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昭和浪漫 世代を超え、 若者たちへ贈る 懐かしの名曲 41
現在流行している音楽を否定するわけでは 活動の歴史、 演奏における言葉への高い意 「喜びも悲しみも幾年月」、 そして「高校三年 けっしてない (むしろ好んで聴いている) が、 や 識と調和を大切にしたアンサンブルといった 生」 「夜明けのうた」 「知りたくないの」 「海 はり昭和の歌謡曲は、 私のようにクラシック音 要素が凝縮したものとなっている。 まず、 冒頭 その愛」 「昴」 「つぐない」 という一連の流れ 楽を愛する人間にとっては親近感に満ち、 安 に収 録された「君 恋し」から 「国 境の町 」 ではピアノ伴奏が加わり、表現の幅をさらに 心させてくれる音楽である。 緩急の明確な音 「港が見える丘」 「青い山脈」 「長崎の鐘」、 広げている。 とくにリズムの要素が強調される 楽構成、 心情や情景を丁寧に紡ぎ出す言葉 そして「水色のワルツ」 までの一連の流れによ ことで、 言葉のもつスピード感の緩急がいっそ と旋律の強い結びつきは、聴く人それぞれが る6曲はア・カペラでの演奏。情景描写に富 う豊かになった印象を受けるが、 声の色彩の 持つ人生の物語へと自然にリンクしていくもの んだこれらの作品は、 言葉の響きを微細に変 変化もピアノの助けによって磨きがかかってお ではないだろうか。 このようにたくさんの物語に 化させることによって、詩が紡ぎ出す世界観 り、 とりわけ「海 その愛」からの最後の3曲は あふれた昭和歌謡を集め、 より力強さを増し の描写をしていかなければならないが、 東京 それが顕著である。 た世界観で届けてくれるディスクが登場した。 リーダーフェル1925の演奏は、 その変化の一 力強さと繊細さを巧みに使い分けながら、 それが今回ご紹介する、男声合唱団東京 つひとつを大切にしており、 聴いていると自然 明瞭な日本語によって、詩の世界観を丁寧 リーダーフェル1925の演奏による 『昭和浪漫 に耳から心へと、 描き出された情景と心の動 に歌い上げる東京リーダーフェル1925による 世代を超え、 若者たちへ贈る懐かしの名曲』 きが伝わってくる。 とくに「港が見える丘」では、 昭和歌謡を堪能することで、 あらためて日本 だ。 この合唱団は、 ドイツの男声合唱に強い憧 ハミングが創り出す気分の変化、 主旋律を歌 語の美しさ、 それらが織りなす情景描写に れを抱いていた同志社グリークラブ出身の山 う丁寧な言葉の処理を聴くことができ、 「長崎 浸ってみてはいかがだろうか。 口隆俊、 秋山日出夫らによって1925年に創立 の鐘」での宗教曲を思わせるアレンジと、完 された、 社会人をメンバーとする男声合唱団 全に調和した声の響きは、 非常に真摯な祈 である。 その活動の歴史は非常に長く、 さまざま りの表 現すら感じさせる。一 方で「青い山 な言語の作品を手掛け、 多彩なレパートリー 脈」は声の魅力を最大限に活かした力強い を持つが、 活動の主軸となっているのは、 日本 演奏であり、 この合唱団の多様な表現を楽 語を大切にした作品の演奏と言えるだろう。 しむことができる。 本ディスクは、東京リーダーフェル1925の 第10曲「知りたくないの」を除くと、第7曲 昭和浪漫 世代を超え、 若者たちへ贈る 懐かしの名曲 (男声合唱団東京 リーダーフェル1925・ TAFL- 100001) 41