...

第9回:ニュースサイト/オウンドメディアのSEO 大切な「速報性」との掛け算

by user

on
Category: Documents
6

views

Report

Comments

Transcript

第9回:ニュースサイト/オウンドメディアのSEO 大切な「速報性」との掛け算
基本から学ぶSEO(検索エンジン最適化)(全12回)
第9回:ニュースサイト/オウンドメディアのSEO
執筆:益子 貴寛(株式会社サイバーガーデン)
「基本から学ぶSEO(検索エンジン最適化)」では、SEOの考え方や取り組み方を解説します。第9回は「ニュースサイト
/オウンドメディアのSEO」。SEOの観点はもちろん、コンテンツ戦略やトレンドもふまえて、記事の効果的な構成や書き
方を解説します。
大切な「速報性」との掛け算
ニュースサイトというと、全国紙や各地方での有力紙、公共放送、民放キー局、地方局、雑誌、ポータルやプロバイダのニュー
スコンテンツなど、有力母体が運営するサイトがまず思い浮かびます。さらに、国際系、経済系、IT系、カルチャー系、グル
メ系、ネタ系など、専門分野に特化した多種多様なサイトがあります。
ニュースと名のつくサイトは、やはり「速報性」が肝と考えてよいでしょう。時事に関する情報は、時間とともに陳腐化しま
す。速報性は、ウェブというメディアにかぎらず、ニュースというものが本来備えている価値です。
事業規模が大きく知名度の高い全国紙や公共放送、キー局、有名ポータルのニュースコンテンツが、どうしても多くのア
クセスを集める傾向があります。では、ほかのニュースサイトに活路がないかというと、そうではありません。同じ事実を
伝えるとしても、「地域性」「専門性」「共有性(共有されやすさ)」などとの掛け算によってオリジナリティを高め、多くの
読み手を得ることが可能です。
専門分野に特化したニュースサイトは、すでに飽和状態の感があります。それでもなお、たくさんのサイトが生まれている
のは、それぞれがなんらかの独自性を見い出したからです。たとえば、グルメ系ではRetty(レッティー)が「地域」と「ジャ
ンル」にもとづくまとめコンテンツを提供したり(「○○駅近くでおすすめのランチスポット15選」など)や、ネタ系ではWh
ats(ワッツ)のように「動画」に特化するなどです。
ニュースサイトの例。全国紙の「朝日新聞社」、地方紙の「四国新聞社」、グルメ系の「Retty(レッティー)」、ネタ系の「Whats(ワッ
ツ)」。
四国新聞社は、全国の主要ニュースよりも地元「香川のニュース」を優先的に扱っている。また、その香川県ならではのコンテン
ツとして「うどん」や「盆栽」に関する充実した情報を発信している。
Retty(レッティー)は「地域」と「ジャンル」で区別したまとめコンテンツを提供。Whats(ワッツ)は「動画」に特化したネタ系サイト
である。
単に速報性だけを追究しても、このような発想は出てきません。最近では「コンテンツマーケティング」「コンテンツSEO」
という言葉がよく聞かれますが、日々提供する情報をどのように方向づけするか、新たな切り口を見い出すかも、SEOで
問われる大きなテーマになっています(バズ部「コンテンツSEOの効果と7つの手順」、コンテンツマーケティング研究所
「SEOのためだけのコンテンツは寿命が短いのではないか」参照)。
特に「地域性」について、Googleのベニスアップデート(検索結果をユーザーの検索場所に応じてローカライズするしく
み)やピジョンアップデート(ローカル検索結果の全般的な品質向上)によって、今後いっそうの「ローカルSEO」への注
目や、地域情報を扱うサイトの積極的な対応が予想されます(SEMリサーチ「2014年総括 Google
検索アルゴリズムのアップデートまとめ」参照)。
時代は企業ブログからオウンドメディアへ
やや大きな話をしましたので、もっと身近な例で考えましょう。
最近では、オウンドメディア(自社メディア)の一環として、特定の業界やテーマに興味のある人に向けて、情報を発信し
ているサイトが増えています。ソーシャルメディアはもちろん、キュレーションサービス(GunosyやSmartNewsなど)やそ
れらのスマートフォンアプリの普及にともない、スタートアップ企業や小規模な法人が中心となって発信する情報でも、ト
レンドに敏感な層に注目される時代になりました。
コーポレートサイトやブランドサイトでも従来からブログが広く利用されてきましたが、オウンドメディアはもっとマーケティ
ング志向が強いものです。記事それぞれは時系列とカテゴリー分けを中心にしており、ブログとのシステム的な違いは
ほとんどありません。しかし、単に自分たちが書きたいことを書くというよりも、自社の強みを発信し、サービスに興味をもっ
てもらいたい、実際に使ってもらいたい、取り引きをしてもらいたいという意図が、オウンドメディアにはあります。
●
●
●
オウンドメディアの例。化粧品メーカーの資生堂が運営するBeauty &
Co.(ビューティー・アンド・コー)、グループウェアのサイボウズが運営するサイボウズ式、コーポレートサイトそのものをオウンドメ
ディア化している株式会社LIG。
オウンドメディアでは、記事の最後でコンバージョン動線(お問い合わせ、資料請求などの入口)を明確に示すことが大
切です。認知度向上やブランディング目的の記事もありえますが、オウンドメディア全体としては、その会社と顧客との直
接的な接点を増やすことが目的となるからです。
メールマーケティングラボでは、記事の最後で無料EブックやPDFのダウンロードを強く打ち出している。
内容で一番おもしろいところを見出しにする
ニュースサイトでもオウンドメディアでも、記事執筆で意識したいのが「タイトル」と「見出し」です。具体的には「内容で一
番おもしろいところを見出しにする」のがポイントです。
国内外のイベントや記者会見、スピーチなどの動画や音声の書き起こしメディア「ログミー」は、タイトルはもちろん、記事
の途中途中に魅力的な見出しを含めている好例です。
たとえば「なぜ女性は昇進レースに負けるのか?
Facebookのシェリル・サンドバーグCOOが解説」という記事は、次のような見出しで構成されています。
●
●
●
●
5歳の女の子にすら植え付けられる、性の固定観念
女性であるだけで、昇進に影響が出る
女性は成功すればするほど疎まれる
「リーダー=男性」という方程式を崩すために
このような見出しは、本文をしっかり読もうという読み手の気持ちをあと押しします。記事を書く際には「タイトル」と「見
出し」にこだわってみましょう。
ログミーでは、記事の途中途中に魅力的な見出しを含めており、本文をしっかり読もうという読み手の気持ちをあと押ししている。
なお、新聞社のニュースコンテンツのように、実際の紙面に掲載された記事にもとづく場合は、タイトルや本文の変更、
見出しの追加はむずかしいと考えられます(それらを再利用するニュースポータルやキュレーションメディアも含めて)。
あくまで「理想的には」と考えてください。
ストック情報となりうることを意識する
たとえば新聞記事を考えた場合、紙面から展開したものが多く、短いタイトルが一般的です。一方、オウンドメディアの記
事では、具体的で長めのタイトルをつける傾向があります。読み手を魅きつけたいのはもちろん、SEOの観点から複数の
キーワードを含めたい、といった理由からです。
ニュースもオウンドメディアも、基本的には日々流れていく「フロー情報」ですが、ページが残っているかぎり、あとから参
照される「ストック情報」となりえます。つまり、タイトルや本文に適切なSEOを施しておくことで、参照される可能性が高
まり、長期的な集客効果につながります。
ストック情報で大切なのは、情報の鮮度をできるかぎり保つことです。みなさんも、新しい情報が知りたくて検索エンジン
で調べたのに、古い情報に行き当たってしまった経験があるでしょう。特に技術系の情報は、製品のアップデートや仕様
変更によって急速に陳腐化する傾向があります。
すべての記事の鮮度を保つことはむずかしい、あるいは必要がないとしても、特に人気記事や力を入れて書いた記事に
ついては、たまに見なおすとよいでしょう。その際は、記事公開日とは別に、変更年月日を示しておくと親切です。新しい
記事や他サイトの記事へのリンクを追加したり、変更点について補足をつけるといった工夫もできます。
また、固有名詞の省略もできるだけ避けるとよいでしょう。たとえば人名には「姓」だけでなく「名」も、地名には「市町村
名」だけでなく「都道府県名」も含めておくことで、検索キーワードへの対応力が高まります。
ページを分けるなら、こう工夫しよう
もし記事の分量が多く、複数のページに分けるなら、次のポイントを意識したいところです。
●
●
●
記事の末尾で、何ページ目かを明確に示す
何ページ目かだけでなく、前のページと次のページへのリンクを含める
次のページへの期待感を示す
このような工夫をせず、単にページを分けただけでは、大半のユーザーが1ページ目で離脱する可能性が高いといえま
す。2ページ目以降を読んでもらうために、これら3つのポイントを押さえておきましょう。
なお、大手のニュースサイトには、記事の途中で、つづきを読むのに会員登録を求めるところがあります(無料の会員登
録だけでなく、月額課金など有料のところ、新聞購読者を対象にしたものなどもあります)。もし会員登録を求めるなら、
メリットをわかりやすく伝えること、対象に合わせて入力項目を調整するなど、登録の手間を最小限にすることが大切で
す。
東洋経済オンラインでは、ページ分けに関する上記3つのポイントをクリアしている。
毎日新聞では、一部の記事を読むのに会員登録が必要。無料の「ウェブ会員」と、新聞購読者向けの「愛読者会員」のふたつが
あり、記事が読める範囲やデータベースの利用可否など、受けられるサービスに違いがある。
ソーシャルメディア向けにOGP設定を
記事がたくさんの読み手を得るためには、ソーシャルメディアの活用が欠かせない時代です。記事それぞれにOGP(Op
en Graph
Protocol)を設定し、Facebookのタイムラインなどで魅力をきちんとアピールしましょう(SEOと直接関わることではあ
りませんが、ソーシャルメディアは集客経路としてとても重要です)。
通常、HTMLのhead要素の範囲内に、OGPとして次の7つを指定しておけばよいでしょう(Jimdoでの設定方法は、みん
ビズ制作講座:集客を考えてみよう「第1回:META要素・OGPを登録してみよう」を参照)。
<meta property="og:type" content="article" /> <meta property="og:site_name" content="サイト名" />
<meta property="og:locale" content="ja_JP" /> <meta property="og:url" content="記事URL" /> <meta
property="og:title" content="記事タイトル" /> <meta property="og:description" content="記事概要" />
<meta property="og:image" content="画像URL" />
なお、Facebookインサイトというアクセス解析ツールを利用するには、「fb:admins」と「fb:app_id」も指定してほうがよ
いでしょう(Cappee Design「FacebookのOGPに fb:admins と fb:app_id
の設定は必要?htmlタグのxmlnsは?」参照)。
<meta property="fb:admins" content="取得した番号" /> <meta property="fb:app_id"
content="取得した番号" />
Japaaanのように大きめの画像をOGPとして設定することで、タイムラインで魅力がアピールできる。
まとめ
ニュースサイトやオウンドメディアのSEOのポイントは、次のとおりです。
●
●
●
●
●
●
ニュースサイトは「速報性」だけでなく「地域性」「専門性」「共有性」などとの掛け算でコンテンツの魅力を高められな
いかを再考する
特に「地域性」は、Googleのベニスアップデートやピジョンアップデートによって、今後いっそう注目される
コーポレートサイトやブランドサイトでは、ブログよりもマーケティング志向が強い「オウンドメディア」を活用するところ
が増えている
オウンドメディアでは、記事の最後でコンバージョン動線(お問い合わせ、資料請求などの入口)を明確に示すことが大
切
記事では「内容で一番おもしろいところを見出しにする」ように心がける
記事のタイトルや本文に適切なSEOを施しておくことで、「ストック情報」としてあとから参照される可能性が高まり、長
●
●
期的な集客効果につながる
記事を複数のページに分ける場合は、「末尾で何ページ目かを明確に示す」「前のページと次のページへのリンクを
含める」「次のページへの期待感を示す」の3つを意識する
記事にはソーシャルメディア向けにOGPを設定する
第10回では、ホームページの目的別のSEOとして、3つ目の「ECサイト/インターネットショップのSEO」を解説します。
次回のコラムを見る »
益子 貴寛(ましこ・たかひろ)
株式会社まぼろし 取締役CMO/株式会社サイバーガーデン 代表取締役
https://maboroshi.biz/
http://cybergarden.jp/
1975年、栃木県宇都宮市生まれ。早稲田大学大学院商学研究科修了。
Webサイトのコンサルティング、企画・設計、制作業務、教育、執筆活動に従事。社団法人
全日本能率連盟登録資格「Web検定」プロジェクトメンバー。元・金沢工業大学大学院
工学研究科(東京・虎ノ門大学院) 知的創造システム専攻 客員教授。
主な著書に『Web標準の教科書』(秀和システム)、『伝わるWeb文章デザイン100の鉄則』(同)、『現場のプ
ロから学ぶXHTML+CSS』(共著、マイナビ)など。
2013年5月、企画・構成から監修、執筆まで総合的に関わった書籍『ウェブの仕事力が上がる標準ガイドブッ
ク 2 Webデザイン 第2版』(共著、ワークスコーポレーション)が発売。
Copyright 2017 はじめてWEB All Rights Reserved.
http://hajimeteweb.jp/
Fly UP