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安全活動を推進するための“しくみ”
平成25年11月13日 九州厚生局 医療安全に関するワークショップ 「医療安全 そして医療の質へ PartⅡ」 安全活動を推進するための“しくみ” 飯塚病院 医療安全推進室 林 真由美 IIZUKA HOSPITAL 株式会社 麻生 飯塚病院 開 設 大正7年8月 定床数 1,116 床(一般978床,精神138床) 従業員数 2,190名 医師 274名 看護師 1,019名 技師 411名 事務他 486名 救命救急センター併設 1日受診者数 123名 1日救急車数 20件 1日入院患者数 881名 1日外来患者数 1,997名 平均在院日数 14.5日 IIZUKA HOSPITAL 飯塚病院の医療の質に関する活動の歴史 手術患者取り違え事故 厚労省医療安全総合対策 1992 93~ 98 99 2000 01 02~ 06 作成:福村室長 07 08 09 10 第1回発表大会 委員会発足 モデルTQM発表大会 モデルTQMキックオフ オーナーより導入宣言 TQM(QCサークル活動) クリニカルパス 医療安全施策 インシデントレポート MRM委員会 医療安全体制再構築 医療安全推進室 SMチーム分析 レベルアップミーティング KYT ナレッジマップ NDP(医療のTQM実証プロジェクト)活動 早大棟近研との共同研究開始 ISO9001 プロセス志向 POAM 褥瘡 医療事故防止ノート ISO9001 認証取得 入院患者満足度調査(通年・毎月分析) 紹介する内容 1. 医療安全管理体制 2. PDCAサイクルを回す-転倒・転落3. 標準化・文書化 4. 教育 飯塚病院の医療安全の目指すもの 『~誰もが辛い目に合わないために~』 IIZUKA HOSPITAL 1. 医療安全管理体制 IIZUKA HOSPITAL 基本的な考え方 • プロセス指向 – よいプロセスがよい結果を生む • マネジメント – PDCA Plan(計画) Do(実施) Check(評価) Act(改善) を回すこと • 事実に基づく管理 – 調べられることは調べる – 達人でなければ科学的分析を • 重点指向 – 重要な問題に絞る – 問題を捨てる Waseda Univ. Prof. M. Munechika IIZUKA HOSPITAL プロセス指向 エラープルーフ化とは 人間は柔軟で創造的である反面、ある一定確率でエラーを起こす この基本的な特性を変えることは不可能だ したがって、残された方法は、作業システムを構成する人以外の要素、 すなわち薬剤、機器、文書、手順等の「作業方法」を改善すること (中條武志・中央大学) 人間を作業方法に 合うように改善する 作業方法を人間に 合うように改善する IIZUKA HOSPITAL 7 飯塚病院の医療安全管理体制 専任医師1名, MRM委員会 専従看護師2名, 感染管理認定看護師1名, 専従事務1名, SM部会 委員長:副院長(医師) 他 医師5名,看護師4名, 薬剤師1名,技師4名, 事務職2名,事務局1名 医療安全推進室 (SPO) 各委員会を含む 院内組織 事故対策委員会 各部署1~2名 (スタッフ20名に付き1名選出) 総113名 セーフティ マネジャー 現場 IIZUKA HOSPITAL セーフティマネジャー(SM)の具体的な役割 現場育成型の安全管理システム 各部署に現場の医療安全を推進する役割を担うSMを配置 1. 現場の医療安全をリードする 自部署のインシデント事例の再発防止(要因分析・対策立案) 分析・KYT活動・FMEAの手法を推進 医療安全に関する連絡事項の周知・徹底・評価 2. SM部会での活動に積極的に参加する 分析チームで要因分析・対策立案 チーム分析・KYT活動・FMEAの報告 医療安全に関する情報の共有 各プロジェクト・タスク活動への参加 Do Plan 実施 計画 Act Check 処置 評価 現場でも医療安全推進室でも 他の部門でもPDCAサイクルを回す IIZUKA HOSPITAL 即時報告書(インシデントレポート) 次の人のために 始末書ではなく、次へつなげるためのもの 個人を責めるものではなく、システムで考える機会 報告は当事者でも発見者でも構わない 原則24時間以内 IIZUKA HOSPITAL レポート(不具合報告)の処理プロセス 医療安全推進室では 事象発生 レポート内容に疑問や問題がある時は状況確認 (ヒアリング)後に修正してフィードバックする 即時フィードバック no 検討事象判別 軽微な事象 ● 注意喚起 ● カンファ 【検討事象判別】 -重大な影響有り -頻度の多い -改善法が容易でない -標準作業プロセスがない -プロセスに問題がある no 重大過誤 yes 事故対策委員会設置 yes 即時ヒアリング 緊急対応 SPO会議 分析・対策立案 ● 情報共有 【重大過誤】 -明らかな過誤 -死亡または永続的障害 2. PDCAサイクルを回す -転倒・転落- IIZUKA HOSPITAL PDCA(プロセス管理)サイクルを回す 従来の実績や将来の 予測などをもとにして 業務計画(変更の計 画)を作成する Plan データ収集の計画 計画 実施が計画に沿って いない部分を調べて 処置をする 次の変更・改善を行う 計画に沿って業務 (変更)を実行する データを記録する Do 実施 Act Check 処置 評価 業務の実施が計画に 沿っているかどうかを 確認する データ解析・予測値と 比較する IIZUKA HOSPITAL 転倒・転落時の状況 飯塚病院2012年 n=657 事故のきっかけとなる患者行動 排泄に行こうとして 33% 36% 物を取ろうとして ベッドからの移乗中 ベッドへ戻る途中 歩行中 トイレ使用中 車イス乗車中 1% 6% 9% 6% 看護師さん忙しそう その他 6% 3% ちょっとくらい だから大丈夫 IIZUKA HOSPITAL 転倒・転落防止概論 対策⓪ 環境整備 対策① 対策② 対策② 対策③ 対策③ Pt. 行動 行動 Pt. 病棟 対策④ 対策④ 転倒・転落 事故 対策⑤ ケガ (藁科の防止概論を一部改変) 目的 具体的な対策例 対策⓪ 安全な環境づくり コード類の整理、履物の位置など・・ 対策① 入院患者の中から事故を起こす危険性の高い 患者を抽出 アセスメントシート 対策② 危険な患者の行動を未然に防止 ベッド柵、排尿誘導、患者指導、DVD視聴・・ 対策③ 行動の手助け。行動を起こしても、医療者が察 知し事故が発生しないようにする 離床センサー、移乗バー、排尿介助、 モーニングケア、イブニングケア・・・ 対策④ 事故が発生しても患者への影響度を低減させ る 緩衝マット、クッションフロア、プロテクター・・ 対策⑤ 受傷しても重大な異常を早期に発見する関係 者・部署へ連絡する 事故後の検査・観察等のガイドライン、 事故対応フロー図・・・ 飯塚病院の主な転倒・転落防止取り組み 年 取り組み内容 2002 2段階式アセスメントシートとそれに連動した対策表作成 2003 緩衝マットとしてキャンピングシートを利用 2004 転倒・転落アセスメントシステム(電子入力)の構築(12月より開始) 注意シールの貼付 転倒転落後の観察・検査ガイドライン作成 2005 精神科病棟(3病棟中1病棟)でクッションフロアーに改装 2007 医療者・患者教育用転倒転落防止DVD制作、介助バーを購入し各病棟へ配置 2008 DVDの患者視聴率を看護部目標の1つとする(患者参加)DVD視聴率目標値80% 2009 ポータブルトイレをスタンダード型からドッシリ型へ変更 2010 アセスメントシステムの改訂作業開始 2011 転倒・転落チームによるラウンド開始 2012 患者環境の整備・排尿誘導の実践チェック 離床センサーベッド使用 2013 転倒・転落事故後カンファレンス開催 再度 DVD視聴の取り組み開始 IIZUKA HOSPITAL Plan -転倒・転落防止DVDの制作 2007年 患者教育のツールとして、転倒・転落 分析結果を基にDVD制作 (飯塚病院、早稲田大学、NDP※との共同制作) ※NDP(National Demonstration Project on TQM for Health) 1.医療者編(62分) 2.患者編(15分) 01.入院すると環境が変わります 02.安全な動き方を覚えましょう 03.トレーニングしましょう 04.まとめ 3.ベッド上で誰でもできる運動療法(10分) IIZUKA HOSPITAL Check -転倒・転落件数をチェック 2006年度看護部目標:前年度発生件数の25%減 転倒・転落アセスメントシートの使用率アップ 2007年度看護部目標:重傷事例の低減 入院案内コーナーで転倒・転落防止DVD上映 入院ベッドサイドのテレビで無料視聴 効果の兆し なし 井上資料より IIZUKA HOSPITAL Act -患者教育の効果を上げる仕掛け 2008年度看護部目標:入院患者がDVDを視聴する 目標値 患者視聴率 80% 患者さんへのテレビ放映の案内 【展示物・・・ポスター、案内文、番組表】 ① 病棟の案内表示ボードに貼る ② ベッドサイドに貼る、テレビに貼る ③ 病棟のパンフレットに綴じ込む、手渡す 【患者さんへのおさそい】 担当Ns ① 入院オリエンテーション時の説明 ② 放映時間になれば声をかける ③ 可能であれば一緒に視聴する リーダー ① ラウンド時に声をかける ② 病棟の一斉放送でアナウンスをする 井上資料より IIZUKA HOSPITAL Check -転倒・転落報告件数と発生率 転倒・転落報告件数と発生率の推移 (件/年) 900 報告件数 (件/1,000入院) 3 2.9 2.8 2.7 2.6 2.5 2.4 2.3 2.2 2.1 2 発生率 800 700 600 500 400 300 200 100 0 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 報告件数 発生率= 入院延べ患者数 ×1,000 中等傷(縫合、骨折)以上の 転倒転落件数・発生率の推移 (件/年) (件/1,000入院) 30 0.1 0.09 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0 転倒・転落件数 25 発生率 20 15 10 5 0 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 中等傷以上の発生率= 中等・重傷の報告件数 ×1,000 入院延べ患者数 井上資料より IIZUKA HOSPITAL 取り組み継続 2009年7月 医療安全管理者交代 ・転倒・転落事故報告件数・発生率のモニター ・入院患者のDVD視聴調査 ・調査結果や事故発生率3ヵ月毎推移をフィードバック ・部署ミーティングを個別開催 ・DVD視聴の院内アナウンス内容等改訂 ・データ分析により、アセスメントシートや対策項目の検証・改訂 ・転倒・転落後、頭部打撲の場合のフローの改訂 IIZUKA HOSPITAL ポータブルトイレを統一 * ベッド周辺除く P<0.05 2009年4月~9月 2010年4月~9月 その他 ト イ レ 病棟の洗面所 病棟の 廊下 へなちょこ (スタンダード型) 手すりがなく患者 は把持するものが なく不安定。 車イ ス 病室の洗面所 ベッド周辺以外 の病室 * ポータブ ルトイ レ 60 50 40 30 20 10 0 ドッシリ型 足の踏み込み空間が あり立ち上がりが楽。 高さの調整も可能。 井上資料より リハビリDrの指摘で“へなちょこポータブルトイレ”をドッシリ型へ変更 Check - 2010年度の評価 中等傷以上が増加 1000人当たり 2009年度と2010年度の活動の違い ① 看護部の目標ではなくなった ② アセスメントシステムの改訂中で 調査や現場へのフィードバックが手薄になった 2011年7月の入院患者のDVD視聴率 全病棟平均66% IIZUKA HOSPITAL プロジェクトチームの活動開始 2011年 毎月1回会合 ラウンド結果の報告 是正指摘を受けたチームメンバーを交え ディスカッションし、フィードバックする データを基に問題点を考え改善へ ⇒朝・夕のラッシュアワーの時間帯に転倒事故が多い ⇒モーニングケア・イヴニングケアの実施状況など調査・改善 IIZUKA HOSPITAL プロジェクトチームの部署ラウンド Plan Objective, process ・各部署:計画を立案 ・SMによる各部署ラウンドを計画 Do Implement process P D A Act Analysis, measures ・会合時に(各部署とSM)ディスカッション ・追加対策など検討し変更、是正 ・部署是正⇒2ヶ月後評価 ・各部署:アセスメント・対策 実施 ・SMが各部署をラウンド C Check Monitoring ,measuring ・SMがチェックし、各部署へ不足する 対策など指摘 シートを使用することで、現場でも医療安全推進室でも PDCAサイクルが回るように“しくみ”作り IIZUKA HOSPITAL Check -転倒・転落報告件数と発生率 転倒・転落報告件数と発生率の推移 報告件数 発生率= 入院延べ患者数 ×1,000 中等傷 (縫合、捻挫、骨折)以上の 転倒転落件数・発生率の推移 中等傷以上の発生率= 中等・重傷の報告件数 ×1,000 入院延べ患者数 IIZUKA HOSPITAL Act - 2013年の目標 患者転倒・転落DVD視聴率90%以上 転倒・転落事故発生率2.0‰以下 • 調査結果を毎月フィードバック • プロジェクトチームラウンド結果のフィードバック • 事故後カンファレンス開催 IIZUKA HOSPITAL Plan -転倒・転落事故後カンファレンス カンファレンス調査結果1月~7月 1.アセスメントは抜けていなかったか 2.対策立案は妥当であったか ・あった方がよかった対策 ・対策にはなかったが実施した対策 3.対策は実施できていたか 4.事故後の対応に問題はなかったか 行動目標 n=175 現場へ周知・フィードバック(研修やミーティング・・) IIZUKA HOSPITAL 現場へ周知・フィードバック(研修やミーティング・・) 最低限A・B・Cはやってください! A. 環境整備 ①履物(踵のある靴) ② ベッド柵 ③ ポータブルトイレ B. トイレの声かけ Act 改善 Plan 計画 ①業務開始・終了時 ② 就寝・起床時 C. 予測と行動 Check 評価 Do 実行 ①患者の動きを予測し、危険を察知する ②患者の排泄パターンを把握し、トイレのタイミングを推測する PDCAサイクルを回し続けている! IIZUKA HOSPITAL 3. 標準化・文書化 IIZUKA HOSPITAL インスリン・スライディングスケールの標準化 診療情報管理室および情報 センターの協力のもとに、 「ヒューマリンR」「皮下注」 「筋注」をキーワードとして 患者を検索した。そのリスト から実際のカルテを調べ、 SSを行なった症例のスケー ルを調べた。 (2002年4月全病棟での調査結果) 20単位 ヒューマリン インスリンSS 調査 単位 16 Dr.call Dr.Call 14 12 R 10 Dr.call Dr.call Dr.Call Dr.call Dr.call Dr.Call Dr.call 8 Dr.call 6 4 100 180 2 22種類のスケールが使用 されていたが3パターンに 近似させた 0 150 200 250 300 350 血糖値(mg/dl) 400 500 井上資料より IIZUKA HOSPITAL 標準化インスリンSS使用状況(浸透度調査) 29.7% 10年後の現在もほぼ100%の使用率 70.3% n=37 施行1ヶ月後 20.7% 79.3% n=87 施行6ヶ月後 標準SS その他SS その他 0% 100% n=45 施行18ヶ月後 井上資料より IIZUKA HOSPITAL スライディングスケールWSの標準化 ハンドブック 見逃せないVS 発見後の対応 急変時対応 低血糖ミニパス 転倒・転落時の対応 輸液漏れ 絶食検査時 糖尿病薬指示 造影剤有害事象時対応 酸素ボンベ早見表・・・etc. 病院で統一した手順書を掲載 記憶で仕事をしない工夫 (勤務時は常にポケットに携帯) 「早わかり医療安全ハンドブック」から“how to” と“why” を学ぶ! 研修・教育・指導に活用 IIZUKA HOSPITAL その他の取り組み 連絡エチケット 医師処方オーダーマニュアル(指示受け・指示だし手順) 内服薬配送システム(8:30~18:30 1時間毎に配送) 退院時渡し忘れ薬等フロー作成 持参薬取り扱いフロー 薬剤患者自己管理アセスメントシートと運用・・・etc. Act 改善 PDCAサイクルを回す Check 評価 Plan 計画 Do 実行 • 導入後のチェックで 現場の周知・徹底度を調査する • その結果を現場へフィードバックする • 問題があれば改善し再周知や教育・指導を行う IIZUKA HOSPITAL 4. 教育 IIZUKA HOSPITAL インシデントレポートから看護師教育 -フィードバック・レベルアップミーティング- 2007年4月より開始、77回、延べ710日、延べ6480人参加(2013.10現在) • 看護の質向上のために医療安全が行っている 教育の取り組み • 院内で発生したインシデント・アクシデント事例 を通して医療安全の視点で問題点に気付く力 を向上する 回数 開始月日 日数 テーマ ・ ポイント 参加数 第66回 10月2日 8日間 転倒・転落事故(急性硬膜下血腫)予防と 発生前後の対処 79名 第67回 11月5日 9日間 緊急時の口頭指示による薬剤間違い 75名 第68回 12月3日 9日間 インスリン(危険薬)使用患者の検査に伴う低血糖リスク 80名 第69回 1月7日 9日間 “転倒・転落による事故を防ぐ”動画を用いて 73名 第70回 2月4日 9日間 インスリン投与量の間違い 75名 各自で資料を読み込む ⇒ 他の参加者の気付きのために発言する ⇒ ファシリテーターが意見を 整理してまとめる ⇒ 安全管理者が気付いてほしいポイントを伝える ● IIZUKA HOSPITAL 医療安全研修の状況 2013年度 カリキュラムとして整備 管理者研修 管理者(現場監督)が 安全活動を理解し、 現場に問題はないか 日常的に考える 現場にリーダー(SM) を置かないと管理者だ けでは医療安全活動の 推進は無理 現場の医療安全活動を推進する セーフティマネジャーの教育 分析・KYTエキスパート研修開催 IIZUKA HOSPITAL 目指す病院のレベルは? (デュポン社 飯塚病院研修 資料より) IIZUKA HOSPITAL 終わりに 飯塚病院の安全活動を推進するための“しくみ”の幾つかを 紹介いたしました 当院にはTQM活動などから得た多くの財産(標準化・文書化されたモノ)があり その財産をムダにせず医療の質の向上、安全活動を推進しています 改善やしくみ作りをやっていますが、転倒も薬剤に関するエラーも減りません 課題は山積みです 医療安全管理者だけがPDCAサイクルを回すのではなく、 現場でも回せるように支援、教育を進めていき、課題を解決していかなくては いけないと思っています IIZUKA HOSPITAL