている以上、全て平等の取扱いが必要であり、「使用料」 または「手数料」に規定を制定されなければならない。 第2に、「一般私法契約の原則にもとづく実費徴収であること」と回答されているが、 カウンセリング等に対する対価としての実費が支払われていることは根拠がない。 その理由としては、実費徴収とは、仕事(事務)の処理に当たって要した費用(人件費 等含む)を言い、「違法不当と疑われる理由1」でも述べたが、本事業はがん検診のよう に住民から徴収した以外の費用を国に請求できるものではない。決算特別委員会で審議 している内容に対しての回答には一切なっていない。 また住民等からの実費の額の算出根拠もなく、実費徴収は本質的には条例・規則に根拠 を有することなく徴収できるものだが、実費徴収と回答している以上、住民の税による実 費徴収以外の費用を負担することは許されず、報告からの解釈では実費徴収以外に要し た費用が何処からも歳入なき場合には普通公共団体の損害になると断定していると解す ることができる。 更に条例制定による住民との合意もなく私法上の合意に基づく公金の徴収が可能とす 12 るならば、住民一個人が合意さえすれば、普通公共団体の職員は自由に住民から公金を徴 収する事が可能になり、地方自治法が規定する根拠からは逸脱する。 第3に、「条例根拠が必要となる徴収には該当しないため、返還の要否は検討不要」と あり、「当該利用者である市民は相応するカウンセリング等を受けており、これに対する 相当対価を支払ったのみであるから、損害は発生していない」とするが、実費徴収という ならば、平成25年度の利用者は848人であり、事業に要した費用(委託費用以外の香 芝市職員の人件費は除く)は委託料8,870,000円を要しており、一人当たりに要し た実費費用は10,460円と算出できる。平成25年度に徴収した合計金額は246, 000円と、奈良県の自殺対策緊急強化事業補助金の3,130,408円が収入であり、 実費徴収であれば5,493,592円が香芝市の被った損害額になる。 また「違法不当と疑われる理由1」において述べたが、平成25年度の公金の取扱いは 私人に取扱わせていたものであり、 「条例根拠が必要となる徴収には該当しない」の回答 であれば、事業の執行自体が不可能であったと解することになる。 よって報告にて回答された事由の根拠は一切無いと解し違法不当と疑われる。香芝市 長が示した見解から鑑み、市民から実費徴収した以外の要した費用である4,931,5 92円(利用負担金免除数、281件×2,000円=562,000円は含まず)は、香 芝市長が民法の規定により賠償しなければならないと思われる。 (3)違法不当と疑われる理由3 香芝市の臨床心理事業は上記に事業内容を示したが、臨床心理事業契約書の内容では、 仕様について「平成25年度臨床心理事業実施要領」(以下、要領とよぶ)に基づいてい る。 要領の「6」では、「事業実施にあたっての利用者負担金」と題され、利用者負担金免 除の規定が設けられている。利用者負担金免除の内容は、負担金は地方自治法第240条 第1項の債権(金銭の給付を目的とする普通公共団体の権利)に該当し、負担金免除の行 政処分を行うには、地方自治法第96条第1項第10号により議会の議決をもって権利 を放棄する必要がある。然し乍ら、香芝市は地方自治法第96条第1項第10号の議決は 行っておらず、また条例により負担金免除の規定は設けていない。 よって臨床心理事業による利用者負担金免除は違法と疑われ、利用者負担金免除額(2 81件×2,000円=562,000円)は、香芝市長が民法の規定により賠償しなけれ ばならないと思われる。 (2)監査結果報告及び意見 ①がん検診事業について まず、がん検診事業の費用負担であるが、がん検診事業は(1)通常保健事業と(2)クーポ ン事業に区分される。 (1)通常保健事業は、市の単独事業(交付税措置とされているが、国庫補助金等の特定 財源ではなく一般財源である。)のため、検診費用は市が決定する。検診費用は、健康保 険の適用外であるため、自己負担金を決定し、残額を市の負担としている。(2)クーポン 事業は受診者の負担は無料であるが対象となるのは国のがん検診推進事業の実施年齢対 象者のみである。費用は、国庫補助負担が2分の1、市負担が2分の1と定められている が、国庫補助には基準額があるため、実質的には国庫補助は4分の1程度で残額は市の負 担となっている。 市の事業として実施しているがん検診事業について、その受診者から費用負担を求め ることは当然考慮されるべきことであると考える。なお、負担金の根拠について市の要綱 13 や要領などにより明確に規定しておく必要があるのは当然のことである。 ②使用料及び手数料について 地方自治法第225条では、「普通地方公共団体は、第238条の4第7項の規定によ る許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することが できる。」と規定されている。 香芝市保健センター条例に基づき使用を許可できる室は、健康増進室1・2及び会議室 であり、同条例第4条第1項に「健康づくり等の保健活動を行うため保健センターを使用 する者は、あらかじめ市長の許可を受けなければならない。」と規定されている。3階の 臨床心理ゾーンは、1階問診室や2階歯科検診室と同様に使用を許可できる室ではない。 健康増進法に基づき実施する健康増進事業を実施するため市が使用する室と考えられる。 このことから、利用者から使用料を徴収するのは適当ではないと考えられる。 地方自治法第227条では、「普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体の事務で特 定のためにするものにつき、手数料を徴収することができる。」と定めている。 臨床心理事業は、がん検診事業と同様に、健康増進法に基づき市が実施する事業である と考えられる。このことから、「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」に掲げられ た「標準事務」及び「香芝市手数料条例 別表」の「手数料の種類」欄に掲げられた「事 務」並びにそれらに類似する「事務」に該当するものではなく、手数料として徴収するの も適当ではないと考えられる。 ③カウンセリング料金について しかしながら、がん検診事業と同様にカウンセリングを受けた人から費用負担を求め ることは当然考慮されるべきことであると考える。 また、臨床心理事業にかかる全費用を、カウンセリングを受けた人だけが負担するのは、 上記のように市が実施する事業としては適当とは考えられない。 したがって、臨床心理事業において、「費用負担」を「実費負担」と表現するのは適切 とはいえない。 以上のことから費用負担金の根拠について市の要綱や要領などにより明確に規定して おく必要があるのは当然のことである。臨床心理事業については、「臨床心理事業実施要 領」の「Ⅱ 基本計画 6 事業実施にあたっての利用者負担金」に規定され、免除につ いても規定されている。この場合の利用者負担金は、上記に述べたように条例により定め るべき使用料及び手数料には該当しないものであり、市長(または香芝市事務決裁規程に よる専決事項区分)の裁量により決定できるものと考えられ、また減免についても同様で あると思料する。 ④カウンセリング料金の徴収及び収納について 次に、カウンセリング利用料金の徴収及び収納の流れであるが、平成25年度について は、(1)カウンセリング当日、カウンセリング実施前に、受託者が利用料金を受領し、 「香 芝市の領収印」を押印した領収書を発行する。「香芝市の領収印」は香芝市から貸し出し たものであり、領収書にはすでに金額が印字されている。(2)受託者は、領収した利用料 金と領収書の控えを、市が渡した手持ち金庫に入れる。(3)全カウンセリング終了後、保 健センター職員に渡す。(4)保健センター職員が1ヶ月分まとめて調定し、収納する。と いう流れである。 しかしながら、利用料金は、上記に述べたように地方自治法施行令第158条に規定す る普通地方公共団体の歳入、すなわち使用料・手数料等、私人に徴収または収納委託でき るものではない。また業務委託契約書にも当然のことながら収納事務委託の条項はない。 カウンセリング料金は市職員自らが徴収しなければならない。 14 平成26年度も、当初は平成25年度と同様としていたが、9月議会決算特別委員会に おいて委員の指摘を受け、次のように改めた。(1)カウンセリングは予約制のため、カウ ンセリング当日、カウンセリング実施前に、保健センター職員が臨床心理ゾーンに行き、 利用料金を受領し、 「香芝市の領収印」を押印した領収書を発行する。(2)保健センター職 員は、その日のうちに調定し、収納する。銀行が閉まっている場合は、翌営業日に収納す る。という流れである。 是正される前は、受託者にカウンセリング料金を受け取らせ、しかも「香芝市の領収印」 を預けて領収書まで発行させていた。そして全カウンセリング終了まで、料金を預からせ ていた。このような公金の取扱いにおける不適切な処理は、市民の信頼を損ねることにつ ながることを常に意識し、事故防止のため厳格かつ適正に執行されなければならない。 ⑤まとめ 臨床心理事業実施の趣旨は、その実施要領によれば、 「さまざまな心の問題や心の症状 など心の辛さで悩む人たちの解決や解消、軽減に向けての心理的支援による早期発見・早 期支援による相談から解決に向けて、ライフステージに対応した総合的・専門的な心理的 支援の体制の構築を図る。問題解決にあたっては、各種福祉サービス、医療機関、国・県 等の関係機関とも連携協調を行っていく。」ものであり、まさに精神保健福祉の充実の観 点から、市民のこころの健康増進をめざす保健センターが行う事業のなかでも、最も重要 な事業のひとつに位置づけられるものであると考える。 しかしながら、その運営実務について、事業実施の根幹ともいうべき地方自治法及び同 法施行令の遵守義務が軽視されており、法令遵守の意識が希薄であると言わざるを得な い。また、契約書に記載のない事務を受託者に取り扱わせていた ことは、カウンセリング利用者ひいては香芝市民全体に対する信用を失墜させることに もなりかねないことを熟慮され、猛省を促したい。 今後も保健センターの重要事業として実施される臨床心理事業については、その運営 実務についても、法令等を遵守し適正に執行されたい。 なお、本件行政行為の違法性については、行政行為に瑕疵があったと思われるが、香芝 市及びカウンセリング利用者そして香芝市民の利益に損害を与えたとまでは言えず、ま た平成26年度は是正措置をとられたことから、瑕疵は治癒されたと考えられる。 7 デマンド交通(タクシー)事業について (1)議会請求理由 香芝市デマンド交通運行業務の事業は、平成25年10月1日から27年3月31日 までを期限とし、「デマンド交通実証運行計画」に則し、(株)竜田タクシーと業務委託契 約(以下、契約とよぶ)を交わし香芝市が行なっている事業(以下、事業とよぶ)である。 事業は、契約第4条に規定される特別特記仕様書による内容の事業を委託している。事 業内容の主なものは、タクシー8台を運行し、1回利用に対し200円の運賃を徴収し、 土・日以外の平日の運行を行なっている。 平成26年9月に行なわれた決算特別委員会での香芝市の答弁では、 「デマンド交通に つきましては、実証運行中ということでございまして、費用の一部を負担をしていただく というような考え方で進めてきたものでございます。」と回答され、 「デマンド交通につい ては実証運転中ということでございまして、普通使用料については、公の施設ということ になりますが、デマンド交通のそういう施設については公の施設に当たらないというこ とで考えております。」と回答があった。 15 更に平成26年9月25日の一般質問による議員からの質問に対して、 「私法上の契約 というふうに考えておりまして、条例制定の必要はないというふうに考えております。」 と答弁し、更に議員からの質問で、 「必要であれば制定していかなければならないという ことは、私法上の契約じゃないということになるということですね、そういうことです ね。」と条例制定に関し問われた質問に対し、理事者から「制定しなければならないとい うことになればそういうことになろうと思います。」と回答されている。 また平成26年9月29日に開催された決算特別委員会では、平成26年9月18日 の最後に決算特別委員会委員長から「鎌田副市長が本日の条例関係について、理事者が再 度精査したい旨の申し出がございましたので、改めて9月29日に決算特別委員会の再 開を予定しております」との事由により、精査した結果が答弁された。 再度精査した回答は、小寺一也法律事務所の弁護士・小寺陽平氏から香芝市に対し平成 26年9月24日に報告された回答(以下、報告とよぶ)を香芝市の見解とされた。報告 の内容は決算特別委員会の委員に全て配布された。以上の事由により、以下に違法不当と 疑われる理由を示す。 (1)違法不当と疑われる理由1 香芝市が決算特別委員会で行なった答弁では、 「デマンド交通につきましては、実証運 行中ということでございまして、費用の一部を負担をしていただくというような考え方 で進めてきたものでございます。」と回答するが、実証運行で行なっていることと、条例 等において何ら規定もせず市民から公金を徴収することは別次元の話であり、根拠も一 切示されていない。 また「デマンド交通については実証運転中ということでございまして、普通使用料につ いては、公の施設ということになりますが、デマンド交通のそういう施設については公の 施設に当たらないということで考えております。」とも答弁にて回答されている。 更に「私法上の契約というふうに考えておりまして、条例制定の必要はないというふう に考えております。」とも回答している。 以上の理由を総括すると、①実証運行なので自由に市民から公金を徴収してよい、②公 の施設ではない、③私法上の契約なので条例の制定は必要ない、が答弁の本旨になる。以 上の香芝市の答弁による回答に反論し、違法不当と疑われる理由を述べる。 ①「実証運行なので自由に市民から公金を徴収してよい」について 公共交通における実証運行は、本運行に向けて「運行計画」が適正に運用できるかの確 認の趣旨である。全く異なる事由で計画を変更するのであれば、認可条件とは大きく異な り、改めて一から運行計画を策定し実証運行も再び行なうことになる。 市民からすれば実証運行であれ、本運行であれ提供されるサービスは何ら異なること はなく、その違いを理解することは皆無といえる。また実証運行である理由から、市民か ら公金を徴収する事に関し規定しないとする根拠も一切見当たらない。 更に香芝市の見解である弁護士の報告の中にも、 「実費負担額の相当性等につき市場調 査」と言われるが、香芝市公共交通活性化協議会(以下、法定協議会とよぶ)の目的は、 各民間事業への理解を得る為に合意形成を行なう法定協議会であり、運賃の決定は法定 協議会の合議制により既に決定されたものである。 その為に市長には料金決定の一切の裁量権はなく、市長の意見により運賃の変更があ るものではなく、運賃の市場調査のために実証運行を行なっているものではない。よって 実証運行は何ら流動的な事由はなく、実証運行が理由で、自由に市民から公金を徴収して よいとの理由は一切ないと思われる。 ②「公の施設ではない」について 16 香芝市及び香芝市の見解とされた弁護士の報告では、 「民間の所有のタクシー車両を利 用して行なう事業であり、市が所有する『公の施設』には該当せず」と回答されている。 公の施設とは、住民が差別なく平等に利用できるものをいい、民間に委託している等の 事由は関係ない。報告の趣旨が妥当であるとするならば、全国の普通公共団体が賃貸契約 の施設や民間会社からリースするパス車両等は全て公の施設と解せないこととなる。 また「使用料の対象とはならない」と報告されるが、香芝市が行うデマンド交通は、竜 田タクシーに事業委託(請負)しており、公金はデマンドタクシーの運転者が徴収してい る。 報告にいう「一般私法契約の原則に基づく実費徴収」には更に問題が生じる。問題点は、 実費徴収というのであれば、平成25年度において運行委託料で20,780,790円 であり、システム使用料で1,127,070円の支出であり、合計21,907,860円 の事業費を要している。運賃収入は2.313,200円であり、差し引き20,780,7 90円が香芝市の被った損害になる。 実費徴収は上述したが、仕事(事務)の処理に当たって要した費用(人件費等含む)を 言い、それを受益者が負担する事を言う。よって報告にて回答された事由の根拠は一切無 いと解し違法不当と疑われる。香芝市長が示した見解から鑑み、市民から事業の実費徴収 を行ったという事由を訴えるならば、それ以外の要した費用である20,780,790 円は、香芝市長が民法の規定により賠償しなければならないと思われる。 ③「私法上の契約なので条例の制定は必要ない」について 香芝市が弁護士の報告を見解とする「一般私法契約の原則に基づく実費徴収」にて公金 を徴収するのであれば、地方自治法第243条第1項に抵触する。また地方自治法施行令 第158条第1項に規定する1.使用料、2.手数料、3.賃貸料、4.物品売払代金、 5.寄付金、6.貸付金の元利償還金には含まれず、住民等から徴収した公金を一般私法 契約と解すると、地方自治法施行令第158条第1項の規定により私人の公金の取扱い はできないと解することになり、論理構成が破綻しているといえる。 更に契約第8条の「利用運賃」では、「乙は、毎月の運行実績の報告と共に徴収した利 用運賃を、甲に入金するものとする」と記され、 「香芝市デマンド交通運行業務特記仕様 書」の「5.利用運賃」にも「徴収業務及び発注者への入金業務」と明記されており、地 方自治法第243条第1項及び香芝市会計規則第11条及び第13条に抵触しており、 契約自体に瑕疵があると解する。 要するに、デマンドタクシーの運転者(私人)は公金の徴収または収納行為が一切でき ず、平成25年度に施行されたデマンドタクシー事業の形態を鑑みると、運賃を香芝市の 収入とし公金として取り扱っている以上、公の施設の「使用料」または「手数料」として 地方自治法第228条の規定により条例で定めなければ、事業の執行は不可能である。よ って平成25年度に行なったデマンド交通事業については、香芝市長が行った行為は違 法と疑われ、香芝市の見解も違法不当と疑われる。 (2)監査結果報告及び意見 ①運賃収入の帰属について 香芝市地域公共交通活性化協議会(以下「協議会」という。)において、 「運賃収入は香 芝市に支払うものとする。」と示されたのは、平成25年4月17日(火)第12回協議 会及び平成25年4月30日(火)第13回協議会においてである。第12回協議会では 「議題5 デマンド実証運行事業者の選定についての資料6-2 香芝市デマンド交通 運行業務仕様書3 委託契約の方法」の中で「ただし、運賃収入は香芝市に支払うものと 17 する。」と示され、また第13回協議会では「議題2 香芝市デマンド交通実証運行事業 者選定(案)についての資料1-2 仕様書(案)3 委託契約の方法」の中でも変更さ れることなく再度「ただし、運賃収入は香芝市に支払うものとする」と示されている。 香芝市ホームページで公開されている会議録を見る限り、運賃の金額や車の車種・台数、 乗降ポイント等の協議はあったが、運賃収入の帰属については、会議の中でも協議はされ ていなかったように思われる。 そして仕様書(案)は協議会の議題としては異議なく承認されている。 ②香芝市デマンド交通の運送事業約款について 香芝市デマンド交通の一般乗合旅客自動車運送事業運送約款(以下「デマンド交通運送 約款」という。)は、受託者が近畿運輸局長に平成25年7月31日付けで申請書を提出 し、平成25年8月28日付けで認可された。 また、一般乗合旅客自動車運送事業運賃及び料金の設定届けも地域公共交通活性化協 議会において協議が整っていることの証明を添付して同日付けで届出されている。 デマンド交通運送約款第7条(運賃及び料金)では「当社が収受する運賃及び料金は、旅 客の乗車時において香芝市地域公共交通活性化協議会において協議が整い、地方運輸局 長に届出をしているものによります。」と規定され、第8条(運賃及び料金の収受)では「当 社は、旅客の乗車の際に運賃及び料金の支払いを求めます。」と規定されている。 したがって、デマンド交通事業において、「運賃収入」を「実費負担」と表現するのは 適切とはいえない。 そして、デマンド交通運行業務委託契約書第8条(利用運賃)において、「受託者は、毎 月の運行実績の報告と共に徴収した利用運賃を、市に毎月入金するものとする。」と規定 されている。 デマンド交通において旅客が事業者に運賃を支払い、それを事業者が受け取るのは、 「運賃及び料金の設定届」及び「運送約款設定認可申請書」で認可を受けているので、そ れ自体において問題は生じない。 しかし、運賃収入を市の歳入とすることにより、私人の公金取扱い制限の問題が起こる。 ③運賃収入を香芝市の歳入とすることの問題点について 地方自治法第243条(私人の公金取扱いの制限)では「普通地方公共団体は、法律又 はこれに基づく政令に特別の定めがある場合を除くほか、公金の徴収若しくは収納又は 支出の権限を私人に委任し、又は私人をして行なわせてはならない。」と規定されており、 地方自治法施行令第158条(歳入の徴収又は収納の委託) 第1項で、 「次に掲げる普通 地方公共団体の歳入については、その収入の確保及び住民の便益の増進に寄与すると認 められる場合に限り、私人にその徴収又は収納の事務を委託することができる。 一 使 用料 二 手数料 三 賃貸料 四 物品売払代金 五 寄附金 六 貸付金の元利償 還金」と規定されている。 運賃収入を「使用料または手数料」による歳入としないかぎり、受託者に公金の取扱い (歳入の徴収又は収納の事務)はできない。 上記で述べたとおり、デマンド交通運送約款第7条及び第8条においては、運賃は事業 者すなわち受託者が収受することを規定されている。 したがって、デマンド交通が、認可されたデマンド交通運送約款により運行されている 限り、運賃収入を歳入「雑入(デマンド交通利用料金)」として収入することは、できな いと考えられる。 つまり、デマンド交通において、運賃収入は受託者(事業者)以外の者が収受できない ことはデマンド交通運送約款上、明白であった。にもかかわらず、運賃収入を市の歳入(雑 18 入)とすることによって「私人」に公金を取り扱わせ、しかもそれを委託契約書に明記し たということになる。 ④公の施設としての取扱いについて 公の施設は、普通地方公共団体が、当該普通地方公共団体の住民の福祉を増進する目的 をもって、当該住民の利用に供するため、設ける施設である。 公の施設の設置に当たり、普通地方公共団体は当該公の施設について何らかの「権原」 を有していることが必要である。しかし必ずしも所有権を取得することは必要でなく、賃 借権、使用貸借権等、所有権以外で当該公の施設を住民に利用させる「権原」を取得する ことをもって足りる。(逐条地方自治法第7次改訂版1034頁) 民法によれば、ある物を使用する場合、所有権や地上権等といった物権や、賃借権や使 用貸借権等の債権がその使用を正当化する「権原」である。 デマンド交通運送約款第1条第1項では「当社の経営する一般乗合旅客自動車運送事 業(香芝市地域公共交通活性化協議会において協議が整った香芝市全域へタクシー車両 による乗合運行(以下「香芝市デマンド交通」という。)に限る。)に関する運送契約は、 この運送約款に定めるところにより、」と規定されている。 また、香芝市デマンド交通運行業務仕様書の「4 業務内容 (2)実証運行に必要な 業務 ①使用する車両の準備」によれば「・利用見込みを勘案し、運行に使用する使用す る車両を受託事業者が準備する。※運行に使用する車両は最大8台までとする。※使用す る車両は、道路運送法及び道路運送車両法等の規定に基づく、事業用自動車の要件を満た している車両とする。※運行に使用する車両については、受託事業者が整備・維持、保管 等を行うこととする。※使用する車両には、デマンド交通(乗合運行)であることが明確 に分かる標章を、香芝市の指示により表示する。」と規定されている。 以上の規定からは、「香芝市」が「使用する車両」を公の施設として住民に利用させる ため、賃借権、使用貸借権等、所有権以外で住民に利用させる権原を取得していることは 読み取れない。 したがって、現在のデマンド交通運送約款及び業務委託契約書により「使用する車両」 は「公の施設」ではないと考えられる。 ⑤是正措置の検討について 以上のことから、運賃収入を受託者との契約により、香芝市の歳入として「雑入」に収 入しているのは、地方自治法第243条及び地方自治法施行令第158条第1項の規定 に明らかに違反している。至急是正措置をとらなければならないと考える。 是正措置として、平成26年度分について、地域公共交通活性化協議会に諮り、業務委 託契約書及び仕様書を変更して、運賃収入は受託者の収入とし、委託料から運賃収入相当 額を差し引き精算して受託者に支払う方法が考えられる。 また、平成25年度分については、誤った手続きを是正することとして運賃相当額を受 託者に返還し、受託者から支払った委託料から運賃相当額分を返還してもらうという方 法も考えられるが、香芝市及びデマンド交通利用者(旅客)そして香芝市民の利益に損害 を与えたとまでは言えないので、実施するかどうかは別にして、市が誤った手続きを是正 する姿勢を示す方法の一つであると提案するにとどめることとする。 平成27年度以降は、平成26年度分の是正措置と同様の取り扱いとするか、 「使用料」 として条例を制定し、徴収委託の告示を行い、歳入科目も「使用料」とする方法が考えら れる。 この場合、デマンドタクシーは「公の施設」として香芝市が賃借権、使用貸借権等所有 権以外で当該公の施設を住民に利用させる権原を取得しなければならない。 19 また、 「公の施設」とするならば、 「指定管理者による管理運営」とするか「直営による 管理運営」とするかという選択も検討する必要がある。 なお、公金を取り扱わない方法として「証紙収入」という方法も考えられるが、「使用 料または手数料」の歳入としなければならないため(地方自治法第231条の2第1項)、 いずれにしても条例制定が必要である。また、「5 一般廃棄物処理手数料(し尿汲み取 り費用)の徴収について」で述べたように「証紙による収入による場合においては、証紙 の売りさばき代金をもって歳入とする。」ため、当該年度の実質的な運賃収入が把握しに くい。またデマンド交通利用者の利便性を考えると証紙購入の手間がかかり、効率的な業 務運営とは考えにくい。 ⑥まとめ 以上みてきたとおり、運賃収入を香芝市の歳入とすることを検討する過程では、上記に 述べた種々の問題点をそれぞれ慎重に検討されなければならなかった。 デマンド交通運行事業実施の趣旨は、交通不便者の足の確保及び高齢者等の社会参加 を通じた健康増進と生き甲斐づくりを図るため、低定額料金を設定した電話予約による デマンド型乗合交通手段を提供するものある。 これまでにはなかった便利な、市民誰もが利用できる交通手段のひとつであり、まさに 「住むなら かしば」の観点から、市民の心豊かで健康な生活充実をめざす香芝市が行う 事業のなかでも、最も重要な事業のひとつに位置づけられるものであると考える。 しかしながら、その運営実務について、事業実施の根幹ともいうべき地方自治法及び同 法施行令の遵守義務が軽視されており、法令遵守の意識が希薄であると言わざるを得な い。しかも現在も是正されないままに事業が継続されていることは、利用者(旅客)ひい ては香芝市民全体に対する信用を失墜させることにもなりかねないことを熟慮され、猛 省を促したい。 至急に是正措置をとられることを強くお願いする。 また、今後も香芝市の重要事業として実施されるデマンド交通事業については、その運 営実務についても、法令等を遵守し適正に執行されたい。 8 総括 (1)議会請求理由 上記した事由により、香芝市が平成25年度に行なった一部の行為は違法不当と解す ることができる。 その理由を総括的にまとめると、普通地方公共団体は地方自治法(以下「法」とよぶ) 第2条第2項の規定に基づき「普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務 で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。」とされる。 また法第2条第16項及び第17項には、 「地方公共団体は、法令に違反してその事務 を処理してはならない。」とされ、 「前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、 これを無効とする。」と規定される。 また法第96条に規定される普通公共団体の議会の議決事項として、法96条第1項 第2号に「予算を定めること」及び同法4号に「法律又はこれに基づく政令に規定するも のを除くほか、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関 すること。」と規定される。 然し乍ら、香芝市の意見では、法の「第1条の2の第1項におきまして、地方公共団体 は住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に 20 実施する役割を広く担うものとするということが明記」及び、 「私法上の契約につきまし ては、特段法律の根拠を必要としない」を理由に、法律又はこれに基づく政令又は条例及 び議会の議決を要しなくとも私法上の契約という理由で市長の裁量において自由に住民 から公金を徴収できるものと解している。 けだし、法の趣旨から鑑みれば、普通公共団体は収入において法自第223条至第22 7条が規定され、法第228条では条例を定めなければならないと規定される。 また法自第223条至第227条及び法第228条の法理は、憲法第94条に基づく 法第14条第1項の「法令に違反しない限りにおいて・・条例を制定する事ができる」と 規定され、法第14条第2項の「義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定 めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」と規定され、憲法第94条の 規定に基づき、公金の収入に関する義務を課す行為を明文化するものである。 然し乍ら、香芝市は上記に示したようにデマンドタクシー事業及び臨床心理事業にお いては「私法上の契約」として香芝市長の裁量により市民から公金を徴収する義務を課し、 更に利用者の権利を制限する行為を行っている。即ち、法第14条第2項に規定される法 理が遵守されずに行なわれている。 まして香芝市は、法第1条の2第1項の規定を理由に「私法上の契約」を根拠に法第1 4条第2項に基づく住民への義務を課し、権利の制限を行なうことは条例に基づかなく とも行なえる趣旨の見解を示しているが、この解釈は憲法第92条に規定される地方自 治の本旨に基づくものとは言えないと恩われる。 なお地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる 構成として保障する地方自治の本旨に基き〔憲法第92条〕、直接憲法第94条により法 律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法にほかならないと解し、議会の 議決事項である条例制定の手続きも行なわずに住民に義務を課し、権利の制限を行なう ことは、地方公共団体の長の裁量権を逸脱する事は明らかであると恩われる。 その理由としては、「条例のこの効力は、法令また条例に別段の定めある場合、若しく は条例の性質上住民のみを対象とすること明らかな場合はこの限りでないと解すべき」 (最大判昭和26(あ)3188昭和26年新潟県条令第四号違反事件)に示されるよう に、住民に義務を課し、権利を制限することは条例に基づかなければ一切の効力がないも のと解することができる。 また法第1条の2第1項に規定される内容は憲法第13条に基づくと解するところで あるが、 法第1条の2第1項の規定により何ら法的手続きも経ずに地方公共団体の長の 裁量だけで住民に義務を課し、権利を制限する行為は行えないことは言わずもがなであ る。 更に香芝市は、「予算案を計上させていただいて、その事業の正当性を議会のほうで予 算審議のなかで認めていただいている」と意見するが、法第2条第2項の規定に基づき法 令順守を前提とした予算審議を議員が行なっていることは当然のことであり、予算が成 立したという理由で法令に基づかない行為を行ってよいという解釈には一切ならないと 同時に、予算(見積もり)成立と法令順守は別次元の審議である。 最後に、香芝市長は「我々も法またはルールを破っているという前提でここに来ている わけではございませんので、今所管が申し上げたように、それぞれの考え方のなかで、解 釈のなかで、これでやっていこうと、これで事業を進めていこうということでさせていた だきましたので、どうか皆様のご理解を賜りたいなと,思っております。」と意見してい るが、「それぞれの考え方のなかで、解釈のなかで、これでやっていこうと、これで事業 を進めていこうということ」ではなく、すべて地方公共団体の長の責任において裁量で行 21 ったことを忘れてはならない。 「議会としては,基本的にはその裁量事項であっても、単なる政治的・党派的判断ない し温情的判断のみで処理することなく、その逸脱・濫用とならないように、本件の法廷意 見が指摘した司法判断の枠組みにおいて考慮されるべき諸事情を十分に踏まえ、事案に 即した慎重な対応が求められることを肝に銘じておくべきである。」 (平成21(行ヒ)2 35 損害賠償請求事件 平成24年4月20日 最高裁判所第二小法廷 判決)と教 示されるとおり、故意又は過失等及び帰費性を判断し峻厳な対応を議会は求められるも のである。 よって、上記の怠る事実を違法と疑われると意見したことには,所論によると怠る事実 の適否に関する審理を尽くさなかった結果、法令の解釈適用を怠った違法があるものと 思われ、「理由書1」及び「本書」で示したとおり、法第2条第17項の規定のとおり法 令に違反して行った行為はすべて無効であると思われることから、香芝市議会は、地方自 治法第98条第2項の規定に基づいて、監査委員に対し監査を求め、監査結果に関する報 告を求めるものである。 (2)監査結果報告及び意見 ①地方自治法第223条から第227条まで及び第228条について 地方自治法第223条は地方税、第224条は分担金、第225条は使用料、第226 条は旧慣使用の使用料及び加入金、第227条は手数料について規定し、第228条は 「分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなけれ ばならない。」と規定している。 まず、臨床心理事業におけるカウンセリング料金は、使用料及び手数料ではなく、事業 実施にあたっての利用者負担金と考えられ、条例で定める必要はないと考える。また、デ マンド交通における運賃は、デマンド交通運送約款で定められた運賃であって旅客とし て事業者に当然支払わなければならないものであり、これを条例で定める必要はないと 考える。 ただし、「香芝市」が「使用する車両」を公の施設として住民に利用させるため、賃借 権、使用貸借権等、所有権以外で住民に利用させる権原を取得した場合は、公の施設の利 用につき使用料を徴収することとなり、条例で定めなければならないと考える。 ②地方自治法第14条第2項について 次に地方自治法第14条第2項に定めるいわゆる「義務の賦課または権利の制限につ いて定める条例」における「義務の賦課または権利の制限」とは、市民等に対し、一定の 行為について市への届出を求めることや、一定の行為自体を禁止することなどをいう。 例えば、 「香芝市自転車等の放置防止に関する条例」における自転車等の放置の禁止(第 8条)及び費用の徴収(第11条)、 「香芝市都市公園条例」における行為の制限(第3条)、 行為の禁止(第5条)及び利用の禁止又は制限(第6条)、 「香芝市あき地に繁茂した雑草 等の除去に関する条例」における措置命令(第6条)及び罰則(第9条)などである。 上記で述べたとおり、臨床心理事業におけるカウンセリング料金は事業実施にあたっ ての利用者負担金であり、デマンド交通における運賃は、デマンド交通運送約款で定めら れた運賃であって旅客として事業者に当然支払わなければならないものであり、地方自 治法第14条第2項に規定する「義務の賦課または権利の制限」には当たらないものと考 えられる。 ③地方自治法第2条第16項及び第17項について 地方自治法第2条 22 第16項 地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。 なお、 市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない。 第17項 前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする。 広く「行政」において「行政行為の瑕疵」とは、行政行為が法の定める要件を欠く場合 (違法な行政行為)または公益に反する場合(不当な行政行為)をいう。 行政行為の瑕疵には、「行政行為を無効にするもの」と「行政行為を取り消し得べきも のとするもの」の2種類がある。 この無効の瑕疵と取り消し得べき瑕疵とを区別する基準について、判例は瑕疵が「重大 かつ明白な場合」に限って行政行為は無効となるとしている。「行政処分は、たとえ違法 であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき 場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解」される (昭和26(オ)915 耕作権確認請求 昭和30年12月26日 最高裁判所第三小 法廷 判決 集民第20号911頁)。 また、瑕疵の治癒とは、違法な行政行為が、その後の事情により欠けていた要件が充た されることにより瑕疵がなくなった場合に、当該行政行為を合法・正当なものとして扱う ことをいう。 違法行為の転換とは、ある行政行為に瑕疵があって本来は違法であるが、これを別の行 政行為としてみたときには瑕疵がない場合に、その別の行政行為として合法なものとし て扱うことをいう。 瑕疵の治癒も違法行為の転換も、手続の繰り返しの防止など、行政経済の見地から行わ れるものである。しかし、これらを安易に認めることは法律による行政の原理に反する。 したがって、瑕疵の治癒や違法行為の転換は、違法が軽微な場合で、かつ、当事者および 第三者の利益を害さないといった限定的な場合にのみ認めるべきと解されている。 監査委員の判断として、2 監査対象事項の(2)から(6)までの事業について、行 政行為の違法性については、行政行為に瑕疵があったと思われるが、香芝市及び利用者等 そして香芝市民の利益に損害を与えたとまでは言えず、また平成26年度は是正措置等 をとられたことから、瑕疵は治癒されたと考えられる。 また(7)デマンド交通事業については、上記「(2)監査結果報告及び監査意見 ⑤是正措置の検討について」において述べたとおりである。 その上で当然「地方自治体が法令に違反し、・・・た場合には、これらの地方公共団体 の行為は無効である(第17項)。しかしながら、このような無効の判定は、当然に認定 されるものとすることはできないのであって、結局、それは個々具体の事例における裁判 所の判決にまつこととなろう。」 (逐条地方自治法第7次改訂版69頁)との意見に同意す るものである。 第4 むすび 当職は平成24年度決算審査意見書の「むすび」において、「自治体行政における「ガ バナンス・内部統制」、 「コンプライアンス・法令遵守」、 「アカウンタビリティ・会計上の 説明責任」の必要性及び重要性を今一度痛感され、今後の行財政運営にこれらの理念と仕 組みを導入・活用して、香芝市のため自家薬籠中のものとされることを期待する。」と述 べた。 さらに、平成24年度決算の訂正に伴う追加審査において、「法令遵守及び説明責任の 意識が職員個々のみならず、組織全体として欠如しており、市民の信頼を大きく損なうこ ととなったといわざるを得ない。・・・まず、個々の職員が、携わる職務に向き合い、現 23 状を認識し、意識を改革し、真摯に職務遂行することが、大前提である。そのうえで、再 発防止策を着実に実施することが重要であり、市長を先頭に、職員一丸となり市職員とし ての原点に立ち返り、信頼回復に努められることを、強く要望するものである。」との「追 加意見」を述べた。 そして市議会議長からも再度「監査委員からの追加意見、まずこれを市長以下、職員の 方々、真摯に受けとめ、二度とこのようなことがないような形の鋭意努力をお願いさせて いただきます。」との要請をしていただいた。 これを受けて市長からは、 「監査委員のご指摘も真摯に受けとめ、原因の追求、そして 今後の新しい人の心の刷新、仕組みづくりに取り組んでまいりたいと思います。そして、 まずは平成25年度上期の執行状況の洗い直し、そして平成25年度下期の執行をしっ かりしていく。平成26年度の予算編成に向けて取り組んでまいることをお誓い申し上 げたい」との答弁をいただいた。 にもかかわらず、平成25年度決算においても議会から監査請求を受けるという事態 となったものである。 特に公金の取扱いについては、定期監査においても厳格かつ適正な執行をお願いして きたところであるが、当職の指摘を真摯に受けとめてこられたのであろうか、疑念を持た ざるを得ない。 まず、現在行われている事業については、漫然と継続するのではなく、常に適法性を始 め、多角的・多面的に、見直しや点検及び検証を行っていただきたい。 そして、定期監査等で指摘した事項については、迅速に対処していただきたい。当職と しても今後、過去に指摘した事項について、その後の状況をさらに厳しく検証していきた い。 次に新規事業については、法制面だけではなく、制度設計・財政関係を含めあらゆる角 度から、開始までに検討・検証を重ね、万全の体制で開始していただきたい。その際、第 三者的に詳細なチェックができる内部機関・部署を新設されることも、今後検討されるこ とをお願いしたい。 信頼回復の道は遙かに険しく厳しいものとなったが、倦まず弛まず地道な努力を継続 していただくことを市長(執行機関)に強くお願いする。 当職としても一層、秋霜烈日の厳を増して監査執行に当たりたいと考えている。 最後に、議会におかれては監視機関として優れた機能を発揮してこられたことに敬意 を表するとともに、今後とも執行機関の信頼回復への努力を叱咤激励していただくこと をお願いして、監査結果報告のむすびとする。 24