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動く→動かす(GCAP Japan) 市民社会団体による

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動く→動かす(GCAP Japan) 市民社会団体による
動く→動かす(GCAP Japan)
〒110-0015 東京都台東区東上野 1-20-6 丸幸ビル 3 階
特定非営利活動法人アフリカ日本協議会 内 (事務局所在地)
TEL 03-3834-6902 FAX 03-3834-6903
E-MAIL [email protected] URL http://www.ugokuugokasu.jp/
2012 年 11 月 19 日
第5回アフリカ開発会議(TICAD V)高級実務者会合
市民社会団体による参加および関連事業に関する報告
TICAD V NGO コンタクト・グループ
事務局 動く→動かす 稲場 雅紀
<目次>
1. 概要
1
2. 日本およびアフリカの市民社会の参加
1
3. 市民社会ワークショップ
4
4. 本会議への参加及び「双方向対話セッション」
7
5. 総括
8
(資料)TICAD V に向けた市民社会声明(マウンゴ・ムーキ氏プレゼン)
9
1.概要
2013 年 6 月 1-3 日に横浜市で開催される「第5回アフリカ開発会議」(TICAD V)に向けた最初の準備会議とし
て、11 月 15-17 日の3日間、西アフリカの内陸国ブルキナ・ファソの首都ワガドゥグ南部の「ワガ 2000 国際会
議場」において、「第5回アフリカ開発会議(TICAD V)高級実務者会合」(以下「SOM」という。)が開催された。
我が国およびアフリカの市民社会は、この会議に全面的に参加するとともに、以下の関連企画を行った。
(1)市民社会ワークショップ(タイトル:"Another TICAD is possible where Africa is heard" =アフリカに耳を
傾ければ、もう一つの TICAD は可能だ=)
◎日時:11 月 13 日 10 時~17 時、14 日 9 時~13 時
◎場所:ワガ 2000 国際会議場 小会議場
(2)TICAD 共催者・市民社会双方向対話セッション(タイトル:"The Africa and TICAD we want" =私たちが
望むアフリカと TICAD=)
◎日時:11 月 16 日 14 時~15 時 15 分
◎場所:ワガ 2000 国際会議場 大会議場
2.日本およびアフリカ市民社会の参加
(1) 日本市民社会の参加
SOM への市民社会参加は、TICAD V に向けて本年6月に創設された、TICAD に関心を持つ NGO のネットワ
ークである「TICAD V NGO コンタクト・グループ」(事務局:「動く→動かす」)が行った。「TICAD V NGO コンタ
クト・グループ」は、SOM に向けて経済開発・社会開発と人権・平和・ガバナンスという二つの政策提言グルー
プを設け、日本の市民社会として政策提言ポジションをまとめるとともに、「TICAD V SOM 実行委員会」を設け、
SOM に参加するメンバーの調整や企画運営、ロジスティックス等に関する調整を行った。とくに、ロジスティック
ス上においては、ブルキナ・ファソ現地でプロジェクトを行っている(特活)ハンガー・フリー・ワールドから多大な
協力を頂いた。参加した NGO メンバーは以下の通り。
◎稲場 雅紀
TICAD V NGO コンタクト・グループ事務局(動く→動かす)
◎岡安 直比
(公財)WWF ジャパン 自然保護室長
◎林
(特活)難民を助ける会 プログラム・コーディネイター
曜子
◎吉田 美紀
(特活)日本リザルツ グローバル・ヘルス担当
上記4名のうち、岡安氏を除く3名の渡航費等については JICA がこれを支援した。また、本会議については、
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンからブルキナ・ファソに派遣されている鈴村あやの氏も NGO として参加した。
(2) アフリカ市民社会の参加
SOM へのアフリカ市民社会の参加は、2007 年にガーナで設立され、主に TICAD への参加と政策提言を行っ
てきたアフリカの市民社会のネットワークである「アフリカ市民協議会」(Civic Commission of Africa: CCfA)が、
日本側のカウンターパートである TICAD V NGO コンタクト・グループと共同で行った。アフリカの各地域および
アフリカが直面する主要課題に対応して参加者を選出する形とし、以下のメンバーが開催国のブルキナ・ファソ
以外から参加することが決定した。
a) 地域別代表
◎ギュスターブ・アッサー(Mr. Gustave Assah)
CCfA 代表・仏語圏西・中央アフリカ代表
国籍:ベナン共和国
所属:Social Watch Benin
◎マウンゴ・ムーキ (Ms. Maungo Mooki)
CCfA 副代表
国籍:ボツワナ共和国
所属:Development Diversity Solutions
◎フェスタス・カヒイグワ (Mr. Festus Kahiigwa)
CCfA 東アフリカ代表、
国籍:ウガンダ共和国
所属:ウガンダ全国 NGO フォーラム(Uganda National NGO Forum)
◎アディル・ムーサウィー (Dr. Adil Moussaoui)
CCfA 北アフリカ代表代理
国籍:モロッコ王国
所属:アジア研究アフリカセンター(Africa Center for Asian Studies)
◎ファラ・エンサ=ンダイマ (Mr. Falla Ensa-N'Dayma)
CCfA 会計役・英語圏西アフリカ代表
国籍:シェラ・レオネ共和国
所属:シェラ・レオネ労働組合連合(National Trade Union Confederation)
b) 課題別代表
◎ヴィルジニー・アグボクパンゾ (Ms. Virginie Agbokpanzo)
国籍:ベナン共和国
2
課題:保健
所属:l'NGO Pro-Education Afrique (Benin)
◎サー・フィリップ=ジョー (Mr. Saa Philip Joe)
国籍:リベリア共和国
課題:教育
所属:Makona River Organization
◎ファスティン・ヴニンゴマ (Mr. Faustin Vuningoma)
国籍:ルワンダ共和国 (活動拠点:ザンビア共和国)
課題:食料安全保障・農業
所属:参加型環境・土地利用マネジメント協会(PELUM Association)
◎ジョイス・ガイネウェ・アンダーセン (Ms. Joyce Gainewe Andersen)
国籍:ボツワナ共和国
課題:ジェンダー、障害
所属:エマング・バサディ協会(Emang Basadi Association)
◎バー・アブデラヒ・モハマディー (Mr. Bah Abdellahi Mohamedy)
国籍:モーリタニア共和国
課題:ガバナンス、安全保障、平和
所属:サハラメディア
これについて、地域別代表は国連開発計画(UNDP)が参加経費および航空券取得等のロジスティックスを
支援。また、課題別代表については、(独法)国際協力機構(JICA)および「TICAD20 周年」評価を実施する
(株)三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(MURC)が参加経費を支援することによって、これらアフリカ市民
社会代表の参加が実現した。
一方、参加については問題も生じた。上記 10 名のうち、バー・アブデラヒ・モハマディー氏は 11 月 11 日に親
族が亡くなり、参加を取りやめた。また、ファラ・エンサ=ンダイマ氏は、現在まで UNDP から航空券および
DSA を受領しておらず、9 日以降、当方および UNDP とは連絡がとれていない状況である。エンサ=ンダイマ
氏は 2010 年の第2回 TICAD IV フォローアップ閣僚会議以降、TICAD 関連の参加できるすべての会合に出
席し、また、CCfA のすべてのプロセスに精力的に参加し続けており、今回も、17 日に自国で総選挙があるにも
かかわらず、ワークショップと 16 日の対話セッションには何としても参加したいという意思表明をしている。今回
参加できなかった理由については未だ不明であるが、何らかの事件に巻き込まれていないことを祈りつつ、連
絡を取り続ける所存である。
また、SOM への参加ロジスティックスにあたっては、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)がビザ免除措置をと
っており、距離的にも近接している西アフリカ地域からの参加には問題がなかったが、ビザ免除措置がなく、ま
たフランス語圏アフリカとの航空網が十分整備されていない東部・南部アフリカ諸国からの参加には、多くの困
難が生じた。CCfA 副代表のマウンゴ・ムーキ氏は入国が二日間遅れて 14 日の入国、食料安全保障等の課題
に取り組む NGO を代表する参加者でザンビアから参加したファスティン・ヴニンゴマ氏はダカールで3日間も留
め置かれ、3日遅れて 15 日の入国となった。これらの入国遅延は、市民社会の政策提言に関する合意形成に
関して、スケジュールの遅延や混乱、二重手間などを発生させることとなった。
SOM 開催国となったブルキナ・ファソの市民社会については、まず CCfA 議長のギュスターブ・アッサーが会
合の数週間前に同国を訪問し、同国の NGO ネットワークである「ブルキナ・ファソ NGO 常設事務局」
3
(Permanent Secretariat of NGOs in Burkina Faso:SPONG)の事務局長のヨンゴ氏(Nignan Yongo)と面会、
協力を取り付けた。しかし、全体の取りまとめを行った「動く→動かす」としては、同団体と十分な連携を作ること
が出来ず、同団体の取りまとめによる全国レベルでの NGO の参加はかなわなかった。一方、「動く→動かす」
は、分野別の団体に対する働きかけを行い、結果として、以下の参加を得ることができた。
◎サイモン・カボレ氏(Mr. Simon Kabore)
分野:保健分野
所属:ブルキナ・ファソ必須医薬品アクセス同盟(RAME)
◎ゼナブー・セグダ氏(Ms. Zenabou Segda)
分野:気候変動・女性・ジェンダー
所属:ブルキナ女性環境プログラム(Women Environment Program Burkina)
◎モーリス・ソメ氏(Mr. Maurice Some)
分野:食料安全保障・農村開発
所属:ハンガー・フリー・ワールド
◎テネ・キンダ氏(Ms. Tene Kinda )
分野:児童の教育・保健他
所属:セーブ・ザ・チルドレン・ブルキナ・ファソ
また、国際 NGO として、オックスファムのパン・アフリカン・プログラムから、以下の参加を得ることができた。
◎モニーク・ヴァン=エス氏(Ms. Monique van Es)
所属:オックスファム・ノビブ パン・アフリカン・プログラム(ディレクター)
さらに、市民社会が開催したワークショップ等のイベントについては、別プログラムで SOM に出席した日本およ
びアフリカのユースの積極的な参加があった。日本のユースは、「TICAD 学生プロジェクト」のメンバーとして各
地から参加。アフリカのユースは、ハンガー・フリー・ワールドの青年組織であるユース・アゲインスト・ハンガー
(YAH)の現地メンバーやワガドゥグ大学の学生、および、コートジボワールで日本語や文化について学んでい
るサークルである「明治文化研究所」(Meiji Bunka Institute)のメンバーたちである。彼・彼女らの積極的な参
加は、SOM に爽やかな新風を吹き込むこととなった。
3.市民社会ワークショップ(11 月 13-14 日)
SOM に先立つ 11 月 13-14 日の二日間、アフリカおよび日本の市民社会は、SOM のサイド・イベントとして、
市民社会ワークショップを開催した。同ワークショップは「アフリカの声に耳を傾ければ、もう一つの TICAD は可
能だ」(Another TICAD is possible where Africa is heard)と題され、以下の二つの内容を持つものとなった。
(1)13 日午前 10-12 時:TICAD20 周年評価市民社会ヒアリング
ワークショップの第1枠は、とくに(株)三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングが行っている「TICAD20 周年評
価」に関して市民社会からのヒアリングを行う場となった。本ワークショップは、アフリカ市民社会より CCfA のア
ッサー代表、日本市民社会より日本リザルツの吉田美紀氏が共同議長を務め、JICA の吉澤啓・企画役からの
開会挨拶および参加者からの自己紹介の後、三菱リサーチ&コンサルティングの志邨建介氏が、TICAD がこ
の 20 年間で達成してきたこと、果たしてきた役割について同社がまとめたレポートを報告した。
4
これに対し、CCfA および日本の市民社会より、まず、CCfA 東アフリカ代表でウガンダ全国 NGO フォーラム
(UNNGOF)のプログラム・コーディネイターを務めるフェスタス・カヒイグワ氏が、ウガンダにおいて UNNGOF
およびその傘下組織である CCfA ウガンダが、日本政府および JICA との連携の下に実施した日本 ODA によ
るプロジェクトの評価事例を踏まえて、CCfA として、TICAD プロセスに各国レベルで関わる方法についての説
明を行った。具体的には、JICA 各国事務所および大使館と連携し、日本の ODA プロジェクトに草の根の視点
を反映するべく案件形成や評価に積極的に関わるというものである。
次に、日本の市民社会を代表して、稲場雅紀より、TICAD の歴史と市民社会の参画についての提起が行わ
れた。稲場はまず、世銀・IMF および西側諸国による構造調整政策の強制に対して、日本は 97 年のアジア経
済危機を教訓に「人間の安全保障」を軸とした、数値目標を含む国際的に合意された開発目標を設置すること
による社会開発の促進を訴え、98 年の TICAD II で示された東京行動計画は、2000 年以降の開発を席巻する
ミレニアム開発目標(MDGs)のプロトタイプの一つとなったことを説明し、日本は TICAD の歴史において、特に
90 年代後半のこうした動きが、「社会開発の主流化」において世界をリードする役割を果たしたことをもっと積
極的に評価してよいと提起した。また、93 年の TICAD I 以来の市民社会の参画の前進の歴史について触れた
上で、TICAD IV 以降の市民社会の積極的参加において、具体的に何を為すべきかが、市民社会側にも問わ
れていると提起した。
その後、活発な質疑が行われ、最後に三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングの市邨氏より、同評価に市民社
会から本日出された意見を積極的に取り入れていく旨が表明された。
(2)13 日午後2時~14 日午後1時:TICAD V に向けた市民社会共通ポジション作成のためのワークショップ
第2枠目以降は、TICAD V に向けてアフリカ・日本の市民社会の「共通ポジション」を形成するためのワークシ
ョップを開催した。概要としては、以下のように実施した。
(第2枠)13 日 13 時 30 分~15 時:全体会(オリエンテーション)
(第3枠)13 日 15 時 30 分~17 時:分科会1
(第4枠)14 日 09 時~10 時 30 分:分科会2
(第5枠)14 日 11 時~13 時:全体会(発表・総括・取りまとめ)
まず、第2枠の全体会(オリエンテーション)では、TICAD V に向けたプロセスおよび、日本・アフリカ双方の市
民社会の取り組みの経緯などを説明し、政策提言の共通ポジション作りに向けた認識の共有を図った。
第3枠・第4枠については、分野別の分科会を開催した。分科会は TICAD V の3つの柱として挙げられている、
a) 強固で持続可能な経済、b) 包摂的で強靭な社会、c) 平和と安定、の3つに分けて行われ、それぞれに、
ユースを含む6~8名のメンバーが参加した。議論は、主に、事前に共催者から提出された「TICAD V 宣言」
および「TICAD V 行動計画」をベースに、16 日に公式日程の一つとして開催される「TICAD 共催者・市民社会
双方向対話セッション」での市民社会からのプレゼンテーションに盛り込む論点の形成を目標として行われた。
討議内容および成果は発表に適するようにワードやパワーポイントで電子化された。
第5枠では、各グループで出された討議結果を発表し、それに対して他のグループのメンバーから質問や意見
を出す形で行われた。発表用資料が電子化されていたため、報告や討議の整理はスムーズに行われた。各グ
5
ループから提示された、共有された事項は以下の通り。
a) 「強固で持続的な経済」グループ
・
アフリカ連合(AU)や地域経済共同体(RECs)はアフリカの投資環境整備等に指導力を発揮すべき。
・
アフリカは生活必需品をも輸入に頼っている。TICAD は技術移転によるアフリカの生活必需品等の生産拡
大、アフリカの輸入産品への依存の減少に取り組むべき。
・
アフリカ各国政府は農村への予算配分が少なく、農村開発が進んでいない。国家予算の 10%を農業投資
に向ける「マプート宣言」を履行すべき。
・
アフリカ各国政府は農村における土地収奪等の動きに抗し、生産手段への貧困層のアクセス権の拡大に
努めるべき。
・
保健・教育などの社会開発課題は経済開発にも大きな影響を与える。経済開発促進のためにも、TICAD
は社会開発を強化すべき。また、ジェンダーの主流化、女性の土地への権利や生産手段へのアクセスを
強化すべき。
・
TICAD は COP プロセスなどで定められた気候変動や環境課題に関する国際的な目標の効率的な実現を
促進すべき。
b) 「包摂的で強靭な社会」グループ
・
強靭な社会づくりのためには、防災のみならず、疾病や非識字、人口増が自然環境・資源に及ぼす影響な
どについて検討し、取り組むことが重要。
・
ポスト MDGs の開発アジェンダについて、TICAD プロセス自身がダイナミックに討議し動いていく事が必
要。
・
安定した社会の構築のためには、司法・行政制度の構築のみならず、コミュニティが民主主義的なプロセ
スへの参加を通じて取り組み、能力を向上させていくことが重要。
・
持続可能な経済成長に、脆弱層が参加していくことが必要。
c) 「平和・安定」グループ
・
先進国と途上国の不平等な関係が継続的に問題を引き起こしてきた。TICAD はこうした不平等な関係を
是正するための率直な対話を促進するべき。
・
アフリカの紛争問題については、努力は行われているもののスピードが遅く、連帯の精神が不十分。連帯
の精神を以て迅速に行動すべき。(特にマリ北部の事例)
・
問題解決に向けた国際社会の取り組みも不十分で、各国が放置されている。武装・動員解除、関係者間
の調停、連帯感の醸成によって、アフリカのものとしての解決を見出すべき。
・
政治主体が公共的観点でなく金や権力など私的利益の追求という論理に基づいて動いている。その結果
腐敗がなくならない。アフリカ自らによる民主主義の実現に向けて取り組む必要がある。
(3)ワークショップの総括評価
本ワークショップは、参加者の積極的な参加により、内容豊かなものとなった。まず、第1枠の「TICAD20 周年
評価」セッションについては、市民社会ならではの視点が提示され、同評価事業の内容を多角化・包括化する
上で重要な機会となった。また、第2~第4枠の政策提言のための共通ポジションづくりのワークショップでは、
アフリカ各国および日本から様々な課題に取り組む NGO やユース・グループが参加し、建設的な討議をするこ
とで、市民社会が今後 TICAD V に向けて取り組んでいく上での立ち位置や優先課題などが明らかとなった。ま
た、ここで形成された論点を軸として、16 日の市民社会セッションでのプレゼンテーションを共同で組み立てる
6
ことができるようになった。
4.本会議への参加および「双方向対話セッション」
SOM 本会議は 15-17 日の3日間をかけて行われ、TICAD V に向けたアフリカ開発の在り方や日本・アフリカ
関係の在り方などについての討議が行われた。これについての市民社会のかかわりは以下のとおりである。
(1) 本会議への参加
市民社会は SOM 本会議に積極的に参加した。とくに、分科会においては、市民社会からの発言の機会もあ
り、市民社会の主張を一定、議場内で紹介する機会ともなった。
(2) TICAD 共催者と市民社会の双方向対話セッションの開催
今回の TICAD 高級実務者会合では、16 日(第2日目)の 14 時~15 時 15 分の1時間 15 分間にわたって、
「私たちがアフリカと TICAD に求めるもの=TICAD 共催者と市民社会の双方向対話セッション」が開催され、
100 名以上の政府・国際機関・市民社会の代表が参加した。同会合は、日本外務省の岡村善文・アフリカ部長
(大使)と CCfA のマウンゴ・ムーキ副代表が共同議長として進行。壇上には、世界銀行、国連アフリカ特別顧
問事務所(UNOSAA)、国連開発計画(UNDP)、アフリカ連合委員会(AUC)の各代表も上った。TICAD の公
式会合プログラムの中で、市民社会と共同主催者の対話セッションが、これだけの規模で行われたのは初めて
のことである。
同セッションでは、ワークショップで形成されたアフリカと日本の市民社会の共通ポジションが、ムーキ副代表
から 20 分間のプレゼンテーションとして提起された。ムーキ副代表が発表したプレゼンテーションは、13-14 日
のワークショップでの討議結果を踏まえつつ、これについて、さらに 14 日夕方と 15 日夜にプレゼンテーション
のドラフティング委員会を開催して、特に、ビザや飛行便の問題等で遅れて到着した数名の参加者からの積極
的なインプットを含めて、新たに形成したものである。同プレゼンテーションでは、まず TICAD プロセスへの市
民社会の参画の歴史に触れ、幅広い参画を保障している共催者に感謝の念を示した上で、アフリカが置かれ
ている歴史的・文化的・社会的な状況について触れ、最後に、平和と安定、強固で持続的な経済、包摂的で強
靭な社会の各分野および環境・気候変動の分野について、具体的な要望 16 点を共催者に対して提示する中
身となっている。
このムーキ副代表の提起は、参加者の多くに温かく受け入れられた。そのうえで、対話セッションの時間では、
まず、ブルキナ・ファソで気候変動問題に取り組む市民社会団体である「ブルキナ女性環境プログラム」のゼナ
ブー・セグダ代表が、気候変動問題に関する TICAD に向けた要望事項について提起し、これを岡村部長に提
出した。ベナン共和国のゾマホン・ルフィン駐日大使は、市民社会がアフリカ開発に対して果たしている役割を
称賛した上、自らが率いる NGO「イフェ」が日本語のカリキュラムを含む学校をアフリカで最初に開校したことを
報告。また、日本とアフリカの間に直行便がないことなど、交流が薄いことについて強い問題提起を行った。
TICAD 学生プロジェクトの辻愛麻氏は、日本とアフリカを結ぶ留学生の数が双方とも少ないことを提起、アフリ
カと日本の交流強化を強く訴えた。また、日本の市民社会からは、「動く→動かす」の稲場雅紀より、日本にも
数万人存在するアフリカ出身移民が本国の開発や日本経済、日本とアフリカの関係強化に果たす役割につい
てもっと認識すべきと指摘、TICAD は外交・援助にとどまらず日本・アフリカ関係の強化を促進する役割をもっ
と認識すべきと強調した。岡村部長は、同セッションの意義を強調した上、TICAD への市民社会の参画を歓迎
7
し、連携を強化するとしてセッションを締めた。
同セッションは、公式プログラムへの市民社会の位置づけの強化という観点から歴史的なものであったと同時
に、市民社会に対する共同主催者や各国政府の受け止めの温かさという点においても、画期的なものとなっ
た。
5.総括
本報告書の趣旨は、SOM に関するアフリカ・日本の市民社会の取り組みについて、これを報告するものであ
り、TICAD プロセスへの今後の市民社会の参画や TICAD の在り方それ自体についての提言を行うものでは
ない。以下、総括点をまとめる。
(1)今回の SOM は、アフリカ市民社会十数名(ブルキナ・ファソ市民社会含む)、日本市民社会4名、日本・ア
フリカのユースの参加(十数名)が参加し、TICAD IV 以降のプロセスの中で最大の市民社会参画を実現
することとなった。これについて、JICA、UNDP、我が国政府を含む TICAD 共催者に心よりの感謝の念を
表明する。
(2)一方で、ビザや航空券、航空便の遅延や早発、オーバーブッキングなどの理由で、遅れて参加する人も目
立った。こうしたことに備え、開催国到着時のビザ発給などの場合は書類確保の方法を周知徹底すること、
英語・仏語圏を行き来するフライトの体制が脆弱であることに配慮して旅程を組むこと、等、最大限の配慮
が必要である。
(3)二日間の日程での市民社会ワークショップ開催や、会合の公式プログラムとしての「TICAD 共催者・市民
社会対話セッション」の実施などが実現できたことについて、JICA、三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング、
TICAD 共催者などすべての関係者の皆さまに感謝の念を表明する。
(4)今回の SOM 参加を踏まえて、アフリカ・日本の市民社会として、ユースやその他の関係者と協力して、
TICAD V に向けてより積極的に取り組んで行きたい。
最後に、本件企画を可能にしてくれた JICA の皆さま、および三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングの皆さま
に、心よりの御礼を申し上げます。
8
(資料)
2012 年 11 月 15-17 日
第5回アフリカ開発会議
高級実務者会合
私たちが求めるアフリカと TICAD
=TICAD 共催者・市民社会双方向対話セッション=
報告者:マウンゴ・ムーキ
アフリカ市民協議会(CCfA)を代表して
岡村善文・日本外務省アフリカ部長・大使、
アイリーン・マーシャル・世銀アフリカ地域上級パートナーシップ専門官、
池亀美枝子・国連アフリカ地域特別顧問事務所調整・アドボカシー・プログラム開発ユニット長、
ババカール・シセ・国連開発計画次席副業政官並びにアフリカ地域次席ディレクター、
フィオナ・ロンタン・アフリカ連合委員会平和・安全保障部政治オフィサー、
紳士・淑女の皆さま、
市民社会は、1993 年に TICAD プロセスが開始されて以来、このプロセスに活発に関わってきまし
た。93 年当時は、市民社会の存在は見えにくく、参加も直接的なものになりませんでしたが、1998
年には、その参加は大きく拡大し、2003 年には市民社会が公式に会議に参画することができるよ
うになりました。そして、今日、市民社会はこのプロセスになくてはならないものとなりました。このこ
とは、私たちにとって、TICAD のイニシアティブの成功を示す重要な一里塚であり、私たちは
TICAD 共催者の皆さまに対して、市民社会の参画を促進して下さったことを感謝いたします。
アフリカ市民協議会は、市民社会を代表して、TICAD がアフリカ連合、世界銀行、国連開発計画、
国連および日本政府が共同で枠組みを作り、20 年間にわたって継続的にアフリカ開発を焦点化
していることを称賛します。また、この開発フレームワークは私たちにとって、大変独特なものです。
ここで、次のステージに進むために、TICAD IV 以降の評価をすることをお許しください。2008 年
に横浜で採択された行動計画は過去5年の間実行に移され、大きな成果とともに達成されました。
2008 年以降、経済危機によって、私たちは大きな課題にぶつかり、厳しい後退を余儀なくされて
いると認識しています。世界中で食料やエネルギーの価格が高騰し、万余の人々が仕事を失いま
した。
私たちは銘記します:アフリカは、豊かな天然資源、豊かな生物多様性、鉱物資源、そして人的資
源に恵まれた大陸です。これらの資源をうまく活用することで、アフリカは公平で持続的な開発を
促進し、人々のためにこれらの資源を役立てることができます。また、アフリカの経済は現在、世界
の他のどの地域よりも高い経済成長を実現しており、その成長率は 90 年代の2倍に及んでいます。
しかし、こうした高い成長が 10 年もつづいた現在でも、アフリカの人々のほぼ半分が一日 1.25 ド
ル以下の収入しか得ることが出来ず、地方に住んでいる人々は地域の天然資源に依存した生活
9
を続けています。アフリカの経済は平均で 5%の成長を続けており、世界で最も高い経済成長を遂
げている 10 ヶ国のうちの 6 ヶ国はアフリカです。中には、2012 年に 7.5%から 11.1%の高成長率を
上げた国もあります。しかし、その結果として、富裕層と貧困層の格差はどんどん顕在化していま
す。
アフリカの国々の多くが、食料を含め、日用品すら輸入に依存していることは大きな問題です。先
進国と比較したとき、その技術や熟練における格差は著しく、極めて不適切なものです。また、日
本の民間セクター(民間企業)は本来、アフリカの活力ある民間セクターの良いパートナーとして、
アフリカの市場に参入することが期待されていますが、残念ながら現在、十分には姿を見せていま
せん。
アフリカは過去何年にもわたって、多くの支援を受けてきました。ところが、この大陸はいまだに高
いレベルの貧困、疾病、そして従属を経験しています。とくに気候変動の影響は大きく、天然資源
や地域の生物多様性を破壊しています。一方で、日本は東日本大震災と津波、さらに福島の原
発事故を経験しました。ニューヨークでは、巨大な台風「サンディ」が近年、大きな被害を与えてい
ます。世界は厳しい状況にあります。アフリカの各地で、洪水や干ばつが多発しています。ジェン
ダー格差。若い世代の失業。難民、国内避難民、対外戦争や内戦、国内紛争の結果として、障害
を負った人々。MDGs は十分に達成されていません。
私たち、アフリカ市民協議会に集う市民社会、そして日本の TICAD V NGO コンタクト・グループ
は、アフリカの開発が遅れていること、全ての努力を注入して開発を促進しなければならないこと
を想起します。それゆえ、私たちは、TICAD V が以下のことを通じてアフリカの開発を促進するこ
とを求めます。

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
「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)および「アフリカ・ピア・レビュー・メカニ
ズム」(APRM)の提言に従い、民主的なガバナンスを支援する。これはアフリカにおいて大変
必要な外国直接投資(FDI)を呼び込むことにもつながる。
地域の現実を取り込みつつ、研究への投資を含むテクノロジー・技術移転を促進する。
「アフリカ包括的農業開発プログラム」CAADP と「農業と食料安全保障に関するマプート宣
言」に再度コミットし、このコミットメントを達成するための政府の努力を支援する。
農業セクターの多数派を構成する中小農民、特に女性を支援する農業システムの形成を支
援する。
アフリカの中堅・中小企業(Small and Medium Enterprises: SME)を強化するため、日本の民
間セクター(民間企業)のアフリカへの進出を促進し、対等な形で市場を開く。
先進国と途上国の間で、貿易投資や人的・資金的資源の移動などに関する建設的な対話を
行うことを支援する。
気候変動、生物多様性、環境に関する国際的なコミットメントについて、その効果的な実施を
促進する。とくに、国連事務総長の「すべての人に持続可能なエネルギーを」イニシアティブ
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(SE4ALL)を推進するとともに、京都議定書で合意された全てのイニシアティブを実施するこ
とを支持する。また、他の二酸化炭素排出国にも、同様の行動をとることを呼びかける。一方
で、生物多様性条約の愛知ターゲットと、生物多様性保護への拠出を 2 倍にするという「第 11
回生物多様性条約締約国会議」(COP11)での決定に関しても、同様の貢献を促す。
アフリカ連合のエイズ・結核・マラリアに関するロードマップの実施など、アフリカによる保健に
関するイニシアティブの実施を支援する。また、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツ
(性と生殖に関する健康と権利)を促進し、特にアフリカの若者についてこれを焦点化する。な
らびに、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)や GAVI アライアンス多国間の保健
イニシアティブについて、全面的な支援を行う。
アフリカのすべての人々が意味のある人生を送ることができ、主要な経済活動がもたらす利益
を享受し、ともに、そこに参画していくことができるような、公平で公正な社会を実現するため
の主要な方法として、アフリカの食料安全保障の達成のためにより多くの資源を投入する。
2015 年までに MDG のその他のターゲットを実現するため、またポスト MDGs の開発枠組み
の形成にコミットするために、政府に対し技術的・また財政的な支援を提供する。
TICAD が無償の基礎教育及び中等教育を促進することを歓迎する。TICAD は女子にとって
適切な学校教育の環境を整備することを促進する必要がある。さらに、また若者に対する技
術教育やスキルの取得への資金を増額することによって、雇用を創出し、アフリカの若者の生
産性向上を促進する。
成長と安定に向けた環境の整備促進という観点をもって、災害の制圧や自然資源の管理の
ための国家レベルの対応基金の形成を支援する。
アフリカ連合(AU)、東アフリカ共同体(EAC)、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)、南部アフ
リカ開発共同体(SADC)や、「大湖地域国際会議」(International Conference on the Great
Lakes)といった、既に平和と安定のために活動しているその他の政府間のイニシアティブに
対し、財政面、技術面、実務面での支援を行う。
アフリカ自身に依拠した民主主義(African owned democracy)を可能にするために、民主主
義の構築、民主的機構の強化、司法制度の強化を支援する。グッド・ガバナンスと人権を促
進し、腐敗と闘い、政治・経済・社会のすべての部面において透明性と説明責任を促進する。
これは、アフリカの安全保障と安定を実現するための前提条件である。
意思決定において女性が参画し、役割を果たし、権利を行使することを支援し、守り、促進す
ることを可能にする環境を構築する。公平な収入、土地の再分配の促進を進めるとともに、女
性への暴力を絶対に許さず、女性の権利に関するアフリカ連合議定書( African Union
Protocol on the Rights of Women)マプート行動計画、その他の地域や国際機関で決定した
女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する達成目標の実現を支援する。
本リストは最終版ではありませんが、これらは私たちが TICAD V で焦点をあてていただきたい主
要な項目です。ブルキナ・ファソの政府および人々に対して、私たちがこの国に到着してから頂い
た素晴らしいおもてなしに感謝して、締めの言葉といたします。
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