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訪問看護 OJT マニュアル

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訪問看護 OJT マニュアル
訪問看護
OJT
マニュアル
新任訪問看護師の
育成と定着のために
5
平成25年3月
東 京 都
~部会長からのメッセージ~
平成24年度は在宅看護分野の専門看護師が誕生した年でもあります。在宅看護に
携わる看護師の実践活動はこれまで以上に患者を取り巻く多様な変化への対応を求め
られております。
本書は、多様なニーズに応じた在宅療養生活の拠点となる訪問看護ステーションの
役割・機能について「人を育てる」という視点を中心に作成されております。
特に力を注いだポイントの1つは、
「同行訪問」による指導、支援の実践にむけた研
修内容を充実させたことです。同行訪問の回数を重ねるごとに、
「見て学ぶ⇒部分的に
やってみる⇒指導者の支援や見守りのもとでやってみる⇒ひとりでやってみる」という
段階が着実に踏めるような具体的な研修内容を提案しております。
2つめのポイントは、新任看護師のレベルアップの段階を、
「訪問看護師として対象
を捉える範囲」の拡大と、
「担当ケースの難易度」の向上の2つの条件で整理している
点です。
周知のとおり、在宅看護の対象は療養者と家族です。在宅看護の目標は療養者/家
族が在宅療養生活を維持・継続できるよう支援することです。そして療養者/家族が
在宅生活の環境の変化へ対応できるよう支援することです。このような支援を継続する
ためには、訪問看護師は、療養者/家族を中心に地域(コミュニティ)全体を視野にい
れた在宅医療チームの1人として役割・機能することが期待されます。訪問看護師とし
て対象を捉える範囲が拡大していることに重点を置き、初期段階から中間段階そして
達成段階というように、療養者/家族のケースに関する職種間の連携だけではなく、地
域ネットワークにおける他職種との関係性の中で訪問看護ステーションの役割を捉え、
他職種の専門性を理解し、尊重して連携できることを目標とした研修内容となっており
ます。
同時に、担当ケースの難易度のレベルについても訪問看護ステーションの特徴にあ
わせて柔軟に計画することが可能となっております。OJTを通して、
「対象を捉える範囲」
を拡大しながら、独力で対応できる対象ケースの難易度を変えていけるように工夫され
ております。
訪問看護師に求められる社会的ニーズの高まりの中で、新たに作成した本書が、区
市町村の訪問看護ステーションや関係機関等において活用していただけることを期待い
たします。
最後に、本書作成にあたり多大なるご協力をいただいた皆様に深謝いたします。
平成25年3月
東京都訪問看護支援検討委員会
訪問看護OJTマニュアル作成部会
部会長 河原加代子
目 次
1.はじめに… ……………………………………………………………………
1
1.1 訪問看護におけるOJTの現状……………………………………………… 1
1.2 マニュアルのねらい… ……………………………………………………… 3
1.3 マニュアルの対象と活用方法… …………………………………………… 3
2.訪問看護におけるOJTについて………………………………
4
2.1 OJTの目的と意義…………………………………………………………… 4
2.2 OJT指導者の役割…………………………………………………………… 5
2.3 OJTの機会…………………………………………………………………… 5
2.4 同行訪問… …………………………………………………………………… 6
3.新任訪問看護師へのOJTの概要………………………………
7
3.1 新任訪問看護師に求められる能力項目… ………………………………… 7
3.2 新任訪問看護師のレベルアップの過程… ………………………………… 9
3.3 OJTの進め方…………………………………………………………………12
4.OJTの実践…
………………………………………………………………14
4.1 初期導入(1 ~3か月)における指導………………………………………14
4.2 中間段階(~6か月)における指導… ……………………………………18
4.3 仕上げの段階(~ 12か月)における指導… ……………………………21
5.評価シートの活用… ……………………………………………………23
1
はじめに
1.1 訪問看護におけるOJT の現状
1
● 地域包括ケアシステムの構築に向けて、多様なニーズに応じた在宅療養生活の拠点と
なる訪問看護ステーションの役割がますます重要になります。
● 訪問看護ステーションにおいて、OJTが十分に行われていないという実態や新任訪問
看護師の離職が多いことから、OJTの充実により安心して働き続けることができる環
境整備が必要と考えられます。
● 都内の訪問看護ステーションを対象とした調査2によると、事業所におけるOJTの実施
状況は以下のとおりです。朝礼における指導は66%で実施されているものの、面接や
事例検討などの頻度は低くなっています。
図表 事業所内でのOJT実施状況(平成23年度)
管理者(n=433)
朝礼等の場での助言や指導
同行訪問を通じた助言や技術指導
事業所内会議を通じた助言や指導
個別面接を通じた助言や指導
事例検討
(振り返り)
0
2%
8%
4%
5% 10%
6%
17%
66%
20%
11%
7%
4%
35%
7%
2%
6%
42%
24%
8%
14%
4%
2%
14%
58%
10%
28%
20
11%
33%
40
60
6%
11% 4%
80
5% 5%
9% 5%
100 %
実施していない 年数回程度 月1回程度 週1回程度答
週2回程度 ほぼ毎日 無回答
1 OJT(On
the Job Training):実際の業務を通して、業務に必要とされる実践的な能力を習得するための研修
2 訪問看護の人材確保・定着に関する調査(平成24年7月、東京都)
1
● 従業者の立場からは、訪問看護に有効な研修として、同行訪問や外部研修が挙げら
れています。職場内研修(OJT)の重要性も認識されていました。
図表 訪問看護を行うにあたり有効な研修(複数回答)
常勤(n=978)、非常勤(n=313)
58
58%
%
同行訪問
55%
%
55
外部研修
13%
%
13
病院の研修
29%
%
29
0
0
37%
%
37
34%
%
34
職場内研修
(OJT)
3
3%
%
67%
%
67
19
19%
%
他の訪問看護ステーションへの
相互研修
無回答
64%
%
64
41%
%
41
9
9%
%
10
10
20
20
30
30
ステーション常勤
40
40
50
50
60
60
70
70
80 %
80
%
ステーション非常勤
● 同行訪問は有効な研修手段と認識されている一方で、管理者側は同行指導には、指
導能力がある人材、同行訪問後の振り返り、統一的なマニュアルなどが必要と考えて
います。
図表 同行指導に必要なもの(複数回答)
管理者(n=443)
指導能力がある人材
61
61%
%
同行訪問後の振り返り
52
52%
%
統一的なマニュアル
38%
%
38
人件費
29%
%
29
指導者に対する研修
24%
%
24
その他
3
3%
%
無回答
3
3%
%
0
0
10
10
20
20
30
30
40
40
50
50
60
60
70
70
80 %
80
%
● そこで、本マニュアルでは訪問看護ステーションにおける新任訪問看護師に向けた
OJTの体系的な取組方針を示すとともに、同行訪問に焦点を当てることとしました。
2
1.2 マニュアルのねらい
● 訪問看護におけるOJTの現状を踏まえ、比較的小規模の事業所など育成支援を要す
る訪問看護ステーションでも取り組みやすいOJTのあり方を示します。
● OJTの中でも、特に同行訪問に焦点を当て、具体的な進め方や留意事項を紹介します。
1.3 マニュアルの対象と活用方法
● OJTにより指導を行う「事業所管理者」を読者として想定します。
・管 理者に求められる役割及び指導者としてのOJTの実践方法を簡潔にま
とめます。
・‌多様な事業所規模を想定し、比較的小規模の事業所など育成支援を要す
る事業所でも実践しやすい内容とします。標準的な実施方法とともに、参
考となる具体的な工夫などについても紹介します。
● 指導の対象は多様なプロフィールを持つ「新任訪問看護師」
(1年程度)とします。
・‌OJTにより訪問看護師が習得すべき能力は広範にわたりますが、
ここでは、
新任訪問看護師の能力を高め、定着を促すことを目的とします。
・
「新任訪問看護師」といっても多様なプロフィールを有し、知識や経験の内
‌
容や量が異なります。ここでは、
「新卒」
「病棟からの転職」
「ブランクから
の復職」の3つのタイプを想定し、プロフィール別に留意すべき点などにつ
いて記載します。
● 「同行訪問」に焦点を当てます。
・‌OJTの中でも特に重要な「同行訪問」による指導、支援の実践を中心にま
とめます。
● 「評価シート」を活用します。
・‌OJTの実施に当たって行われる目標設定や振り返りに用いる「評価シート」
を掲載します。
・‌評価そのものを目的とするのではなく、新任訪問看護師本人と指導する管
理者の双方が記入して、認識を共有し、コミュニケーションツールとして活
用します。
3
2
訪問看護におけるOJTについて
2.1 OJTの目的と意義
● 訪問看護師は、個々の利用者・家族の生活に深く関わり支える役割を担うため、現場
での対応力・判断力が求められます。訪問看護師の育成・成長には、研修による一般
的な知識・スキルの習得とともに、実地での経験の中で学ぶOJT、特に同行訪問が
重要です。
● OJTには、研修等で学んだ知識やスキルを応用する「実践」と、その結果に基づいて
効果や改善点への気づきなどを得る「振り返り」の両面があります。日常の業務その
ものである実践に対して、日常のさまざまな場面で声かけし、振り返り(リフレクション)
を促し、次の成長につなげます。
● 担当している一人ひとりの利用者との関わりを通じて、段階的に知識・技術を実用化レ
ベルに高めるとともに、新たな知識・技術を身に付け、かつ、それらを統合させ、多
様な場面で的確に応用する力を習得します。
図表 新任訪問看護師の育成のためのOJTの概要
入所時研修・オリエンテーション
目標設定
単独での訪問
訪問
訪問後指導
振り返り・評価
4
外部研修等
訪問前指導
面談︵定期・不定期︶
訪問後指導
事例検討
訪問時指導
朝礼・会議等
同行訪問
日常的な声かけ
OJ T
訪問前指導
2.2 OJT指導者の役割
■ 事業所管理者としての役割
・‌事業所管理者として、事業所の理念、運営方針に沿った職員の育成方針とキャリアパ
スを明確に示します。
・‌職員の成長を促すことを意図し、OJT指導者とともに業務の割り振りや担当利用者を
決めます。
・‌主体的な学習、成長を支援する環境を整えます。
・‌新
任訪問看護師が溶け込みやすく、安心して働き続けることができるよう職場の人間
関係にも気を配り、気持ちよく働ける雰囲気をつくります。
■ OJT指導者としての役割
職員の定着、成長を促すためにOJT指導者の果たすべき役割には、以下の3つの側
面があります。そのためには、
「的確な業務の説明」
「適切な声かけ」が必要とされます。
・看護及び接遇の技術的側面の指導及びチェック
⇒ 技術の向上、適切なケア・サービスの提供
・業務における目的意識や気付きを促す
⇒ やりがいや達成感を与え、モチベーションを高める
・精神的・心理的な支援
⇒ 不安やストレスの軽減
的確な業務
の説明
適切な
声かけ
管理者がOJT指導者でない場合、OJT指導者は管理者に職員の成長過程について相談・
報告します。
2.3 OJTの機会
● OJTは事業所内外のさまざまな場面で行われます。
事業所内
朝礼・ミーティング
事業所の方針や現状を伝える
面談
習得状況の確認、問題や不安の解決
事例検討
多様な事例から知識、課題発見・解決力を習得
その他の場面
日常的に声をかけ相談を受ける
事業所外
サービス提供
(同行訪問)
準備、訪問時の一連の業務手順、利用者・家族と
の接し方・対応方法などを習得
サービス担当者会議
他のサービス事業者との連携と役割分担を学ぶ
退院時カンファレンス
医療機関との視点の違い、連携、関係構築を学ぶ
5
2.4 同行訪問
● 主たる仕事の場が利用者の自宅である訪問看護師にとって、利用者宅への同行訪問
はOJTの初期段階に必須です。
● 看護の知識、技術だけではなく、利用者の家に訪問する際の人としてのマナーを大前
提とし、その上で、専門職として生活を見る視点、臨機応変に状況判断し、個別に異
なる環境の中で的確に業務を進める能力などが求められます。
● これらは同行訪問を通して指導者から伝達され、段階的に習得する必要があります。
● 同行訪問の回数を重ねるごとに、見て学ぶ ⇨ 部分的にやってみる ⇨ 指導者の支
援や見守りの下でやってみる ⇨ 一人でやってみる、という段階を踏みます。
● 同行訪問にあたり、3つの場面での関わり方が重要となります。
●訪問の準備の手順、必要な物品の確認
訪問前
●利用者の状況(経緯、現状、目標、サービス内容、留意事項
等)の確認
●訪問時の手順のリハーサル
●訪問に当たっての心構え、各職員の目標の意識付け
●不明・不安な点の確認、解消
●利用者・家族への接遇やケアの模範を示す
訪問時
●利用者・家族への接遇やケア内容の指導、支援
●観察、判断、対応における専門職としての視点を示し気付き
を促す
●新任訪問看護師の態度・行為全般等のチェック
●新任訪問看護師とともに、訪問内容の全体を振り返る
●良かった点、目標が達成できた点を確認する
訪問後
●改善が必要な点について気付きを促す
●問題点や不安の確認、解消
●次の目標の設定
6
3
新任訪問看護師へのOJTの概要
3.1 新任訪問看護師に求められる能力項目
● 「訪問看護師としての基礎的能力」をベースとし、
「訪問看護師としての専門的能力」
を習得します。
● 「訪問看護師としての基礎的能力」は、訪問看護ステーションの一員として働くこと、
訪問看護師としてふさわしい態度・姿勢を身に付けることであり、初期段階で確実に
習得する必要があります。
● 「訪問看護師としての専門的能力」は、
「訪問看護サービスの提供」を中心としますが、
その前提として、
「利用者の生活を見る」
「説明する・聞く」能力が求められます。さ
らに、地域の他機関・他職種の理解と連携が必要です。また、これらの実践においては、
適切な情報管理が重要です。
● 新卒看護師の場合には、基礎看護技術の確認も必要となります。
図表 新任訪問看護師に求められる能力項目の体系
地域の理解と連携
地域の理解
適切な情報管理
地域連携
安全・安心
訪問前準備
夜間対応
記録
訪問看護サービスの提供
療養上の世話
看護技術
利用者・家族の生活を見る
生活重視
意思尊重
基礎看護技術
新卒看護師の
場合には
この部分の確認が
必要
感染管理
概要説明
家族の健康
個人情報
判断
環境整備
予防
訪問後対応
説明する・聞く
指導提言
相談対応
カンファレンス
訪問看護師としての基本的能力
訪問看護ステーションの
一員として働く
環境整備
災害時対応
連携・相談
基本姿勢
基礎知識
訪問看護師として
ふさわしい態度・姿勢
自己研鑽
マナー
時間管理
コミュニケーション
健康管理
● OJT期間を通じて、これらの能力を段階的に習得することを目指します。
● 訪問看護師としての基本的な事項は初期の同行訪問の段階で確実に習得し、さまざ
まなケースを担当しながら、対象を捉える範囲を拡大させ専門的能力を高めます。
(次
ページの表中の○は主に習得する時期の目安です)
※ 本マニュアルに示す能力体系及びOJT評価項目(8頁)は、関連する文献(26頁)を参考として、
新任訪問看護師が身につけるべき能力を抽出し、作成部会において分析、整理をおこなったものです。
7
図表 OJT評価指標
主に習得する時期の目安
大
中
新任訪問看護師の達成目標
小
1 ~ 3か月 ~ 6か月 ~ 12か月
訪問看護師としての基本的能力
訪問看護ステーションの一員として働くことができる
基本姿勢
基礎知識
連携・相談
環境整備
災害時対応
就業上のルールを守る
訪問看護の目的・サービス内容を理解する
事業所の理念・活動目標に沿った対応をする
基本的な医療保険、介護保険等の制度の仕組みを理解する
訪問看護の報酬体系、利用者負担等について理解する
地域の交通機関の利用方法、道路事情、訪問先の目印などを把握する
同僚・管理者と円滑なコミュニケーションをとることができる
日々の看護活動について、同僚・管理者に常に報告・連絡・相談する
一人で判断が困難な問題に関して、同僚・管理者に速やかに相談する
利用者・家族の問題に気付いた場合には、同僚・管理者に速やかに相談する
訪問看護ステーション内の物品を整備・補充する
災害時対応マニュアルを理解し、災害発生時は指示に従い適切に行動する
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
訪問看護師としてふさわしい態度・姿勢をとることができる
マナー
コミュニケーション
時間管理
自己研鑽
健康管理
その場にふさわしい態度で挨拶する
礼儀正しい態度や言葉遣いで家族・利用者に対応する
来客・電話に適切に対応する
コミュニケーションを通して、利用者・家族との良好な関係をつくる
訪問予定時間通りに訪問する
知識・技術・態度などの不足を補うために自己学習する
日頃の健康管理に努める
○
○
○
○
○
○
○
訪問看護師としての専門的能力
利用者・家族の生活を見ることができる
生活重視
意思尊重
家族の健康
利用者・家族の価値観や生活様式を受け入れる
治療優先でなく、生活を重視する
サービスの実施に当たり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重する
家族の健康に気を配り、健康管理や日常生活のアドバイスをする
○
○
○
○
説明することができる・聴くことができる
概要説明
指導助言
相談対応
カンファレンス
ステーションの概要、重要事項説明書・契約書内容・利用料金について理解する
提供する看護の内容を事前に分かりやすく説明する
在宅療養に必要な教育指導を利用者・家族に行う
利用者・家族からの相談に適切に対応する
相手の立場に立って、利用者・家族の話を聞く
利用者・家族に関する事柄について、カンファレンス等で適切に説明する
○
○
○
○
○
○
訪問看護サービスを提供することができる
訪問前準備
療養上の世話
看護技術※
感染管理
環境整備
訪問後対応
安心・安全
夜間対応
判断
予防
利用者個別に訪問の目的を理解する
必要な情報を収集し、具体的な目標を設定した看護計画を立てる
訪問先・訪問予定を確認して、必要な情報をもとにその日の援助計画を立てる
訪問看護に必要な物品や身支度を事前に整える
訪問看護計画に基づいて療養上の支援(世話)を行う
訪問看護に必要な最低限の看護技術を身につける
安全に感染予防及び医療廃棄物の取扱いを行う
利用者の居室の生活環境(光、音、温度等)を整備する
訪問後の物品片付け、衛生管理を行う
訪問後に事業所内・他機関に報告・申し送りをする
利用者・家族の安心・安全・安楽を念頭に置いてケアを提供する
緊急時の手当の方法、連絡方法等を理解する
訪問看護ステーションの利用者全体の状況を理解し、夜間の携帯当番を担当する
全身状態や生活の仕方、利用者の反応等を総合的視野から状況判断する
利用者の病態から予測される問題に予防的に対処する
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
地域の他機関の機能を理解し、連携することができる
地域の理解
地域連携
地域の保健医療福祉機関・サービスを把握する
地域の中での訪問看護ステーションの役割を理解する
地域内の他機関・他職種の専門性を理解し、尊重する
訪問看護の経過等を必要時、主治医に正確に報告・相談する
利用者の入退院時に、医療機関・その他の機関と連携する
介護支援専門員と連携・調整を行う
その他の関係機関との連携や調整を行う
○
○
○
○
○
○
○
情報管理を適切にすることができる
記録
個人情報
8
訪問看護記録・報告書・計画書を適切に書く
訪問後、速やかに訪問記録をつける
個人情報保護の必要性を理解し、情報を適切に管理する
※看護技術については、各事業所において具体的な項目を設定することが望ましい
○
○
○
3.2 新任訪問看護師のレベルアップの過程
● 新任看護師のレベルアップの段階を、
「訪問看護師として対象を捉える範囲」の拡大と、
「担当ケースの難易度」の上昇の2つの条件で整理します。
(1)訪問看護師として対象を捉える範囲
・‌初期段階では、対象を捉える範囲は本人を中心とする狭い範囲です。
・‌中間段階、達成段階へと進むにつれて、対象を捉える範囲が拡大するとともに、相互
の関係性や影響(どこにどのように働きかけると良いかなど)について理解できるよう
になります。
・‌個別のケースに関する職種間の連携だけではなく、地域ネットワークにおける他職種
との関係性の中で訪問看護ステーションの役割を捉え、他職種の専門性を理解し、
尊重して連携できることが目標です。
図表 訪問看護師として対象を捉える範囲の拡大
支援者
初期段階
ケアマネジャー
医師
家族
保健師
本人
支援者
地 域 ネ ット
医師
本人
介護者
医師
・支援者相互の関係を理解することが
できる。
・本人、介護者と家族が利用可能な地
域資源を理解することができる。
本人
ワー
ク
ケア
マネジャー
家族
ヘルパー
中間段階
ボランティア
地 域 ネ ット
保健師
ク
訪問看護師
支援者
保健所
ワー
ケアマネジャー
家族
ヘルパー
病院
・本人、介護者と家族を支援するメン
バーと各役割を理解することができ
る。
訪問看護師
ヘルパー
保健師
・ケア対象を本人と介護者を中心とす
る家族として捉え、相互の関係性を
理解することができる。
ボランティア
介護者
介護者
町内会
ボランティア
訪問看護師
市町村
民生委員
地域生活支援センター
患者会
達成段階
・地域の中の訪問看護ステーションの
役割を理解し、支援者、家族、介護
者と本人全体を包括的に理解するこ
とができる。
・他機関・他職種に必要に応じて働き
かけることができる。
9
(2)担当ケースの難易度
・‌訪問看護師として関わる担当ケースの難易度のレベルは多様です。
・‌難易度のレベルは、
「状態の安定性」だけでなく、
「主介護者の状況」
「他のサービス
の利用状況」
「中核となるケアマネジャーの存在」
「主治医との連携のしやすさ」など
によっても異なります。
・‌例えば下表のように、新任訪問看護師の成長過程に応じて対象ケースの難易度を変
えていくことが考えられます。これはあくまで例ですので、訪問看護ステーション個々
の理念や強みによって、難易度を勘案しながら担当するケースを決めると良いでしょう。
図表 新任訪問看護師の成長過程に応じた担当ケースの例
・ 介護保険利用者 要介護3~4程度
・ 脳卒中の利用者(嚥下機能は異常なし、会話できる) 初期段階で担当
するケース例
・ 訪問を開始してから一定期間が経過し、状態が安定して
いる
・ 家族(主介護者)が同居している
・ 主治医と連絡がとりやすい
・ 通所サービスを週 1 ~2回程度、訪問看護は週 1 回
・ 介護保険利用者 要介護5 ・ 気管切開、胃ろう造設
・ 主治医と連絡がとりやすい
中間段階で担当
するケース例
・ ヘルパーと介護者が療養支援
・ 医療保険利用者
・ がんの看取りの事例(比較的予後予測がしやすい)
・ 主介護者の自宅での看取り希望が明らかである
・ 主治医が定期的に訪問し、連携しやすい
・ 医療保険利用者
達成段階で担当
するケース例
・ がんの看取りの事例
・ 入院中に連絡があり、退院前カンファレンスで調整済み
・ 主治医と連絡がとりやすく、緩和医療の技術レベルが高
い
・ ケアマネジャーと看取りで連携した経験がある
10
(3)レベルアップのプロセス
訪問看護師として対象を捉える範囲のレベルは、入職からの期間とともに変化し、各
期間内では様々な難易度レベルの訪問看護を経験して進んでいきます。
図表 新任看護師のレベルアップの過程(イメージ)
担当ケースの
難易度
1年後(到達点)
予測・対応困難
支援・補助により達成
独力でできるようになる
安定
入職時
理解しやすい (出発点)
対象を
支える
範囲の広がり
本人・家族
支援者
地域ネットワーク
● OJTを通して、
「対象を捉える範囲」を拡大しながら、独力で対応できる対象ケースの
難易度を変えていきます。
● 初期段階では、難易度の低い対象ケースを担当しつつ、難易度の高い対象ケースにつ
いても、先輩の対応の見学、先輩の見守りの下での実施などにより経験します。
● 自分が担当、介入できるレベルを少しずつ向上させ、先輩や指導者からの支援や補助
を受ける範囲が小さくなり、最終的には自分で担当できるようになることを目指します。
11
3.3 OJTの進め方
3.3.1 OJTのスケジュール
新任訪問看護師のOJT期間として仮に1年程度を想定した場合、以下のような全体スケ
ジュールが考えられます。
・‌入職から3か月程度は、同行訪問を繰り返し実施します。
・‌当初は、
状態が安定し問題の少ない利用者を担当し、
基本的な業務の流れを理解します。
・‌徐々に、独居の利用者、認知症の利用者等、対応が困難である利用者を単独で担当
できるように支援、指導をします。
・‌オリエンテーション時、3か月後、6か月後など、定期的に面談を行い、目標の達成状
況や課題、今後の育成計画について確認します。
図表 新任訪問看護師のOJTのスケジュール(例)
入職∼3か月程度
対象
ケース
3か月∼6か月程度
6か月∼12か月程度
安定した利用者を担当
やや対応困難な
利用者対応の見学
面談
⇒
面談
指導者の
見守りの下で実施
(看取り対応)
⇒
担当
(在宅移行対応)
面談
面談
オリエンテーション
訪問
同行訪問
サービス
担当者会議
同行・見学
担当者として主体的に参加
退院時
カンファレンス
同行・見学
担当者として主体的に参加
医師との
連携
在宅療養に
積極的な医師
単独での訪問
医師との関係構築
病院医師
日常の声かけ 朝礼・会議 事例検討 など
OJTは以下のような手順で進めます。
① OJT計画検討(指導体制、スケジュール、担当利用者、実施方法、目標)
② オリエンテーション(基本事項と今後のOJTの進め方の説明)
③ 面談・目標設定 (新任訪問看護師の志向・意向の確認と目標の設定)
④ 同行訪問(担当利用者選定、日程調整、訪問準備、訪問、振り返り)
⑤ 面談・評価 (振り返り、課題の解決、不安の解消、新たな目標設定)
⑥ 単独での訪問 (事前の確認、フォロー)
⑦ 面談・評価 (達成状況、課題の解決策の検討、新たな目標設定、計画)
12
3.3.2 同行訪問によるOJTの進め方
入職後3か月程度の期間に実施する「同行訪問によるOJT」は以下のような手順で進め
ます。
図表 同行訪問によるOJT(例)
入職
1か月
面談
2か月
面談
3か月
面談
面談
訪問後指導
同行訪問
訪問前指導
訪問後指導
同行訪問
訪問前指導
訪問後指導
初回同行訪問
訪問前指導
説明・目標設定
指導 計画の立案
随時 声かけ、課題や到達状況の確認、計画の見直し
・‌はじめに、3か月間の同行訪問による指導計画を立てます。担当する利用者を選定し、
大まかな訪問スケジュールをもとに育成計画を検討します。
・‌担当する利用者については、
「状態の安定性」
「主介護者の状況」
「他のサービスの利
用状況」
「中核となるケアマネジャーの存在」
「主治医との連携のしやすさ」などの観
点から、成長の過程に応じて難易度を変えていきます。
・‌導入時に面談を行い、同行訪問の目的、内容を説明した上で、1か月後、2か月後、3
か月後の目標を設定します。
(評価シートを用いた面談の方法については「5.評価シー
トの活用」に記載。)
・‌毎回、訪問前には具体的な説明と意識付けを行い、訪問直後にはフィードバックを行う
ほか、1か月後、2か月後、3か月後など定期的に面談を行います。
・‌訪問時の指導内容は、接遇やサービス提供のスキル向上にあわせて、レベルアップさ
せます。例えば、初回は指導者が実施する内容を見学することからはじめ、最終的に
は全て独力で適切に実施できるようになることを目指します。
⇒具体的な内容は「4.OJTの実践」を参照してください。
13
4
OJTの実践
・ 「1~3か月」
「~6か月」
「~12か月」の段階に分けて構成し、それぞれの段階にお
ける「目標」
「指導内容」
「指導方法」を整理します。
・ 具体的な指導の進め方、説明や模範の示し方や効果的な指導のための留意事項など
を記載します。
4.1 初期導入(1~3か月)における指導
目 標
● 訪問看護師として対象を捉える範囲
1.ケア対象を本人と介護者を中心とする家族として捉え、相互の関係性を理解する
ことができる
2.本人、介護者と家族を支援するメンバーと各役割を理解することができる
● 対象ケースの困難度
・ 比較的安定した利用者を担当し、見守りと予防的ケアを中心とする
・ 支援を受けながら、独居や認知症等の多様なケースを経験する
● 実務上の目標
・ 一人で地図を見て訪問できる
・ 業務の一通りの流れを把握している
・ 訪問看護師としてふさわしい態度・姿勢をとることができる
・ 指導者の支援の下で、主体的にサービス提供ができる
・ 本人だけではなく介護者(家族)を含めてケア対象と捉え、家族への働きかけ
ができる
・ 利用者・家族から信頼を得ることができている
・ 指導者の支援がなくても、サービス提供が滞りなくできる
・ フィジカルアセスメント※ができる
・ (日常的な範囲で)状況に応じた判断・対応ができる
指導内容
・ 訪問看護サービスの基本的な流れ
・ 事業所内のルール
・ 利用者と家族の理解
・ 事前準備から訪問、事後のフォローまでの業務手順
・ 訪問時の挨拶、マナー、態度など
・ フィジカルアセスメント※の徹底
・ 生活重視の視点 など
14
※フィジカルアセスメント
会話や観察、打診、聴診、触
診などにより利用者の身体状
況 や 症 状 を 分 析・ 評 価 す る
こと。訪問看護では、在宅の
環境の中で得られる情報を収
集・活用し、的確に判断する
能力が特に重要となります。
指導方法
1.準備段階
(1)同行訪問の計画検討
・ 指導目標、体制、スケジュールの検討
指導目標と指導項目を明確にします。無理のない体制、スケジュールで指導計
画を立てます。
・ 対象とする利用者の選定
状態が安定し、理解しやすい利用者を担当します。
(2)オリエンテーション
・ 訪問看護師としての心構え
社会人としての心構え、マナー、話し方や態度等について説明し自覚を促します。
さらに、訪問看護師としての役割、生活重視の考え方、関係機関との連携の重
要性など、業務の基礎となる考え方を説明します。
・ サービス提供の流れ
訪問看護サービスの概要説明
・ 職場のルール
事業所の方針とルールについて説明します。困ったときは独断で解決しようとせ
ず、すぐに管理者に連絡することなど。
・ 今後のOJTの進め方
・ 不明・不安の有無の確認、解消
(3)目標の設定
・ 目標設定の目的
目標を明確にし、指導者と学習者が共有し意識付けることよりOJTの効果を高
めます。
・ 目標設定の考え方
長期的な目標を確認した上で、段階的な育成のための個別具体的な短期的な目
標を立て、定期的に達成状況を確認しながら、スキルアップを図れるようにします。
病棟から転職した場合
病院【医療】と在宅【生活】の視点の切り替えが重要
ブランクから復職した場合
知識やスキルのキャッチアップが重要
新卒の場合
看護技術の基礎を確認することが重要
15
2.同行訪問
<初回の流れ>
※留意事項
(1)訪問前
・ 利用者及びサービス計画、生活の目標
・ サービス内容・手順、留意点の説明
利用者の状態像と居宅サービス計画を踏まえ、課
題と訪問看護サービスへの期待と目標、サービス
計画を確認します。
具体的なサービスの手順とその根拠、想定される
リスクや留意点について説明。
記録作成のポイントの説明。
・ 必要となる看護知識・スキルの確認※
・ 利用者・家族への事前連絡
・ 物品の用意、利用者宅までの道順の確認等
・ 訪問に当たっての心構えと意識付け
・ 不安、不明点の確認、解消
(2)訪問時
・ 利用者・家族への紹介
・ 接遇、サービス提供の模範を示します。
利用者・家族に配慮しつつ、支障のない範囲で、
観察のポイント、行為の目的、留意点などを説明
しながら実施します。
・ 利用者・家族からの聞き取りや、指導、説明につ
いても模範を示します。
・ 新任訪問看護師の態度や行動全般にも目を配り、
良かった点、改善すべき点などをチェックします。
(3)訪問後
・ 訪問内容の振り返り
指導者から一方的に評価を伝えるのではなく、新
任訪問看護師自身による振り返りと気づきを促し
ます。
現場で詳細な解説ができなかった部分について、
具体的に説明します。
16
病院ではデータや画像を
重視しがちですが、在宅
ではフィジカルアセスメ
ント(観察、触診、打診
など)が重要です。
判断や対応が必要となった場面における思考プロ
セスについて説明します。
利用者の状態像の変化の予測を立てます。
・ 新任訪問看護師の態度や行為の良かった点を評価
します。
・ 改善が必要な点について、気付きを促します。
・ 問題点や不安を確認し、解消しておきます。
・ 次の訪問に向けて目標を設定します。
3.振り返り
・先に指導者から説明を
するのではなく、感じ
取ったことを聞き、不
足している部分を補い
ます。
・それまでに経験したこ
とや興味の対象に応じ
て、新任訪問看護師が
訪問の際に無意識に目
を向けるポイントが異
なります。個性や経験
を踏まえた助言が重要
です。
・ 1か月目、
(2か月目)、3か月目の区切りで振り返り
を行います。
・ 新任訪問看護師と面談をしながら、目標に対する
達成状況を確認します。
まず、自己評価により新任訪問看護師が認識して
いる達成状況、良かった点、課題等を把握します。
それに対して、管理者としての運営方針を踏まえて、
指導者としての視点からフィードバックを行います。
・ 達 成状況に応じて、新任訪問看護師と相談しなが
ら今後の育成計画の更新を行います。
コラム
モデル事業においてOJTマニュアルを利用して感じたこと
あすか山訪問看護ステーション
統括所長 平原優美
あすか山訪問看護ステーションで今回モデル事業に参加して大変勉強になりました。
同行訪問は以前から行っており、机上での研修より重要だと考えていましたが、これまできちんと
整理して考えていませんでした。このモデル事業でマニュアルにしたがってスタッフと面接を行い、丁
寧に評価し合う中で、本人の自己課題が明らかになり、適切なアドバイスができたことはとても貴重
な経験でした。
日々忙しく動いている管理者やリーダーは、新任スタッフの成長を心から望んでいるにも関わら
ず、指導方法に自信が持てないまま、これまでの私のように、なんとなくで行っている方が多いので
はないでしょうか。
ぜひ、このわかりやすいマニュアルを利用して、スタッフと向き合ってほしいと思います。
そして、一人でも多くの新任訪問看護師がいきいきと働き続けるといいなと思います。
管理者の皆さまのご健闘をお祈りします。
17
4.2 中間段階(~6か月)における指導
目 標
● 訪問看護師として対象を捉える範囲
1.支援者相互の関係を理解することができる
2.本人、介護者と家族が利用可能な地域資源を理解することができる
● 対象ケースの困難度
・ 比較的安定した利用者を継続して担当する
・ 本人に加えて、家族介護者へのケアの視点が重要となる
・ 必要に応じて支援を受けながら、生活状況、病状や障害の程度を考慮して、難
易度の高いケースを経験する
・ 看取りのケースを経験する
● 実務上の目標
・ 一通りのサービスを一人で実施することができる
・ 他の支援者相互の関係性を理解するとともに、支援者との関係性において訪問
看護の役割、機能を理解し、積極的に働きかけができる
・ 利用者・家族の価値観や生活様式について深く理解し、尊重した対応ができる
・ 事務手続についても、不安なく適切・円滑に進めることができる
・ サービス提供の目標について説明し同意を得ることができる
・ 看取りのケースを経験する
指導内容
・ 支援者相互の関係と望ましい連携のあり方
・ 地域資源の内容、特徴
・ 家族へのケアの視点
・ 看取りのケースにおける対応
18
指導方法
1.事例検討
・ 自分の担当する利用者の状況を事業所内で共有し、検討します。
・ 事 例を通して、訪問看護師として重要な視点や適切な対応を学びます。また、
利用者の状況について把握・理解し、生活の目標及び訪問看護の計画を立てる
能力、事実、状況や経緯、自分の考え方などを他者に分かりやすく説明する能力、
他者の意見を取り入れ客観的に捉えなおす能力などを習得します。
・ 事例検討の時間を確保し、書類作成等の準備をして実施する方法もありますが、
定期的に開催されるカンファレンスにおいて、検討したいケースをピックアップし
て、説明し、出席者と共に協議するなど、日常業務の一環として実施することも
可能です。
・ 「エコマップ」等を用いて、周囲の資源も含めて利用者を捉えることも重要です。
症状のアセスメントだけではなく、周りの地域資源についても十分に理解し、連
携する必要があることを指導します。
2.サービス担当者会議
・ 自身が担当するケースのサービス担当者会議には、できるだけ早い段階から参
加します。
・ サービス担当者会議では、他職種の専門性を理解・尊重し、話し合いをして協
力関係をつくることが求められます。どのような態度や言葉で話し合いを行えば
良いか、先輩の訪問看護師が実践してみせることが重要です。
・ サービス担当者会議には、医師が参加しないこともあり、訪問看護師だけが医
療職として参加することもあります。疾患について、他職種に分かりやすく説明
できるようになる必要があります。
・ 他職種に対して、ケアに関する助言をすることも求められます。例えば、
「褥瘡
ができやすい状況なので、体位交換をこのようにして下さい」
「保湿ケアをして下
さい」といった助言や、福祉用具に関するアドバイスなど、予防の視点を伝える
ことが重要です。
・ 困難ケースの場合は、ベテランの訪問看護師が同席し、必要に応じて支援や助
言をします。
19
3.ターミナルケア
・ 看取りの経験をします。1年後に1人で担当できるようになることを目標として、指
導者や先輩看護師と共にいくつかの看取りのケースを担当していきます。
・ ターミナルケアでは、麻薬の使い方、スピリチュアルケアがポイントになります。
・ エンゼルケアでは、その人らしさを重視することや家族との関わり方を学びます。
4.6か月目の振り返り
・ 一通りこなせるようになった段階で、訪問看護師としての心構えや、課題(ニーズ)
に遡ってサービス全体の意味付けを振り返ります。
・ 学習者の考えを聞くことに重点を置き、知識や考え方を全体的に確認します。
コラム
新任看護師のOJTマニュアルの活用方法
田園調布医師会立訪問看護ステーション
統括所長 宮近郁子
後期高齢者が増え多死時代の到来という言葉が新聞を賑わせています。その鍵を担うのは在宅医
と訪問看護師です。当然のことながら、訪問看護師はこれからますます重要な立場となります。
興味をもってこの訪問看護の世界に入ってきた新任看護師をいかに育てていくかが、管理者として
の重要な役割です。今まで、新しいスタッフが入ったら、オリエンテーションそして同行訪問をしなが
ら仕事を覚えてもらっていました。ただ、業務を覚えてもらうことが目的でした。当時、マニュアルな
ど無かったので、おそらくその時のスタッフは、一人立ちするのが怖かったと思います。
この新任看護師OJTマニュアルは、1年を通して1人前に育て上げるものに仕上がっています。新任
看護師を少しずつ育て上げるといった印象です。管理者が新任看護師と向き合いながらひとりひと
りの自己の課題を明らかにして、訪問看護師を育てていかなければなりません。つまり、子育てと一
緒です。OJTマニュアルを活用しながら、私たちの後輩訪問看護師を大切に大切に育てようではあり
ませんか。
20
4.3 仕上げの段階(~12か月)における指導
目 標
● 訪問看護師として対象を捉える範囲
1.地域の中の訪問看護ステーションの役割を理解し、支援者、家族、介護者と本
人全体を包括的に理解することができる
2.他機関・他職種に必要に応じて働きかけることができる
● 対象ケースの困難度
・ 独居や認知症等、困難なケースを担当することができるようになる
・ 主担当として看取りのケースを受け持つ
● 実務上の目標
・ さまざまな場面における応用力を身に付ける
・ 全身状態や生活の仕方、利用者の反応等を総合的視野から状況判断できる
・ 利用者の病態から予測される問題に予防的に対処することができる
・ 地域ネットワークにおける他職種との関係性の中で訪問看護ステーションの役割
を捉え、他職種の専門性を理解し、尊重することができる
・ 地域ネットワークの中で多様な関係機関と連絡調整、連携が円滑にできる
・ 利用者、家族から相談を受け、適切な対応ができる
・ 1 年間を通して四季を経験し、季節に応じた変化を予測して予防的な対応をとる
ことができる
・ 看取りのケースでは、死のプロセスの理解と、その時期に応じたケアができる。
状態を把握し、予測に基づき家族にアプローチできる。亡くなるまでの間にやっ
ておくべきことを伝えられる
21
指導内容
・ 地域資源を前提として支援者、家族、介護者と本人全体を包括的に捉える視点
や考え方
・ ケア体制の構築、他機関・他職種連携の進め方のポイント
・ 1年間を振り返るとともに訪問看護師として一人立ちする自覚を促す
指導方法
・ 新たな知識や技術の習得というよりも、これまでに蓄積してきた知識・経験を総
合的に活用できるよう、指導します。
・ 1年の経験を振り返り、自分の強み・弱みを理解し、次につなげる指導をします。
・ 訪問看護ステーションのスタッフとして自覚と責任を持てるように支援しましょう。
・ 多様なケースの経験を通じて、困難ケースにも対応できるようになることを目指し
ます。また、これまで経験した中で抜けている部分についてはサポートし、対応
できるように指導します。
・ 自分が担当する利用者のケアだけでなく、ステーションの全体の状況に目を向け、
必要に応じて適切なサポートをすることができるよう指導します。
・ 全ての利用者の状況を把握し、夜間の携帯電話当番ができることを目指します。
・ これまでにどのようなケースを経験したかを確認します。ターミナル、小児、認
知症など、担当したいケースについて新任訪問看護師自身から希望が出ることが
あります。こうした希望を重視しながら、小児から高齢者まで様々なケースに訪
問できることを目指します。
22
5
評価シートの活用
・ 評 価シートは、本人と指導者が共有し、成長のためのコミュニケーションツールとして
活用します。
(人事考課や査定を目的としません)
・ 以下の場面での使用を想定しています。
● オリエンテーション
面談の中で評価項目を確認し、OJTの中で習得を目指す目標として、意識付けをします。
● 定期面談・評価
・‌1か月後、2か月後、3か月後、6か月後、1年後など、時期を定めて、定期的に次の手
順で実施します。
①学習者(新任訪問看護師)が自己評価を記入
・‌評 価項目ごとに「未経験」
「できない」
「指導のもとにできる」
「一人でできる」
をチェックします。
・
「一人でできる」以外の項目について、評価の理由、目標と方策の方向性を記入
‌
します(中項目単位でも良い)。
②指導者(管理者等)が評価を記入
・‌評 価項目ごとに「未経験」
「できない」
「指導のもとにできる」
「一人でできる」
をチェックします。
・
「一人でできる」以外の項目について、評価の理由、目標と方策の方向性を記入
‌
します(中項目単位でも良い)。
③面談により課題を明確にし、目標と計画を検討
・‌評価結果を持ち寄り、相談して最終評価を決定します。
・‌学習課題について意識を共有し、相談により次の目標を設定し、具体的な計画
を立てます。
・‌学習者、指導者それぞれがシートをファイリングし、履歴を確認できるようにし
ておきます。
・シートへの記入に際しては、
「記入の手引」を参考とします。
23
【評価シート記入の手引】
大
中
小
新任訪問看護師の
達成目標
1~
~
~
3か月 6か月 12か月
評価の視点
目標・方策の方向性
訪問看護師としての基本的能力
訪問看護ステーションの一員として働くことができる
就業上のルールを守る
基本姿勢
基礎知識
○
訪問看護の目的・サービス
内容を理解する
事 業 所の理 念・活 動目標
に沿った対応をする
基 本的な医 療 保険、介護
保険 等の制度の仕組みを
理解する
訪問看護の報酬体系、利
用者 負担等について理 解
する
○
○
○
基本的な医療保険、介護保険等の制度の仕組み
を理解しているか(簡潔に説明できるか)
○
訪問看護の報酬体系、利用者負担等について理
解しているか(簡潔に説明できるか)
地域の交 通機関の利用方
法、道 路 事情、訪 問 先 の
目印などを把握する
○
同 僚・管 理 者と円 滑なコ
ミュニケーションをとるこ
とができる
○
日々の看護 活動について、
同僚・管理者に常に報告・
連絡・相談する
○
一人で 判 断 が 困 難な問 題
に関して、同僚・管理者に
速やかに相談する
○
利 用 者・家 族 の問 題に気
付いた場合には、同僚・管
理者に速やかに相談する
○
環境整備
訪問看護ステーション内の
物品を整備・補充する
○
災害時対応
災害時対応マニュアルを理
解し、災害 発 生時は指 示
に従い適切に行動する
○
連携・相談
・就業時間を守っているか
・就業規則を理解し、必要な書類を提出している
か
・訪問看護サービスの目的や役割、機能、サービ
ス内容について理解しているか(簡潔に説明で
きるか)
・事業所の理念・活動目標を理解し、常に適切な
行動をとることができているか
・挨拶や報告・連絡・相談する習
慣など、訪問看護師として身に
つけるべき態度を養う
・活動地域の複数の移動方法について言えるか
・目的地周辺の主要施設(学校、警察、消防署、
ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、公衆
トイレ、駐車場等)などの所在を把握している
か
・個別の業務に関する報告・連絡・相談に限らず、 ・事業所の一員として、他の職員
自分自身のことや事業所のことなど、管理者や
に話しかけたり、円滑なコミュ
看護職員と日常的にコミュニケーションをとるこ
ニケーションをとれる関係をつ
とができているか
くる
・挨拶や報告・連絡・相談する習
・日々の看護活動について、管理者や看護職員に
慣など、訪問看護師として身に
報告・連絡・相談することができているか
つけるべき態度を養う
・組織内部で看護職員としての自
・一人で判断が困難な問題に関して、同僚や上司
己を振り返り、他の職員と連携
等に速やかに相談することができているか
し、事 業 所内での役 割がとれ
る
・利用者・家族が安心して訪問看
・気付いた利用者・家族の問題を全て所内の看護
護サービスを受けることができ
職員に報告しているか
るように、常に意識して看護を
・報告の時期は適切か
提供できる
・使用した物品は元の位置に戻しているか
・物品の整 備・補 充が速やかに
・不足した物品は購入の手続をするなど補充する
でき、他者に迷惑をかけない
ことができているか
・災害時対応マニュアルを熟読しているか
・災害時には適切な行動をとるこ
・災害時の行動についてのイメージがついている
とができる
か
訪問看護師としてふさわしい態度・姿勢をとることができる
マナー
その場にふさわしい態度で
挨拶する
礼儀 正しい態 度や言 葉 遣
いで家族・利用者に対応す
る
・利用者・家族・看護職員など自らその場にふさ
わしい態度で挨拶することができているか
○
○
来 客・電 話に適 切に対 応
する
○
コミュニケー
ション
コミュニケーションを通し
て、利用者・家族との良好
な関係をつくる
○
時間管理
訪 問 予定 時 間 通りに訪 問
する
○
自己研鑽
知識・技術・態度などの不
足を補うために自己学習す
る
健康管理
日頃の健康管理に努める
○
○
訪問看護師としての専門的能力
・礼儀正しい態度や言葉遣いで家族・利用者に対 ・挨拶や報告・連絡・相談する習
慣など、訪問看護師として身に
応することができているか
付けるべき態度を養う
・来客や電話があった際、事業所の顔として、積
極的に誠意を持って対応することができている
か
・管理者や看護職員、利用者や
・訪問時に明るく笑顔で挨拶しているか
家族などと会話の仕方や聴く姿
・利用者や家族との約束や契約、依頼されたこと
勢、相手に自分の意見が伝えら
について誠実に対応しているか
れる態度などに留意して行動す
る
・訪問予定時間に遅れずに訪問することができて ・訪問看護師としての基本的なル
いるか
ールを習慣付ける
・訪問看護師として不足している知識・技術・態
度を自覚することができているか
・訪問看護師としての自己を振り
・自己の実践を振り返り、不足している部分につ
返り、知識・技術・態度を客観
いて、積極的に自己学習し補う努力を行ってい
的に評価する
るか
・健康的な生活を心がけているか
・定期的に健康診断や検 診を受
・事故の感染予防に努めているか
けるなど
利用者・家族の生活を見ることができる
利 用者・家 族 の 価 値観や
生活様式を受け入れる
生活重視
24
治療優先でなく、生活を重
視する
○
○
・利用者・家族の価値観や生活様式について理解
し、尊重しているか
・利用者の疾患や治療を最優先
にして看護の展開を考えるので
はなく、利用者が 疾 患や障 害
を抱えながら残された機能を積
極的に生かし、生活全体の質
(Q
・利用者の疾患だけを捉えて看護を提供するので
OL)を高めていくことができ
はなく、利用者・家族の生活も考えた看護判断
るかを考えて、看護を展開する
ができているか
・看護計画、実践の根 拠を明確
に示すことができる
・訪問看護実践を他の看護職員
にも理解できるように、記載す
る
大
中
小
新任訪問看護師の
達成目標
意思尊重
サービスの実 施に当たり、
利 用 者 の権 利を守り、 個
人の意思を尊重する
家族の健康
家 族 の 健 康 に気 を 配り、
健康管理や日常生活のアド
バイスをする
1~
~
~
3か月 6か月 12か月
評価の視点
目標・方策の方向性
・利用者・家族の意思を常に尊重しているか
・利用者・家族と目標を共有しているか
○
○
・家 族看護について基本的な学
・利用者だけでなく、家族も含めて看護の対象と
習をする
して捉え、健康や日常生活についてアドバイス
・利用者だけでなく家族も含めて
をしているか
看護の対象と捉える
説明することができる・聴くことができる
概要説明
ステーションの概要、重要
事項説明書・契約書内容・
利用料 金について理 解す
る
○
提 供する看 護の内容を事
前に分かりやすく説明する
○
指導助言
在宅 療養に必要な教育指
導を利用者・家族に行う
相談対応
利 用 者・家 族 からの相 談
に適切に対応する
事業所のサービス内容について理解しているか
○
○
相手の立場に立って、利用
者・家族の話を聞く
○
利用者・家族に関する事柄
について、カンファレンス
等で適切に説明する
○
カンファレンス
・事 業 所のサービス内容につい
て、きちんと理解している
・訪問時や機会を捉えて看護師として観察したこ
・訪問時に利用者や家族に対して
とや判断したこと、実施することについて利用
ケアに関する説明の時間をもつ
者や家族に説明しているか
・利用者・家族の希望・意欲・理
・その利用者・家族にあった方法で、在宅療養に
解度を考慮して、利用者や家族
必要な教育指導ができているか
に適した指導方法を立案して実
施する
利用者・家族の相談事を傾聴し、適切な援助が
できているか
・自然な日常の会話の中で利用者・家族から必要
な情報を得ているか
・日常の会話を大切にする
・気軽に必要なことを聞ける関係を利用者・家族 ・聴く姿勢を持つ
と築いているか
・情 報の活用目的について理 解
・情報を得ることの必要性について利用者・家族
し、利用者・家族に説明する
に説明しているか
・管 理 者 や 看 護 職 員、 利 用 者、
家族などとの会話の仕方や聴く
姿勢、相手に自分の意見を伝え
・管理者や看護職員など他者の意見を聴く姿勢や
られる態度などに留意して行動
態度を持っているか
する
・利用者に問題意識をもって関わり、気付いた問
・訪問看護師としてできること、
題に対して他者に伝え理解を得ることができて
できないことを利用者や家族に
いるか
明確に説明する
・約束したことに対しては誠実に
対応する
訪問看護サービスを提供することができる
利用者個別に訪問の目的
を理解する
○
必 要な情 報を収 集し、具
体 的な目標を設 定した看
護計画を立てる
・個々の利用者について、訪問看護サービスを利
用する目的に照らして、毎回の訪問の目的を理
解し、意識しているか
○
利用者・家族について必要な情報を収集し、具
体的な目標を設定した看護計画となっているか
訪問先・訪問予定を確認し
て、必要な情報をもとにそ
の日の援助計画を立てる
○
訪問看護に必 要な物品や
身支度を事前に整える
○
療養上の
世話
訪問看護 計 画に基づいて
療養上の支援(世話)を行
う
○
看護技術※
訪問看護に必要な最低限
の看護技術を身に付ける
○
感染管理
安 全に感 染 予防及び医療
廃棄物の取扱いを行う
○
訪問前準備
環境整備
訪問後対応
安心・安全
利用者の居室の生活環 境
(光、音、温度等)を整備
する
訪 問 後の 物品 片付け、衛
生管理を行う
○
○
訪 問 後に事 業 所 内・他 機
関に報告・申し送りをする
○
利用者・家族の安心・安全・
安楽を念頭に置いてケアを
提供する
○
緊 急時の手当の方 法、連
絡方法等を理解する
○
・医師の指示書やケアプランとの整合性を確認し
ているか
・訪問先・訪問予定を確認することができている
か
・訪問予定者の必要な情報をもとにその日の援助
方針に従って援助内容を計画できているか
・訪問する利用者の看護に必要な物品を訪問前に
準備することができているか
・利用者の状況を踏まえて適切な身支度ができる
か
・個別の利用者の訪問看護計画に基づいて症状
等の観察、食事の世話、清拭及び排泄の介助、
生活指導などができるか
・在宅看護に必要とされる最低限の看護技術(V
S測定、日常生活援助、浣腸、点滴、軟膏塗布、
服薬管理、吸引、モニター測定、リハビリテー
ション看護、経管栄養、座薬挿入、在宅酸素療
法、医療機器管理など)を身に付けるように職
場の勉強会や外部の研修会などに参加し、努力
しているか
・技術を身に付けるために積極的に同行訪問を求
めているか
・防護用具(マスク・ガウン・手袋)等を適切に
使用し感染予防に努めているか
・医療廃棄物が出た場合、決められた方法で処理
することができているか
・利用者が快適・健康に生活できるよう、居室の
生活環境(光、音、温度等)を整備し、家族に
も説明しているか
・訪問後に物品を片付けや衛生管理、不足があれ
ば補充、調達するなどの対応ができているか
・訪問後に、事業所内の管理者や他の訪問看護師、
さらには介護支援専門員等事業所外の関係者
に必要事項の申し送りができているか
・担当している利用者・家族に不安はないと言え
るか
・看護実践の際に、利用者・家族が安全、安心、
安楽であるかを考えながら行っているか
・重大性、緊急性を的確に判断し対処・報告でき
るか
・看護計画、実践の根 拠を明確
に示すことができる
・必要な物品を訪問前に準備し、
身支度をすることができる
・トピックスについては、勉強会
や研修 会に参加し、在宅看護
に必 要な知 識・技 術・態 度が
身に付いているかを評価する
・感 染 管 理についての知 識を得
て、安全に実践できる
・事業所の一員として、またチー
ムケアの一員として、訪問後に
必 要な対応し、次回以降の訪
問に備えることができる
・利用者・家族が安心して訪問看
護サービスを受けることができ
るように、常に意識して看護を
提供できる
・主治医に連絡するなど状況に応
じて対処する
25
大
中
小
夜間対応
判断
予防
新任訪問看護師の
達成目標
1~
~
~
3か月 6か月 12か月
訪問看護ステーションの利
用者全体の状況を理解し、
夜間の携 帯当番を担当す
る
全 身 状 態 や 生 活 の 仕 方、
利用者の反 応等を総合的
視野から状況判断する
○
○
利用者の 病 態から予測さ
れる問 題に予防 的に対処
する
○
評価の視点
目標・方策の方向性
・利用者全体の状況を理解しているか
・夜間の当番を担当し、対応ができるか
全身状態や生活の仕方、利用者の反応等を総合
的視野から状況判断できているか
・予測される問題をリストアップできるか
・利用者・家族が安心して訪問看
・問題に対して必要な予防策を挙げ対処している
護サービスを受けることができ
か
るように、常に意識して看護を
提供できる
地域の資源を理解し、連携することができる
地域の理解
地域連携
地域の保健医療福祉機関・
サービスを把握する
地域の中での訪問看護ス
テーションの役割を理解す
る
地 域内の 他 機 関・他 職 種
の専 門 性を理 解し、尊 重
する
訪問看護の経 過等を必要
時、主治医に正確に報告・
相談する
利 用 者の入 退 院 時に、医
療 機 関・その 他の機 関と
連携する
○
○
○
○
○
介 護 支 援 専 門 員と 連 携・
調整を行う
○
その 他の関 係 機 関との連
携や調整を行う
○
・地域において連携先となる保健福祉機関・サー
・ 地域の他機関、他職 種につい
ビスの窓口や担当者などを把握しているか
て、個別のケースにおける連携
・地域の他の機関や職種と連携において、訪問看
先として認識するだけではなく、
護ステーションの位置づけや果たすべき役割に
地域ネットワークにおける相互
ついて、理解できているか
の位置づけや役割、関係性に
ついて理解し、尊重しあうこと
・他の機関や職種の役割や専門性を理解し、尊重
ができる
することができているか
・定期的、及び変化やその予兆があった場合に、
訪問看護の経過等を主治医に正確に報告・相談
しているか
・利用者の入退院時に、医療機関・その他の機関
と連携して、必要な情報提供や調整を行ってい
るか
・利用者の状況、状態変化などについて、介護支
援専門員と随時情報共有し、必要に応じてケア
プランの見直しなどにつなげているか
・ケアチームで支援していること
・ケアチームで支援していることを説明できるか
を念頭に置く
・関係職種・機関に対して報告・連絡・相談が必
・関係職種・機関への報告、連絡、
要な状況がわかっているか
相談が必要な状況を管理者や
・緊急性を判断し、状況に応じて連携できるか
同僚に確認する
情報管理を適切にすることができる
記録
個人情報
訪 問 看 護 記 録・報 告 書・
計画書を適切に書く
○
訪 問 後、速やかに訪 問 記
録をつける
○
個人情 報保護の必 要性を
理 解し、情 報を適 切に管
理する
○
記録等作成の目的や重要性を理
解し、目的に沿って適切な記 述
ができるようになる
・訪問看護実践を他の看護職員
・訪問看護記録を一両日中に正確に記載すること
にも理解できるように、記載す
ができているか
る
・個人情報保護の必要性を説明できるか
・守秘義務を果たしているか
・利用者・家族の尊厳を重視した
・得られた個人情報が外部に漏洩しないよう留意
情 報の取 扱いや関わり方がで
しているか
きる
・ケア会議などで他者に情報を提供する場合は、
利用者・家族に同意を得ているか
訪問看護記録・報告書・計画書について、必要
な事項をもれなく正確に書けているか
※看護技術については、各事業所において具体的な項目を設定することが望ましい
<参考資料>
・「訪問看護 OJT ガイドブック」(公益財団法人日本訪問看護財団)
・「自己評価目標達成チェック表」(世田谷区社会福祉事業団訪問看護ステーション)
・「訪問看護事業所自己評価票」(北海道総合在宅ケア事業団)
・「在宅における看護実践自己評価尺度」(千葉大看護学部)
・東京都福祉サービス第三者評価「訪問看護」
・「介護事業所等における人材育成の観点からみたサービスの質の向上に関する調査研究報告書」(長寿社会開発センター)
・「介護保険サービスの自己評価実施ガイドライン」(滋賀県健康福祉サービス評価システム)
・「介護保険サービス評価に関する北海道基準の自己評価」(北海道)
26
27
小
新任訪問看護師の
達成目標
○
○
同僚・管理者と円滑なコミュニケーションをとることができる
日々の看護活動について、同僚・管理者に常に報告・連絡・相
談する
○
○
○
礼儀正しい態度や言葉遣いで家族・利用者に対応する
来客・電話に適切に対応する
コミュニケーションを通して、利用者・家族との良好な関係を
コミュニケーション つくる
マナー
その場にふさわしい態度で挨拶する
○
○
災害時対応マニュアルを理解し、災害発生時は指示に従い適
切に行動する
災害時対応
訪問看護師としてふさわしい態度・姿勢をとることができる
○
○
訪問看護ステーション内の物品を整備・補充する
利用者・家族の問題に気付いた場合には、同僚・管理者に速
やかに相談する
○
○
地域の交通機関の利用方法、道路事情、訪問先の目印などを
把握する
一人で判断が困難な問題に関して、同僚・管理者に速やかに
相談する
○
○
○
○
○
1~
~
~
3か月 6か月 12か月
訪問看護の報酬体系、利用者負担等について理解する
基本的な医療保険、介護保険等の制度の仕組みを理解する
事業所の理念・活動目標に沿った対応をする
訪問看護の目的・サービス内容を理解する
未経験
評 価
できない
指導のもと ひとりで
にできる
できる
評価の視点
目標・方策の方向性
(1か月 ・ 2 か月 ・ 3 か月 ・ 6 か月 ・ 12 か月)
指導者氏名:
目標時期
評価日: 年 月 日
学習者氏名:
環境整備
連携・相談
基礎知識
基本姿勢
就業上のルールを守る
訪問看護師としての基本的能力
訪問看護ステーションの一員として働くことができる
大 中
評価シート
28
訪問予定時間通りに訪問する
知識・技術・態度などの不足を補うために自己学習する
日頃の健康管理に努める
自己研鑽
健康管理
新任訪問看護師の
達成目標
時間管理
小
家族の健康に気を配り、健康管理や日常生活のアドバイスをす
る
○
利用者・家族に関する事柄について、カンファレンス等で適切
に説明する
訪問看護に必要な最低限の看護技術を身に付ける
看護技術※
○
○
○
訪問看護に必要な物品や身支度を事前に整える
訪問看護計画に基づいて療養上の支援(世話)を行う
○
訪問先・訪問予定を確認して、必要な情報をもとにその日の援
助計画を立てる
○
必要な情報を収集し、具体的な目標を設定した看護計画を立
てる
療養上の世話
訪問前準備
○
利用者個別に訪問の目的を理解する
訪問看護サービスを提供することができる
カンファレンス
○
相手の立場に立って、利用者・家族の話を聞く
利用者・家族からの相談に適切に対応する
相談対応
○
提供する看護の内容を事前に分かりやすく説明する
在宅療養に必要な教育指導を利用者・家族に行う
○
○
○
ステーションの概要、重要事項説明書・契約書内容・利用料
金について理解する
○
○
サービスの実施に当たり、利用者の権利を守り、個人の意思
を尊重する
○
○
○
指導助言
概要説明
目標時期
○
○
1~
~
~
3か月 6か月 12か月
治療優先でなく、生活を重視する
利用者・家族の価値観や生活様式を受け入れる
説明することができる・聴くことができる
家族の健康
意思尊重
生活重視
訪問看護師としての専門的能力
利用者・家族の生活を見ることができる
大 中
未経験
できない
指導のもと ひとりで
にできる
できる
評 価
評価の視点
目標・方策の方向性
29
目標時期
○
○
利用者・家族の安心・安全・安楽を念頭に置いてケアを提供
する
緊急時の手当の方法、連絡方法等を理解する
全身状態や生活の仕方、利用者の反応等を総合的視野から状
況判断する
利用者の病態から予測される問題に予防的に対処する
判断
予防
夜間対応
安心・安全
その他の関係機関との連携や調整を行う
介護支援専門員と連携・調整を行う
利用者の入退院時に、医療機関・その他の機関と連携する
訪問看護の経過等を必要時、主治医に正確に報告・相談する
地域内の他機関・他職種の専門性を理解し、尊重する
地域の中での訪問看護ステーションの役割を理解する
○
○
訪問後、速やかに訪問記録をつける
個人情報保護の必要性を理解し、情報を適切に管理する
○
○
訪問看護記録・報告書・計画書を適切に書く
※看護技術については、各事業所において具体的な項目を設定することが望ましい
個人情報
記録
情報管理を適切にすることができる
地域連携
地域の理解
地域の保健医療福祉機関・サービスを把握する
○
○
訪問後に事業所内・他機関に報告・申し送りをする
訪問看護ステーションの利用者全体の状況を理解し、夜間の
携帯当番を担当する
○
訪問後の物品片付け、衛生管理を行う
訪問後対応
○
利用者の居室の生活環境(光、音、温度等)を整備する
環境整備
○
○
○
○
○
○
○
○
○
1~
~
~
3か月 6か月 12か月
安全に感染予防及び医療廃棄物の取扱いを行う
新任訪問看護師の
達成目標
感染管理
小
地域の資源を理解し、連携することができる
大 中
未経験
できない
指導のもと ひとりで
にできる
できる
評 価
評価の視点
目標・方策の方向性
訪問看護OJTマニュアル作成部会
《検討経過》
回数
開催時期
主な検討事項
1
7月9日
(1)第1回東京都訪問看護支援検討委員会報告
(2)訪問看護OJTマニュアル案の作成について
2
8月9日
(1)第2回東京都訪問看護支援検討委員会報告
(2)訪問看護OJTマニュアル構成案について
(3)訪問看護の人材確保・定着に関する調査結果概要について
3
10 月 4 日
(1)訪問看護OJTマニュアル(構成案)について
(2)その他
4
1 月 29 日
(1)モデル事業結果報告及び訪問看護OJTマニュアル(構成案)について
モデル事業実施ステーションからの報告
(2)印刷デザイン案の決定
(3)OJT マニュアルを活用した人材育成の方法について
《委員名簿》
◎河原 加代子
首都大学東京健康福祉学部看護学科教授
島田 恵
首都大学東京健康福祉学部看護学科准教授
鈴木 央
鈴木内科医院 副院長
服部 絵美
株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション 所長
平原 優美
公益財団法人日本訪問看護財団立
あすか山訪問看護ステーション 統括所長 馬神 祥子
東京都福祉保健局医療政策部医療人材課長
横手 裕三子
東京都福祉保健局高齢社会対策部介護保険課長
◎は部会長
30
(五十音順) 訪問看護OJTマニュアル
○ 登録番号
(24)273
(24)405
○ 平成25年3月発行
○ 発 行
東京都福祉保健局高齢社会対策部介護保険課
〒 163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号
電話 03-5320-4279 (ダイヤルイン)
○ 印 刷
鵜川印刷株式会社
〒 113-0033 東京都文京区本郷二丁目22―12
菜の花の花言葉は「快活な愛」
「小さな幸せ」
「快活」
「活発」
「元気いっぱい」等です。
2
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