...

オーロニ大学

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

オーロニ大学
(2)Ohlone College(オーロニ大学)
1)概要
カリ フォ ルニア 州フ リーモ ント 市にあ る公 立 2 年制 大 学
(図1).フ リーモ ント 市は ,サン フラン シス コ空港 から 車
で移動 して 約 1 時 間で 着く.オ ー ロニ大 学は ,1965 年に 設
立し,フリーモントキャンパスとニューアークキャンパス
の2つ があ る.今回 の 視察先 のフ リーモ ント キャン パス は,
フリーモント市を見渡せる丘の連なりを切り開いて作られ
ている .
オ ー ロ ニ 大 学 で は , フ リ ー モ ン ト キ ャ ン パ ス と ニ ュ ーア
ークキ ャン パス,通信 制あわ せて 毎年,19,000 名の学 生が
入学し てい る.ま た, 障害学 生は 約 500 名 入学し てお り,
図1
オーロニ大学正面
聴覚障 害 250 名 ,学 習障害 165 名,精 神障 害 60 名, 肢体
不自由 45 名,視覚障 害 23 名 ,自閉症 スペ クトラ ム 12 名など の 学生が 在籍 してい る.その障
害学生 の 30% は 2 つ 以上の 障害 が重複 して いる学 生で あり, 主に 聴覚障 害と 肢体不 自由 ,聴
覚障害 +精 神障害 など が挙げ られ る.聴 覚障 害学生 が多 い背景 には ,ろう 教育 学部( Center for
Deaf Studies)や 聴覚 障害学 生専 門の支 援サ ービス 部門 がある こと と,歴史的 にもカ リフ ォル
ニア州 立フ リーモ ント 聾学校 との 深いつ なが りがあ るこ とと関 わっ ている .
フ リ ー モ ント キ ャ ン パス に あ る 障害 学 生 支 援に 関 わ る 部局 で は , Student Services Center
内にあ る Disabled Students Programs and Services と Center for Deaf Studies の 2 つがあ
り,前 者は ,全障 害学 生に対 する 支援,後者 は聴覚 障害 学生及 び入 学前段 階で の聴覚 障害 者に
対する 支援 を行っ てい る.それ ぞ れの部 局で 中心的 な役 割を担 って いる方 々に 各部局 の概 要や
高大連 携に ついて イン タビュ ーを 行った .
2)障害学生支援と高大連携について
①Disabled Students Programs and Services
(障害学生プログラム及びサービス部門)
・概要
Disabled Students Programs and Services( 図
2)
代表の Ann Burdett 氏 に,DSPS の概要 と高 校に対
図2
する
DSPS の 看 板
支 援 体 制 に つ い て イ ン タ ビ ュ ー し た . Disabled Students Programs and Services( 以 下 ,
DSPS)は,あらゆ る障 害のあ る学 生への 支援 サービ ス全 般を担 当す る部局 であ り,代 表の Ann
を始め ,カ ウンセ ラー 2 名, 学習 支援担 当 1 名,学 習障 害専門 担当 2 名, PE 学習支 援及 び カ
ウンセ リン グ担当 1 名 ,代替 メデ ィア専 門担 当 1 名 等あ わせて計 9 名のス タッ フが DSPS の
運営や 障害 学生支 援を 担って いる .
4
DSPS が提 供する 支援 サービ スは 表2の 通り であり ,学 習面 ,心 理 面,キャ リ アの面 ,経 済
面など 多岐 にわた るサ ービス を提 供して いる ことが わか る.
表2
DSPS に お け る 支 援 サ ー ビ ス の 種 類
①カウ ンセ リング ・サ ービス
登 録 及 び placement test( ク ラ ス 分 け 別 テ ス ト ) の 実 施 を 優 先 的 に 行 う
勉学上の特別な助言や授業プラン
障害を補う学習方略を活用した学習支援
キャリアカウンセリング
教職員と学校管理職との授業運営の調整に関する連絡
パーソナルカウンセリング
職業リハビリテーションの州機関との連携
②イン スト ラクシ ョン ナル・ サー ビス
コミュニティカレッジレベルに相当する学習障害のある者に対する評価
数学,読み,書き,キャリア計画の学習スキルに関わる講義科目の提供
体育科目への適応
学習障害のある学生に対する学習支援のチューター派遣
③設備 サー ビス
別室試験,試験時間の延長
ノートテイク
テストや宿題の代筆及び代読
オーディオブックまたは電子ブック
テクノロジーとソフトウェア,代替メディアによる援助の活用
しょうがい学生用の駐車場
移動の援助
拡大読書器
・学内における障害学生支援
オーロ ニ大 学に入 学し た障害 学生 に対す る支 援の基 本的 な流れ は,まず ,入学 の時期 に障 害
学生対 象の オリエ ンテ ーショ ンを 実施す る.次に ,障害 学生本 人か ら障害 の有 無を証 明す る 診
断書の 提出 がなさ れた 上で,カウ ンセリ ング 担当が ,生 育歴,教育 歴,高 校時 代の学 力レ ベル ,
通 訳 利 用 の 有 無 な ど を 把 握 し , 必 要 な 支 援 を 講 じ る . 心 理 的 支 援 の た め に 2 ,3 名 の メ ン タ ル
カウン セラ ーも配 置さ れてい る.さらに ,カ ウンセ リン グ後に 障害 学生か ら支 援を申 請し ,授
業保障,試 験時の 時間 延長や 別室 実施等 の支 援体制 を用 意した り教 員への 配慮 事項の 通達 等の
コーデ ィネ ート業 務が 行われ る.
ちなみ に近 年にみ る予 算削減 の影 響で,上 記 のコー ディ ネート 業務 担当は 本来 なら3 人以 上
の体制 で行 われる とこ ろを1 人だ けで担 当し ている 状況 が生じ てい る.以上 の コーデ ィネ ート
業務は 学期 ごとに 行い ,次の学 期 に備え てク ラス編 成や 支援体 制を 用意で きる ように して いる .
・高校に対する移行支援の取組
さて DSPS は,学内の 支援対 象で ある学 生と 教職員 のほ かに ,DSPS の 予算 内 で高校 や特 別
支援学 校に 対する 移行 支援活 動も 実施し てい る.
5
具体的 な取 組につ いて は,第 一に ,学区 ごと に配置 され ている SELPA 1 (Special Education
Local Plan Area)Transition Specialist と密 な連携 のも と,高 校を 訪問し て大 学の特 徴や 進学
の流れ につ いて話 し合 う.DSPS は,SELPA からの 依 頼を受 けて Ann とカ ウ ンセラ ーが 移行
支援の プラ ンを検 討し ,誰が どの 高校を 訪問 するの かを 取り決 める (図3 参照 ). Ann は 主に
特別支 援ク ラスの 訪問 を担当 する .なお ,聴 覚 障害の ある 高校生 に対 しては ,前 述の Center for
Deaf Studies に配 置さ れてい るろ うのカ ウン セラー (フ ルタイム 1 名,パ ート タイム 1 名 )
が担当 する ことに なっ ている .訪 問時期 は高 校2,3年 の春の 学期 に集中 して 行う.学校 訪問
の際 ,障害 のある 生徒 本人だ けで なく親 も同 席する よう にお願 いし ている が,実際は 親の 同 伴
は あ ま り な く 本 人 と 高 校 教 員 だ け で 話 し 合 う こ と が 多 い . 障 害 の あ る 生 徒 と は ,「 大 学 と は何
か ( コ ミ ュ ニ テ ィ ・ カ レ ッ ジ を 中 心 に )」,「 オ ー ロ ニ 大 学 は ど う い う と こ ろ か 」,「 ど う や っ て
大学に 入る か」,「 障害 学生支 援の 内容は 何か 」につ いて 説明・ 助言 してい る.
第二に,4 月中に オー ロニ大 学で 障害の ある 高校生 対象 のオリ エン テーシ ョン を開い て本 人
や親に 説明 したり 問い 合わせ 受付 窓口を おい て対応 する .ま た,オ ーロニ 大学 で高校 生対 象の
ツアー(オ ーロニ 大学 在籍の 障害 学生と 接触 する機 会,車椅子 ツア ー,視 覚障 害者ツ アー など
障害別 の企 画もあ る)を行う .4 月頃の オリ エンテ ーシ ョンや ツア ーでオ ーロ ニ大学 への 入 学
を決め る事 が多い .
第三に,オーロニ大学広報部門とも連携を図り,本人や高校に必要な資料を提供している.
こうし た 3 つの取 組か ら,障害 学 生は ,他 の 大学は 知ら ないが オー ロニ大 学な らよく 知っ てい
るとい うこ とでオ ーロ ニ大学 に入 学して くる .
図3
オ ー ロ ニ 大 学 DSPS に お け る 移 行 支 援 の 概 要
1
SELPA と は ,誕 生 か ら 22 歳 に な る ま で の 障 害 の あ る 個 人 に 対 し て ,学 校 と カ ウ ン テ ィ ー 教 育 局
と と も に 継 続 的 で 一 貫 性 の あ る プ ロ グ ラ ム と サ ー ビ ス を 提 供 す る 機 関 で あ り ,こ の プ ロ グ ラ ム や サ
ー ビ ス に は ,障 害 の あ る 高 校 生 が 大 学 や 会 社 へ の 移 行 を 達 成 で き る よ う に サ ポ ー ト す る Transition
from School to Post Secondary Education and Employment が 含 ま れ て い る . 学 区 ご と に 1~ 5
名 の SELPA の Transition Specialist が 配 置 さ れ て い る .
6
・今後の課題
今後の 課題 は,オーロ ニ大学 にお ける学 習障 害の大 学生 の入学 増加 に伴い ,学 習障害 のあ る
高校生 への 移行支 援を 充実さ せる 必要が ある .現在 ,学 習障害 のあ る大学 生に 対し,月1 回カ
ウンセ ラー がワー クシ ョップ を開 催して「ど うやっ て勉 強する か」などあ らゆ る状況 を想 定 し
た対処 方法 を一緒 に考 えたり 学習 障害の ある ピアチ ュー ターに よる 学習支 援も 行って いる .今
後は ,学習 障害の 大学 生によ るク ラブを 作る などコ ミュ ニティ を形 成しつ つ,高校3 年の 秋 の
段 階 で 進 学 希 望 者 が 診 断 書 を 提 出 し , オ リ エ ン テ ー シ ョ ン ク ラ ス を 開 講 し て (半 単 位 ),
Placement Test を実 施する こと で,ス ムー ズに大 学の カリキ ュラ ムに適 応で きるよ うに した
いと考 えて いる.
しかし その 一方で,カ リフォ ルニ ア州や 大学 から配 分さ れる DSPS の運営 資金 が前年 度と 比
べて 40%削 減され ,手 話通訳 が配 置され るク ラスの 数が 減って しま うなど の問 題が起 きて いる .
ま た , 今 の 州 の 財 政 状 況 を 鑑 み て も 次 年 度 に は 50% 削 減 さ れ る 可 能 性 が 懸 念 さ れ る と い う .
このように今後もさらに低下していくであろう支援サービスの質をどのように保っていけば
よいの かが 非常に 厳し い状況 に置 かれて いる .
②Center for Deaf Studies(ろう教育学部)
・Center for Deaf Studies の概要
Center for Deaf Studies (以 下 ,CDS)は ,聴覚障 害学 生
の教育的及び職業的ニーズに応じて広範囲にわたるプログラ
ムを開発・実施しており,アメリカ西部最大のろうセンター
の 1 つ であ る.1972 年 に設立 し,現在は 4 つ のプロ グラ ムが
設 置 さ れ て い る . ① American Sign Language (ASL) and
Deaf Studies Program(ア メリ カ手話 とろ うスタ ディ ),②
Deaf Education(ろ う教育), ③Deaf Preparation Program
( 入 学 準 備 プ ロ グ ラ ム ), ④ Interpreter Preparation
Program( 手話通 訳者 養成プ ログ ラム).な お,③に は 聴覚障
害学生 のみ ,④に は健 聴学生 のみ が入る .
図4
CDS の 前 に て
また, CDS の 学部 長 をはじ め, 教員, カウ ンセラ ー, ASL イン ス トラク ター スタッ フの 大
部分が ろう 者で構 成さ れ,CDS に 在籍す る聴 覚障害 学生 も国内 から 200 名,国 外から 27 名と
多く集 まっ ている.こ の在籍 人数 は,もう 一 つの視 察先 大学で ある California State University,
Northridge( カ リ フ ォ ル ニ ア 州 立 大 学 ノ ー ス リ ッ ジ 校 ) に 在 籍 す る 聴 覚 障 害 学 生 の 人 数 250
名に迫 る. なぜ, 小さ な町に ある コミュ ニテ ィ・カ レッ ジに CDS が設立 され ,有名 な総 合大
学に匹敵するほど多くの聴覚障害学生が在籍しているのだ
ろう か . こ れは 次 の 4 点 が 理由 とし て 考 え られ る .( 1)
1860 年 に 設立し たバ ークレ ー聾 学校が 1902 年フ リー モン
ト市に移り,市全体で聾学校を支援してきた経緯があるこ
と.
(2)1966 年に Ohlone College が 設立 さ れた時 に,同
聾 学 校 卒 業 生 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が で き る よ う に ASL
7
図5
Thomas 氏 と
ク ラ ス な ど 聴 覚 障 害 関 係 の ク ラ ス が 開 設 さ れ た こ と .( 3 ) フ リ ー モ ン ト 市 に は デ フ ・ コ ミュ
ニ テ ィ が 非 常 に 発 達 し て お り , 権 利 擁 護 運 動 も 活 発 に 行 わ れ て き た 歴 史 が あ る こ と . さ ら に,
(4 )後述 するよ うに ,国 内にお いて唯 一聴 覚障害 学生 のみを 対象 にした 入学 準備プ ログ ラ ム
である と思 われる Deaf Preparation Program が高 等教 育への 道を 大きく 切り 拓いて いる こ と
である .
Deaf Preparation Program( 以下 ,DPP)に ついて ,DPP 担 当の Thomas Holcomb 氏 に イ
ンタビ ュー を行っ た.Thomas 氏 は,トータ ル・コミュ ニケー ショ ンを発 案し ,全 米の聴 覚 障
害教育 に大 きな影 響を 与えた Roy Holcomb の ご子息 であ り,現 在は ,CDS 内 の 3 学 科,Deaf
Education ( ろ う 教 育 ), Deaf Preparation Program( 入 学 準 備 プ ロ グ ラ ム ), Interpreter
Preparation Program(手 話通 訳 者養成 プロ グラム )の スタッ フを 兼任す る等 ,中 心的 な 役割
を担っ てい る.
・Deaf Preparation Program の特徴
DPP は ,1973 年に開 設し ,1991 年から Thomas 氏が オーロ ニ大 学に勤 務し てから DPP は
より本 格的 な内容 へ変 わって いっ たとい う.現在,Thomas の下で 指導す る教 員が 4 名ほ どお
り,チ ュー ターの 確保 も彼ら が行 なって おり ,DPP に在 籍する 聴覚 障害学 生の 人数は 毎年 150
~200 人で ある.
米国の コミ ュニテ ィ・カレッ ジは ,学 位を取 得する コー スを受 講す る学力 に満 たない 学生 で
も受け 入れ , Remedial/ Developmental Education と して教 育し ている .こ れはコ ミュ ニテ
ィ・カ レッ ジの持 つ重 要なミ ッシ ョンの 1つ である .た だし現 実は ,その クラ スを受 講す る学
力に満 たな い学生 が,コミュ ニテ ィセン ター などが 提供 する
Adult Educational Program 2 で
最低限 の学 力を身 につ けるよ うに 求めら れる 場合も ある .聴覚障 害 学生の 中に もその よう な学
力 レ ベ ル を 有 す る 学 生 も 少 な か ら ず い る 3 . Thomas 氏 は , そ の よ う な 学 生 に こ そ , 通 訳 を 用
いたア クセ スサー ビス による 環境 ではな く,ASL を用 い て直接 的な コミュ ニケ ーショ ンに よっ
て , ま た 同 じ 境 遇 の 学 生 と 学 べ る 環 境 を 提 供 す る 必 要 が あ る と 述 べ て い る . DPP も , そ の よ
うな理 念に 基づい て,あらゆ る学 力レベ ルの ろう学 生を サポー トし ている わけ である .現 時 点
で DPP の ように 聴覚 障害者 のコ ミュニ ケー ション ・ニ ーズや 実態 に特化 した プログ ラム があ
るコミ ュニ ティ・カ レ ッジは 唯一 オーロ ニ大 学だけ であ る.この よ うに ,DPP とは ,単 に Adult
Educational Program の対象 や内 容を聴 覚障 害学生 用に 変えた プロ グラム だけ でなく,非 常に
学力が遅れている聴覚障害学生の教育的ニーズにも対応できるように必要なクラスを多く揃
えてお き,大学進 学や コミュ ニテ ィへの 参加 を促進 する ことを 目指 したプ ログ ラムで ある とい
える.
数多く ある コミュ ニテ ィ・カレ ッ ジのな かで オーロ ニ大 学が聴 覚障 害学生 のみ を対象 にし た
DPP を 実施 するこ とが できた のは ,以下 の理 由によ ると のこと であ る.
2 例 え ば ,カ リ フ ォ ル ニ ア 州 で は ,移 民 や そ の 2 世 3 世 な ど の 人 口 が 多 い た め ,
「 Open Admission
Policy」 の 理 念 に 強 く 根 差 し , 入 学 希 望 者 は 全 て 受 け 入 れ て い こ う と い う 考 え で あ る .
3 米 国 に お け る 聴 覚 障 害 児 の 読 解 力 に 関 す る 大 規 模 な 調 査 の 報 告 (Witsken, 2001) に よ れ ば , 17,
18 歳 の 聴 覚 障 害 生 徒 群 の 平 均 的 な 読 解 力 は , 小 学 校 4 年 生 の 健 聴 児 童 の そ れ と 同 様 で あ る こ と が
報 告 さ れ て お り , 大学 進学適 性試 験( SAT ま たは ACT) に 合 格 す る ほ ど の レ ベ ル に は 程 遠 い .
8
1 つは ,前 述した よう に聾学 校を フリー モン ト市が バッ クアッ プし ,オ ーロ ニ 大学が 設立 さ
れた時も CDS が作 ら れたな どの 背景で 学内 に強固 なろ うコミ ュニ ティと 権利 意識が 形成 され
ている ため に,オーロ ニ大学 理事 会の意 思決 定や会 議運 営に積 極的 に働き かけ ,そ のおか げ で
資金が 確保 できて いる こと.
もう 1 つは ,オーロ ニ 大学と して ,現在の 主 流であ るイ ンクル ーシ ヴの理 念,メイン スト リ
ームに 対し ,それだ け では聴 覚障 害学生 のニ ーズや 実態 を適切 に考 慮した プロ グラム を提 供す
ること は難 しいと いう ことを 全学 的に認 識し ている こと である .
・Deaf Preparation Program の教育課程
DPP で 学ぶ 聴覚障 害学 生は,ク ラ ス分け 別試 験( placement test)を受け,の ろうカ ウン セ
ラ ー と 相 談 し て , ど の よ う な ク ラ ス を 受 講 し た ら よ い か 協 議 ・ 決 定 し た り , DPP を 受 け る た
めに必要な経費(プログラム受講料,テキスト代,消耗品費,交通費等)が不足する場合は
VR( 職 業 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン ) か ら 出 し て も ら う 方 法 を 学 ん で 希 望 の ク ラ ス を 申 請 す る . ち
なみに , DPP は, ろ う教育 学部 の一学 科で ある故 , DPP を受 け る聴覚 障害 学生は オー ロニ大
学には 入学 する, つま り「正 規学 生」の 立場 になる こと を付記 して おく.
DPP で は,聴覚障 害学 生のニ ーズ に応じ て以 下の4 コー スが用 意さ れてお り( 表3),コ ー
ス別の 人数 は約 50 名 である . DPP は , Associate of Arts Degree(以下 , AA)のコ ー スでは
なく, あく までも Developmental-remedial Education として位置づけられ, Associate of
Arts Degree のコ ース につい てい ける学 力を 身につ ける ことを 目指 す.但 し,DPP に は,ろ う
に関す るト ピック を扱 う deaf education(ろ う教育),deaf history( ろうの 歴史 ),deaf culture
(ろう 文化 )など のク ラスも 設置 されて おり ,これ らは AA レベ ル のコー スに も含ま れる .つ
まり, この クラス を履 修すれ ば, AA を取得 ,ある いは 4 年 制大 学 に編入 した 際の卒 業単 位と
して含 める ことが でき る.なお ,CDS の 専 攻の 1 つで ある ,American Sign Language (ASL)
and Deaf Studies Program で AA を取得 す るため には ,メイ ンス トリー ムク ラスで 一般 教養
のクラ スも 履修し なけ ればな らな いが,DPP にある ろう に関す る AA レベル の コース をす べて
修了す れば Deaf Education Certificate とい う修了 証書 をもら うこ とがで きる .
・今後の課題
現 在も な お , DPP を 最 後ま で 受 講 して 修 了 で き る 割 合 は 非常 に 少 な いと の 報 告 が出 さ れ て
いる .また ,家 庭学習 せずと もク ラスさ え受 ければ 合格 できる のだ ろうと 安易 に考え る聴 覚 障
害学生 の意 識の低 さの 問題も ある .今後 も,聴覚障 害学 生が自 分自 身の学 習動 機を高 め,自分
自身の 将来 に向け て自 立と責 任あ る行動 をと ること がで きるよ うに ,教育サ ー ビスと カウ ンセ
リング サー ビスの 質的 向上が 求め られて いる といえ よう .
DPP の ASL クラ スを 受ける 聴覚 障害学 生の 中には ,健 聴学生 との 交流経 験が 少なく 対人 関
係等を 伸ば す必要 があ る学生 がい るため , Interpreter Preparation Program(手話 通訳 者養
成プロ グラ ム)の健聴 学生と の日 常的な 交流 ができ るよ うに ,来年 度から 両者 を同じ 建物 に す
る.DSPS の話で あっ たよう に今 後も予 算が 削減さ れる 状況に 対し ,DPP の教 育水準 を維 持 で
きるか どう かが懸 念さ れるが,財 源確保 のた めに聴 覚障 害学生 に多 く入っ ても らうこ とが 大事
になる との ことで ある .
9
表3
DPP に お け る 各 コ ー ス の 内 容
①Deaf Education Certification Program: ろう学 生対 象修了 資格 取得プ ログ ラム
概
要
授業科目の一例
こ の コ ー ス を 受 け た 場 合 ,AA を 取 得 , あ る い は そ こ で 取 得 し た 単 位 を 4 年 制 大 学 に 編 入
した際の卒業単位として含める事ができる.
聴 覚 障 害 学 生 の 関 心 や 技 量 に 合 わ せ て ろ う 教 育 分 野 の 専 門 的 な 知 識 ,教 育 環 境 に お け る ろ
う 児 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 方 法 や 言 語 の 選 択 等 の 長 所 や 短 所 に つ い て 学 ぶ .こ の ク ラ ス を
履 修 す る た め の 要 件 と し て ,① ASL が 流 暢 で あ る こ と ,② 英 語 で 151B と い う 4 年 制 大 学
編 入 レ ベ ル の 101A と い う ク ラ ス の 1 つ 下 の レ ベ ル の ク ラ ス を パ ス し て い る こ と .た だ し ,
実際にはカウンセラーとの面談を経てそれらを下回っていても履修できるとのこと.
•DEAF-330 Educating the Deaf
•DEAF-331 Counseling the Deaf
•DEAF-332 Development of the Deaf Child
②Intensive University Preparation Program (IUPP):集中 的な 入学準 備プ ログラ ム
概
要
授業科目の一例
1 年 ほ ど で AA の コ ー ス を 履 修 で き る よ う 集 中 的 に 英 語 の 読 み 書 き ,数 学 を 指 導 す る .こ
の 指 導 を 通 し て ,英 語 が 読 め る こ と ,議 論 で き る こ と ,コ ミ ュ ニ テ ィ・カ レ ッ ジ レ ベ ル の
読 み 活 動 に 対 応 で き る こ と ,明 確 な 構 成 で 意 見 文 や 論 文 を 書 け る こ と ,文 法 エ ラ ー が 少 な
い 英 語 で 自 分 自 身 の 考 え を 表 現 で き る こ と ,自 主 的 に 勉 強 を 進 め る こ と が で き る こ と な ど
が実現できることを目指す.
•DEAF-172A Strategies for Successful Writing
•DEAF-173B Strategies for Successful Reading
•DEAF-175 Advanced English Grammar for Mainstreamed Students
•DEAF-176A Academic Vocabulary I
•DEAF-188A Intensive University Preparation: Academic Writing I
•DEAF-189A Intensive University Preparation: Academic Reading I
•DEAF-191 Human Potential Seminar
③ Community Education and Self Improvement Program:
コミュ ニテ ィ教育 及び 自己啓 発の プログ ラム
概
要
授業科目の一例
対 象 は ,適 切 な 教 育 を 受 け ら れ ず 言 語 力 や 学 力 が 伸 び な か っ た 聴 覚 障 害 学 生 や ,外 国 か ら
来た聴覚障害学生に第二言語としての英語を指導する.大学進学を目指した指導ではな
く ,英 語 の 読 み 書 き ,対 人 関 係 ,テ ク ノ ロ ジ ー ,コ ミ ュ ニ テ ィ 意 識 の 能 力 を 引 き 出 し ,よ
り社会的にも精神的にも自立できるように促進する.
•DEAF-110A Introduction to English as a Second Language in American Sign Language
•DEAF-118A ESL Writing I in American Sign Language
•DEAF-119A ESL Reading I in American Sign Language
•DEAF-130A Literacy I
•DEAF-140A Lifeskills Mathematics I
•DEAF-141A Workplace Communication I
•DEAF-145B Job Seeking Strategies for Deaf Students
•DEAF-147B Citizenship: One's Role
•DEAF-148 Community Service
•DEAF-160A Personal and Social Awareness I
•DEAF-161 Introduction to the Deaf Community
④Direct Employment Program: 職業指 導プ ログラ ム
概
要
授業科目の一例
大 学 に 進 学 し な く と も 就 職 で き る よ う に 必 要 な 知 識 ,技 術 ,態 度 を 身 に 付 け る こ と を 支 援
する.あるいは,就職できなくとも職業的自立に必要な英語力を向上させる目的もある.
40 代 以 上 の 聴 覚 障 害 者 が 受 講 す る .
•DEAF-165 Study Techniques: MS Word, MS Excel, and MS Access
•DEAF-166 Study Techniques: Introduction to Multimedia Photoshop, MS
PowerPoint, and MS Publisher
10
Fly UP