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Bulletin2月号PDFファイル
Bulletin
199
2007 年 2 月号
平成 3 年 4 月16日第三種郵便物許可 平成19 年 2 月15日発行(隔月15日発行) 第 20 巻 第 6 号 通巻 199 号
ランドスケープアーキテクトを
味方につけませんか
国際感覚を高めていこう
ウエガイト建築設計事務所
高野文彰 氏 4–5
「都市への眼差し」から導き出される
小美野 聡氏 10–11
「都市開発の戦略」
上垣内 伸一 3
建築を五感で体得した旅
エムズワークス一級建築士事務所 松永 基
期待して
6
●こだわりのディテール
子どもの福祉環境をみつめる教育プログラム
月田みづえ氏 12–13
連載− 2
札幌の持つ「生活スタイル」をカタチに
森田敏昭 氏 2
光を透過して輝く間仕切り
建築相談偶感
インターセクション
高木 恒英
8
OFFICE FUKUDA
福田 紘一
9
「保存問題」の現在(いま)を問う
顧客支援システムより
久米設計
松枝建築計画研究所
野中 茂
14
松枝 雅子
15
林 正樹
16
上浪 寛
17
戸谷 正夫
18
久保 宏二
19
●アーバントリップ
ミッチリと研修した一日
林正樹建築設計事務所
●アーキテクツ・ガーデン2006建築祭報告
「元気な建築・安全な社会」
構想建築設計研究所
●地域会だより――埼玉地域会
熱い人々の繋がり
戸谷正夫建築設計事務所
●交流
建築仕上塗材の可能性を求めて
エスケー化研
選挙公報
20
●こんな本を読みました
『住まいと家族をめぐる物語』西川祐子著(集英社新書)
RABBITSON一級建築士事務所 倉島 和弥
編集後記
社団法人 日本建築家協会
The Japan Institute of Architects
関東・甲信越支部
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-3-18 JIA館
Tel: 03-3408-8291 Fax: 03-3408-8294
23
23
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
連
載
︱
2
札幌の持つ「生活スタイル」を
カタチに
森田 敏昭 氏
この連載は、建築以外のさまざまな分野の方々に建築あるいは
町さらには都市について語っていただくコーナーです。会員の
皆様も、ふだん接しておられる施主などからさまざまな建築談
義をお聞きされていることと思いますが、私たちの視野がさら
に広がることを願っています。第二弾です。
(櫻田修三)
形状や素材が重厚で大掛かりなものだ。これを自宅で使
用するとなれば、ドアの幅などの改修が必要となる。ま
た、生活空間に医療機器がポツンと置いてあるようで、
決して心地のよいものではない。そこで、札幌の高齢者
がおしゃれで豊かな生活スタイルが生み出されることを
京生活が長かった私が、ちょうど7年前の今頃に恩
東 師からオファーがあり、札幌で仕事をすることにな
った。この間に学校教育と平行して、札幌市の産業振興
願って、開発したいわゆる「歩行を補うワゴン」だ 。
( 2 0 0 5 グッドデザイン賞、J I D 賞ビエンナーレ佳作、北海道グッドデ
ザインコンペティション 2005 大賞)
に携わり、産学官連携による様々な研究開発に取り組ん
照明
できた。ここで皆さんにその研究活動内容の一部を紹介
北海道の透き通った風と流
させていただきながら、私がカタチにした札幌の持つ
れる雲をイメージする照明器
「生活スタイル」を紹介したい。
具だ。和・洋風に関わらずそ
住まい
の部屋のイメージにマッチす
定年を前にしたご夫婦が、
る色調と質感に開発した。シェードは北海道産材の「樺」
これからの人生を謳歌するた
の単版に和紙を張り合わせる特殊な加工を施し、それを
めの住宅を設計した。もちろ
「メビウスの環」のようにつなぎ合わせたシンプルな機
ん積雪寒冷地住宅を手がけた
構に仕上げた。このシェードに光が透過するとしなやか
のは初めての経験だ。いかに
な木目の美しさが浮き出され、長くて寒い札幌の冬を彩
して、札幌の四季をくらしの
らせてくれる照明器具だ。(2006 グッドデザイン賞)
中に取り入れ、生活のなかで
季節の移り変わりを満喫して
私は慌しい東京からゆったりとした札幌に足を踏み入れ
もらえるかと考えて、「中庭」方式を採用した。これに
てから、ここに「住んでいる人」や「暮らしの生活」そ
より、近隣の目を意識せず、朝夕そして四季を問わず丸
して「そこから生まれている知恵や技術」に着目するこ
ごと自然を楽しむことを可能にした。寒冷地では馴染み
とができた。札幌に限らず地方都市には各々歴史や文化
の薄い「中庭」住宅こそ、札幌の気候風土に合った住宅
を含めた独自の環境があり、それに伴う生活スタイルが
様式ではないかと考える。が、寒さ対策にかかる設備と
ある。その生活空間の中からその土地土地に根づいた生
維持管理費用は想像を絶する。
活スタイルが構築されるのではないかと思っている。
家具
〈札幌市立高等専門学校工業デザイン助教授/プロダクトデザイナー〉
「地域の特性」と「高齢化社
会」をキーワードに、木製の
森田 敏昭 氏 プロフィール
室内用歩行器を商品開発し、
1962
在宅高齢者のおしゃれなライ
京都生まれ
1984-86 京都芸術短期大学専攻科卒業
1986-90 黒川雅之建築設計事務所在籍
フスタイルを提案した。従来
1991
(有)L.I.C.設立
の歩行器は、病院などで使用
2000-
札幌市立高等専門学校専任講師就任
するように作られているため、
2
現在 同校専任助教授
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
広
報
か
ら
●アルカシア北京大会報告
国際感覚を高めていこう
アジア地域の建築家の大会
ウエガイト
上垣内 伸一
人的には中国は昨年の上海に続いて2度目で、北京
個 は初体験だ。今回の北京訪問は、アルカシア大会に
驚かれた。他方、大会で発表されたり配布された建築を
参加して国際大会の雰囲気を体感することを一番の目的
見ると、平均レベルの質は、日本は非常に高いのだとい
としつつ、大国中国の古都の深みを体験した旅でもあっ
うことを再認識した。こういう国際的な場にどんどん出
た。
て行って、活躍の場自体を国内から拡大することで自信
ARCASIA(Architect's
Regional Council of Asia) とは、
本では建築家はハイソサエティではないのか?と素朴に
を深めていくことも重要なのではないかと思う。個人的
アジア地域の建築家の社会的な認知度を深め相互のレベ
な希望としては、不用意に国力みたいなものを持ち出さ
ルアップを促進すること、そして友好を深めることを目
ず、能力で勝負できる人にお願いしたいことだが。
的に設立された各国建築家団体の評議会で、公式 HP に
最後に北京に滞在した印
よると現在 17 国の建築家協会で構成されている。アル
象について。筆者たちが期
カシア大会は隔年で所属国の都市で開かれ、今年その大
間中滞在したのは、四合院
会が北京で開催されるというので、発足したての関東甲
を改修したホテルで、これ
信越支部 UIA 準備委員を中心とした有志 10 数名に混ざ
が非常に快適だった。北京
っての中国訪問となった。
の市街は、この5年間で3
滞在したホテル「呂松園」の中庭
このような国際的な大会は初体験だったので他と比較
倍に膨れあがった自動車の
することは難しいが、2つほど興味深い点が感じられた。
ために非常に慢性的な渋滞で、それに加えてオリンピッ
一つは学生の国際交流の舞台でもあるということ。バン
ク目指して町中に溢れる建設現場の発生粉塵で非常に空
グラデシュに至っては 1 0 0 人ほど学生参加があったと
気環境が悪く騒音も激しい。にもかかわらず四合院の中
聞いた。この学生の参加、Student Jamboreeというの
庭にいると、そういう事々が嘘のように静寂で見上げる
が、大会をつうじて重要な催しの一つであったことを終
空も非常に気持ちよいのだ。通常の道路の巨大なスケー
盤に知った。建築家同士の交流以上に、学生間の交流の
ルに比して、小型バスも入ってこられない胡同のこぢん
ほうが盛大だったようにすら思われたが、日本からはあ
まり感が、人間くさい営みを包容していて、またとても
まり大勢参加していなかったのが残念だった。アルカシ
良かった。この四合院と胡同で構成されたまちが、都市
ア自体があまり認知度が高くないからか、そこで学生の
化と高密化の波に大きく飲み込まれて瓦解しつつあると
交流がこれほど重視されていることも恐らく知られてい
いうのは、とても残念なことだ。中心街の近代的な建築
ないのだろうか。5 年後の U I A 東京大会でホスト国と
群がお世辞にも立派なつくりとは思えないだけに、その
しての人材育成を考えれば、このような国際的な場に
行き着く先は余計気になる。
JIA が学生を多く送り込むのが結構効果的ではないかと、
ふと思った。学生は交流のハードルが低い。
ともあれ、このアルカシアも来年はスリランカでフォ
ーラムがあり、 2008 年には韓国釜山で大会が開かれる
予定だ。たまの機会に国際感覚に自分をリセットして、
もう一つは参加各国のア
ーキテクトの社会的地位の
日々の業務の質を高めていくのも宜しいのではないだろ
差異が如実にでたことと、
うか。
一方で設計レベルのギャッ
最後にこのツアーの団長で関東甲信越支部長である伊
プを強く感じたこと。バン
平さんを始め、お世話になった皆様にこの場を借りてお
グラデシュの学生にも、日
ウェルカムパーティでの日本団
礼申し上げます。
〈(有)ウエガイト建築設計事務所〉
3
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
仕
事
ランドスケープアーキテクトを
味方につけませんか
北海道・十勝の新築プロジェクトから
達が東京を離れて北海道十
私 勝の音更町で公民館として
ランドスケープ
アーキテクト
高野 文彰 氏
でした。
社屋って何だろう?
使われている、旧チンネル小学
高橋社長と議論を重ねてゆく中で、社屋は単に社員が
校に活動の拠点を移して早くも
働き、お金を稼ぎだす器ではなく、会社の精神や哲学を
17年になります。
表現できる場であると考えるに至りました。
校庭に作る 1/10 の模型でのデザ
思えば 20 世紀の建設会社は、北海道の開拓の先兵と
インの検討、全国から集まる学生
して森を切り開き、土を動かし、湿地を埋めてきた。し
達とのワークキャ
かしながら 21 世紀は人の営みと環境の融合を考える建
ンプ、地域の人た
設業のありかたを目指し、まず自らの社屋でその精神を
ちとの祭り、森と
象徴しようとの結論に至った。人工物と自然の融合は土
の関わり、愛馬との障害飛越競技の選手
に覆われ森に包まれた社屋で表現された。なお、建築は
生活、北海道での生活は想像していた以
象設計集団にお願いし、共にデザインを進めました。
上に楽しい日々です。
建築家とランドスケープアーキテクトは近い存在であり
ながら、なかなか一緒に腕を振るえる機会に恵まれてい
ない。プロジェクトの初期段階から一緒にプロジェクト
を進めることによって広がる可能性について、十勝で実
施した高橋建設社屋、新築プロジェクトを交えてご紹介
いたします。
庭と建築が同じ重みで
神戸大震災の直後、北海道の十勝を代表する高橋建設
の高橋大介社長より電話が入った。地震に強い社屋にし
社屋は誰のもの?
たいので、新たな社屋建設に協力して欲しいとの話であ
高橋建設社屋建設のプロジェクトは、社長とお抱えの
った。会社を訪れ話を進めて行くと、いくつもの驚きが
デザイナーとの間だけで決定されていくものではなく、
ありました。
そこで働く社員一人ひとりの思いがこもったものであり
「事業費はどのぐらいでお考えですか?」との問いに、
たいという考えのもと、全社員参加のもとでワークショ
「建築と庭の工事予算は同額です」と答えられた。通常、
ップ、アイデアコンペ,等を行った。その中からのアイ
庭の工事費は建築工事の2割から5割程度の場合が多く、
デアは次に示され、デザインの構成の大きな力となりま
外部空間や庭と建物を同じ重みを持って臨んでおられる
した。
ことは極めてまれで、さらに敷地の周りにはフェンス、
「緑に囲まれ、訪問客が驚くような庭」、「十勝の日照
垣根などは考えておられず、地域に広く開けたものとし
を採り入れる明るい社屋」、「庭の景色を見てリフレッシ
たいなど、プロジェクトのスタートから人物の大きさ、
ュできる」、「会社に見えない会社」、
「四季折々の草花や
環境に対する確かな価値観を感じ、身の引き締まる思い
樹木」、「自由に活動できる芝生、野外パーティ、休日は
4
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
仕
事
家族で遊びにきたくな
る」、「濃い常緑樹と芝生
のコントラスト」、「自然
式」、「芝生に起伏を出し
距離感や変化を付ける」、「歩いて景観が見えるように、
駐車場から玄関まで少し遠くする」、「実のなる木」
、「既
存樹を生かす」、「敷地の西側を高くし、東へと水を流す
ことにより、日高山脈、十勝平野を流れる河川をイメー
記念と感謝の宴を開きました。その際、高橋大介社長に
ジ、」「土木部はフリーアドレス制」などなどが続出、し
とても印象に残るご挨拶をいただいたので、ここにご紹
ました。
介します。
さて、ここまでは、「参加者の創意」を引き出し、ま
「高野さんたちと象さんたちは、両社とも粘りに粘
た発言の間にある「欲求」を拾ってくる過程でした。そ
ってデザインを進めるので、私のような即断即決を
の後はこれらをまとめて「参加者が想いを環境、空間、
旨とする者にとっては苦痛な時もありました。
形にして提示する」設計段階へ進み、我々デザイナーの
大きな正念場を迎えるのでした。
「風水」四神相応の地学、四つの庭
我々はここ 2 0 年来、台湾にも支社を置き,「風水」
に触れる機会を得ております。
風水では、明快な地形の骨格を持ち、あたかも肘掛け
1社と付き合うだけでも大変なのに2社と付き合
うのは余程の忍耐力がないと勤まりません。2社と
付き合うことによって苦しみは3倍となりました。
でも仕事が終わり、社屋が完成してみると歓びは、
十倍になって戻ってきました。」
一緒にやりませんか!
!
があり、背もたれのしっかりした椅子にゆったりと座す
コンセプトを共有しビジョンの組み立てから一緒にス
るような地形を持ってよしとされています。また玄武、
タート、最初から取り組むことにより可能性が広がり、
白虎、青龍、朱雀の四つの生き物の神々に護られた土地
建築の魅力アップにつながります。クライアントに対し
は、四神相応の地として、「気」に満ちたエネルギーあ
て、数社の建築家がアプローチしているケースは多々あ
ふれる土地とされてきました。
りますが、ランドスケープアーキテクトと組んでいるチ
その視点で十勝を見ると北に玄武の大雪山系、西に白
虎の日高山脈、東に青龍の白糠丘陵、南に朱雀の太平洋
と、まさに風水上、格好の地であるといえ、高橋建設の
敷地は、まさにその中心に存在しています。
平坦な敷地に変化を持たせる地形を創るにあたり、こ
の十勝平野を取り囲む地形を凝縮する形でデザインに反
ームは、建築家単体より幅の広い可能性をクライアント
に提案できます。
そして出来た物や空間の魅力は数倍になり、緑と一体
の建築は時と共に魅力が増してゆきます。
私達は一緒に可能性を広げる機会を共有できることを
望んでおります。
映させ、気に満ちた四神相応の地を骨格とし、また四神
を象徴する、東、西、南、北に性格の異なった四つの庭
どうぞお気軽にご連絡ください。
を配することにしました。
http://www.tlp.co.jp/
歓びは、十倍になって戻ってきました
移住して 1 0 年目を迎えた時、地域の方々を招いて、
E-mail: [email protected]/
〈高野ランドスケーププランニング(株) 代表取締役〉
5
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
海
外
リ
ポ
ー
ト
建築を五感で体得した旅
ハンガリー・クロアチア・スロベニアを訪ねて―― 2006年秋
松永 基
ーロッパをレンタカーで旅をしていると中世の旅人
ヨ のような感覚がする。もちろん、当時より移動速度
さて、前置きが長くなった。今回の旅で印象に残った
いくつかの街について触れてみよう。
は何倍にもなっているが、丘を超え森の向こうに次の村
ハンガリー/ブダペスト
や街が見えてくる。ある街は城壁の跡を残し、ある街は
ブダベストはウイーン、プラハと共に 19 世紀から 20
遠くから聖堂の鐘楼が見え、ある村は丘の頂に古城があ
世紀初頭にかけてハプスブルグ帝国として栄えた帝都だ。
り、村のはずれに小さなチャペルがある。海に城壁が張
やや、天気のせいか、その2つの街よりは全体にグレー
りだし、ローマ時代の遺跡がある。そんな街や村をいく
な印象を受けた。それでも、大きな彫刻の付いたファサ
つも通過したり、立ち寄ったりした。
ードや、鋳鉄製の手摺、石積
今回の旅ではまずブダペストに入り、レンタカーでク
に帝都の面影を残している。
ロアチアのザグレブ、ポレチェ、プーラ、スロベニアの
世紀末の建築家、レヒネ
ポストイナ、首都リュブリャーノ、プトゥイ、多くの街
ル・エデン (1845-1914)の名
を訪ねた。そして、旅の目的は「ヨーロッパらしさの再
前は日本ではあまり知られて
発見」ではないかとも思う。もちろん、昨今のパリだっ
いないが、装飾工芸博物館
てロンドンだってヨーロッパの今日であるし、ヨーロッ
(1896-99)、郵便貯金局 (1899-
パの中心である。ただ、スペインの地方都市や、プラハ
1 9 0 1 )、などは、ゼセッショ
やハンガリー、クロアチアだってヨーロッパなのである。
ン・アール・ヌーボーの影響
むしろ、ユーロ圏の周辺にこそヨーロッパの本質がある
が濃く、その中に色彩豊かな
のではないか? もっとも、それはユーロが値上がりし
タイル、陶磁器がちりばめら
てしまってパリには近づけない、貧乏旅行者の負け惜し
れ素敵な建築だ。特に装飾工
みにすぎないかもしれないが。
芸博物館のエントランスのタ
2000 年にプラハ、ウィーン、ベェネチアと旅をして
郵便貯金局
イルは、タイルというより陶
以来の中欧である。今回の地域は一概に東欧とはいえな
器の工芸品といった趣である。
い地域である。地図を広げてみると分かるのだが、ブダ
手摺も大型の陶器で作られて
ペストはほとんどヨーロッパの中央にあたる。ましてや、
いて、艶やかな色彩を誇って
カトリックの国であるクロアチア、そしてスロベニアも
いる。ちなみに、装飾工芸博
カトリックの人口の方が多い国である。 2 0 代のころ、
物館の左手に椅子に座った建
イタリアからギリシャに渡った。鉄道だと、旧ユーゴス
築家の銅像がある。
ラビアを通るのだが、何故かその地方にはユーゴの情勢
ドナウ河と国会議事堂
装飾工芸博物館手摺
国立オペラ座 (1 8 8 4) /ミクロシュ・イブル設計は、
がそれほど乱れてはいなくても、足を踏み入れてはいけ
オペラ座の典型のような建築で、ルネッサンス様式。荘
ないと思っていた。おそらく、当時(20 年前)のバッ
厳である。特記すべきは、インテ
クパッカーの間には暗黙の了解があったのだろう? 僕
リアでシャンデリアが中央から下
もイタリアの踵にあたる、プリデンシィの港からフェリ
がり、バルコニーには女神の彫刻
ーでギリシャに渡った、その証拠にそのフェリーには多
が施され、金色に輝く豪華なホー
くのバックパッカーや、ユーレイルパスの旅行者が乗っ
ルとなっている。パリのオペラ座、
ていた。そのなんとなく行ってはいけない地域もベルリ
ウィーン国立歌劇場よりもすご
ンの壁の崩壊、 1989 のビロード革命、旧ユーゴの解体
い!と感じた。今回はバレエー
以降どんどん減ってきた。
6
ブダペスト・オペラ劇場
『うたかたの恋』(ウィーンの王子
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
様が堕ちていくお話)ハンガリー作曲家の作品で、なぜ
街は小高い丘に向かって伸び、丘の上にはマルコ教会が
かこの街はウィーンと比較してしまう。
ある。この構成は中世都市の典型といえる。建築スタイ
その他、国会議事堂、国立博物館、鎖橋、王宮、名も
ない建築は 1 8 世紀− 2 0 世紀初頭のものも多く、散歩
ルも豊富で、ロマネスクからバロック、新古典主義まで
様々だ。
していても飽きない。温泉やスケート場、動物園までも
ポレチェ・プーラ
が古典的なモチーフで出来ている――もっとも、それら
アドレア海沿いに発展した都市で、ビザンツ帝国以来、
も 19 世紀の建物が多いのだが。ドナウ河の両側に世紀
海上貿易で栄えた。ローマ時代の遺跡が多く、円形劇場
末の繁栄を今も残している。実は、旅の当初ついたばか
の跡地、凱旋門、ローマ時代の教会などが今も時の移り
りのブダペストの印象はあまりよくなかったが、ハンガ
変わりを感じさせる。
リーの田舎、クロアチア、スロベニアと旅をしてきた後
スロベニア/リュブリャーノ
のブダペストの印象は違っていた。「都会」「大きな町」
スロベニアの首都の名前をすぐに揚げられる人はよっ
という印象に変わっていた。パリやミラノから受ける印
象と同じようなものだった。
ぽどの地理に得意な人だろう。
僕はスロベニアの正確な位置すらあやふやだった。山
初めて建物の高さと道路の広さ――もちろん 19 世紀
と湖、そしてわずかな海岸線、四国と同じ大きさの国…
にはその骨格が出来上がっていた――のバランスの良さ、
…、その程度の知識でスロベニアに入った。言葉は何
実際建物は中層が多く、道路も広さを感じた。
語? 貨幣は? 来年からユーロに入るため、何処でも
クロアチア
ユーロは使えるが、やはり通過は現地のものに限る。…
クロアチアは左手で指鉄砲を作ったその平たい部分の
…ちなみにスロベニアはトラール、クロアチアはクーナ、
ような形をしている。親指の上がハンガリー、ブダペス
ハンガリーはフォリントです。
ト方面。人指し指の上がボスニア? その下がアドレア
「若い子が多い!!」スロベニアの首都リュブリャー
海だ。中央にザグレブ、人指し指の先のあたりにクロア
ノに入った時の第一印象だ。街は小さな川――本当にド
チで一番のリゾート、ドブロニクがある。今回、ドブロ
ナウとかモルダウの河に比べると小さい――沿いに発展
ブニクにレンタカーで行くと、Dead endになってしま
している。竜の橋。3本橋――指で3を表わしたように、
い、どうしても周遊が無理。距離からしても戻るのも無
一点から3本の橋が放射線状に出ている――など名所も
理。そこでドブロニクはあきらめて、ザグレブ、ポレチ
多い。中央広場に行くと、ここも若者が多い。東京の高
ェ、プーラと回ることにした。
田馬場の駅前だってこんなにはいないだろうっと思うく
ザグレブ
らい若者が闊歩している。そして、若者の顔が明るい。
レンタカーで国境を越える。少し緊張してしまうが、
女の子はおしゃれで綺麗だ。イタリアの隣国でとても旧
なにごともなく入国。広い河を渡るとクロアチアだ。田
東側諸国のイメージはない。スロベニアがヨーロッパ一
舎から田舎に入ったため、街や道路の印象はあまり変わ
の経済成長をしていることを何故か納得してしまう。ホ
らない。
テルでも、ハンガリー、クロアチアでは目立たなかった
2時間程度一般道のドライブでサグレブに入る。整っ
バックパッカーが目につく――しかし、昨今のバックパ
た顔立ちのイタリアの町といった風情。駅から真っ直ぐ
ッカーはガラガラとスーツケースを引きオシャレだ。中
に広い緑地のあるドミスラフ広場がつきあたるあたりか
世都市の典型で丘の上には古城があり、今では博物館と
ら旧市街が始まる。旧市街の広場は活気に溢れ、トマム
なっていてスロベニアの歴史を見られる。
のデコレーションも美しい。このあたりが、近年めざま
しい経済発展をしている国の首都といった感じがする。
旅をして思うことは、建築を造ることは建築を見ること
の上に成り立っているということだ。街にいて、その街
の空気を吸う。建築を写真で見るのではなく、五感で感
じることだ、その土地の旨いものを食し、石畳に立ち、
その街の歴史を感じる。これからも、まだ見ぬ国、まだ
聞いたことのない風の音、まだ食したこのない旨いもの、
まだ感じていない空間を求めて旅に出たいと思う。
ポレチェ広場
プーラ円形劇場
〈エムズワークス一級建築士事務所〉
7
海
外
リ
ポ
ー
ト
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
こ
だ
わ
り
の
デ
ィ
テ
ー
ル
光を透過して輝く間仕切り
太田の家
高木 恒英
仕切りが必要だが壁にはしたくない、
間 柔らかく仕切りたい場合があります。
さらにガラスで透けることもかなわない
場合……。ここでは、構造体の鉄骨柱や
ブレースを内包し柔らかく光を透過する
壁を考えました。
使用している材料は、厚さ6 mm の乳
白の中空ポリカーボネートシート。これ
を柱の両側に張り、出入り口も天井いっ
ぱいまでの同様のシートを用いた引き戸
にしています。壁と引き戸の幅は同寸法
で、3ヶ所の引き戸をすべて引き込むと3
枚の壁だけが残るかたちになります。
昼間は和室の障子のように外の光を柔
らかく透過して、夜は行燈のように全体
が輝きます。
8
〈(株)インターセクション〉
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
の
さ
い
の
相
談
者
の
安
堵
の
表
情
は
、
仮
に
解
決
に
は
ま
だ
至
ら
以
後
交
渉
の
経
過
で
、
出
来
高
精
算
と
い
う
こ
と
と
な
り
、
精
︿
O
F
F
I
C
E
F
U
K
U
D
A
﹀
は
な
れ
な
い
時
間
が
経
過
す
る
。
く
て
は
な
ら
な
い
。
相
談
者
の
期
待
感
大
で
あ
り
精
神
穏
や
か
に
で
、
応
対
す
る
相
談
員
は
、
ま
ず
は
冷
静
に
事
態
の
分
析
を
し
な
事
で
疲
弊
す
る
。
そ
ん
な
背
景
を
携
え
て
窓
口
に
来
ら
れ
る
わ
け
し
て
混
乱
し
、
戸
惑
う
。
怒
り
が
湧
い
て
く
る
、
先
方
と
の
交
渉
工
事
契
約
締
結
。
着
工
の
運
び
と
な
る
。
工
事
例
見
学
な
ど
に
よ
り
設
計
者
紹
介
の
施
工
会
社
を
決
定
し
、
工
事
会
社
は
、
他
社
と
の
比
較
を
し
て
経
歴
、
内
容
、
ま
た
施
ル
相
談
で
あ
る
。
に
書
か
れ
て
い
る
よ
う
に
、
建
築
相
談
の
内
容
の
多
く
は
ト
ラ
ブ
昨
年
、
こ
の
欄
で
、
関
洋
之
室
長
の
﹁
本
当
は
怖
い
建
築
の
相
談
﹂
て
掲
げ
て
み
る
。
あ
く
ま
で
窓
口
で
の
相
談
者
側
か
ら
の
話
の
記
な
か
っ
た
も
の
だ
が
、
設
計
監
理
者
が
関
与
し
て
い
る
事
例
と
し
で
は
な
い
か
と
、
恐
怖
に
駆
ら
れ
る
。
相
談
者
の
心
中
は
、
計
り
そ
れ
が
仕
上
工
事
上
の
不
具
合
に
よ
る
物
で
も
、
耐
震
強
度
不
足
い
。
例
え
ば
木
造
三
階
建
て
住
宅
の
外
壁
に
ク
ラ
ッ
ク
が
発
生
し
で
、
相
談
者
の
漠
然
と
し
た
不
安
感
を
払
拭
で
き
る
可
能
性
は
高
っ
た
対
応
を
説
明
し
、
技
術
的
な
疑
問
点
へ
の
回
答
を
示
す
こ
と
し
か
し
工
事
上
な
ど
の
相
談
の
場
合
に
は
、
あ
る
コ
ー
ス
に
沿
に
依
頼
し
て
交
渉
開
始
。
工
事
中
断
。
者
は
弁
護
士
を
立
て
て
反
論
。
相
談
者
も
設
計
者
紹
介
の
弁
護
士
相
談
者
は
捺
印
の
上
、
施
工
者
に
通
知
し
た
。
当
然
な
が
ら
施
工
会
社
に
対
し
て
、
契
約
解
除
の
申
し
入
れ
を
す
る
よ
う
話
が
あ
り
、
を
す
る
よ
う
な
事
態
が
生
じ
た
。
こ
の
時
点
で
設
計
者
よ
り
工
事
相
次
ぎ
、
そ
の
都
度
、
指
示
に
よ
り
施
工
者
は
対
処
、
補
修
な
ど
切
、
型
枠
の
存
置
期
間
を
守
ら
な
い
な
ど
設
計
者
か
ら
の
指
摘
が
く
さ
れ
る
︵
台
直
し
︶
、
コ
ン
ク
リ
ー
ト
打
設
後
の
養
生
の
不
適
ん
で
行
く
、
あ
る
種
の
哀
し
み
を
伴
い
な
が
ら
。
か
っ
た
の
か
。
自
問
自
答
の
呟
き
の
世
界
へ
と
い
つ
し
か
入
り
込
晴
れ
て
完
成
、
夢
の
実
現
と
な
る
は
ず
が
ど
う
し
て
そ
う
な
ら
な
せ
た
蜜
月
の
日
々
が
あ
り
、
工
事
中
も
期
待
感
に
満
ち
て
見
守
り
、
設
計
者
と
の
出
会
い
が
あ
り
、
完
成
後
の
イ
メ
ー
ジ
を
膨
ら
ま
な
っ
て
し
ま
っ
た
。
相
談
者
一
家
の
混
乱
、
疲
労
度
は
高
い
。
施
工
者
で
も
な
く
結
局
の
と
こ
ろ
ど
う
し
て
良
い
か
わ
か
ら
な
く
損 に で 建 談 た 積 け し 異 算
の 出 あ し っ 会 合
今 こ の り い た 社 い 以 害 今 各 具 者 道 極 さ て 議 書
回 と 時 、 図 こ の は 上 は 回 々 、 が 路 的 せ は を が
の 。 、 そ 面 と 施 な の 自 の が 設 費 の に る 多 唱 施
場
き う の な 工 く 経 分 事 仮 備 用 復 な わ 少 え 工
合
ち い 要 ど 事 、 緯 が 態 住 機 を 旧 っ け の 、 者
ん え 求 が 例 第 の 責 を ま 器 負 工 て に 割 交 か
、
対
と ば を 判 で 三 間 任 招 い 類 担 事 く は り 渉 ら
象
し 相 し 明 あ 者 に を い 中 の し を れ い 増 が 提
は
た 談 た 。 っ を 、 と た 、 請 て 近 な か し 進 出
設
図 者 が ま た 介 設 る 責 家 求 す 隣 い な は ま さ
計
面 も 設 た は し 計 旨 任 賃 が ま に 。 い 覚 な れ
者
で 見 計 施 ず て 者 の を の 個 せ 迷 そ と 悟 く た
で
説 積 者 工 の の は 誓 問 積 別 て 惑 の 言 の な が
は
明 り か 者 建 紹 今 約 い み に い を 間 い 上 っ 、
な
は 依 ら か 物 介 回 書 つ 重 出 る か 工 張 な て 設
く
受 頼 の ら は で の を め ね て 。 け 事 る の し 計
、
け の 提 の 実 あ 施 と 、 も く ま な 中 。 だ ま 者
弁
て 時 出 反 は っ 工 り 相 大 る た い に 弁 が っ が
護
い 、 が 論 そ た 会 つ 談 き 。 、 よ 傷 護 、 た 金
士
な 確 な の う こ 社 け 者 い 三 発 う め 士 設 。 額
で
か 認 か 中 で と と た が 。 世 注 に て も 計 相 に
も
っ 申 っ に は 、 の 。 被 設 帯 済 と し あ 者 談 対
な
っ 計 住 み ま ま は 者 し
た 請 た 、 な そ 付
く
た 者 宅 の 相 っ り 儲 と て
と 提 と 詳 か の き
、
工
事
途
中
、
墨
出
の
ミ
ス
か
、
鉄
筋
の
位
置
の
修
正
を
余
儀
な
こ
と
の
発
端
に
お
い
て
、
相
談
者
は
事
態
の
把
握
を
し
よ
う
と
﹁
事
例
﹂
新
築
住
宅
設
計
契
約
有
り
述
で
あ
る
こ
と
を
お
断
り
し
て
お
く
。
け
ん
ち
く
そ
う
だ
ん
建
築
相
談
偶
感
知
れ
な
い
ほ
ど
の
不
安
感
、
不
信
感
に
満
ち
て
い
る
。
相
談
終
了
福
田
紘
一
交
渉
中
で
あ
る
こ
と
の
た
め
、
結
局
建
築
相
談
の
対
象
と
は
な
ら
以
下
の
事
例
は
、
実
は
双
方
が
弁
護
士
を
立
て
て
工
事
会
社
と
れ
な
い
わ
け
に
は
行
か
な
い
。
て
は
、
相
談
者
の
言
葉
が
自
分
へ
向
け
ら
れ
て
い
る
錯
覚
に
囚
わ
身
を
置
き
、
日
々
ス
リ
リ
ン
グ
な
感
覚
を
味
わ
っ
て
い
る
身
と
し
J
I
A
千
葉
室 建
長 築
相
談
室
的
要
請
、
過
失
に
対
す
る
責
任
追
及
の
重
圧
、
そ
の
真
っ
直
中
に
設
計
者
が
関
与
し
て
い
る
相
談
事
例
で
あ
る
。
多
様
化
す
る
社
会
﹁
本
当
は
怖
い
﹂
と
い
う
か
﹁
本
当
に
怖
い
﹂
建
築
相
談
と
は
、
席
に
居
る
自
分
が
見
え
た
気
が
し
て
、
我
な
が
ら
微
笑
ま
し
い
。
た
証
拠
で
あ
る
。
そ
ん
な
時
、
多
少
な
り
と
も
、
社
会
貢
献
の
末
な
く
て
も
、
事
態
の
収
拾
に
立
ち
向
か
う
エ
ネ
ル
ギ
ー
が
生
ま
れ
9
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
都
市
デ
ザ
イ
ン
「都市への眼差し」から導き出される
「都市開発の戦略」
小美野 聡 氏
都市再生のためのグランドライン
新しい建築には制振や免震などの新技術も取り込み、緊
――「バーティカルガーデンシティ」
急時用のエネルギーの備蓄や保存も街区内で行うことで、
「都市再生特別措置法」の施行により、弊社の地元で
ある新橋周辺から赤坂、六本木地域も「緊急整備地域」
として指定され、それらの地域を整理する上で、「バー
より安全で快適な都市づくりを進めていくことができる
等の可能性も多く秘めています。
そしてここがこの提案の重要なポイントなのですが、
ティカルガーデンシティ (垂直の庭園都市)」という考え方
「建物を集積することで空いた足元については、広場利
を提案しています。これは、「立体的に街を造り、超高
用を図る、また建物の低層部の屋上を活用して水と緑の
層と併せて多機能な低層部を造っていくことで土地の高
創出と拡大を進めること等が可能になる」ということで
度利用を図り、安全かつ快適で賑わいや潤いのあるコン
す。この足元空間は、人々の憩いの場になるだけではな
パクトな街区単位の街を造ることを目指す」という提案
く、都市の防災性にも大きく関係してきます。
です。とは言え、これら全域を一企業で整理することは
ただし、すべてのエリアを画一化する必要はなく、地
できないので、有識者の方々にもご参画をいただき、
域によって、国際性・文化性など特有のイメージとして
「グランドデザイン」となる「街づくりのガイドライン」
発展させながら整備をしたり、既存の街並みと併せて低
を描きました。
層部を構築し新たな街の顔を創り出すことや、混在型の
この提案の中で、「多様性」(再開発をするところとし
ないところも認め、持続可能な街にしておく)と「多時
街造りというスタイル等も有り得ます。
また街というのは、このようなハードの仕組みを再構
性」(早く進める場合と時間をかけて進める場合など、
築するばかりでなく、さらにそこにソフト的な要素を組
時間軸をもって街を形成していく)を基本とする理念が
み合わせて多くの人が集まり、魅力的な空間と新しい時
大切であるという立場を明確に示し、環境に優しく各地
間を創出することができるような仕組みを付加していか
区の個性を持った街を造り上げていくことで、新しい街
なければ恒常的な活性化はされていきません。
の姿が見出せるようにするという考え方を打ち出してい
ます。歴史的資源は、必要なものにつ
いては議論をして残していくべきです
が、そのためには敷地主義ではなく街
区単位でものを考えた方がよりよい街
づくりができると思っています。小さ
な街区と細分化された土地所有という
現状の都市構造から、大きな街区を基
本とする快適で豊かな都市空間を創造
し複合的な街をつくる必要条件として、
機能的ヒエラルキーをもった交通基盤
の整備は不可欠になりますし、傾斜地
では、その地形を活かして人工地盤を
架けることなどによって街区間を繋ぎ、
歩車道の分離も図りながら下階にも自
然光が入ってくるような都市空間の創
り方など様々な工夫も考えられます。
10
街造りのガイドライン
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
「表参道ヒルズの位置付け」とプロジェクトの特徴
1986 年に竣工した民間による日本初の大規模再開発
新しい建物の配置計画は、10 棟あった旧同潤会青山
アパートの配置に沿っています。「かつてのアパートの
事業である「アークヒルズ」は、多彩な都市機能をひと
中庭を残したい」という想いを記憶として継承するため、
つの街の中に融合させたコンパクトシティであり、「職
建物内部では、旧中庭部分を囲むように表参道の街並み
住接近」「文化発信」「都市と自然の共生」など、弊社の
と少し趣きの異なるスロープをスパイラル状に組み込み、
街づくりの理念を具現化した原点となるプロジェクトで
もう一つの新たな表参道の路面店街を形成し、表参道を
す。
歩く楽しさと商業施設内の回遊性を創出することで、か
「ヒルズ」とは、都市開発において新たな伝統を創る
つての風情ある中庭を立体的な屋内広場空間として再現
象徴であり続けたいという想いが込められた名称です。
し、空間の連続性が失われることを避けた文化的な空間
従前の地形の起伏を活かし緑の再生・復活などと共に立
の役割を持たせるようにしています。
体的な土地利用を図るという特徴を持ち、一見すると対
これまでの「ヒルズ」と同様に緑化にも努め、屋上部
照的なものを融合(複合)して、細分化した土地を集約
分を含めて敷地面積の約 3 0 %に当たる緑被面積を確保
し建物を高層化することで生まれる足元のオープンスペ
していますが、特に屋上部分の緑化は、表参道のケヤキ
ースを有効活用するコンパクトシティを創造し、豊かな
並木と一体的に繋がるよう可能な限りの植栽を配してい
都市生活を提案するという弊社の開発理念を具現化した
ます。植物の成長と共に、かつての旧同潤会青山アパー
プロジェクトに対してのみに冠する名称です。
トがケヤキ並木の横にたたずんでいたという街の記憶が
● 表参道ヒルズ
新しい風景として引き継がれていけばよいと思います。
ヒルズが竣工したのは 2006 年 1月で、アークヒルズ
竣工の 20 周年目に当たります。旧同潤会青山アパート
商業施設に目を奪われがちですが、その上階には「中
間免震構造」を採用した全 38 戸の共同住宅が配置され、
(1927 年竣工) の建替え計画に弊社が事業協力することに
各住戸前面の開口部からはケヤキ並木が借景となり、表
なった 1998 年からは、建物としては懐かしいものの実
参道の賑わいからも距離を保ち、プライバシーを確保し
際には構造的に限界に達していたなど様々な問題もあり、
ています。
企画設計段階から安藤忠雄氏にご参画いただき、地権者
● まとめ
の方々や地域の方々とも計画案について議論を重ねた結
現在、横浜北仲北地区をはじめ、いくつかの新しいプ
果、「人々に長年親しまれてきた表参道沿いの街並みや
ロジェクトが同時並行で進んでいます。大規模プロジェ
景観を大切に記憶に留めながら新たな都市の記憶を創っ
クトでは、基本的には「建物を集積し土地の高度利用を
ていく」という願いを込めた再開発を行うことが基本方
図りつつ、多様な都市機能をコンパクトに充実させるこ
針として固まりました。敷地の最も表参道の交差点寄り
とにより創出可能となった低層空間を人々の憩いの場な
に、旧同潤会青山アパートの外装をディテールに至るま
どとして活かすような街区単位の街を造る」というこれ
で再生させた「同潤館」を建設し、過去の記憶と現在の
までと同様の開発概念に則って計画を検討中です。また、
風景を連続させ、記憶に刻まれた景観を次世代へ継承す
小規模なプロジェクトについても、弊社が行っているプ
ることを試みていることを含めて、新しい建物が街並み
ロジェクトは、「更地」部分を開発するのではなく、も
にインパクトを与えた効果は非常に大きいと思いますが、
ともと人が住んでいたり、街があったりしたエリアを再
絵画がいくつもの色を重ねていくことで完成する、ある
開発しているため、「街との繋がり」という点を考慮し、
いはいくら重ねてもなかなか完成しないのと同様に、街
開発をする部分としない部分の接点をどのように整理し
づくりは成長するものだと考えています。
て扱うかという観点を持ち続けながら街づくりを進めて
事業計画的には、建築物の高さを計画地の北側に広が
います。進むスピードは異なりますが、これらは前記の
る住居系地域への配慮から 23.3 mを最高高さとし、特
ような開発概念に則った計画で、地区の持つ潜在化した
に区立神宮前小学校に隣接する部分では更に低い高さの
価値を引き出し、新しい価値の創造を目指しています。
限度を設け、表参道のケヤキ並木の高さを越えることの
建築計画に携わる者としては、世間から乖離しないため
ないよう景観との調和に配慮すると共に、歩行者交通量
にも大きなスケールから小さなスケールまで様々な視点
の増大に伴う表参道の歩行者空間の拡幅などを実施して
で考えていくことが最も大切だと考えます。
います。
〈森ビル(株) 都市開発事業本部
第一設計部建築設計部建築設計第2グループ課長〉
11
都
市
デ
ザ
イ
ン
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
き
ょ
う
い
く
子どもの福祉環境をみつめる
教育プログラム
こどもの福祉環境を幅広い視野から取り組む
月田 みづえ 氏
和女子大学の人間社会学部福祉環境学科は、生活環
昭 境学科から社会福祉コースを分離して、4年前に新
貢献のボランティア)を活用し、近くの公園や路地、空
設した学科である。生活環境学科時代に、社会福祉士の
き地など、地域に飛び出し、地域に学ぶ。自分たちの目
受験資格のみならず、建築士の受験資格も取得できたた
でみて、確かめる。子どもたちを追い詰める要因は、何
め、引き続き両方の受験資格が取得できる。ダビンチの
か。今、おとなたちが、「しなければならないこと」で
時代なら、自然科学も人文科学も同時に学べたようだが、
はなく、「してはならないこと」は何か。大人の創造力
今、果たして、基礎科学のまったく異なる二つの資格を
を超える子どもの潜在力をつぶすことなく、伸ばしたい。
履修する学生がいるのか。半信半疑といってはいけない
そのために、どうすべきか。ポーランドの子どもの権利
が、少数ながら、挑戦する学生たちがいる。同大短期大
の提唱者コルチャックのことば、「子どもはだんだんと
学部文化創造学科(旧生活文化学科)で、すでに建築士
人間になるのではなく、すでに人間である」「おとなた
(2 級)受験資格を取得して編入してくる(きた)学生
ちは、みな、子どもを十把一からげにしてしまう。」こ
もいる。社会福祉や保育を中心に学んでいるため、建築
んな当たり前のことが当たり前でない今、このことばを
士(2 級)関係の科目の履修にあたって、設計製図、構
思いおこしながら、悩んでいる。そんな、学生たちが取
造や力学、実験などを教えてくださる先生方のご苦労は、
り組むテーマも、さまざまである。
並大抵ではない。でも、学生にとっては、またとない機
ュニティー・サービスラーニング(専門を生かした地域
たとえば「読書と子どもの関係」について
会。なぜなら、子どもたちを取り巻く環境は厳しく、い
・図書館司書資格をもっており、趣味が読書なので、
じめ、虐待に苦しみ、命を落とすまでにいたっているこ
本に親しみを持つ子どもが増えてくれたらと思う。
とに、心を痛めているからである。つまり、既成概念に
(宇田川)
とらわれず、幅広い視野から学べることが、子どもの福
・最近は心を閉ざす傾向にある子ども・生きる意欲が
祉環境を見つめなおさなければ突破口が見出せないと感
ない子どもがめだつ。少子化・都市化など、あそび
じている学生たちに、第一歩を踏み出す勇気を与えてく
の変化と関係してないか。あそび環境を福祉的視点
れている。さらに、来年4月から、本学客員教授でもあ
と建築学的視点から研究する。(一寸木)
られる仙田満先生が、「子どものあそびと環境」の講座
・最近は、利便性とかきれいだとか、大人の視線だけ
を開いてくださる予定であり、学生は心待ちにしている。
で街が造られ、子どもの眼・観点がぬけている。遊
また、学生は、今年から本格的に始めたばかりのコミ
べる環境がなければ、子どもは外では遊ばない。遊
福祉環境学科の研究室にて
12
プレーパークにて
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
び場と遊びの制限をうけた子どもたちを、1人部屋
無条件に子どもたちが包み込まれるような、子育てを
の小さなハコに押し込めず、自由に遊べる環境を研
している保護者たちが、安心してリラックス出来る場を
究したい。(青柳)
さがすのは、大変な時代。お母さんたちは、「私たちの
・現在の児童虐待防止法に、現場の方は不十分さを感
頃は、子どもをあんなに泣かせなかった」「バギーカー
じてはいないか。法について専門外の人も、知ろう
は、場所ふさぎ」などなど。自分たちが子育てをしてい
としているのか。(金子)
た頃のことを忘れた心ないことば。まともに育ててあた
・「子どもは遊ぶことが仕事」であり、子どもにとっ
りまえ。周囲の不寛容な態度に傷つきながら、がんばっ
て遊びは生活の中心。子どもは大人が考えもしない
ている。プレーパークでは、お母さん――「お姉さんに
ことやものを遊びにする。子どもの遊ぶ力、どうい
ブランコ、一緒に乗ってもらえて、子どもが楽しんでる
うことに関心を示すのか。(藤原)
ので、今日は、帰宅するツモリがそのまま塾に送ってい
・私は、ADHD(注意力に欠け、落ち着けない障害)
くことになりそう」。学生――「子育てっていいですね」。
について学んでいる。A D H D を持つ子がより良く
どちらも助かった。 見知らぬおとなが竹とんぼ作りを
生活できるための環境に関心を持っている(宇賀)。
教えてくれた。小学校や中学校での話や悩みを真剣に聞
・私は、茨城で生まれ育った。地元に元気な子どもた
いてくれた。階段でバギーカーが上るのを手助けしてく
ちの笑顔がいっぱいになるような環境づくりを考え
れた。そのような人間関係がある地域社会、子育て力が
ている。(吉井)
少しの仕掛けで、よみがえる。
先週も、大学の近所にある、全国に名高い世田谷プレー
パークで、子どもたちとマシュマロを焼いた。そこは、
神経質すぎる。あるいは、無神経すぎるおとな。子ど
もの自由な発想・遊びを奪うな。おとなのおせっかいを
「自分たちの責任で、自由に遊ぼう」がモットーの冒険
何とか食いとめよう。そのために、子どもを取り巻く福
遊び場であり、プレーリーダーもいる、緑の多い噴水も
祉環境にどんな仕掛けをすればいいのか。子どもたちが
ある豊かな公園である。しかし、不審者がいる。家族で
元気になるためにと、学生たちは、背伸びをして学んで
バーベキューは困る。などなど周囲のおとなの眼や声は
いる。
厳しく、規制がたくさんになってしまう。
〈昭和女子大学・福祉環境学科教授〉
昭和女子大学福祉環境学科のカリキュラム
13
き
ょ
う
い
く
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
ほ
ぞ
ん
も
ん
だ
い
保存問題東京大会
大会テーマ:建築家と保存文化の現在(いま)
2007年2月17日(土)− 18日(日)
保存問題東京大会
実行委員長
「保存問題」の現在(いま)を問う
野中 茂
→ 日程および参加申込書は本号の差込みを参照ください
保存問題東京大会
聴く : ジャーナリストから
関東甲信越の各地域会と共催してきた「保存問題」大
建築家にとって、
「他者」の視線がどこに向いているか
会は、今年で 16 回目を数えます。今回の東京大会では、
を窺い知る機会は少ないものです。広く活動するジャー
過去 1 5 年の大会を振り返りながら、「保存問題」の現
ナリストを招き、様々な「保存問題」はどのように解釈
在(いま)を捉えなおそう、問い直そう、という趣旨で
されているのか、そして我々専門家は市民にどのような
企画を進めています。
期待をされているのかといった、活動実績や保存に関す
るジャーナリストの視点からの率直な評価を聴きます。
私たち建築家が、その中から新たな意味付け・意義付
「保存問題」のアポリア(難問)
今年の(東京)大会は、建築家として保存問題にどう
けを考える契機が得られると期待しています。
取り組むか、ともに考え、その方向性を模索し、問題提
起する大会にしたいと考えています。ストックの時代が
話す:歴史家から、建築家から
叫ばれて久しく、保存と再生、開発の関係をどう捉える
いままで様々な保存活動の歴史があり、数々の議論が
かは、いまや、建築家として避けて通ることのできない、
ありました。その積み重ねから「保存問題」が抱える建
重要かつ身近な課題になっています。
築の「現在(いま)」を浮き彫りにして、その可能性や、
歴史的建造物として顕彰されている建築に限らず、さ
困難さ、脆弱さをありのままに共有する機会にしたいと
まざまな状況下での歴史をもつ建築の存続が危ぶまれる
思います。そのためには、建設時とは時代背景が異なる
とき、建築家である私たち、そして職能団体である JIA
ことを意識し、耐久性、防災、景観、経済性など、保存
は、どのような形で保存問題にコミットして行くべきか、
を考える上での課題の整理も必要です。
幅広い視野に立って議論・意見交換をしていきたいと考
えています。
私たち建築家が、開発や建替え、改修などで、歴史を
持つ建築とかかわる機会は増えつつあります。そのとき
建築家は、どうするのでしょうか。「れば、たら」であ
っても、本大会を考え始める機会としましょう。
観る: 東京大学本郷キャンパス
建築に取り組む者として、様々な立場から意見交換し、
今大会の会場は、東京大学本郷
実践を念頭に置きつつ、イメージを共有しやすいかたち
キャンパスです。
都市の中で歴史ある建築を残し
赤門(江戸)
で、問題提起につなげていくことが、今大会の目標です。
ながら高密度利用を進めてきた本
郷キャンパスには、江戸時代の赤
門や、明治、大正、昭和、平成と
問う
コミュニケーションセンター(明治、平成)
保存の明日(これから)につい
各時代の建築が混在し、「ウチダ
て、いま、何ができるか、何を大
ゴシック」による統一感の中にも
切にするか、どう考えるか。大会
各時代を反映した建築が個性を表
で、たくさんのご意見を頂きたい
しています。保存を意識しながら
安田講堂(大正)
と思います。「保存問題」は、も
構築された建築の現在(いま)を、
はや身近な出来事です。ふるって
批評的な視点も持ち合せて見学し
大会にご参加ください。お待ちし
ます。
14
弥生講堂(平成)
ております。
〈(株)久米設計〉
工学部2号館(昭和、平成)
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
顧客支援システムより
顧客支援システム
委員会副委員長
松枝 雅子
客支援システムの愛称を公募の中から「アーキテク
顧 ツ・ファイル」に決定されました。
イル」を、関東甲信越支部の一般向けホームページ上に閲
覧しやすい形で掲載します。
12 月 26 日よりシステム会員登録募集を開始しまし
このサイトより、面談を希望する建築家を顧客に決定し
た! まずは住宅系を皮切りに、2007 年4月から本格ス
ていただきます。顧客の申し入れを受けて、事務局が会っ
タートします。
て話し合う機会を準備し、顧客とシステム会員の面談を成
ぜひ応募してください!
立させます。
生活環境を整え、より充実した生活を実現するために、
建築設計の各種分野より、まず住宅系の完備を充実させ
住まいを新たに造りたいと考えていながら具体的に考える
て予定です。
手段や、相談できる知人を持たない市民の方々が、たくさ
このシステムの鍵はシステム会員の登録数にあり、利用
んおられます。
者にこんな程度かとの批判をうけることなく、成功させた
そのような方々に、価値観、感性、相性などを見極めた
いと念じております。
うえで、自分の判断で、建築家を選んでいただくための顧
ぜひ、ご理解をいただき、多数のご応募お待ちしており
客支援システムを関東甲信越支部に立ち上げました。
ます。
このシステムは、資格と実績を十分に兼ね備え、必要な
資格審査を経た意欲ある建築家(システム会員と称する)
システムの規約、会員規定の詳細は WEB に掲載してお
の作品例やその他の情報を提供する「アーキテクツ・ファ
ります。
〈(株)松枝建築計画研究所〉
■募集要項
・掲載場所 JIA関東甲信越支部運営サイト「建築家On Line」
http://www.jia-kanto.org/architectsfile
・応募資格:① JIA関東甲信越支部登録建築家または登録予定者
②建築家賠償保険に加入していること
③ JIA会員の二人の推薦人がいること
・登録申請料 : 5,000円
④住宅系登録者に限り、主宰者、準主宰者など
・ WEB管理料 : 5,000円/年
仕事の責任を負うことができる立場であること
・更新料 : 5,000円/2年
・応募方法のフロー
入稿フォームのダウンロード
①会員データ
②作品データ3例
(以上エクセル)
・書類審査後 申し込み
→
[email protected]
担当:菊池
FAXでも可能
→
請求書の送付 → 入金確認
・郵便振替用紙 →
完了
HPに掲載
送付
※入稿フォームを手書きで提出される方は、別途デジタル化手数料 5000円が必要となります。
15
委
員
会
報
告
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
委
員
会
部
会
活
動
報
告
●第52回アーバントリップ
ミッチリと研修した一日
栃木県集成材協業組合・正田醤油・埼玉県立武道館
林 正樹
C
PD9 ポイントにつられて参加、それ以上のことがあった
スに張っただけで昔の構造美を失わないよう工夫してある。
1日。 11 月 15 日8時半日比谷を出て 19 時まで、栃木、
アトリウムでは外周に残った貫穴を残したままの列柱が透き
群馬、埼玉の3県を跨いで駆け巡る。
はじめは 栃木県集成材協業組合 で、
を演出、ガラス屋根に張られた日除け白布の曲面から漏れる
柔らかい光とともに居心地の良い空間を作っている。棟と棟
構造用集成材についてレクチャーのあ
の隙間は中庭、ライトコートとなっており、既存建物の基礎
と工場を見せていただく。接着剤の耐
石を再利用して幾何学的庭を構成し、脇ではトロッコの軌道
久性、耐水性、毒性に一番関心があっ
を少し残して石組みにより遺産として見せている。防火区画
たのだが、むしろ原木の強度のばらつ
の壁は鉄骨下地に籾殻入り土壁が塗られ、土間の叩きは桜色
きや乾燥状態に左右されることのほう
の骨材からなる洗出し。伝統的仕上げにこだわりがある。一
がポイントであった。
集成材は傷が分散するので無垢より
方、中2階ステージに至る鉄骨螺旋階段の跳ね出し梁の欠き
丈夫だ。ただし、小口が水に弱いことに変わりはない。板状
こみや、端部を丸めた踏み板チェッカープレートにやさしい
に裁断された部材は1本1本機械にかけられて自動的に小口
気配りも見える。ギャラリーの単純な照明に照らされたアン
に彩色識別されていく。同じ樹種でも耐力がずいぶん違うの
ディ・ウォーホール、フランク・ステラなどの現代絵画が馴
で、弱いのもは真中に強いものは外側に配して接着合成部材
染んでいる。このロハスな建物では History が Story になっ
とする。接着の前に長い板から死に節やアテを取り除き、フ
ているのだ。
ィンガーノットに加工された継ぎ手は分散するよう、わざと
最後は、暮れなずむ上尾の埼玉県立
長さを不揃いに束ねて接着加圧する。そうそう、含水率は
武道館。松田平田設計・担当者の出迎
10%前後だと。断面は直線、曲面自由自在で、最後に染み出
えを受ける。陽を追うように、さっそ
た接着剤を金具で削り取る。H型鋼を芯に入れたハイブリッ
く2階の中庭にかかるブリッジへと案
ド材の出現で木造ビルの中層化が見えてきた。火災時の炭化
内される。
は 1 分 間 1.6 ミリだそうで、 30 分以内に消防車がきてくれれ
ここで柔道、剣道、弓道、相撲の4棟の全貌を掴むことが
ば、燃え代の厚さ 50 ミリで足りる勘定だ(令: 129-2-3 では
できるからだ。下に降りて見上げると、このブリッジの見上
木造3階:1時間準耐火は45ミリ)。
げがライトアップされてなかなかの見栄えである。図らずも
構造用集成材の歴史は欧州で 1 0 0 年だが、日本でも 4 5 年
絶妙なタイミングとなってしまった。「夜目遠目、……」って
の実績はあるそうだ。なぜ欧州で盛んかといえば、火災保険
言うじゃない。外観は PC の格子状フレーム回廊で整えただけ
料が鉄骨の三分の一、日本ではその逆だって。ヘー、ある火
で、鱗片状のステンレスが屋根を模っている簡素な構成。通
災現場の鎮火後の写真では、大断面木材は形を保っているの
りに面した外壁はガラス張りとして観衆を競技者へと誘う。
に、鉄骨はグニャリ。日本の集成材は化粧材として発達、構
弓道場の反りのある垂木構造の軒裏が面白いシルエットを見
造用8に対して7だったが、今は逆転している。原木は従来
せているのだが、この建物のお職は内部から見た集成木材に
北米、欧州に頼ってきたが、国産も採算が取れるようになっ
よる格天井の構成にあるといえよう。それと、控えめに設定
たそうだ。
された照明の巧みな演出、光源を見せず壁やフレームを照ら
次は館林の正田醤油 、工場倉庫から
し出して柔らかい灯としている。聞けば近田玲子さんが携わ
事務所、展示場への保存改修による用
ったという。構造は幡繁氏とのコラボレーション。格子梁の
途変更を見る。設計者の正田亨さんは
垂直部材は 125 角の集成材4本を束ね、芯に鋼板がはさまれ
早大卒業後、ローマ、ベネチアに留学、
ている。水平材は梁成 300 の集成材。いずれも県内産杉を集
坂倉を経て独立した新星。夫人ととも
め、人口乾燥で含水率 8%前後まで下げ、岡山の木工所で加工、
に手がけられたコンバージョンには建物の歴史を愛おしむ姿
返送して組み立てたそうである。地産地消をコンセプトとす
がみえてくる。
ることが多いが、流通に助けられる部分もあるのだ。ジョイ
ほぼ 100 年前の真っ黒な達磨瓦の黒い屋根、白壁、木造軸
ントはステンレスのドリフトピン打ち込みで 0 . 5 ミリのクリ
組だけ残し、一部小舞壁をガラスに変えた立面に水平に伸び
アランスに差し込み、剪断力でもたせているとの説明。脱落
る鉄骨、同色の薄い車寄せを付け加えただけの外部空間構成。
が心配で過去の事例を検証したところ、むしろボルト締めの
内部に足を踏み入れると、醤油の染み込んだ梁柱に白漆喰の
ほうに緩みが出ていたとのこと。ピンはすべて水平だし、落
壁が美しい模様をなしている。倉庫補強鉄骨梁は取り除き、
ちる心配は消えた。木組みを支える下部構造は R C で、打ち
柱古材を接いで生かしたことが面白い景色となっている。耐
放し(補修?)の精度が高いのに感心しきり。見学を終わる
震補強は、梁1本1本確かめながらテンション材としてのス
と雨、車中、コル、スカルパ、カーンのビデオで最後までミ
チールバーを最小限に抑え、屋根面に厚めの野地板をバイア
ッチリ研修した。
16
〈林正樹建築設計事務所〉
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
●アーキテクツ・ガーデン2006建築祭報告
「元気な建築・安全な社会」
アーキテクツ・ガーデン
2006建築祭実行委員会
委員長
上浪 寛
建 築家の活動や考え方を市民に伝え広めるアーキテク
ツ・ガーデン 2006 建築祭は、
「元気な建築・安全な社
りました。引き続きオープニングパーティーが開かれ、約
会」をテーマに、10 月 27 日(金)から 31 日(火)をコ
例年では週末の盛り上がりの半面、週明けは展示のみと
ア期間として開催されました。メイン会場を INAX 銀座シ
なり寂しくなるのですが、今年は月曜日、火曜日ともセミ
ョールームとして、東京都中央区様、全銀座会様、(株)
ナーや街並みウオッチングなどがあり、5日間を通して平
INAX 様のご後援をいただき、支部の委員会・部会・地域
均したイベントとなりました。毎年恒例のプログラムに加
会・有志により繰り広げられました。メイン会場を銀座と
え、昨年来設立ラッシュの東京地区地域会を初めとする地
するのは今年度で7回目となります。地元全銀座会との継
域会の参加プログラムが多く、展示、見学会ともに多様性
続的な信頼関係のもと、東京メトロ銀座周辺駅構内へのポ
に富んだ内容となりました。
スター掲示や新聞折り込み広報等多大なご協力をいただき
ました。
90 名の参加者で楽しい歓談の一時を過ごしました。
来年は建築家大会が 20 周年記念大会として東京で開催
されるため、アーキテクツ・ガーデンはお休みとなります
初日 10 月 27 日(金)は午後3時よりオープニングイベ
が、再来年以降のアーキテクツ・ガーデンは 2 0 1 1 年の
ントとして交流委員会セミナー実行委員会主催により、小
UIA 東京大会を盛り上げるプレ・イベントとして大事な存
池百合子氏(内閣総理大臣補佐官、前環境大臣)
、野沢正
在となってきます。アーキテクツ・ガーデン 2006 以上に
光氏(建築家)、武田洋平氏(文化研究者)をお迎えして
活発な活動を、地域会を中心により広範囲なイベントとと
リレー形式の講演会を開催しました。一般の方を含み130
して発展させていくことを期待いたします。各イベントの
名を越す多くの方にご参加いただき、盛況なセミナーとな
詳細は HP をご覧ください。
■基調講演
■建築家のメモ展
――交流委員会セミナー実行委員会
■住宅展2006
――住宅部会
京橋プラザ区民館を会
場に、小池百合子氏、
野沢正光氏、武田洋平
氏を講師に向かえ、環
境をテーマに講演会を
開催、水や緑などの自
然資本を活用した快適
な都市づくりを提唱
し、環境の大切さ、建
築の健全な力を改めて
考える機会となった。
部会員の設計による住
宅の映写スライドと活
動ワーキングパネルを
展示、同時期に3つの
共催セミナーを開催し
た。展示会場では 105
名の記帳があったが
95%が JIA 会員と一般
の来場者がとても少な
く、その点では今後に
課題を残した印象も。
〈(株)構想建築設計研究所〉
――建築交流部会
■「最新エコ・バウビオロギー住宅セミナー」
――環境行動委員会寺尾信子・濱田ゆかり
昨年、丸善から刊行さ
れた『建築家のメモ
―メモが語る歴史と未
来』
(建築交流部会監修)
掲載作品のうち昨年未
展示の 21 点および応
募作品 1 4 点を展示。
JIA 会員や学生など記
名を受けただけでも
132 人にのぼる来場が
あり、
大好評であった。
ドイツ (ミュンヘン)
からオーストリア(ウ
ィーン郊外) に至るバ
ウビオロギー建築の実
際をスライド 1 5 0 枚
を交えて紹介。平日の
日中にも関わらず 3 4
名が参加、セミナール
ームがほどよく埋ま
り、終止和やかな雰囲
気であった。
17
ア
ー
キ
テ
ク
ツ
・
ガ
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デ
ン
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
地
域
会
だ
よ
り
●埼玉地域会
熱い人々の繋がり
JIA埼玉
本庄地域のまちづくり活動
ト
ヤ
戸谷 正夫
1―まちづくり市民講座「まちづくり大学2005」
この講座は 2006 年度も引き続き開催され、「まちづ
私の住む埼玉県の北西部地域(本庄市、上里町、美里
くりを学ぶために」「まちづくりを動かすために」「まち
町、神川町)において、産・学・公・地域の人々によっ
づくりをマネジメントするために」をテーマに、現在市
て構成される「本庄国際リサーチパーク推進協議会」と
民の人々とまち中を徘徊する日々です。
いう組織が、毎年市民向けの人材育成事業を行っていま
す。この中の一つで、まちづくり活動を引っ張って行く
人材を育成しようと始まったのが「まちづくり大学」で
す。2005 年度から本格的に始まり、現在この市民講座
の中から何人かのリーダーが育ってきています。この
「まちづくり大学」は企画運営を財団法人本庄国際リサ
ーチパーク研究推進機構という財団が受託し、私の事務
所はこの財団と協同し運営にあたりました。私はこの活
←2005まちづくり大学・ワーク
ショップ(神泉)
→2005.3.「本庄・街・蔵めぐり」
↓2006.12.「吉の湯」グランドフ
ィナーレ
動の中で、財団の佐々木氏とともに全体のコーディネー
2―まちづくり市民集団「本庄まちNET」
ターの役割を担いました。
2005 年の 3月、6 月、仲間とともに「本庄・街・蔵
この「まちづくり大学 2005」の構成は、(1) まちづ
巡り」を開催しました。この会を行うに際し、3人の知
くりを知る(講座)、 (2) まちづくりを体感する(フィ
人を本庄に招きました。大分の写真家・藤田洋三氏、泥
ールドワーク)、(3) まちづくりを叫ぶ(ワーキング/発
詩人(『左官教室』編集長)・小林澄夫氏、建築家・薩
表会/交流会)の3部に分けて行いました。(1)の講座で
田英男氏、でした。2 日間の出来事でしたが、個性豊か
は、「まちの歴史」を本庄市の文化財担当者、「建物・街
な3人が本庄の市民のこころの中に熱い火を灯してゆき
並」を私の友人の建築家、「食と農、風土」を地元の有
ました。見慣れたまちの素晴らしさに気付かされ、これ
機農法で野菜を栽培している方、にそれぞれの「まち」
を機会に参加者自ら動き始めたのでした。
に対する思いを熱く語ってもらいました。
現在私も参加しているまちづくり集団「本庄まち
講座終了後、各講師からの刺激が冷めないうちにフィ
N E T」は、わがまちに対し熱いハートを持つ人々の集
ールドへと飛び出し、山間(神泉)、里(児玉)、町(本
まりです。構成は市民中心に、建築家、市役所職員、商
庄)と特徴ある地域を回わり、五臓六腑とともに自分た
工会議所職員、シンクタンク研究員、などなど。遠く川
ちの暮らす地域を体感しました。その後グループに分か
崎から毎回参加する会員もいます。自主勉強会では、
れ、ワーキング、オープン発表会、交流会と、あっとい
「街なかの旧河川沿いの景観、歴史、水質などの調査
う間の半年間でした。交流会には、東京、川崎、伊豆松
(他の組織の人々とも連携)」「吉の湯(安政年間から続
崎、などから、また地元のまちづくりの他団体の人々も
いた銭湯が今年廃業)の再利用 PJ」「賀美橋ランプ復元
顔を見せてくれ、「まち」を思う人々の連帯の輪が大き
運動」「土蔵、蔵広場改修計画∼中山道周辺旧市街地」
く広がりました。
月日が進むごと、水を得た魚のように、自主的かつ積
極的にまちづくり活動に取り組む人たちを見るにつけ、
「まちづくりを支えるのは 1 人 1人の市民の熱い思い」
であることを改めて感じています。
18
「本庄早稲田新幹線駅前地域の将来像と景観」などが取
り上げられています。
日本各地の人々の熱いエールをうけながら、ゆっくり
と熱く、本庄地域のまちづくり活動は進んでいます。
〈(有)戸谷正夫建築設計事務所〉
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
●B Ð2グループ――エスケー化研株式会社
交
流
建築仕上塗材の可能性を求めて
久保 宏二
もう 15 年以上前になるであろうか、バブルの末期
も 頃、景観に対する論議が今以上に活発な時期があっ
速道路を地下化しようかといわれている日本橋も例外で
はなかった。首都高速道路の真下にある暗い日本橋の景
たことを思い出す。時はバブル、石材の利用が最盛期、
観を少しでも良くしたいとの配慮から日本橋から見える
何でも石である。設計事務所でメーカーが石を裁断した
高速の鋼製橋脚に石材調も模様も施した。勝鬨橋は開閉
外壁用の貼りタイルを持ち込んでいたのを見たことがあ
が出来るように整備する計画であった。歩道を石貼りに
る。
しようという計画であったが、過重で開閉が困難になる
設計者から問合せがあった。「建築に使っている仕上
ことが予測され、薄く軽量な樹脂塗材による石模様材料
材を土木にも使えないか」と。世の中は石ブームである。
が検討された(実際は採用はなかったが)。同材料によ
ただし既存の橋梁や側壁に自然石を貼るには落下の危険
る床面の美化は現在でも駅のプラットホームに多用され
や、重量に問題がある。軽量な自然石調をはじめ、様々
ている。
な意匠や躯体保護機能を有する塗材は好都合な材料であ
トンネル坑口は土地の名産をコンクリートレリーフや
った。通産省は景観材料推進協議会を後援し、多くのメ
塗材により再現した。当社のデザイナーは高速道路狩場
ーカーが参加をした。都の担当者から「基盤整備は終わ
線新設工事に「ふしぎの国のアリスの世界」まで提案し
った。これからは景観整備の時代だ」と言う声も聞こえ
た。タキシードうさぎやトランプのシルエットを擁壁に
た。橋梁に、跨道橋に、アンダーパスに、ボックスカル
デザインした。担当者には好評であったが、さすがに使
バートに、山間の砂防ダムまで化粧である。中でも思い
う度胸はなかったようだが……。とにかく、コンクリー
出すのが我々塗材メーカーがしのぎを削った「東京著名
トを石や金属に見せる、鋼製構造物を石やタイル貼りに
72 橋改修工事(正確でないかもしれないが……)」とい
見せるなど自在である。
その日、景観重視に対する見方が変る出来事が起こっ
う計画である。
名のことく、都内にある著名な橋の景観整備、親水公
た 1995 年 1 月 17 日、阪神淡路大震災である。倒壊し
園化である。王子の音無橋、御茶ノ水の聖橋などの著名
た建築、土木構造物、景観整備どころではない。基盤整
設計者が携わったコンクリートアーチ橋。自然石を積ん
備は耐震補強と名を変えた。
だように見せるため、石材調塗材が採用された。永代橋、
我々は今でも「建築で使える材料は土木でも使える」
厩橋など隅田川に架かる鋼製の橋は、超耐久性フッ素樹
という考えは今でも曲げていない。塗材による可能性を
脂塗料による改修とライトアップが行われた。隅田川の
信じ、新しい市場開拓していくことが業界を伸ばすこと
護岸・人を拒むカミソリ堤防の川側に親水公園を作り堤
に繋がると信じている。
防の面に塗材によるさまざまな意匠が施された現在、高
〈エスケー化研(株)東京支店総合仕上開発チーム〉
東京・お茶ノ水の聖橋
日本橋・首都高速道路の橋脚
墨田川護岸
19
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
選
挙
公
報
選挙公報
20
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
選
挙
公
報
選挙公報
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第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
選
挙
公
報
選挙公報
22
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
こんな本を読みました
は仙田会長の週報です。
(M.K.)
■落ち着く間もなく時間にせかされ年末を迎えております。年追う毎
『住まいと家族をめぐる物語』
に一年を短く感じるのは、自身のせいだけでもなく、加速していく社
――男の家、女の家、性別のない部屋
会のせい?などとぼやいてみても時は待ってはくれない。せめて「意
・著者:西川祐子
識」「意図」を心がけることにしようと反省。
・集英社新書/222頁
■伊東豊雄の「建築|新しいリアル」の展覧会を見てきた。実物大の
・定価:735円(税込み)
配筋や施工図、曲線の屋根を体感できるすばらしい展示内容。圧巻は、
・2004年10月20日発行
台中のオペラハウスコンペ案の CG と模型だ。ずっとみとれてしまっ
・出版社:集英社
た。どうやって実物をつくるのだろうか?
(R.S.)
(S.S.)
■会報誌に広告などの協賛を頂いている広報委員会では賛助会員各社
友人に薦められて読んでみた。
との交流会を試みました。賛助会員の発意によります。さらに新たな
日本近代住宅史といってはそれまで。時代背景を踏ま
連携となる取り組みが芽生えてます。委員に賛助会員の参加を得てい
えながら住宅の変遷を明らかにしていくのだが、住ま
る広報ならではの企画で JIA 館会議室を一杯の参加者で熱く盛り上が
い・家族・生活の移り変わりに加え、家や部屋に性別
りました。
を付けたり、住所や本籍と居所の一致・不一致、さら
■企業においても個人でも情報管理に使う時間とコストがどんどん増
にはメルアドを持ち出す。「いろり端のある家」を「男
えている。昔は良かったなどと言っていられない。一旦怠ると即自分
の家」とし、公団住宅が「女の家」の始まりと戦前・
自身の身に災いが降りかかって来るから油断できない。取り敢えずパ
戦中・戦後の流れを解いていく。 2 D K の呪いから、
スワードの上手な管理の仕方を知っている人、教えて下さい!(N.Y.)
(S.T.)
「リビングのある家」と「ワンルーム」の二重構造、そ
して「性別のない部屋」の流れも興味深い。途中、「東
編集:社団法人 日本建築家協会
京物語」はむろん、「火垂るの墓」や「サザエさん」も
関東甲信越支部広報委員会
委員長:中村 高淑
登場。その時代背景を象徴する。
日々、施主とのやりとりに終始、流されがちな自分
副委員長:近藤 剛啓・櫻田 修三
委 員:大岩 義充・神田 雅子・久保 宏二・倉島 和弥・近藤 弘文
にとって、デザイン提案をする意味をあらためて思い
鈴木 利美・寺本 晰子・林 秀司・古池 廣行・本田 宣之
山本 信治
起こさせてくれたシンプルな読み物だ。
14 章からなり、大学の講座一期分として成り立って
いる。久しぶりに授業を受けるような気分で読めるの
も面白い。
(倉島和弥/(有)RABBITSON一級建築士事務所)
編集長: 櫻田 修三
編集委員: 大岩 義充・神田 雅子・久保 宏二・倉島 和弥・鈴木 利美
寺本 晰子・山本 信治・菊地 良一
発行人:菊地 良一
発行所:社団法人日本建築家協会 関東甲信越支部
〒 150-0001 東京都渋谷区神宮前 2-3-18 JIA 館
編集後記
TEL 03-3408-8291(代) FAX 03-3408-8294
デザイン:山口尊敏/印刷:サンデー印刷社
■笑う門には福来たる……。「笑い」には治癒力を増す効果があるそ
う。嫌なニュースばかりが報道されている。疲れが倍増してしまう。
私の中で、樹木希林のイナバウア CM は最近のヒット。笑わせていた
だいた。もう少し楽しく思いやりのある暮らしをしたい。(正式には
体を後ろに反らすことはイナバウアとは関係ない)
(Ka.K.)
©社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 2007
JIA関東甲信越支部関連サイト一覧
(社)日本建築家協会 (JIA)
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建築家 online(一般向け)
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■旭山動物園に始まる最近の動物園人気。休日に近隣の動物園を家族
で行くのが楽しい。目当てはレッサーパンダである。最近ベビーブー
ムなのか、我が埼玉県でもいくつかの動物園で見られる。こども動物
自然公園のタケちゃん、ノコちゃん、かわいいですよ。
(Ko.K.)
■新聞、雑誌、メルマガ、この Bulletin のような会誌など読んでお
きたい情報は毎日毎日溢れ出てきて、とうてい全てを読むことはでき
ない。そんな中で JIA がどこに向かっているのかが最もよく見えるの
役員会議事録/臨時総会議事録は
ホームページに掲載の予定です
http://www.jia-kanto.org/members/
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交流委員会
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保存問題委員会
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情報開発部会
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千葉地域会
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茨城地域会
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定価 300 円(購読料は会費に含まれています)
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こ
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本
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み
ま
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編
集
後
記
広告
ヒガノ
第三種郵便物認可 Bulletin 2007年2月15日
●第16回 保存問題東京大会
建築家と保存文化の現在(いま)
会期:2007年2月17日(土曜日)、18日(日曜日)
会場:東京大学本郷キャンパス
2月17日(土曜日)
集合:東京大学正門(赤門ではありません)案内役がおります。
9:30Ð10:20 受付:東京大学工学部2号館 213号大教室 前室(ホール)
10:30Ð12:00 東京大学本郷キャンパス(外観を中心に)
12:00Ð13:00 東京大学本郷キャンパス内外食堂(昼食は各自で。案内マップ配布します)
13:00Ð15:00 セッション1 「建築家と保存文化の現在」
会場:東京大学工学部2号館 213号大教室
コメンテーター:川上 恵一、小西 敏正、篠田 義男 進行:井上 茂實
13:00Ð15:00 地域サミット 同時開催
会場:東京大学工学部2号館 212号教室
15:15Ð17:45 セッション2 座談会「建築文化を語る:ジャーナリストの立場から」
会場:東京大学工学部2号館 213号大教室
ジャーナリスト:西田 健作(「朝日新聞」)、高野 清見(「読売新聞」)、津川 学(「日刊建設通信新聞」)
宮沢 洋(「日経アーキテクチュア」
)、田中 紀子(
「東京人」)、白井 良邦(「カーサブルータス」) 聞き手:兼松 紘一郎
18:00Ð20:00 レセプション:大学病院レストラン・ねむの樹
20:00Ð
チェックイン:旅館・つたや(和室)
2月18日(日曜日)
集合:東京大学農学部 弥生講堂
9:30Ð12:00 セッション3 シンポジウム「保存と創造」
会場:東京大学農学部 弥生講堂
パネリスト:五十嵐 太郎、加茂 紀和子、手塚 貴晴、倉澤 智 コーディネーター:金山 眞人
12:00Ð13:00 本郷界隈レストラン・食堂(昼食は各自で:案内マップ配布します)
13:00Ð15:30 セッション4 シンポジウム「建築家と保存文化の明日」
会場:東京大学農学部 弥生講堂
パネリスト:鈴木 博之、大宇根 弘司、兼松 紘一郎、川上 恵一 コーディネーター:野中 茂
15:40Ð16:00 大会のまとめ/提言/挨拶:川上 恵一、野中 茂
注)敬称略、順不同
主催:社団法人日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部保存問題委員会
参加申込書 CPD 12単位
Aコース Bコース Cコース Dコース Eコース Fコース Gコース Hコース
17日 東京大学本郷キャンパス見学
セッション1 建築家と保存の現在 ○
○
○
○
○
○
○
セッション2 建築文化を語る
18日
レセプション
○
○
宿泊:旅館.つたや
○
○
○
○
○
○
20000
17000
12000
11000
セッション3 保存と創造
セッション4 建築家と保存の明日
参加費(円)
○
○
9000
6000
○
3000
3000
*申し込み締め切り: 2 0 0 7 年 2 月 6 日 (宿泊者数確認・客室数確保のため)
*FAX送付先:03-3408-8294 (日本建築家協会関東甲信越支部担当:清宮)/E-mailの場合:[email protected]
参加希望コース: □ Aコース □ Bコース □ Cコース □ Dコース □ Eコース □ Fコース □ Gコース □ Hコース □その他
氏名: 職業: 会員/非会員: 連絡先: 住所: FAXまたはE-mail: *お振込先:みずほ銀行 青山支店(普通預金)1176253
口座名:(社)日本建築家協会 関東甲信越支部 *恐れ入りますが、振込み手数料は貴方様にてご負担方、お願い申し上げます。
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