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プレスリリース - 横浜市立大学
本件の取り扱いについては、下記の解禁時間以降でお願い申し上げます。 新聞 :日本時間 12 月 31 日(金)朝刊 テレビ・ラジオ・インターネット :日本時間 12 月 31 日(金)午前 1 時 2010 年 12 月 27 日 公立大学法人横浜市立大学 報道関係者各位 横浜市立大学医学研究科 才津准教授ら研究グループが、 四肢異常を伴う小眼球症候群の原因遺伝子を発見! ―眼球・四肢形成の新たな重要因子の同定― ~『American Journal of Human Genetics』オンライン版 (米国 12 月 30 日正午付:日本時間 12 月 31 日午前 1 時付)に掲載~ 横浜市立大学医学研究科・岡田一平(大学院生) ・浜之上はるか(大学院生) ・才津浩智准教授(遺 伝学教室)らは、四肢異常を伴う小眼球症候群 (Microphthalmia with limb anormalies)の原因遺伝 子を発見しました。この研究は、大阪バイオサイエンス研究所・古川貴久研究部長、大阪大学竹 田潤二教授(環境・生体機能学)、沖縄県立南部医療センター・小児センターの當間隆也先生、及 びレバノン・トルコの研究者らとの共同研究による成果であり、横浜市立大学先端医科学研究セ ンターが推進している研究開発プロジェクトの成果のひとつです。 ☆研究成果のポイント ○マイクロアレイを用いた全ゲノム SNP タイピングにより原因遺伝子同定に成功 ○SMOC1 遺伝子はヒトの正常な眼や手足の形成に不可欠であり、機能喪失性ホモ接合性 変異が四肢異常を伴う小眼球症候群の原因となることを証明 ○Smoc1 は発生段階の眼と手足で重要な機能を果たしていることをマウスで証明 ○SMOC1 は BMP シグナルを修飾することで、眼・手足の発生に関与する可能性を示唆 ☆研究概要 四肢異常を伴う小眼球症候群 (Microphthalmia with limb anormalies, MLA)は、視神経の形成不全 と小(無)眼球症に四肢 (手足の合指症や乏指症など)の異常を伴う常染色体劣性疾患です。共同 研究グループは、マイクロアレイを用いた全ゲノム SNP1 タイピングおよびマイクロサテライト マーカーを用いた連鎖解析 2 によって、3 家系 4 症例に共通する原因遺伝子候補領域を第 14 番染 色体上に決定し、この領域に位置する SMOC1 遺伝子のホモ接合性変異を、4 人の患者さん全て に同定しました。共同研究グループは、Smoc1 がマウスに於いて形態形成期の眼や手足で発現し ていることを明らかにしました。また、Smoc1 変異マウスでは、MLA 患者で特徴的な視神経の 形成不全と小眼球症、および合指症や腓骨の低形成などの四肢形成異常が認められました(図 1)。 さらに、発生上重要である BMP シグナルの減少が、趾間部での細胞死の減少をもたらし、合指 症を引き起こすことが強く示唆されました。 本研究は MLA の原因遺伝子を明らかにしたばかりでなく、これまで機能が良く知られていなかっ た SMOC1 という分子が、ヒト及びマウスの正常な眼・手足の形成に不可欠であるということを 示すものです。今後の MLA の病態の解明と、哺乳類の眼や手足の発生に関わるメカニズムの解析 に大きく寄与することが期待されます。 (注釈) 1 SNP: 1000 塩基に 1 塩基の割合で見られる DNA の多様性で、個人差を表すマーカーの一つ。 2 連鎖解析: 原因遺伝子が染色体のどこにあるかを、多型マーカーをもとに解析する方法。 1 <図1> (上段) Smoc1 変異マウス(B,C)では、野生型 マウス(A)に比べ視神経が極端に細く なっていることが分かる。MLA 患者 では、CT 上、視神経が見られないこ とと一致する。 (下段) Smoc1 変異マウスでは、第 2,3 指の 合指症(E),や第 2-4 指の合指症(F)な どの異常が見られる。MLA 患者では 乏指症・合指症などが見られることと 一致する。 本研究成果は、米国の科学雑誌『The American Journal of Human Genetics』に掲載されます。 (米 国 12 月 30 日:日本時間 12 月 31 日オンライン発表) ※ この研究は、厚生労働省、文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構、日本学術振興会の研 究補助金により行われました。 <お問い合わせ先> (本資料の内容に関するお問い合わせ) 公立大学法人横浜市立大学 大学院医学研究科 環境分子医科学(遺伝学) 才津 浩智、 松本 直通 TEL:045-787-2606 FAX:045-786-5219 [email protected] (才津) [email protected] (松本) (取材対応窓口、資料請求など) 公立大学法人横浜市立大学 TEL:045-787-2506 先端医科学研究課 進藤、竹永 FAX:045-787-2509 [email protected] <横浜市立大学先端医科学研究センター> 公立大学法人横浜市立大学では、横浜市中期計画の「がん対策の推進」事業を行うため、免疫・ アレルギー疾患や生活習慣病、がんなどの原因究明と、最先端の治療法、創薬など、臨床応用に つながる開発型医療を目指した研究を行う先端医科学研究センターを平成 18 年 10 月に開設しま した。現在、本学の持つ技術シーズを活用した最先端の医科学研究を行う 22 件の研究開発プロ ジェクトを推進し、研究成果を市民等の皆様へ還元することを目指しております。 URL: http://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/index.html 2