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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System
熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title ES細胞由来の樹状細胞を用いた免疫制御法の開発 Author(s) 千住, 覚 Citation Issue date 2009-05-29 Type Research Paper URL http://hdl.handle.net/2298/17340 Right 様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 5 月 29 日現在 研究種目:基盤研究(C) 研究期間:2007∼2008 課題番号:19591172 研究課題名(和文) ES 細胞由来の樹状細胞を用いた免疫制御法の開発 研究課題名(英文) Immune-regulation therapy with ES cell-derived dendritic cells 研究代表者 千住 覚(SENJU SATORU) 熊本大学・大学院医学薬学研究部・准教授 研究者番号:50274709 研究成果の概要: 我々は、ES 細胞由来の樹状細胞(ES-DC)を用いた細胞ワクチン技術の開発を行っている。ES 細 胞に由来する細胞を用いた医療において問題となる、HLA のミスマッチを解決する方法を検討 すべく研究を行った。未分化なマウス ES 細胞に遺伝的改変を行い、β2-microglobulin(β2 m)遺伝子、あるいは TAP1 遺伝子の標的破壊を行ったものに、さらに、高濃度薬剤選択により、 これらの遺伝子をホモ接合として欠損したマウス ES 細胞を作製した。そして、これらの ES 細 胞に由来する ES-DC をアロのレシピエントに移入し機能解析を行った。 交付額 (金額単位:円) 2007 年度 2008 年度 年度 年度 年度 総 計 直接経費 1,800,000 1,700,000 間接経費 540,000 510,000 3,500,000 1,050,000 合 計 2,340,000 2,210,000 4,550,000 研究分野:医歯薬学 科研費の分科・細目:内科系臨床医学・臨床免疫学 キーワード:樹状細胞、ES 細胞、免疫制御、MHC、細胞治療、T 細胞、悪性腫瘍、抗原提示 1.研究開始当初の背景 我々は、ヒトおよびマウスの ES 細胞から免 疫制御細胞である樹状細胞を作成する技術 を開発しており、この樹状細胞の細胞ワクチ ンとしての有用性について検討を行ってい る。 2.研究の目的 ES 細胞に由来する細胞を使用する医療技術 に関連する最大の技術的課題である組織適 合性の問題を解決する手段を検討すること を目的とした。 3.研究の方法 A. β2-microglobulin (β2m) 遺伝子 の標的破壊 β2m は、MHC クラス I 分子重鎖と会合し ている分子であり、この遺伝子を破壊する と全ての MHC クラス I の細胞表面への発現 が消失する。ここで用いているマウス ES 細胞(J1 株)は、本来 H-2b の MHC タイプな ので、これに、 β2m を MHC クラス I (H-2Kd) 分子と共有結合したものを発現するベク ターを導入した。 Identification of the H2-Kd-restricted cytotoxic T epitopes of a lymphocytes tumor-associated antigen, SPARC, which can stimulate antitumor immunity without causing autoimmune disease in mice. Cancer Science 100, 132-137, 2009. B. TAP1 遺伝子の標的破壊 ES 細胞を用い る研究 本来 H-2b の MHC タイプを有する ES 細胞 (E14)において、TAP1 遺伝子を欠損させ、 遺伝子導入により H-2Kd 分子を発現させ、こ れを樹状細胞(ES-DC)へと分化誘導した。 4.研究成果 以上のような ES-DC に、H-2Kd 分子と結合親 和性を有する RSV(Respiratory Syncytial Virus)由来のエピトープ(合成ペプチド) を細胞外から加えることにより、H-2Kd 分子 上に RSV エピトープを提示する ES-DC を作製 し、これを BALB/c マウス(H-2d)に投与し、 RSV 抗原特異的な細胞傷害性 T 細胞誘導活性 を検討した。 さらに、このような ES-DC を用いて細胞ワク チンを行った後、RSV 抗原を人為的に発現さ せた腫瘍細胞を移植し、この腫瘍細胞に対す る拒絶効果も検討した。 4. Imai, K., Hirata, S., Irie, A., Senju, S., Ikuta, Y., Yokomine, K., Harao, M., Inoue, M., Tsunoda, T., Nakatsuru, S., Nakagawa, H., Nakamura, Y., Baba, H., and Nishimura, Y. Identification of a novel tumor-associated antigen, Cadherin 3/P-cadherin, as a possible target for immunotherapy of pancreatic, gastric and colorectal cancers. Clin. Cancer Res 14, 6487-6495, 2008. 5. Matsunaga, Y., Fukuma, D., Hirata, H., Fukushima, S., Haruta, M., Ikeda, T., Negishi, I., Nishimura, Y. and Senju, S. Activation of antigen-specific cytotoxic T lymphocytes by ・ 2-microglobulin or TAP1 gene disruption and the introduction of recipient-matched MHC class I gene in allogeneic embryonic stem cell-derived dendritic cells. J.Immunol. 181, 6635-6643, 2008. 6. Tsukamoto, H., Irie, A., Senju, S., Hatzopoulos, A.K., Wojnowski, L. and Nishimura, Y. B-Raf-mediated signaling pathway regulates T cell development. Eur. J. Immunol. 38, 518-527, 2008. 7. Harao, M., Hirata, S., Irie, A., Senju, S., Nakatsura, T., Komori, H., Ikuta, Y., Yokomine, K., Imai, K., Inoue, M., Harada, K., Mori, T., Tsunoda, T., Nakatsuru, S., Daigo, Y., Nomori, H., Nakamura, Y., Baba, H., Nishimura, Y. HLA-A2-restricted CTL epitopes of a novel lung cancer-associated cancer testis antigen, cell division cycle associated 1, can induce tumor-reactive CTL. Int. J. Cancer 123, 2616-2625, 2008. 8. Senju, S., Suemori, H., Zembutsu, H., Uemura, Y., Hirata, S., Fukuma, D., Matsuyoshi, H., Shimomura, M., Haruta, M., Fukushima, S., Matsunaga, Y., Katagiri, T., Nakamura, Y., Furuya, M., Nakatsuji, N., and Nishimura, Y. 以上の検討によりβ2-microglobulin(β 2m)あるいは TAP 遺伝子の標的破壊とい う手法が、ES 細胞を用いる医療技術にお ける組織適合性の問題を解決する手段と して有用であることを示した。 5.主な発表論文等 〔雑誌論文〕(計 10 件、全て査読「有」) 1. Senju, S., Haruta, M., Matsunaga, Y., Fukushima, S., Ikeda, T., Takahashi, K., Okita, K., Yamanaka, S., and Nishimura, Y. Characterization of dendritic cells and macrophages generated by directed differentiation from mouse induced pluripotent stem cells. Stem Cells in press. 2. Fukushima, S., Hirata, S., Motomura, Y., Fukuma, D., Matsunaga, Y., Ikuta, Y., Ikeda, T., Kageshita, T., Ihn, H., Nishimura, Y.and Senju, S. Multiple antigen-targeted immunotherapy with alpha-galactosylceramide-loaded and genetically engineered dendritic cells derived from embryonic stem cells. J.Immunotherapy in press. 3. Ikuta, Y.*, Hayashida, Y*, Hirata, S., Irie, A., Senju, S., Kubo, T., Nakatsura, T., Monji, M., Sasaki, Y., Baba, H., and Nishimura, Y. (*these two authors contributed equally.) embryonic stem cells. 第 10 回国際樹 状細胞シンポジウム、2008 年 10 月 1 日 ∼5 日、神戸 Genetically manipulated human embryonic stem cell-derived dendritic cells with immune regulatory function. Stem cells. 25, 2720-2729, 2007. 9. Yokomine, K., Nakatsura, T., Senju, S., Nakagata, N., Minohara, M, Kira, J., Motomura, Y., Kubo, T., Sasaki, Y., and Nishimura, Y.: Regression of intestinal adenomas by vaccination with heat shock protein 105-pulsed bone marrow-derived dendritic cells in ApcMin/+ mice. Cancer Science. 98, 1930-1935, 2007. 10. Hirata, S., Matsuyoshi, H., Fukuma, D., Kurisaki, A., Uemura, Y., Nishimura, (*equal Y.* and Senju, S.* contribution) Involvement of regulatory T cells in the experimental autoimmune encephalomyelitis-preventive effect of dendritic cells expressing myelin oligodendrocyte glycoprotein plus TRAIL. J. Immunol. 178, 918-925, 2007. 〔学会発表〕(計 24 件) 1. 千 住 覚 、 Effective immunotherapy with ・-GalCer-loaded embryonic stem cell-derived dendritic cells expressing antigens against B16 melanoma. International Investigative Darmatology, 2008 年 5 月 14 日∼17 日、京都 2. 千住 覚、ES 細胞および iPS 細胞由来の 免疫細胞を用いた医療技術の開発。第 32 回阿蘇シンポジウム、2008 年 8 月 1 日∼ 2 日、熊本 3. 千住 覚、免疫細胞療法への応用を目指 したマウス iPS 細胞からの樹状細胞の作 製技術の開発。第 17 回日本組織適合性 学会大会、2008 年 9 月 19 日∼21 日、大 阪 4. 千住 覚、免疫細胞療法への応用を目指 したマウス iPS 細胞からの樹状 細胞の分化誘導。人類遺伝学会第 53 回 大会、2008 年 9 月 27 日∼30 日、横浜 5. 千住 覚、Immunotherapy with multiple antigen-targeted and α -galactosylcer amide-loaded dendritic cells derived from 6. 千住 覚、Genetic modifications of ES cell-derived DC to modify cell surface MHC class. 第 10 回国際樹状細胞シンポ ジウム、2008 年 10 月 1 日∼5 日、神戸 7. 千住 覚、進行性幹細胞がん患者に対す る Glypican-3 ペプチドワクチンの臨床 第 1 相試験での安全性と有効性。第 67 回日本癌学会学術総会、2008 年 10 月 28 日∼30 日、名古屋 8. 千住 覚、肺癌に高発現する新規癌精巣 抗原 CDCA1 を標的とした癌免疫療法の開 発。第 67 回日本癌学会学術総会、2008 年 10 月 28 日∼30 日、名古屋 9. 千住 覚、膵癌の免疫療法に有用な新規 癌関連抗原 CDH3 の同定。第 67 回日本癌 学会学術総会、2008 年 10 月 28 日∼30 日、名古屋 10. 千住 覚、免疫抑制性分子を遺伝子導入 したマウス ES 細胞由来の樹状細胞の同 異種系(アロ)移植への応用。第 36 回 日本臨床免疫学会、2008 年 10 月 17 日∼ 18 日、東京 11. 千 住 覚 、 複 数 抗 原 を 標 的 と し 、 α -GalCer を負荷した遺伝子導入 ES 細胞 由来樹状細胞を用いた癌免疫療法。第 36 回日本臨床免疫学会、2008 年 10 月 17 日∼18 日、東京 12. 千 住 覚 、 複 数 抗 原 を 標 的 と し た α -GalCer 負荷 ES 細胞由来樹状細胞によ る癌免疫療法。第 38 回日本免疫学会総 会・学術集会、2008 年 12 月 1 日∼3 日、 京都 of 13. 千 住 覚 、 Activation antigen-specific CTL by β2-microgloblin or TAP1 gene-disrupted and recipient-matched MHC class I gene-introduced allogeneic ES cell-derived dentritic cells. 第 38 回日本免疫学会総会・学術 集会、2008 年 12 月 1 日∼3 日、京都 14. 千住 覚、TRAIL を発現するアロ ES-DC の投与によるアロ膵島に対する拒絶反 応の抑制。第 38 回日本免疫学会総会・ 学術集会、2008 年 12 月 1 日∼3 日、京 都 15. 千住 覚、マウス iPS 細胞からの樹状細 胞の作製。第 38 回日本免疫学会総会・ 学術集会、2008 年 12 月 1 日∼3 日、京 都 Conference、2007 年 6 月 15 日∼16 日、 京都 〔図書〕 (計 9 件) 1. 千 住 覚 : MHC ( 日 本 組 織 適 合 性 学 会) 「 HLA 分 子 に よ る 癌 特 異 抗 原 の 提 示を利用した癌免疫療法の開発」 2008 年 518-527 2. 「 ES 千住 覚:腫 瘍 内 科( 科 学 評 論 社 ) 細胞由来の樹状細胞による抗腫瘍 免 疫 応 答 の 誘 導 」 2008 年 164-170 3. 千 住 覚 :再 生 医 療( メ デ ィ カ ル レ ビュー社) 「 iPS細 胞 由 来 の 樹 状 細 胞 とマクロファージを用いた医療技 術 の 開 発 」 2008年 43-45 18. 松永雄亮、Disruption of the TAP1 or 2-microgloblin gene in ES cells to overcome the histoincompatibility between ES-DC and the recipients. 第 37 回日本免疫学会総会・学術集会、2007 年 11 月 20 日∼22 日、東京 4. 西 村 泰 治 、千 住 覚:Jpn. J. Clin . Immunol.( 小 宮 山 印 刷 工 業 株 式 会 社 )「 新 規 癌 胎 児 性 抗 原 Glypican-3 の肝細胞癌の診断と免疫療法への 応 用 」 2008年 383-391 19. 平田真哉、MOG ペプチドと TRAIL を共発 現する樹状細胞による制御性 T 細胞を介 した EAE の発症抑制。第 35 回日本臨床 免疫学会総会、2007 年 10 月 19 日∼20 日、大阪 5. 千 住 覚 :医 学 の あ ゆ み( 医 歯 薬 出 版 )「 ES 細 胞 お よ び iPS 細 胞 を 用 い た 免 疫 療 法 」 2008 年 413-418 6. 20. 千住 覚、遺伝子導入ヒト ES 細胞から 分化誘導した樹状細胞による免疫調節 能の発現。日本人類遺伝学会第 52 回大 会、2007 年 9 月 12 日∼15 日、東京 千 住 覚 : 実 験 医 学 ( 羊 土 社 )「 免 疫 療 法 へ の 応 用 を 目 指 し た ES 細 胞 か ら の 樹 状 細 胞 の 作 製 」 2008 年 212-217 7. 21. 千住 覚、抗原提示機能を有するヒト ES 細胞由来の樹状細胞(ヒト ES-DC)の確 立。第 16 回日本組織適合性学会大会、 2007 年 9 月 9 日∼11 日、京都 平田真哉、千住 覚、西村泰治:炎症と 免 疫 ( 先 端 医 学 社 )「 医 学 用 語 解 説 ES-DC」2008 年 133-135 8. 22. 千住 覚、Genetic engineering of human embryonic stem cell-derived dendritic cells. 13th International Congress of Immunology、2007 年 8 月 21 日∼25 日、 ブラジル・リオデジャネイロ 千住 覚、西村泰治:免疫応答と免疫病 態の統合的分子理解(南山堂) 「第 12 章 T 細 胞 応 答 の 抑 制 性 制 御 」 2007 年 116-122 9. 千住 覚、西村泰治:アニテックス(研 成社)19(2)特集 動物 MHC「MHC とはな にか」2007 年 3-8 16. 千 住 覚 、 Establishment of hu-SCID mouse system to analize priming in vivo of antigen-specific human CTLs by DC. 第 38 回日本免疫学会総会・学術集 会、2008 年 12 月 1 日∼3 日、京都 slike 17. 千 住 覚 、 SARS-Cov protein-derived HLA-A2-restricted CTL epitope identified by using HLA-A2/Db-transgenic mice. 第 38 回日 本免疫学会総会・学術集会、2008 年 12 月 1 日∼3 日、京都 23. 塚本博丈、Important roles of B-Raf in T cell development and TCR-ligand avidity-sensitive T cell activation. International Congress of 13th Immunology、2007 年 8 月 21 日∼25 日、 ブラジル・リオデジャネイロ 24. 千住 覚、抗原提示機能を有するヒト ES 細 胞 由 来 の 樹 状 細 胞 。 Kyoto T Cell 6.研究組織 (1)研究代表者 千住 覚(SENJU SATORU) 熊本大学・大学院医学薬学研究部・准教授 研究者番号:50274709 (2)研究分担者 なし (3)連携研究者 なし