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卒業論文講評と要旨(PDF版)

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卒業論文講評と要旨(PDF版)
広田康生ゼミ卒業論文講評
グローバル都市の研究を中心とするゼミナール
担当
広田
康生
2013 年度広田ゼミ(テーマ:グローバル都
は、10 月末の土曜日に、3 年生と 4 年生の全員
市の研究)の卒業論文は、以下の計 8 本であっ
出席のもとで、ほぼ半日かけて、それぞれがあ
た。
る程度書き上げた草稿を持ち寄って報告とディ
1.笠木俊太郎「QOL 向上のための移動の自
スカッションをした。以前は、この卒論中間報
由について~モビリティの意味から可
告会は合宿形式で実施していたが、最近では就
能性を探る~」
職活動等の事情で、学内で開いている。
2.上野
瞳「なぜ痩せたがる?どうしたら
2013 年度の卒論は、グローバル都市をテーマ
痩せる?~現代の“やせ願望”要因と
とするゼミのせいもあるが、多様化する都市的
様々なダイエット法~」
世界ならではの、ファッションを含めた多様な
3.野崎莉奈「男子の草食化から始まった現
価値観や文化の出現、サブカルチャーの展開、
代の若者の男女価値観」
大都市地域社会の街づくり、現代都市社会特有
4.平林 健吾「社会学的視点での現代ファ
の精神的問題としてのひきこもり、といった問
ッションの様相と変化~被服行動とジ
題等、多彩な問題群に焦点をあてた論文が集ま
ェンダーフリーに視点を置いて~」
った。一本一本解説をしていきたい。
5.星野杏輔「余暇(レジャー)の変化と食
笠木俊太郎君の卒論は、高齢者や障害者、子
―新しいサブカルチャーとしての食」
供など交通弱者と言われる人々が、現在のよう
6.及川翔「欧州サッカーの動向に見るポス
なマイカー主体の社会では非常に弱い立場に置
トコロニアル状況について」
かれており、公共交通機関は、それをどのよう
7.桐山豪史「スティグマの社会学から見る
に克服することができるかという問題ととおし
ひきこもり再考」
て、地域コミュニティの在り方とは何か、につ
8.本多文佳「大都市郊外における観光・ア
いて考察したものである。本論文で笠木君は、
ートによる街づくり~調布市仙川の A
コミュニティバス、デマンド型交通、SP サービ
ストリートを事例にして~」
ス等の具体的な事例を取り上げ、クロスセクタ
ーベネフィットやモビリティマネジメント概念
広田担当の専門ゼミナールは、3 年次の前期
を取り挙げながら、結局は地域の協力が最も重
に、ゼミ共通のテーマを設定し、関連文献を読
要であるとして、コミュニティの問題を改めて
みディスカッションをしながらゼミ履修者は、
提起している。
各自の研究テーマを設定し、後期は各自のテー
上野瞳君の卒論は、なぜ人は痩せたがるのか”
マに沿った文献をそれぞれに読み、報告をして、
という近代の若者の“やせ願望”
“やせ思考”
“ダ
ゼミ論文の執筆に取り組むという計画をたて、4
イエット現象”を社会的観点から捉え分析した
年次には、ここでの作業を背景に各自のテーマ
ものである。本論では現代のダイエットがアメ
を絞り込み、それぞれの卒業論文の構想にとり
リカ文化として始まったことを歴史的に辿り、
かかり、10 月末に広田ゼミ内での卒論中間報告
流行ファッションとの結びつきがダイエットの
会を開き、そこである程度の確認をして、12 月
新しい観点や概念を作り出したところまで理解
15 日(2013 年度は暦の関係で 17 日月曜日であ
し、その後で、現代の様々ンダイエット法を詳
ったが)の卒論提出締切までに提出するという
しく調べ分析をしている。上野瞳君がこのテー
日程をこなしている。今年度の卒論中間報告会
マを選んだのは、自身の青少年時の体験があっ
1
広田康生ゼミ
たことも卒論ではまとめている。本人の体験か
ーメン文化)を生み出している」のであり、食
らテーマを選びだし、社会学的な考察を積み重
文化が、サブカルチャーとして我々の生活の質
ねたことは評価できる。
を高めるのになくてはならないものになってい
野崎莉奈君の卒論は、若者の男女の価値観の
る、という。星野杏輔君の論文もまた身近なと
違いについて、
「草食系」及び「肉食系」等のキ
ころでの着眼を食文化の社会学として考察した
ーワードを手がかりにして社会学的に考察を試
ところに意味がある。
みたものである。本論では、
「草食系男子」と「肉
及川翔君の卒論は、欧州サッカー界を素材に、
食系女子」の意味、なぜこのような言葉が誕生
スポーツのなかに見られる、国境を超える移動
したのかを分析することをとおして、現代の若
と、こうした移動を生み出すポストコロニアル
者の、恋愛観、安定志向のライフスタイル、家
状況がどのように反映されているかを検討した
族志向のライフスタイルについて明らかにして
論文である。及川君は、西アフリカのコートジ
いる。本論文をとおしての野崎莉奈君の主張は、
ヴォワール代表と先に紹介した多国籍代表チー
代の日本の若者たちの間で創り出される価値観
ムであるフランス代表を例に挙げて考察した。
やさまざまな言葉の原点がこの「草食化」
、いわ
ポストコロニアル状況、あるいはナショナリズ
ゆる「草食系男子」の出現に象徴的に示されて
ム、統合と排除といった近年の現象はスポーツ
いるということである。野崎莉奈君の論文も等
界にきわめて象徴的に見られるということを改
身大の問題意識を社会学的に考察しようした点
めて考えさせられた発想の良い論文である。
が良い。
桐山豪史君の卒論は、
「ひきこもり」という行
平林健吾君の卒論は、現代の若者のファッシ
動を、ゴフマンの「スティグマ」概念に示唆を
ョンを題材にしているが、内容は、ジェンダー
受けて解釈し、その状態の脱出の方途を考えた
の問題に切り込んだ、充実の論文である。
ものである。桐山君によれば、スティグマを持
本論文によれば、
「本来異性の服装とされてきた
たされる人々は、普通の人が負っている社会的
ものを身に着け性差を越えてオシャレなもの、
役割と異なり、スティグマを持つ故の不遇な役
いわゆるファッショナブルなものとして楽しん
割を社会から背負わされており、ゴフマンは、
でいる」若者文化のなかには、被服行動におけ
この役割を充分に果たすことで彼、社会の中で
る「逸脱性志向」や、ファッションの限界を感
一人前の人間として扱われる可能性をもつ、と
じて打破しようとした人々の実践、ジェンダー
考える。いわば脱出方法としては、スティグマ
化に抗する流れなどの要因が見られる。平林は、
を持つ人と普通の人との間の意思疎通の方法で
こうした現象を社会学的には「性役割観・ジェ
あったり、仲間の作り方、人との距離の取り方
ンダーフリー」
「印象形成」
「サブカルチャー」
であったりする。ひきこもりの人たちもこれと
という3つの概念を手掛かりに考察している。
どうようなひとたちであると桐山君は考えてい
平林健吾君の卒論は、ファッションを素材に、
る。桐山豪志君の論文は、きわめて社会学的に
社会学的な概念を手掛かりに地道な考察を積み
「ひきこもり」行動をとらえようとしており、
重ねたものである。
そのための文献購読も地道に積み重ね、真摯に
星野杏輔君の卒論は、現代のラーメン文化の
取り組んでいる。
流行に焦点をあてて、余暇文化の展開に関連付
本多文佳君の卒論は、東京都調布市仙川を事
けて分析することで、特に都市的世界において、
例に、アートによる街づくりの問題を素材にし
新しいサブカルチャーとしてのラーメン文化を
て、街づくりとは何かと言う問題を考えたもの
生み出す背景や過程について分析を試みたもの
である。調布市仙川では、世界的建築家である
である。本論文によれば、
「生活行動である食べ
安藤忠雄が設計した「安藤ストリート」があり、
ることがレジャーの質の変化とともに…・享受
美術館、ギャラリーが並んでいる。2007 年に都
(受身)から参加(能動)そして創造(指導)
市計画道路を挟んで統一感のある 5 棟の安藤作
のレベルに達し、サブカルチャー(としてのラ
品が完成した。目指していた統一感のある街並
2
2013 年度 卒業論文講評
みの一部が現実となった。その結果本多君は、
街全体で地域活性化を目指す場合でも、単に機
能性や便利性を求めるだけでなく、住民たちの
「誇り」やアイデンティティという機能性原理
とは異なる原理が、以下に街をつくるうえで重
要であることを指摘するにいたった。本論文で
の本多君の結論は、
「住民たちが住み続けたいと
思う気持ちが街を活性化させ、人を呼び持続可
能な観光資源を創り出すのではないだろうか」
ということである。昨今の機能的コミュニティ
論では解けない部分を問題提起していると講評
者は評価している。
卒論指導をしている最中は、それぞれのテー
マがばらばらに映ったが、上記のように並べて
みると、グローバル化の時代の都市ないしは都
市的世界に顕在化する、思想や人の生き方、文
化もしくはサブカルチャーの社会的世界や、人
の価値観や生活を支える「コミュニティ」の在
り方といった問題を期せずして扱っていること
に気が付く。その意味では、時代の問題に敏感
な若い世代の問題提起をよく表していると考え
ている。
もし一言言わせてもらえるなら、就職活動の
さなかに仕上げている条件はわかるとしても、
どの卒業論文も、事例であげた地域に実際に足
を運んでもらいたかったという印象がある。も
ちろん、数度、現地を音連れた人もいるが、大
方の諸君は、文献購読ですませている。これが、
ある程度日数をかけ、現場で関係者の話を丹念
に聞き、自分の目で、その話のリアリティを眺
め、感じることができたら、もっと素晴らしい
論文になったことと思う。
それにしても、今年度のゼミ生諸君の場合は、
割合就職率もよく、社会での活躍を期待したい。
3
広田康生ゼミ
QOL 向上のための移動の
自由について
なぜ痩せたがる?
どうしたら痩せる?
~モビリティの意味から可能性を探る~
~現代の“やせ願望”要因と
様々なダイエット法~
HS22-0009D
笠木
俊太朗
私たちの日常生活には必ず「移動」という行為
が含まれている。
「移動」することで、生活必需品
や食料を手に入れ生活をより豊かなものにしてい
る。しかし、その反面マイカーの普及により逆に
移動の自由が失われている人々もいる現実もある。
それは高齢者や障害者、子供など交通弱者と言わ
れる人々である。交通弱者はマイカー主体の社会
では非常に弱い立場に置かれやすい。唯一の移動
手段である公共交通機関はマイカーの利用増によ
り衰退している地域が多い。日本の公共交通は日
本経済のバブル期以降(1990 年)から利用者が減
り始め、特に地方では都市部への人口流出による
過疎化や高齢化などにより公共交通、特にバス路
線の採算性は悪くなり各地で運行ルートの合理化
や人員削減が行われ、それにより公共交通機関が
ない空白地帯と呼ばれる地域が現れるようになっ
た。交通の空白地域は交通弱者にとっての死活問
題であると同時に、人々のなかで自由に移動する
ことができ、生活の質「Quality Of Life」(以下
QOL と略記)の向上が出来る人と満足に移動する
ことが出来ずに QOL が損なわれてしまう人と別れ
てしまうといった社会問題として捉える必要があ
る。空白地域における移動には、地域の人々によ
る助け合い、協力が必要不可欠である。移動の助
けをモビリティの補完性原理を用い、日本各地で
の事例をあげる。事例ではコミュニティバス、デ
マンド型交通、SP サービスを取り上げ、地域にお
ける移動の助け合いから地域の協力の重要性を論
じる。また、補完性原理による地域にもたらす作
用をクロスセクターベネフィットの理論とモビリ
ティマネジメントを使い説明し、結論では地域に
おける公共交通には地域の協力が最も重要である
として、終わりに論文から見えてきた今後の課題
を述べる。
4
HS22-0039C 上野 瞳
本論は“なぜ人は痩せたがるのか?”
“どうした
ら痩せられるのか?”という問題意識を切り口に
現代におけるダイエットについて論じている。
まず、
“なぜ人は痩せたがるのか”という近代の若
者の“やせ願望”“やせ思考”
“ダイエット現象”
を社会的観点から捉え分析している。若い女性を
中心に人々が痩せたがる要因とは何か。そのひと
つがマスメディアの影響である。現代社会ではマ
スメディアから発せられる情報やイメージが強く
“痩せている女性が美しい”という価値観を作り
出し、この価値観によって多くの人は痩せている
ことが正しいという認識するようになったのであ
る。
本論では先ず、現代うたわれているダイエット
はいつ誕生した社会現象なのか、人は何のために
ダイエットするようになったのか 1900 年前後の
歴史を辿り、ダイエットの語源・歴史からダイエ
ットとは何かを定義している。歴史をたどると
1900 年頃からアメリカ食の輸入やファーストフ
ードの発達で食文化は豊かになり、肥満の増加に
より治療目的でダイエットが行われたことがわか
った。食の変換機以降、痩せている方が良いとい
う風潮が生まれ、流行ファッションとの結びつき
がダイエットの新しい観点や概念を作り出したの
である。この考察を背景に、現在存在する無数の
ダイエットを類型化し、筆者自身が今までに体験
してきたダイエットの実体験の経験的評価も行っ
た。また新たなダイエットも実践し、現代のダイ
エットから見たダイエットの実態を分析する。こ
の章の最後では、さまざまなダイエット経験を経
て分った危険なダイエットがもたらす心の病「摂
食障害」に焦点をあて、過度なダイエットと健康
の関係についても述べる。最後に“なぜ人はダイ
エットをするのか”というテーマに沿い、ダイエ
ットは社会や人々にどのような影響を与えている
か、健康的なダイエットとは何か、ダイエットは
現代社会の何を表しているのかについてまとめる。
2013 年度 卒業論文要旨
男子の草食化から始まった
現代の若者の男女価値観
社会学的視点での現代ファッション
の様相と変化
~被服行動とジェンダーフリーに
視点を置いて~
HS22-0045G
野崎
莉奈
HS22-0060J
本論では、
若者の男女の価値観の変化について、
「草食系」及び「肉食系」等のキーワードを手が
かりにして考察していく。
「草食系男子」と「肉食
系女子」の意味、なぜこのような言葉が誕生し、
現代にどのような影響をもたらしているのかを分
析していく。他にも、現代の男女の特徴を表す言
葉にも注目しつつ、草食系男子とは何か、肉食系
女子とは何かを定義し、その恋愛観、安定志向の
ライフスタイル、家族志向のライフスタイルにつ
いて明らかにし、男子の草食化が進んだ歴史的経
緯や、現代のインターネットの普及とも絡めて考
察し、最後に若者の草食化がもたらす影響につい
て、まとめ考察していきたい。
第Ⅰ章では、草食系男子の特徴、肉食系女子の
誕生とその他の男女を表す言葉について、文献や
論文を元に論じていく。第Ⅱ章では、草食化がど
のように形成されたのかを、平和な国、戦後の教
育、女性の社会進出に焦点を当て、考察していく。
また、インターネットや携帯電話の普及にも焦点
を当てていく。第Ⅲ章では、現代の若者の草食化
が社会にもたらす影響について、データを元にし
て論じていく。
現代の日本の若者たちの間で創り出される、価
値観を表すさまざまな言葉。
その原点が「草食化」、
いわゆる「草食系男子」なのである。草食系男子
の出現により誕生した肉食系女子、またそこから
続く言葉の数々。草食化が進む若者たちの問題に
関しては、社会や周りの影響がとても強く関係し
ている。草食化の進む若者たちが、自ら新たな一
歩を踏み出すことはもちろん、一歩を踏み出すこ
とが出来る環境を作り上げることも大事なことな
のである。新たな価値観でもある草食化に若い世
代はもちろん、幅広い年齢の人々が目を向けてい
くことが大事であると筆者は考える。若者たちの
価値観を尊重し、マイナスだと感じられる部分は
社会や周りが手を差し伸べ、プラスに導いていけ
るような、
そんな社会を作り上げていって欲しい。
平林
健吾
現在のファッション業界を見てみるとスカート
男子というような矛盾にも思える言葉が生まれて
きている。しかし街中を見ているとそういった言
葉ができる以前から、本来異性の服装とされてき
たものを身に着け性差を越えてオシャレなもの、
いわゆるファッショナブルなものとして楽しんで
いるのだ。そこには被服行動における「逸脱性志
向」のような社会の流れ、ファッションの限界を
感じて打破しようとした人々の努力、世の中のジ
ェンダー化の流れなど様々な要因があるだろう。
本論文では「性役割観・ジェンダーフリー」
「印象
形成」
「サブカルチャー」という3つの概念を主軸
として展開していく。2 章では「ジェンダーフリ
ー」の社会的な意味での曖昧さを明確にし、カラ
ーランドセル・クリノリンドレス・水玉模様を具
体例とし「色・シルエット・柄」という 3 つの要
素からジェンダーフリーとファッションの関係性
を分析した。2-2 では被服が人間の心理に与える
影響として「印象形成」の概念を具体例にスーツ
を取り上げ説明・分析していく。3 章では音楽と
ファッションの関係性をジャンル・時代を軸にし
て分析し、さらに音楽をサブカルチャーとしてと
らえた時に音楽とファッションどちらにも深く関
係しているタトゥーについても分析していく。本
論文のもっとも重要なパートである4章では、実
際に近年のコレクションでジェンダーへの挑戦を
しているルックをピックアップし解説・分析して
いる。終わりに、衣服の持つ役割は人々の生活の
中で確実に変容しており、近年のファッション界
におけるジェンダーフリーの流れは一般社会のそ
れとは違い、ファッションは芸術であって、それ
でいて自己を表現するための一つの手段としての
ジェンダーフリー思想なのである。我々はもっと
身近にジェンダーフリーがあることを認識し、自
分なりの考えを持てるように理解しなければなら
ないのだ。
5
広田康生ゼミ
余暇(レジャー)の変化と食
欧州サッカーの動向に見る
ポストコロニアル状況について
―新しいサブカルチャーとしての食―
―アフリカ大陸から欧州への
移民選手の事例から―
HS22-0085B
星野
杏輔
近年、労働時間が短縮され、賃金も上がったこ
とによって人々の生活が豊かになり、時間的にも
金銭的にも、また心にもゆとりができてきた。そ
れにより、余暇を使いもっと生活を楽しみたい、
充実したものにしたいという考えが表出してきた
と思う。そうしてレジャーは発展を遂げてきた。
また、食事においてもそうであり、なかでも日本
のラーメンは世界各国で多大な評価を受け、日本
を訪れた外国人の多くがラーメンを食べている。
筆者はレジャーの 1 つである食、またその中でも
特にラーメンは一種のサブカルチャーとしての文
化をつくっていると言えるのではないかと考える。
そこで、現代のラーメンに焦点をあててレジャー
が新しいサブカルチャーを生み出している現実を
考察し、サブカルチャーとしての食の意味や役割
を本論で明らかにしていきたい。
第 2 章ではレジャーの定義と概念、時代におけ
る大まかなレジャーの変化を追った。第 3 章では
サブカルチャーの諸相をあげ、ラーメンを材料に
して食とサブカルチャーの関連について分析して
いった。
結論として、e いる、なくてはならない構成要素
となっている。また、デボラ・プラトンによれば
食べることはその食べ物に備わっている文化の価
値を自己に移すことだと説明している。これに沿
って考えると特定のラーメンを食べることによっ
て、それを食べない人との間で他者との差別化を
図り、同じサブカルチャーを持つ者同士で共通意
識を生みだすと思われる。これによって食のサブ
カルチャー化がさらに進むのではないだろうか。
6
HS22-0090H 及川 翔
本論文では欧州サッカー界において切り離すこと
の出来ない「移民」問題についてポストコロニア
ル状況を背景に考察した。サッカー選手はヨーロ
ッパに行くだけで高いサラリーをもらえる訳では
ない。彼らはプライベートや試合で差別を受ける
ことが度々ある。このような厳しい世界で成功す
る選手もいれば、安い賃金のせいでプロデビュー
する前に辞めていく選手もいる。それでも貧しい
母国にいる家族のために欧州に行き、稼ごうとす
るプレーヤーは増加していく一方である。この論
文では、アフリカのサッカー選手が欧州に移動し
た背景にある問題をポストコロニアル展開という
争点から、西アフリカのコートジヴォワール代表
と先に紹介した多国籍代表チームであるフランス
代表を例に挙げて考察した。そこから、選手が移
動する前と後に潜む問題点と世界のサッカーが迎
えるだろう未来を考えてみた。
この論文の主旨であるポストコロニアル的観点か
らサッカー界を見る事は、現在の欧州サッカーの
問題を浮き彫りにさせた。貧困・差別・生活など
多くの苦労に悪戦苦闘しながらアフリカの選手た
ちはヨーロッパの舞台で戦っている。私がこの論
文で伝えたいことは、自分たちとは遠い世界では
あるが人種の違いというだけで苦しんでいる人が
いる現実である。またサッカー界には暗く陽の当
らない面も無数にあるという事実を知った上でど
のような解決策があるのか考えていきたい。今後
のサッカー界は移民の選手なくしてはチームが成
り立たない状況が続いていくだろう。しかし、ど
んな人種だろうと歴史的に従属関係があろうと受
け入れる覚悟を持つことがグローバル化する社会
に不可欠であることだ。サッカーを通して世界が
一つになれると信じ、差別が起こらない世の中に
なればと思う。途方もないことのようだが、本文
で挙げたコートジヴォワールの様にサッカーで国
が一つになるという奇跡が世界を変えるというこ
とは不可能なことではない。
2013 年度 卒業論文要旨
スティグマの社会学から見る
ひきこもり再考
大都市郊外における
観光・アートによる街づくり
~調布市仙川の A ストリートを事例にして~
HS22-0108A
桐山
HS22-0168J
豪史
本論は現代社会におけるひきこもりという現象
およびひきこもっている人たちを研究の対象にし
ている。彼らの実態を知ることは難しく、また、
彼らを定義する「ひきこもり」という言葉は、そ
の定義が曖昧であり彼らの実態を把握するには代
わりとなる定義が必要だと私は考えた。そこで、
ゴフマンの『スティグマの社会学』から「スティ
グマ」
を持つ人々という考えを引用した。
彼らは、
普通の人が負っている社会的役割と異なり、ステ
ィグマを持つ故の不遇な役割を社会から背負わさ
れており、ゴフマンは、この役割を充分に果たす
ことで彼らは社会の中で一人前の人間として扱わ
れると考える。その役割とは、スティグマを持つ
人と普通の人との間の意思疎通の方法であったり、
仲間の作り方、人との距離の取り方であったりす
る。ひきこもりの人たちもこれとどうようなひと
たちであると私は考えている。彼らも社会から負
の役割・立場を付与され、これまでになかった普
通の人たちとの意思疎通の方法や人との距離の方
法を学ばなくてならなくなったと考えられる。こ
の定義を用いることで、ひきこもりのこれまでの
疑問点、説明されてこなかった曖昧な部分をいく
つか説明できるのではないかと私は考えている。
本論文の構成は、第一章が現代のひきこもりの情
報を載せ、身近に感じてこなかった人にもひきこ
もりの問題を知ってもらいたいと考えた。第二章
はゴフマンの『スティグマの社会学』であり、ス
ティグマを持つ人がどのように社会に適応してい
ったかを記述していく。第三章ではゴフマンの考
えを基に、現代のひきこもりの実態を分析してい
く。主にひきこもりはどのような過程を経るのか、
どのような可能性に至るのかを考える。
第四章は、
第三節においてスティグマを基にしたひきこもる
人たちの定義を記述する。そして、第二節、第三
節において、この定義をから見えてくるひきこも
りの疑問点や実態をいくつか説明する。
7
本多
文佳
本論では都市における地域活性化について考え
ていく。理由は、地方都市での町づくりに直接触
れることにより、身近に行われている地域活性化
について興味を持ち始めた。地域活性化と聞くと
地方都市のイメージが強いが、都市での実態につ
いて実際に見て感じてみたいと思ったからである。
本論では、調布市仙川に焦点をあてる。同市が景
観を大切にして、芸術による街づくりを行ってい
ることを知り、有名な観光地とは言えないが、訪
れてみる価値のある場所だと感じたからである。
都市における、
街づくりの形はさまざまであるが、
観光とアートに焦点をあてて調布市仙川を事例に
あげて地域活性化を考えたい。美術作品で街を演
出し芸術文化的な興味でひきつけるのが、活性へ
繋がる方法ではないだろうか。その芸術文化を利
用したまちづくりを行っている調布市仙川を事例
にあげて考える。観光まちづくりにおいて重要で
ある、魅了と持続性を兼備した芸術空間として、
世界的建築家である、安藤忠雄が設計した「安藤
ストリート」、美術館、ギャラリーが仙川にはある。
2007 年に都市計画道路を挟んで統一感のある 5
棟の安藤作品が完成した。目指していた統一感の
ある街並みの一部が現実となった。低層で緑あふ
れる良好な生活空間に、文化にふれることができ
る、思い描いた以上に贅沢な空間が実現したので
ある。世界中から建築家を志す学生や安藤忠雄の
作品を愛する人が仙川を訪れるようになった。
「京
都など古い時代を別にすれば、世界に自慢できる
街並みが日本にはなく、今回の取り組みは都市計
画のあり方を考える上で貴重な実践例となる。」と
伊藤容子は述べた(東京新聞 2005)。世界に誇れ
る都市型の観光資源になるはずである。
二つの視点に共通して言えることは、街全体で
地域活性化を目指し、便利性を求めるだけでなく、
住民たちの誇りとなるような街をつくることが重
要であることがわかった。住民たちが住み続けた
いと思う気持ちが街を活性化させ、人を呼び持続
可能な観光資源を創り出すのではないだろうか。
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