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コンピューター解析とエンジニアリングにおける 妥当性と検証の問題
1 コンピューター解析とエンジニアリングにおける 妥当性と検証の問題 IVO BABUSKA TICAM – テキサス大学(米国オースチン) 工学的な例から始めましょう。 1991 年 8 月、Sleipner の海上石油プラットフォームのコンクリ ート基礎が崩壊し、その損失額は 700∼1000 万ドルに昇りまし た。 デッキを支持するために設計されたコンクリート重力基礎を、 図でお見せしましょう。さらに、ケーソンのコンクリートセル とそれらの接続をお見せします。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 1a ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 1b 2001 年の3月には、最大級の海上石油プラットフォームが崩壊 しました。 今日、詳しい調査リポートは得られていません。 次にお見せするのは、慣例的ではない方法で設計されたプラッ トフォームの図です。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 2 双方のケース共に、設計は計算による解析に基づいてなされて います。 では何がまずかったのでしょう? 技術的な問題でしょうか。 それとも設計が誤った前提に基づいていたのでしょうか。 計算による解析は現実を理解するためのものであり、それに基 づいて工学的判断が下されます。 計算は数学モデルのみを解析するのであり、現実を解析するの ではありません。 ここに次のような図式があります。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 3 疑問:工学的判断を下すに当たって、我々は計算結果を信頼し ても良いのでしょうか? 前述したプラットフォームの両ケースの場合、計算結果が正し くなかったことは明らかです。 上の疑問は、2つのパートに分けられます。 a) 工学的判断を下すに当たって、数学モデルおよびこのモデル の厳密解をどれほど信用して良いのか? b) 工学的判断を下すに当たって、数学モデルの厳密解の近似と して計算された解を、どれほど信用して良いのか? プラットフォーム破損の原因はどこにあったのでしょう? 数学モデルでしょうか?または不正確な数値解析が原因だった のでしょうか?両方という可能性も考えられます。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 4 数学モデルの信頼性の問題は VALIDATION PROBLEM(妥当性 の問題)と呼ばれ、「我々は正しい方程式を解いているか?」と いう疑問に関連します。 数学モデルの数値解の信頼性に関する問題は VERIFICATION PROBLEM(検証の問題)と呼ばれ、「我々は方程式を正しく解 いているか?」という疑問に関連します。 エンジニアリングにおいて現実のシミュレーションについて語 るとき、これらの両パートは混じり合っています。 例:有限要素法(有限要素シミュレーションと呼ばれることも よくある)は、現実に関連するか?それとも単に数学モデルの 解を求めるための数値的方法なのか? 有限要素法は数学モデルを解析するための数値的方法なので、 b)となります。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 5 有限要素法の h 法は、メッシュに依存する解を導きます。要素 の大きさがゼロに収束する、すなわちメッシュを細分割すると 仮定すると、有限要素解析は収束するはずです。 要素の大きさがゼロに収束したり度数が に収束したり するときに、有限要素解析がメッシュによって変動しやすいな らば、モデルか近似のどちらかに何らかの間違いがあるという ことです。 例:支持されたキャンティレバーの単純な問題を考察しましょ う。 ポイント A における変位に注目してください。 2つの工学的アプローチを考えていきます。 a) 2次元線形弾性 b) ビーム方程式 要素のサイズがゼロに収束する一連のメッシュを使って、両問 題を解いていきます。 解は一致するでしょうか? ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 6 a) 線形弾性の数式化 これは数学モデルです。ベクトル(u, v) = 2次の変位の PDE 式です。 変位 は にともなって何らかの値に収束する でしょうか?もし収束するならば、どのような値に収束するの でしょう? これは、支持無しの キャンティレバーの変位に収束します。 b) ビーム方程式 これは数学モデルです。 ここでは問題は1つの4次方程式となります。 変位 は、 にともなって収束するでしょうか? もしそうならば、いかなる値に収束するのでしょう?支持の影 響は見られるでしょうか? 変位は収束し、支持の有無によって結果は非常に異なります。 これは結果が同じになる弾性モデルとは対照的です。 7 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 2つのモデルは厳密解がまったく異なります。 それにもかかわらず、それほど小さくない h 法の有限要素解析 は、両方の問題に対して非常に似た結果を出します。 これは、近似誤差の大きい粗い有限要素の方がよりよい結果を 出すらしい、ということを意味します。 次に述べるように、コンピュータのハードウェアは迅速に発展 しており、アダプティブな方法が使われてきています。 アダプティブ FEM は支持の近辺に細分割を施し、支持無しのキ ャンティレバーまで収束します。 このように、(単純なピン)支持のモデリングはビーム方程式の 場合に正しく、2次元弾性に関しては正しくありません。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 8 モデルの有効性を評価することを VALIDATION(妥当性)とい います。 モデルが正しいか否かに関しては、単純にイエスまたはノーで 答えることはできません。 モデルが厳密に解析されると仮定すると、妥当性の問題は次の ように説明できます。 「物理的な法則の理解や実験データ、および他の入力情報に基 づいて、我々は実際の反応が計算による予測に比して(大体) 20%以上違わないということを確信する。」 数学モデルとは何でしょう? 数学モデルとは、入力スペース の出力スペース へのマッピングです。 数値計算とは、あるひとつの入力 を評価することです。 すると、次のようになります。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 9 数学モデルが厳密に解かれないと、近似誤差が入り込んで次の ようになります。 このとき t は以下を伴う近似パラメータ(メッシュサイズとし て)です。 の扱いについては、後で VERIFICATION に ついて話すときに取り上げます。 大きな計算努力によって、 を小さくすることもでき ます。ハードウェアの発達のおかげで、その有効性はより高 まっています。 演算記号 は物理法則によって決まります。 入力 X は、通常完全にはわからない、またはまったく未知のデ ータです。 データ X を使った実験結果をY で表すと、次のようになります。 そして次のようになることが望まれます。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 10 という式があります。 は通常確率関数であり、 いくつかの隠れパラメータが含まれている可能性があります。 このパラメータの存在は、統計学的方法によって調査すること ができます。 キャンティレバーのたわみを求めるための2つのモデルを紹介 しました。 我々は次のような情報を得ています。 a) ジオメトリ入力。キャンティレバー長さと厚さ、支持位置。 b) 物理的入力。弾性係数、ポワソン比。 c) 境界条件 − 荷重 これらの情報が X、そして は異なる荷重等の空間です。 図式で表すと、次のようになります。 例えば実験的な点支持の実現など、実験では実行が重要な役割 を果たします。我々は、点支持が正しいモデルではないと結論 付け、適切な変更を加えることができます。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 11 他の例についても考察してみましょう。 次のような形式で書かれるメンブレンの問題です。 は変位です。 方程式の展開では、以下を利用しました。 a) 変形状態における平衡として物理法則 b) 応力と歪みの関係 大変形や大歪みとしてジオメトリタイプの構成の仮定 c) 材料の構成則とパラメータに関する情報 d) 非変形状態でのメンブレンのΩ厚さとしてジオメトリ情報 e) 境界条件の情報 a と b は、線形、非線形、小歪み等のモデル選択を除いて、基 本的に不確実性(不確定要因)を持ちません。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 12 c と d と e には、通常程度の異なる不確実性が含まれます。 一般的により複雑なモデルには、より多くの不確実性が含まれ ます。 あるレベルの複雑さ及び利用できる情報においては、実際的な 目的で使用される異なるモデルを見分けることは不可能です。 このように VALIDATION は、対象データの入力情報に含まれる 不確実性の影響を量的に評価するという一面を持っています。 モデル1、2、3がますますその複雑さを増すとすると、モデ ル2を選ぶべきですが、理想的な情報下で精度がより高い大抵 の複雑なモデルは、利用可能な情報下では精度がより低くなる ので、使用すべきでありません。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 13 情報が理想的に有効利用できる状況では、しばしば階層モデル を使います。次数の低いモデルは、高次のモデルの特殊ケース です。 例えば線形モデルは非線形モデルの特殊ケースです。 よって、低次モデルの解析を高次モデルの近似解と解釈するこ とができます。これと同じように(有限要素解析は線形問題の 近似なので)、我々はこれから VERIFICATION(検証)に入りま す。 入力データに不確実性がある場合、解析のゴールに到達するこ とができるかどうかを尋ねなければいけません。 到達できないならば、より良い情報を得る必要があります。さ もなければ現存の不確実性に基づいて、例えば安全係数を上げ て、工学的判断を下さなければいけません。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 14 VERIFICATION とは何でしょう? それは、計算されたデータが数学モデルの厳密解に近似するか どうかをコントロールすることです。 VERIFICATION は、次のふたつで構成されます。 a) プログラムのチェック b) モデルの厳密データとの比較における、計算されたデータの 誤差推定 我々がここで計算されたデータを現実と比較していないことに ご注意ください。 大きな誤差に導く粗いメッシュが、精密なメッシュよりも満足 な結果を出しうるということは、既に支持されたキャンティレ バーの例で見ました。 ポイント a)は VERIFICATION において明らかに重要な側面な のですが、この講演では触れません。 ここでは数値解析の誤差推定、つまりポイント b)についてのみ 話します。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 15 誤差推定は 利用可能な入力データ情報のみが利用される場合、演繹的 (先天的)であり得る。 追加的に計算されたデータが利用される場合、帰納的(後天 的)であり得る。 実 際 的 な 目 的 へ の 計 算 デ ー タ の 採 用 は 、 VALIDATION と VERIFICATION の両方に関連しています。 通常は、近似の誤差(VERIFICATION に関係)が小さいことが 推奨されているので、現実との間にあるいかなる相違もモデル のみが原因です。 先ほど低次モデル(その厳密解)の誤差を高次モデルと関連さ せて、近似誤差として説明できると述べました。これは通常演 繹的に、また厳密になされます。 例えば線形弾性は非線形弾性の近似です。線形弾性を使用する ことによって、我々は言外で推測的に誤差が小さいと仮定する のです。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 16 計算が保証のために行われて(それぞれ法律的な目的で)、すべ ての入力情報が指定される場合が時としてあることに注意しま しょう。 そしてモデルも特定されますが、1つより多いモデルが考察さ れる可能性があります。この場合(常にでは無いが)通常モデ ルは階層的です。例えば大変形、小歪みといった特別な形式の 線形および非線形モデルなどです。 問題は VERIFICATION であり、ここでもまた低次モデルが高次 モデルの近似として理解され、帰納的な誤差アプローチを採用 することができます(または採用すべきとも言えます)。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 17 それでは VALIDATIONと VERIFICATIONに関連したいくつかの 例を挙げて説明しましょう。 VALIDATION では入力データの不確実性に重点を置き、 VERIFICATION では帰納的な推定に重点を置きます。 VALIDATION(妥当性)問題 次の問題を考察しましょう。 入力データは まずは ここでは です。 における不確実性に取りかかりましょう。 はそれぞれ完全に既知とします。 領域がスキャニングによって得られ、指定した解像度のデジタ ル画像のみがあるケースについて議論します。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 18 スキャニングに関するいくつかの基本事項です。 スキャナーは、ボディのスライスのデジタル画像を作成します。 デジタル画像はピクセルタイプのもので、ピクセルの大きさは その解像度に関係します。 スライスの距離は、ピクセルの大きさよりもかなり大きいです。 領域の2次元デジタル描写について、さらに話を進めましょう。 各ピクセルは、数字(THRESHOLD(敷居)パラメータ)と関 連付けられています。この数字は、そのピクセルにおける領域 の VOLUME FRACTION(体積分数)であることが理想です。 このパラメータを選択することによって、ピクセル領域が得ら れます。パラメータの極値は、領域内部のピクセル領域に達し、 一方の極値はスキャンされた領域を含むピクセル領域に達する はずです。 コンピュータグラフィックスで使用される様々なアプローチで は、画像の見栄えを良くするために、様々なスムージング方法 による領域の再構築が試されています。 基本的な特徴をすべて含むデジタル写真をお見せしましょう。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 21 それでは次のような簡単な問題を取り上げてみましょう。 この問題の領域はデジタル画像によって記述されています。 「真の」領域は 45 度回転した正方形だと仮定します。 そして大きさが のピクセルが使用されます。 極端な THRESHOLD(敷居)パラメータ値を使用することによって、 と 可能な がわかり、 によって の範囲が与えられます。 また、より単純ですが と の不確実性を大きくする を作成することもできます。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 23 ここで次のことが証明できます。 と はそれぞれ 問題の解とし、「理想的な」 と における における解を で表します。 すると、 となります。しかし さらに です。 をともなうすべての の組を、 不確実性の範囲、すなわち すると答え で考察します。 の範囲は間隔 このとき であり、 です。 このように、境界がなめらかではない場合、モデルには何か誤 りがあります。 文献ではメッシュとしてピクセルが使用されていることに注意 しましょう。 この矛盾が起きないように、モデルの数式化を変更しなければ いけません。変更は可能です。 24 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 それではここで、特に材料の弾性特性における入力データの不 確実性について取り上げましょう。 一例として複合材料について考えていきましょう。 我々は均質化された材料特性を使用しています。 有効な弾性係数を計算すると、確率的(ランダム)な値が得ら れます。 例えば例では、次のような弾性係数の値が得られま す。 最小 6.2 最大 15.3 中点 10.9 平均 10.8 標準偏差 1.8 このように係数の変化は小さくないので、モデルを確率的に数 式化する必要があると考えます。 係数が確率関数であれば、結果も確率的になります。例えばあ る点における応力は、我々が計算する特定の平均値、標準偏差 などを持っています。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 24a 単純なモデル問題で指定されているトラクションです。 様々な含有物が存在している例です。 これは航空宇宙の応用で使用される典型的なプライです。 このラミネートは、一方向のグラファイト/エポキシプリプレ グ、HTA / 6376C(CIBA-GEIGY によって生産、マニュアルレイ アップ)で製作されています。 ラミネートは、オートクレーブで 180℃で硬化されました。 繊維の直径は、 割合値は です。 断面は磨き上げられました。 画像をデジタル化して画像解析ソフトで操作するために、反射 顕微鏡にはデジタルカメラが取り付けられました。 これは複合構造の小さな一部分に過ぎないということにご注意 ください。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 25 次のような問題を考察してみましょう。 このとき はランダム関数で、ここでは が事象です。 ランダム関数とは何でしょう? 固定の に関して はランダム変数です。 固定の に関しては、関数のサンプルを得ます。 の確率フィールドを定義する必要があります。 これは KARHUNEN-LOEVE 展開の形式で定義できます。そして これを使用することによって、モデルおよび解を計算するため の数値的方法を厳密に数式化することができます。 ある確率フィールドに由来する関数の例を8つお見せしま しょう。 数値解析は計算的に大がかりですが、今日の(そして未来の) ハードウェアをもってすれば、手に負えないことはありません。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 26 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 27 それでは帰納的な誤差推定に移りましょう。 帰納的な誤差推定とは何でしょう?そして演繹的な誤差推定と の違いは何なのでしょう? 演繹的な誤差推定とは、モデル解の計算値と厳密値の差を、計 算されたデータを使わずに推定することです。 これは非常に理論的な種類の値です。なぜならこれは、方法の 収束などを証明するために使われるからです。 帰納的な誤差推定とは、既に計算されたデータを使って、モデ ル解の計算値と厳密値の差を推定することです。 この推定は実際的な種類の値であり、常に解析の一部となるべ きものです。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 28 帰納的な誤差推定は、2つの種類に分けることができます。 a) 収束シーケンスから得られた計算値の外挿法に基づく推定 典型的な例は、P 法 FEM です。 ここでは度数 P を増加させながら解析を計算し、結果を比較 します。 この推定方法には、次のような利点があります。 …a)いかなる対象データの誤差でも直接推定できる。 …b)汎用的な P 法プログラムは任意の p を想定しているので、 プログラミングは必要ない。 そして次のような問題点があります。 …a)コストパフォーマンスが(3次元の場合特に)良くない。 この問題点はハードウェアの発展と共に減少しています。 …b)シーケンスの項を十分に計算しないと誤差推定の信頼性を 損なう。 この推定の一例をお見せしましょう。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 29 b) ローカル計算に基づく推定 これはさらに2つのグループに分けられます(h 法の場合)。 …a)ローカルポスト処理に基づく推定 この推定は様々な平均に基づいており、メッシュの精度が十分 に高ければ、通常非常に満足のいく結果が得られます。 …b)残差の解析に基づく推定 任意のメッシュと精度に関して、ここでは保証された誤差推定 に導いてくれる推定量を作成することもできます。 このタイプの推定には、次のような利点があります。 …a)比較的コストがかからない。 …b)アダプティブメッシュ作成の基盤にできる。 そして次のような問題点があります。 …a)プログラミング努力が必要となる。 …b)エネルギーノルムでの誤差推定など、通常特別な方法での 誤差推定に合うようになっている。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 30 推定量の質は様々な方法で評価することができます。一組のベ ンチマークに関しての有効性指数による方法がそのひとつです。 有効性指数 は、次のように定義します。 厳密な誤差は、OVERKILL(膨大な自由度)によって計算されます。 模式的に上のようになることが望まれます。 の値は誤差が小さいことを示し、 は 誤差が大きいことを示します。 間違いのない推定量は常に となります。 それではここで、有限要素解析においてエネルギーノルムで測 定された誤差推定の一例をお見せしましょう。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 31 次の問題を考察します。 境界条件は次の通りです。 領域は図でご覧ください。 領域Ⅱには加えてクラックが入っていることにご注目ください。 図ではメッシュもご覧になれます。 メッシュⅡは、すべての要素を4つの要素に分けることによっ て、メッシュⅠから得られたものです。 ここでは度数1、2、3の要素を使用して、解析の有効性指数 と相対誤差をお見せします。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 問題の領域 領域 Ⅰ メッシュ 領域 Ⅰ Ⅱ メッシュ Ⅱ 領域Ⅱのクラックに注意 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 33 推定量の有効性指数は、保証は無いけれど良いものです。 誤差はエネルギーノルムで測定されました。 有限要素解析の相対誤差もレポートにしました。 領域 Ⅰ−クラック無しの領域 レポートの推定量は、推定が大きい符号 に合わせら れていますが、大きな誤差や粗いメッシュに関しても、良い質 を示します。 領域 Ⅱ−クラック有りの領域 クラックが入っているので、誤差はずっと大きくなっています。 、つまり推定がより大きくないことにも注意してください。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 34 いくつかのケースでは推定が保証されていないことを見てきま した。それにもかかわらず、より高い有効性指数を得るという 代償を払って、この推定量を修正し、保証済みの推定を得るこ とが可能です。 領域 Ⅰ−クラック無しの領域 修正していない推定量に比べると、有効性指数がいくらか増加 しているのがわかります。 領域 Ⅱ−クラック有りの領域 すべてのケースで が見られます。 これは、誤差が保証された推定になるべきものを超えて推定さ れているということを意味します。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001 35 まとめ ハードウェアの急速な発展のおかげで、複雑な問題を信頼高く 解析することが可能になり、正しい工学的判断を下すことがで きるようになりました。 解析の信頼性にはふたつの部分があります。 a) 数学モデルの信頼性。これは VALIDATION に関連します。 b) 数学モデルの厳密解に関連した近似解の信頼性。これは VERIFICATION です。 進歩は両方向になされています。 実例をあげましょう。 質問:SLEIPNER 石油プラットフォームの崩壊理由は何だった のでしょう? その理由は、臨界位置の剪断応力を 40%低く計算してしまった ことです。 数学モデルは正しいものでした。 よってこの問題は、VERIFICATION に含まれます。 ADA p-FEM コンファレンス Japan 2001