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3. 池内堆積泥土の固化処理 参考資料

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3. 池内堆積泥土の固化処理 参考資料
参考資料
3. 池内堆積泥土の固化処理
3.1. 池内堆積泥土の固化処理
ため池内には、長い年月の経過により泥土が堆積している場合が多く、そのまま放置すれば、水質の悪化
や貯水容量の低下等ため池の機能を阻害することにもなるため、状況に応じてその除去が望まれる。また、
そのようなため池の改修工事に当たっては、施工機械のトラフィカビリティ確保や堤体安定性の向上等のた
め、泥土を固化処理(あるいは、固化処理+池外搬出)する必要がある。
池内堆積泥土等の軟弱地盤の固化処理目的別の主な用途は、次に示す 4 項目に分類することができる。
① 仮設工事用
② 本設構造物の支持
③ 液状化防止
④ 環境保全のための表層改良
上記①は、一時的な土構造物としての機能、例えば建設資材、機械の搬入を可能にする仮設道路の機能、
及び重機走行並びに重機作業足場としての支持地盤等、仮設土構造物としての機能を果たすために行う改良
である。
②は、本設の土構造物として、種々の外力に対して安全を図るために行う改良である。種々の作用する外
力には、重機荷重、構造物荷重等の上載荷重、土圧、水圧、地震力等がある。本設土構造物では、支持力、
すべりに対する安定、及び沈下量の検討を併せて行う。また、未改良土に比較して改良土の強さが著しく大
きくなる場合は、剛な構造物として内部応力が許容応力を超えないように設計する。
③は、飽和砂地盤等における液状化対策として行う改良であり、④は、乾燥した土砂の飛散防止並びに悪
臭発生防止等の環境保全の見地から行う、当該地表層の改良である。
池内堆積泥土の固化処理については、対象土質、現場の条件、処理の目的、工期及び経済性等を十分に把
握検討し、適切な設計をする必要がある。
なお、設計の基本的な手順を示すと、参図-3.1.1 のとおりである。
改良地盤の強さと改良範囲を求める手順は、まず、改良地盤にかかる応力に耐えうるだけの強さを決め、
次に内部応力に対する安全性のチェックを行って強さを確認し、さらに原地盤の支持力、沈下量あるいは複
合地盤としてのせん断抵抗力の検討により改良範囲を決定する方法が基本である。
213
参考資料-3
池内堆積泥土の固化処理
企
画
・他の工法との比較
経済性
施工性
現
地
調
査
・試料採取
・現位置試験
室
内
試
験
施工方法の決定
配
合
設
計
諸基準決定
・固化材添加量
・基準密度
・基準強度
・六価クロム溶出試験
施
工
参図-3.1.1 設計の手順
(1) 現地調査及び室内試験
適切な調査位置あるいは試料採取位置は、一般的には目視で判断して決定することが難しい場合が多
いので、調査地域をまず一定区分に分割(規模、固化処理の目的等で異なるが、おおむね 200~500 m2
程度)し、調査するとよい。また、室内試験の項目は、安定処理の目的によって異なるが、次のような
項目を行う。
① 含水比
② 密度
③ 土粒子の比重
④ pH
⑤ 75μm (試験用ふるい)通過質量百分率
⑥ 有機物含有量
⑦ 液性限界
⑧ 塑性限界
214
設計指針 「ため池整備」
(2) 固化材の選定と配合設計
現地調査及び室内試験の結果から、利用目的に合った固化材の選定と、目標強度に合った配合試験を
行う。
石灰系とセメント系の固化材の選定は、対象土、処理条件、期待する処理効果、目的、施工機械 (混
合機)、及び経済性等により行う。
なお、配合設計における試料は、固化処理予定深さからなるべく均一に採取する。
参表-3.1.1 石灰・セメント系固化材の概要分類
石 灰 系
①
生石灰、消石灰
②
石灰を主材として、石膏やフライアッシュ、スラグ粉末、酸化鉄等
を補助材として加えて製品化したもの。
セメント系
①
普通ポルトランドセメント
②
セメントを主材として、石膏や種々のソーダ類、還元材等を補助材
として加え、又はそれらを組合わせて製品化したもの。
参表-3.1.2 対象土質分類と固化材の概要選定
土質分類
砂 質
シルト質
粘土質 有機質土
固化材
石 灰 系
セメント系
(3) 添加量の決定
固化材の添加量は、配合試験により決定する。配合試験の方法は、固化材により異なり、セメント系
は一般に一軸圧縮強度試験法(JIS A 1216)に準じ、石灰系は一軸圧縮強度試験法とCBR 試験法(JIS
A 1211)に準じて実施する。
添加量は、土の乾燥単位体積重量に対して固化材の重量を添加百分率で表す場合と、土の自然含水比
そのままの状態での単位体積重量に対しての割合で表す場合とがあるが、いずれにせよ、採取した土に
適当と予想される添加量を中心に、3 ~ 5 水準の添加量を設定して試験を行い、その結果を添加量と強度
(一軸圧縮強さ)のグラフにし、目標とする強度に対する添加量を求める。
一軸圧縮強さ qu は、ポータブルコーン貫入試験によるコーン貫入抵抗 qc との相関を示す次式から推定
する。
qu≒
1
q
5 c
(単管式コーン)
しかし、この添加量はあくまでも室内試験の結果であり、この添加量で施工した場合、土質状態、機
械の混合精度、養生状況等の影響から、室内試験強度を満たすことができない。よって、現場添加量は
室内試験で得られた値を割増す必要がある。
現場添加量は、室内試験の結果得られたグラフを用いて、参図-3.1.2 のように設計強度を(現場/室
内)強度比で除した値に対応する量として求めることができる。
215
参考資料-3
池内堆積泥土の固化処理
参表-3.1.3 泥土の物理的性質(参考)
設計強度÷
(現場/室内)強度比
210
含水比 (%)
14.6
土粒子比重
2.49
粒 度 %
砂分(2.0 mm~ 75μm)
14
シルト分(75~ 5μm)
45
粘土分(5μm 以下)
41
コロイド分(1μm 以下)
20
現場添加量
有機物 ig.loss(%)
一軸圧縮強さ qu(kN/m2)
1.257
湿潤密度(g/cm3)
設計強度
添加量(%, kg/m3)
参図-3.1.2 現場添加量の決め方
参表-3.1.4 建設機械の走行に必要なコーン貫入抵抗
ポータブルコーン貫入試験による
コーン貫入抵抗 qc (kN/m2)
建設機械の種類
建設機械の接地圧
(kN/m2)
超湿地ブルドーザ
200 以上
15 ~ 23
湿地ブルドーザ
300 〃
22 ~ 43
普通ブルドーザ(15 t 級程度)
500 〃
50 ~ 60
普通ブルドーザ(21 t 級程度)
700 〃
60 ~ 100
スクレープドーザ
600 〃(超湿地型は 400 以上)
41 ~ 56 (27)
被けん引式スクレーパ(小型)
700 〃
130 ~ 140
自走式スクレーパ(小型)
1000 〃
400 ~ 450
ダンプトラック
1200 〃
350 ~ 550
参表-3.1.5 (現場/室内)強度比の一例
固化材の添加形態
改良の対象
軟弱土※
粉
施工機械
(現場/室内)
強度比
スタビライザ
0.5~0.8
バックホウ
0.3~0.7
体
ヘドロ
クラムシェル
高含水有機質土
バックホウ
軟弱土※
スラリー
ヘドロ
高含水有機質土
0.2~0.5
スタビライザ
0.5~0.8
バックホウ
0.4~0.7
処理船
0.5~0.8
泥上作業車
0.3~0.7
クラムシェル・バックホウ
0.3~0.6
※締固めを伴う場合も含む。
216
)
(
設計指針 「ため池整備」
(4) 施工方法
泥土処理の基本的な施工方法についての手順を、参図-3.1.3 に示す。
準備工
固化材搬入
散布機積込
運搬
散布
機械
人力
養 生
2次混合
混
合
表層土質
安定処理機
仕上げ
本養生
仮整正
初期養生
仮 転 圧
参図-3.1.3 施工の手順
① 固化材の散布
室内で決定した固化材を混入原単位に従って処理対象土上に均等に散布することになるが、固化
材の運搬と散布は、現場条件、土質条件、工事規模等によって、人力、又は機械、若しくはその併
用にて行う。
② 混合機及び混合作業
施工機械は種々の機種があるが、大別するとベースマシンが車輪式と履帯式があり、その履帯式
も一般のクローラタイプのものと泥上履帯式にわかれる。これらは、攪拌用アタッチメントを装備
した特殊バックホウ、又はスタビライザ等の混合機によって、固化材と対象土とを混合するもので
ある。
一般的に一層の混合深さは、対象土の性状、施工機械の種類及び性能によって、20~150cm程度
の深さまで混合することが可能である。また、特殊なトレンチャー式混合装置を装着した専用機械
もあり、その機械を使用すれば 150 cm 以深でも混合が可能である。
③ 品質管理
品質管理について統一的なものは確立されていないが、現在行われているものについて標準的と
思われるものを、参表-3.1.6 に示す。
217
参考資料-3
池内堆積泥土の固化処理
参表-3.1.6 品質管理項目
種
別
1.強度
2.仕上がり
厚さ
試 験 項 目
試 験 方 法
頻
度
JIS A 1211
現場混合土の室内 CBR 試
JIS A 1216
験又は一軸圧縮試験
又は地盤工学会法
1 試料/500 m2
現場 CBR 試験又は一軸圧 JIS A 1211
縮試験
JIS A 1216
1 試料/500 m2
コーンペネトロメータによ
地盤工学会法 又は
る貫入又はスウェーデン式
JIS A 1211
サウンディング
、
1 試料/500 m2
3.締固め度
現場密度試験
JIS A 1214、 又は
アスファルト舗装要 1 試料/500 m2
綱
4.有害物質
六価クロム溶出試験
溶出試験
5.その他
プルーフローリング
全
1 試料/1000 m3
面
218
全
面
備
考
養生日数と強度の関係を見るた
め、 7 日及び 28 日強度について
試験する。ただし、 28 日強度に
ついては、頻度を 1 試料/1000 m2
程度にできる。
オーガボーリングを併用するこ
とも可。
土壌環境基準値 (0.05mg/)
環境庁告示第46号 (平成3年)
必要に応じてベンケルマンによ
るたわみ量試験を行う。
設計指針 「ため池整備」
(5)泥土固化処理の手順
固化処理工法の選定
・ 表層部を改良して、建設機械の作業を容易にさせ、覆土
等を行って土地造成を行う。
原位置固化処理
・ 泥土を固化処理して、土木材料等に利用する。
・ 泥土を改良して、構造物の安定を図る。
・ 搬出先の埋立て地までダンプ運搬するときの泥土の飛散
防止、埋立て地での施工を容易にする。
搬出土固化処理
・ 処分地の要求仕様にまで改良し、有効利用を図る。
固化強度の目標値の設定
・ 泥土を固化して運搬する場合
トラック運搬に必要な改良強度を確保する。
・ 泥土を処分地で固化する場合
トラフィカビリティーを改善する。
・ 泥土を原位置で固化する場合
地盤支持力を改善する。
有害物質を封じ込める。
現場の調査及び試験
・ 事前踏査:処理目的、環境条件、歴史的経緯
・ 現場土質試験:原地盤のせん断強さの確認、
コーン貫入試験、現場ベーン試験
・ 室内土質試験:含水比、密度、土粒子の比重、pH、
75μm(試験用ふるい)通過質量百分率、
有機物含有量、液性限界、塑性限界
219
参考資料-3
池内堆積泥土の固化処理
・ 試験の条件設定
配
合
試
験
目標とする一軸圧縮強さ
養生の温度
目標強度を得る材令
養生の方法
固化材の添加方法
固化材スラリーを用いるときの水、固化材比
・ 固化材の種類の選定と添加水準の決定
セメントメーカーごとに 3 ~ 4 程度以上用意されている。
種類としてはヘドロ処理用、高含水比軟弱土処理用、高有機質処理用等があ
る。
・ 一軸圧縮試験を行う
添加量について 3 ~ 5 段階に変化させ、一軸圧縮強さの材令による
変化を把握する。
・ 現場施工に適する固化材添加量を決定する
目標一軸圧縮強さを(現場/室内)強度比で除した所要強度に対応する添加量を
決める。
・ 固化材の添加方法の決定
施
工
粉体方式
スラリー方式
<泥土処理における現場の土質条件と施工方法の組合わせ>
(現場の土質条件)
(施工機械)
(攪拌装置)
軟 弱
バックホウ
クラムシェル等
パケット
かなり
軟 弱
泥 上 車
軽量履帯
フロータホイール
トレンチャー式
攪拌機
極めて
軟 弱
ヘドロ処理船
回転攪拌機
(固化材の添加方法)
粉体混合
スラリー
混合
・施工機械と施工方法
施
工
管
理
・ 添加量と混合度の管理
バックホウあるいはクラムシェルによる処理工法においては、通常混合
度を目視によって行い、固化材による色ムラがなくなるまで混合する。
・ 固化処理土の管理
改良土の固化後の管理は固化材を混合した直後の改良土を採取して、供
試体の作成を行い、所定の材令で一軸圧縮試験を実施する。
220
設計指針 「ため池整備」
(6) 泥土固化処理の施工(参考)
a. 貯水状態で施工
(a) 原位置処理方式(セメントスラリー使用)
水中で固化処理後、ため池を落水する。処理土を掘削搬出するときのダンプ走行性の確保が必要。
ダンプの運搬時の飛散防止
(qc=50kN/m2 程度)
落水により
処理土面を
露出させる
目標強度はダンプ走行性の確保
(qc=1200kN/m2 以上)
固化処理
(b) 搬出土処理方式(セメント粉体使用)
ため池の落水が不要。陸上部にプラント用地・養生ピット用地が必要。
サイロ
汚泥浚渫船
泥土 材料
排砂管
供給装置
エア圧送 投入
圧送ポンプ
養生ピット
搬 土
養生 日
養生 日
養生 日
投 入
プラント
1 2 3
養生 3 日程度
qc=50kN/m2 以上
で搬出
処分地による処理土の
敷均し(ex:湿地ブル
qc=300kN/m2 以上)
b. ため池を落水して施工
(a) 原位置処理方式(セメントスラリー使用)
処理土を掘削搬出するときのダンプ走行性の確保が必要。
泥上作業車
ダンプの運搬時の
飛散防止
改良厚
1.0~3.0 m可能
(qc=50kN/m2 程度)
目標強度はダンプ走行性の確保
(qc=1200kN/m2 以上)
フレコンパック
粉体散布
(b) 搬出土処理方式(セメント粉体使用)
陸上部にプラント用地・養生ピット用地が必要
サイロ
泥上作業船
泥土 材料
投入 供給装置
圧送ポンプ
養生ピット
搬 土
養生 日
養生 日
養生 日
投 入
プラント
泥土吸引ポンプ
1
2 3
221
養生 3 日程度
qc=50kN/m2 以上
で搬出
処分地による処理土の
敷均し(ex:湿地ブル
qc=300kN/m2 以上)
参考資料-3
池内堆積泥土の固化処理
3.2. 固化処理土の有効活用
池内堆積泥土については、3.1 のように処理する必要があるが、近年、処理土を池外搬出・処分すること
につき、次のような課題が挙げられる。
① 運搬経路及び処分場周辺環境への配慮の必要性
② 処分場の確保難
③ 公共工事建設コスト削減の工夫
④ 築堤材料の確保難
よって、これら課題への対応として、処理土を池外に搬出・処分するのではなく、堤体盛土等に有効活用
することを狙いとした取組みがなされている。
「参考資料 5. コスト縮減に向けた取組み及び新技術」で、その試行例を紹介する。
参考文献
(社)セメント協会:セメント系固化材による地盤改良マニュアル 第3版(2003年 9 月)
222
参考資料
4. ラビリンス堰の水理設計手法
4.1. ラビリンス堰の特徴
ラビリンス堰とは、参図-4.1.1 に示すようなジグザグの平面形をした堰である。この堰は直線の平面形
をした堰よりも放流能力が高いので、その分、越流幅や設計水頭を低減できる。越流幅の低減により洪水吐
の小規模化、設計水頭の低減により常時満水位の増嵩(貯水容量の増大)、若しくは設計洪水位の低下、す
なわち、堤高を低くすることや堤体積の低減が図れるという特徴がある。
平面図
(厚手ラビリンス堰)
l
T
C2
β
β
α
C1
流れ
B1
B2 B3
D
GY
s
GX
s
ラビリンス堰
1 サイクルの幅
B1
W1
横断図(断面 s-s)
A1
A2
D′
A3
流れ
P
T
R
R=C1
参図-4.1.1 ラビリンス堰模式図
223
参考資料-4
ラビリンス堰の水理設計手法
4.2. ラビリンス堰の形状と流量係数
ラビリンス堰の形状、設計図表の一例を、以下に示す。
(1) 厚手ラビリンス堰の形状と流量係数
参図-4.2.1 は、ラビリンス堰の基本形状が参図-4.1.1 のとおりで、かつ、(堰厚)/(堰高)が0.3
の厚手形状の場合の流量係数の一例である。ラビリンス堰の形状はW/P、L/W、A/W、T/P、R/T の 5
つの基本諸元から規定され、それらの値は、参図-4.2.1の形状 A、形状 B については次のとおりであ
る(記号は、参図-4.1.1参照)。
形状 A
W/P=2、L/W=4、A/W=0.0765、T/P=0.3、R/T=2/3
形状 B
W/P=3、L/W=4、A/W=0.0765、T/P=0.3、R/T=2/3
(現地条件から設定される堰高 P と上記 W/P、L/W、A/W、T/P、R/T より W、L、A、T、R
が定まる)
上記諸元を、参式(4.2.1)に代入して具体的な堰形状が求まる。
すなわち、設計条件の設計水頭 Hd、現地地形条件等から決まる堰高 P により参図-4.2.1から流量
係数、基本 5 諸元が定まり、基本 5 諸元と参式(4.2.1)から具体的な堰形状が定まる。したがって、
水理設計としては、設計条件、現地条件とラビリンス堰の使用目的(放流能力の増大、洪水吐幅の縮
小、貯水容量の増大、堤体積の低減等)に対して最も経済的となる形状を参図-4.2.1等の設計図表か
ら選ぶのみである。ただし、この際、後述「3. ラビリンス堰の設計上の留意点」の各事項に留意する
必要がある。
6
5.5
形状 B
5
流量係数 C
4.5
4
不安定流況の
領域
3.5
形状 A
3
2.5
2
1.5
0
直線堰(標準型)
0.2
0.4
0.6
0.8
設計条件 H/P(H:越流水頭(m) P :堰高(m))
参図-4.2.1 厚手ラビリンス堰の流量係数 1)
224
1.0
1.2
設計指針 「ため池整備」
C1 = R (m)
W- 4A
 = cos1
L - 4A

()

= 90-
l
 
 L-4A
= T +
+T・ tan
 ・sin (m)
2 
 2
B1
= 2A (m)
B2
= B1+2C1・tan
B3
= B1+2T・tan
A1
= B3 (m)
A2
= A1-2C1・tan
A3
= B1 (m)
D =
D
()
2

(m)
2

2
(m)
······························参式(4.2.1)
L - 4A
2

(m)
2
(m)
= D′+T・tan

2
(m)
Gx = D・cos (m)
1 サイクルの越流幅 W1 = A3+B3+2Gx (m)
洪水吐の総越流幅 B =
サイクル数 n =
ここで、Qd
Qd
Cd・Hd
3/2
(m)
B
W1
:設計洪水流量 (m3/s)
Hd
:設計水頭(速度水頭を含む越流総水頭)(m)
Cd
:設計洪水時の流量係数 (m1/2 /s)
A
:B1 /2 (m)
W
:1 サイクルの越流幅 W1 から隅角部を除いた幅
W = 2(B1+D・cos ) (m)
L
:1 サイクルの越流幅 W1 の範囲の隅角部を除いた堰頂長さ
L = 2(B1+D) (m)
225
参考資料-4
ラビリンス堰の水理設計手法
(2) 比較的薄厚のラビリンス堰の形状と流量係数
参図-4.2.2は、ラビリンス堰の形状が前出の厚手ラビリンス堰と若干異なり、(堰厚)/(堰高)が 0.066
~0.105 の比較的薄厚での流量係数である。この場合の堰形状は、参式(4.2.1)から求まる(記号は 参
図-4.1.1参照)。
W/P=2~5(任意)、L/W=2~8(任意)、A/W=0.0765、T/P=0.066~0.105(任意)、
R/T=1/2
現地条件から設定される堰高 P と、上記 W/P、L/W、A/W、T/P、R/T から W、L、A、T、R が定まる。
L/W について整数値以外を用いる場合は、それに合わせて 参図-4.2.2の曲線から単純内挿した流量係数
値を求める。
W- 4 A
L-4 A

= cos 1
l
= T+
A1
= B1 (m)
A3
= A1-2T・tan
D
L- 4 A
=
2
()
L- 4 A
・sin (m)
2

2
(m)
······························ 参式(4.2.2)
(m)
D = D- T・tan

2
洪水吐の総越流幅 B =
(m)
Qd
C d ・H d
(m)
3/2
他の形状諸元の式及び記号は参式(4.2.1)と同じ。
ここで、W
:1 サイクルの越流幅 W1 と同値、W = 2( B1+D・cos ) (m)
L
:1 サイクルの越流幅 W1 の範囲の堰上流面の堰頂長さ、L=2(B1+D) (m)
Cd
:設計洪水時の流量係数 (m1/2/s)
C
:流量係数 (m1/2/s)
C = Cw・g 0.5・
W
P
W
+0.1
P
Cw :無次元の流量係数(参図-4.2.2)
g
:重力加速度 (= 9.8 m/s2 )
226
設計指針 「ため池整備」
無次元
流量係数
台 形(A/W=0.0765)
5
7
CW
L/W=8
給気状態
遷移状態(不安定流況)
6
4
非給気状態
5
3
4
3
2
2
1
0
0.2
0.4
0.6
0.8
設計条件 H/P
H : 越流水頭(m)
,P:堰高(m)
L : 1 サイクルの堰頂長さ(m),A:端辺長(m)
W : 1 サイクルの越流幅(m),
(参図-6.1.1,参式(6.2.2)参照)
(参図-4.1.1,参式(4.2.2)参照)
参図-4.2.2 比較的薄厚のラビリンス堰の流量係数(無次元値)2)
4.3. ラビリンス堰の設計上の留意点
ラビリンス堰の設計上の留意点は、次のとおりである。
① サイクル数が半端では、既存設計式、設計図表を用いた場合、放流量が正確に把握できない。サイ
クル数は 0.5 の倍数とする。
② 設計条件によっては不安定な越流流況となる(参図-4.2.1、参図-4.2.2 参照)。不安定流況では放
流能力が不安定化する。したがって、設計水頭で不安定流況とならないように、設計条件 H /P、若しく
はラビリンス堰形状を設定することが望ましい。
③ ナップ背面に空洞域ができるため低越流水頭では水膜振動による騒音が発生することがある。これ
を抑えるには、鋸刃板(先端が鋸刃状の薄板)を堰頂下流端沿いに堰頂下流面になじみよく取付ける
とよい。
④ 流入水路始端~ラビリンス堰末端は水平水路床とする(参図-4.2.1、参図-4.2.2 は水平水路床での
ものである)。
⑤ ラビリンス堰では、越流幅当たりの放流量が大きいので、接近流速が速くなる。したがって、この
区間が長大であると、そこでの損失水頭が増し放流能力が低下する。ラビリンス堰を貯水池側に突き
伸ばし、できるだけ接近水路を短く(若しくは、なくして)設計することが望ましい。
⑥ 堰下流水位が堰天端高以下ならば下流水位の流量係数への影響はない。
⑦ 堰下流水路からの堰上げ背水を無視しうる場合、不安定流況が生じる H/P 範囲は 参図-4.2.1、
参図-4.2.2 のようになる。しかし、堰上げ背水がある場合は不安定流況の H/P 範囲がより小さい方向
にずれる可能性がある。したがって、上記 ②との関連で注意を要す。
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参考資料-4
ラビリンス堰の水理設計手法
⑧ 移行部以下は標準型越流堰の場合と同様に設計する。
ただし、堰下流では限界流のまま(若しくは、射流で)放流すると交叉波が発生するので下流減勢
工の減勢機能を悪化させる懸念がある。いったん、常流化してから放水路へ流下させるほうがよい
(「3.4.3 洪水吐の水理設計 (3)移行部」の項を参照)。常流化させるには、移行部を十分緩勾配と
するか、移行部末端にシル等を設け堰上げる。
⑨ 構造上問題がある場合は、堰下流面に前出 参図-4.1.1 の 1/4 円弧堰のように傾斜を設けてもよい。
ラビリンス堰(鉄筋コンクリート)
ラビリンス堰(鋼製ユニット)
引用文献
1)常住,加藤,中西(1998):厚手ラビリンス堰の放流特性と効果,平成10年度農業土木学会講演要旨集,p.61
2)Frederick Lux Ⅲ(1989):Design and Application of Labyrinth Weirs, International Symposium on Design of Hydraulic Structures (2nd),p.210
参考文献
内海他:特殊堰形状(ラビリンス堰)を採用した権現ダム洪水吐について,ダム日本,No.556
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