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H27-14

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H27-14
課題番号 H27-14
研究題目
超高分解能質量分析計を用いた微生物代謝産物の
メタボロミクス解析
研究組織
研究代表者:中島琢自(北里大学北里生命科学研究所)
共同研究者:谷口寿章(徳島大学疾患酵素学研究センター)
研究分担者:高橋洋子(北里大学北里生命科学研究所)、
松本厚子(北里大学北里生命科学研究所)
、稲橋佑起(北里大学北里生命科学研究所)、
木村 徹(北里大学大学院感染制御科学府)
【1】研究の概要
[1-1]本研究の目的・概要
本研究は北里大学で発見した Lechevalieria
aerocolonigenes K10-0216 が生産する mangromicin
類を高分解能質量分析で解析することにより生
合成を推定することを目的とした。
[1-2]研究の方法・経過
昨年度の共同研究では neutral loss を指標に新
規類縁体 mangromicin J と K を見出すことがで
きた。また、ゲノム解析の結果から生合成経路
を推定し、これまで発見された mangromicin 類
の情報から mangromicin 類の生合成を推定した。
【2】研究成果
[2-1]本共同研究で明らかになった研究成果
Mangromicin 類 生 産 菌 L. aerocolonigenes
K10-0216 のドラフトゲノム解析(表 1)より、17
の ORF が関与していることがわかった。生合成
は質量分析とゲノム情報から以下のように推定
できた。
1) ポリケチドで生合成された mangromicin 中間
体は 14 位に P450 で水酸化される(図 1)
。
2) 14 位の水酸基が 10 位に求核攻撃を行うこと
でテトラヒドロピラン環が形成され
mangromicin C が合成される。
3) 14 位の水酸基が 11 位の求核攻撃を行うこと
でテトラヒドロピラン環が形成され P450 で 1
回酸化されると mangromicin B と D が合成さ
れる。
4) 同様に、テトラヒドロピラン環が形成された
後、8 位と 9 位の二重結合が還元され、P450
により 1 回酸化されると mangromicin H が合
成される。
5) さらに、2 回酸化されると mangromicin A, D, F,
G, K が 合 成 さ れ 、 3 回 酸 化 さ れ る と
mangromicin J が合成される。
表 1. Mangromicin 類の生合成に関わる遺伝子
ORF1
ORF2
ORF3
ORF4
ORF5
ORF6
ORF7
ORF8
ORF9
ORF10
ORF11
ORF12
ORF13
ORF14
ORF15
ORF16
ORF17
Proposed function
TetR family transcriptional regulator
Dehydrogenase
SARP family transcriptional regulator
LuxR family transcriptional regulator
Oxidase
PKS module
PKS module
PKS module
PKS module
Cytochrome P450
Cytochrome P450
Cytochrome
P450
OH
16
Oxidoreductase
R
15
3
Transportor
4
2
1
5
Crotonyl
CoA reuctase
CH3
O
OATP synthase
3-Oxoacyl
HO 14
6
13
3-hydroxybutyryl
CoA
reductase
9
12
7
8
11
10
O
CH3
CH3
R = propyl or ethyl group
図 1. Mangromicin 類の中間体
高分解能質量分析による
MSn の解析
Mangromicin A を用いて MSn 解析を実施した。
Mangromicin A(C22H34O7+, 411.2377)のプレカ
ーサーイオンから 1 分子脱水のプロダクトイオ
ン m/z 393.2272(C22H33O6+)が観察された。m/z
393.2272 の MS3 から 3 種のプロダクトイオンが
同定でき、フラン環の開裂が考えられた(図 2)
。
4
次 に 、 m/z 313.2162 の MS で m/z 285.2213
(C20H29O+)および m/z 203.1430(C14H19O+)が
観察された。Mangromicin A の開裂パターンを
図 2 に示す。
MS3 解析
rHR
C22H 33O6+ (393.2272)
[3-2]学会発表
1) 中島琢自. Physicochemical Screening による
新規物質の発掘. 北海道大学 微生物新機能
開発学 記念講演会. 2015 年 7 月(北海道)
2) 中島 琢自, 神谷 義之, 谷口 貴子, 木村
徹 , 高橋 洋子, 大村 智, 谷口 寿章. 高分
解能質量分析による新規 mangromicin 類
縁体の探索. 日本放線菌学会大会. 2015 年 9
月(富山)
rHR
C22H 31O5+ (375.2166)
C22H 29O4+ (357.2060)
rH1,2
C21H 29O2+ (313.2162)
MS4 解析
rH1,2
-C
C20H 29O+ (285.2213)
C21H 29O2+ (313.2162)
rH1,2
rH1,2
【4】今後の課題等
今後の課題、その他等
Mangromicin 類縁体は 4 位に propyl 基もしく
は ethyl 基が結合している。推定した生合成経
路から、例えば、mangromicin G と K(図 3)の
ように propyl 基もしくは ethyl 基を有する類縁
体が見つかっている。しかし、mangromicin A
のように片方しか見つかっていない類縁体も
ある。今後、培養時間や培地成分など培養条件
を検討し、これまで見出された類縁体の neutral
loss と MSn の開裂パターンを組み合わせて探索
することにより推定した生合成経路の確かさ
を検証する必要がある。
C14H 19O+ (203.1430)
OH
図 2. Mangromicin A の開裂パターン
[2-2]本共同研究による波及効果及び今後の発
展性
Mangromicin は 15 員環の炭素鎖からなる新規
骨格物質である。本研究で微量成分である新規
類縁体 mangromicin J と K の発見(平成 27 年度
報告書)およびドラフトゲノム解析より生合成
が推定でき、mangromicin B (D), C, J が最終生産
物であることが示唆された。NMR では微量成
分を解析することが困難であるため、質量分析
およびゲノム解析により生合成の解明できた
ことは大きな成果である。今後、mangromicin 類
縁体の MSn による開裂パターン情報を収集す
ることにより、mangromicin のユニークな構造
との相関が明確になることが期待される。
【3】主な発表論文等
[3-1]論文発表
T. Nakashima1, Y. Kamiya, T. Taniguchi, T. Kimura,
Y. Inahashi, Y. Takahashi, S. Ōmura1, H. Taniguchi.
Detection
and
Characterization
of
New
Mangromicin Analogs by Tandem Mass
Spectrometry. PLOS One (submitted)
R
O
O
O
O
CH3 OH
OH
14
CH3
Mangromicin G (R = propyl)
Mangromicin K (R = ethyl)
OH
R
O
O
HO
O
CH3
9
O
CH3 OH
CH3
A (R A,
= propyl)
図 3.Mangromicin
Mangromicin
GとK
Unidentified compound (R = ethyl)
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