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原油レポート
No.108 2007年7月25日 原油レポート <需給が緩んでも上昇する日本のガソリン価格> 1 .原 油 市 況 ∼ 上 昇 基 調 が 続 く 原 油 相 場( W T I 、期 近 物 、終 値 )は 上 昇 基 調 が 続 い て お り 、7 月 20 日 の 終 値 は 1 バ レ ル = 75.92 ド ル と 昨 年 8 月 以 来 の 高 値 を 記 録 し た 。7 月 18 日 に 発 表 さ れ た 米 国 週 次 石 油 統 計 で ガ ソ リ ン 在 庫 の 大 幅 減 少 が 示 さ れ た こ と や 、7 月 20 日 に ア ン ゴ ラ の 油 田 で の 生 産 障 害 が 発 表 さ れ た こ と が 相 場 の 押 し 上 げ 材 料 視 さ れ た 。も っ と も 、サ ブ プ ラ イ ム 住 宅 ロ ー ン 問 題 の 米 景 気 へ の 影 響 が 懸 念 さ れ た こ と な ど か ら 、 24 日 の 終 値 は 73.56 ド ル ま で 下 落 し て い る 。 原 油 相 場 は 昨 夏 に 記 録 し た 史 上 最 高 値 に 近 づ い て い る 。し か し 、米 国 の ガ ソ リ ン 需 給の逼迫観測は 9 月はじめのドライブシーズンの終了とともに後退することが見込ま れ る 中 、原 油 市 場 で も 先 高 観 測 が 後 退 し て き て い る 。当 面 の 原 油 相 場 は 、上 値 の 重 い 展 開 が 予 想 さ れ る 。も っ と も 、来 年 に か け て 、米 国 景 気 の 改 善 と と も に 需 給 の 引 き 締 まりが予想され、原油相場は緩やかに上昇する可能性がある。 2.トピック∼需給が緩んでも上昇する日本のガソリン価格 原 油 相 場 が 最 高 値 に 迫 る 動 き を み せ る 中 、日 本 の ガ ソ リ ン 小 売 価 格 も 昨 年 の 高 値 水 準 に 近 づ い て い る 。生 活 に 身 近 な ガ ソ リ ン 価 格 は 、今 後 ど の 程 度 ま で 、上 昇 す る 可 能 性があるのだろうか。 日 本 の 原 油 輸 入 価 格 は 、6 月 時 点 で 1 リ ッ ト ル = 51 円 台 で あ っ た が 、足 元 の 原 油 相 場 の 水 準 が 続 く と 、 今 後 、 55 円 程 度 ま で 上 昇 す る 公 算 が あ る 。 つ ま り 、 原 油 の 輸 入 価 格 は 、第 二 次 石 油 危 機 後 の ピ ー ク で あ る 1 リ ッ ト ル = 57 円( 1982 年 11 月 )に か な り近づく。 も っ と も 、 ガ ソ リ ン 価 格 ( レ ギ ュ ラ ー ) が 1980 年 代 前 半 に 記 録 し た 1 リ ッ ト ル = 180 円 近 く に 達 す る 可 能 性 は 小 さ い 。当 時 に 比 べ る と 競 争 が 厳 し く な っ た こ と や 効 率 性が向上していることから、精製マージンや流通マージンが減少しているためであ る 。そ う し た 現 在 の 石 油 市 場 の 環 境 を 前 提 と す る と 、現 状 の 原 油 相 場 が 続 い た 場 合 に 、 ガ ソ リ ン 価 格 は 145 円 前 後 に 上 昇 す る 可 能 性 が あ る 。 調査部 【お問合せ先】 芥田([email protected])、細尾([email protected]) 次回公表日:2007 年 8 月 7 日(火)頃 ※本レポートは情報提供を唯一の目的としており、何らかの金融商品の取引勧誘を目的としたものではありません。 また、掲載された意見・予測等は資料作成時点での判断であり、今後予告なしに変更されることがあります。 ※「原油レポート」のメール配信サービスを提供しています。ご希望される方は、 「原油レポート配信希望」と記して上記 E-mail アドレスに送信して下さい。また、配信停止をご希望される方は、「原油レポート配信停止」と記して上記 E-mail アドレスに 送信して下さい。 1. 原油市況;上昇基調が続く 原油相場(WTI、期近物、終値)は上昇基調が続いており、7 月 20 日の終値は 1 バレ ル=75.92 ドルと昨年 8 月以来の高値を記録した。7 月 18 日に発表された米国週次石油統 計でガソリン在庫の大幅減少が示されたことや、7 月 20 日にアンゴラの油田での生産障害 が発表されたことが相場の押し上げ材料視された。もっとも、サブプライム住宅ローン問 題の米景気への影響が懸念されたことなどから、24 日の終値は 73.56 ドルまで下落してい る。また、欧州の指標であるブレント原油も上昇基調を続けており、7 月 24 日に 75.08 ド ルであった(図表1)。 なお、今年に入ってブレント原油やアジア地域の原油の指標であるドバイ原油に比べて、 米国のWTI原油が相対的に弱い値動きを続けていたが、足元では徐々にWTI安が修正 される傾向にある。 また、先物の価格体系に変化がみられる。直近(7 月 24 日時点)の先物カーブを見ると、 期近物をピークに、期先になるほど価格が安くなるバックワーデションになってきており、 先高観測が後退している(図表 5∼6)。 先物市場における投機筋のポジションをみると、原油では、4 月 17 日に終わる週をピー クに買い超幅はいったん縮小していたが、5 月半ば以降拡大基調が続いている(図表 7)。 一方、ガソリンの買い超幅は拡大基調で推移していたが、7 月 10 日に終わる週をピークに 7 月 17 日に終わる週にはやや縮小に転じている(図表 8)。 原油相場はWTI、ブレント、ドバイのいずれも、昨夏に記録した史上最高値に近づい ている。しかし、米国のガソリン需給の逼迫観測は 9 月はじめのドライブシーズンの終了 とともに後退することが見込まれる中、上述のとおり原油市場でも先物価格がバックワー デションになり、先高観測が後退してきている。当面の原油相場は、上値の重い展開が予 想される。もっとも、来年にかけて、米国景気の改善とともに需給の引き締まりが予想さ れ、原油相場は緩やかに上昇する可能性がある。 (図表 1)原油市況の推移 80 (図表 2)石油製品市況の推移 (セント/ガロン) (ドル/バレル) 75 260 70 65 210 60 55 50 160 45 WTI原油(期近物) 40 OPECバスケット原油 35 ドバイ原油(現物) 110 暖房油No.2 ガソリン(期近) 30 25 60 04 05 06 (注)WTI原油、ドバイ原油の直近は7月24日、 OPECバスケット原油の直近は7月23日。 07 05 (年、日次) 06 (注)NYMEX、直近は7月24日。 1 07 (年、日次) (図表 3)油種間スプレッドの推移 (図表 4)米国天然ガス市況の推移 (ドル/バレル) 18 スプレッド(WTI−ドバイ) 16 80 14 スプレッド(WTI−OPECバスケット) 15 75 12 スプレッド(WTI−ブレント) 14 10 13 8 12 6 11 4 10 2 9 0 8 -2 7 -4 6 70 WTI原油価格(右目盛) 04 05 06 07 (注)WTI、ドバイ、ブレントの直近は7月24日、 OPECバスケットの直近は7月23日。 55 50 45 40 35 天然ガス価格(Henry Hub) (左目盛) 30 4 25 04 (年、日次) 05 06 07 (注1)天然ガスの単位BtuはBritish thermal unitsの略 (注2)直近は7月24日。 (図表 5)WTI原油先物価格の限月推移 (ドル/バレル) 65 60 5 -6 80 (ドル/バレル) (ドル/百万Btu) 16 期先(7月24日時点) (図表 6)WTI原油の先物カーブ 2006年12月 2007年2月 2007年4月 2007年6月 (ドル/バレル) WTI原油価格(期近) 76 70 (年、日次) 2007年1月 2007年3月 2007年5月 直近(2007年7月24日) 74 72 60 70 68 66 50 64 40 62 60 30 58 56 54 20 03 04 05 06 07 08 09 (注)限月は26ヵ月先まで、2007年7月24日時点 (出所)ニューヨーク商業取引所(NYMEX) 52 1 (ドル/バレル) WTI原油価格(期近物) 70 60 買い(Long) 50 40 売り(Short) 20 投機筋(非当業者+非報告者) のネットポジション(右目盛) 0 04 05 06 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 (限月) (図表 8)投機筋のポジション(ガソリン) (千枚) 350 300 250 200 150 100 50 0 -50 -100 -150 -200 -250 -300 -350 80 10 5 (注)各時点における各限月(26ヵ月先まで)のWTI原油先物価格 (出所)ニューヨーク商業取引所(NYMEX) (図表 7)投機筋のポジション(原油) 30 3 (月次) 07 (週次) (注1)直近は7月17日時点 (注2)非当業者は報告義務のある取引参加者のうち、エンドユーザ− 以外の主に投機を目的とする者。非報告者は報告義務のない取引 参加者で、ほとんどが投機を目的としていると推察される。 (出所)CFTC 2 (セント/ガロン) 300 (千枚) 100 ガソリン価格(期近物) 250 75 200 50 150 25 買い(Long) 100 0 売り(Short) 50 -25 投機筋(非当業者+非報告者) のネットポジション(右目盛) 0 -50 04 05 06 07 (週次) (注1)直近は7月17日時点 (注2)GASOLINE BLENDSTOCK (RBOB)あるいはUNLEADED GASOLINEの合計 (出所)CFTC 2.米国の需給動向 (1)原油需給;原油在庫は高水準で推移 米国ではガソリン需要の最盛期に入っているものの、事故や点検、補修が相次いでいる ため、製油所の稼働率は引き続き 90%程度の水準にとどまっており、原油需要は伸び悩ん でいる(図表 9)。原油の供給も伸び悩んでいるが、相対的に原油需要の方が弱く、原油在 庫は前年を上回る水準で推移している(図表 10)。 (図表 9)米国の原油需要と原油供給 25 (図表 10)米国の各年の原油在庫率(日数) (百万バレル) 380 (前年比、%) 20 360 原油供給(国内生産+輸入) 原油需要(精製投入) 15 340 10 320 5 300 0 280 -5 260 -10 240 -15 2007∼08年 2006∼07年 2004∼05年 2003∼04年 2005∼06年 220 -20 04 05 06 7 07 (注)速報系列により作成。直近は7月13日時点 (資料)米エネルギー情報局(EIA) (週次) 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 (注)SPRを除く原油在庫、直近値は7月13日 (月、週次) (出所)米国エネルギー情報局(EIA) (2)石油製品;ガソリン在庫は品薄感が続く 最新週のガソリン小売価格は、7 月 23 日に全米平均で 1 ガロンあたり 3.0 ドルと、5 月 21 日に史上最高値(3.26 ドル)をつけた後は、上昇傾向が一服している(図表 11)。一方 でガソリン消費量は伸びが縮小しているものの、依然前年水準を上回って推移している。 ガソリンの在庫率(在庫÷消費量)の水準は低く、需給逼迫懸念が続いている(図表 12)。 (図表 11)ガソリン消費の推移 (前年比、%) 8 (図表 12)ガソリン在庫率の推移 (セント/ガロン) (日数) 350 26 6 300 25 07∼08年 06∼07年 05∼06年 04∼05年 03∼04年 4 250 2 24 23 0 200 22 -2 ガソリン小売価格(右目盛) 150 ガソリン消費(左目盛) -4 21 100 -6 05 06 (注)ガソリン消費は速報系列の4週移動平均 (出所)EIA 20 07 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 (年、週次) (注)直近値は7月13日 (出所)米国エネルギー情報局(EIA) 3 (月、週次) 3.OPECの動向 ①OPECの生産動向 6 月のOPEC(1 月より加盟したアンゴラを含めた 12 ヶ国)の原油生産は、前月比+0.5 万バレルとほぼ横ばいであった。アンゴラとイラクを除く 10 カ国では、昨年 11 月と今年 2 月に決定された 170 万バレルの減産のうちの 110 万バレル程度が実施されているとみら れる(図表 13、Bloomberg による推計値)。 OPECは現在の原油需給はバランスしているとの見方を続けており、9 月の次回定例 総会までは現在の生産水準が維持される見通しである。一方で、OPECは需要が増えれ ば増産するとしており、冬場の需要の最盛期に向けて、生産枠を引き上げる可能性があろ う。 ②地政学リスク イランの核開発問題では、9 日に英国のミリバンド外相が国連安保理の追加制裁決議に 積極的な姿勢を示し、12 日に米国は金融制裁を科しているイラン企業に対する輸出規制を 強化した。そうした中で、11∼13 日にIAEA(国際原子力機関)とイランとの協議が行 なわれ、イランはIAEAによる核査察の受け入れを表明した。またイラク問題を巡って、 24 日に米国とイランとの大使級協議が開催され、直接対話の試みが続いている。イラン核 開発問題は、当面、小康状態が続くとみられる。 一方、パレスチナ問題ではパレスチナ自治区における穏健派のファタハと強硬派のハマ スとの分裂状態が続いているが、米国は 16 日に今秋の和平会議開催を発表した。 (図表 13)OPECの生産動向 サウジアラビア イラン クウェート UAE カタ-ル ベネズエラ ナイジェリア インドネシア リビア アルジェリア OPEC10カ国 生産量 (6月) 858.0 392.0 240.0 252.0 80.0 236.0 205.0 83.0 169.0 136.0 2,651.0 生産量 (5月) 857.0 390.0 238.0 252.0 80.0 236.0 200.0 84.5 169.0 135.0 2,641.5 イラク アンゴラ OPEC12カ国 191.0 160.0 3,002.0 200.0 160.0 3,001.5 国名 超過量 生産枠 (07年2月∼) (6月) 8.9 849.1 27.7 364.3 3.7 236.3 8.5 243.5 1.3 78.7 1.7 234.3 0.6 204.4 0.9 82.1 6.4 162.6 6.8 129.2 66.5 2,584.5 − − − − (万バレル/日) 1,080.0 410.0 255.0 265.0 82.0 255.0 260.0 90.0 173.0 140.0 3,010.0 79.4% 95.6% 94.1% 95.1% 97.6% 92.5% 78.8% 92.2% 97.7% 97.1% 88.1% 生産余力 (6月) 222.0 18.0 15.0 13.0 2.0 19.0 55.0 7.0 4.0 4.0 359.0 220.0 160.0 3,390.0 86.8% 100.0% 88.6% 29.0 0.0 388.0 産油能力 稼働率 (注1)超過量(6月)=生産量(6月)−生産枠(07年2月∼)。生産枠は06年9月に比べ170万バレルの減産が行われるとした試算値。 (注2)産油能力は、30日以内に生産可能で、かつ90日以上持続可能であることが条件。 (注3)サウジアラビアとクウェ−トの生産量には中立地帯の生産量が1/2ずつ含まれる。 (注4)稼働率(%)=生産量(6月)/産油能力*100 (注5)生産余力=産油能力−生産量(6月) (資料)Bloomberg 4 4.トピック;需給が緩んでも上昇する日本のガソリン価格 原油相場が最高値に迫る動きをみせる中、日本のガソリン小売価格も昨年の高値水準に 近づいている。生活に身近なガソリン価格は、今後どの程度まで、上昇する可能性がある のだろうか。 (1)日本のガソリン需給 2006 年の日本のガソリン消費量(販売量)は減少した。イスラエルのヒズボラ侵攻によ り原油価格が上昇し、ガソリン価格も急騰したため、需要が抑制されたことも影響してい るが、基本的には、低燃費の軽・小型車へのシフトや少子高齢化を背景にしたガソリン需 要の構造的な変化が現れていると考えられる。一方で、製油所の稼働率を維持するような 経営スタンスが採られるため、ガソリン供給は減少しにくく、国内のガソリン需給を緩和 する力が働いていると考えられる(図表 14)。 (図表 14)日本のガソリン需要の動向 (百万キロリットル) 65 60 55 50 45 40 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 (月次、年) (注)12ヶ月累積値 (出所)石油連盟 しかし、日本のガソリン価格は下落するのではなく、上昇傾向にある。この背景には、 原材料となる原油価格が上昇していることに加えて、海外のガソリン高が日本に波及して いることがある。石油製品は、消費地において原油から精製されるのが主流であり、日本 でも輸出や輸入の割合はそれほど多くないが(図表 15)、輸出入が需給の調整弁になって いると考えられる。つまり、ガソリンは国際的に取引される商品であり、ある国のガソリ ンだけ割安に放置されるということは起こりにくいのである。 5 (図表 15)日本のガソリン輸出入(国内需要に対する比率) (%) 6.0 5.0 輸出 輸入 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 00 01 02 03 04 05 06 (注)12ヶ月移動平均値 (出所)石油連盟 07 (年、月次) (2)日本のガソリン貿易 まず、日本のガソリン輸入と日本のガソリン価格の割高・割安の度合い(ここでは日米 のガソリン価格差)の関係をみると、日本のガソリン価格が割高になるとガソリン輸入が 増え、ガソリン輸入が増えると需給が緩和し日本のガソリン価格が割安になる傾向がある ことがわかる。石油製品の供給余力がある韓国からの流入が増えると、日本のガソリン市 況が抑制されるという構図だ(図表 16)。 (図表 16)日米ガソリン価格差と日本のガソリン輸入の動向 (百万リットル) 400 ガソリン輸入 (円/リットル) 30 価格差 350 35 300 40 250 45 200 50 150 55 100 60 50 65 0 04 05 (注)3ヶ月移動平均値。 日米ガソリン価格差は小売価格の差。 各種税金を含むことから日本の方が高い (出所)石油連盟 日本の ガソリン が割安 日本の ガソリン が割高 70 06 07 (年、月次) さらに、日本のガソリンが米国を中心とした海外へ輸出されるケースもある。2005 年後 半∼2006 年に米国のハリケーン被災後に備蓄放出等の政策対応によって対米国向けのガ ソリン輸出が増加したのはやや異例であったが、2005 年前半や 2007 年前半にみられるよ うに日本のガソリン価格が割安になる局面では、日本のガソリン輸出が増加している(図 6 表 17)。 このように輸入ガソリン増加→国内のガソリン需給緩和、国内のガソリン需給緩和→輸 出ガソリン増加、といった玉突きのようなことが起こり、海外のガソリン需給が国内にも 影響している様子がうかがえる。 現状では、米国は製油活動が低迷する中で海外からの石油製品の輸入を増やしているた め、米国以外の地域の石油製品需給を引き締めていると考えられる。日本にも、米国発の ガソリン需給の引き締まりが波及していると考えられる。 (図表 17)日米ガソリン価格差と日本のガソリン輸出の動向 (百万リットル) (円/リットル) 80 30 70 35 60 ガソリン輸出 40 50 価格差 45 40 50 30 55 20 60 10 65 0 70 04 05 06 (注)3ヶ月移動平均値。 日米ガソリン価格差は小売価格の差。 各種税金を含むことから日本の方が高い (出所)石油連盟 日本の ガソリン が割安 日本の ガソリン が割高 07 (年、月次) (3)当面の日本のガソリン価格 日本のガソリン小売価格(レギュラー、毎月 10 日調査)は、7 月に 141 円に上昇し、昨 年 8∼9 月の 144 円に近づいている。7 月に入って、ガソリンの原材料となる原油価格がさ らに水準を上げているため、今後、ガソリンの卸売価格や小売価格がさらに引き上げられ る可能性がある。日本の輸入原油の9割を締める中東産原油の先物価格(東京工業品取引 所)をみると、ドル建ての原油価格は昨年 8 月の高値をわずかに下回っているものの、昨 年に比べると為替レートが円安になっているため、円建ての原油先物価格はすでに昨年の 高値を越えてきている(図表 18)。 7 (図表 18)中東産原油先物(期近物)の推移 (円/リットル) (ドル/バレル) 90 60 円建て(左目盛) 55 85 ドル建て(右目盛) 50 80 45 75 40 70 35 65 30 60 25 55 50 20 06 (日次、年) 07 (出所)Bloomberg、東京工業品取引所 実際の日本の原油輸入価格は、6 月時点で 1 リットル=51 円台であったが、足元の原油 相場の水準が続くと、今後、55 円程度まで上昇する公算がある。つまり、原油の輸入価格 は、第二次石油危機後のピークである 1 リットル=57 円(1982 年 11 月)にかなり近づく。 もっとも、ガソリン価格(レギュラー)が 1980 年代前半に記録した 1 リットル=180 円 近くに達する可能性は小さい。当時に比べると競争が厳しくなったことや効率性が向上し ていることから、精製マージンや流通マージンが減少しているためである(図表 19)。そ うした現在の石油市場の環境を前提とすると、現状の原油相場が続いた場合に、ガソリン 価格は 145 円前後に上昇する可能性がある。 (図表 19)ガソリンの小売価格・卸売価格と原油の輸入価格 (円/リットル) 180 (円/リットル) 120 ガソリン小売価格(左目盛) ガソリン卸売価格(左目盛) 原油輸入価格(右目盛) 160 100 140 80 120 60 100 40 80 20 60 80 85 90 95 (出所)石油情報センター「給油所石油製品市況調査」、 財務省「貿易統計」、日本経済新聞 8 00 0 05 (年、月次)