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教育政策の重心を 量的拡大から質的向上に - PHP総研

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教育政策の重心を 量的拡大から質的向上に - PHP総研
政策シンクタンクPHP総研 政策研究Highlight 2012年6月号
(Vol.7,No.13)
2012
6
Jun.│第13号
対 談
城井 崇
文部科学大臣政務官・衆議院議員
亀田 徹
PHP 総研主席研究員
教育政策の重心を
量的拡大から質的向上に
現在、日本の教育現場は様々な課題を抱えています。子どもの学力から教育行政まで幅広い課題に今、どのような教
育政策が求められているのでしょうか?衆議院議員初当選以来、教育分野を中心に活動されてきた文部科学大臣政務
官である城井崇氏に弊社主席研究員の亀田徹がお話を伺いました。
城井◉PISA調査については、最近の結
な力を伸ばしていくべきでしょうか。
果を見ても決して満足できるものではあり
城井◉重要なのは、いわゆるテストで測
亀田◉本日は、これからの日本の社会を
ませんが、日本が国際的に上位に位置し
る学力のみならず、実際にどういう学力
見通したときに教育政策はどうあるべき
ていることは間違いないといえるでしょう。
が私たちに必要なのかということです。グ
か、教育政策の方向性についておうかが
ただし
「学力の二極化」が生じているのが
ローバル社会においては、答えのない中
いしたいと思います。OECDのPISA調査
現状です。保護者の経済環境と子どもの
でみずから解決策を見出していく力が求
「生き抜く力」を子どもたちに
が実施されて以来、各国の教育水準が比
学力との相関関係があると見られます。そ
められると考えます。私の言葉でいうと
「生
較できるようになりました。PISA調査の
こで、経済面での手当てをすることで、
き抜く力」です。自分で考えて、みずから
インパクトにより多くの国で積極的に学力
望めば学べるという環境をつくり、誰にで
決めて動ける力、すなわち
「問題解決能
向上策が講じられています。日本でも全
もチャンスを与えようとしています。
力」。この力を子どもたちには身につけて
国学力テストが実施され、教育委員会で
亀田◉いまおっしゃったような
「学力の二
ほしいと思っています。もうひとつ、
「情報
も学習支援員の配置や教材作成が進めら
極化」
は日本だけでなく各国共通の課題で
発信能力」も必要だと思いますね。国の歴
れるなど、学力向上のためのさまざまな取
もあります。それをどう解決するか、そこ
史・伝統・文化の土台のうえに立ち、みず
り組みがなされているかと思います。まず
に学校、公教育の役割があると思います。
からの言葉で発信する力です。それが他
日本の子どもたちの学力の現状をどのよう
将来の社会を支える人材を育成するとの
国との関係において、我々の固有の価値
にとらえているかをお聞かせください。
観点から、学校では子どもたちのどのよう
を高めることになるのです。
1
政策シンクタンクPHP総研 政策研究Highlight 2012年6月号
(Vol.7,No.13)
のかという検証が必要です。
城井 崇(きい・たかし)
98年、京都大学総合人間学部卒業。同年松下政経
塾入塾し、01年卒塾。同年、衆議院議員前原誠司の
秘書、現参議院議員松井孝治の選対スタッフを務め、
民主党福岡県総支部連合会政策・広報担当、02年、
民主党福岡県第10区総支部代表を務める。03年、第
43回衆議院選挙に福岡10区にて初出馬・初当選。衆
議院議員として文部科学委員を務めるなど教育分野を
中心に活動。11年、文部科学大臣政務官就任し現在
に至る。
教師の問題解決能力を高めるために
亀田◉教師の年齢構成からするとこれか
ら10年間で3分の1の教師が退職するとい
われます。学校の質をどう維持・向上して
いくのかが大きな課題になると予測されま
す。
その鍵となるのが校内研究という取り
組みではないでしょうか。指導方法の課
題を見つけて解決していくことで、教師自
身の
「自分で考えて、みずから決めて動け
る力」を高めることができるからです。
日本の校内研究の効果は、国際的にも
注目されています。にもかかわらず、これ
教師の質の向上のために
量の確保を目指す
いうケースもあり、さまざまな知見を付加
まで、校内研究が教育政策の主要課題に
する機会をつくるためにも教師の人数を増
なることはあまりありませんでした。どち
やすことがとても大事だと考えます。
らかというと、当たり前に行ってきた取り
亀田◉学校教育においては、問題解決能
亀田◉教師が子どもたちと向き合い、そ
組みだったからだと思われます。教師の
力と情報発信能力に重きを置くということ
して実践的指導力を高めるために、教師
質的向上の重要なツールである校内研究
ですね。そのためには、子どもを指導す
の人数を確保していく。すなわち、教育
を行政としても積極的に推進していく必要
る教師にも相応の力量が求められるので
の質を向上させるために量を確保するとい
があると考えますが、いかがでしょうか。
はないでしょうか。
うことですね。あくまでも教育の質的向
城井◉よい指摘だと思います。学校の中
城井◉教師という仕事は、向かい合った
上が目的だと。これからの教育政策は、
で特に日頃から顔が見える人間関係の中
子どもの生き方にまで影響を与えるわけ
単に量的拡大を志向するのではなく、質
での指導内容・方法の研究深化というの
ですよね。指導する中身もさることながら、
的向上をより重視する姿勢を明確にしてい
は非常に効果があると思います。校内研
誰がいっているかというのが大事です。
くべきと考えます。
究の実施に向けてどう体制を整えるかが
教師にそれだけの
“熱量”があるかが問わ
城井◉財政当局と教職員定数の改善の折
課題でしょう。授業時間もあり、放課後も
れると思います。
に議論するときの大きなポイントがいまの
部活や個別の指導を行うとなると、校内
亀田◉まずは教師の熱意ということです
話なんですね。数を増やせば教育の中身
研究を実施するための時間をどう捻出す
ね。
はよくなるという前提にいままで乗っかっ
るか、なんらかの手立てが必要かもしれ
城井◉そのうえで、子どもとしっかり向き
てやってきました。ところが、少子化の時
ません。
合い、子どもの能力を伸ばす、引き出す
代に入り、子どもの数は減っているのに教
亀田◉教師の時間確保も含め校内研究の
ことが何よりも優先されるべきではないか
師の数は増えています。そうなると、教育
仕組みをどう構築するかの検討とともに、
と思います。教師の力量向上には、養成、
の現状はどうですか、という話に必ずな
教師の質的向上が教育政策の優先事項
採用、研修の各段階を一体として検討す
ります。量を増やせば教育内容はよくなる
であり、校内研究は重要なツールである
る必要があると考えます。
亀田◉OECDの報告書では、日本の教育
は世界最良のシステムのひとつであり、と
くに重要なのは教師の質であるとしなが
ら、日本が国際的な競争力を維持できる
よう対策をとる必要性が指摘されていま
す。
城井◉教師の質の向上と量の確保、この
両方が必要だと思います。教科指導、生
徒指導、家庭訪問、部活動などがあり、
また最近ではキャリア教育など新たな任
務が加わり、教師が忙しくなっています。
子どもたちに向き合うためには一定の人数
が必要になります。また、学校現場から
離れられずに、研修機会に恵まれないと
亀田 徹(かめだ・とおる)
91年、東京大学教育学部卒業。同年、文部省入省。
同省にて、学校施設整備や教職員定数制度、情報環
境、中高一貫制度の創設などを担当。98年、福岡県
教育委員会に出向。高等学校教育や教員研修を担当。
2000年、文部科学省
(文部省)に戻り、専門職大学
院制度の創設や大学入学制度、国立大学統合などの
大学制度改革、不登校対応などの生徒指導を担当。
同省生徒指導室長を経て、06年、PHP研究所に入
社。学校経営と教育行政の質の向上を主な研究テー
マとする。
2
政策シンクタンクPHP総研 政策研究Highlight 2012年6月号
(Vol.7,No.13)
とのメッセージを国から発していただきた
に参加してもらい、まさに衆知を集めて
に現場に近いところのニーズを汲みなが
いと思います。それが学校現場における
学校をよりよいものに変えていくことが必
ら、
ハンドリングの権限と責任をどう明らか
努力の後押しになるに違いありません。
要と考えます。
にするか、これを考える時が来たのだと
実は先日話を聞く機会があったのです
感じます。
が、JICAでは
「みんなの学校プロジェク
亀田◉現行の仕組みでは自治体の教育行
ト」という国際協力プロジェクトを海外で
政の権限と責任が分散していますが、教
学校外の資源を活用する
城井◉質的向上のためには、校内に限定
せずに学校外にも取り組みの範囲を広げ
展開しているそうです。学校運営をどう改
育行政の機能を充実させるためには権限
ることも必要でしょう。やはりどうしても、
善するかを保護者や地域住民等で構成す
と責任を統一させるべきだと考えます。
学校外とのつながりの不足が指摘されて
る委員会で話し合い、学校を変えていく
城井◉学校を運営する校長が何か決めよ
いるのが現状ですからね。
プロジェクトです。海外の多くの学校でプ
うと思っても教育委員会におうかがいを
さまざまな分野での貴重な経験をくぐっ
ロジェクトを実施して成果をあげていると
立てないとなりません。一方で、学校現
てきた人材を活用し、問題解決能力を引
聞き、地域との連携によって学校が変わ
場の問題はすべて校長に持ち込まれてく
き出す材料を子どもたちに提供すること
るというのは国をまたがって共有できる実
る状況です。権限も責任も明確にすれば
が考えられるでしょう。外部人材の活用を
践だと思いました。
現場は取り組みやすいでしょう。
もっと考えてもいいと思います。
社会全体で子どもを育てるというのが
教育行政の仕組みを考える
ただし、制度や仕組みを検討しようと
すると、制度や仕組みのつくり変えそのも
基本的なスタンスです。子どもたちはわが
亀田◉校内研究あるいは学校と地域との
のが目的となりがちです。制度や仕組みの
国の宝であり、皆で育てていくという仕組
連携を推進するには、教育委員会による
目的は何か、それだけは間違えないように
みを、学校教育の中にも盛り込んでいきま
支援も重要です。昨年度、弊社では文科
したいですね。つまり、子どもを真ん中に
す。いま、コミュニティ・スクールや学校支
省からの研究委託により、
「教育委員会に
据え、地域の自主的な動きを促していく。
援地域本部といった施策を進めています。
よる予算面での学校支援モデル」に関す
それにはどんなかたちがふさわしいかを
学校と地域との連携拠点をつくってはい
る研究を実施しました。教育委員会によ
検討するつもりです。
るものの、まだ十分には行き届いていな
る学校支援策の効果を高める観点から、
亀田◉本日は、教育政策の今後について
いのが現状です。地域の出す知恵にしっ
教育委員会と保護者・地域住民とのコミュ
おうかがいました。子どもたちに
「生き抜
かり耳を傾けながらさらなる拡大に努めた
ニケーションや学校支援策の継続的改善
く力」
を身につけさせるには、教師、学校、
いと思います。
を提言しています。学校支援を行うにあ
教育行政のそれぞれが変わらないといけ
亀田◉企業などで活躍された方に接する
たっては、教育委員会においても
「自分で
ません。これからは教育の質的向上をよ
ことで、これまでの学校教育の既成概念
考えて、みずから決めて動ける力」が必要
り重視しながら変えていくとの方向性が
を超える指導が可能になるのかもしれま
と考えます。
今日のお話で明らかになったと思います。
せん。また、内にある資源だけでなく外
城井◉教育委員会に対しては、期待の声
お忙しいところお時間をいただき、あり
がとうございました。
の資源を活用しながら新しいものを創り
とともに地域住民の方々からの厳しい指
出していく力を、教師みずから身につける
摘があるのは事実です。子どもを真ん中
ことにもつながるはずです。保護者・地域
において学校と地域が取り囲んで、いか
3
(2012年5月16日、於:城井崇東京事務所)
政策シンクタンクPHP総研 政策研究Highlight 2012年6月号
(Vol.7,No.13)
教育委員会による予算面での学校支援モデルを提言
平成23年度
「学校運営の改善の在り方に関する取組」事業報告書
学校評価によって現状と課題が明らか
で学校支援の仕組みについて考察しまし
になったとしても、それがどう学校支援に
た。報告書では、効果的に学校を支援す
結びつくのか。このような問題意識の下、
るための
“教育委員会による予算面での学
教育委員会による学校支援策に関する調
校支援モデル”
を提言しています。
査研究を実施しました
(
「学校の現状と課
効果的な学校支援策を実施するための
題を踏まえた学校の改善策の実施に対す
ポイントは、右の3点です。
る教育委員会の支援に関する調査研究」
自治体の政策担当者の方々にとって参
〔文科省受託研究〕
)。
学校裁量予算制度に基づく支援をテー
考となる内容が盛り込まれています。ぜひ
ご覧ください。
マとし、制度運用の実態を調査したうえ
(PHP総研HP
「教 育 委 員 会
による予算面
での支援モデ
ル
(提 言 )」よ
り抜粋)
その1◉教育委員会による
「基本方針
策定・支援策の立案」、
「支援策の実
施」、
「 支援効果の把握」、
「 見直し」
と
いったそれぞれの段階で、教育委員会と
学校あるいは保護者や地域との間のコ
ミュニケーションを深めるための工夫を
行う。
その2◉支援策
(予算措置)
の効果を明
確に把握する。
そのためには、支援を実
施することによってどのような対象にど
のような効果を得ようとするかをあらかじ
め検討しておく。
その3◉支援策
(予算
措置)の効果を把握
する方法は、数値や
記号による把握に
限られるものでは
なく、
エピソードの
集約などの方法
により効果を把
握してもよい。
●教育委員会による学校支援に関する調査研究会議
委員名簿(五十音順)
亀田 徹 (株)
PHP研究所 教育マネジメント研究センター長
末冨 芳 日本大学文理学部 准教授
田村知子 中村学園大学栄養科学部 講師
中條武志 中央大学理工学部 教授
福田敏雄 福岡県教育センター 教育経営部長
明、新しい指導者の下における北朝鮮の
USTREAM【PHP.TV】3/8、4/19、5/17放送
内政・外交、日米韓と中国の対応などが
■
[検証]
社会保障と税の一体改革
(3/8)
などについて議論を展開。視聴者から多
■不登校への新たなアプローチ
(5/17)
「社会保障・税一体改革」の法案審議は
くの質問が寄せられ、社会保障問題への
全国の中学校では37人に1人の割合で
果たしてどうなるのか。この改革の行方を
関心の高さを改めて確認しました。
子どもたちが不登校になっているなど、不
■繰り返される北朝鮮の挑発
(4/19)
なっています。子どもたちに長年にわたり
登校は依然として教育上の大きな課題と
テーマにし、東京大学政策ビジョン研究
センター教授・秋山昌範氏と、関西学院
議論されました。
大学経済学部教授・上村敏之氏をお招き
日本総研国際戦略研究所理事長・田中
かかわってこられた奥地圭子氏
(NPO法
して、弊社主任研究員の宮下量久のナビ
均氏と関西学院大学教授・平岩俊司氏と
人東京シューレ理事長・NPO法人フリー
ゲートによる鼎談の様子を放送しました。
弊社主任研究員の前田宏子の3名で北朝
スクール全国ネットワーク代表理事)をお
年金財政の持続可能性、医療・介護サー
鮮は今後どのようになってゆくのか、周辺
迎えし、弊社主席研究員の亀田徹との対
ビスの効率化、納税者番号制度の重要性
国はどのような対応をすべきかについて議
談を放送。奥地氏は
「
(仮称)オルタナティ
論した座談会を
ブ教育法案」を提示。一方、亀田は、学
放送いたしまし
校以外の場での教育を認めるための学校
た。座談会では、
教育法の一部改正を主張。それぞれの
北朝鮮問題を政
仕組みについて意見を交わし、子どもの
争の具としてい
状況に応じた多様な選択肢を用意すべき
る日本政治への
との見解で一致しました。
苦言、北朝鮮の
左から上村敏之氏、秋山昌範氏と主任研究員の
宮下量久
核開発に関する
状 況 悪 化の説
田中均氏
4
PHPInstitute.TV
政策シンクタンクPHP総研 政策研究Highlight 2012年6月号
(Vol.7,No.13)
唐家璇・中日友好協会会長に単独インタビュー
『Voice』
(2012年6月号)
にて掲載
垣間見えた気がします。また、唐氏は尖
閣問題について、かつてのような高度な政
治判断と知恵で対処すべきだと話されま
したが、中国国内でもナショナリズムが高
月刊誌
『Voice』企画の一環として、唐家
満が含まれているように思いました。
揚し、この問題に対する大衆の関心が集
璇・中日友好協会会長にインタビューを行
日中が協力することが日中両国のみな
まるようになった今、そのような立場・政
いました。今年は日中国交正常化四十周
らず、地域・世界の平和と発展にも貢献す
策を維持することは益々難しくなるのでは
年にあたる年であり、同誌3月号の在中国
るというお話を繰り返され、その点につい
ないかとも感じた次第です。詳しいインタ
日本大使・丹羽宇一郎氏へのインタビュー
ては完全に同意しつつも、実際に存在す
ビュー内容は、
『Voice』6月号でご覧くだ
に続き、長らく中国で対日政策に携わって
る摩擦をどう解決するかについては速効
さい。
こられた唐家璇氏のお話をお伺いするこ
性のある良策が存在しないという現実も
とになったのです。
当初30分を予定していた中南海でのイ
ンタビューは2時間以上に及び、日中関係
の重要性を強調する唐氏の姿勢が印象的
でした。同氏が現職であった時代、日中
関係は非常に厳しい状況に陥りましたが、
友好協会会長となられた今、日中友好の
ために貢献しようという熱意が感じられま
した。
その他、世界情勢の変化と中国の台頭
に関する質問に対しては、中国はいまだ
最大の途上国であることを忘れてはなら
ないという、伝統的な回答を強い口調で
話され、中国に対しより大きな責任を求め
ようとする国際社会への警戒と、対外的
な主張を強めようとする国内勢力への不
唐家璇・中日友好協会会長
(右)と主任研究員の前田宏子
国際的なパワー・シフトが外交資源に及ぼす影響を分析
平成23年度外務省委託調査報告書
経済成長を背景にした新興国の台頭と
として、国家と国家の関係を調整する最
「外交実施体制」といった外交資源をわが
先進国の経済・財政面での苦境は、国家
重要手段として発展してきた外交の性質
国が強化していくにはどうしたらよいかに
間のパワーの分布を大きく変化させてお
も大きな影響を受けることを余儀なくされ
ついて提言しています。
り、産業革命以来の欧米日先進国を中心
ています。
本報告書の全文は弊社HPでご覧いた
とした国際秩序は大きな挑戦を受けてい
政策シンクタンクPHP総研がまとめた平
だけます。
ます。こうした国家間のパワー・シフトは、
成23年度外務省委託調査報告書「国際的
非国家主体へのパワーの分 散とあわせ
なパワーバランスの変化に伴う適正な外
て、国際システムを変容させており、結果
交資源の配分」
(執筆者:山本吉宣・PHP
はじめに
総研研究顧問、金子将史・PHP 総研国
第1章
際戦略研究センター長兼主席研究員)で
は、進行中のパワー・シフトが、各国が
外交政策を展開する上で必要な各種の資
源にどのような変化をもたらしているか
(い
くか)について検討を加えました。そして、
「国家間ネットワーク「
」知識、アイディア
(科
学技術とインテリジェンスを含む)」
「評判、
イメージ、人的ネットワー ク
(パブリック・
ディプロマシーと国家ブランドを含む)」
5
[目次]
国際システムの変容と外交
第2章 国際政治におけるネットワークと外交
第3章 新興国についての捉え方と理論の変遷
第4章 新興国の連携関係
第5章 外交資源としての知識、
アイディア
第6章 イメージ、評判、人的ネットワーク
第7章 外交実施体制
第8章
パワー・バランスの変化をふまえた日本
の外交資源強化への提言
PHP総研外務省委託調査研究報告
政策シンクタンクPHP総研 政策研究Highlight 2012年6月号
(Vol.7,No.13)
PHP地域経営塾
昨年秋に設立したPHP地域経営塾は、今年度から各種の講座プログラムが本格的にスタートします。昨年より開講
した「マニフェスト講座」に加えて、新たに「首長講座」
「公共施設有効活用講座」
「地域経済活性化講座・再生可
能エネルギー編」が加わります。
それぞれの講座の特色を、すでに行なったプレ講座などの内容とあわせて紹介します。
マニフェスト講座
マニフェスト講座は、昨年度全6回にわ
たって開催しており、今年度は全4回で7
月から8月にかけて開催します。最大の特
徴は、受講者ご自身にマニフェスト案を作
北川 正恭
(きたがわ・まさやす)
成してもらう点にあります。最終日には各
早稲田大学大学院教授・
元三重県知事
受講者にご発表いただき、首長経験者や
弊社の研究員からの助言を得ます。厳し
「あれだけビシッと言ってくれた方がむしろ
ありがたい」との受講者からの声もあり、
これからの活動の糧になることは間違い
ないでしょう。
昨年度の受講者の中には、今年行なわ
主な講師陣
いアドバイスが飛び交うこともありますが、
西寺 雅也
(にしでら・まさや)
れる首長選挙に出馬表明した方もありま
名古屋学院大学経済学
部教授・元多治見市長
す。また、本講座は首長を目指す方のみ
ならず、地域ビジョンの策定と実行に関心
がある自治体職員や地方議員、市民・経
済団体職員の方でも受講可能です。昨年
も優秀な職員の方々にご参加いただいた
小室 直義
(こむろ・なおよし)
おかげで、活発な意見交換を行うことが
富士宮やきそば学 会特
別顧問・前富士宮市長
できました。
首長講座
首長という仕事には、
「なるまでの大変
意見交換を行いながら、地域経営の実践
さ」と
「なってからの大変さ」があると、マニ
について学び合う場を提供する点にあり
フェスト講座でも講師を務めた、末吉興
ます。
一・前北九州市長は述べています。
とかく首長は多忙を極めがちですが、
刻々と経営環境が変化する中、一度立ち
止まって、新しい知識を吸収したり、ご自
長を対象とした
「首長講座」
も開設します。
分の経験を整理することが不可欠です。
その特徴は、現職の首長同士が率直な
本講座では、首長経験者や首長のアドバ
イザーを務めてきた有識
者からの情報提供の下、
活発な意見交換を行い
ながら、これからの地
前北九州市長・国際アジ
ア研究センター理事長
主な講師陣
地域経営塾では、その両面を支援した
いと考え、
マニフェスト講座とともに、現役首
末吉 興一
(すえよし・こういち)
荒田 英知
(あらた・ひでとも)
PHP 総研主席研究員・
PHP 地域経営塾塾長
域経 営者に求められる
総合的な能力の向上を
目指します。
穂坂 邦夫
(ほさか・くにお)
前志 木市長・地方自立
政策研究所理事長
6
政策シンクタンクPHP総研 政策研究Highlight 2012年6月号
(Vol.7,No.13)
公共施設有効活用講座
PHP 総研では、地域主権型道州制を
共施設の見直しについて、講義や事例を
す。オプションで、先進自治体への視察
はじめとして、地域主権時代を見越した
もとにワークショップを行なうなどして、
研修にも参加できます。
地方自治体のあり方について研究提言し
参加自治体の見直しの方向性を見定める
2012年1月23日に行ったプレ講座では、
て参りましたが、その一つに
「自治体公共
ことができるプログラムとなっています。
公共施設の中でも大きなウェイトを占める
施設の有効活用」があります。
公共施設マネジメントの論点をおさえるこ
学校施設の活用方策をテーマに、転用の
財政環境に恵まれた時代に、いわゆる
とはもちろん、分析・評価の手法や改革
可能性や事業マネジメントの具体的方法
ハコモノ施設が乱立した結果、多くの自
の実践のプロセスについて学んでいきま
などについて議論しました。
治体では現在その維持・更新コストが財
政を圧迫する事態となっています。
施設によって異なるコスト情報を可視化
し、有効活用につなげていくプロセスに
ついて、2009年に政策提言を発表してい
ます。
「公共施設有効活用講座」では、本提
言に沿って、これからの公共施設マネジメ
ントを総合的に担える人材たる、自治体
ハコモノCFO
(チーフ・フィナンシャル・オ
フィサー)の養成を目指すプログラムを提
供します。
いまや待ったなしとなった、自治体公
右から、上野 淳
(首都大学東京副学長、同大学院建築学域教授)、杉浦健太郎
(文部科学省大臣官房、
文教施設企画部施設助成課)、榊原孝彦
(NPO 法人 ソシオ成岩スポーツクラブ マネージングディレク
ター)、佐々木陽一
(PHP 総研主任研究員)
(敬称略)
地域経済活性化講座・再生可能エネルギー編
「地域経済活性化講座」では
「再生可能
ギーの活用方策をテーマとします。
座を開催しました。
エネルギー編」として、東日本大震災以
特に、地方自治体が地域主導でこの
冒頭、本講座の講師も務めるNPO法人
降、大きなテーマとなった再生可能エネル
テーマに取り組む上で課題となる、条例
「再エネ事業を支援する法律実務の会」
代
制定や事業企画の立案に具体的に役立
表で弁護士の水上貴央氏が、国の再エ
てて頂けるプログラムとなっています。 国
ネ政策の動向と自治体担当者が準備して
の政策の動向や住民参加型ファイナンス、
おくべきことについて講義。次に、みずほ
地域連携といった論点を踏まえつつ、参
銀行ビジネスソリューション部参事役の蒔
加者が所属する各自治体の条例案と事業
田英一郎氏が再生エネルギー業界の動向
案の作成を目指します。
や、金融機関の取組みとビジネスマッチン
本講座の開講に先立ち、4月20日、
「地
グによる官民連携の事例について、最新
域主導型」の再生可能エネルギー事業の
の情報をもとに解説しました。
興し方のポイントを解説するため、プレ講
水上貴央氏
各講座の主な参加対象
首長講座
マニフェスト講座
公共施設有効活用講座
地域経済活性化講座・
再生可能エネルギー編
現役首長
自治体議員
自治体職員
市民・NPOなど
※各講座の詳細は、
弊社ホームページで紹介すると共に、
パンフレットもご用意していますので、
お気軽にお問合せください。
PHP 地域経営塾
7
政策シンクタンクPHP総研 政策研究Highlight 2012年6月号
(Vol.7,No.13)
コン サル ティング・フェロー の 紹 介
質を高めます。国家経営勉強会での議論
が少しでも参考になればと願っています。
私自身もPHP総研に拠点を持ち、若手
の研究者や実務家とさまざまに議論する
コンサルティング・フェロー
伊藤 達也
ことは、自らの政策立案の幅を広げ、質
を高めることにつながっています。デフレ
Ito Tatsuya
不況や財政赤字の拡大に苦しむ日本の現
状を打破するためにも、無税国家や新国
column ─────────────
税金を無駄に使って最後は増税という形
土創成のような国家100年の大計に立った
昨夏、松下政経塾の後輩でもある金子
で国民に押し付けてくる。だから、税率
日本再生の基軸が求められています。も
将史主席研究員から
「政経塾出身者らし
はできるだけ低くしながらも質の高い行政
う一度松下哲学に触れ、国家経営の視点
い政策を研究する会の世話役に」と頼ま
サービスを提供するために、衆知を集め、
で日本を立て直すという初心を貫いていき
れました。そこで、後輩の国会議員数名
経営の視点で政治を立て直すことが一番
たいと思っています。
やPHP 総研の若手研究員の方たちととも
大切だ。このことを松下幸之助さんから
に国家経営勉強会を立ち上げました。各
教えられました。
分野の第一線で活躍する研究者を毎月迎
理念を具体的な政策立案の実務に反映
え、ときには永久寿夫代表取締役専務も
させる。16年間の議員生活を通じて、ま
参加して、刺激的で充実した議論を重ね
た行政の責任者として、常に私が心を砕
ています。
いてきたことです。
「国家の経営」という視点から政治を行
政府の国家戦略会議フロンティア分科
うこと。これが政経塾出身者らしい政治
会では、今まさに永久氏や金子氏が活躍
の肝だと私は考えています。1円の税金の
中です。政策立案の現場で苦労もあるで
重みがわからない人間が政治家になると
しょうが、
シンクタンクの力が日本の政治の
●
i n f o r m a t i o n
■嚶鳴フォーラム参加自治体関連の書籍発刊
profile ─────────────
慶應義塾大学法学部卒。84年、松下政
経塾入塾
(5期生)。93年、第40回衆議院議
員総選挙において初当選。以降、5回連続
当選。その間、通商産業政務次官、内閣府
副大臣、金融担当大臣、内閣総理大臣補佐
官を務める。現在、関西学院大学専門職大
学院教授、自由民主党東京都第22選挙区
支部長。主な著書に
『総理官邸の真実』
(PHP
研究所、2010年)がある。
●
■二十一世紀日本国憲法私案
PH P総研が企画運営協力する「嚶鳴フォーラム」の参加
国会では憲法問題に関する実質的審
自治体である釜石市の防災教育を題材にした『命を守る教
議が進みませんが、よりよい政治の実現
育』、そして恵那市の三好学博士生誕150年企画『「桜ノ博
には国民的議論の盛り上がりが必要で
士」三好学物語』が発刊されました。是非一度ご覧ください。
す。弊社では、2004年に単行本『二十一
世紀日本国憲法私案』を発刊。
「憲法九
条」、
「道州制」、
「首相公選制」などにつ
いて検討しています。是非ご覧ください。
『二十一世紀日本国憲法私案』で
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